2023-017431
バルブ-プラグアセンブリを備えたサンプル収集システム
- 審判番号
- 2023-017431
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-575219外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年10月13日
- 審決日
- 2025年02月17日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】スペクトラム・ソリューションズ・エルエルシー
- 【請求人代理人】瀧野 文雄
- 【請求人代理人】津田 俊明
- 【請求人代理人】福田 康弘
- 分類
- P18 .113-Z (G01N) / P18 .121-Z (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第4号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第3号、特許法第17条の2第3項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 22項目
第1.手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は、2020年(令和2年)6月20日を国際出願日とする特許出願である。優先権主張及び出願後の手続の概要は、以下のとおりである。
[優先権主張外国庁受理]
2019年(令和元年)6月20日(以下「優先日」という。) 米国
2020年(令和2年)6月19日 米国
[手続概要]
・令和5年 1月27日付け:拒絶理由通知
・ 同年 4月14日:意見書提出
・ 同日:手続補正書提出
(以下、この手続補正書による手続補正を「査定前補正」という。)
・ 同年 6月 1日付け:拒絶査定
・ 同年10月13日:審判請求書提出、及び
手続補正書提出
(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
・令和6年 3月 7日:上申書提出
(以下、当該上申書については単に「上申書」という。)
第2.本件補正について
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲の記載
査定前補正により補正された特許請求の範囲の請求項17、(以下「査定時請求項17」ということがある。)の記載は、以下のとおりである(各構成単位冒頭の「pQA」などは当審で付した分説番号であり、後記において、前記各構成単位について前記分説番号を用い「構成pA」などということがある。以下、他の発明についても同様。)。
[査定時請求項17]
「【請求項17】pQA 生体サンプルをサンプル収集チャンバ内に受けるよう構成された開口を有する当該サンプル収集チャンバを備えたサンプル収集容器と、pQB1 シーリングキャップと、を備えた、生体サンプルを収集及び保存するためのキットであって、pQB2 前記シーリングキャップは、続きを表示(全14行)一定量のサンプル保存薬を貯蔵する薬剤チャンバと、pQB3 閉弁配置に位置決めされ前記シーリングキャップに結合された選択的に可動なバルブであって、前記サンプル収集チャンバに関連付けられる選択的に可動なバルブと、を備えており、pQB4 前記選択的に可動なバルブは、流体通流部を形成し、ヘッド部材を有するコアと、前記コアの前記ヘッド部材に関連付けられたカラーと、を備えており、pQC 前記カラーは、前記ヘッド部材との間に流体密シールを形成し、前記バルブが閉弁配置にあるときに前記流体連通部を塞いで、前記流体通流部は前記薬剤チャンバ流体連通せず、pQD 前記選択的に可動なバルブが開弁配置に移行して前記コアの前記流体通流部が前記カラーによって塞がれなくなって前記薬剤チャンバと流体連通するとき、前記流体通流部を介して前記薬剤チャンバから前記サンプル収集容器への流体連通が可能になって、前記サンプル保存薬が前記薬剤チャンバから前記コアの前記流体通流部を通って前記サンプル収集容器内へ通過することができることを特徴とするpE キット。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により特許請求の範囲の請求項17(以下「本件請求項17」ということがある。)の記載は以下のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。
また、同特許請求の範囲における、独立請求項である請求項1・19の記載についても合わせて以下に示す(同様に、以下それぞれ「本件請求項1」、「本件請求項19」ということがある。また、本件請求項1・17・19に記載された発明を以下それぞれ本件発明1・本件発明17・本件発明19という。)。
[本件請求項17]
「【請求項17】QA 生体サンプルをサンプル収集チャンバ内に受けるよう構成された開口を有する当該サンプル収集チャンバを備えたサンプル収集容器と、QB1 シーリングキャップと、を備えた、生体サンプルを収集及び保存するためのキットであって、続きを表示(全16行)QB2 前記シーリングキャップは、一定量のサンプル保存薬を貯蔵する薬剤チャンバと、QB3 閉弁配置に位置決めされ前記シーリングキャップに結合された選択的に可動なバルブであって、前記サンプル収集チャンバに関連付けられる選択的に可動なバルブと、を備えており、QB4 前記選択的に可動なバルブは、流体通流部を形成し、ヘッド部材を有するコアと、前記コアの前記ヘッド部材に関連付けられたカラーと、を備えており、QC 前記カラーは、前記コアの前記ヘッド部材との間に流体密シールを形成し、前記バルブが閉弁配置にあるときに前記カラーは前記流体通流部を塞いで、前記流体通流部は前記薬剤チャンバと流体連通せず、QD 前記選択的に可動なバルブが開弁配置に移行したとき、前記コアの前記流体通流部が前記カラーによって塞がれなくなって前記流体通流部が前記薬剤チャンバと流体連通し、前記流体通流部を介して前記薬剤チャンバから前記サンプル収集容器への流体連通が提供され、前記サンプル保存薬が前記薬剤チャンバから前記コアの前記流体通流部を通って前記サンプル収集容器内へ通過することができることを特徴とするQE キット。」
[本件請求項1]
「 【請求項1】AA 生体サンプルを受けるための開口を有するサンプル収集容器と、AB31 前記サンプル収集容器の前記開口に少なくとも部分的に関連付けられるコアと、AB32 前記コアにより画定された流体通流部と、続きを表示(全15行)AB33 当該コアの周囲に配置されたカラーと、を備えた、AB 選択的に可動なバルブと、AB34 ただし、前記コアはフランジを有し、前記コアの前記フランジは前記サンプル収集容器の前記開口と当接するように構成されており、AB1 前記カラーに結合されたシーリングキャップであって、AB2 一定量のサンプル保存薬を貯蔵するための薬剤チャンバを備えており、AB5 前記サンプル収集容器と接続して当該サンプル収集容器との間に流体密接続を形成するシーリングキャップと、を備えた生体サンプル収集システムであって、AC 前記バルブが閉弁配置となっているとき、前記流体通流部が前記カラーによって塞がれて前記薬剤チャンバと流体連通せず、AD0 前記シーリングキャップが前記サンプル収集容器と接続されることにより、前記コアの前記フランジが前記サンプル収集容器の前記開口と当接して前記コアが前記シーリングキャップの前記薬剤チャンバ内に移動することで、前記カラーに対して相対的に前記コアの物理的な再配置が行われて、AD 前記バルブが、前記コアの前記流体通流部が前記薬剤チャンバとの流体連通に移行して前記薬剤チャンバからサンプル保存薬が前記コアの前記流体通流部を通って前記サンプル収集容器内へ流れることができる開弁配置になることを特徴とするAE 生体サンプル収集システム。」
[本件請求項19]
「 【請求項19】SA1 分離可能なツーピース型サンプル収集システムであって、SA2 生体サンプルを受けるための開口を有するサンプル収集容器を備えた第1のピースと、SB1 シーリングキャップを備えた第2のピースと、続きを表示(全19行)を備えており、SB2 前記シーリングキャップは内側に薬剤チャンバを配すると共に、SB3 選択的に可動なバルブに結合されており、SB4 前記選択的に可動なバルブは、前記シーリングキャップの内側部分に結合されたカラーと、コアと、を備えており、SB5 前記コアは、前記選択的に可動なバルブが閉弁配置にあるときに前記カラーとの間に流体密接続を形成するヘッド部材と、SB6 前記ヘッド部材とは反対側のフランジであって、前記サンプル収集容器の前記開口から前記コアが横切ることを阻止する寸法及び形状のフランジと、を備えており、SB7 前記コアは1つ又は複数の流体通流部を形成し、SC 前記選択的に可動なバルブが閉弁配置にあるとき、前記コアに関連付けられた前記1つ又は複数の流体通流部は前記カラーによって塞がれ、SD 前記選択的に可動なバルブが開弁配置にあるとき、前記1つ又は複数の流体通流部は少なくとも部分的に前記カラーによって塞がれず、前記1つ又は複数の流体通流部は、前記選択的に可動なバルブが開弁配置にあるとき、前記シーリングキャップの前記薬剤チャンバ内に貯蔵されたサンプル保存薬を前記薬剤チャンバから前記1つ又は複数の流体通流部内を通過させて前記サンプル収集容器内へ流すことを特徴とするSE サンプル収集システム。」
2 補正の適否について
請求項17に係る上記本件補正は、下記(1)~(3)に詳説するとおり、誤記の訂正、及び明りよう(以下、特許法第17条の2第5項第4号にける「明りょう」は「明瞭」と記載する。)でない記載の釈明を目的とするものであると認める。
また、下記(3)に詳説するとおり、当該目的に照らし、請求項17に係る本件補正は、新規事項を追加するものではない。
よって、本件補正のうち請求項17に係る補正は、特許法第17条の2第5項第3号又は同第4号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反しない。
したがって、請求項17に係る本件補正は適法になされたものである。
(1)誤記の訂正
ア 構成pQCの「薬剤チャンバ流体連通せず」を構成QCにおいて「薬剤チャンバと流体連通せず」と変更した補正は、助詞「と」の脱落が明らかであった構成pQCの前記記載に対し該脱落した助詞「と」を補充するものであり、誤記の訂正を目的とする補正であるといえる。
イ 構成pQCの「前記ヘッド部材」を構成QCで「前記コアの前記ヘッド部材」とした補正は、構成pQCの「前記ヘッド部材」なる要素が、構成pQB4で「前記コアの前記ヘッド部材」と表記している要素と同一の要素であることが文理上明らかであるところ、構成pQCでは異なる表記となっている点を正すべくなされたものであり、誤記の訂正を目的とする補正であるといえる。
(2)明瞭でない記載の釈明
ア 構成pQCの「前記流体連通部を塞いで」を構成QCで「前記カラーは、前記流体通流部を塞いで」と変更した補正は、「流体通流部」なる用語についての誤記の訂正のほか、流体通流部を塞ぐ主体が、構成pQC全体の文章構成上、構成pQC冒頭の「前記カラー」であると解されるものの、局所的にはそのことが不明瞭である点を改善しようとするものであると理解される。
イ 構成pQDの「前記薬剤チャンバと流体連通」を本件補正により構成QDで「前記流体通流部が前記薬剤チャンバと流体連通」と変更した補正は、薬剤チャンバと流体連通する対象が、構成pQD全体の文章構成上、前段の「流体通流部」であると解されるものの、局所的にはそのことが不明瞭である点を改善しようとするものであると理解される。
ウ 構成pQDにおける「・・・開弁配置に移行して・・・流体連通するとき、・・・流体連通が可能になって、・・・通過することができる」なる文章構成を本件補正により構成QDの「・・・開弁配置に移行したとき、流体連通し、・・・流体連通が提供され、・・・通過することができる」なる文章構成に変更した点については、以下のとおりである。
本件補正前の記載において、閉弁配置に係る構成pQCと開弁配置に係る構成pQDとが対照されていることや、構成pQA~pQDの特定事項が全て構成pQEの「キット」に対する特定事項であることを、全体の文章構成から読み取ることが可能であるものの、局所的には、例えば構成pQD冒頭から「・・・塞がれなくなって」までの場合分けが、構成pQCの「閉弁配置にあるとき」に属するとの誤解を生じ得て前記構成の対照が明瞭に把握できかねるおそれがある。
よって、前記変更は構成pQC~pQEに関し前記誤解を生じる不明瞭性を解消すべくなされたものと理解することができる。
エ 上記ア~ウの各補正事項は、請求項17に係る発明に新たな技術的事項を追加したり、発明特定事項を限定したり、新たな拒絶理由を生じさせたりするものではない。
オ また、拒絶査定において査定時請求項17に係る発明に対し新規性・進歩性欠如の拒絶理由が指摘されており、上記ア~ウの各補正事項は、本件補正後の本件請求項17に係る発明についても前記該各拒絶理由の判断にあたり、上記ア~ウで説示したとおり、発明特定事項の不明瞭さや誤解を回避することを目的とするものと位置づけられる一方で、上記エにも関連し、新規性欠如・進歩性欠如を解消する(ことを目的とするといえる)ものではないから、特許法第17条の2第5項第4号にいう「拒絶の理由に示す事項についてするもの」に該当しないとまでいえない・
(3)小括
以上のとおりであるから、本件補正による請求項17に対する補正は、明瞭でない記載の釈明及び誤記の訂正を目的とするものに該当すると認める。
また、上記(1)・(2)で説示したとおり、請求項17に係る本件補正は、査定時請求項17の記載全体からは正しく理解することが可能である事項について、局所的な不明瞭さを解消し誤解を避けるためにされたものであるから、当該補正の前後において技術的事項の内容について過不足や変更はなく、よって、新規事項を追加するものではない。
第3.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項17に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるか、又は該発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない、というものを含むものである。
第4.引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
本願の優先日前に公知となった文献である上記引用文献1には以下の事項が記載されている。各摘記に続く括弧内に当審訳を記す。また、当審訳の下線は引用発明認定において主として引用した箇所を示す。
・記載1-9(段落[0009])
「[図:0001425140000001.jpg][図:0001425140000002.jpg]」
(当審訳:「[0009] 本開示はまた、生物学的サンプルを収集し保存するための方法を含む。例示的な方法は、生物学的サンプルをサンプル採取容器で受け取ることと、シーリングキャップをサンプル採取容器に関連付け、シーリングキャップに関連付けられた選択的に可動なスリーブバルブを開放させ、それによりシーリングキャップ内に保持された試薬をサンプル採取チャンバー内に放出させることとを含む。いくつかの実施形態では、シーリングキャップとサンプル採取容器を関連付けることは、サンプル採取容器の外面に配置された接続部材とシーリングキャップの内面に配置された相補的接続部材とをねじ式に係合させることを含む。シーリングキャップとサンプル採取容器とのねじ係合による回転力は、選択的に可動なスリーブバルブの外側スリーブによって画定された開口部を通して、選択的に可動なスリーブバルブの内側容器を移動させ、内側容器の遠位部分によって画定された流体排出口を露出させる。言い換えれば、選択的に可動なスリーブバルブは開いている。いくつかの実施形態では、シーリングキャップをサンプル採取容器から少なくとも部分的に切り離すこと(例えば、シーリングキャップとサンプル採取容器をねじ結合するために使用される方向と反対の回転力を加えること)によって、内側容器が外側スリーブによって画定された開口部内に後退し、流体排出口を閉塞する。」)
・記載1-27(段落[0027])
「[図:0001425140000003.jpg]」
(当審訳:「[0027] 本開示の実施形態は、生物学的サンプルを収集および保存するためのシステム、キット、および/または方法の技術分野における1つまたは複数の問題に対処する。生物学的サンプルは、例えば、疾患の原因物質の同定または特徴付け(例えば、罹患した個体の治療のため、疫学的理由のためなど)、または被験体の核酸の遺伝子解析(例えば、遺伝的系統分類、遺伝子発現研究、ゲノム配列決定など)を含む、様々な理由のために収集され得、その内容物を評価し得る。前述の実施例内を含むほとんどの場合において、生物学的サンプルの忠実性が維持され、その証明的価値が維持されることが望まれる。しかしながら、分析のための生物学的サンプルの収集および調製は、従来、熟練した技術者または専門家による努力であった。これは、特に、被験者が地方にばらばらに居住し、生物学的サンプルを適切に収集し保存するために適切な技能を有する人員によるサービスを必要とする場合、生物学的サンプルを個々に収集し輸送することに関連する時間および費用を含む明白な理由により問題である。」)
・記載1-28(段落[0028])
「[図:0001425140000004.jpg][図:0001425140000005.jpg]」
(当審訳:「[0028]本開示の実施形態は、前述の問題の1つ以上に対処する、試料収集および保存システムおよびキット、ならびにこれらを使用する方法を提供する。例えば、本明細書において開示されるような、生物学的サンプルを収集および保存するためのシステム、キット、および方法を利用することにより、生物学的サンプルを収集および初期保存する際の専門的な人員の必要性が除去される。さらに、試料の収集および保存が単純化されるため、熟練していない使用者であっても、生物学的サンプルを収集および保存する際に誤る可能性が減少する。前述の例示的な例として、本明細書に開示される生物学的サンプル収集キットは、少なくともツーピースサンプル収集および保存システムを含む。第1の部分には、サンプル収集バイアルまたは容器が含まれ、これは漏斗と着脱可能に関連付けられ得る。使用時、漏斗は、採取バイアルまたは容器のサンプル採取チャンバー内へのユーザーからの生物学的サンプルの受領を誘導する働きをする。漏斗はまた、使用者が採取バイアルに係合し、生物学的試料をサンプル採取チャンバーに堆積するのを容易にすることができる。必要量の生物学的試料を注入した後、使用者は漏斗(使用されている場合)を取り外し、ツーピース試料保存システムの第2部分(例えば、試薬チャンバーに関連するシーリングキャップ)を採取バイアルに関連付けることができる。試薬チャンバーにはあらかじめ所定量のサンプル保存試薬が充填されており、シーリングキャップが引き下げられ、受け取った生物学的サンプルがサンプル採取チャンバー内に密封されると、試薬チャンバーからサンプル採取チャンバー内に試薬が放出され、受け取った生物学的サンプルと混合され、保存される。」)
・記載1-32(段落[0032])
「[図:0001425140000006.jpg]」
(当審訳:「[0032] 本明細書で使用される場合、生物学的サンプルの「証明的成分」とは、一般に、生物学的サンプルから単離され得る任意のタンパク質、核酸、表面部分、または他の化合物を指す。好ましくは、証明成分は核酸、より好ましくはDNAであるか、または核酸を含む。好ましい実施形態では、生物学的サンプルは、唾液であるか、または唾液を含み、この唾液は、推定上、使用者の遺伝物質(例えば、DNAおよびRNA)の形態の好ましい証明成分を含む。」)
・記載1-33(段落[0033])
「[図:0001425140000007.jpg][図:0001425140000008.jpg]」
(当審訳:「[0033] 一実施形態では、生物学的サンプルは、マルチピースの自己完結型サンプル収集システムまたはキットの一部として、採取容器に収集され、保存され、保管される。システムまたはキットの第1の部分は採取容器を含み、第2の部分はサンプル採取漏斗を含み、この漏斗は採取容器とは別個に包装されてもよいし、採取容器に取り外し可能に連結されてもよく、第三の部分は、内側容器および外側スリーブからなる選択的に可動なスリーブバルブと、シーリングキャップ内に配置されたまたはシーリングキャップと一体化された試薬チャンバとを有するシーリングキャップを含む。シーリングキャップは、採取容器と連結し、選択的に可動なスリーブバルブを通して試料保存試薬を採取容器に分注し、その内容物を密封するように構成されている。」)
・記載1-34(段落[0034])
「[図:0001425140000009.jpg]」
(当審訳:「[0034] 例えば、図1は、生物学的サンプル収集システムまたはキット100を描いた三次元モデルの分解図である。システム100は、採取容器102と、任意選択で、採取容器102の上部と関連し、採取容器102のサンプル採取チャンバー103と流体連通する漏斗(図示せず)とを含む。生物学的試料採取システム100はまた、シーリングキャップ110内に配置された、またはシーリングキャップ110と一体化された試薬チャンバー111を有するシーリングキャップ110と関連付けられた内側容器106および外側スリーブ108からなる選択的に可動なスリーブバルブ104を含むことができる。シーリングキャップ110は、選択的に可動なスリーブバルブ104とともに、採取バイアル102の上端部分に適合するような大きさおよび形状にすることができ、サンプル採取チャンバー103の開口部を覆って密封する。」)
・記載1-38(段落[0038])
「[図:0001425140000010.jpg]」
(当審訳:「[0038] 一実施形態では、シーリングキャップ110は試薬チャンバー111内に一定量の試薬を受け入れ、図2の組み立てられた生物学的試料採取システム100Aの断面図に示すように、選択的に可動なスリーブバルブ104(閉じた構成)がシーリングキャップ110に関連付けられ、シーリングキャップ110内に試薬を密封する。内部容器106は、シーリングキャップ110にスナップ嵌め式に挿入され、流体密な接続を形成する。図示されているように、内部容器は保持リング114を含み、そこにシーリングキャップ110の内部側壁の突出部112が挿入され、内部容器106を安定化させる。一部の実施形態では、突出部112と保持リング114との間の相互作用により、シーリングキャップ110と内部容器106との間の流体密な接続が形成される。加えて、または代替的に、内側容器の上部カラー109が試薬チャンバー111内に延在し、干渉嵌合を介してそこに結合し、試薬チャンバー111の内部側壁と内側容器106の上部カラー109の外部側壁との間に流体密な接続を形成する。」)
・記載1-39(段落[0039])
「[図:0001425140000011.jpg][図:0001425140000012.jpg]」
(当審訳:「図2に描かれるように、内部容器106は試薬チャンバー111と流体連通する試薬保持チャンバ107を含む。内部容器106は、試薬チャンバー111からサンプル採取チャンバー103へ試薬が移動する流体ベント130を画定している。しかしながら、図2において、試薬チャンバー111内の試薬は、選択的に可動なスリーブバルブ104の閉鎖構成により、保持される。すなわち、図2に示されるように、流体排出口130は、選択的に可動なスリーブバルブ104の外側スリーブ108によって閉塞されている。外側スリーブ108の内部側壁122は、内側容器106が延びる開口部を画定し、外側スリーブ108の内部側壁122と内側容器106の外部側壁118との間の相互作用は、少なくとも流体排出口130において、および/またはその周辺において、流体密な接続を形成する。外側スリーブ108と内側容器106との間の流体密接続は、試薬チャンバー111内の試薬が試薬保持室107内を通過し、流体排出口130を通って外部に排出されるのを防ぐ。」)
・記載1-40(段落[0040])
「[図:0001425140000013.jpg]」
(当審訳:「[0040] 図2にも示されているように、外側スリーブ108はシーリングキャップ110とサンプル採取チャンバー103の開口部とを結合している。外側スリーブ108のガイド部材120は、外側スリーブ108の本体から離れて突出し、シーリングキャップ110の内面によって形成されたガイドチャネル116内に延在する。ガイド部材120は、いくつかの実施形態では、外側スリーブ108をシーリングキャップ110と関連付けた状態で保持する働きをする。外側スリーブ108はさらに、サンプル採取チャンバー103の内部側壁と結合する下部カラー132を含む。一部の実施形態では、下部カラー132は、干渉嵌合を介してサンプル採取チャンバー103と結合し、選択的に可動なスリーブバルブ104、シーリングキャップ110、およびサンプル採取容器102を安定化させる役割を果たすことができる。いくつかの実施形態では、外側スリーブ108とサンプル採取チャンバー103との間の干渉嵌合は液密嵌合である。」)
・記載1-41(段落[0041])
「[図:0001425140000014.jpg]」
(当審訳:「[0041]シーリングキャップ110とサンプル採取容器102との間の相補的なねじ山124、126が相互に係合し、シーリングキャップ110がサンプル採取容器102に向かって前進すると、サンプル採取容器102に結合している内側容器106も同様に前進する。図3に示すように、内側容器106は外側スリーブ108によって画定された開口部を通って押し出され、選択的に可動なスリーブバルブ104を開放構成に位置づける。図3に描かれた開放構成では、流体排出口130は外側スリーブ108の下端縁の下に位置し、現在は外側スリーブ108の下端縁によって遮られることはない。試薬チャンバー103内の試薬は、内部容器106の試薬保持室107を自由に通過し、流体排出口130を通り、サンプル採取チャンバー103に入ることができる。」)
・記載1-42(段落[0042])
「[図:0001425140000015.jpg]」
(当審訳:「[0042] 図3に示す実施形態では、外側スリーブ108はサンプル採取容器102に対して相対的に移動しない。シーリングキャップ110および関連する内側容器106は、外側スリーブ108およびサンプル採取容器102に対して相対的に前進する。いくつかの実施形態では、また図3に示されるように、下部カラー132の上方にある外側スリーブ108の本体は、下部カラー132よりも大きな直径を有し、この大きな直径の本体は、サンプル採取チャンバー103の開口部内に収まらない。その代わりに、サンプル採取チャンバー103の開口部を画定する上縁に突き当たり、妨げられる。このため、外側スリーブ108は、内側容器106および溶液キャップ110とともにサンプル採取容器102に向かって前進することができない。外側スリーブ108の前進を妨げる抵抗力は、内側容器106 と外側スリーブ108との間の摩擦力よりも大きく、溶液キャップ110 をサンプル採取容器102に関連付けるために溶液キャップ110に加えられるトルク(または他の力)は、内側容器106と外側スリーブ108との間の摩擦力よりも大きい。従って、選択的に可動なスリーブバルブ104は、内側容器106が外側スリーブ108を貫通して前進し、流体排出口130(図3に示すように)を露出するような構造変化を起こす。」)
・記載1-43(段落[0043])
「[図:0001425140000016.jpg]」
(当審訳:「図2および図3に示すように、ガイド部材120は、溶液キャップ110がサンプル採取容器102にねじ込み式に固定されるにつれて、ガイドチャネル116に沿って移動する。」)
・記載1-48(段落[0048])
「[図:0001425140000017.jpg]」
(当審訳:「[0048] 内側容器106はさらに、外側スリーブ108の開口部134内に適合するようなサイズおよび形状を有するテーパー状の外側側壁118を含む。図示されているように、外側の側壁118は、第一の直径d1から第二の直径d2までテーパーをつけることができ、ここでd1>d2である。)
・記載1-64(段落[0064])
「[図:0001425140000018.jpg]」
(当審訳:「[0064] 例示的な使用法では、サンプル採取容器202は、サンプル採取容器202の開口部からサンプル採取容器202内へ生物学的サンプルを受け取るために使用される(例えば、サンプル採取容器202に一時的に取り付けられたオプションの漏斗を通して唾液を受け取る)。生物学的サンプルがサンプル採取容器202内に受け取られた後、使用者は、スリーブバルブ204がサンプル採取容器202の開口部に向いている状態で、溶液キャップ110をサンプル採取容器202の上に置き、スリーブバルブ204をサンプル採取容器202の開口部内に進めることができる。スリーブバルブ204がサンプル採取容器202の開口部を通って前進すると、外側スリーブ208の下部カラー内に形成された戻り止め207が、サンプル採取容器202の内側側壁203上に突出した保持リング205と機械的に係合することができる。このリングと戻り止めの係合により、スリーブ204がサンプル採取容器202内へさらに押し込まれるのを防ぐことができるが、いくつかの変形例では、下部カラー上方の外側スリーブ208の本体211がサンプル採取容器202の上部リム213に突き当たり、それによりスリーブ204がサンプル採取容器202内へさらに押し込まれるのを防ぐことができる。)
・記載1-図1(図1)
「[図:0001425140000019.jpg]」
・記載1-図2(図2)
「[図:0001425140000020.jpg]」
・記載1-図3(図3)
「[図:0001425140000021.jpg]2 引用文献1の図2から看取できる事項引用文献1の図2からは、図中各要素の名称について上記記載1-38等を参照すれば、下記の事項(以下「看取事項1」という。)を読み取ることができる。続きを表示(全25行)「シーリングキャップ110をサンプル採取容器102に取り付けた状態において、内側容器106は、シーリングキャップ110側である上部に上部カラー109を、その下方に隣接して内側容器106側方へ突出した保持リング114を、その下方の内側容器106下部外側面に外部側壁118を、それぞれ有すること。」3 引用文献1に記載された発明上記1,2から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。ここで、各構成単位末尾括弧内には、主たる認定の根拠とした記載箇所を段落番号等で示す。「a ユーザーからの唾液等の生物学的サンプルを開口部から受け取るサンプル採取容器102であって、([0028]・[0032]・[0033]・[0034]・[0064])b1 シーリングキャップ110と、を備えた、唾液などの生物学的サンプルを収集及び保存するためのシステム又はキットであって、([0027]・[0032]~[0034])b2 前記シーリングキャップ110は、内部に所定量のサンプル保存試薬が充填されている試薬チャンバ-111と、([0028]・[0034]・[0038])b31 選択的に可動なスリーブバルブ104を備え、([0034])b32 前記可動なスリーブバルブ104は、流体排出口130を備える内側容器106、及び、([0034]・[0038])開口部を有する外側スリーブ106であって、該開口部を通して内側容器106が移動する、外側スリーブ108を備え、([0009]・[0034])」b41 前記可動なスリーブバルブ104の内側容器106は、シーリングキャップ110をサンプル採取容器102に取り付けた状態において、シーリングキャップ110側である上部に上部カラー109を、その下方に隣接して内側容器106側方へ突出した保持リング114を、その下方の内側容器106下部外側面に外部側壁118を有し、([0038]、図2看取事項)b42 前記可動なスリーブバルブ104の外側スリーブ108は、シーリングキャップ110と、サンプル採取容器102のサンプル採取チャンバー103の開口部とを結合するものであり、([0040])b43 内側容器106は、その下部外表面の外部側壁118の上方に設けられた、内側容器106側方へ突出した保持リング114において、シーリングキャップ110の内部側壁の突出部112が挿入されるスナップ嵌め込みがなされて安定化されるものであり、([0038]、図2看取事項)b44 シーリングキャップ110をサンプル採取容器102に取り付ける際には、シーリングキャップ110はサンプル採取容器102に対し、ねじ込み式に固定されるものであり、([0009]・[0043])c1 前記内側容器106は、外側スリーブ108の開口134内に嵌合する大きさと形状を有するテーパ状の外側側壁118を備え、[0048])c2 外側スリーブ108の内側側壁122と内側容器106の外側側壁118との間の相互作用は、少なくとも流体排出口130及びその周辺において、流体密な接続を形成するものであり、([0039])c3 外側スリーブ106は、閉鎖構成において、内側容器106の流体排出口130を閉塞しており、シーリングキャップ110の試薬チャンバー111内の試薬が流体排出口130を通って外部に排出されるのを防ぎ、([0039])d シーリングキャップ110がサンプル採取容器102に対しねじ込み式に固定されることで、内側容器106は外側スリーブ108に対して相対的に前進し、内側容器106の流体排出口130を露出するような構造変化を起こし、可動なスリーブバルブ104を開放構成に位置づけ、([0042]・[0043])流体排出口130が外側スリーブ108の下端縁の下に位置して外側スリーブ108によって遮られず、試薬チャンバ111の試薬が内側容器106の試薬保持室107を自由に通過し、流体排出口130を通りサンプル採取容器102のサンプル採取チャンバー103に入ることができるようになる、([0041]~[0043])e 唾液などの生物学的サンプルを収集及び保存するためのシステム又はキット。([0027]・[0032])」
第5.対比
1 本件発明17と引用発明との対比
本件発明17と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
(1)構成aの「ユーザーからの唾液等の生物学的サンプル」、「サンプル採取容器102」、「開口部」はそれぞれ、構成QAの「生体サンプル」、「サンプル収集チャンバを備えたサンプル収集容器」、「開口」に相当する。
よって、引用発明は構成QAに相当する構成を備える。
(2)構成b1の「シーリングキャップ110」、「唾液などの生物学的サンプル」、「唾液などの生物学的サンプルを収集及び保存するための」(構成e)「キット」はそれぞれ、構成QB1の「シーリングキャップ」、「生体サンプル」、「生体サンプルを収集及び保存するためのキット」に相当する。
よって、引用発明は構成QB1に相当する構成を備える。
(3)構成b2の「サンプル保存試薬」、「試薬チャンバ111」はそれぞれ、構成QB2の「サンプル保存薬」、「薬剤チャンバ」に相当する。
よって、引用発明は、構成QB2(「前記シーリング・・・薬剤チャンバと」を備える、旨の構成)に相当する構成を備える。
(4)構成b31の「可動なスリーブバルブ」は構成QB3の「可動なバルブ」に相当する。
「可動なスリーブバルブ」と「サンプル採取容器102」との関係性に関する構成b42の「前記可動なスリーブバルブ104の外側スリーブ108は、シーリングキャップ110と、サンプル採取容器102のサンプル採取チャンバー103の開口部とを結合する」なる特定事項は、構成QB3の「選択的に可動なバルブ」が「前記サンプル収集チャンバに関連付けられる」との関係性に相当するといえる。
構成b43の「内側容器106は、その下部外表面の外部側壁118の上方に設けられた、内側容器106側方へ突出した保持リング114において、シーリングキャップ110の内部側壁の突出部112が挿入されるスナップ嵌め込みがなされて安定化される」ことは、構成QB3の「選択的に可動なバルブ」が「前記シーリングキャップに結合され」ることに相当する。
構成c3の「閉鎖構成」は、「外側スリーブ106は、」「内側容器106の流体排出口130を閉塞しており、シーリングキャップ110の試薬チャンバー111内の試薬が流体排出口130を通って外部に排出されるのを防」いでいる状態を指すから、構成QB3の「閉弁配置」に相当する。
また、前記構成c3及び構成dの「シーリングキャップ110がサンプル採取容器102に対しねじ込み式に固定されることで、内側容器106は外側スリーブ108に対して相対的に前進し、内側容器106の流体排出口130を露出するような構造変化を起こし、可動なスリーブバルブ104を開放構成に位置づけ」ることは、合わせ読めば、シーリングキャップ110をサンプル採取容器110に固定する前の状態では「閉鎖構成」であるといえる。よって、引用発明は構成QB3の「閉弁配置に位置決めされ前記シーリングキャップに結合された選択的に可動なバルブ」すなわち「シーリングキャップ」単体では「閉弁配置に位置決めされ」る構成に相当する構成を備えるといえる。
以上から、引用発明は構成QB3に相当する構成を備える。
(5)構成b32で「可動なスリーブバルブ104」が備えるとする「流体排出口130」、該「流体排出口130」を備える「内側容器」、「外側スリーブ106」はそれぞれ、構成QB4の「流体通流部」、「コア」、「カラー」に相当する。
また、構成c2における「外側スリーブ108の内側側壁122と内側容器106の外側側壁118との間の相互作用は、少なくとも流体排出口130及びその周辺において、流体密な接続を形成する」なる特定事項において、「外側スリーブ108」と「内側容器106の外部側壁118」とが「流体密な接続を形成する」ことは、構成QB4における「コア」と「カラー」との「前記コア・・・に関連付けられたカラー」なる関係性に相当するといえ、該関係性に関与する構成c2の「外部側壁118」は、構成QB4の「ヘッド部」に相当するといえる。
以上から、引用発明は構成QB4に相当する構成を備えるといえる。
(6)構成c2の「外側スリーブ108内側側壁122と内側容器106の外側側壁118との間の相互作用は、少なくとも流体排出口130及びその周辺において、流体密な接続を形成する」ことは、構成QCの「前記カラーは、前記コアの前記ヘッド部材との間に流体密シールを形成」することに相当する。
構成c3の「外側スリーブ108は、閉鎖構成において、内側容器106の流体排出口130を閉塞」ことは、構成QCの「前記バルブが閉弁配置にあるときに前記カラーは前記流体通流部を塞」ぐことに相当する。
構成c2の「閉鎖構成において・・・シーリングキャップ110の試薬チャンバー111内の試薬が流体排出口130を通って外部に排出されるのを防」いでいることは、構成QCの「前記バルブが閉弁配置にあるときに前記カラーは前記流体通流部を塞いで、前記流体通流部は前記薬剤チャンバと流体連通せず」であることに相当する。
よって、引用発明は構成QCに相当する構成を備える。
(7)構成dの「可動なスリーブバルブ104を開放構成に位置づけ」ることは、構成QDの「前記選択的に可動なバルブが開弁配置に移行」することに相当する。
構成dにおいて「内側容器106は外側スリーブ108に対して相対的に前進し、内側容器106の流体排出口130を露出するよう」になって「流体排出口130が外側スリーブ108の下端縁の下に位置して外側スリーブ108によって遮られず、試薬チャンバ111の試薬が内側容器106の試薬保持室107を自由に通過し、流体排出口130を通りサンプル採取容器102のサンプル採取チャンバー103に入ることができるようになる」ことは、構成QDの「前記コアの前記流体通流部が前記カラーによって塞がれなくなって前記流体通流部が前記薬剤チャンバと流体連通」すること、「前記流体通流部を介して前記薬剤チャンバから前記サンプル収集容器への流体連通が提供され」ること、及び「前記サンプル保存薬が前記薬剤チャンバから前記コアの前記流体通流部を通って前記サンプル収集容器内へ通過することができる」ことに相当する。
以上のとおりであるから、引用発明は構成QDに相当する構成を備える。
(8)構成eの「唾液などの生物学的サンプルを収集及び保存するための」「キット」は、構成QEの「キット」に相当する。
2 一致点・相違点
上記1の対比のとおりであるから、本件発明17と引用発明との間に相違点は認められない。
第6.判断
1 本件発明17について
上記第5.で説示したとおり、本件発明17と引用文献に記載された発明との間に相違点は認められないから、本件発明17は引用文献1に記載された発明である。
また、両発明の間に相違点を認めるとしても微差であり、本件発明17は引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
2 上申書における請求人の主張について
請求人は上申書において、今後の審理においていずれかの請求項について肯定的な判断がなされた場合には、その判断に対応した手続を行う用意があり、今後の審理において上記のような手続を行う機会がほしい旨主張する。
しかし、拒絶査定において新規性・進歩性の欠如が指摘された本件請求項17及び19については、前記機会である審判請求時の補正において、減縮補正が行われておらず、そのうち本件請求項17について、上記1で説示したとおり、拒絶査定において示された拒絶の理由が維持されると判断されたものであって、経緯からみて、さらに拒絶理由を通知して補正を行う機会を与えるべき理由がない。
また、本件請求項1及び19について念のため検討しても、いずれも新規性及び進歩性があるとはいえないことは、下記に示すとおりである。
2-1 本件発明1について
(1)本件発明1と引用発明との対比
上記第5.1における対比を踏まえると、本件発明1と引用発明とは、閉弁配置から開弁配置に移行する機構・機序として、本件発明1が構成AD0に係る構成を備えるのに対し、引用発明がそのような構成を備えない点で相違し(以下「相違点1」という。)、その余の構成において一致する。
(2)相違点1について
生物学的サンプルを収集及び保存するためのシステム又はキットにおいて、バルブにおけるコア及びカラーとサンプル収集容器との当接関係及びそれに伴う、閉弁配置から開弁配置への移行におけるサンプル収集容器に対する静止要素を、引用発明とは逆にして、シーリングキャップのサンプル収集容器へのねじ込みに伴い、コアが当接要素(フランジ)によってサンプル収集容器開口に当接して静止し、カラーが該静止したコアに対し前記ねじ込みに伴ってサンプル収集容器に向けて偏位することで、開弁配置に移行するようにすることは、例えば本件国際出願に対し欧州特許庁がサプリメンタリー・サーチレポートにおいて提示した国際公開第2015/112496号(以下「参考文献1」という。)及びその日本語ファミリー文献である特表2017/507326号公報(以下「参考文献1jという。)(いずれも本件出願の優先日前に公知となった文献)の図52及び明細書における該図面の関連記載(日本語ファミリー文献の【0207】~【0217】)(下記摘記参照)に記載されたとおり、少なくとも公知の技術的事項である。
よって、引用発明において、バルブの機構及び該バルブと関連するシーリングキャップ及びサンプル収集容器の機構について参考文献1(1j)の機構を適用し相違点1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
<特表2017/507326号公報の記載事項>
・図52の記載
「[図:0001425140000022.jpg]」
・バルブが閉弁配置から開弁配置に至る機序に関する【0209】~【0217】の記載(抜粋)
「【0209】図52を参照すると、いくつかの実施形態では、自然に発現された体液の収集のための体液サンプル収集デバイス310は、概して、管の口316を閉鎖するように管314と係合可能なキャップ312を備えている。管314は、自然に発現された体液を受け取るためのサンプル収集空間318を少なくとも部分的に画定する。デバイス310(本実施形態ではキャップ312、または随意に、他の実施形態では管)は、収集されたサンプルと混合するための試薬を含むためのチャンバ320を備えている。キャップは、それによってユーザがキャップを操作する第1の本体322と、キャップ312を管314に固定するために管と回転可能に嵌合可能である第2の本体324とを備えている。第1の本体と第2の本体との間の連結(326で概略的に示される)は、(i)第2の本体を管に固定するように第2の本体の回転を可能にするためのトルクを第1の本体から第2の本体に伝達し、(ii)第2の本体が完全固定位置に到達した後に本体の間で滑りを可能にするために構成され得る。機構(328a、328b)は、少なくとも第2の本体が完全固定位置に到達した後に、第1の本体の手動回転に応答してチャンバが開放されることをもたらすように動作可能である。・・・【0217】種々の機構が、想定される。1つの形態では、チャンバ320は、閉鎖部328aによって閉鎖される開口を備え得る。閉鎖部は、第1の本体322と異なる第3の本体であり得るか、または第1の本体322と一体的であり得る。閉鎖部328aは、チャンバ320を開放するようにチャンバ320に対して回転可能であり得る。例えば、閉鎖部328aは、チャンバ320にねじ式で連結され得る。いくつかの実施形態では、チャンバ320は、第1の部材322とともに回転可能であり得る。機構328a、328bは、管314および/または第2の本体に対する回転に対抗して閉鎖部328aを拘束するように動作し得る。例えば、機構は、アバットメント328bを口316の中に備え得、アバットメント328は、閉鎖部328aの回転を遮断するように閉鎖部328aの突起に係合する。第1の本体322の回転は、チャンバ320を回転させ、それによって、チャンバ320と閉鎖部328aとの間の相対的回転を生成し、閉鎖部328aをチャンバ開口に対する開放状態に移動させ得る。」
(3)小括
上記(1)・(2)のとおりであるから、本件発明1は引用文献1に記載された発明及び公知の参考文献1(1j)に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、進歩性が欠如し、また、そのために独立特許要件も満たさない。そのため、仮に本件発明1について審理を行ったとしても、少なくとも構成AD0の加入に関し限定的減縮を伴う本件補正は、前記の独立特許要件不充足により却下されることとなり、当該構成D0を含まない本件補正前の請求項1に係る発明は拒絶査定及び上記1で説示したものと同様の理由によって、新規性・進歩性を欠くから、その審理の結果において、本件発明17について審理した上記1の判断により本願が拒絶されるべきものであるとの結果とかわりない。
2-2 本件発明19について
(1)本件発明19と引用発明との対比
ア 構成SB6について
(ア)引用発明の構成b41の「内側容器106の側方へ突出した保持リング114」は、フランジ構造をいうものと理解できるから、構成SB6の「フランジ」に相当する。
また、上記第5.1で説示したとおり引用発明の構成b41における内側容器106下方の「内側容器106下部外側面の外部側壁118」にあたる部分が構成SB6の「ヘッド部材」に相当する。
そして、構成b41によれば、前記「外部側壁118」は「内側容器106」の下方にある一方、「保持リング114」は該「外部側壁118」がその「下方」にある、つまり、「外部側壁118」に対し「保持リング114」はその上方にあるという関係にあるから、構成SB6における「ヘッド部材」に対し「フランジ」が「反対側」であるとの特定事項に相当するといえる。
(イ)a 構成SB6の「前記サンプル収集容器の前記開口から前記コアが横切ることを阻止する」については、どのような技術事項を特定しようとするものであるのか、発明の詳細な説明において特段の定義記載が見出せないことから、文字どおりの解釈により、前記サンプル収集容器の前記開口に対しコアが横方向に偏位しないことを意味するものと理解される。
b 引用発明の「保持リング118」は、構成b43において「内側容器106側方へ突出した保持リング114において、シーリングキャップ110の内部側壁の突出部112が挿入されるスナップ嵌め込みがなされて安定化される」と特定される。また、該「シーリングキャップ110」は構成b44において、「サンプル採取容器102に対し、ねじ込み式に固定される」と特定されるものである。
そうすると、本件発明19の「コア」に相当する引用発明の「内側容器106」は、「保持リング118」により「シーリングキャップ110」に「嵌め込み」・「安定化」すなわち固定され、該「シーリングキャップ」は本件発明19の「サンプル収集容器」に相当する引用発明の「サンプル採取容器102」に対し「固定」されるのであるから、「内側容器106」はその「保持リング118」を介して間接的に「サンプル採取容器102」の対し固定されているといえる。
よって、引用発明は構成SB6の「前記サンプル収集容器の前記開口から前記コアが横切ることを阻止する寸法及び形状のフランジ」を備えるとの構成に相当する構成を備えるといえる。
(ウ)上記(ア)・(イ)から、引用発明は構成SB6に相当する構成を備える。
イ 構成SB6以外の構成について
上記第5.1における対比を踏まえると、引用発明は本件発明19の上記構成SB6以外の構成についても、それらのすべてに相当する構成を備えるといえる。
ウ 上記ア・イのとおりであるから、本件発明19と引用文献に記載された発明との間に相違点は認められず、本件発明19は引用文献1に記載された発明である。
また、両発明の間に相違点を認めるとしても微差であり、本件発明19は引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
エ さらに、仮に、構成SB6について、本件発明1の構成B34と同様の技術的事項を特定する意図があるとしても、上記2-1において説示したとおりであるから、本件発明19は、
(2)小括
上記(1)のとおりであるから、本件発明19は引用文献1に記載された発明であり、又は、引用文献1に記載された発明及び公知の参考文献1(1j)に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であるから、本件発明19は新規性及び/又は進歩性が欠如している。
よって、仮に本件発明19について審理・判断したとしても、その審理の結果において、本件発明17について審理した上記1の判断により本願が拒絶されるべきものであるとする結果とかわりない。
3 審判請求書における請求人の主張について
(1)本件発明1について
ア 請求人の主張の概要
折りたたみ中(クリックで表示)
(ア)補正後の請求項1に記載の「コアと、前記コアにより画定された流体通流部と、・・・を備えた、選択的に可動なバルブ」との事項、及び「前記バルブが閉弁配置となっているとき、前記流体通流部が前記カラーによって塞がれて前記薬剤チャンバと流体連通せず」との事項は、引用文献1には記載も示唆もされていません。
(イ)引用文献1に記載のバルブの構成は補正後の請求項1に記載の構成とは全く異なるものであり、引用文献1には本願請求項1に記載の「前記コアの前記フランジが前記サンプル収集容器の前記開口と当接して前記コアが前記シーリングキャップの前記薬剤チャンバ内に移動することで、・・・前記バルブが、・・・開弁配置になる」との事項を示唆する記載があるとは認められません。
イ 請求人の主張について
上記ア(ア)の点に相当する構成を引用発明が備えることは上記第5.1において、構成QCに関し説示したとおりである。
また、上記ア(イ)の技術的事項が参考文献1(1j)に開示される公知技術であることは上記2-1(2)において説示したとおりである。
よって、請求人の上記アの主張は採用できない。
(2)本件発明17について
ア 請求人の主張の概要
「補正後の請求項1に係る発明は引用文献1に記載も示唆もされておらず、引用文献1に記載の発明に対して新規性及び進歩性を有します。このことは、補正後の請求項17に係る発明についても同様です。」
イ 請求人の主張について
本件発明17は、構成B34に対応する構成を備えない点で本件発明1とは異なる発明であるところ、上記請求人の主張はその点を看過本件発明1と発明特定事項が対応することを前提としたもので、特許請求の範囲の記載に基づく主張ではなく、失当である。
(3)本件発明19について
ア 請求人の主張の概要
折りたたみ中(クリックで表示)
「請求項19では、「コア」が「ヘッド部材」と、「前記ヘッド部材とは反対側のフランジであって、前記サンプル収集容器の前記開口から前記コアが横切ることを阻止する寸法及び形状のフランジ」とを備える旨が特定されています。それに対して、引用文献1に記載の「コア」は「内部容器106」とその構成要素である「薬剤保持チャンバ107」とを備えるものですが、このコアはサンプル収集容器の開口を自在に横切ることができるようになっています。このことは引用文献1の図2-3,7-9から明らかです。」
イ 請求人の主張について
構成SB6の「コア」が「ヘッド部材」と、「前記ヘッド部材とは反対側のフランジであって、前記サンプル収集容器の前記開口から前記コアが横切ることを阻止する寸法及び形状のフランジ」であるとの特定事項について、引用発明と相違しないことは、上記2-2(1)イで説示したとおりである。
また、仮に当該特定事項が本件請求項1の構成AB34と同様の構造を機能的に特定しようとするものであるとしても、想到容易であることは上記2-1(2)で説示したとおりである。
4 まとめ
(1)上記1において検討したように、本件発明17は、引用文献1に記載された発明であるか、又は引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第1項3号に該当し、または同第2項の規定により、特許を受けることができない。
(2)また、他の独立請求項に係る本件発明1・19について念のため検討しても、上記2で説示したとおり、仮に該両発明について審理したとしても、前者は特許法第29条第2項の規定により、後者は特許法第29条第1項3号に該当し、または同第2項の規定により、共に特許を受けることができないものであるから、その審理の結果において、本件発明17について審理した上記1の判断により本願が拒絶されるべきものであるとする結果とかわりない。
第7.むすび
以上のとおり、本件発明17は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
また、念のため本件発明1・19について検討しても、上述のとおり、本願が拒絶されるべきものであるとの判断の結果に変わりはない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-017431