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特許拒絶査定不服審判

2023-005763

基材付き焼結接合用シートの巻回体

審判番号
2023-005763
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-047965外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年04月10日
審決日
2025年01月23日
公報発行日
2025年05月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C09J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 47965「基材付き焼結接合用シートの巻回体」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月17日出願公開、特開2020-147706〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成31年3月15日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年 7月20日付け:拒絶理由通知書 同年 9月21日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年 1月 6日付け:拒絶査定(謄本発送は、1月17日) 同年 4月10日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和5年4月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年4月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「基材と、 導電性金属含有の焼結性粒子とバインダー成分とを含む焼結接合用シートと、を含む積層構造を有する基材付き焼結接合用シートが、 巻き芯に対してロール状に巻き取られた形態をなす巻回体であって、 巻き芯の外径が30~260mm、焼結接合用シートの厚みが10~300μmであり、 前記バインダー成分として熱分解性高分子バインダーおよび/または低沸点バインダーを含み、 前記熱分解性高分子バインダーの重量平均分子量が10000以上であり、 前記低沸点バインダーが前記熱分解性高分子バインダーの熱分解開始温度よりも沸点が低い巻回体。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和4年9月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「基材と、 導電性金属含有の焼結性粒子とバインダー成分とを含む焼結接合用シートと、を含む積層構造を有する基材付き焼結接合用シートが、 巻き芯に対してロール状に巻き取られた形態をなす巻回体であって、 前記バインダー成分として高分子バインダーおよび/または低分子バインダーを含み、 前記高分子バインダーの重量平均分子量が10000以上であり、 前記低分子バインダーが前記高分子バインダーの熱分解開始温度よりも沸点が低い巻回体。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「巻き芯」の外径、「焼結接合用シート」の厚み、及び、「高分子バインダー」が熱分解性であることを限定するものである。また、本願明細書の段落【0032】の「焼結接合用シート10中の低分子バインダーは、好ましくは、低沸点バインダーである。」との記載から、低沸点バインダーは低分子バインダーの一態様であることが認められるところ、本件補正は、本件補正前の「低分子バインダー」が「低沸点バインダー」であることを限定するものである。 そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献8 原査定の拒絶の理由で引用された、本件出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2018-524415号公報(以下、「引用文献8」という。)には、次の記載がある(当審注:下線は、合議体が付した。)。 「【請求項1】 1種以上のエポキシモノマー、オリゴマーまたはポリマー、アクリルモノマー、オリゴマーまたはポリマー、フェノール系、ノボラック、ポリウレタン、シアネートエステル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリ尿素、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、マレイミド、ビスマレイミド、ポリイミドまたはそれらの混合物からなる群から選択される、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂成分、 1種以上の導電性充填剤、および 任意に有機希釈剤を含む焼結フィルムのための組成物であって、組成物が、 100℃以下の温度および40psi以下の圧力でウエハー上にラミネートされ、 硬化または焼結時に260℃で少なくとも1.0kg/mm2のダイせん断強度を有する、組成物。」 「【背景技術】 【0002】 エレクトロニクスにおける鉛フリー材料の使用を義務付ける環境規制のために、ダイアタッチ産業は、はんだ付け代替材料に焦点を当てている。加えて、ダイアタッチ材料は、特に回路密度の増加に伴い、より小型の半導体デバイスに適した熱伝導率および電気伝導率を有さなければならない。フィルムは、半導体業界で使用される従来のラミネーターを用いてラミネートすることが難しいために焼結フィルムは、これまでこの目的を果たすことができなかった。具体的には、焼結フィルムの金属含有率が高くなり、焼結フィルムの表面乾燥が生じ、フィルムのラミネート性や接合性が阻害される。さらに、ウエハー上に焼結フィルムをラミネートし、続いてダイおよびフィルムを基板に接合するためには、高温および高圧が必要である。焼結フィルムを積層して結合するために必要とされるこれらの高い温度および圧力は、半導体産業で使用される一般的に使用される半導体プロセス装置によって与えられる容量を超える。」 「【0005】 本明細書に記載の焼結フィルム組成物は、従来の低温および低圧ラミネーターを用いてウエハー上に積層することができる。さらに、焼結フィルムと基板との間の濡れ性が維持され、結合および硬化の後に適切な焼結形態が達成される。 【0006】 さらに、本発明の組成物から調製された焼結フィルムは、それぞれ図1および図2に示すように、フレキシブルロール形態またはプレカット形態で製造することができる。フレキシブルロール形態またはプレカット形態では、フィルムは、剥離ライナー、ダイシングテープなどを含む形態で使用するのに適した基板の間に挟み込むことができる。一例として、焼結フィルム(図1および2の「ダイアタッチフィルム」と表示されている)は、図1に示すフレキシブルロール形態では、2つの剥離ライナーの間に挟まれ、図2に示すプレカット形態では、剥離ライナーとダイシングテープの間に挟まれる。」 「【図面の簡単な説明】 【0007】 【図1】図1A~Bは、フレキシブルロール形態で製造された焼結可能なフィルムの図である。 【図2】図2A~Bは、プレカット形態で製造された焼結可能なフィルムの図である。 【図3】図3Aは、本明細書に記載の組成物から調製された焼結可能なフィルムの図である。図3Bは、図3Aの拡大図である。 【発明を実施するための形態】 【0008】 発明の詳細な説明 予期しないほど低い温度および圧力のラミネート特性を有する焼結フィルムを製造する組成物および方法が本明細書に記載される。具体的には、本明細書に記載の組成物は、結合剤、充填剤、および低温および低圧ラミネートフィルムをもたらす他の成分を含む。フィルムは、半導体のダイアタッチ材料としてのフィルムの焼結能力を犠牲にすることなく、改善された加工性および濡れ性を示す。さらに、本明細書に記載の組成物から得られる焼結フィルムは、特に柔軟性があり、生産コーターによってロールとして調製することができる。」 「【0036】 いくらかの実施形態では、1種のエポキシモノマー、オリゴマーまたはポリマーが組成物中に存在する。ある実施形態では、エポキシモノマー、オリゴマーまたはポリマーの組合せが組成物中に存在する。例えば、2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、または6種以上のエポキシモノマー、オリゴマーまたはポリマーが組成物中に存在する。エポキシ樹脂の組み合わせを選択し、組成物から調製したフィルムまたはペーストの所望の特性を達成するために使用することができる。例えば、エポキシ樹脂の組み合わせは、組成物から調製されたフィルムが改善されたフィルム品質、粘着性、濡れ性、柔軟性、作業寿命、高温接着性、樹脂-充填剤相溶性、および焼結性を示すように選択することができる。エポキシ樹脂の組み合わせは、組成物から調製されたペーストが改善されたレオロジー、分散性、作業寿命、および焼結性を示すように選択することができる。」 「【0038】 本明細書に記載の組成物は、アクリルモノマー、ポリマー、またはオリゴマーをさらに含むことができる。本発明の実施において使用が企図されるアクリレートは、当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,717,034号を参照し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。本発明に用いられるアクリルモノマー、ポリマーまたはオリゴマーは、特定の分子量に限定されない。例示的なアクリル樹脂は、約50以下~約1,000,000までの範囲の分子量を有することができる。いくつかの実施形態において、任意の使用のために企図されるアクリルポリマーは、約100~約10,000の範囲の分子量および約-40℃~約20℃の範囲のTgを有することができる。ある実施形態では、本明細書の任意の使用のために企図されるアクリルポリマーは、約10,000~約900,000(例えば、約100,000~約900,000または約200,000~約900,000)の範囲の分子量および約-40℃~約20℃の範囲のTgを有する。本明細書に記載の組成物に使用するアクリルコポリマーの例には、Teisan Resin SG-P3およびTeisan Resin SG-80H(共にNagase Chemtex Corp.;日本から商業的に入手できる)がある。任意に、本明細書に記載の組成物に使用するアクリルポリマーまたはオリゴマーは、分解性アクリルポリマーまたはオリゴマーまたはエポキシ変性アクリル樹脂であることができる。 【0039】 アクリルモノマー、ポリマーまたはオリゴマーは、組成物の全固形分の約10重量%までの量で組成物中に存在し得る。例えば、アクリルモノマー、コポリマーまたはオリゴマーは、約0.05重量%~約7重量%または約0.1重量%~約3重量%の量で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、アクリルモノマー、コポリマーまたはオリゴマーは、組成物の全固形分の重量に基づき、約10重量%以下、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、または約1重量%以下の量で存在する。 【0040】 本明細書に記載の組成物に使用するための追加の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂成分は、ポリウレタン、シアネートエステル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリ尿素、ポリビニルアセタール樹脂およびフェノキシ樹脂を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、マレイミド、ナジイミド、イタコンイミド、ビスマレイミド、またはポリイミドなどのイミド含有モノマー、オリゴマー、またはポリマーを含むことができる。 【0041】 1種以上のエポキシモノマー、ポリマーまたはオリゴマー;アクリルモノマー、ポリマーまたはオリゴマー、フェノール系、ノボラック;ポリウレタン;シアネートエステル;ポリビニルアルコール;ポリエステル;ポリ尿素;ポリビニルアセタール樹脂;フェノキシ樹脂;および/またはイミド含有モノマー、ポリマーまたはオリゴマー(例えば、マレイミド、ビスマレイミドおよびポリイミド)を含む熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂成分は、組み合わせて結合剤を形成することができる。結合剤は、固体、半固体または液体であり得る。任意に、結合剤は350℃未満の分解温度を有する。」 「【0042】 本明細書に記載の組成物はまた、銀を含む1種以上の導電性充填剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物中に存在する導電性充填剤は、銀である。他の実施形態では、銀と共に、1種以上の追加の導電性充填剤を含めることができる。本発明の実施の使用に企図される追加の導電性充填剤には、ニッケル、コバルト、銅、銀めっき金属、ニッケルめっき金属、銀めっきグラファイト、銀被覆ポリマー、ニッケルめっきグラファイト、ニッケルめっきポリマー、金、パラジウム、白金、カーボンブラック、炭素繊維、グラファイト、カーボンナノチューブ、アルミニウム、インジウム錫酸化物、銀被覆銅、銀被覆アルミニウム、銀被覆グラファイト、ニッケル被覆グラファイト、ビスマス、錫、ビスマス錫合金、金属被覆ガラス球、銀被覆繊維、銀被覆球、アンチモンドープ酸化錫、カーボンナノチューブ、導電性ナノフィラー、そのような金属の合金など、並びにそれらの任意の2種以上の混合物が挙げられる。これらおよび類似の金属および金属合金は市販されている。」 「【0061】 本発明のある実施形態では、本明細書に記載の組成物の製造方法を提供する。本発明の組成物は、焼結フィルムの形態で、または焼結ペーストの形態で製造することができる。 【0062】 焼結フィルムを形成する本発明の方法は、実質的に均質なブレンドを得るのに十分な時間、高せん断混合を企図する成分の組み合わせを施すことを含む。いくつかの実施形態では、成分を約3時間まで(例えば、約1時間~3時間)の期間にわたって混合することができる。成分の組み合わせは、室温で混合することができる。 【0063】 組成物を焼結フィルムの形態にする実施形態では、組成物を適切な基板(例えば、剥離ライナー)に塗布し、次に高温で加熱して実質的にすべての非反応性希釈剤(すなわち、溶媒)をそこから除去する。例えば、溶媒の少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%を除去することができる。焼結ペーストを加熱して乾燥してフィルムにするプロセスは、ここではBステージングと呼ばれる。得られるフィルムは、約5ミクロン~約50ミクロンの厚さを有することができる。 【0064】 本発明のある実施形態では、上記Bステージ化組成物から溶媒/希釈剤の実質的に全てを除去して得られる反応生成物を含む焼結フィルムを提供する。フィルムはロールで巻き取ることができる。」 「【0070】 本明細書で企図される例示的な焼結ペーストには、組成物が約160~300℃の範囲の温度で約10分~2時間の範囲の時間硬化されるときに生成される焼結ペーストが含まれる。硬化は、圧力の有無にかかわらず、オーブン内で行うことができる。例えば、硬化は、加圧オーブンまたは無加圧オーブン中で行うことができる。硬化工程の雰囲気は、窒素雰囲気下または空気雰囲気下など、硬化に適した任意の雰囲気とすることができる。いくつかの実施形態では、硬化工程は窒素雰囲気下で行われる。硬化工程の継続時間は、硬化工程を行うために使用される雰囲気に基づいて、当業者に知られているように改変することができる。 【0071】 実施者のニーズに合わせて様々な硬化スケジュールを考案することができる。低温および長時間の焼結プロファイルは、大型のダイに使用することができ、溶媒は徐々に除去され、ボイドのない結合ラインが保証される。典型的な焼結プロファイルがここで提供されるが、他の同様の焼結プロファイルも同様に効果的であり得ることが理解されるべきである。例示的な焼結プロファイルには、室温から175℃までの30分の傾斜、続いて175℃での60分の保持;室温から200℃までの30分間の傾斜、続いて200℃での60分間の保持;室温から220℃までの30分間の傾斜、続いて220℃での60分間の保持;室温から110℃までの15分間の傾斜、続いて110℃での60分間の保持、続いて240℃での60分間の保持;または室温から250℃までの30分の傾斜、続いて250℃での60分間の保持が挙げられる。 【0072】 任意に、焼結プロファイルは、より高い温度、例えば室温から300℃までの60分の傾斜、続いて300℃で2時間の保持を含むことができる。」 「【0089】 図1A-Bおよび2A-Bは、フレキシブルロール形態(10)またはプレカット形態(20)で製造された本発明の組成物から調製された焼結フィルム(「ダイアタッチフィルム」とも呼ばれる)を示す図である。フレキシブルロール形態またはプレカット形態では、フィルムは、剥離ライナー、ダイシングテープなどの形態で使用するのに適した基板の間に挟み込むことができる。剥離ライナーは約50μmであり得、フィルムは約15~30μmであり得る。図1Aにおいて、フレキシブルロール形態(10)は、2つの剥離ライナー、ゆるい剥離ライナー(16)とタイトな剥離ライナー(18)の間に挟まれた焼結フィルム(14)を含む。焼結フィルムに挟まれていない剥離ライナーの一部である、先行する(leading)剥離ライナー(12)も示されている。図1Bは、剥離ライナー(16)および(18)の間に挟まれた焼結フィルム(14)を示す、線A-Aに沿った図1Aの断面図である。ダイシングテープ(24)と剥離ライナー(26)との間に挟まれた焼結フィルム(22)を示すB-B線に沿った図2Aの断面図を示す。」 「【実施例】 【0091】 例1 焼結フィルム 本発明による配合物は、以下のように、表1に記載の成分を組み合わせることによって調製した。 【0092】 【表1】 [図:0001421739000001.jpg] 【0093】 高せん断速度で表1に示す成分と溶媒(組成物の約30重量%)を混合することによって、表1に示す配合物A、BおよびCのそれぞれについて焼結フィルムを調製し、コーティングスラリーを得る。コーティングスラリーを剥離ライナーに塗布し、約120~150℃で5分間加熱して溶媒を除去し、組成物を焼結フィルムに安定化させた。次に、カバーライナーを焼結フィルムに適用し、110℃および30psiで積層して、Bステージフィルムをカバーライナーに粘着させ、得られる材料を焼結フィルムロールに巻き取った。ダイアタッチは、以下の工程によって達成された。:カバーライナーを剥がす。;フィルムを約90~95℃、約30~40psiでウエハー上に積層する。;剥離ライナーを剥がす。;ダイシングテープにフィルムを積層する。;フィルムおよびウエハーをダイシングする;ダイシングテープからダイシングされたダイおよびフィルムを取り出す。;ダイシングされたダイとフィルムをリードフレームに取り付ける。;ダイ、フィルム、およびリードフレームを高温および高圧下、およびダイアタッチ接着条件について本明細書に記載される時間条件下で一緒に接着させる。;および任意に、本明細書に記載の硬化条件に従ってダイアタッチデバイスのための硬化または焼結プロセスを実施することを含む。得られる材料を、以下にさらに記載するように、高温ダイせん断強度について試験した。パッケージ内特性および信頼性試験のための試験材料を調製するために、ワイヤボンディングおよび成形プロセスを、ダイアタッチ接着および硬化後に行った。 【0094】 図3Aは、集束イオンビーム(FIB)ミリング後にとった、TiBiAgダイ表面(32)と銀被覆リードフレーム(46)との間の焼結フィルム(30)の断面の例示的な走査電子顕微鏡(SEM)表示である。図3Bは、フィルム(30)の一部の拡大図である。焼結フィルム30は、粒状充填剤(36)、焼結銀(38)、樹脂(48)、および細孔または多孔質領域(42)を含む。さらに、焼結可能なフィルムは、材料中に存在する金属間層(例えば、チタン-ニッケル-銀のダイ表面と焼結フィルムとの間に形成される金属間層、および焼結されたフィルムと銀被覆リードフレームとの間に形成される金属間層)を含む。TiNiAgダイ表面(32)と焼結フィルム(30)との間の界面に第1の金属間層(44)が形成される。銀被覆リードフレーム(46)と焼結フィルム(30)との間の界面に第2の金属間層(46)が形成される。」 「【図1A】 [図:0001421739000002.jpg] 」 「【図1B】 [図:0001421739000003.jpg] 」 「【図3A】 [図:0001421739000004.jpg] 」 イ 引用文献6 原査定の拒絶の理由で引用された、本件出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2010-126716号公報(以下、「引用文献6」という。)には、次の記載がある(当審注:下線は、合議体が付した。)。 「【請求項1】 半導体装置製造用フィルムが円柱状の巻き芯にロール状に巻き取られた半導体装置製造用フィルムロールであって、前記巻き芯の直径が7.5cm~15.5cmの範囲内である半導体装置製造用フィルムロール。 【請求項2】 前記半導体装置製造用シートは、基材上に粘着剤層、接着剤層及びセパレータが順次積層された構造を有する請求項1に記載の半導体装置製造用フィルムロール。」 「【0012】 巻き芯への半導体装置製造用フィルム(以下、「フィルム」という場合がある。)の巻き取りは、当該フィルムが歪んで皺が発生したり、巻き端面が乱れるのを防止するため、所定以上の張力をフィルムに加えながら行う。この様な状態で巻き芯に巻き取りが行われたフィルムには、中心に向かうに従い応力が集中する。本発明は、巻き芯の直径を7.5cm以上に設定し、巻き取るフィルムに対する接触面積を大きくすることで単位面積当たりに加わる圧力を低減することにより、応力集中の緩和を図るものである。その結果、巻き芯に長期間巻き取られた状態でフィルムロールが保管されても、例えば、フィルムの端縁部の上に巻き付けられるフィルムに巻き痕が生じるのを防止することができる。尚、巻き芯の直径を15.5cm以下にするのは、半導体装置製造用フィルムロールの直径が大きくなり過ぎて、取り扱い性が低下するのを防止するためである。」 「【0022】 本実施の形態に係る半導体装置製造用フィルムロール(以下、「フィルムロール」という。)について、半導体装置製造用フィルムとしてダイシング・ダイボンドフィルムを例にして以下に説明する。図1は、本実施の形態に係る半導体装置製造用フィルムロールの概略を表す斜視図である。図2は、半導体装置製造用フィルムとしてのダイシング・ダイボンドフィルムの積層構造を表す断面模式図である。 【0023】 図1に示すように、本実施の形態に係るフィルムロール1は、円柱状の巻き芯2にダイシング・ダイボンドフィルム3がロール状に巻き取られたものである。ダイシング・ダイボンドフィルム3の巻き取りは、巻き取るべきダイシング・ダイボンドフィルム3の巻き始めの端縁を巻き芯2に接着し、その巻き芯2を巻取方向に回転させることにより行われている。この巻き取りの際、ダイシング・ダイボンドフィルム3には20~100N/m、好ましくは25~90N/m、より好ましくは30~80N/mの範囲内の巻き取り張力が加えられている。巻き取り張力を20N/m以上にすることにより、ダイシング・ダイボンドフィルム3に歪みに起因した皺や、巻き端面の乱れの発生を防止することができる。その一方、巻き取り張力を100N/m以下にすることにより、ダイシング・ダイボンドフィルム3に過度な張力が加わり伸長するのを防止することができる。 【0024】 前記巻き芯2の直径rは、7.5~15.5cmの範囲内が好ましく、7.5~12.5cmの範囲内がより好ましい。直径rを7.5cm以上にすることにより、巻き芯2のダイシング・ダイボンドフィルム3に対する接触面積を増大させ、単位面積当たりに加わる圧力を低減することができる。その結果、ダイシング・ダイボンドフィルム3に加わる応力集中の緩和が図れる。その一方、直径rを15.5cm以下にすることにより、フィルムロールの直径が大きくなり過ぎて、取り扱い性が低下するのを防止することができる。」 「【0067】 また、接着剤層13、13’には、その用途に応じて無機充填剤を適宜配合することができる。無機充填剤の配合は、導電性の付与や熱伝導性の向上、弾性率の調節等を可能とする。前記無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック類、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鈴、錫、亜鉛、パラジウム、半田等の金属、又は合金類、その他カーボン等からなる種々の無機粉末が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、シリカ、特に溶融シリ力が好適に用いられる。また、無機充填剤の平均粒径は0.1~80μmの範囲内であることが好ましい。」 「【図1】 [図:0001421739000005.jpg] 」 ウ 引用文献7 原査定の拒絶の理由で引用された、本件出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-122432号公報(以下、「引用文献7」という。)には、次の記載がある(当審注:下線は、合議体が付した。)。 「【請求項1】 半導体装置用フィルムが円柱状の巻き芯にロール状に巻き取られた半導体装置用フィルムロールであって、 前記半導体装置用フィルムは、ダイシングフィルムと接着フィルムとが積層されたダイシングフィルム付き接着フィルムが、所定の間隔をおいてセパレータ上に積層された構成を有しており、 前記セパレータ上に積層されている前記ダイシングフィルム付き接着フィルムの枚数が350枚以下であることを特徴とする半導体装置用フィルムロール。」 「【0034】 図1は、本実施形態に係る半導体装置用フィルムロールの概略を表す斜視図である。 【0035】 図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置用フィルムロール10は、円柱状の巻き芯12に半導体装置用フィルム20がロール状に巻き取られたものである。半導体装置用フィルム20の巻き取りは、巻き取るべき半導体装置用フィルム20の巻き始めの端縁(セパレータ22の端縁(図2(a)参照))を巻き芯12に接着し、その後、巻き芯12を巻取方向に回転させることにより行われる。 ・・・ 【0042】 巻き芯12の直径r1は、一般的に、70~100mmの範囲内である。なかでも、下層の接着フィルム40に過度の圧力がかかるのを防止する観点から、80mm以上であることが好ましい。また、フィルムロールの直径が大きくなり過ぎて、取り扱い性が低下するのを防止する観点から、100mm以下であることが好ましい。」 「【0059】 (無機充填剤) また、本実施形態の接着フィルムには、その用途に応じて無機充填剤を適宜配合することができる。無機充填剤の配合は、導電性の付与や熱伝導性の向上、弾性率の調節等を可能とする。前記無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック類、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、パラジウム、半田などの金属、又は合金類、その他カーボンなどからなる種々の無機粉末が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、シリカ、特に溶融シリ力が好適に用いられる。また、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛等からなる導電性微粒子を添加して導電性接着フィルムとすることにより、静電気の発生を抑制することができる。なお、無機充填剤の平均粒径は0.1~80μmの範囲内であることが好ましい。」 「【図1】 [図:0001421739000006.jpg] 」 エ 引用文献1 原査定の拒絶の理由で引用された、本件出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018-37548号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある(当審注:下線は、合議体が付した。)。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、加熱接合用シート、及び、ダイシングテープ付き加熱接合用シートに関する。」 「【0041】 焼結前層31に含まれる有機バインダーは、熱分解性バインダーを含むことが好ましい。 【0042】 前記熱分解性バインダーを含有すると、加熱により焼結層とした際に、熱分解性バインダーが熱分解される。その結果、より好適に焼結層を形成することができる。」 「【0044】 本明細書において「熱分解性バインダー」とは、加熱接合工程において熱分解させることが可能なバインダーをいう。前記熱分解性バインダーは、加熱接合工程後には、焼結層(加熱後の焼結前層31)に、ほとんど残存しないことが好ましい。前記熱分解性バインダーとしては、例えば、焼結前層31に含有させたとしても、大気雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で、23℃から400℃まで昇温を行った後のエネルギー分散型X線分析により得られる炭素濃度が15重量%以下となるような材料が挙げられる。例えば、熱分解性バインダーとして、より熱分解させ易い材料を採用すれば、比較的含有量を多くしても、加熱接合工程後に、焼結層(加熱後の焼結前層31)にほとんど残存させないようにすることができる。 【0045】 前記熱分解性バインダーとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの材料は単独で、又は、2種以上を混合して使用できる。なかでも、熱分解性が高いという観点から、ポリカーボネートが好ましい。 【0046】 前記ポリカーボネートとしては、加熱接合工程において熱分解させることが可能なものであれば、特に限定されないが、主鎖の炭酸エステル基(-O-CO-O-)間に芳香族化合物(例えば、ベンゼン環など)を含まず、脂肪族鎖からなる脂肪族ポリカーボネートや、主鎖の炭酸エステル基(-O-CO-O-)間に芳香族化合物を含む芳香族ポリカーボネートを挙げることができる。なかでも、脂肪族ポリカーボネートか好ましい。 前記脂肪族ポリカーボネートとしては、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート等が挙げられる。なかでもシート形成のためのワニス作製における有機溶剤への溶解性の観点から、ポリプロピレンカーボネートが好ましい。 前記芳香族ポリカーボネートとしては、主鎖にビスフェノールA構造を含むもの等が挙げられる。 前記ポリカーボネートの重量平均分子量は、10,000~1,000,000の範囲内であることが好適である。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値である。・・・ ・・・ 【0049】 アクリル樹脂のなかでも、重量平均分子量が1万~100万のものがより好ましく、3万~70万のものがさらに好ましい。上記数値範囲内であると、加熱接合工程前の接着性、及び、加熱接合工程時における熱分解性に優れるからである。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値である。 また、アクリル樹脂のなかでも、200℃~400℃で熱分解するアクリル樹脂が好ましい。」 (3)引用文献8に記載された発明 引用文献8の段落【0091】~【0093】に記載された、表1の配合物Aを用いて作製された焼結フィルムロールに着目して整理すると、引用文献8には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) 「エポキシ樹脂1(脂肪族エポキシ樹脂と芳香族エポキシ樹脂との付加物)2.6重量%と、エポキシ樹脂2(エポキシ樹脂とCTBNゴムとの付加物)0.55重量%と、アクリルポリマー(850000の分子量(Mw)、12℃のガラス転移温度のアクリルコポリマー)3.1重量%、潜在性フラックス剤(ビニルエーテルとカルボン酸との付加物)1.73重量%と、導電性促進剤0.02重量%と、銀充填剤92.0重量%と、溶媒(組成物の約30重量%)とを、高せん断速度で混合することによって、コーティングスラリーを得た後、コーティングスラリーを剥離ライナーに塗布し、約120~150℃で5分間加熱して溶媒を除去し、組成物を焼結フィルムに安定化させ、カバーライナーを焼結フィルムに適用し、110℃および30psiで積層して、Bステージフィルムをカバーライナーに粘着させ、得られる材料が巻き取られた焼結フィルムロール。」 (4)対比・判断 ア 対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「剥離ライナー」、「銀充填剤」、「アクリルポリマー(850000の分子量(Mw)、12℃のガラス転移温度のアクリルコポリマー)」、「焼結フィルム」、「巻き取られた焼結フィルムロール」はそれぞれ、本件補正発明の「基材」、「導電性金属含有の焼結性粒子」、「バインダー成分」、「焼結接合用シート」、「ロール状に巻き取られた形態をなす巻回体」に相当する。 また、引用発明の「焼結フィルム」は、「剥離ライナー」上に積層されているから、積層構造を有する「剥離ライナー」付きの「焼結フィルム」であり、引用文献8の段落【0093】には、当該焼結フィルムを用いて、ダイとリードフレームを高温高圧下で接着させる旨記載されているから、引用発明の「焼結フィルム」は「焼結接合用」のものであり、合わせると、引用発明は、本件補正発明の「積層構造を有する基材付き焼結接合用シート」を備えているといえる。 さらに、引用発明の「アクリルポリマー(850000の分子量(Mw)、12℃のガラス転移温度のアクリルコポリマー)」は、重量平均分子量(Mw)が、850000であるから、本件補正発明の「重量平均分子量が10000以上」の「熱分解性高分子バインダー」と、「重量平均分子量が10000以上」の「高分子バインダー」である点で共通する。 加えて、本件補正発明の「前記バインダー成分として熱分解性高分子バインダーおよび/または低沸点バインダーを含み」という発明特定事項は、「熱分解性高分子バインダー」を含み、「低沸点バインダー」を含まないものを包含しているから、引用発明と本件補正発明は、「前記バインダー成分として・・・高分子バインダーおよび/または低沸点バインダーを含み」という点で共通する。 そうすると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「基材と、 導電性金属含有の焼結性粒子とバインダー成分とを含む焼結接合用シートと、を含む積層構造を有する基材付き焼結接合用シートが、 ロール状に巻き取られた形態をなす巻回体であって、 前記バインダー成分として高分子バインダーおよび/または低沸点バインダーを含み、 前記高分子バインダーの重量平均分子量が10000以上である、巻回体。」 (相違点1) 本件補正発明は、「焼結接合用シートの厚みが10~300μm」であるのに対し、引用発明は、その厚みが特定されていない点。 (相違点2) 本件補正発明の巻回体は、「外径が30~260mm」の「巻き芯に対して」巻き取られたものであるに対して、引用発明の巻回体は、巻き芯を備えることについて特定されていない点。 (相違点3) バインダー成分が、本件補正発明は「熱分解性高分子バインダー」であるのに対して、引用発明は「アクリルポリマー(850000の分子量(Mw)、12℃のガラス転移温度のアクリルコポリマー)」である点。 (相違点4) 本件補正発明は、「低沸点バインダーが熱分解性高分子バインダーの熱分解開始温度よりも沸点が低い」ことが特定されているのに対し、本件補正発明では、そのような特定がなされていない点。 イ 相違点の検討 まず、相違点1について検討する。 引用文献8の段落【0089】には、「フレキシブルロール形態(10)・・・で製造された本発明の組成物から調製された焼結フィルム」について「フィルムは約15~30μmであり得る。」と記載されているから、引用発明の焼結フィルムの厚さを、15~30μm程度にすることは当業者にとって格別困難なこととは認められない。 次に、相違点2について検討する。 引用文献6の請求項1、2、段落【0012】、【0022】~【0024】、【0067】、図1(特に、下線部を参照)には、金属粉末等の無機充填剤を含み得る接着剤層を含む半導体装置製造用フィルムをフィルムロールにする際に、円筒状の巻き芯を用いることが記載され、その巻き芯の直径は、7.5~15.5cm(75~155mm)の範囲内が好ましく、直径を7.5cm以上にすることにより、巻き芯のフィルムに対する接触面積を増大させ、単位面積当たりに加わる圧力を低減することができ、フィルムに加わる応力集中の緩和が図れること、直径を15.5cm以下にすることにより、フィルムロールの直径が大きくなり過ぎて、取り扱い性が低下するのを防止できることが記載されている。 また、引用文献7の請求項1、段落【0034】、【0035】、【0042】、【0059】、図1(特に、下線部を参照)には、金属粉末等の無機充填剤を含み得る接着剤層を含む半導体装置製造用フィルムをフィルムロールにする際に、円筒状の巻き芯を用いることが記載され、その巻き芯の直径は、一般的に、70~100mmの範囲内であり、下層の接着フィルムに過度の圧力がかかるのを防止する観点から、80mm以上であることが好ましいこと、フィルムロールの直径が大きくなり過ぎて、取り扱い性が低下するのを防止する観点から、100mm以下であることが好ましいことが記載されている。 このように、金属粉末等の無機充填剤を含み得る接着剤層を含むフィルムが巻回されたフィルムロールにおいて、巻き芯を用いることは周知技術であるところ、その際に、フィルムに加わる応力集中の緩和や取り扱い性が低下するのを防止する観点から、巻き芯の外径を、75~155mm、70~100mmの範囲内とすることは当業者が適宜行い得ることといえる。 してみれば、接着剤層ともいえる銀充填剤を含む焼結フィルムを含むフィルムが巻き取られた焼結フィルムロールである引用発明において、巻き芯を用いたものとし、フィルムに加わる応力緩和や取り扱い性の観点から、巻き芯の外径を75~155mmや70~100mm程度とすることは当業者が適宜なし得る範囲内の事項である。 次に、相違点3について検討する。 本願明細書の段落【0026】には、「熱分解性高分子バインダーは、焼結接合用の高温加熱過程で熱分解され得るバインダー成分であり、当該加熱過程前までにおいて、焼結接合用シート10のシート形状の保持に寄与する要素である。」と記載されている。 これに対し、引用文献8の段落【0038】には、「本明細書に記載の組成物に使用するアクリルポリマーまたはオリゴマーは、分解性アクリルポリマーまたはオリゴマーまたはエポキシ変性アクリル樹脂であることができる。」と記載され、同段落【0063】~【0064】には、「組成物を焼結フィルムの形態にする実施形態では、組成物を適切な基板(例えば、剥離ライナー)に塗布し、次に高温で加熱して実質的にすべての非反応性希釈剤剤(すなわち、溶媒)をそこから除去する。・・・焼結ペーストを加熱して乾燥してフィルムにするプロセスは、ここではBステージングと呼ばれる。得られるフィルムは、約5ミクロン~約50ミクロンの厚さを有することができる。・・・上記Bステージ化組成物から溶媒/希釈剤の実質的に全てを除去して得られる反応生成物を含む焼結フィルムを提供する。フィルムはロールで巻き取ることができる。」と記載され、同段落【0093】には、同段落【0092】の【表1】に示される組成物を剥離ライナーに塗布し、120℃で5分間加熱して溶媒を除去することにより、組成物を焼結フィルムに安定化させ、カバーライナーを焼結フィルムに適用し、110℃および30psiで積層して、Bステージフィルムをカバーライナーに粘着させ、得られる材料を焼結フィルムに巻き取ったことが記載されているから、引用発明においては、引用文献8の段落【0063】~【0064】に記載されたように、Bステージ化組成物から溶媒/希釈剤の実質的に全てが除去されて反応生成物を含む焼結フィルムとされ、ロールに巻き取れる程度の形状保持がされていると理解できる。 また、引用発明の焼結フィルムに含まれるアクリルポリマー(850000の分子量(Mw)、12℃のガラス転移温度のアクリルコポリマー)は、上記記載並びに分子量及びガラス転移温度に関する技術常識からみて、焼結接合用の高温加熱過程前までシートの形状保持の機能に寄与するバインダー成分と認められるところ、引用文献1の段落【0045】には、熱分解性バインダーとして、アクリル樹脂が例示されており、同段落【0049】には、「アクリル樹脂のなかでも、重量平均分子量が1万~100万のものがより好ましく、3万~70万のものがさらに好ましい。上記数値範囲内であると、加熱接合工程前の接着性、及び、加熱接合工程時における熱分解性に優れるからである。」と記載されている。 そうすると、引用発明のアクリルポリマー(850000の分子量(Mw)、12℃のガラス転移温度のアクリルコポリマー)は、焼結接合用の高温加熱過程前までシート形状の保持に寄与するものであり、その重量平均分子量(Mw)が熱分解性に優れるとされる上記数値範囲内のものであるから、本件補正発明の熱分解性高分子バインダーに相当すると認められる。 してみれば、相違点3は、実質的な相違点ではない。 仮に、相違点3を実質的な相違点とみた場合であっても、引用文献8の段落【0039】には、「本明細書に記載の組成物に使用するアクリルポリマーまたはオリゴマーは、分解性アクリルポリマーまたはオリゴマーまたはエポキシ変性アクリル樹脂であることができる。」と記載され、同段落【0041】には、「熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂成分は、組み合わせて結合剤を形成することができる。結合剤は、固体、半固体または液体であり得る。任意に、結合剤は350℃未満の分解温度を有する。」と記載されていることから、引用発明の焼結フィルムに、バインダーとして、熱分解性ポリマーを含有させることは当業者にとって格別困難なこととは認められない。 次に相違点4について検討する。 「前記低沸点バインダーが前記熱分解性高分子バインダーの熱分解開始温度よりも沸点が低い」との記載は、本願明細書の段落【0032】を根拠とする審判請求時の補正により、低分子バインダーが低沸点バインダーであることを限定する補正と共に導入されたものである。 本願明細書の段落【0032】の「低沸点バインダーは、熱分解性高分子バインダーなど高分子バインダーの熱分解開始温度よりも沸点が低いバインダー成分である」との記載は、低沸点バインダーの沸点を特定する記載であるから、相違点4に係る本件補正発明の発明特定事項は、本件補正発明がバインダー成分として「低沸点バインダー」を含む場合について特定する記載であると認められる。 本件補正発明は「バインダー成分として熱分解性高分子バインダーおよび/または低沸点バインダーを含み」との記載のとおり、低沸点バインダーを必須のバインダー成分とするものではないから、前記アのとおり「バインダー成分として熱分解性高分子バインダーを含む」態様について対比・判断する過程において、「前記低沸点バインダーが前記熱分解性高分子バインダーの熱分解開始温度よりも沸点が低い」との記載は、本件補正発明と引用発明との間に何ら相違点を生じさせるものではない。 したがって、相違点4は実質的な相違点でない。 また、本願明細書の段落【0032】の記載から、熱分解性高分子バインダーの熱分解開始温度が低沸点バインダーの沸点より高いことは明らかであるから、このような観点からも、相違点4は実質的な相違点ではない。 ウ 本件補正発明の効果について (ア)本願明細書の段落【0069】の【表1】には、実施例として、ポリカーボネート樹脂である高分子バインダーを添加した焼結接合用シート(実施例2)は、バインダー成分を添加していない比較例1よりも、可撓性評価と基材剥離性の評価が良好であることが示されている。 しかしながら、高分子バインダー等を含有させたフィルムは、バインダーを含まないものよりも、可撓性や基材剥離性が良好となることは、当業者が予測しえる範囲内の事項である。 (イ)本願明細書の段落【0014】には、巻き芯の外径を30~260mmとすることにより、「巻き芯の外径が小さいことに起因して生じる剥離、割れがより抑制される傾向がある。また、巻回体の巻き数に対して容積が大きくなり過ぎず、保管効率や輸送効率の観点から好適である。」と記載され、同段落【0015】には、焼結接合用シートの厚みを10~300μmとすることにより、「巻き芯に対してロール状に巻き取られた形態となることによる、基材付き焼結接合用シートにおける基材と焼結接合用シートとの剥離を抑制する観点から好適である。また、焼結接合用シートの割れを抑制する観点から好適である。特に、焼結接合用シートの厚みが10μm以上であることにより、焼結性粒子の形状に起因するシート表面への影響(シート表面に凹凸が生じること等)が少なくなる結果、半導体チップを基板に焼結する際に接合が安定する傾向がある。」と記載されている。さらに、同段落【0016】には、「半導体チップ焼結接合箇所を含む半導体装置の製造過程において良好な作業効率を実現するのに適するものである。また本巻回体は、良好な保存安定性と、高い保存効率とを兼ね備える。」との記載がなされている。 しかしながら、引用文献8の段落【0008】には、「フィルムは、半導体のダイアタッチ材料としてのフィルムの焼結能力を犠牲にすることなく、改善された加工性および濡れ性を示す。さらに、本明細書に記載の組成物から得られる焼結フィルムは、特に柔軟性があり、生産コーターによってロールとして調製することができる。」と記載されており、また、フィルムの厚さが薄いほど柔軟だが凹凸が生じやすい一方、厚すぎると割れやすくなることは技術常識である。 さらに、上記イでも検討したように、引用文献6、7には、巻き芯の直径を本件補正発明の範囲内の所定の数値にすることで、フィルムに加わる応力集中が緩和でき、取り扱い性が低下するのを防止できることが記載されており、フィルムを巻回体として取り扱うことにより、作業効率や保存安定性が良好となり、保存効率が高くなることも、技術常識である。 (ウ)以上のとおりであるから、本件補正発明により、本件補正発明の構成から当業者が予測しえない顕著な効果が奏されたとはいえない。 エ 審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書及び令和5年11月20日提出の上申書において、以下のとおり主張する。 (主張1)引用文献8では巻き芯を用いることなくフィルムロールを作製しているのであるから、敢えて巻き芯に対してロール状に巻き取られた形態をなす巻回体とすることについての動機は無い。 (主張2)本願明細書の実施例には、バインダー成分として特定の高分子バインダーに相当するポリカーボネート樹脂(QPAC40)及び/又は特定の低分子バインダーに相当するイソボルニルシクロヘキサノール(テルソルブMTPH)を含むワニスを用い、焼結接合用シートの厚みが200μmであり巻き芯の外径が152.4mmである巻回体が、可撓性評価において、基材から焼結接合用シートが剥離することなく、焼結接合用シートの割れも見られなかったという効果、基材剥離性の評価において、基材から焼結接合用シートを問題なく剥離することができた、という効果が奏されることについて確認されている(段落0067、0068、表1、実施例1-5)。また、本願明細書の段落0012の記載の通り、本巻回体は、基材付き焼結接合用シートが巻回体の形態をなすことにより、半導体装置の製造における転写工程の際に焼結接合用シートから各半導体チップへの焼結接合用材料の転写が連続して行うことが可能になり、さらに、本願明細書の段落0014に記載の通り、巻き芯の外径が30~260mmであることにより、巻き芯の外径が小さいことに起因して生じる剥離、割れがより抑制され、巻回体の巻き数に対して容積が大きくなり過ぎず、保管効率や輸送効率が向上するという効果を奏する。 本件補正発明はこれらの効果を全て有するものであり、当該効果は引用文献6-8からは予測不可能なものである。 以下、上記主張について検討する。 (ア)主張1について 上記イの相違点2についての検討でも示したとおり、引用文献8の段落【0064】には「フィルムはロールで巻き取ることができる」と記載されているところ、金属粉末等の無機充填剤を含み得る接着剤層を含むフィルムが巻回されたフィルムロールにおいて、巻き芯を用いることは周知技術であり、引用発明8において巻き芯を用いてフィルムを巻き取ろうとすることに阻害要因がある等の格別の事情もない以上、引用発明8のフィルムロールを巻き芯に対して巻き取られた形態とすることに動機づけがないとの上記請求人の主張1は採用できない。 (イ)主張2について バインダーを含まない比較例と比較して、「ポリカーボネート樹脂(QPAC40)」や低沸点バインダーである「イソボルニルシクロヘキサノール(テルソルブMTPH)」を含むフィルムにおいて可撓性や基材剥離性が良好となったこと、剥離に問題なくシートの割れが見られないこと、及び、作業や保存の効率性や安定性等が向上することが、本件補正発明の構成により予測しえない顕著な効果といえないことは、上記ウ(ア)及び(イ)で検討したとおりである。 なお、本件補正発明は「ポリカーボネート樹脂(QPAC40)」や低沸点バインダーである「イソボルニルシクロヘキサノール(テルソルブMTPH)」を発明特定事項とするものではなく、低沸点バインダーを必須の成分とするものでもない。仮に本件補正発明の「熱分解性高分子バインダー」が「ポリカーボネート樹脂(QPAC40)」であったとしても、ポリカーボネートは焼結接合用シートの技術分野において熱分解性が高いバインダー樹脂として知られているものであり(引用文献1の段落【0045】等参照)、この点をもって本件補正発明の進歩性が認められるというものでもない。 したがって、上記請求人の主張2も採用できない。 (5)まとめ 以上のとおり、本件補正発明は、引用文献8に記載された発明、引用文献8に記載の事項及び周知技術(要すれば、引用文献6、7等参照)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和5年4月10日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~4に係る発明は、令和4年9月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~4に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献8に記載された発明及び引用文献6、7に記載された周知の事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 記 引用文献6:特開2010-126716号公報 引用文献7:特開2015-122432号公報 引用文献8:特表2018-524415号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献6~8の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「巻回体」に対して、「巻き芯の外径が30~260mm」であること、「焼結接合用シートの厚みが10~300μmであ」ること、「高分子バインダー」が「熱分解性」であること、「低分子バインダー」が「低沸点バインダー」であることを特定しないものである。 そうすると、本願発明と引用発明とを対比した場合、引用発明は、本願発明に対して、上記第2[理由]2(4)アの相違点2の一部である、「巻回体は、巻き芯を備えることについて特定されていない点」でのみ相違するところ、この点についての判断は、上記第2[理由]2(4)イの相違点2についての検討に記載したとおり、当業者が引用文献8に記載された発明、引用文献8の記載及び周知技術(引用文献6、7等参照)に基づいて容易に想到し得たものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献8に記載された発明、引用文献8の記載及び周知技術(引用文献6、7等参照)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-005763

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