特許拒絶査定不服審判
2023-016730
重量検出システム、重量検出装置、重量検出方法、コンピュータプログラム及び記録媒体
- 審判番号
- 2023-016730
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-147227
- 請求日
- 2023年10月03日
- 審決日
- 2024年11月27日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本電気株式会社
- 【請求人代理人】江上 達夫
- 審判長/審判官
- 審判長 中塚 直樹
- 審判官 小島 寛史
- 審判官 喜々津 徳胤
- 分類
- P18 .121-Z (G01G) / P18 .575-Z (G01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-147227「重量検出システム、重量検出装置、重量検出方法、コンピュータプログラム及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 2月25日出願公開、特開2021- 28584〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年8月9日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 3月27日付け:拒絶理由通知書
同年 5月30日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 7月 3日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月11日 :原査定の謄本の送達)
同年10月 3日 :審判請求書及び手続補正書の提出
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年10月3日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和5年10月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであって、次の(1)に示す本件補正前(令和5年5月30日にされた手続補正後をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
生産資材を保管する容器又は前記容器を支える支持部材の表面に取り付けられており、前記生産資材の重みによって生ずる前記容器又は前記支持部材の歪みを検出する検出手段と、
外部要因データを取得するデータ取得手段と、
前記検出手段で検出された歪み及び前記外部要因データに基づいて、前記生産資材の重量を算出する算出手段と
を備えることを特徴とする重量検出システム。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
生産資材を保管する容器又は前記容器を支える支持部材の表面に取り付けられており、前記生産資材の重みによって生ずる前記容器又は前記支持部材の歪みを検出する検出手段と、
湿度、雨量、積雪量、及び前記容器に積もった堆積物データの少なくとも1つを含む外部要因データを取得するデータ取得手段と、
前記検出手段で検出された歪み及び前記外部要因データに基づいて、前記生産資材の重量を算出する算出手段と
を備えることを特徴とする重量検出システム。」
2 本件補正の目的について
(1) 本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「外部要因データ」について、「湿度、雨量、積雪量、及び前記容器に積もった堆積物データの少なくとも1つを含む」ものに限定するものである。
(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) したがって、本件補正のうち請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件について
本件補正後の請求項1に係る補正は、特許法17条の2第5項2号を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明について
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に示した、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
ここで、本件補正発明の構成を便宜上次のように構成Aから構成Cまでと構成Xに分説するとともに、参考図として本願の図1及び図5に部材名を加筆したものを示す。
<本件補正発明の分説>
A 生産資材を保管する容器又は前記容器を支える支持部材の表面に取り付けられており、前記生産資材の重みによって生ずる前記容器又は前記支持部材の歪みを検出する検出手段と、
B 湿度、雨量、積雪量、及び前記容器に積もった堆積物データの少なくとも1つを含む外部要因データを取得するデータ取得手段と、
C 前記検出手段で検出された歪み及び前記外部要因データに基づいて、前記生産資材の重量を算出する算出手段と
X を備えることを特徴とする重量検出システム。
<参考図>
【図1】
[図:0001418868000001.jpg]
【図5】
[図:0001418868000002.jpg]
イ 課題・作用効果に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本件補正発明の技術上の意義の概略を理解するために、本願の願書に添付した明細書(以下「本願明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果に関連する記載等を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は当合議体による。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に保管されている生産資材の重量を検出する重量検出システム、重量検出装置、重量検出方法、コンピュータプログラム及び記録媒体の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとして、容器の内容物の残量を自動的に検出するものが知られている。例えば特許文献1及び2では、荷重に起因する歪みを用いることで、重量を検出する技術が開示されている。その他、本願発明に関連する先行技術文献として、特許文献3があげられる。
…(中略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1及び2に記載されている技術では、歪みを検出するセンサが容器又は容器の重みがかかる部材に内蔵されていることが要求される。このため、既存の容器にセンサを導入する際に大きな手間やコストが必要となってしまう。また、例えばセンサが故障した場合、センサだけを交換することが難しく、装置そのものを交換することが要求されてしまう。このように、特許文献1及び2に記載されている技術には、より好適に重量を検出するという点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、容器内に保管されている生産資材の重量を好適に検出することが可能な重量検出システム、重量検出装置、重量検出方法、コンピュータプログラム及び記録媒体を提供することを課題とする。」
「【0037】
本実施形態では更に、歪みを検出する歪みセンサ150が、タンク110及び支柱120の少なくとも一方の表面に取り付けられている。このため、重量検出システム1が適用されていない既存の設備(即ち、タンク110や支柱120を含む設備)に対して、新たに重量検出システム1を導入することが極めて容易である。具体的には、設備の外側から歪みセンサ150を取り付けるだけで済む。タンク110内の飼料の重量の検出には、例えばロードセル等の比較的大型の内蔵型の装置が用いられることが多いため、基本的にロードセル等を含む重量検出システムの後付けはできない構成となっているが、本実施形態に係る重量検出システム1は、その点において極めて有益な特長を有している。
【0038】
また、タンク110には飼料が保管されるため、その品質を担保するためにも、タンク110内に異物が存在している状況は好ましくない。タンク110の上面の蓋などにボルト等で歪みセンサを取り付けようとすると、タンク110にボルト留め用の穴を開けたり、留め具を利用する必要があるため、タンク110内の防湿性能が低下したり、多額の改造コストが発生することもある。しかしながら、タンク110及び支柱120の少なくとも一方の表面に歪みセンサ150を取り付けるだけで済めば、上記のようにタンク110の内部に別途部材を取り付ける必要がない。従って、上述した不都合の発生を好適に回避できる。
【0039】
なお、飼料を保管するタンク110は、約20年程度の耐用年数がある一方で、歪みセンサ150の耐用年数は通常それよりも短い。このため、重量検出システム1を長期間利用し続ける場合、適当なタイミングで歪みセンサ150を交換することが要求されるが、すでに説明したように、本実施形態に係る歪みセンサ150の交換は非常に容易である。」
「【0049】
続いて第2実施形態では、外部要因データ取得部315が外部要因データを取得する(ステップS151)。重量算出部320は、測定データ取得部310で取得された測定データ、及び外部要因データ取得部315で取得された外部要因データを用いて、タンク110内の飼料の重量を算出する(ステップS103)。重量の算出に外部要因データを用いることで、より正確に重量を検出することが可能となる。例えば、湿度が高い場合には、タンク110の表面に付着する水分が多く、湿度が低い場合にはタンク110の表面に付着する水分が少なくなる。この場合、外部要因データとして湿度を用いることによって、正確に飼料の重量を算出することが可能となる。」
(2) 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用され、本願の出願前に発行された文献である実願昭56-92638号(実開昭57-203334号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は、当合議体が付したもので、後記(イ)の引用発明の認定に直接用いる記載に付した。
a 明細書1頁4~8行
「2.実用新案登録請求の範囲
貯蔵槽を支持している構造体の荷重ひずみを起こす個所に抵抗線ひずみ計を取付け、その抵抗線ひずみ計を変換器を経て重量表示器に接続した貯蔵における粉粒体の重量測定装置。」
b 明細書1頁9行~2頁1行
「3.考案の詳細な説明
本考案は、サイロ・タンク等に貯えられているセメント・肥料・飼料・殻類などの粉粒体の貯蔵量を測る装置に関するものである。
従来この種の貯蔵量の測定は、レベル計によっていた。すなわち容量管理であった。
ところが、貯蔵物がセメントなどの微粉体の場合、容量変化および棚かき(アーチング)現象が起き易いため、容量管理では正確を欠くことが多かった。
本考案は、上記従来の測定装置が持つ問題点を解決した構造簡単で正確な測定ができる装置を提供することを目的とする。」
c 明細書2頁2行~3頁10行、図面
「図面に示す実施例について本考案装置の構造を説明する。1は、サイロあるいはタンク等の貯蔵槽で、柱・枠などによって組んだ構造体2によって支持されている。貯蔵槽1の底のホッパ部1Aに取出し用スクリューコンベア3を連接している。そして上記構造体2の柱2Aの1ないし数個所に抵抗線ひずみ計4を貼付け、抵抗線ひずみ計4を変換器5を経て重量表示器6および記録器7に接続している。
抵抗線ひずみ計4の貼付け位置は、荷重ひずみを起し易い所を選び、また抵抗線ひずみ計の構造や抵抗線の材料は、貼付けられる柱2Aの形状・材質によって決めるものである。
貯蔵槽1内の粉粒体の量が増減すると、それを支えている構造体2にかかる荷重の変化で抵抗線ひずみ計4がひずんでその電気抵抗値が変化し、その抵抗変化は荷重に比例するので、変換器5を介して表示器6に重量が電気的に表示される。また記録器7にその測定値が記録される。
本考案は、貯蔵槽における粉粒体の貯蔵量の測定を、従来のレベル計による容量管理に代えて、上記のように重量管理式にしたから、棚かき現象を起こし易いセメントその他の微粉体でも正確な貯蔵量の測定ができる。
そして貯蔵量の変化は、貯蔵槽1を支えている構造体2の荷重ひずみを起こす個所に貼付けた抵抗線ひずみ計4の抵抗値変化として検出して表示するようにした電気式であるから、重量測定装置の構造を小型化かつ簡単にすることができる。」
「(図面)
[図:0001418868000003.jpg]
」
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「サイロ・タンク等に貯えられているセメント・肥料・飼料・殻類などの粉粒体の貯蔵量を測る重量測定装置であって、(前記(ア)a,b)
サイロあるいはタンク等の貯蔵槽を支持している、柱・枠などによって組んだ構造体2の柱2Aの1ないし数個所に抵抗線ひずみ計4を貼付け、抵抗線ひずみ計4を変換器5を経て重量表示器6および記録器7に接続しているものであり、(前記(ア)c)
抵抗線ひずみ計4の貼付け位置は、荷重ひずみを起し易い所を選んでおり、(前記(ア)c)
貯蔵槽1内の粉粒体の量が増減すると、それを支えている構造体2にかかる荷重の変化で抵抗線ひずみ計4がひずんでその電気抵抗値が変化し、その抵抗変化は荷重に比例するので、変換器5を介して表示器6に重量が電気的に表示されるものである、(前記(ア)c)
重量測定装置。」
イ 引用文献6~7に記載された事項及び周知技術1の認定
(ア) 引用文献6の記載事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2015-40787号公報(以下「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体において付したものである。
a 【0031】~【0032】、【図1】
「【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る重量計測システム1の構成例を示すブロック図である。重量計測システム1は、計測装置10と、充電装置50とを備える。
計測装置10は、載置部11と、重量検出部13と、A/D変換回路15と、制御部17と、受電電極19と、充電回路21と、二次電池23と、記憶部25と、通信部27と、表示部29と、操作部31とを備える。
【0032】
載置部11には、重量計測の対象物である被測定物が載置される。載置部11上に被測定物が載置されると、被測定物の重量に応じた荷重が重量検出部13に加わる。
重量検出部13は、載置部11上に被測定物が載置されることで加えられた荷重を電気信号に変換して出力する荷重変換器である。例えば、重量検出部13は、加えられた荷重に応じて歪む起歪体と、該起歪体の歪みに応じたアナログ信号を出力するブリッジ回路を含む歪みゲージとを備える。以降、重量検出部13から出力される電気信号を重量検出信号と称する。A/D変換回路15は、重量検出部13から出力されたアナログ信号としての重量検出信号をデジタル信号に変換し、重量検出データを出力する。
制御部17は、当該計測装置10の各部を統括的に制御する。制御部17は、演算処理部17-1と、充電処理部17-2と、校正処理部17-3とを備える。演算処理部17-1は、重量検出データに基づいて、被測定物の重量値を算出する。充電処理部17-2は、充電装置50から供給された電力によって二次電池を充電するよう充電回路21を制御する。校正処理部17-3は、重量検出部13の校正処理を実行する。」
「【図1】
[図:0001418868000004.jpg]
」
b 【0042】、【図5】
「【0042】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る重量計測システム1は、充電時に、温度及び湿度を検出するセンサの校正を実行する。図5は、本発明の第2実施形態に係る重量計測システム1の構成を示すブロック図である。
第2実施形態に係る重量計測システム1は、計測装置10が温度センサ41及び湿度センサ45を備え、充電装置50が温度センサ61及び湿度センサ65を備える点で、これらのセンサを備えない第1実施形態の重量計測システム1と相違する。第2実施形態に係る計測装置10では、重量検出部13が備える起歪体の出力信号は温度及び湿度によって変化することを鑑み、温度センサ61の出力及び湿度センサ65の出力に基づいて、重量検出部13から出力される重量検出信号を補正する。さらに、第2実施形態に係る計測装置10では、二次電池23の充電の際に、充電装置50から送信されるデータに基づいて、温度センサ41及び湿度センサ45の校正を行う。なお、温度センサ及び湿度センサの出力に基づく重量検出信号の補正に係る処理は公知の技術であるので説明を省略し、ここでは温度センサ41及び湿度センサ45自体の校正に係る処理について説明する。
」
「【図5】
[図:0001418868000005.jpg]
」
(イ) 引用文献7の記載事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開昭60-117115号公報(以下「引用文献7」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体において付したものである。
a 2頁左下欄20行~右下欄15行
「産業上の利用分野
本発明は重量に依存して変化する信号を発生する測定値検出器を有し、ディジタル信号処理ユニットを有し、測定値検出器に作用する障害の影響を検出する装置(センサ)を有し、かつ障害の影響の結果として生ずる測定値検出器の誤差を補正する装置を有する電気秤に関する。
従来の技術
斯様な形式の秤は例えばドイツ連邦共和国特許公開第3213016号公報によって公知である。この場合とりわけ温度誤差の補正方法が記載されている。また相応する測定値検出器の湿度依存性または圧力依存性を補正するために湿度センサおよび圧力センサを設けることは、ドイツ連邦共和国特許公開第3106534号公報によって公知である。」
b 4頁左上欄19行~右上欄5行
「本発明の他の有利な実施例において、センサとして少なくとも1つの湿度センサを設けている。例えば湿度補正装置は接着されたストレンゲージを有する測定値検出器の場合に必要である。それは一般に接着剤が周囲の湿度に応じて多量の水蒸気を吸収しかつその特性が変化するからである。(後略)」
c 7頁右上欄6~18行
「例4:
ストレンゲージを貼付けたばね部材から成る測定値検出器において、温度センサと湿度センサとはばね部材の付近に設けられる。シフトレジスタはこれらの2つのセンサのデータの他に重量に依存して変化する測定値検出器の出力信号も受取る。記憶された温度値から先ず測定値検出器の温度誤差(例えば弾性係数の温度係数)が補正される。次には湿度の影響に対する重み係数が温度毎に異なるように与えられ、また第3にはクリープの補償のために、記憶された荷重値の重み係数が温度によって異なるように与えられる。」
(ウ) 周知技術1の認定
前記(ア)及び(イ)において示した摘記事項に例示されるように、次の技術事項は、本願の出願前に周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。
<周知技術1>
「歪ゲージを用いて検出対象の重量を測定する装置において、湿度センサを設けて、検出された湿度に基づいて重量測定値を補正すること。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点(「重量検出システム」)
引用発明の「重量測定装置」は、「抵抗線ひずみ計4」「変換器5」「重量表示器6」及び「記録器7」からなるシステムであるともいえるものであって、本件補正発明の「重量検出システム」に相当するから、本件補正発明と引用発明は、「重量検出システム」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aの観点(「検出手段」)
a 本件補正後の請求項2において、「前記生産資材は、飼料、肥料、又は農薬であることを特徴とする」と記載されていることからみても、本件補正発明の「生産資材」が「飼料」及び「肥料」を含むことは明らかである。したがって、引用発明の「セメント・肥料・飼料・殻類などの粉粒体」は、本件補正発明の「生産資材」に相当するといえる。
そうすると、引用発明の「セメント・肥料・飼料・殻類などの粉粒体」を「貯え[ている]」「サイロあるいはタンク等の貯蔵槽」は、本件補正発明の「生産資材を保管する容器」に相当する。
b また、引用発明の「サイロあるいはタンク等の貯蔵槽を支持している、柱・枠などによって組んだ構造体2」は、本件補正発明の「前記容器を支える支持部材」に相当する。
c 前記bを踏まえると、引用発明の「構造体2の柱2Aの1ないし数個所に」「貼付け[られた]」「抵抗線ひずみ計4」は、本件補正発明の「支持部材の表面に取り付けられて[いる]」「検出手段」に相当する。
d 引用発明は、「貯蔵槽1内の粉粒体の量が増減すると、それを支えている構造体2にかかる荷重の変化で抵抗線ひずみ計4がひずんでその電気抵抗値が変化[する]」ものであるところ、「サイロあるいはタンク等の貯蔵槽」は「セメント・肥料・飼料・殻類などの粉粒体」を「貯え[ている]」ものであるから、引用発明の「貯蔵槽1内の粉粒体」「を支えている構造体2にかかる荷重」は、本件補正発明の「前記生産資材の重み」に相当する。
また、引用発明においては、「抵抗線ひずみ計4の貼付け位置は、荷重ひずみを起し易い所を選んで[いる]」から、「抵抗線ひずみ計4」のひずみは、構造体2のひずみに起因するものであることが明らかである。
そうすると、引用発明の「貯蔵槽1内の粉粒体の量が増減すると、それを支えている構造体2にかかる荷重の変化で」「ひずんでその電気抵抗値が変化[する]」「抵抗線ひずみ計4」は、本件補正発明の「前記生産資材の重みによって生ずる」「前記支持部材の歪みを検出する検出手段」に相当する。
e 前記a~dの対比検討を総合すると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「生産資材を保管する容器又は前記容器を支える支持部材の表面に取り付けられており、前記生産資材の重みによって生ずる前記容器又は前記支持部材の歪みを検出する検出手段」を備える点。
(ウ) 構成Bの観点(「データ取得手段」)
本件補正発明においては、「湿度、雨量、積雪量、及び前記容器に積もった堆積物データの少なくとも1つを含む外部要因データを取得するデータ取得手段」を備えるのに対して、
引用発明においては、当該「データ取得手段」に相当する構成を有していない点において両者は相違する。
(エ) 構成Cの観点(「算出手段」)
a 本件補正発明の構成Cにおいては、「前記検出手段で検出された歪み及び前記外部要因データに基づいて、前記生産資材の重量を算出する算出手段」と特定されている。
b ここで、構成Cにおける「前記検出手段で検出された歪み」「に基づいて、前記生産資材の重量を算出する」にどのような態様のものまでが含まれるかについて検討する。
(a) この点に関連して、本願明細書の【0023】には、次の記載がある。なお、下線は当合議体において付した。
「【0023】
重量算出部320は、測定データ取得部310で取得された測定データを用いて、タンク110内の飼料の重量を算出する。なお、歪みの値から重量を算出する具体的な手法については、既存の手法を適宜採用することができるが、例えば歪みが大きいほど、飼料の重量は大きい値として算出される。このため、重量算出部320は、歪みと飼料の重量との相関関係を示す相関情報(例えば、関数、グラフ、マップ及びテーブルの少なくとも一つ)に基づいて、歪みの値から重量を算出してもよい。このような相関情報は、重量検出システム1の使用を開始する前に、タンク110に投入する試料の重量を変えながら歪みセンサ150の実際の出力値を取得することで作成されてもよい。(後略)」
(b)この記載によれば、構成Cの「生産資材の重量を算出」は、例えば関数などを用いて算出(計算)するものに限られず、例えばテーブルを用いて「検出手段で検出された歪み」を「生産資材の重量」に変換するものなど、歪みと重量との相関関係を示す何らかの相関情報に基づいて「生産資材の重量」を導出するものであれば足りると解される。
c 前記bの解釈に基づいて検討すると、引用発明は、「抵抗線ひずみ計4がひずんでその電気抵抗値が変化し、その抵抗変化は荷重に比例するので、変換器5を介して表示器6に重量が電気的に表示されるもの」であるところ、「抵抗線ひずみ計4」の「電気抵抗値」の「抵抗変化」は、「ひずみ」の量を表すから、引用発明の「変換器5」は、検出されたひずみの量を重量に変換するものといえる。
そして、「変換器5」において具体的な変換の手法は明らかではないが、抵抗変化(ひずみの量)と重量との相関関係を示す何らかの相関情報に基づいて変換していることは明らかであるから、引用発明の「変換器5」は、本件補正発明の「前記検出手段で検出された歪み」「に基づいて、前記生産資材の重量を算出する算出手段」に相当する構成を有するといえる。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、次の(a)に示す構成Cの観点での一致点において一致し、(b)に示す構成Cの観点での相違点において相違する。
(a) 構成Cの観点での一致点
「前記検出手段で検出された歪みに基づいて、前記生産資材の重量を算出する算出手段」を備える点。
(b) 構成Cの観点での相違点
本件補正発明においては、「前記生産資材の重量を算出する算出手段」が「前記検出手段で検出された歪み」及び「前記外部要因データ」に基づいて、前記生産資材の重量を算出するのに対して、
引用発明においては、生産資材の重量の算出は「外部要因データ」に基づいていない点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点1において相違する。
(ア) 一致点
「生産資材を保管する容器又は前記容器を支える支持部材の表面に取り付けられており、前記生産資材の重みによって生ずる前記容器又は前記支持部材の歪みを検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された歪みに基づいて、前記生産資材の重量を算出する算出手段と
を備える重量検出システム」である点。
(イ) 相違点1
本件補正発明においては、「湿度、雨量、積雪量、及び前記容器に積もった堆積物データの少なくとも1つを含む外部要因データを取得するデータ取得手段」を備え、「前記検出手段で検出された歪み」及び「前記外部要因データ」に基づいて、前記生産資材の重量を算出するのに対して、
引用発明においては、当該「データ取得手段」に相当する構成を有していない点。
(4) 判断
ア 相違点1についての判断
前記相違点1について検討する。
(ア) 前記(2)イ(ウ)において周知技術1として認定したとおり、次の技術事項は、本願の出願前に周知の技術である。
「歪ゲージを用いて検出対象の重量を測定する装置において、湿度センサを設けて、検出された湿度に基づいて重量測定値を補正すること。」
(イ) ここで、周知技術1の「湿度センサ」は、本件補正発明の「湿度、雨量、積雪量、及び前記容器に積もった堆積物データの少なくとも1つを含む外部要因データを取得するデータ取得手段」に相当する。
(ウ) そして、引用発明と周知技術1は、ひずみを計測する手段を用いて検出対象の重量を測定する装置に関する点で共通し、引用発明においても、周辺環境に応じて正確に重量を測定するという課題を当然に内在するから、引用発明に対して周知技術1を適用して、湿度センサ(データ取得手段)を設けるとともに、検出された湿度に基づいて重量測定値を補正するように、すなわち、抵抗線ひずみ計4(検出手段)で検出された抵抗変化(ひずみの量を表すもの)と湿度(外部要因データ)に基づいて、飼料などの粉粒体(生産資材)の重量を算出するように構成して、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 総合評価
前記アにおいて検討したとおり、相違点1は、格別のものではなく、引用発明において、相違点1に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 審判請求書における請求人の主張について
ア 審判請求書の主張内容
請求人は、審判請求書において、概略次の主張をしている。
本件補正発明では、保管されている生産資材の重量が、容器又は支持部材の歪み及び外部要因データに基づいて算出され、特に、本件補正発明における外部要因データは、「湿度、雨量、積雪量、及び前記容器に積もった堆積物データの少なくとも1つを含む」ものである。このようにすれば、湿度、雨量、積雪量、及び堆積物データの少なくとも1つを考慮して生産資材の重量が算出されるため、湿度、雨量、積雪量、及び堆積物データを考慮しない場合と比べると、より正確に生産資材の重量を算出することができる。例えば、本願明細書の【0049】に記載されているように、「湿度が高い場合には、タンク110の表面に付着する水分が多く、湿度が低い場合にはタンク110の表面に付着する水分が少なくなる。この場合、外部要因データとして湿度を用いることによって、正確に飼料の重量を算出することが可能となる。」という有益な技術的効果を得ることができる。
一方、各引用文献には、上述した湿度、雨量、積雪量、及び堆積物データを用いて重量を検出する構成については記載されていない。
イ 請求人の主張についての検討
前記アの請求人の主張について検討する。
前記(4)アにおいて説示したとおり、「湿度、雨量、積雪量、及び前記容器に積もった堆積物データの少なくとも1つを含む外部要因データを取得するデータ取得手段」を備え、「前記検出手段で検出された歪み及び前記外部要因データに基づいて、前記生産資材の重量を算出する」ように構成することは、引用発明に周知技術1を適用することにより、当業者が容易になし得たことである。
また、前記(4)イにおいて説示したとおり、本件補正発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。請求人が主張する本願明細書の【0049】に記載された効果は、湿度による重量測定値の変化を補償するという周知技術1の奏する効果に含まれるものにすぎない。
またそもそも、湿度によって結露の量が変わり、重量測定に影響を与えることは当業者にとって自明であるから、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果ということはできない。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
(6) 独立特許要件についての判断のまとめ
前記(4)において検討したとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2において示したとおり却下したので、本願の請求項1~10に係る発明は、令和5年5月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(1)に示した、本件補正前の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
本願発明について、原査定において示された拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性の欠如)本願発明は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:実願昭56-92638号(実開昭57-203334号)のマイクロフィルム
引用文献2:特開2015-177751号公報
3 引用文献に記載された発明等
(1) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
引用文献1の記載事項及び引用発明の認定は、前記第2の3(2)アにおいて示したとおりである。
(2) 引用文献2の記載事項及び引用文献2記載事項の認定
ア 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である引用文献2(特開2015-177751号公報)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体において付したものである。
(ア) 【0001】
「【0001】
本発明は、走行しながら収穫された収穫物を一時的に貯留する収穫物タンクを備えるとともに、貯留されている収穫物の量を算定する収穫機に関する。」
(イ) 【0014】~【0017】、【図1】
「【0014】
本発明による収穫機の具体的な実施形態を説明する前に、図1を用いて本発明による収量算定の基本原理を説明する。図1で例示された収穫機では、走行しながら収穫した収穫物を一時的に貯留する収穫物タンク9は、互いに接続されている上部構造体9Aと下部構造体9Bとからなる。収穫物が投入される投入口9aが上部構造体9Aに設けられ、収穫物が排出される排出口9bは下部構造体9Bに設けられている。上部構造体9Aは、ほぼ水平な天井面とほぼ垂直な側面とによって境界付けられた中空体であり、下部構造体9Bは、前面と後面と左側面と右側面と底面とで境界付けられた中空体である。ここで例示されている収穫物タンク9では、左側面と右側面とが下方にいくほど互いの間隔が狭くなるような傾斜を有する傾斜面として形成されている。前壁と後壁は実質的に垂直面として形成されている。したがって、この下部構造体9Bにおける、水平断面は下方にいくほど小さくなっており、最下方の底面は、幅狭の前後方向に延びた略水平面である。」
「【図1】
[図:0001418868000006.jpg]
」
「【0015】
収穫物タンク9に収穫物が投入されると、収穫物は下部構造体9Bの傾斜側面に案内され、収穫物タンク9の下方に導かれる。収穫物が貯留されていくにしたがって、下部構造体9Bの傾斜側面である左側面と右側面にかかってくる収穫物の荷重は大きくなる。これにより、左側面及び右側面を作り出している構成部材には荷重に起因する変形(歪)が生じる。この変形の変形量を測定できるように、ここでは左側面または右側面である傾斜面に、変形測定器2が配置されている。変形測定器2の前後方向の位置は、傾斜面の前後方向でのほぼ中央である。この変形測定器2による測定値には、傾斜面に生じた変形量、つまり、収穫物タンク9に貯留された収穫物の荷重に関する情報が含まれているので、この測定値に基づいて収穫物タンク9に貯留された収穫物の量(収量)が算定可能である。収量を算定する収量算定部5は、変形測定器2から送られてくる測定値から、収量を導出する変換テーブルを備えている。収量算定部5で算定された収量は、液晶パネルなどを備えた表示部7によって表示される。
【0016】
図1での例では、変換テーブルは、変形測定値から貯留収穫物の重量を導出する変形重量変換テーブルと、導出された重量から収量を導出する重量収量変換テーブルに分けて示されているが、もちろんこの2つを統合してもよい。これらの変換テーブルは、予め行われるテストを通じて設定されるが、収穫機に搭載された状態の収穫物タンク9に対して、かつ個別の収穫機ごとに行うことが好ましい。さらに、収穫機の通常の収穫作業走行中において用いられる動的変換テーブルと収穫機の停車中または徐行中において用いられる静的変換テーブルを用意し、走行状態の検出結果に基づいて、使用される変換テーブルを自動選択してもよい。
【0017】
ここでは、変形測定器2としてひずみゲージが用いられており、傾斜面を作り出している収穫物タンク構成部材に装着される。特に半導体ひずみゲージを使用すれば、より高精度で変形を測定することができるし、さらに自己温度補償型半導体ひずみゲージを使用すれば、温度補償による補正回路を別に設ける必要がなくなる。また、収穫物タンク構成部材の変形を伝達することができる変形伝達部材を変形中継部材として使用し、この変形中継部材にひずみゲージを装着してもよい。また、ひずみゲージの装着(張り付け)方向は、実験結果に基づいて、収穫物タンク9に貯留される収穫物の重量に最も効果的に反応する方向を採用する。一般的には、縦方向の張り付けが良い結果をもたらす。」
(ウ) 【0024】~【0027】、【図6】
「【0024】
図6には、収量(収穫量)を測定表示する制御系における制御ユニット100を中心とする機能が示されている。この制御ユニット100における収量算定には、図1で説明した収量算定の基本原理が採用されている。この制御ユニット100には、ひずみゲージ20と信号処理回路21とからなる変形測定器2の測定値、収量測定SW30からの操作信号、状態検出器群3からの検出結果が入力される。」
「【図6】
[図:0001418868000007.jpg]
」
「【0025】
状態検出器群3は、環境温度を検出する温度センサ、コンバインの機体左右傾斜角を検出する左右傾斜角センサと、コンバインの機体前後傾斜角を検出する前後傾斜角センサ、コンバインを構成する走行系機器や作業系機器の状態を検出するセンサやスイッチ(SWと略称される)などの総称である。状態検出器群3から出力される信号には、例えば、環境温度、コンバインの機体左右傾斜角や機体前後傾斜角、コンバインの速度値、刈取部12や脱穀装置15への動力伝達を制御するクラッチの状態値、アンローダ装置8の姿勢状態値、などが含まれている。
【0026】
制御ユニット100には、収量算定部5、測定環境判定部60、表示データ生成部71が構築されている。測定環境判定部60は、状態検出器群3からの検出結果に基づいて、ひずみゲージ20の測定に影響を与える情報をデータ化した測定環境データを出力する。収量算定部5は、変形測定器2からの測定値から、測定環境判定部60からの測定環境データを考慮して、穀粒タンク9に貯留されている穀粒の量である収量を算定する。
【0027】
収量算定部5には、温度補償部51、姿勢補償部52、収量演算部53が含まれている。温度補償部51は、温度の影響によって生じるひずみゲージ20の検出誤差を補正する。さらに、ひずみゲージ20の検出値、つまり変形測定器2からの測定値は、コンバインの機体が傾斜すると、そのことに起因しても誤差が生じる。この姿勢誤差を補償するため、姿勢補償部52は、測定環境データから読みだされた機体の左右傾斜角及び前後傾斜角と、予め実験等により求められた修正用のテーブルとを用いて、変形測定器2からの測定値を補正する。収量演算部53は、図1を用いて説明された収量算定の基本原理に基づいて、収量を求める。このため、収量演算部53には、変形測定器2からの測定値から収量を導出する変換テーブル53aが備えられている。」
イ 引用文献2技術事項の認定
前記アにおいて摘記した事項を総合すると、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。なお、括弧内に、引用文献2における引用文献2記載事項の認定の根拠となった箇所を示す。
<引用文献2技術事項>
「走行しながら収穫された収穫物を一時的に貯留する収穫物タンクを備えるとともに、貯留されている収穫物の量を算定する収穫機であって、(【0001】)
収穫物タンク9は、互いに接続されている上部構造体9Aと下部構造体9Bとからなり、(【0014】)
下部構造体9Bの傾斜側面である左側面と右側面である傾斜面に、変形測定器2が配置されており、(【0015】)
変形測定器2としてひずみゲージが用いられており、(【0017】)
収量を算定する収量算定部5は、変形測定器2から送られてくる測定値から、収量を導出する変換テーブルを備えており、(【0015】)
変換テーブルは、変形測定値から貯留収穫物の重量を導出する変形重量変換テーブルと、導出された重量から収量を導出する重量収量変換テーブルに分けて示されているものであり、(【0016】)
収量(収穫量)を測定表示する制御系における制御ユニット100には、ひずみゲージ20と信号処理回路21とからなる変形測定器2の測定値、状態検出器群3からの検出結果が入力され、(【0024】)
状態検出器群3は、環境温度を検出する温度センサなどの総称であり、(【0025】)
制御ユニット100には、収量算定部5、測定環境判定部60が構築されており、(【0026】)
測定環境判定部60は、状態検出器群3からの検出結果に基づいて、ひずみゲージ20の測定に影響を与える情報をデータ化した測定環境データを出力し、(【0026】)
収量算定部5は、変形測定器2からの測定値から、測定環境判定部60からの測定環境データを考慮して、穀粒タンク9に貯留されている穀粒の量である収量を算定し、(【0026】)
収量算定部5には、温度補償部51が含まれており、温度補償部51は、温度の影響によって生じるひずみゲージ20の検出誤差を補正する、(【0027】)
収穫機。(【0001】)」
4 対比・判断
(1) 対比
前記第2の3(3)での対比検討を踏まえると、本願発明と引用発明は、次の相違点2において相違し、その余の点において一致する。
<相違点2>
本願発明においては、「外部要因データを取得するデータ取得手段」を備え、「前記検出手段で検出された歪み」及び「前記外部要因データ」に基づいて、前記生産資材の重量を算出するのに対して、
引用発明においては、当該「データ取得手段」に相当する構成を有していない点。
(2) 判断
ア 相違点2についての判断
前記相違点2について検討する。
(ア) 引用文献2技術事項の「環境温度を検出する温度センサ」は、本願発明の「外部要因データを取得するデータ取得手段」に相当する。なお、本願明細書の【0043】には、「外部要因」に「気温」が含まれることが説明されている。
また、引用文献2技術事項は、「収量を算定する収量算定部5は、変形測定器2から送られてくる測定値から、収量を導出する変換テーブルを備えており」、「変換テーブルは、変形測定値から貯留収穫物の重量を導出する変形重量変換テーブルと、導出された重量から収量を導出する重量収量変換テーブルに分けて示されているものであ[る]」から、収量を導出する過程で貯留収穫物の重量を導出するものといえる。
そして、引用文献2技術事項は、「収量算定部5には、温度補償部51が含まれており、温度補償部51は、温度の影響によって生じるひずみゲージ20の検出誤差を補正する」ものであるから、「ひずみゲージが用いられて[いる]」「変形測定器2」(検出手段)で測定された測定値と環境温度(外部要因データ)に基づいて、貯留収穫物の重量を算出するように構成しているといえる。
(イ) ここで、引用発明と引用文献2技術事項は、ひずみを計測する手段を用いて検出対象の重量を測定する装置に関する点で共通し、引用発明においても、周辺環境に応じて正確に重量を測定するという課題を当然に内在するから、引用発明に対して引用文献2技術事項における、環境温度を検出する温度センサを設けて、ひずみを測定する手段における温度の影響によって生じる検出誤差を補正する技術を適用して、温度センサ(データ取得手段)を設けるとともに、抵抗線ひずみ計4(検出手段)で検出された抵抗変化(ひずみの量を表すもの)と環境温度(外部要因データ)に基づいて、飼料などの粉粒体(生産資材)の重量を算出するように構成して、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 総合評価
前記アにおいて検討したとおり、相違点2は、格別のものではなく、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-016730