特許拒絶査定不服審判
2023-010014
シリコン材料の輸送用袋及びシリコン材料の梱包体
- 審判番号
- 2023-010014
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-190923外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年06月16日
- 審決日
- 2025年07月08日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (B65D) / P18 .537-WZ (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-190923号「シリコン材料の輸送用袋及びシリコン材料の梱包体」拒絶査定不服審判事件〔令和3年3月11日出願公開、特開2021-38026号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年8月30日に出願された特願2019-159111号の一部を令和2年11月17日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 9月 6日 :手続補正書の提出
令和5年 1月16日付け:拒絶理由通知書
令和5年 2月22日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 4月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和5年 5月 9日 :原査定の謄本の送達)
令和5年 6月16日 :審判請求書の提出
令和7年 3月25日付け:拒絶理由通知書
令和7年 5月27日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明について
本願の請求項に係る発明は、令和7年5月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1の記載は次のとおりである。
以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。
「【請求項1】
シリコン材料の輸送用袋であって、
第1の袋と、
前記第1の袋内に配置される第2の袋と
を備え、
前記第2の袋は、前記第1の袋に固定されることなく前記第1の袋内に配置されており、
前記第1の袋を構成する第1の包装材料は、樹脂基材層とシーラント層とをこの順で有する積層材料であって、前記第1の袋の前記シーラント層が、前記第1の袋の内側に位置し、
前記第2の袋を構成する第2の包装材料が、バリア層と、前記第2の袋の内側に位置するシーラント層とを含み、
前記第2の袋の前記シーラント層は、低密度ポリエチレン(LDPE)とリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)とを含む単層構造であり、
前記第1の袋の前記シーラント層及び前記第2の袋の前記シーラント層には、スリップ剤が実質的に添加されていない
シリコン材料の輸送用袋。」
第3 当審で通知した拒絶の理由
当審拒絶理由通知により通知した、令和7年5月27日に提出された手続補正書により補正される前の請求項1~16に係る発明に対する拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
(進歩性)請求項1~16に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献4~5に記載された事項及び周知技術(引用文献2~4参照。)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<引用文献等一覧>
1.特開2012-35885号公報
2.特開平10-264930号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2004-115053号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2014-223947号公報(当審で新たに引用する文献)
5.特開2019-59511号公報
第4 当審の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
ア 当審で通知した拒絶の理由において引用した特開2012-35885号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある(・・・は省略を表し、下線は当審において付与した。以下同様。)。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシリコンウェハー等の電子製品用包装袋、医薬品用包装袋、食品用包装袋等として用いられる二重袋及びその製造方法に関する。」
・「【発明の効果】
・・・
【0033】
[6]の発明では、内袋用長尺フィルムの外面を構成する樹脂として、外袋用長尺フィルムの内面を構成する樹脂に熱溶着しない樹脂が用いられているから、製造の際に内袋と外袋とが熱溶着接合されることがない。従って、外袋内に収容された内袋を取り出す際の取り出し作業性に優れた二重袋が提供される。」
・「【0072】
なお、図2において、71は、内袋用サイドシールバー51で押圧されたものの、内袋2と外袋3とが溶着されなかった領域(半円領域)であり、72は、内袋用サイドシールバー51で押圧されたものの、内袋2と外袋3とが溶着されなかった領域(半円領域)である。」
・「【0077】
本発明において、前記内袋2を構成する一対のフィルム20A、20B(内袋用長尺フィルム50)および前記外袋3を構成する一対のフィルム30A、30B(外袋用長尺フィルム60)としては、特に限定されるものではないが、例えば、シーラント層(内面層)と、該シーラント層に積層された基材層とを備えた構成の積層フィルム等が挙げられる。前記基材層は、少なくとも表面層(外面層)を備えており、必要に応じてさらに1層又は2層以上の中間層を備えた構成が採用されるが、特にこれら例示の積層構成に限定されるものではない。
【0078】
前記表面層としては、特に限定されるものではないが、例えば、光遮蔽性、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性等を有するバリア性フィルムからなる層等が挙げられる。前記表面層としては、本発明の二重袋1内に収納した包装対象物(被包装物)を確認できる点で、透明であるのが好ましい。また、包装対象物が光による影響を受けやすい場合には光遮蔽性を有するバリア性フィルムを用いる。」
・「【0089】
<実施例1>
前項で説明した二重袋の製造方法(図1参照)を実施して図2に示す二重袋1を製造した。内袋用長尺フィルム50としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm;外面層)/ナイロンフィルム(15μm)/ポリエチレン押出層(15μm)/ポリエチレンフィルム(35μm)の積層構成からなる積層フィルムを用いた。また、外袋用長尺フィルム60としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/ナイロンフィルム(15μm)/ポリエチレン押出層(15μm)/ポリエチレンフィルム(35μm;内面層)の積層構成からなる積層フィルムを用いた。
【0090】
内袋シール部形成工程及び外袋シール部形成工程において、シール条件は、180℃×0.5MPa×0.7秒とした。また、内袋固定用接合部形成工程におけるシール用押圧部による加熱押圧条件は、160℃×0.2MPa×0.5秒とした。
【0091】
得られた二重袋1において、内袋2のサイズは、幅840mm×長さ800mmであり、外袋3のサイズは、幅900mm×長さ900mmである。また、内袋2の第1サイドシール部21の幅は10mm、第2サイドシール部22の幅は10mm、ボトムシール部23の幅は10mmであり、外袋3の第3サイドシール部31の幅は10mm、第4サイドシール部32の幅は10mm、ボトムシール部33の幅は10mmである。また、内袋固定用第1接合部(半円形状)11の1個当たりの面積は3cm2であり、内袋固定用第2接合部(半円形状)12の1個当たりの面積は3cm2である。一方の内袋固定用第1接合部11と他方の内袋固定用第1接合部11との離間間隔は500mmであり、一方の内袋固定用第2接合部12と他方の内袋固定用第2接合部12との離間間隔は500mmである。」
・「【図2】
[図:0001426226000001.jpg]
」
イ 上記指摘事項及び図示事項から、以下の事項が把握される。
(ア)段落【0033】、【0072】を踏まえると、内袋2と外袋3は接合されておらず、外袋3から内袋2を取り出すことが可能である。
(イ)段落【0077】、【0078】を踏まえると、内袋2及び外袋3を構成する一対のフィルムは、シーラント層(内面層)と、該シーラント層に積層された基材層とを備えた構成の積層フィルム等であり、前記基材層は、少なくとも表面層(外面層)を備えており、前記表面層としては、光遮蔽性、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性等を有するバリア性フィルムからなる層である。
(ウ)段落【0077】から、内袋用長尺フィルム50は内袋2を構成し、外袋用長尺フィルム60は外袋3を構成する。
ウ 引用発明
以上より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「二重袋1は、シリコンウェハー等の電子製品用包装袋として用いられるものであり、
二重袋1の内袋2と外袋3とは接合されておらず、
内袋2と外袋3を構成する一対のフィルムは、シーラント層(内面層)と、該シーラント層に積層された基材層とを備えた構成の積層フィルム等であり、前記基材層は、少なくとも表面層(外面層)を備えており、前記表面層としては、光遮蔽性、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性等を有するバリア性フィルムからなる層等が挙げられ、
内袋2を構成する内袋用長尺フィルム50としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm;外面層)/ナイロンフィルム(15μm)/ポリエチレン押出層(15μm)/ポリエチレンフィルム(35μm)の積層構成からなり、
外袋3を構成する外袋用長尺フィルム60としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/ナイロンフィルム(15μm)/ポリエチレン押出層(15μm)/ポリエチレンフィルム(35μm;内面層)の積層構成からなる積層フィルムを用いた、
二重袋1。」
(2)引用文献2の記載事項
ア 当審で通知した拒絶の理由で引用した特開平10-264930号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
・「【0015】各シート材10、12は、それぞれ基材フィルム16、26上にヒートシーラント層18、28を積層させ互いに密着させて形成されている。そして、ヒートシーラント層18、28は、接着剤層20、30と中間層22、32とヒートシール層24、34とが積層しそれぞれ互いに密着して形成されている。基材フィルム16、26は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という)フィルム、上質紙などで形成されており、厚みが、例えば12μm程度である。接着剤層20、30は、例えば直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE」という)などで形成されており、厚みが、例えば10~30μm程度である。中間層22、32は、COCで形成されており、あるいは、COCを含有する樹脂混合物、例えばCOCとLLDPEなどとをブレンドして形成されていて、厚みが、例えば10~20μm程度である。また、ヒートシール層24、34は、例えば、低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」という)単独、あるいは、LLDPEとLDPEとをブレンドした樹脂混合物などで形成されており、厚みが、例えば1~5μm程度である。そして、シート材10、12は、公知の方法、例えば共押出しコーティング法などにより加工形成されている。」
イ 引用文献に記載された事項
以上より、引用文献2には、次の事項が記載されていると認められる。
「ヒートシール層を直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)とをブレンドした樹脂混合物で形成すること。」
(3)引用文献3の記載事項
ア 当審で通知した拒絶の理由で引用した特開2004-115053号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
・「【0011】
本発明にかかるシーラント層6としては、具体的に、低密度ポリエチレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とのブレンド物から製膜されたフィルム層を使用することが必要であり、これによって、ホットタック性を維持しつつ、冷凍時、輸送時、保管時等において、貼り合わされたシール面が破れて内容物の露出が起こることもなく、必要なシール強度を保ち、かつ、電子レンジで加熱する際に、従来よりスムーズに蒸気を逃がす空気抜けを発生しやすく、破裂音もなく、包装袋が膨らむこともなく、消費者が安心して包装袋を加熱調理できるという利点を有するものである。本発明における直鎖状低密度ポリエチレンとは、実質的に長鎖分岐を持たない直鎖状低密度ポリエチレンであり、炭素数3以上のα-オレフィンとエチレンとの共重合体で、密度、0.910~0.940g/cm3位のものを使用することが好ましい。炭素数3以上のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン-1、メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1等を使用することができる。本発明における低密度ポリエチレンとは、実質的に長鎖分岐を持つ低密度ポリエチレンであり、密度、0.910~0.930g/cm3位を使用することが好ましい。」
イ 引用文献に記載された事項
以上より、引用文献3には、次の事項が記載されていると認められる。
「シーラント層6として、低密度ポリエチレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とのブレンド物から製膜されたフィルム層を使用すること。」
(4)引用文献4の記載事項
ア 当審で通知した拒絶の理由で引用した特開2014-223947号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
・「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0010】
一方、内袋および外袋にスリップ剤を添加することにより、内袋と外袋との間の滑り性を向上させることは可能であるが、スリップ剤が、内袋に収納される薬液に溶出され、薬液がスリップ剤によって汚染されるという問題がある。」
・「【0051】
図5(a)に示す形態においては、内袋11は、内側に配置された内側層11Bと、中間層11Cと、外側に配置された外側層11Dと、を有しており、三層構造となっている。中間層11Cは、内側層11Bと外側層11Dとの間に配置されている。
【0052】
内側層11B、中間層11Cおよび外側層11Dは、いずれも合成樹脂製となっており、例えば、低コストで柔軟性のあるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン材料を用いることができる。とりわけ、各層11B、11C、11Dには、スリップ剤が添加されていないポリオレフィンを用いることが好適である。
・・・
【0054】
内側層11Bに用いる材料には、直鎖状低密度ポリエチレンまたは低密度ポリエチレンを用いることが好ましく、内袋11に収納される薬液3の種類に応じて選択されることが好ましい。また、内側層11Bの材料は、単独の材料で形成されてもよいが、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを混合させて形成されてもよい。後者の場合には、内側層11Bを容易に製膜することが可能となる。」
・「【0065】
図5(b)に示す形態においては、外袋12は、内側に配置された内側層12Bと、中間層12Cと、外側に配置された外側層12Dと、を有しており、三層構造となっている。中間層12Cは、内側層12Bと外側層12Dとの間に配置されている。外側層12Dは、薬液収納容器10が金属缶2内に配置された場合、金属缶2側に配置される。
【0066】
内側層12Bは、内袋11に対するヒートシール性を有していることが好ましく、例えば、PE、PP等のポリオレフィンにより形成されていることが好ましい。とりわけ、内側層12Bには、スリップ剤が添加されていないポリオレフィンを用いることが好適である。」
・「【0087】
・・・
また、上述したように内側面12Eの算術平均粗さRaを、0.1μm以上とすることにより、製袋加工時にしわが形成されることを防止し、製袋加工性を大きく向上させることができる。さらに、外袋12にスリップ剤を添加することなく、内袋11と外袋12との間の滑り性をより一層向上させることができる。このため、内袋11が不意に破損して薬液3が内袋11から漏れ出した場合であっても、この薬液3に、スリップ剤が溶出されて薬液3が汚染されることを回避できる。」
・「【0098】
(変形例2)
・・・
【0108】
また、上述した本実施の形態においては、外袋12の内側層12Bは、スリップ剤が添加されていないポリオレフィンを用いている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、スリップ剤が添加された材料を用いてもよい。この場合においても、薬液3は内袋11に収納されるため、薬液3にスリップ剤が溶出することを防止できるとともに、内袋11と外袋12との間の滑り性を向上させることができる。」
・「【図5】
[図:0001426226000002.jpg]
」
イ 引用文献に記載された事項
以上より、引用文献4には、次の事項(以下「引用文献4記載事項1」等という。)が記載されていると認められる。
(ア)[引用文献4記載事項1]
「内袋11の内側層11Bの材料は、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを混合させて形成すること。」
(イ)[引用文献4記載事項2]
「スリップ剤による汚染を防止するため、内袋11、外袋12の内側層11B、12Bには、スリップ剤が添加されていないポリオレフィンを用いること。」
(5)周知技術
上記(2)イ、(3)イ、(4)イ(ア)より、以下の事項は周知の事項である(以下「周知技術」という。)。
「シーラント層として、低密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンを混合したものを用いること。」
2 引用発明との対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
・引用発明の「外袋3」は、その機能、構造及び技術的意義を考慮して対比すると、本願発明の「第1の袋」に相当し、以下同様に、
「内袋2」は、「第2の袋」に、
「外袋用長尺フィルム60」は、「第1の包装材料」に、
「内袋用長尺フィルム50」は、「第2の包装材料」に、
「二重袋1」は、「輸送用袋」にそれぞれ相当する。
・引用発明の二重袋1は、「内袋2と外袋3とは接合されて」おらず、内袋2と外袋3の位置関係を踏まえると、引用発明の「内袋2」は、本願発明の「前記第1の袋内に配置され」るとともに、「前記第1の袋に固定されることなく前記第1の袋内に配置されて」いる「第2の袋」に相当する。
・引用発明の「外袋用長尺フィルム60」において、内面側に位置する「ポリエチレンフィルム(35μm;内面層)」は、本願発明の第1の包装材料における「シーラント層」に相当するとともに、引用発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/ナイロンフィルム(15μm)/ポリエチレン押出層(15μm)」は、本願発明の「樹脂基材層」に相当する。そして、引用発明の「外袋3を構成する外袋用長尺フィルム60」は、「ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/ナイロンフィルム(15μm)/ポリエチレン押出層(15μm)/ポリエチレンフィルム(35μm;内面層)」の順で積層されたものであるから、本願発明の「樹脂基材層とシーラント層とをこの順で有する積層材料であって、前記第1の袋の前記シーラント層が、前記第1の袋の内側に位置」する「前記第1の袋を構成する第1の包装材料」に相当する。
・引用発明の「内袋用長尺フィルム50」における「ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm;外面層)」及び「ポリエチレンフィルム(35μm)」は、それぞれ本願発明の「バリア層」及び第2の包装材料における「シーラント層」に相当する。そして、「内袋用長尺フィルム50」は、「ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm;外面層)/ナイロンフィルム(15μm)/ポリエチレン押出層(15μm)/ポリエチレンフィルム(35μm)」の積層構成からなり、「ポリエチレンテレフタレートフィルム」が外面層であることから、「ポリエチレンフィルム(35μm)」は内面層といえる。ゆえに、引用発明の「内袋2を構成する内袋用長尺フィルム50」は、本願発明の「バリア層と、前記第2の袋の内側に位置するシーラント層とを含」む、「前記第2の袋を構成する第2の包装材料」に相当する。
・引用発明の「内袋用長尺フィルム50」の「ポリエチレンフィルム(35μm)」と、本願発明の「前記第2の袋の前記シーラント層は、低密度ポリエチレン(LDPE)とリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)とを含む単層構造であ」るとは、「前記第2の袋の前記シーラント層は、ポリエチレンの単層構造であ」る限りで一致する。
(2)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「輸送用袋であって、
第1の袋と、
前記第1の袋内に配置される第2の袋と
を備え、
前記第2の袋は、前記第1の袋に固定されることなく前記第1の袋内に配置されており、
前記第1の袋を構成する第1の包装材料は、樹脂基材層とシーラント層とをこの順で有する積層材料であって、前記第1の袋の前記シーラント層が、前記第1の袋の内側に位置し、
前記第2の袋を構成する第2の包装材料が、バリア層と、前記第2の袋の内側に位置するシーラント層とを含み、
前記第2の袋の前記シーラント層は、ポリエチレンの単層構造である、
輸送用袋。」
[相違点1]輸送用袋に関し、本願発明は「シリコン材料の輸送用袋」であるのに対し、引用発明は「シリコンウェハー等の電子製品用包装袋」である点。
[相違点2]第2の袋のシーラント層に関し、本願発明は「低密度ポリエチレン(LDPE)とリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)とを含む」のに対し、引用発明は「ポリエチレンフィルム(35μm)」である点。
[相違点3]シーラント層に関し、本願発明は「前記第1の袋の前記シーラント層及び前記第2の袋の前記シーラント層には、スリップ剤が実質的に添加されていない」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。
3 判断
以下、上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用発明は「シリコンウェハー等の電子製品」を包装、搬送するものであり、シリコンウェハーを搬送することが想定されているものであるから、引用発明をシリコン材料の輸送用袋とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点2について
包装袋の分野において、シーラント層に、低密度ポリエチレン(LDPE)とリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)とを含む単層構造からなるものを用いることは上記1(5)に示すように周知技術である。
そうすると、引用発明の内袋2の内面層である「ポリエチレンフィルム(35μm)」において、該周知技術を採用することは、当業者であれば容易に想到することである。
(3)相違点3について
「シリコンウェハー等の電子製品」を包装、搬送する引用発明の二重袋1において、内容物であるシリコンウェハー等を汚染させないようにすることは、当業者であれば当然認識している課題であり、引用文献4記載事項2のように、内袋2の内面層にスリップ剤が添加されていないポリオレフィンを用いるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
また、引用文献4記載事項2では、内容物と接する内袋11だけでなく、内容物と直接接しない外袋12の内側層12Bにもスリップ剤が添加されていないポリオレフィンを用いていることから、引用発明において、外袋3の内面層にもスリップ剤が添加されていないポリオレフィンを用いるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
(4)相違点についてのまとめ
これらの各相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものであり、格別顕著なものということはできない。
よって、本願発明の上記相違点に係る構成は、引用発明、引用文献4記載事項2及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
(5)請求人の主張について
請求人は令和7年5月27日提出の意見書(以下「意見書」という。)において、以下の主張をしている。
「引用文献4には、外袋にスリップ剤が添加されていないポリオレフィンを用いてもよいし、スリップ剤が添加された材料を用いてもよいことが記載されています(段落【0108】参照)。引用文献4における外袋にスリップ剤が添加されていないポリオレフィンを用いることの効果としては、「内袋11が不意に破損して薬液3が内袋11から漏れ出した場合であっても、この薬液3に、スリップ剤が溶出されて薬液3が汚染されることを回避できる」と記載されており(段落【0087】参照)、外袋にスリップ剤が添加されている場合であっても、「薬液3は内袋11に収納されるため、薬液3にスリップ剤が溶出することを防止できる」と記載されています(段落【0108】参照)。これらの記載から、引用文献4においては、薬液に直接的に接触することのない外袋からスリップ剤が薬液に溶出するという状況は基本的に発生しないという技術思想に基づき、外袋においてはスリップ剤が添加されている材料を用いることが許容されています。
本発明1においては、内容物が薬液ではなく、シリコン材料です。引用文献4に記載されているように、内袋である第2の袋が破損してしまったとしても、第1の袋のシーラント層が内容物であるシリコン材料に直接的に接触することはありません。引用文献4に接した当業者であれば、内容物であるシリコン材料が第1の袋のシーラント層に直接的に接触することがないのであれば、第1の袋のシーラント層にスリップ剤が添加されていない材料を用いる必要はないと考えるのが通常です。それよりはむしろ、引用文献4の段落【0009】及び段落【0010】に記載されているように、内容物の汚染等を気にせずに製袋加工の効率を考慮して、外袋にスリップ剤を添加して、内袋と外袋との間の滑り性を向上させようとするのが通常であります。」(意見書第3ページ第3行~第22行)
しかしながら、引用文献4に記載された事項は、明細書全体の記載や解決しようとする課題(段落【0010】)を踏まえると、内袋及び外袋にスリップ剤を使用することによる汚染を回避することを目的としており、発明の実施の形態(段落【0028】~【0092】)においても、内袋11及び外袋12にスリップ剤を添加されていないポリオレフィンを用いることが好適であることが一貫して記載されている。
一方、請求人が主張する段落【0108】の記載は、「変形例2」に関するものである。
引用文献4に接した当業者であれば、まずは引用文献4の課題等を踏まえ、発明の実施の形態に記載された内袋11及び外袋12にスリップ剤が添加されていないポリオレフィンを用いることを想到するといえ、変形例2としてスリップ剤が添加されている場合の記載に基づいて、外袋12にスリップ剤を添加して滑り性を向上させようとするのが通常であるとの請求人の主張を採用することはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-010014