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特許拒絶査定不服審判

2023-011014

フィルム蓋付容器及びフィルム蓋付容器入り飲食品

審判番号
2023-011014
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-018321
請求日
2023年07月03日
審決日
2025年09月26日
公報発行日
2025年12月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社明治
  • 【請求人代理人】弁理士法人ドライト国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 田口 傑
  • 審判官 武市 匡紘
  • 審判官 葛原 怜士郎
分類
P18 .121-WZ (B65D) / P18 .55 -WZ (B65D) / P18 .537-WZ (B65D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2019-18321「フィルム蓋付容器及びフィルム蓋付容器入り飲食品」拒絶査定不服審判事件〔令和2年8月20日出願公開、特開2020-125135〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 この出願(以下「本願」という。)は、平成31年2月4日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和 4年12月 5日付け:拒絶理由通知書 令和 5年 2月 8日 :意見書、手続補正書の提出 同年 3月23日付け:拒絶査定 (4月 4日 :拒絶査定の謄本の送達) 同年 7月 3日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年 7月20日 :審判請求書を対象とする手続補正書の提出 令和 7年 5月 2日付け:拒絶理由通知書 同年 7月 3日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1~8に係る発明は、令和7年7月3日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 容器本体の上端に開口する開口部の周縁にフランジ部が形成されたカップ状の容器を備え、 前記フランジ部の上面に、径方向長さが3.4mm以上である平坦部が設けられており、 前記フランジ部の上面の外周縁部に、下方に向かって斜めに傾斜する傾斜部が全周に亘って形成されており、 前記容器本体はテーパ四角筒状に形成され、前記フランジ部は四角形リング状に形成され、 前記容器本体の高さは、前記容器本体の底辺の長さ、前記容器本体の上辺の長さ、および前記フランジ部の一辺の長さ、のいずれよりも長く設定されており、 前記フランジ部の基端部の厚さを他の部位の厚さよりも厚く設定し、 前記平坦部に、フィルム蓋を接合して成るフィルム蓋付容器。」 第3 当審拒絶理由の概要 令和7年5月2日付けで当審において通知した拒絶理由は、次の理由を含むものである。 拒絶理由(進歩性) 本願の請求項1~11に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された事項、引用文献2に記載された事項、及び周知技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.米国特許出願公開第2003/0042259号明細書 2.特開2016-164084号公報 3.ついに登場!「ポテロング」初ののりしお味風味豊かな「ポテロング<のりしお味>」、[online]、2015年9月1日、[令和5年7月10日検索]、インターネット、<URL:http://web.archive.org/web/20150906142403/http://www.morinaga.co.jp/company/newsrelease/detail.php?no=1209> 4.Amazon.co.jp:森永製菓森永ポテロング45g×10個、[online]、2010年4月26日(Amazon.co.jpでの取り扱い開始日)、[令和5年7月10日検索]、インターネット、<URL:https://www.amazon.co.jp/森永製菓-森永-ポテロング-45g×10個/dp/B003J9DXKI> 第4 当審の判断 当審は、以下に示すとおり、令和7年7月3日提出の手続補正書による補正及び意見書の内容を考慮しても、上記第3に記載した拒絶理由(進歩性)は解消していないと判断する。 1 引用文献に記載された事項及び発明等 (1) 引用文献1について ア 引用文献1の記載 引用文献1には次の記載がある。ここで、翻訳は当審で作成したものである。下線は当審において付与したものであり、「・・・」は省略を示す。以下同様。 「 [図:0001429279000001.jpg] 」 (翻訳: [0001] 1.発明の分野 [0002] 本発明は、食品のために新たに改良された包装体に関する。より詳細には、本発明は、傾斜したシーリングフランジを備えたカップを有する包装体に関する。) 「 [図:0001429279000002.jpg] 」 (翻訳: [0005] 好ましくは、従来の包装体におけるカップとフィルムシールは、消費者が包装体を開封できる、すなわち最小限の労力でカップからフィルムシールを取り外して包装体内に含まれる食品へのアクセスできるように構成されている。フィルムシールは、カップからフィルムシールを取り外すために必要な剥離レベルまたは所定の力を低減するように設計することができる。しかしながら、剥離レベルを低減すると、包装体の他の重要な機能要件に不利な影響を与える。例えば、剥離レベルを低減すると、包装体が破裂および/または漏出する可能性が比例して増加する。フィルムシールを再設計しても、包装体の開封力を大幅に低減させるには不十分である。従来のシール装置は、温度、シール時間、圧力などの動作パラメータに大きな変動があり、包装体を設計する時にこれらを考慮する必要があるためである。シール装置に加え、熱処理環境(レトルト)も包装体の材料と互換性がなければならない。) 「 [図:0001429279000003.jpg] 」 (翻訳: [0019] 図面を参照すると、各図において同一の構成要素は同一の参照符号で示されている。図1および図2は、本発明による食品用包装体30を示す。包装体30は、果物その他の食品の1回分を収容するのに特に適している。通常、包装体30はカップ31と蓋32を含む。図示の実施形態では、カップ31と蓋32は円形であるが、本発明によれば他の形状も利用可能であることに留意されたい。特に、カップのシーリングフランジは楕円形、三角形、正方形、長方形、またはその他の適切な形状とすることができる。) 「 [図:0001429279000004.jpg] 」 (翻訳: [0020] 本発明のカップ31は、薄肉容器36、容器36に形成された開口37、及び開口を囲むシーリングフランジ38を備え、その構造は従来の包装容器と同様である。本発明の一実施形態において、カップ31はプラスチック製であり、好ましくはポリプロピレン製である。しかしながら、本発明によれば他の適切な材料を使用できることも理解されるべきである。) 「 [図:0001429279000005.jpg] 」 (翻訳: [0021] 図3に示すように、平坦なシーリング面43を有する従来技術パッケージ42のシーリングフランジ41とは異なり、本発明のシーリングフランジ38は、開口37に隣接する実質的に平坦な内側シーリング面47と、シーリング面47の外側に間隔を置いて配置された外側傾斜面48とを含む(図4参照)。特に、傾斜面48は、シーリングフランジ38のシーリング面47の外側にある周縁部49に沿って延び、シーリングフランジ38の内側シーリング面47から下方かつ外方へ延びている。) 「 [図:0001429279000006.jpg] 」 (翻訳: [0024] シーリング面47は、内半径R1と外半径R2を有する。外半径R2は、シーリング面47と傾斜面48との接合部を規定する。外半径R2と内半径R1との差分R△は、本発明に従って変化し得るが、フランジの幅よりも小さい。好ましくは、外半径R2と内半径R1との差R△は約0.080インチから0.120インチの範囲である。例えば、外半径R2と内半径R1の差は、後述するように消費者がカップ31から蓋32を取り外すために必要な所定の引張力を得るため、約0.080インチ、約0.100インチ、約0.120インチ、またはその他の適切な寸法とすることができる。) 「 [図:0001429279000007.jpg] 」 (翻訳: [0025] 本発明の一実施形態において、蓋32は、複数の層からなる柔軟なシールフィルムを含む。・・・好ましくは、蓋32のフィルムは、蓋32をカップ31に付着させることを容易にするための接着剤を含む。あるいは、蓋は、エンドレス溶接または本発明の範囲内の他の適切な手段によってシーリング面に取り付けることができる。) 「 [図:0001429279000008.jpg] 」 (翻訳: [0026] 蓋32は、シーリングフランジ38の周縁49から外方に延びるタブ53を含む。蓋32は、シーリングフランジ38のシーリング面47に接着固定され、これによりカップ31の開口部37を密封する。重要な点として、蓋32は、少なくとも傾斜面48の相当部分には固定されない。好ましくは、蓋32は傾斜面48のいかなる部分にも固定されない。しかしながら、従来の包装・密封装置に内在する遊びや公差により、蓋32が斜面48のごく一部に意図せず接着される可能性があることは理解されるべきである。好ましくは、蓋32が斜面48に接触する部分は約10%以下であり、最も好ましくは斜面の約20%以下である。) 「 [図:0001429279000009.jpg] 」 (翻訳: [0027] 本発明のシーリングフランジ38の構成は、蓋32をカップ31から取り外すために必要な、約8ポンド未満、好ましくは約3ポンドから5ポンドの範囲の所定の引張力を有する包装を提供する。特に、消費者および/または使用者は、タブ53を把持し、最小限の力でタブをカップ32のシーリングフランジ38から引き離すことができる。例えば、一実施形態において、包装体は、カップに対して23°の角度で実施されたフルパネル剥離試験による引張試験により、約6~8ポンドの引張力を有する。) 「 [図:0001429279000010.jpg] [図:0001429279000011.jpg] [図:0001429279000012.jpg] 」(図1、図2、図4) イ 引用文献1の記載から認定できる事項 (ア) [0020]の「本発明のカップ31は、薄肉容器36、容器36に形成された開口37、及び開口を囲むシーリングフランジ38を備え」という記載から、シーリングフランジ38が開口37を包囲していることが記載されていると認められる。 (イ) [0019]の「カップ31と蓋32は円形である」という記載と、図1及び図2の記載を踏まえれば、カップ31とその一部であるシーリングフランジ38が円形であると認められる。 (ウ) [0021]の「シーリングフランジ38は、開口37に隣接する実質的に平坦な内側シーリング面47と、・・・外側傾斜面48とを含む」という記載と、[0026]の「蓋32は、シーリングフランジ38のシーリング面47に接着固定され」という記載、「好ましくは、蓋32は傾斜面48のいかなる部分にも固定されない」という記載を踏まえれば、蓋32が実質的に平坦な内側シーリング面47に接合されていると認められる。 (エ) [0021]、[0024]及び[0026]に記載の「シーリング面47」、並びに[0025]に記載の「シーリング面」は、いずれも[0021]に記載の「内側シーリング面47」を指していることは明らかである。 ウ 引用文献1に記載された発明 上記ア及びイから、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「カップ31と蓋32を含む包装体30であって、 カップ31は、容器36と開口37、シーリングフランジ38を含み、 シーリングフランジ38が開口37を包囲し、 シーリングフランジ38が、実質的に平坦な内側シーリング面47と、外側傾斜面48を含み、 カップ31とシーリングフランジ38が円形であり、 蓋32が実質的に平坦な内側シーリング面47に接合されている、包装体30。」 (2) 引用文献2について ア 引用文献2の記載 引用文献2には次の記載がある。 「【0006】・・・一般的に、トップシール用蓋材を装着する場合、蓋材に熱をかけてフランジを接する樹脂を溶かして熱溶着させている。このため、フランジの平坦な部分の幅が全周に亘って狭い形状や、場所によって幅が不揃い(例えば、一辺は幅広、他辺は幅狭)な形状では、均一に熱をかけられなかったりしてしまうため、シール強度にばらつきが出てしまったり、均一に熱をかけるためにシール時間を長くしなければならず、生産性が低下するといった不具合が生じるため、装置自体を高精度にせざるを得ない。」 「【0016】・・・フランジ部の平坦部が幅4mm以上で全周に亘っているため、標準的なトップシール機でも、上記平坦部の幅内にトップシール用蓋材を確実に熱溶着させることができる。・・・」 「【0020】 本発明の一実施形態における包装用容器は、ポリスチレン発泡体からなり、底部1と、この底部の外周から起立した側部2と、この側部の上端から外方に向けて延出したフランジ部3とを備え、このフランジ部は、全周に亘って幅4mm以上の平坦部31を有する。・・・ 【0022】 また、平坦部31の外縁端には、全周に亘ってさらに厚みの薄い薄肉部31aが形成されていてもよい。」 「【0031】 図1に示すとおり、底部1は、食品が載置される矩形状の食品載置部を形成する。側部2は、底部1の外周縁と湾曲して連設し、斜め上に起立している。フランジ部3は、側部2の上端と湾曲して連設し、外方に向けて水平に延出している。・・・側部2とフランジ部3(特にこのフランジ部の裏面)とが連設する部分の曲率半径は2mm以下で、好ましくは1mm以下であり・・・。」 「【0052】 さらに、本包装用容器の基本的及び具体的な構造は、以下のように分節してもよい。なお、参照の便宜等のため、図5(フランジ部及び側部上方の部分拡大端面図)に具体的な構造の一部に付番する(B-3,C-2)。 (イ)基本的な構造 A.所定の縦横比率を有するフランジ部、側部及び底部を備えた容器本体 (ロ)具体的構成態様 B.フランジ部 B-1.四方の丸状の角部 B-2.外縁の端部に設けられた突出部 B-3.全周に渡って同一幅かつ平坦状の表面部及び裏面部 C.側部 C-1.外側に拡がって傾斜している C-2.フランジ部との連設部分付近が平坦である」 「【図1】 [図:0001429279000013.jpg] 【図2】 [図:0001429279000014.jpg] 」 「【図5】 [図:0001429279000015.jpg] 」 イ 引用文献2に記載された事項 上記アの特に【0006】を踏まえれば、引用文献2には、以下の引用文献2記載事項1が記載されているものと認められる。 「蓋材に熱をかけてフランジと接する樹脂を溶かして熱溶着させ、トップシール用蓋材を装着する場合、フランジの平坦な部分の幅が全周に亘って狭い形状では、均一に熱をかけられなかったりしてしまうため、シール強度にばらつきが出てしまったり、均一に熱をかけるためにシール時間を長くしなければならず、生産性が低下するといった不具合が生じること。」 また、上記アの記載を踏まえれば、引用文献2には、以下の引用文献2記載事項2が記載されているものと認められる。 「包装用容器であって、底部1と、この底部の外周から起立した側部2と、この側部の上端から外方に向けて延出したフランジ部3とを備え、このフランジ部は、全周に亘って幅4mm以上の平坦部31を有し、平坦部31は平坦状の表面部及び裏面部であり、平坦部31の外縁端には、全周に亘ってさらに厚みの薄い薄肉部31aが形成されていて、底部1は、食品が載置される矩形状の食品載置部を形成し、側部2は、底部1の外周縁と湾曲して連設し、斜め上に起立し、側部2とフランジ部3(特にこのフランジ部の裏面)とが連設する部分の曲率半径は2mm以下で、フランジ部との連設部分付近が平坦である、包装用容器。」 (3) 引用文献3及び引用文献4、並びに周知技術について ア 引用文献3の記載 引用文献3には次の記載がある。 「 [図:0001429279000016.jpg] 」 イ 引用文献4の記載 引用文献4には次の記載がある。 「 [図:0001429279000017.jpg] 」 「・商品サイズ(幅×奥行×高さ):8.8×8.8×13.9cm」(「この商品について」における4点目。) ウ 周知技術について 上記ア及びイの記載を踏まえれば、以下の事項は周知の技術(以下単に「周知技術」という。)であると認められる。 「食品の容器において、幅及び奥行きより高さの寸法が大きいものとすること。」 2 対比 (1) 本願発明と引用発明を対比する。 ア 各構成について 次の引用発明の欄に記載した各構成は、それぞれ本願発明の欄に記載した各構成に相当する。 <引用発明> <本願発明> 容器36 容器本体 開口37 開口部 シーリングフランジ38 フランジ部 カップ31 容器 内側シーリング面47 平坦部 外側傾斜面48 傾斜部 蓋32 フィルム蓋 包装体30 フィルム蓋付容器 イ 容器について 引用文献1の図4を踏まえれば、引用発明の「カップ31は、容器36と開口37、シーリングフランジ38を含み」という構成は、本願発明の「容器本体の上端に開口する開口部の周縁にフランジ部が形成されたカップ状の容器を備え」という構成に相当する。 ウ フランジ部について 引用文献1の図4を踏まえれば、引用発明の「シーリングフランジ38が、実質的に平坦な内側シーリング面47」「を含」む構成と、本願発明の「前記フランジ部の上面に、径方向長さが3.4mm以上である平坦部が設けられており」という構成とは、「前記フランジ部の上面に、平坦部が設けられて」いる限りにおいて一致する。 また、引用文献1の図4を踏まえれば、引用発明の「シーリングフランジ38が開口37を包囲し」、「シーリングフランジ38が」「外側傾斜面48を含み」という構成は、本願発明の「前記フランジ部の上面の外周縁部に、下方に向かって斜めに傾斜する傾斜部が全周に亘って形成されており」という構成を備えているといえる。 エ フィルム蓋付き容器について 上記アのとおり、引用発明の「内側シーリング面47」及び「蓋32」がそれぞれ、本願発明の「平坦部」及び「フィルム蓋」に相当することを踏まえれば、引用発明の「蓋32が実質的に平坦な内側シーリング面47に接合されている、包装体30」は、本願発明の「前記平坦部に、フィルム蓋を接合して成るフィルム蓋付容器」に相当する。 (2) 本願発明と引用発明は次の点で一致し、相違する。 ア 一致点 「容器本体の上端に開口する開口部の周縁にフランジ部が形成されたカップ状の容器を備え、 前記フランジ部の上面に、平坦部が設けられており、 前記フランジ部の上面の外周縁部に、下方に向かって斜めに傾斜する傾斜部が全周に亘って形成されており、 前記平坦部に、フィルム蓋を接合して成るフィルム蓋付容器。」 イ 相違点 [相違点1] 平坦部について、本願発明は「径方向長さが3.4mm以上である」のに対して、引用発明はそのような特定がされていない点。 [相違点2] 容器本体及びフランジ部について、本願発明は「前記容器本体はテーパ四角筒状に形成され、前記フランジ部は四角形リング状に形成され、前記容器本体の高さは、前記容器本体の底辺の長さ、前記容器本体の上辺の長さ、および前記フランジ部の一辺の長さ、のいずれよりも長く設定されて」いるのに対して、引用発明は「カップ31とシーリングフランジ38が円形であり」、容器36の寸法や、容器36とシーリングフランジ38との寸法関係が不明である点。 [相違点3] フランジ部について、本願発明は「前記フランジ部の基端部の厚さを他の部位の厚さよりも厚く設定し」ているのに対して、引用発明はそのような特定がされていない点。 3 判断 (1) 相違点1について 上記1(1)イ(エ)に示したとおり「内側シーリング面47」について、上記1(1)アに示した引用文献1の[0024]には、「外半径R2と内半径R1との差R△は約0.080インチから0.120インチの範囲である。例えば、外半径R2と内半径R1の差は、後述するように消費者がカップ31から蓋32を取り外すために必要な所定の引張力を得るため、約0.080インチ、約0.100インチ、約0.120インチ、またはその他の適切な寸法とすることができる」と記載されている。この記載を踏まえれば、外側半径R2と内側半径R1の差(本願発明の「平坦部」における「径方向長さ」に相当。)について、約0.080インチから約0.120インチ(約3mm)にすることに加え、カップ31から蓋32を取り外すために必要な引張力を提供できる適切な長さとすることが記載されているといえる。 また、カップ31から蓋32を取り外すために必要な引張力に関連して、上記1(1)アに示した引用文献1の[0005]には、「フィルムシールは、カップからフィルムシールを取り外すために必要な剥離レベルまたは所定の力を低減するように設計することができる。しかしながら、剥離レベルを低減すると、包装体の他の重要な機能要件に不利な影響を与える。例えば、剥離レベルを低減すると、包装体が破裂および/または漏出する可能性が比例して増加する」と記載されており、同[0027]には、「包装体は、カップに対して23°の角度で実施されたフルパネル剥離試験による引張試験により、約6~8ポンドの引張力を有する」と記載されている。これらの記載から、カップ31から蓋32を取り外すために必要な引張力は、低減することが好ましいものの、包装体の破裂や漏れが生じないような引張力が必要であり、そのような引張力の範囲として、約6~8ポンド(約26.6~35.5N)が好ましいことが記載されていると当業者であれば理解できる。 そして、引用発明において、外側半径R2と内側半径R1の差は、上述したカップ31から蓋32を取り外すために必要な引張力や、上記1(2)イに示した引用文献2記載事項1のようなヒートシール強度の安定性などを考慮して決定し得ることであり、その際、引用文献1に記載された約6~8ポンドの引張力の範囲を前提としつつ、引用発明における平坦部の径方向長さを3.4mm以上とすることは、当業者が適宜設計し得る範囲内のことである。そして、上記1(2)イに示した引用文献2記載事項2に示されるように、平坦部の径方向長さとして4.0mm以上のものは格別のものとは認められない。 加えて、引用発明において、カップ31から蓋32を取り外すために必要な引張力を約6~8ポンドとする範囲内において、外側半径R2と内側半径R1の差を3.4mm以上とすることに阻害要因は認められない。 さらに、本願の【0061】~【0063】を参酌すれば、平坦部の径方向長さを3.4mmとした実施例2の減圧試験が合格となっているが、平坦部の径方向長さ以外の条件(例えば、容器の材質や、ヒートシール条件)が明確でなく、平坦部の径方向長さが3.4mm以上であることのみで減圧試験が合格となるとは理解できない。そうすると、本願発明における当該数値範囲の特定について、臨界的意義を認めることもできない。 以上のことから、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、設計的事項に過ぎない。 (2) 相違点2について 上記1(1)アに示した引用文献1の[0019]には、「カップ31と蓋32は円形であるが、本発明によれば他の形状も利用可能であることに留意されたい。特に、カップのシーリングフランジは楕円形、三角形、正方形、長方形、またはその他の適切な形状とすることができる。」と記載されている。この記載を踏まえれば、「カップ31とシーリングフランジ38が円形であ」る引用発明において、カップ31や、その一部である容器36及びシーリングフランジ38の形状は当業者が適宜決定し得ることであり、引用文献2記載事項2のような、底部1が矩形状で、側部2が斜め上に起立している包装用容器を参酌し、引用発明のカップ31の形状として、容器36がテーパ四角筒状に形成され、シーリングフランジ38が四角形リング状に形成された形状を選択することは、当業者にとって容易になし得たことである。また、引用発明1の容器36における各寸法は当業者が適宜決定し得ることであり、上記1(3)ウに示した周知技術を参酌し、容器36の高さを、底辺の長さ、上辺の長さ、シーリングフランジ38の一辺の長さよりも長く設定することは、当業者にとって容易になし得たことである。 (3) 相違点3について 引用文献2記載事項2の「包装用容器」は、「平坦部31は平坦状の表面部及び裏面部であり」、「側部2とフランジ部3(特にこのフランジ部の裏面)とが連設する部分の曲率半径は2mm以下で、フランジ部との連設部分付近が平坦である」ことから、曲率を有する側部2とフランジ部3の連接部分が、表面部及び裏面部がともに平坦状である平坦部31より厚くなることは明らかである。そうすると、引用文献2記載事項2の「包装用容器」は、本願発明の表現に倣うと、「フランジ部の基端部の厚さを他の部位の厚さよりも厚く設定し」ているといえる。 そして、引用発明において、シーリングフランジ38の厚さ寸法や形状は当業者が適宜決定し得ることであり、その際、引用文献2記載事項2のように、容器の側部との連接部分に曲率を有する形状とし、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が適宜設計し得る範囲内のことである。 (4) 効果の予測性について 上記相違点1~3を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献1に記載された事項、引用文献2記載事項1、引用文献2記載事項2、及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (5) 審判請求人の主張について ア 径方向長さが3.4mm以上である平坦部について 審判請求人は、令和7年7月3日に提出された意見書の「(3-3)理由3(進歩性)について」において、以下のとおり主張する。 (主張1)「引用文献1の[0024]には、内側シーリング面47の外側半径R2と内側半径R1の差RΔが約0.080インチ~0.120インチであることが記載されています。[0027]には、消費者が蓋32からタブを取り外す際に最小限の力で操作可能であることが記載されています。また、[0030]には、蓋32とシーリングフランジ38との間の総接触面積が大幅に低減されていることで、消費者がカップ31から蓋32を取り外すために必要な開封力を低減させることが記載されています。上記の記載によれば、引用文献1の容器は、最小限の力で開封できるように開封力を低減させた、易開封性の向上に特化したものであると認められます。引用文献1には、平坦部の径方向長さを3.4mm以上とすることは開示も示唆もありません。引用文献1を見た当業者は、本願発明の易開封性と減圧耐性の向上を両立させることができるフィルム蓋付容器を成すために、平坦部の径方向長さを3.4mm以上にする動機付けがありません。よって、引用文献1記載の発明に引用文献2記載事項2におけるフランジ部3の平坦部31の幅を適用する動機付けはないと考えられ、むしろ阻害要因があると考えます。」(第2ページ下から第14行~第2行参照。) (主張2)「本願明細書の段落[0020]には容器1(容器本体2)の材質が記載されており、本願明細書の段落[0028]~[0033]にはフィルム蓋11の構成および接合方法が記載されています。これらの記載に照らせば、当業者においては、実施例2における平坦部の径方向長さ以外の条件(材質や接合条件)についても十分に理解可能であり、当該実施例2が特定の構成条件の下で減圧試験に合格していることは明らかです。 したがって、平坦部の径方向長さが3.4mm以上であることが減圧試験の合否に与える影響を実施例2に基いて評価することは十分に合理的であり、この数値範囲の特定には臨界的意義があるといえます。」(第3ページ第16行~第24行参照。空白の行は行数に計上していない。以下同様。) まず、上記主張1について検討すると、上記(1)で検討したとおり、引用発明において、平坦部の径方向長さを3.4mm以上にすることは設計的事項に過ぎず、阻害要因も認められない。 次に、上記主張2について検討する。本願明細書において、実施例は【0041】~【0066】に記載され、実施例2は【0061】~【0063】に記載されている。しかしながら、【0061】~【0063】に実施例2の容器やフィルム蓋の材質やフィルム蓋のヒートシール条件は何ら記載されていない。また、【0045】には、実施例1のフィルム蓋の層構成と接着条件が記載されているものの、実施例1と実施例2の構成が同一であるという記載はないし、フィルム蓋の構成においてもシーラントとして機能する層は「シーラントフィルム」と記載されているのみであり、材質について記載されていない。そうすると、上記(1)で検討したとおり、平坦部の径方向長さを3.4mm以上にすることによる臨界的意義を認めることはできない。 また、上記主張2において、本願明細書の【0020】や【0028】~【0033】に容器1の材質やフィルム蓋11の構成及び接合方法が記載されていると主張しているが、当該記載は【発明を実施するための形態】として記載されているものであり、実施例2における材質等を特定するものではない。 よって、審判請求人の上記主張1及び2は採用できない。 イ フランジ部の基端部の厚さを他の部位の厚さよりも厚く設定することについて 審判請求人は、令和7年7月3日に提出された意見書の「(3-3)理由3(進歩性)について」において、以下のとおり主張する。 (主張3)「引用文献2には、フランジ部の基端部の厚さを他の部位の厚さよりも厚く設定することは開示も示唆もありません。引用文献2の[0038]には、「成型後の包装用容器はこの底部及び/又は側部の厚さがフランジ部の平坦部31の厚さより厚くなる。これにより、平坦部31がより平滑になるばかりでなく、多層フィルムFと基材との剥離強度及び容器の剛性を高めることができる。」という記載があります。当該記載を見た当業者であれば、容器の底部や側部の厚さをフランジ部の平坦部よりも厚くすることは容易に想到できますが、フランジ部の基端部の厚さを他の部位の厚さよりも厚く設定することは容易に想到できません。 本願発明は、上記の特徴Bを有することによって、容器1(容器本体2)のフランジ部2Cの基端部の剛性が他の部位の剛性よりも高められており、それにより、フィルム蓋11をフランジ部2Cから引き剥がす力によってフランジ部2Cが基端部を中心として大きく弾性変形することがなく、ユーザーによって加えられる力の殆ど全てがフィルム蓋11を引き剥がす力として効率よく利用され、該フィルム蓋11を容器1(容器本体2)のフランジ部2Cから小さな力で容易に剥がすことができ、当該フィルム蓋付容器10の易開封性が高められる、という引用文献1~4に開示も示唆もされていない有利な効果(異質な効果)を奏します(本願明細書の段落[0036]ご参照)。」(第3ページ下から第18行~第3行参照。) 上記主張3について検討すると、上記(3)で検討したとおり、引用文献2記載事項2の「包装用容器」は、「平坦部31は平坦状の表面部及び裏面部であり」、「側部2とフランジ部3(特にこのフランジ部の裏面)とが連設する部分の曲率半径は2mm以下で、フランジ部との連設部分付近が平坦である」ことから、曲率を有する側部2とフランジ部3の連接部分が、表面部及び裏面部がともに平坦状である平坦部31より厚くなることは明らかである。 また、上記主張3で参照されている引用文献2の【0038】は、包装用容器の底部及び側部の厚さと、平坦部31の厚さの関係について記載されているものであり、側部2とフランジ部3の連接部分と平坦部31の厚さの関係について記載されているものでない。加えて、本願発明における「前記フランジ部の基端部の厚さを他の部位の厚さよりも厚く設定し」という構成は、本願明細書における【0019】の「フランジ部2Cの基端部の厚さは、他の部位(フランジ部2Cの基端部を除く部分)の厚さよりも厚く設定されている。」という記載や、同【0036】の「前述のように、容器1(容器本体2)のフランジ部2Cの基端部の厚さを同フランジ部2Cの他の部位の厚さよりも厚く設定した」という記載からも明らかなように、フランジ部の基端部の厚さがフランジ部の他の部位の厚さよりも厚いことを特定するものであり、フランジ部の基端部の厚さと胴部2Bや底部2Aの関係を特定するものではない。 また、上記(4)のとおり、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献1に記載された事項、引用文献2記載事項1、引用文献2記載事項2、及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 よって、引用文献2の包装用容器の底部及び側部の厚さと、平坦部31の厚さの関係について記載されている【0038】を根拠に、フランジ部の基端部の厚さを他の部位の厚さよりも厚く設定することは容易に想到できないとする上記主張3は採用できない。 (6) 小括 上記(1)~(5)から、本願発明は、引用発明、引用文献1に記載された事項、引用文献2記載事項1、引用文献2記載事項2、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1に記載された事項、引用文献2記載事項1、引用文献2記載事項2、及び周知技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-011014

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