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特許拒絶査定不服審判

2023-015886

粘着剤用組成物、粘着フィルム、及び表面保護フィルム

審判番号
2023-015886
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-086702外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年09月20日
審決日
2025年03月25日
公報発行日
2025年06月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C09J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2019- 86702「粘着剤用組成物、粘着フィルム、及び表面保護フィルム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年11月12日出願公開、特開2020-183461〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(平成31年)4月26日の出願であり、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和5年 1月12日付け 拒絶理由通知書 同年 3月17日 手続補正書及び意見書の提出 同年 6月15日付け 拒絶査定 同年 9月20日 審判請求書の提出 第2 本願発明の認定 本願の請求項1~5に係る発明は、令和5年3月17日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「(メタ)アクリルポリマー(A)、アルカリ金属塩(B)、及び式(I)で表される化合物(C)を含有し、 前記アルカリ金属塩(B)の含有量が、前記(メタ)アクリルポリマー(A)の100質量部を基準として、0.1質量部以上2質量部以下である、 粘着剤用組成物。 【化1】 [図:0001422978000001.jpg] (式中、Xは、それぞれ独立に、酸素原子又は窒素原子を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はフルオロアルキル基を表す。)」 第3 原査定の理由 原査定の拒絶理由には、請求項1に係る発明(本願発明)に対する、拒絶理由2(進歩性)として、以下の理由が含まれている。 この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、又は2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献一覧> 1.特開2010-265388号公報(主引用文献1) 2.特開2000-129235号公報(主引用文献2) 3.特開2019-35066号公報(周知技術を示す文献) 4.特表2015-530436号公報(周知技術を示す文献) 5.国際公開第2012/132714号(周知技術を示す文献) 第4 引用文献に記載された事項、及び引用発明 引用文献1、2に記載された事項、及び引用発明は以下のとおりである。また、特に断りがない場合、下線は当審合議体が付したものである。 1 引用文献に記載された事項 (1)引用文献1に記載された事項 「【請求項1】 水酸基およびアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂(A)と、水酸基と反応し得る官能基を有する化合物(B)と、帯電防止剤(C)と、化合物(D)とを含む制電性アクリル系粘着剤であって、 前記化合物(D)の比誘電率(εr)が10~150、かつ沸点が120℃~300℃であることを特徴とする制電性アクリル系粘着剤。 【請求項2】 化合物(D)が、炭酸エステル、カルボン酸エステル及びスルホン酸エステルからなる群より選択される1種以上のエステルであることを特徴とする請求項1記載の制電性アクリル系粘着剤。」 「【背景技術】 【0002】 液晶ディスプレイの普及に伴って、液晶ディスプレイに用いられる偏光板やそれらの積層体である光学部品等に、表面保護用の粘着テープが多量に使用されている。かかる粘着テープはプラスチック基材に粘着層が形成されているものである。粘着テープは、液晶ディスプレイ等に組み込みが完了した後に光学部品等から剥離除去されるが、プラチチック基材と粘着層は絶縁体であるため、剥離する際に生じる静電気により液晶や電子回路が破壊されるトラブルの発生が問題となっており、静電気対策が求められていた。そのため粘着シートには表面抵抗値として108~109Ω/□が求められている。さらに最近では108Ω/□以下が要求されている。 【0003】 そこで例えば、特許文献1には、イオン化合物としてのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含む制電性樹脂組成物が、高い制電性を有し、持続性、成形加工性に優れた、着色しない制電性樹脂組成物として開示されている。しかし、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが高価な材料であるため、成形品全体を当該制電性樹脂組成物で作製した場合にはコスト高を招き、高付加価値の特殊用途にしか使用できない。そこで、特許文献2には、成形品の表面に、制電性樹脂組成物の塗膜を形成する経済性に優れた制電性塗料が開示されているが、保護フィルム表面に制電性樹脂を塗工するだけでは、剥離時に発生する静電気の抑制には十分な効果が得られていない。 【0004】 また、保護フィルムの粘着層を形成するための、粘着性を有する制電性樹脂組成物が求められ、特許文献3には、過塩素酸リチウムとアルキレンオキサイド鎖を有するモノマーを含むアクリル樹脂系粘着剤が開示されている。特許文献3では、過塩素酸リチウムが帯電防止剤として用いられている。また、アルキレンオキサイド鎖は、上記帯電防止剤と配位結合し、制電性を発現しやすくする機能を有する。しかし帯電防止剤の制電性を発現しやすくするためにアルキレンオキサイド鎖を有するモノマーを多く共重合させると、重合時に樹脂が高粘度化するために生産性の低下や、粘着性が著しく低下してしまうため、粘着性と制電性の両者を満足できる粘着剤が求められていた。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、特定の化合物を用いることで制電性を有しながら、同時に良好な粘着性も実現する制電性アクリル系粘着剤、および表面保護用途として好適に用いることができる粘着テープを提供することを目的とする。」 「【0033】 本発明において、再剥離用などの低粘着性が要求される用途の場合、化合物(B)は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、1~30重量%用いることが好ましく、2~20重量%用いることがより好ましく、3~15重量%用いることがさらに好ましい。低粘着力実現のためには使用量は多い方がよいが、過剰の場合は制電性が低下する恐れがある。これは、架橋密度が高すぎると、帯電防止剤(C)、アルキレンオキサイド鎖及び化合物(D)の運動性が低下するためと考えられる。 【0034】 帯電防止剤(C)は、粘着剤層中で、粘着テープ剥離時等に発生する静電気等を除電させる機能を有するものであり、例えば、イオン系化合物、非イオン系化合物が挙げられる。 【0035】 前記イオン系化合物のアニオン成分として、例えば、ハロゲンイオン、ハロゲンオキソ酸イオン、チオシアン酸イオン、ホウ酸イオン、炭酸イオン、カルボン酸イオン、ケイ酸イオン、亜硝酸イオン、硝酸イオン、亜リン酸イオン、リン酸イオン、亜硫酸イオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオンが挙げられる。具体的には、Cl-、Br-、I-、AlCl4-、Al2Cl7-、BF4-、PF6-、ClO4-、SCN-、NO3-、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3-、CF3SO3-、(CF3SO2)2N-、(CF3SO2)3C-、AsF6-、SbF6-、NbF6-、TaF6-、(CN)2N-、C4F9SO3-、(C2F5SO2)2N-、C3F7COO-、-O3S(CF2)3SO3-などが挙げられる。 またカチオン成分としては、例えばアルカリ金属イオン、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピロリジニウム、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウム、ピリミジニウム、ピラゾリウム、ピラゾリニウムなどが挙げられる。 【0036】 前記イオン化合物の具体例としては、上記カチオン成分とアニオン成分との組み合わせた化合物が好ましく、例えば、LiClO4、KPF6、KSCN、酢酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、LiCF3SO3、・・・」 「【0038】 帯電防止剤(C)は、アクリル系樹脂(A)100重量%に対して0.01~30重量%用いることが好ましく、0.05~10重量%用いることがより好ましい。0.01重量%未満では十分な制電性が得られず、20重量%を超えると粘着物性が低下する恐れがある。 【0039】 本発明で化合物(D)は、制電性をより向上する目的で用いられる。さらに化合物(D)は20℃における比誘電率(εr)が10~150及び常圧における沸点が120℃~300℃であるものが好ましい。本発明での比誘電率(εr)は、JIS-C-2101に規定される方法で求められるものを言う。 【0040】 化合物(D)として炭酸エステル、カルボン酸エステルおよびスルホン酸エステル等が挙げられる。具体的には、例えばエチレンカーボネート(εr=90、沸点238℃)、プロピレンカーボネート(εr=65、沸点242℃)、ブチレンカーボネート(εr=53、沸点240℃)、γ-ブチロラクトン(εr=42、沸点203℃)、スルホラン(εr=65、沸点242℃)、3-メチルスルホラン(εr=90、沸点238℃)、2,4-ジメチルスルホラン(εr=43、沸点287℃)等が挙げられる。これらの中で特にプロピレンカーボネートが好ましい。 【0041】 制電性について、化合物(D)及びアルキレンオキサイド鎖の役割は非常に大きく、単に配位体形成の場を与えるだけでなく、帯電防止剤(C)の移動媒体としての働きも同時に担っている。本発明における制電性は、帯電防止剤(C)の量と、アルキレンオキサイド鎖を得るために必要なアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系モノマー(a2)、及び化合物(D)の含有量に依存する。 【0042】 これら化合物(D)の使用量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して1重量部~50重量部が好ましく、5重量部~10重量部がより好ましい。使用量が1重量%未満では、制電性に対する効果が得られにくく、50重量%よりも大きくなると、粘着層の凝集力が低下したり、アクリル系樹脂(B)との相溶性が低下する恐れがある。」 「【実施例】 【0049】 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。 【0050】 (合成例1) 表1に示す組成比のモノマーを用いてアクリル系樹脂(A)を以下の要領で得た。 即ち、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコを用い、反応釜に2-エチルヘキシルアクリレート(以下、2EHAという)を22.05重量部、ブチルアクリレート(以下、BAという)を6重量%、2-ヒドロキシエチルアクリレート(以下、2HEAという)を2.1重量部、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)を適量仕込み、 次に、2EHAを26.46重量部、BAを8重量部、2HEAを2.8重量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド基付加数9)(以下、M90Gという)を3重量部、酢酸エチル、AIBNを適量添加して混合した溶液を約1時間かけて滴下し、窒素雰囲気下、沸点温度にて1時間重合させた。 さらにその後、2EHAを14.49重量部、BAを6重量部、2HEAを2.1重量部、M90Gを7重量部、酢酸エチル、AIBNを適量添加して混合した溶液を約1時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却および酢酸エチル、トルエンで希釈しアクリル系樹脂溶液を得た。この溶液は、不揮発分40%、粘度1500mPa・s、Mw(重量平均分子量)330,000であった。 【0051】 (合成例2) 表1に示す組成比のモノマーから構成されるアクリル系樹脂(A)を以下の要領で得た。 ・・・ 【0057】 【表1】 [図:0001422978000002.jpg] 」 「【0058】 [実施例1] 合成例1で得られたアクリル系樹脂溶液の不揮発分40gに対して、過塩素酸リチウム3g、プロピレンカーボネート10g、硬化剤としてトリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体(以下、TDI-TMPという)37%酢酸エチル溶液10gを配合し粘着剤を得た。 得られた粘着剤を剥離フィルムに乾燥塗膜20μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させた後粘着層にPETフィルム(厚さ38μm)を貼り合わせ、この状態で室温で2日間経過させ、試験用粘着テープを得た。該粘着テープを用いて、以下に示す方法に従って、粘着力、表面抵抗値、再剥離性および透明性の評価を行った。 【0059】 <粘着力> 試験用粘着テープの剥離フィルムを剥がし、露出した粘着層を厚さ2mmのガラス板に23℃-50%RHにて貼着し、JISZ-0237に準じてロール圧着した。圧着から24時間経過後、ショッパー型剥離試験機にて剥離強度(180度ピール、引っ張り速度300mm/分;単位g/25mm幅)を測定した。 【0060】 <表面抵抗値> 試験用粘着テープの剥離フィルムを剥がし、露出した粘着層表面の表面抵抗値を、表面抵抗値測定装置(三菱化学株式会社製)を用いて測定した(Ω/□)。 【0061】 <再剥離性> 試験用粘着テープの剥離フィルムを剥がし、露出した粘着層をガラス板に貼着した後、60℃-95%RHの条件下に24時間に亘って放置し、23℃-50%RHに冷却した後、ガラス板から剥離し、ガラス板の表面状態を目視で評価した。具体的には、以下の4段階で評価した。 ◎:ガラス板への粘着層移行が全くないもの ○:ガラス板への粘着層移行がごくわずかにあるもの △:ガラス板への粘着層移行が部分的にあるもの ×:ガラス板への粘着層が完全に移行しているもの 【0062】 <透明性> 試験用粘着テープの剥離フィルムを剥がし、露出した粘着層をガラス板に貼着した後、60℃-95%RHの条件下に24時間に亘って放置し、23℃-50%RHに冷却した後、目視で評価した。 ◎:無色透明なもの ○:ごく僅か曇っているもの △:白濁、凝集物が見られるもの ×:透明でないもの ・・・ 【0074】 [比較例1] 合成例1で得られたアクリル系樹脂溶液を用い、プロピレンカーボネートを添加しないこと以外は実施例1と同様にして試験用粘着テープを得て、実施例1と同様に評価した。 ・・・ 【0077】 [比較例4] 合成例1で得られたアクリル系樹脂溶液を用い、過塩素酸リチウムを添加ないこと以外は実施例1と同様にして試験用粘着テープを得て、実施例1と同様に評価した。 ・・・ 【0081】 【表2】 [図:0001422978000003.jpg] 【0082】 表2より、本発明の帯電防止粘着剤は、実施例1~12から表面抵抗値(制電性)、透明性、再剥離性に優れていることが分かる。また比較例1に比べて、実施例1に示した粘着剤は、制電性を向上させるプロピレンカーボネートが添加されているため、表面抵抗値が10分の1になった。また比較例2に比べて、実施例11に示した粘着剤は、制電性を向上させるプロピレンカーボネートが添加されているため、表面抵抗値が約10分の1になった。また比較例3に比べて、実施例12に示した粘着剤は、制電性を向上させるプロピレンカーボネートが添加されているため、表面抵抗値が10分の1になった。また比較例1、2、3は、帯電防止剤の配合量を3gから7gに増加した場合は表面抵抗値は低下するが、7gから10gに増加しても表面抵抗値は変化しない。それに対して実施例1、12、13では、帯電防止剤であるLiClO4の量が多くなる程表面抵抗値が低下し、より良好な制電性を発揮することが分かる。これは、プロピレンカーボネートを添加しているために、LiClO4が会合しにくくなっているためであると思われる。 実施例1に比べて、比較例4に示した粘着剤は、帯電防止剤が含まれていないため、制電性が全くない。 比較例5に比べて、実施例1に示した粘着剤は、アルキレンオキサイド鎖を有してるため、添加したプロピレンカーボネートと粘着剤が相溶し、再剥離性、透明性および表面抵抗値が良好である。さらに、比較例5に示した粘着剤は被着体汚染が認められたが、これは、プロピレンカーボネートが粘着剤表面にブリードアウトしているからであると考えられる。 比較例6に比べて、実施例1に示した粘着剤は、アクリル樹脂中に水酸基を有しているため、粘着力が低く、再剥離性が良好であった。 比較例7に示したアクリル系樹脂組成物は、水酸基と反応し得る官能基を有する化合物(B)が含まれていないため粘着力が高く、再剥離性が不良であった。 【0083】 以上のように本発明の制電性アクリル系粘着剤は、制電性良好であり、液晶ディスプレイの偏光板等の光学部材の表面保護フィルム用の粘着層として用いた場合に、剥離時の静電気の発生が少なく、透明性、再剥離性に優れていることが分かる。」 (2)引用文献2に記載された事項 「【請求項1】 (1)(a)ウレタンアクリレートと、 (b)ポリアルキレンオキサイド鎖を有する(メタ)アクリレートと、 (c)接着力付与性モノマーと、 を主成分として含む重合性混合物を放射線重合することにより得られた共重合体、および、 (2)イオン性化合物、 を含む、帯電防止性粘着剤組成物。」 「【0007】 【発明が解決しようとする課題】 そこで、本発明の目的は、製造の際に溶媒や界面活性剤を必要とせず、従って、外部環境に影響を受けない帯電防止性を有する、イオン伝導性の粘着剤組成物を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】 本発明によると、(1)(a)ウレタンアクリレートと、 (b)ポリアルキレンオキサイド鎖を有する(メタ)アクリレートと、 (c)接着力付与性モノマーと、 を主成分として含む重合性混合物を放射線重合することにより得られた共重合体、および、 (2)イオン性化合物、 を含む、帯電防止性粘着剤組成物が提供される。 【0009】 本発明の粘着剤組成物は、放射線重合法により形成された共重合体を含む。粘着剤組成物は無溶剤系で且つ非水系で製造されるので、のり残りおよび粘着剤組成物の表面抵抗の経時変化を与える界面活性剤または水を実質的に含まない。」 「【0014】 本発明の粘着剤組成物を硬化させる手段としては、紫外線、可視光線、電子線などの活性光線が用いられる。必要ならば、ラジカル系光開始剤を添加しておくことが好ましい。粘着剤組成物を無色透明にするために、無黄変タイプの光開始剤、例えば、チバ・ガイギー社性のダロキュア(商標)1173やイルガキュア(商標)184等が特に好ましい。使用される光開始剤の量は、通常モノマー100重量部当たりに1重量部である。 【0015】 本発明の粘着剤組成物中に含まれるイオン性化合物はポリアルキレン鎖と錯体を形成して、イオン伝導性を提供する。このようなイオン性化合物としては、リチウムイオン、カリウムイオンまたはナトリウムイオンのようなイオン半径の比較的に小さい陽イオンを含む化合物、例えば、リチウム、カリウムまたはナトリウムの過塩素酸塩またはこれらの塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアン化物等の無機塩(inorganic salt) が挙げられる。特に、リチウムイオンは最も小さいイオン半径を有しており、従って、好適な高い電荷移動度を粘着剤組成物に提供することができる。または、粘着剤組成物が金属イオンを含まないことが望ましいときには、過塩素酸テトラブチルアンモニウム塩のような有機塩(organic salt) は有効である。粘着剤組成物中に含まれるイオン性化合物の量は10重量%以下である。 【0016】 本発明の粘着剤組成物は、導電性を高めるために、プロピレンカーボネートのような誘電率の高い化合物をさらに含有することもできる。このような高誘電率の化合物は共重合体中のポリアルキレングリコール鎖のイオン伝導性を補なう役割を果たす。プロピレンカーボネートは、上記のポリエチレングリコールアクリレートのようなポリアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレートと比較して高い誘電率を有し、上記の無機塩および有機塩を溶かすことができるので有利である。」 「【0023】 本発明を下記の実施例においてさらに説明する。 実施例1 帯電防止粘着シートを以下のように作製した。まず、日本合成化学工業社製のウレタンアクリレートUV-3000Bを20重量部と、新中村化学工業社製のメトキシポリエチレングリコールアクリレートAM-90Gを20重量部とで混合し、完全に溶解するまで攪拌した。次に、ヒドロキシプロピルアクリレートを35重量部、イソオクチルアクリレートを15重量部、0.4wt%の過塩素酸リチウムのAM-90G中の溶液を10重量部、およびチバ・ガイギー社製のダロキュア(商標)1173を1部添加し、完全に溶解するまで攪拌した。 【0024】 次に、50μmの厚さのPETからなる基材に、上記のように得られた試料液を滴下し、その上に、シリコーン処理したPETからなる基材で挟んだ。これを、ナイフコーターにより粘着剤の厚さが50μmとなるように調製した。この試料を速やかに紫外線照射機に通し、約800mJ/cm2の紫外線を照射して硬化し、粘着シートを得た。 【0025】 得られた粘着シートを表面抵抗、接着力、透過率を評価する試験を行った。結果を下記の表1に示す。なお、表面抵抗値はEOS/ESD協会標準S11.11の試験法に準じて測定した。接着力の測定は180°剥離試験で行った。また、光学的光透過率の測定は、ヘーズメーター(日本電飾工業社製、NDH-SENSOR)を用いた。この表から、表面抵抗は1.1×1010Ω/□であり、帯電を防止するために十分に低い値であることが判る。また、糊残りも観測されず、光透過率も90%以上あり、透明性にも優れていることが確認できた。 【0026】 【表1】 [図:0001422978000004.jpg] 【0027】 実施例2 帯電防止粘着シートを以下のように作製した。まず、ウレタンアクリレートUV-3000Bを20重量部と、メトキシポリエチレングリコールアクリレートAM-90Gを20重量部とで混合し、完全に溶解するまで攪拌した。次に、下記の表2に示す量のアクリル酸(AA)およびイソオクチルアクリレート、0.4wt%の過塩素酸リチウムのプロピレンカーボネート中の溶液を10重量部、およびチバ・ガイギー社製のダロキュア(商標)1173を1部添加し、完全に溶解するまで攪拌した。このように得られた混合物を上記の実施例1と同様に硬化した。 このようにして、(1)イオン伝導の媒体としてメトキシポリエチレングリコールアクリレートとともに、プロピレンカーボネートを併用し、(2)ヒドロキシプロピルアクリレートの代わりにアクリル酸(AA)を使用し、また、(3)アクリル酸/イソオクチルアクリレートの混合比を変えたときの接着力への効果を評価した。 【0028】 表2は得られた粘着シートをガラス基板に貼り、剥離試験を行ったときの結果をまとめたものである。これにより、接着力はアクリル酸の量と密接に関係していることが判る。また、いずれの系でも十分に低い表面抵抗を有している。 【0029】 【表2】 [図:0001422978000005.jpg] 【0030】 【発明の効果】 本発明の粘着剤組成物は、製造の際に溶媒や界面活性剤を必要とせず、従って、外部環境に影響を受けない帯電防止性を有する、イオン伝導性の粘着剤組成物である。また、本発明の粘着シートは非常に高い光透過率を有する。」 (3)引用文献3に記載された事項 「【0018】 ≪保護フィルム用粘着剤組成物≫ 本発明の保護フィルム用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう。)は、少なくとも架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)と、イソシアネート化合物(B)と、前記イソシアネート化合物(B)以外のポリシロキサン構造及びアルキレンオキシド構造を有するイソシアネート化合物(C)と、帯電防止剤(D)と、を含み、前記イソシアネート化合物(C)の含有率は、前記(メタ)アクリル系樹脂(A)100質量部に対して0.10質量部以上である。 【0019】 粘着剤組成物が上記構成を有していることで、耐汚染性及び帯電防止性に優れる粘着剤層を形成することが可能である。この理由は、明らかではないが、以下のように推測される。 【0020】 一般に、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物は帯電防止助剤として作用することが知られている。帯電防止剤とアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物とを含む粘着剤組成物を基材上に塗工して形成された粘着剤層は、塗工直後、シリコーン化合物中のアルキレンオキシド構造が帯電防止剤に配位した状態で粘着剤層の表面付近に局在するので、少量の帯電防止剤であっても帯電防止性が発揮されやすい。 一方、上記シリコーン化合物は、粘着剤層の表面付近に局在しやすいので、転着によって被着体の表面を汚染する要因の一つとなりやすいことが知られている。 【0021】 本発明の粘着剤組成物は、少なくとも架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)と、一定量以上の、イソシアネート化合物(B)以外のポリシロキサン構造及びアルキレンオキシド構造を有するイソシアネート化合物(C)(以下、単に「シリコーン系イソシアネート化合物(C)」ともいう。)と、を形成された粘着剤層では、表面付近に、シリコーン系イソシアネート化合物(C)が局在し、次いで、シリコーン系イソシアネート化合物(C)中のイソシアネート(NCO)基と、(メタ)アクリル系樹脂(A)中の架橋性官能基とが反応して架橋構造を形成している。架橋構造の形成により、シリコーン系イソシアネート化合物(C)は、粘着剤層中にアンカーされた状態に保たれていると推察される。そのため、保護フィルムを被着体から剥離する際に、粘着剤組成物中に含まれる例えば、帯電防止剤及び帯電防止助剤(以下、「汚染成分」ともいう。)の被着体表面への転着を抑制することができ、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層は優れた耐汚染性を発揮する。」 「【0123】 <帯電防止剤(D)> 粘着剤組成物は、帯電防止剤(D)を含有する。粘着剤組成物より形成された粘着剤層は、優れた帯電防止性能を発揮する。 帯電防止剤としては、イオン性化合物が挙げられる。イオン性化合物としては、特に制限はなく、アルカリ金属塩、有機塩などが挙げられる。 イオン解離性が高く、かつ、少量であっても優れた帯電防止性を発現しやすい点から、帯電防止剤としては、アルカリ金属塩又は有機塩であることが好ましい。 【0124】 アルカリ金属塩としては、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、ルビジウム(Rb+)などをカチオンとする金属塩であれば特に制限されない。 例えば、Li+、Na+及びK+からなる群より選ばれる少なくとも1種のカチオンと、Cl-、Br-、I-、BF4-、PF6-、SCN-、ClO4-、CF3SO3-、(FSO2)2N-、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-及び(CF3SO2)3C-からなる群より選ばれる少なくとも1種のアニオンと、から構成される金属塩を好適に用いることができる。 【0125】 中でも、アルカリ金属塩としては、帯電防止性の観点から、LiBr、LiI、LiBF4、LiPF6、LiSCN、LiClO4、LiCF3SO3(LiTFS)、Li(FSO2)2N、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(CF3SO2)3Cなどのリチウム塩であることが好ましく、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(CF3SO2)3Cであることがより好ましい。 アルカリ金属塩は、1種単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用して使用してもよい。 【0126】 有機塩は、有機カチオンとその対イオンとを含む。有機塩には、たとえば融点が30℃以上のイオン性固体と、融点が30℃未満のイオン性液体とが含まれる。 有機塩としては、融点が30℃以上であることが好ましい。有機塩の融点が30℃以上であると、被着体への移行が少なく、汚染性が低く好ましい。 ・・・ 【0129】 帯電防止剤(D)の含有量としては、特定(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、0.05質量部~0.50質量部であることが好ましく、0.10質量部~0.30質量部であることがより好ましい。 帯電防止剤(D)の含有量が特定(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上であると、帯電防止性により優れる傾向がある。帯電防止剤(D)の含有量が0.50質量部以下であると、帯電防止剤(D)の含有量に対する帯電防止効果の効率がより高くなる傾向がある。」 (4)引用文献4に記載された事項 「【0031】 イオン性帯電防止剤は、陰イオンと陽イオンで構成されたイオン性塩類であって、粘着剤にイオン伝導性を付与することができるものなら特にその種類を限定しない。 具体的には、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩およびホスホニウム塩よりなる群から選択された陽イオンと;フッ素含有無機塩、フッ素含有有機塩およびヨウ化イオンよりなる群から選択された陰イオンからなるイオン性塩類であることができる。 【0032】 このようなイオン性帯電防止剤は、アクリル系共重合体100重量部に対して0.1~5重量部含有することが好ましく、0.5~3重量部含有することがより好ましい。含量が0.1重量部未満の場合、帯電防止性が不十分であることがあり、10重量部を超過する場合には、耐久性の確保が困難となることがある。」 「【0041】 本発明の粘着剤組成物は、特に液晶セルとの接合のための偏光板用粘着剤、表面保護フィルム用粘着剤として使用することができる。また、保護フィルム、反射シート、構造用粘着シート、写真用粘着シート、車線表示用粘着シート、光学用粘着製品、電子部品用粘着剤だけでなく、一般商業用粘着シート製品として使用可能である。」 「【0063】 実施例1~8および比較例1~4 下記表1のようにアクリル系共重合体、イオン性帯電防止剤、架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、CORONATE-L、0.5重量部)およびシランカップリング剤(信越化学工業社製、KBM-403、0.5重量部)を混合した後、エチルアセテートで希釈して、固形分の濃度15重量%の粘着剤組成物を製造した。この際、表1は、アクリル系共重合体およびイオン性帯電防止剤を記載し、その他の架橋剤およびシランカップリング剤は、同一の成分および含量を使用した。 ・・・ 【0065】 【表1】 [図:0001422978000006.jpg] 」 (5)引用文献5に記載された事項 「【0001】 本発明は、樹脂材料からなるフィルム上に粘着剤層を有する粘着シートに関し、詳しくは、帯電防止機能を備えた粘着シートに関する。本発明に係る粘着シートは、静電気が発生しやすいプラスチック製品等に貼り付けられる用途に好適である。なかでも特に、光学部材(例えば、液晶ディスプレイなどに用いられる偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、反射シート、輝度向上フィルム)等の表面を保護する目的で用いられる表面保護フィルムとして有用である。 【背景技術】 【0002】 表面保護フィルム(表面保護シートともいう。)は、一般に、フィルム状の支持体(基材)の片面に粘着剤が設けられた粘着シートとして構成されている。かかる表面保護フィルムは、上記粘着剤を介して被着体(保護対象物)に貼り合わされ、これにより該被着体を加工、搬送時等の傷や汚れから保護する目的で用いられる。例えば、液晶ディスプレイのパネルは、液晶セルに粘着剤を介して偏光板や波長板等の光学部材を貼り合わせることにより形成されている。かかる液晶ディスプレイパネルの製造において液晶セルに貼り合わされる偏光板は、いったんロール形態に製造された後、このロールから巻き出して、液晶セルの形状に応じた所望のサイズにカットして用いられる。ここで、偏光板が中間工程において搬送ロール等と擦れて傷つくことを防止するために、該偏光板の片面または両面(典型的には片面)に表面保護フィルムを貼り合わせる対策がとられている。この表面保護フィルムは、不要になった段階で剥離して除去される。」 「【0090】 <帯電防止成分ASp(アルカリ金属塩)> 上記アルカリ金属塩の典型例としては、リチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。例えば、カチオン成分としてのLi+、Na+またはK+と、アニオン成分としてのCl-、Br-、I-、BF4-、PF6-、SCN-、ClO4-、CF3SO3-、(FSO2)2N-、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-または(CF3SO2)3C-とからなる金属塩を用いることができる。解離性が高いことから、リチウム塩の使用が好ましい。好ましい具体例としては、LiBr、LiI、LiBF4、LiPF6、LiSCN、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(CF3SO2)3C等のリチウム塩が挙げられる。なかでも特に、アニオン成分がビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドアニオン、パーフルオロアルキルスルホニウムアニオン等のフッ素含有アニオンであるリチウム塩(例えば、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、LiCF3SO3)が好ましい。このようなアルカリ金属塩は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。 【0091】 アクリル系ポリマー100質量部に対するアルカリ金属塩(例えばリチウム塩)の配合量は、通常、1質量部未満とすることが適当であり、好ましくは0.01~0.8質量部、より好ましくは0.01~0.5質量部、さらに好ましくは0.02~0.3質量部(例えば0.05~0.2質量部)である。アルカリ金属塩の配合量が少なすぎると、十分な帯電防止性能が得られない場合がある。一方、アルカリ金属塩の配合量が多すぎると、被着体の汚染が生じやすくなる傾向にある。」 「【0142】 <粘着剤組成物(G2)> 上記アクリル系ポリマー(P1)溶液に酢酸エチルを加えてNV20%に希釈した溶液100部(20部のアクリル系ポリマー(P1)を含有する。)に対し、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド0.02部、ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(アルドリッチ社製、平均分子量2000、エチレングリコール基比率50重量%)0.28部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」)0.5部、架橋触媒としてのジラウリン酸ジブチルスズ(1%酢酸エチル溶液)0.4部を加え、25℃で約1分間攪拌混合した。このようにして、アクリル系ポリマー(P1)100部当たり、イオン性化合物としてのリチウム塩0.1部を含むアクリル系粘着剤組成物(G2)を調製した。」 2 引用文献に記載された発明 (1)引用文献1に記載された発明 段落0057の表1に示される組成比のモノマーから構成される、段落0050に記載された合成例1のアクリル系樹脂(A)と、段落0058の実施例1の記載から、引用文献1には、実施例1として、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明1) 「・(合成例1)の組成比のモノマー (2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)を63重量部、 ブチルアクリレート(BA)を20重量%、 2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を7重量部、 メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド基付加数9)(M90G)を10重量部)から構成され、酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を混合した溶液にて重合させ、反応終了後、酢酸エチル、トルエンで希釈した、不揮発分40%、粘度1500mPa・s、Mw(重量平均分子量)330,000のアクリル系樹脂溶液(A)の不揮発分40g、 ・過塩素酸リチウム3g、 ・プロピレンカーボネート10g、 ・トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体(TDI-TMP)37%酢酸エチル溶液10g、 を配合して得られた粘着剤。」 (2)引用文献2に記載された発明 段落0027の実施例2の表面抵抗値5.7×108(Ω/□)の帯電防止粘着シートの粘着剤として、段落0029の「表2」に示される「アクリル酸(AA)およびイソオクチルアクリレート」の量と、段落0023の実施例1の作製方法の記載から、引用文献2には、実施例2として、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明2) 「・ウレタンアクリレートUV-3000Bを20重量部と、 ・メトキシポリエチレングリコールアクリレートAM-90Gとを20重量部とで混合し、完全に溶解するまで攪拌し、次に、 ・アクリル酸(AA)を5重量部、 ・イソオクチルアクリレートを45重量部、 ・0.4wt%の過塩素酸リチウムのプロピレンカーボネート中の溶液を10重量部、および ・チバ・ガイギー社製のダロキュア(商標)1173を1部添加し、完全に溶解するまで攪拌し、得られた混合物を紫外線照射により硬化して得られた粘着剤。」 第5 本願発明と引用発明との対比、判断 1 本願発明と引用発明1との対比・判断 (1)対比 本願明細書段落0020に、「(メタ)アクリルポリマー(A)は、(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位を含むポリマーである。」と記載されていることから、「(2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)を63重量部、ブチルアクリレート(BA)を20重量%、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を7重量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド基付加数9)(M90G)を10重量部)」から構成される引用発明1の「合成例1のアクリル系樹脂溶液(A)の不揮発分40g」は、本願発明における「(メタ)アクリルポリマー(A)」に相当する。 また、引用発明1における「過塩素酸リチウム」は、本願発明における「アルカリ金属塩(B)」に相当するから、前記「(メタ)アクリルポリマー(A)」相当の100質量部を基準とすると、「過塩素酸リチウム3g」の質量部は、7.5である。 そして、引用発明1における「プロピレンカーボネート」は、本願発明における「式Iで表される化合物(C)」であって、「X」が「酸素原子」を表し、4つの「R」のうち1つが「アルキル基であるメチル基」であり、3つが「水素原子」である化合物に相当する。 さらに、引用発明1における「粘着剤」は、上記組成を含む組成物であるから、本願発明における「粘着剤用組成物」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明1は、 「(メタ)アクリルポリマー(A)、アルカリ金属塩(B)、及び式Iで表される化合物(C)を含有する粘着剤用組成物。 【化1】 [図:0001422978000007.jpg] (式中、Xは、それぞれ独立に、酸素原子又は窒素原子を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はフルオロアルキル基を表す。)」 という点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 本願発明では、「前記アルカリ金属塩(B)の含有量」が、「前記(メタ)アクリルポリマー(A)の100質量部を基準として、0.1質量部以上2質量部以下」であるのに対して、引用発明1では、「前記アルカリ金属塩(B)の含有量」が、「前記(メタ)アクリルポリマー(A)の100質量部を基準として、7.5質量部」であり、上記範囲にない点。 (2) 相違点についての検討 ア 帯電防止剤としてのアルカリ金属塩(B)の含有量に関する技術常識について 引用文献3~5は、低い表面抵抗値を得るために帯電防止剤としてのアルカリ金属塩が添加された、表面保護フィルムに用いられるアクリル系樹脂粘着剤についての周知技術を示すものである(上記第4の1(3)~(5)の摘示箇所参照)。 特に、引用文献3の段落0018~0019には、「帯電防止剤及び帯電防止助剤」が「汚染成分」として記載され、被着体から剥離する際に、被着体表面への転着を抑制することができると耐汚染性が発揮されることも記載されている。また、段落0129には、「帯電防止性」の観点から、「帯電防止剤(D)の含有量として」、「特定(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して」、「0.10質量部~0.30質量部であることがより好ましい。」と記載されている。 また、引用文献4の段落0063~0065の実施例の記載からみて、その実施例5はアクリル系共重合体100重量部に対し、イオン性帯電防止剤としてのアルカリ金属塩であるLiIが2重量部添加されている。 さらに、引用文献5の段落0091には、「アクリル系ポリマー100質量部に対するアルカリ金属塩(例えばリチウム塩)の配合量は、通常、1質量部未満とすることが適当であり、好ましくは0.01~0.8質量部、より好ましくは0.01~0.5質量部、さらに好ましくは0.02~0.3質量部(例えば0.05~0.2質量部)である。アルカリ金属塩の配合量が少なすぎると、十分な帯電防止性能が得られない場合がある。一方、アルカリ金属塩の配合量が多すぎると、被着体の汚染が生じやすくなる傾向にある。」と記載されている。 そうすると、下限値は、実用化に支障を来さない帯電防止性を得るという観点から設定され、上限値としては、帯電防止性と低汚染性を実現した上で、必要以上に添加しないことが当然考慮されることが理解される。 イ 引用文献1におけるアルカリ金属塩(B)の含有量について 引用文献1の段落0002~0004には、従来、光学部品等の表面保護用の粘着テープに用いられる粘着剤には、静電気対策のための低い表面抵抗値が要求されており、粘着性と制電性の両者を満足できる粘着剤が求められることが記載されている。 そして、段落0038~0039には、制電性を得るためと、より向上する目的で、アルカリ金属塩等の「帯電防止剤(C)」と、プロピレンカーボネート等の「化合物(D)」が、それぞれ用いられることが記載され、含有量について、「帯電防止剤(C)は、アクリル系樹脂(A)100重量%に対して0.01~30重量%用いることが好ましく、0.05~10重量%用いることがより好ましい。」と記載されている。 さらに、段落0033と段落0041の記載から、粘着剤の制電性には、帯電防止剤(C)の量と運動性が関与することが把握される。 ウ 相違点についての判断 上記ア、及びイより、引用発明1について、引用文献1において好ましいとされる重量%の範囲内で、要求される粘着性と制電性を満足するアルカリ金属塩の量を決定し、本願発明の上記相違点に係る構成に至ることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。そして、数値を限定するに当たって明確な指針が存在していたのであるから、引用発明1のアルカリ金属塩(B)の含有量を、0.1質量部以上2質量部以下とするこのような限定は、実験等により、当業者が格別の創意を要することなく決定できるものというべきである。 (3) 効果について ア 本願発明の効果 本願明細書の段落0140には、本願発明の粘着剤用組成物を用いて形成された粘着フィルムは、優れた粘着性、帯電防止性、及び低汚染性を示したことが記載され、段落0114~0139に、実施例、及び比較例の、組成と評価基準を示す表1~6が記載されている。 そして、「優れた粘着性、帯電防止性、及び低汚染性を示した」とされる実施例A1~A10として、用いられたアルカリ金属塩とその(メタ)アクリルポリマー(A)の100質量部を基準とした質量部は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム1質量部(実施例A1、実施例A3~A4、実施例A6~A8)、2質量部(実施例A5)、0.1質量部(実施例A10)と、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム1質量部(実施例A2)がある。また、比較例A3~A4、比較例A6~A7についても、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム1質量部の例である。 最も優れた帯電防止性(表面抵抗率9.0×109(Ω/□))を示す実施例A5はトリフルオロメタンスルホン酸リチウム2質量部を含むものである。そして、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム0.1質量部の実施例A9で得られる帯電防止性(表面抵抗率9.0×1011(Ω/□))より、他の実施例の帯電防止性がより優れており、帯電防止性能を得るために一定以上のアルカリ金属塩の配合量が必要であるとの技術常識(引用文献1段落0038、引用文献3段落0129、引用文献4段落0032、引用文献5段落0091)とも一致する。 また、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム2質量部の実施例A5と、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム1質量部の実施例A3について、低汚染性「3」として「85℃85%RHの環境下で、3日間保管において「汚染なし」、20日間保管において「わずかに汚染あり」」の結果が得られたこと、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム1質量部の実施例A1と、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム1質量部の実施例A2については、低汚染性「5」として「85℃85%RHの環境下で、20日間保管及び40日間保管のいずれにおいても「汚染なし」」の結果が得られたこと、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム0.1質量部の実施例A9を含む他の実施例については、低汚染性「4」として「85℃85%RHの環境下で、20日間保管において「汚染なし」、40日間保管において「わずかに汚染あり」」の結果が得られたことが示されている。 そして、「アルカリ金属塩(B)」を含まない比較例であるA1、及びA2が、帯電防止性を発現せず、比較例A5は粘着フィルムを作製できなかったことが記載されており、(メタ)アクリルポリマー(A)の100質量部を基準とした「アルカリ金属塩(B)」の、0.1質量部未満の配合例、及び2質量部を超える配合例は、実施例比較例のいずれにもなく、さらに上記(2)の本願明細書段落0063の摘記からも、本願発明の下限値0.1質量部と上限値2質量部の範囲に臨界的意義を認められず、アルカリ金属塩(B)の配合量に応じた帯電防止性能と低汚染性が得られることが理解される。 加えて、本願明細書段落0062には、「アルカリ金属塩(B)は、融点が25℃超であり、室温(例えば、25℃)で固体の塩であることが好ましい。室温で固体の塩は、粘着フィルムから流出しにくいために、粘着フィルムによる被着体の汚染を防止する観点から好ましい。」と記載されており、アルカリ金属塩(B)については、量と低汚染性との関連は論じられていない。 イ 引用発明1の効果 引用発明1である段落0058の実施例1は、8×108(Ω/□)という低い表面抵抗値を示し、その値はプロピレンカーボネートを添加しない比較例1(段落0074)の10分の1という優れたものであることが開示されている。また、引用文献1の段落0033には、「再剥離用などの低粘着性が要求される用途」についての言及があり、段落0061の再剥離性についても、「試験用粘着テープの剥離フィルムを剥がし、露出した粘着層をガラス板に貼着した後、60℃-95%RHの条件下に24時間に亘って放置し、23℃-50%RHに冷却した後、ガラス板から剥離し、ガラス板の表面状態を目視で評価し」、「◎:ガラス板への粘着層移行が全くない」ことが開示されている(段落0081表1、及び段落0082)。 制電性について、引用文献1において、過塩素酸リチウムを添加しない比較例4(段落0077)では制電性がなく(段落0081~0082)、必要な制電性を得るための数値範囲は「0.05~10重量%」であることが記載されているから、その範囲内にある0.1質量部や2質量部とした場合にも、必要な制電性が得られることは、当業者が予測し得る。 また、低汚染性について、引用発明1において、その評価は「60℃-95%RHの条件下に24時間」であって、本願発明の「85℃85%RHの環境下で、20日間」よりも短期間かつ温和な条件であるが、課題として解決されていたものと認められる。そして、引用文献3の段落0021の記載から、本願明細書0062に記載されるのと同様に、アルカリ金属塩が汚染源であることが当業者に認識されていたことが把握される。また、引用文献5には、「アルカリ金属塩の配合量が少なすぎると、十分な帯電防止性能が得られない場合がある。一方、アルカリ金属塩の配合量が多すぎると、被着体の汚染が生じやすくなる傾向にある。」とあるから、引用発明1について、制電性において許容できる範囲でアルカリ金属塩を低減したときに、当然予想される効果であると認められる。 ウ 小括 そうすると、本願発明の効果は、本願発明の構成から当業者の予測できた範囲内のものであると認められる。 (4) 審判請求人の主張について ア 主張の概略 審判請求人は、令和5年9月20日付け審判請求書の請求の理由において、以下の主張を行っている。 主張1:主引例(引用文献1)について 「引用文献1には、具体的には、過塩素酸リチウム又はヘキサフルオロリン酸カリウムの配合量が、アクリル系樹脂100gに対して7.5~25gであるアクリル系粘着剤が記載されているのみであり、配合量を「0.1質量部以上2質量部以下」とする動機付けはない。」 「アクリル系樹脂100gに対して7.5~25gであり、「0.1質量部以上2質量部以下」という範囲を大きく超えている。」 主張2:周知技術を示す文献(引用文献3~5)について 「引用文献3~5によれば、アクリルポリマー100質量部に対して0.1質量部以上2質量部以下という範囲は、シリコーン系イソシアネート化合物(C)、ビニル基を有するイオン性単量体が含有されたアクリル系共重合体、又は帯電防止層という特徴を備えた、引用文献3~5に記載された発明のそれぞれにおいて採用し得る範囲であることが知られているのであって、当業者であれば、通常は、引用文献1に記載された発明における適用を考えることはない。」 主張3:効果について 「請求項1に係る粘着剤用組成物は、(メタ)アクリルポリマー(A)、アルカリ金属塩(B)、及び式(I)で表される化合物(C)を含有し、アルカリ金属塩(B)の含有量が、(メタ)アクリルポリマー(A)の100質量部を基準として、0.1質量部以上2質量部以下であることによって、良好な帯電防止性と良好な低汚染性とが得られる(段落0063等)。本願の実施例には、アルカリ金属塩(B)の含有量が0.1質量部である実施例A9(B9)と、アルカリ金属塩(B)の含有量が2質量部である実施例A5(B5)とが示されており 、これらの実施例によって、アルカリ金属塩(B)の含有量が0.1質量部以上2質量部以下である場合に、優れた帯電防止性と低汚染性との両立を実現できることが明らかにされている(段落0019、0122、及び0136)。特に、低汚染性に関しては、85℃85%RHの環境下で、20日間の期間にわたって保管した後にわずかに汚染があるか、又は、20日間若しくは40日間の期間にわたって保管した後にも汚染がないという効果が得られる(段落0135、0136)。 請求項1に係る発明が奏するこれらの効果は、引用文献1に基づき予測することができるものではない。」 イ 主張1について 上記(2)において検討したとおり、引用文献1には、制電性を得るためと、より向上する目的で、アルカリ金属塩等の「帯電防止剤(C)」と、プロピレンカーボネート等の「化合物(D)」が、それぞれ用いられることが記載され、含有量について、「帯電防止剤(C)は、アクリル系樹脂(A)100重量%に対して0.01~30重量%用いることが好ましく、0.05~10重量%用いることがより好ましい。」と記載されている。 上記相違点に係る「0.1質量部以上2質量部以下」という範囲は、引用発明1の7.5質量部もまたこの範囲にあるところの、引用文献1の当該「より好ましい」範囲にあるから、この範囲内での上限値と下限値の採用を動機付けられないほどに、「大きく超えている」とはいえないものである。 ウ 主張2について 引用文献3~5は、引用文献1により好ましいと記載された範囲内(0.05~10重量%用いることがより好ましい)で、上限下限を設定するときに、その数値範囲が当業者に「通常のこととして採用されるようなものである」ことを裏付けるものと認められ、その参照が妨げられる特段の事情があるとはいえない。 エ 主張3について 帯電防止性と低汚染性について、上記(3)で検討したとおりである。 オ 小括 したがって、上記審判請求人の主張はいずれも採用できない。 (5) 引用発明1を主引例とする場合のまとめ したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明(引用発明1)、及び技術常識に基いて当業者が容易に発明することができたものである。 2 本願発明と引用発明2との対比・判断 (1)対比 本願明細書段落0020に、「(メタ)アクリルポリマー(A)は、(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位を含むポリマーである。」と記載されており、引用発明2の「硬化して得られた厚さ50μmの粘着剤」は、(メタ)アクリルモノマーに相当する「ウレタンアクリレートUV-3000Bを20重量部と、メトキシポリエチレングリコールアクリレートAM-90Gとを20重量部」、「アクリル酸(AA)を5重量部、イソオクチルアクリレートを45重量部」に由来する構造単位を含むポリマーを含むから、引用発明2の「硬化して得られた厚さ50μmの粘着剤」のうち、「0.4wt%の過塩素酸リチウムのプロピレンカーボネート中の溶液を10重量部、および ・チバ・ガイギー社製のダロキュア(商標)1173を1部」以外の部分は、本願発明における「(メタ)アクリルポリマー(A)」に相当する。 また、引用発明2における「過塩素酸リチウム」は、本願発明における「アルカリ金属塩(B)」に相当するから、前記「(メタ)アクリルポリマー(A)」相当の100質量部を基準とすると、「0.4wt%の過塩素酸リチウムのプロピレンカーボネート中の溶液を10重量部」に含まれる「過塩素酸リチウム」の質量部は、0.044である。 そして、引用発明2における「プロピレンカーボネート」は、本願発明における「式Iで表される化合物(C)」であって、「X」が「酸素原子」を表し、4つの「R」のうち1つが「アルキル基であるメチル基」であり、3つが「水素原子」である化合物に相当する。 引用発明2における「粘着剤」は、上記組成を含む組成物であるから、本願発明における「粘着剤用組成物」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明2は、 「(メタ)アクリルポリマー(A)、アルカリ金属塩(B)、及び式Iで表される化合物(C)を含有する粘着剤用組成物。 【化1】 [図:0001422978000008.jpg] (式中、Xは、それぞれ独立に、酸素原子又は窒素原子を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はフルオロアルキル基を表す。)」 という点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 本願発明では、「前記アルカリ金属塩(B)の含有量」が、「前記(メタ)アクリルポリマー(A)の100質量部を基準として、0.1質量部以上2質量部以下」であるのに対して、引用発明2では、「前記アルカリ金属塩(B)の含有量」が、前記(メタ)アクリルポリマー(A)の100質量部を基準として、0.044質量部」であり、上記範囲にない点。 (2) 相違点についての検討 ア 帯電防止剤としてのアルカリ金属塩(B)の含有量に関する技術常識について 上記1(2)アと同様、引用文献3~5は、低い表面抵抗値を得るために帯電防止剤としてのアルカリ金属塩が添加された、表面保護フィルムに用いられるアクリル系樹脂粘着剤についての周知技術を示すものであり(上記第4の1(3)~(5)の摘示箇所参照)、下限値は、実用化に支障を来さない帯電防止性を得るという観点から設定され、上限値としては、帯電防止性と低汚染性を実現した上で、必要以上に添加しないことが当然考慮されることが理解される。 イ 引用文献2におけるアルカリ金属塩(B)の含有量について 引用文献2の段落0007には、外部環境に影響を受けない帯電防止性を有する、イオン伝導性の粘着剤組成物を提供することが課題であり、その解決手段として、段落0008、及び請求項1に、(1)の共重合体、および、(2)イオン性化合物、を含む、帯電防止性粘着剤組成物が記載されている。また、「のり残りおよび粘着剤組成物の表面抵抗の経時変化」が望ましくないことも記載されている。 そして、段落0015~0016には、イオン性化合物として、特に、リチウムイオンは最も小さいイオン半径を有しており、従って、好適な高い電荷移動度を粘着剤組成物に提供することができること、粘着剤組成物中に含まれるイオン性化合物の量は10重量%以下であること、導電性を高めるために、プロピレンカーボネートのような誘電率の高い化合物をさらに含有すること、も記載されている。 ウ 相違点についての判断 上記ア、及びイより、引用発明2について、引用文献2において上限とされる10重量%以下での範囲内で、要求される「表面抵抗値、糊残り、接着力(段落0029の表2)」を満足するイオン性化合物の量を決定し、本願発明の上記相違点に係る構成に至ることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。そして、数値を限定するに当たって明確な指針が存在していたのであるから、引用発明2のアルカリ金属塩(B)の含有量を、0.1質量部以上2質量部以下とするこのような限定は、実験等により、当業者が格別の創意を要することなく決定できるものというべきである。 (3) 効果について ア 本願発明の効果 上記1(3)アと同様、本願明細書の段落0140には、本願発明の粘着剤用組成物を用いて形成された粘着フィルムは、優れた粘着性、帯電防止性、及び低汚染性を示したことが記載され、段落0114~0139に、実施例、及び比較例の、組成と評価基準を示す表1~6が記載されている。 そして、「優れた粘着性、帯電防止性、及び低汚染性を示した」とされる実施例A1~A10として、用いられたアルカリ金属塩とその(メタ)アクリルポリマー(A)の100質量部を基準とした質量部は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム1質量部(実施例A1、実施例A3~A4、実施例A6~A8)、2質量部(実施例A5)、0.1質量部(実施例A10)と、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム1質量部(実施例A2)がある。また、比較例A3~A4、比較例A6~A7についても、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム1質量部の例である。 最も優れた帯電防止性(表面抵抗率9.0×109(Ω/□))を示す実施例A5はトリフルオロメタンスルホン酸リチウム2質量部を含むものである。そして、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム0.1質量部の実施例A9で得られる帯電防止性(表面抵抗率9.0×1011(Ω/□))より、他の実施例の帯電防止性がより優れており、帯電防止性能を得るために一定以上のアルカリ金属塩の配合量が必要であるとの技術常識(引用文献1段落0038、引用文献3段落0129、引用文献4段落0032、引用文献5段落0091)とも一致する。 また、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム2質量部の実施例A5と、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム1質量部の実施例A3について、低汚染性「3」として「85℃85%RHの環境下で、3日間保管において「汚染なし」、20日間保管において「わずかに汚染あり」」の結果が得られたこと、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム1質量部の実施例A1と、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム1質量部の実施例A2については、低汚染性「5」として「85℃85%RHの環境下で、20日間保管及び40日間保管のいずれにおいても「汚染なし」」の結果が得られたこと、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム0.1質量部の実施例A9を含む他の実施例については、低汚染性「4」として「85℃85%RHの環境下で、20日間保管において「汚染なし」、40日間保管において「わずかに汚染あり」」の結果が得られたことが示されている。 そして、「アルカリ金属塩(B)」を含まない比較例であるA1、及びA2が、帯電防止性を発現せず、比較例A5は粘着フィルムを作製できなかったことが記載されており、(メタ)アクリルポリマー(A)の100質量部を基準とした「アルカリ金属塩(B)」の、0.1質量部未満の配合例、及び2質量部を超える配合例は、実施例比較例のいずれにもなく、さらに上記(2)の本願明細書段落0063の摘記からも、本願発明の下限値0.1質量部と上限値2質量部の範囲に臨界的意義を認められず、アルカリ金属塩(B)の配合量に応じた帯電防止性能と低汚染性が得られることが理解される。 加えて、本願明細書段落0062には、「アルカリ金属塩(B)は、融点が25℃超であり、室温(例えば、25℃)で固体の塩であることが好ましい。室温で固体の塩は、粘着フィルムから流出しにくいために、粘着フィルムによる被着体の汚染を防止する観点から好ましい。」と記載されており、アルカリ金属塩(B)については、量と低汚染性との関連は論じられていない。 イ 引用発明2の効果 引用発明2の粘着剤組成物は、5.7×108(Ω/□)という低い表面抵抗値を示すとともに、糊残りの有無は「なし」であることが開示されている(段落0029表2、及び段落0025)。 制電性について、引用発明2において、0.04重量部の過塩素酸リチウムの添加で十分な制電性が得られており、引用文献2にはさらに、リチウムイオンが好適な高い電荷移動度を粘着剤組成物に提供することができ、必要な制電性を得るための数値範囲は「10重量%以下」であること、引用発明2に含まれるプロピレンカーボネートが、高い誘電率を有する上、イオン性化合物を溶かすことができ有利であることも記載されている。そうすると、引用発明2のアルカリ金属塩を、0.04重量部以上10重量部以下の範囲内にある0.1質量部や2質量部とした場合にも、必要な制電性が得られることは、当業者が予測し得る。 また、低汚染性について、引用文献2においては、本願発明の「85℃85%RHの環境下で、20日間」の条件でその評価が行われたかは不明であるが、課題として解決されていたものと認められる。そして、引用文献3の段落0021の記載から、本願明細書0062に記載されるのと同様に、アルカリ金属塩が汚染源であることは当業者に認識されていたことが把握される。また、引用文献5には、「アルカリ金属塩の配合量が少なすぎると、十分な帯電防止性能が得られない場合がある。一方、アルカリ金属塩の配合量が多すぎると、被着体の汚染が生じやすくなる傾向にある。」とあるから、引用発明2について、制電性において許容できる範囲でアルカリ金属塩を設定したときに、当然予想される効果であると認められる。 ウ 小括 そうすると、本願発明の効果は、本願発明の構成により当業者の予測できた範囲内のものであると認められる。 (4) 審判請求人の主張について ア 主張の概略 審判請求人は、令和5年9月20日付け審判請求書の請求の理由において、以下の主張を行っている。 主張1:主引例(引用文献2)について 「引用文献2には、過塩素酸リチウムを含有する粘着剤組成物として、具体的には、添加量が0.04重量部である組成物のみが記載されており、添加量を「0.1質量部以上2質量部以下」とする動機付けはない。」 「0.04重量部」は、「0.1質量部以上2質量部以下」という範囲を大きく下回る。 主張2:周知技術を示す文献(引用文献3~5)について 上記1(4)アの主張2と同様、引用文献3~5に記載された事項について、当業者であれば、通常は、引用文献2に記載された発明における適用を考えることはない。 主張3:効果について 上記1(4)アの主張3と同様、請求項1に係る発明が奏する効果は、引用文献2に基づき予測することができるものではない。 イ 主張1について 上記(2)において検討したとおり、引用文献2には、帯電防止性を得るためと、より向上する目的で、リチウム塩等の「イオン性化合物」と、プロピレンカーボネートのような誘電率の高い化合物が用いられることが記載され、「粘着剤組成物中に含まれるイオン性化合物の量は10重量%以下である。」と記載されている。 上記相違点に係る「0.1質量部以上2質量部以下」という範囲は、引用発明2の0.04質量部もまたこの範囲にあるところの、引用文献2の当該「10重量%以下である」から、この範囲内での上限値と下限値の採用を動機付けられないほどに、「大きく超えている」とはいえないものである。 ウ 主張2について 引用文献3~5は、引用文献2に規定された範囲内(10重量%以下である)で、上限下限を設定するときに、その数値範囲が当業者に「通常のこととして採用されるようなものである」ことを裏付けるものと認められ、その参照が妨げられる特段の事情があるとはいえない。 エ 主張3について 帯電防止性と低汚染性について、上記(3)で検討したとおりである。 オ 小括 したがって、審判請求人の主張はいずれも採用できない。 (5) 引用発明2を主引例とする場合のまとめ したがって、本願発明は、引用文献2に記載された発明(引用発明2)、及び技術常識に基いて当業者が容易に発明することができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-015886

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