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特許拒絶査定不服審判

2023-015146

3D-IC技術を用いて製造するイベントベースビジョンセンサ

審判番号
2023-015146
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-571913外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年09月08日
審決日
2024年07月17日
公報発行日
2024年12月27日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .161-Z (H01L) / P18 .572-Z (H01L) / P18 .575-Z (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条の2
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条の2、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-571913「3D-IC技術を用いて製造するイベントベースビジョンセンサ」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月19日国際公開、WO2019/175733、令和 3年 7月 8日国内公表、特表2021-516872〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、バーナー ラファエル、ブランドリ クリスチャン、ザノニー ミッシモを発明者とし、ソニー アドバンスト ビジュアル センシング エージーを出願人として、2019年(平成31年)3月8日(2018年3月14日優先権主張外国庁受理 米国)に国際出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和2年11月 2日 :国際出願翻訳文提出書の提出 令和3年11月25日付け:拒絶理由通知書 令和4年 2月25日 :意見書、手続補正書の提出 令和4年 3月22日付け:拒絶理由通知書 令和4年 8月26日 :意見書、手続補正書の提出 令和4年12月26日付け:拒絶理由通知書 令和5年 4月 6日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年 4月28日付け:拒絶査定(原査定) 令和5年 9月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和5年9月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年9月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。(下線部は、手続補正書の記載のとおりである。) 「【請求項1】 積層された第1のダイと第2のダイを含むイベントベースビジョンセンサであって、 前記第1のダイに画素アレイの各画素のフォトダイオードが配置され、 前記第2のダイに画素アレイの各画素のイベント検出器が配置され、 前記イベントベースビジョンセンサは、 前記フォトダイオードを各イベント検出器に接続するための前記第1のダイと前記第2のダイ間の相互接続部と、 光強度に依存するフォトレセプタ信号を生成してイベント検出器に入力するフォトレセプタ回路とを具備し、 前記フォトレセプタ回路は、2つのn-FETトランジスタとp-FETトランジスタで構成され、 前記第1のダイに前記2つのn-FETトランジスタが配置され、前記第2のダイにp-FETトランジスタが配置され、前記相互接続部は、前記2つのn-FETトランジスタのうち一方の前記n-FETトランジスタのゲートと他方の前記n-FETトランジスタのドレインに接続するノードと前記p-FETトランジスタのドレインと前記イベント検出器の入力に接続するノードとの間に位置する イベントベースビジョンセンサ。」 (2) 本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和5年4月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 積層された第1のダイと第2のダイを含むイベントベースビジョンセンサであって、 前記第1のダイに画素アレイの各画素のフォトダイオードが配置され、 前記第2のダイに画素アレイの各画素のイベント検出器が配置され、 前記イベントベースビジョンセンサは、 前記フォトダイオードを各イベント検出器に接続するための前記第1のダイと前記第2のダイ間の相互接続部と、 光強度に依存するフォトレセプタ信号を生成してイベント検出器に入力するフォトレセプタ回路とを具備し、 前記フォトレセプタ回路は、2つのn-FETトランジスタとp-FETトランジスタで構成され、 前記第1のダイに前記2つのn-FETトランジスタが配置され、前記第2のダイにp-FETトランジスタが配置され、前記相互接続部は、一方の前記n-FETトランジスタのゲートと他方の前記n-FETトランジスタのドレインに接続するノードと前記p-FETトランジスタのドレインと前記イベント検出器の入力に接続するノードとの間に位置する イベントベースビジョンセンサ。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記フォトダイオードを各イベント検出器に接続するための前記第1のダイと前記第2のダイ間の相互接続部」がその間に位置するノードの一方である、「一方の前記n-FETトランジスタのゲートと他方の前記n-FETトランジスタのドレインに接続するノード」について、「前記2つのn-FETトランジスタのうち一方の前記n-FETトランジスタのゲートと他方の前記n-FETトランジスタのドレインに接続するノード」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1) 本願補正発明 本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2) 先願明細書の記載、及び先願発明 ア 先願明細書等の記載 原査定で先願1として引用された特願2017-209045号(以下「先の出願」という。)は、丹羽篤親を発明者、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社を出願人とし、本願の優先日(平成30年3月14日)前の平成29年10月30日の出願であって、国際出願(PCT/JP/2018/026757)の優先権の主張の基礎とされる出願であり、国際公開第2019/087471号として国際公開され、同法第41条第3項、及び同法第184条の15第2項の規定により出願公開されたものとみなされる「先の出願」の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、及び図面(以下「先願明細書等」という。)には次の記載がある。(下線は、引用箇所を示すため当審において付加した。) (ア) 「【技術分野】 【0001】 本技術は、固体撮像素子に関する。詳しくは、入射光の光量を閾値と比較する固体撮像素子に関する。 【背景技術】 【0002】 従来より、垂直同期信号などの同期信号に同期して画像データ(フレーム)を撮像する同期型の固体撮像素子が撮像装置などにおいて用いられている。この一般的な同期型の固体撮像素子では、同期信号の周期(例えば、1/60秒)ごとにしか画像データを取得することができないため、交通やロボットなどに関する分野において、より高速な処理が要求された場合に対応することが困難になる。そこで、画素アドレスごとに、その画素の光量が閾値を超えた旨をアドレスイベントとしてリアルタイムに検出するアドレスイベント検出回路を画素毎に設けた非同期型の固体撮像素子が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特表2016-533140号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 上述の非同期型の固体撮像素子では、同期型の固体撮像素子よりも遥かに高速にデータを生成して出力することができる。このため、例えば、交通分野において、人や障害物を画像認識する処理を高速に実行して、安全性を向上させることができる。しかしながら、アドレスイベント検出回路は、同期型における画素回路よりも回路規模が大きく、そのような回路を画素毎に設けると、実装面積が同期型と比較して増大してしまうという問題がある。 【0005】 本技術はこのような状況に鑑みて生み出されたものであり、アドレスイベントを検出する固体撮像素子において、実装面積を削減することを目的とする。 ・・・(中略)・・・ 【発明の効果】 【0034】 本技術によれば、アドレスイベントを検出する固体撮像素子において、実装面積を削減するという優れた効果を奏し得る。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。 【図面の簡単な説明】 【0035】 【図1】本技術の第1の実施の形態における撮像装置の一構成例を示す ブロック図である。 【図2】本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子の積層構造の 一例を示す図である。 【図3】本技術の第1の実施の形態における受光チップの平面図の一例 である。 【図4】本技術の第1の実施の形態における検出チップの平面図の一例 である。 【図5】本技術の第1の実施の形態におけるアドレスイベント検出部の 平面図の一例である。 【図6】本技術の第1の実施の形態におけるアドレスイベント検出回路 の一構成例を示すブロック図である。 【図7】本技術の第1の実施の形態における電流電圧変換回路の一構成 例を示す回路図である。 【図8】本技術の第1の実施の形態における減算器および量子化器の一 構成例を示す回路図である。 【図9】本技術の第1の実施の形態の変形例における受光チップおよび 検出チップのそれぞれに設けられる回路の一例を示す回路図である。 ・・・(中略)・・・ 【0037】 <1.第1の実施の形態> [撮像装置の構成例] 図1は、本技術の第1の実施の形態における撮像装置100の一構成例を示すブロック図である。この撮像装置100は、撮像レンズ110、固体撮像素子200、記録部120および制御部130を備える。撮像装置100としては、産業用ロボットに搭載されるカメラや、車載カメラなどが想定される。 ・・・(中略)・・・ 【0040】 [固体撮像素子の構成例] 図2は、本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子200の積層構造の一例を示す図である。この固体撮像素子200は、検出チップ202と、その検出チップ202に積層された受光チップ201とを備える。これらのチップは、ビアなどの接続部を介して電気的に接続される。なお、ビアの他、Cu-Cu接合やバンプにより接続することもできる。なお、受光チップ201は、特許請求の範囲に記載の第1のチップの一例であり、検出チップ202は、特許請求の範囲に記載の第2のチップの一例である。 【0041】 図3は、本技術の第1の実施の形態における受光チップ201の平面図の一例である。受光チップ201には、受光部220と、ビア配置部211、212および213とが設けられる。 【0042】 ビア配置部211、212および213には、検出チップ202と接続されるビアが配置される。また、受光部220には、二次元格子状に複数のフォトダイオード221が配列される。フォトダイオード221は、入射光を光電変換して光電流を生成するものである。これらのフォトダイオード221のそれぞれには、行アドレスおよび列アドレスからなる画素アドレスが割り当てられ、画素として扱われる。 【0043】 図4は、本技術の第1の実施の形態における検出チップ202の平面図の一例である。この検出チップ202には、ビア配置部231、232および233と、信号処理回路240と、行駆動回路251と、列駆動回路252と、アドレスイベント検出部260とが設けられる。ビア配置部231、232および233には、受光チップ201と接続されるビアが配置される。 【0044】 アドレスイベント検出部260は、複数のフォトダイオード221のそれぞれの光電流から検出信号を生成して信号処理回路240に出力するものである。この検出信号は、入射光の光量が所定の閾値を超えた旨をアドレスイベントとして検出したか否かを示す1ビットの信号である。 【0045】 行駆動回路251は、行アドレスを選択して、その行アドレスに対応する検出信号をアドレスイベント検出部260に出力させるものである。 【0046】 列駆動回路252は、列アドレスを選択して、その列アドレスに対応する検出信号をアドレスイベント検出部260に出力させるものである。 【0047】 信号処理回路240は、アドレスイベント検出部260からの検出信号に対して所定の信号処理を実行するものである。この信号処理回路240は、検出信号を画素信号として二次元格子状に配列し、画素毎に1ビットの情報を有する画像データを取得する。そして、信号処理回路240は、その画像データに対して画像認識処理などの信号処理を実行する。 【0048】 図5は、本技術の第1の実施の形態におけるアドレスイベント検出部260の平面図の一例である。このアドレスイベント検出部260には、二次元格子状に複数のアドレスイベント検出回路300が配列される。アドレスイベント検出回路300のそれぞれには画素アドレスが割り当てられ、同一アドレスのフォトダイオード221と接続される。 【0049】 アドレスイベント検出回路300は、対応するフォトダイオード221からの光電流に応じた電圧信号を量子化して検出信号として出力するものである。 【0050】 [アドレスイベント検出回路の構成例] 図6は、本技術の第1の実施の形態におけるアドレスイベント検出回路300の一構成例を示すブロック図である。このアドレスイベント検出回路300は、電流電圧変換回路310、バッファ320、減算器330、量子化器340および転送回路350を備える。 【0051】 電流電圧変換回路310は、対応するフォトダイオード221からの光電流を電圧信号に変換するものである。この電流電圧変換回路310は、電圧信号をバッファ320に供給する。 【0052】 バッファ320は、電流電圧変換回路310からの電圧信号を補正するものである。このバッファ320は、補正後の電圧信号を減算器330に出力する。 【0053】 減算器330は、行駆動回路251からの行駆動信号に従ってバッファ320からの電圧信号のレベルを低下させるものである。この減算器330は、低下後の電圧信号を量子化器340に供給する。 【0054】 量子化器340は、減算器330からの電圧信号をデジタル信号に量子化して検出信号として転送回路350に出力するものである。 【0055】 転送回路350は、列駆動回路252からの列駆動信号に従って、検出信号を量子化器340から信号処理回路240に転送するものである。 【0056】 [電流電圧変換回路の構成例] 図7は、本技術の第1の実施の形態における電流電圧変換回路310の一構成例を示す回路図である。この電流電圧変換回路310は、N型トランジスタ311および313とP型トランジスタ312とを備える。これらのトランジスタとして、例えば、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタが用いられる。 【0057】 N型トランジスタ311のソースはフォトダイオード221のカソードに接続され、ドレインは電源端子に接続される。P型トランジスタ312およびN型トランジスタ313は、電源端子と接地端子との間において、直列に接続される。また、P型トランジスタ312およびN型トランジスタ313の接続点は、N型トランジスタ311のゲートとバッファ320の入力端子とに接続される。また、P型トランジスタ312のゲートには、所定のバイアス電圧Vbias1が印加される。 【0058】 N型トランジスタ311および313のドレインは電源側に接続されており、このような回路はソースフォロワと呼ばれる。これらのループ状に接続された2つのソースフォロワにより、フォトダイオード221からの光電流は電圧信号に変換される。また、P型トランジスタ312は、一定の電流をN型トランジスタ313に供給する。 【0059】 また、受光チップ201のグランドと検出チップ202のグランドとは、干渉対策のために互いに分離されている。 ・・・(中略)・・・ 【0070】 垂直同期信号に同期して撮像を行う同期型の固体撮像素子では、画素ごとに、フォトダイオードと3個や4個のトランジスタとからなる簡易な画素回路が配置される。これに対して、非同期型の固体撮像素子200では、図6乃至図8に例示したように、同期型の場合より複雑な、フォトダイオード221およびアドレスイベント検出回路300からなる画素回路が画素毎に設けられる。したがって、仮に、フォトダイオード221およびアドレスイベント検出回路300の両方を同一チップに配置すると、実装面積が同期型よりも広くなってしまう。そこで、固体撮像素子200では、フォトダイオード221とアドレスイベント検出回路300とを積層した受光チップ201および検出チップ202に分散して配置することにより、実装面積を削減している。 【0071】 このように、本技術の第1の実施の形態では、フォトダイオード221を受光チップ201に配置し、アドレスイベント検出回路300を検出チップ202に配置したため、それらを同一チップに配置する場合よりも実装面積を削減することができる。 【0072】 [変形例] 上述の第1の実施の形態では、電流電圧変換回路310の全てを検出チップ202に配置していたが、画素数の増大に伴って、検出チップ202内の回路の回路規模が増大するおそれがある。この第1の実施の形態の変形例の固体撮像素子200は、電流電圧変換回路310の一部の回路を受光チップ201に設けた点において第1の実施の形態と異なる。 【0073】 図9は、本技術の第1の実施の形態の変形例における受光チップ201および検出チップ202のそれぞれに設けられる回路の一例を示す回路図である。同図に例示するように、受光チップ201には、フォトダイオード221に加えて、N型トランジスタ311および313がさらに設けられる。一方、検出チップ202には、P型トランジスタ312と、その後段の回路とが設けられる。 【0074】 N型トランジスタ311および313を受光チップ201に配置することにより、それらのトランジスタの分、検出チップ202の回路規模を削減することができる。また、受光チップ201内のトランジスタをN型のみにすることにより、N型トランジスタおよびP型トランジスタを混在させる場合と比較して、トランジスタを形成する際の工程数を削減することができる。これにより、受光チップ201の製造コストを削減することができる。 【0075】 このように、本技術の第1の実施の形態の変形例では、N型トランジスタ311および313を受光チップ201に配置したため、製造コストと検出チップ202の回路規模とを削減することができる。」 (イ) 「【図2】 [図:0001417302000001.jpg] 」 「【図6】 [図:0001417302000002.jpg] 」 「【図7】 [図:0001417302000003.jpg] 」 「【図9】 [図:0001417302000004.jpg] 」 イ 先願発明 (ア) 上記アによると、先願明細書等には、「アドレスイベント検出回路は、同期型における画素回路よりも回路規模が大きく、そのような回路を画素毎に設けると、実装面積が同期型と比較して増大してしまうという問題」(段落0004)を有する、「画素アドレスごとに、その画素の光量が閾値を超えた旨をアドレスイベントとしてリアルタイムに検出するアドレスイベント検出回路を画素毎に設けた非同期型の固体撮像素子」(段落0002)において、「実装面積を削減することを目的とする」(段落0005)発明が記載されているといえる。 そして、先願明細書等の段落0037~0071及び図7には、上記固体撮像素子の第1の実施の形態が記載されており、また、先願明細書等の段落0072~0075及び図9には、第1の実施の形態の変形例が記載されている。 そうすると、先願明細書等には、第1の実施の形態の変形例として、「画素アドレスごとに、その画素の光量が閾値を超えた旨をアドレスイベントとしてリアルタイムに検出するアドレスイベント検出回路を画素毎に設けた非同期型の固体撮像素子」(段落0002)が記載されているといえる。 (イ) 先願明細書等の段落0040には、「固体撮像素子200は、検出チップ202と、その検出チップ202に積層された受光チップ201とを備える。これらのチップは、ビアなどの接続部を介して電気的に接続される。」と記載されているところ、変形例の電流電圧変換回路310を含む回路図である図9には、受光チップ201と検出チップ202との間に接続部が示され、図9からは、接続部が、受光チップ201において、一方のN型トランジスタ311のゲート、及び、他方のN型トランジスタ313のドレインに接続し、検出チップ202において、P型トランジスタ312のドレイン、及びバッファ320の入力に接続していることが見て取れる。 (ウ) 以上を踏まえると、先願明細書等には、第1の実施の形態の変形例として、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているといえる。(当審注:カッコ内は根拠となる先願明細書等の段落番号等である。) 「検出チップ202と、その検出チップ202に積層された受光チップ201とを備える固体撮像素子200(段落0040)であって、 これらのチップは、ビアなどの接続部を介して電気的に接続され(段落0040)、 受光チップ201には、受光部220と、ビア配置部211、212および213とが設けられ(段落0041)、ビア配置部211、212および213には、検出チップ202と接続されるビアが配置され、また、受光部220には、二次元格子状に複数のフォトダイオード221が配列され(段落0042)、 検出チップ202には、ビア配置部231、232および233と、アドレスイベント検出部260とが設けられ、ビア配置部231、232および233には、受光チップ201と接続されるビアが配置され(段落0043)、 アドレスイベント検出部260には、二次元格子状に複数のアドレスイベント検出回路300が配列され(段落0048)、 アドレスイベント検出回路300は、電流電圧変換回路310、バッファ320、減算器330、量子化器340および転送回路350を備え(段落0050)、 電流電圧変換回路310は、対応するフォトダイオード221からの光電流を電圧信号に変換するものであり、この電流電圧変換回路310は、電圧信号をバッファ320に供給し(段落0051)、 電流電圧変換回路310は、N型トランジスタ311および313とP型トランジスタ312とを備え、これらのトランジスタとして、MOSトランジスタが用いられ(段落0056)、 電流電圧変換回路310の一部の回路を受光チップ201に設け(段落0072)、受光チップ201には、フォトダイオード221に加えて、N型トランジスタ311および313がさらに設けられ、一方、検出チップ202には、P型トランジスタ312と、その後段の回路とが設けられ(段落0073)、 接続部が、受光チップ201において、一方のN型トランジスタ311のゲート、及び、他方のN型トランジスタ313のドレインに接続し、検出チップ202において、P型トランジスタ312のドレイン、及びバッファ320の入力に接続し(上記(イ))、 バッファ320は、電流電圧変換回路310からの電圧信号を補正するものである(段落0052)、 画素アドレスごとに、その画素の光量が閾値を超えた旨をアドレスイベントとしてリアルタイムに検出するアドレスイベント検出回路を画素毎に設けた非同期型の固体撮像素子(上記(ア))。」 (3) 対比 ア(ア) イベントベースビジョンセンサについて a 本願明細書の段落0034、0035には、「イベントベースビジョンセンサ」について、「イベントベース画素アレイ(EBPA:Event-Based Pixel Array)は、感光デバイスを有する画素のアレイ(配列)である。これらの画素は、それぞれ空間的及び/又は時間的に独立しており、受けとった光放射に応じて離散化データを生成する。 」、「イベントベースビジョンセンサ(EBVS:Event-based Vision Sensor)は、EBPAから抽出及び/又は構成されたデータを出力するセンサである。」との記載がある。 b 先願明細書等の段落0042には、「フォトダイオード221は、入射光を光電変換して光電流を生成するものである。これらのフォトダイオード221のそれぞれには、行アドレスおよび列アドレスからなる画素アドレスが割り当てられ、画素として扱われる。」と記載されている。 そうすると、先願発明の「フォトダイオード221」は、入射光を光電変化して光電流を生成する感光デバイスであるといえ、また、行及び列からなるアレイ(配列)において画素として扱われるから、先願発明の二次元格子状に配列された「複数のフォトダイオード221」は、「感光デバイスを有する画素のアレイ(配列)」であるといえる。 c また、先願発明は、「画素アドレスごとに、その画素の光量が閾値を超えた旨をアドレスイベントとしてリアルタイムに検出するアドレスイベント検出回路を画素毎に設けた非同期型の固体撮像素子」であって、画素アドレスごとに、すなわち画素が配列された空間的な位置とは独立に、また、非同期に、すなわち時間的に独立に、「その画素の光量が閾値を超えた旨をアドレスイベントとしてリアルタイムに検出する」ものであるから、先願発明における画素は、それぞれ空間的及び/又は時間的に独立しているといえる。 d 先願発明において、アドレスイベントとしてリアルタイムに検出する「その画素の光量が閾値を超えた旨」は、受けとった光放射に応じた離散化データといえ、また、先願発明は、検出したアドレスイベントを出力するセンサといえる。 e 上記b~dを踏まえると、先願発明の「画素アドレスごとに、その画素の光量が閾値を超えた旨をアドレスイベントとしてリアルタイムに検出するアドレスイベント検出回路を画素毎に設けた非同期型の固体撮像素子」は、感光デバイスを有する画素のアレイ(配列)であって、これらの画素は、それぞれ空間的及び/又は時間的に独立しており、受けとった光放射に応じて離散化データを生成し、出力するセンサといえるから、「イベントベースビジョンセンサ」といえる。 (イ) ダイについて 本願明細書の段落0018には、「ダイ」について、「本明細書で用いる「ダイ」という用語は、半導体ウェーハの一部を意味し、通常、チップ等の矩形の形状を有する。」と記載されているところ、先願発明の、フォトダイオード221が配列された受光部220が設けられた「受光チップ201」、及び、アドレスイベント検出回路300が配列されたアドレスイベント検出部260が設けられた「検出チップ202」は、それぞれチップ状の形状を有する半導体ウェーハの一部であるといえるから、本願補正発明の「ダイ」に相当する。 (ウ) 上記(ア)及び(イ)を踏まえると、先願発明の「検出チップ202と、その検出チップ202に積層された受光チップ201とを備える固体撮像素子200」は、「積層された第1のダイと第2のダイを含むイベントベースビジョンセンサ」である点で、本願補正発明と共通する。 イ 先願発明の「受光チップ201」は、二次元格子状に複数のフォトダイオード221が配列された受光部220が設けられているから、本願補正発明の「画素アレイの各画素のフォトダイオードが配置され」る「第1のダイ」に相当する。 ウ 先願発明の「画素アドレスごとに、その画素の光量が閾値を超えた旨をアドレスイベントとしてリアルタイムに検出するアドレスイベント検出回路」は、本願補正発明の「画素アレイの各画素のイベント検出器」に相当する。 そして、先願発明の「検出チップ202」は、二次元格子状に複数のアドレスイベント検出回路300が配列されたアドレスイベント検出部260が設けられているから、本願補正発明の「画素アレイの各画素のイベント検出器が配置され」る「第2のダイ」に相当する。 エ 上記イ、ウを踏まえれば、先願発明の、「受光チップ201」と「検出チップ202」とを電気的に接続する「ビアなどの接続部」は、本願補正発明の「前記フォトダイオードを各イベント検出器に接続するための前記第1のダイと前記第2のダイ間の相互接続部」に相当する。 オ 先願発明の「電流電圧変換回路310」は、「対応するフォトダイオード221からの光電流を電圧信号に変換するもの」であるところ、変換された電圧信号は光強度に依存する信号といえるから、本願補正発明の「光強度に依存するフォトレセプタ信号」に相当する。 そうすると、先願発明の「電流電圧変換回路310」は、本願補正発明の「光強度に依存するフォトレセプタ信号を生成」する「フォトレセプタ回路」に対応する。 また、先願発明において、電流電圧変換回路310が備える「N型トランジスタ311および313とP型トランジスタ312」としてMOSトランジスタ、すなわち、FETトランジスタが用いられる。 そして、先願発明において、「受光チップ201には、フォトダイオード221に加えて、N型トランジスタ311および313がさらに設けられ、一方、検出チップ202には、P型トランジスタ312と、その後段の回路とが設けられる」から、先願発明の「電流電圧変換回路310」は、2つのN型FETトランジスタとP型FETトランジスタで構成され、かつ受光チップ201に2つのN型FETトランジスタが配置され、検出チップ202にP型FETトランジスタが配置されているといえる。 そうすると、本願補正発明と先願発明とは「前記フォトレセプタ回路は、2つのn-FETトランジスタとp-FETトランジスタで構成され、 前記第1のダイに前記2つのn-FETトランジスタが配置され、前記第2のダイにp-FETトランジスタが配置され」ている点で共通する。 カ 以上を踏まえると、本願補正発明と先願発明とは次の点で一致し、相違する。 (ア) 一致点 「積層された第1のダイと第2のダイを含むイベントベースビジョンセンサであって、 前記第1のダイに画素アレイの各画素のフォトダイオードが配置され、 前記第2のダイに画素アレイの各画素のイベント検出器が配置され、 前記イベントベースビジョンセンサは、 前記フォトダイオードを各イベント検出器に接続するための前記第1のダイと前記第2のダイ間の相互接続部と、 光強度に依存するフォトレセプタ信号を生成するフォトレセプタ回路とを具備し、 前記フォトレセプタ回路は、2つのn-FETトランジスタとp-FETトランジスタで構成され、 前記第1のダイに前記2つのn-FETトランジスタが配置され、前記第2のダイにp-FETトランジスタが配置される イベントベースビジョンセンサ。」 (イ) 相違点 本願補正発明の「相互接続部」が、「前記2つのn-FETトランジスタのうち一方の前記n-FETトランジスタのゲートと他方の前記n-FETトランジスタのドレインに接続するノードと前記p-FETトランジスタのドレインと前記イベント検出器の入力に接続するノードとの間に位置」し、本願補正発明の「フォトレセプタ回路」が生成したフォトレセプタ信号を「イベント検出器に入力する」のに対し、先願発明の「接続部」が、「受光チップ201において、一方のN型トランジスタ311のゲート、及び、他方のN型トランジスタ313のドレインに接続し、検出チップ202において、P型トランジスタ312のドレイン、及びバッファ320の入力に接続」し、先願発明の「電流電圧変換回路310」が、光電流を変換した電圧信号を、アドレスイベント検出回路300が備えるバッファ320に供給する点。 (4) 相違点について検討 ア 先願発明において、「アドレスイベント検出回路300は、電流電圧変換回路310、バッファ320、減算器330、量子化器340および転送回路350を備え」るところ、対応するフォトダイオード221からの光電流を電圧信号に変換する「電流電圧変換回路310」は、減算器330、量子化器340、及び転送回路350において実行されるアドレスイベント検出についての前段階の処理を行う構成といえる。 そうすると、先願発明において、電流電圧変換回路310をアドレスイベント検出回路300とは別の構成として、電流電圧変換回路310の出力を、アドレスイベント検出回路300の入力としてバッファ320に入力するようにすることは、単に表現上の差異といえる。 イ 二つの回路要素を接続部に接続する場合、二つの回路要素をそれぞれ接続部に直接接続するか、二つの回路要素を、互いに接続したノードを介して接続部と接続するかは、当業者が実施に際して適宜決定し得る事項であり、また、両者が奏する効果に違いはない。 そうすると、先願発明において、受光チップ201において、「一方のN型トランジスタ311のゲート、及び、他方のN型トランジスタ313のドレイン」を接続したノードを接続部に接続し、また、検出チップ202において、「P型トランジスタ312のドレイン、及びバッファ320の入力」を接続したノードを接続部に接続すること、すなわち、相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、具体化における転換であって、新たな効果を奏するものではない。 したがって、相違点は具体化手段における微差といえるから、本願補正発明と先願発明とは実質的に同一である。 (5) 小括 以上のとおり、本願補正発明は、先願発明と実質同一であり、しかも、本願補正発明の発明者が先願発明の発明者と同一ではなく、また本願の出願の時において、本願の出願人が先の出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 請求人の主張について 請求人は、審判請求書4ページ下から9行~5ページ6行(下線は審判請求書の記載のとおり。)で、「本願請求項1、2において、「相互接続部」は、「前記2つのn-FETトランジスタのうち一方の前記n-FETトランジスタのゲートと他方の前記n-FETトランジスタのドレインに接続するノードと前記p-FETトランジスタのドレインと前記イベント検出器の入力に接続するノードとの間に位置する」というものです。これに対して、先願1の段落0073および先願2の段落0087には、「受光チップ201には、フォトダイオード221に加えて、N型トランジスタ311および313がさらに設けられる。一方、検出チップ202には、P型トランジスタ312と、その後段の回路とが設けられる。」との記載があるだけで、「前記相互接続部は、前記2つのn-FETトランジスタのうち一方の前記n-FETトランジスタのゲートと他方の前記n-FETトランジスタのドレインに接続するノードと前記p-FETトランジスタのドレインと前記イベント検出器の入力に接続するノードとの間に位置する」という本願請求項1,2の構成までは先願1、2のいずれにも記載されていません。 従いまして、本願請求項1,2は、両先願1,2に記載されたものと同一ではないことは明らかです。」と主張する。 しかしながら、上記2(4)のとおり、本願補正発明と先願発明とは実質的に同一であるから、請求人の主張は採用できない。 4 本件補正についてのむすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和5年9月8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年4月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~2に係る発明は、先願発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない、というものである。 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された先願及び先願明細書等の記載事項は、上記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、「前記フォトダイオードを各イベント検出器に接続するための前記第1のダイと前記第2のダイ間の相互接続部」がその間に位置するノードの一方である、「前記2つのn-FETトランジスタのうち一方の前記n-FETトランジスタのゲートと他方の前記n-FETトランジスタのドレインに接続するノード」について、「前記2つのn-FETトランジスタのうち」との限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2[理由]2(4)のとおり、先願発明と実質同一であるのと同様に、本願発明も先願発明と実質同一である。 また、本願補正発明と同様に、本願発明の発明者は先願発明の発明者と同一ではなく、また本願の出願の時において、本願の出願人が先の出願の出願人と同一でもない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-015146

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