特許拒絶査定不服審判
2021-012178
半導体装置
- 審判番号
- 2021-012178
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-207091
- 請求日
- 2021年09月13日
- 審決日
- 2022年06月08日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ローム株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人あい特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 河本 充雄
- 審判官 鈴木 聡一郎
- 審判官 棚田 一也
- 分類
- P18 .121-Z (H01L) / P18 .572-Z (H01L) / P18 .575-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-207091「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月25日出願公開,特開2021- 48417〕について,次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は,2016年(平成28年)12月 7日(優先権主張 平成27年12月18日(以下,「本願の優先日」という。))を国際出願日とする特願2017-556002号の一部を令和 2年12月14日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 3月12日付け:拒絶理由通知書
令和3年 5月12日 :意見書,手続補正書の提出
令和3年 6月10日付け:拒絶査定
令和3年 9月13日 :審判請求書,手続補正書の提出
第2 令和3年 9月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年 9月13日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の記載は,次のとおり補正された(当審注:下線部は,補正箇所である。)。
「【請求項1】
表面および裏面を有する半導体層と,
前記半導体層の前記表面側に形成され,主電流側の第1単位セルを複数含む第1素子部と,
前記半導体層の前記表面側に形成され,電流検出側の第2単位セルを含む電流センス部と,
前記第1素子部の上方に配置された第1素子側表面電極と,
前記電流センス部の上方を少なくとも一部に含むように配置されたセンス側表面電極と,
前記第1素子側表面電極に接合された第1素子側ワイヤと,
前記センス側表面電極に接合され,前記第1素子側ワイヤよりも細いセンス側ワイヤと,
前記センス側表面電極の前記第2単位セルの直上部を被覆領域として覆い,前記センス側表面電極の一部をセンス側パッドとして露出させる第1開口を有するパッシベーション膜とを含み,
前記第2単位セルは,前記センス側表面電極の下方で,かつ前記センス側ワイヤの接合部分の直下部を避けた位置に配置されている,半導体装置。
【請求項2】
前記電流センス部と前記センス側表面電極との間に配置された層間絶縁膜と,
前記層間絶縁膜よりも下方に形成された前記半導体層の表面絶縁膜とを含み,
前記層間絶縁膜は,前記表面絶縁膜よりも厚く形成されている,請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電流センス部は,前記第1素子部に囲まれた領域に形成されている,請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1単位セルおよび前記第2単位セルは,互いに同じセル構造を有している,請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記電流センス部は,前記半導体層の面内において一カ所のみに形成されている,請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記層間絶縁膜は,1μm以上の厚さを有している,請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1素子部および前記電流センス部は,制御端子を有するスイッチング素子であり,
前記半導体層上に配置され,配線材が接合される制御端子側接合領域を有する制御端子側表面電極を含み,
前記層間絶縁膜は,前記制御端子側接合領域の直下部にも配置されている,請求項2または6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記層間絶縁膜は,SiO2膜を含む,請求項2,6または7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記SiO2膜は,P(リン)を含有している,請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記SiO2膜は,B(ホウ素)を含有している,請求項8に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記センス側表面電極は,下側からTi,TiNおよびAlCuの順に積層した積層構造からなる電極を含む,請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1素子部および前記電流センス部は,制御端子を有するスイッチング素子であり,前記半導体層上に配置された制御端子側表面電極を含み,
前記パッシベーション膜は,前記制御端子側表面電極の一部を制御端子側パッドとして露出させる第2開口を有し,
前記センス側パッドおよび前記制御端子側パッドは,互いに同じ方向に長手な形状に形成されている,請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記センス側パッドは,1.2mm以下の長辺と,0.6mm以下の短辺とを有する平面視略長方形状に形成されている,請求項1または12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記センス側表面電極の前記被覆領域は,平面視四角形状に形成され,平面視において,前記センス側表面電極の少なくとも1つの辺の一部を内側に窪ませるように,当該辺に対して前記センス側表面電極の内方領域に形成されており,
前記被覆領域の直下部に,前記電流センス部が形成されている,請求項1~13のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記センス側ワイヤは,100μm~200μmの径を有している,請求項1~14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
表面および裏面を有する半導体層と,
前記表面側に形成され,主電流側の第1単位セルを含む第1素子部と,
前記表面側に形成され,電流検出側の第2単位セルを含む電流センス部と,
前記第1素子部の上方に配置された第1素子側表面電極と,
前記電流センス部の上方を少なくとも一部に含むように配置されたセンス側表面電極と,
前記センス側表面電極に対向するように前記半導体層の表面部に形成された第1導電型のセンス側ボディウェルであって,前記第2単位セルを構成するセル形成部と,前記セル形成部を除く領域を構成するフィールド形成部とを含むセンス側ボディウェルと,
前記センス側表面電極の前記第2単位セルの直上部を被覆領域として覆い,前記センス側表面電極の一部をセンス側パッドとして露出させる第1開口を有するパッシベーション膜とを含み,
前記セル形成部は,前記センス側表面電極の下方で,かつ配線材の接合部分の直下部を避けた位置に配置されており,
前記フィールド形成部は,前記センス側表面電極の下方で,かつ前記配線材の接合部分の直下部に配置されている,半導体装置。
【請求項17】
前記センス側ボディウェルにおいて,前記セル形成部に選択的に,第2導電型領域が形成されている,請求項16に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記センス側ボディウェルにおいて,前記フィールド形成部に選択的に,前記センス側ボディウェルよりも高い不純物濃度を有する第1導電型の不純物領域が形成されている,請求項17に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記不純物領域は,前記センス側表面電極に接続されている,請求項18に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記第1素子部および前記電流センス部は,前記制御端子としてゲート電極を有するスイッチング素子である,請求項7に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記半導体層は,SiC層からなる,請求項1~20に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記パッシベーション膜は,前記第1素子側表面電極の一部を素子側パッドとして露出させる第3開口を有し,
前記第3開口は,前記第1開口および前記第2開口から独立して形成されている,請求項12に記載の半導体装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の,令和3年 5月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~22の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
表面および裏面を有する半導体層と,
前記半導体層の前記表面側に形成され,主電流側の第1単位セルを複数含む第1素子部と,
前記半導体層の前記表面側に形成され,電流検出側の第2単位セルを含む電流センス部と,
前記第1素子部の上方に配置された第1素子側表面電極と,
前記電流センス部の上方を少なくとも一部に含むように配置されたセンス側表面電極と,
前記第1素子側表面電極に接合された第1素子側ワイヤと,
前記センス側表面電極に接合され,前記第1素子側ワイヤよりも細いセンス側ワイヤと,
前記センス側表面電極の前記第2単位セルの直上部を覆い,前記センス側表面電極の一部をセンス側パッドとして露出させる第1開口を有するパッシベーション膜とを含み,
前記第2単位セルは,前記センス側表面電極の下方で,かつ前記センス側ワイヤの接合部分の直下部を避けた位置に配置されている,半導体装置。
【請求項2】
前記電流センス部と前記センス側表面電極との間に配置された層間絶縁膜と,
前記層間絶縁膜よりも下方に形成された前記半導体層の表面絶縁膜とを含み,
前記層間絶縁膜は,前記表面絶縁膜よりも厚く形成されている,請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電流センス部は,前記第1素子部に囲まれた領域に形成されている,請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1単位セルおよび前記第2単位セルは,互いに同じセル構造を有している,請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記電流センス部は,前記半導体層の面内において一カ所のみに形成されている,請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記層間絶縁膜は,1μm以上の厚さを有している,請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1素子部および前記電流センス部は,制御端子を有するスイッチング素子であり,
前記半導体層上に配置され,配線材が接合される制御端子側接合領域を有する制御端子側表面電極を含み,
前記層間絶縁膜は,前記制御端子側接合領域の直下部にも配置されている,請求項2または6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記層間絶縁膜は,SiO2膜を含む,請求項2,6または7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記SiO2膜は,P(リン)を含有している,請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記SiO2膜は,B(ホウ素)を含有している,請求項8に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記センス側表面電極は,下側からTi,TiNおよびAlCuの順に積層した積層構造からなる電極を含む,請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1素子部および前記電流センス部は,制御端子を有するスイッチング素子であり,前記半導体層上に配置された制御端子側表面電極を含み,
前記パッシベーション膜は,前記制御端子側表面電極の一部を制御端子側パッドとして露出させる第2開口を有し,
前記センス側パッドおよび前記制御端子側パッドは,互いに同じ方向に長手な形状に形成されている,請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記センス側パッドは,1.2mm以下の長辺と,0.6mm以下の短辺とを有する平面視略長方形状に形成されている,請求項1または12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記センス側表面電極は,平面視四角形状に形成され,その一部が前記パッシベーション膜で覆われた被覆領域であり,
前記被覆領域は,平面視において,前記センス側表面電極の少なくとも1つの辺の一部を内側に窪ませるように,当該辺に対して前記センス側表面電極の内方領域に形成されており,
前記被覆領域の直下部に,前記電流センス部が形成されている,請求項1~13のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記センス側ワイヤは,100μm~200μmの径を有している,請求項1~14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
表面および裏面を有する半導体層と,
前記表面側に形成され,主電流側の第1単位セルを含む第1素子部と,
前記表面側に形成され,電流検出側の第2単位セルを含む電流センス部と,
前記第1素子部の上方に配置された第1素子側表面電極と,
前記電流センス部の上方を少なくとも一部に含むように配置されたセンス側表面電極と,
前記センス側表面電極に対向するように前記半導体層の表面部に形成された第1導電型のセンス側ボディウェルであって,前記第2単位セルを構成するセル形成部と,前記セル形成部を除く領域を構成するフィールド形成部とを含むセンス側ボディウェルと,
前記センス側表面電極の前記第2単位セルの直上部を覆い,前記センス側表面電極の一部をセンス側パッドとして露出させる第1開口を有するパッシベーション膜とを含み,
前記セル形成部は,前記センス側表面電極の下方で,かつ配線材の接合部分の直下部を避けた位置に配置されており,
前記フィールド形成部は,前記センス側表面電極の下方で,かつ前記配線材の接合部分の直下部に配置されている,半導体装置。
【請求項17】
前記センス側ボディウェルにおいて,前記セル形成部に選択的に,第2導電型領域が形成されている,請求項16に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記センス側ボディウェルにおいて,前記フィールド形成部に選択的に,前記センス側ボディウェルよりも高い不純物濃度を有する第1導電型の不純物領域が形成されている,請求項17に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記不純物領域は,前記センス側表面電極に接続されている,請求項18に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記第1素子部および前記電流センス部は,前記制御端子としてゲート電極を有するスイッチング素子である,請求項7に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記半導体層は,SiC層からなる,請求項1~20に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記パッシベーション膜は,前記第1素子側表面電極の一部を素子側パッドとして露出させる第3開口を有し,
前記第3開口は,前記第1開口および前記第2開口から独立して形成されている,請求項12に記載の半導体装置。」
(3)補正事項
本件補正により,本件補正前の請求項1の「前記センス側表面電極の前記第2単位セルの直上部を覆い,前記センス側表面電極の一部をセンス側パッドとして露出させる第1開口を有するパッシベーション膜とを含み」との特定事項が,「前記センス側表面電極の前記第2単位セルの直上部を被覆領域として覆い,前記センス側表面電極の一部をセンス側パッドとして露出させる第1開口を有するパッシベーション膜とを含み」と補正された(以下,「補正事項1」という。)。
また,本件補正により,本件補正前の請求項14の「前記センス側表面電極は,平面視四角形状に形成され,その一部が前記パッシベーション膜で覆われた被覆領域であり, 前記被覆領域は,平面視において,前記センス側表面電極の少なくとも1つの辺の一部を内側に窪ませるように,当該辺に対して前記センス側表面電極の内方領域に形成されており」との特定事項が,「前記センス側表面電極の前記被覆領域は,平面視四角形状に形成され,平面視において,前記センス側表面電極の少なくとも1つの辺の一部を内側に窪ませるように,当該辺に対して前記センス側表面電極の内方領域に形成されており」と補正された(以下,「補正事項2」という。)。
さらに,本件補正により,本件補正前の請求項16の「前記センス側表面電極の前記第2単位セルの直上部を覆い,前記センス側表面電極の一部をセンス側パッドとして露出させる第1開口を有するパッシベーション膜とを含み」との特定事項が,「前記センス側表面電極の前記第2単位セルの直上部を被覆領域として覆い,前記センス側表面電極の一部をセンス側パッドとして露出させる第1開口を有するパッシベーション膜とを含み」と補正された(以下,「補正事項3」という。)。
2 目的要件について
特許法第17条の2第5項の規定によれば,拒絶査定不服審判の請求と同時にする特許請求の範囲についての補正は,請求項の削除(同項第1号),特許請求の範囲の減縮(同項第2号),誤記の訂正(同項第3号),明りょうでない記載の釈明(同項第4号)のいずれかを目的とするものに限るとされている。
そこで,本件補正について,以下,検討する。
(1)補正事項1について
補正事項1により,本件補正前において,「パッシベーション膜」が「前記センス側表面電極の前記第2単位セルの直上部を覆」っていたものが,本件補正後においては,「パッシベーション膜」が「前記センス側表面電極の前記第2単位セルの直上部を被覆領域として覆」うものとなった。
本件補正後の「被覆領域」は,「パッシベーション膜」が,「前記センス側表面電極の前記第2単位セルの直上部」を「覆」っている領域であるといえるところ,本件補正前の「パッシベーション膜」も,「前記センス側表面電極の前記第2単位セルの直上部」を「覆」っており,この覆っている領域も被覆領域であるといえる。
そうすると,補正事項1によって,請求項1に係る発明の範囲は実質的に変更されておらず,減縮されているとはいえないから,当該補正事項1は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また,補正事項1が,同条同項第1,3,4号の各号のいずれを目的とするものではないことは明らかである。
(2)補正事項2について
補正事項2により,本件補正前において「前記センス側表面電極は,平面視四角形状に形成され」ていたのに対し,本件補正後においては,「前記センス側表面電極」が「平面視四角形状に形成され」るという事項が削除され,平面視の形状が特定されないこととなった。
そうすると,補正事項2は,「前記センス側表面電極」が「平面視四角形状に形成され」るという事項を削除することにより,請求項14に係る発明の範囲を拡張するものであるから,当該補正事項2は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また,補正事項2が,同条同項第1,3,4号の各号のいずれを目的とするものではないことは明らかである。
(3)補正事項3について
補正事項3は,補正事項1と同様のものであるから,前記(1)で検討したのと同様に,当該補正事項3についても,特許法第17条の2第5項第1~4号の各号のいずれを目的とするものではない。
(4)まとめ
よって,補正事項1~3を含む本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものではない。
3 独立特許要件について
前記2(1)で検討したとおり,補正事項1は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものではないが,仮に,補正事項1が,同号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると仮定して,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が,同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は,前記「1 (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載」の請求項1に記載したとおりのものと認める。
(2)引用文献,引用発明
ア 引用文献1について
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2011/161721号(平成23年12月29日国際公開,以下,「引用文献1」という。)には,次の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下,同様である。)。
「[0011] 本発明の電力用半導体装置によれば,電流センサなどのセンサを内蔵して電流値などをモニターできる電力用半導体装置において,センサパッドを備えた電力用半導体装置を高速駆動した場合においても,ゲート絶縁膜に大きな強度の電界が印加されずゲート絶縁膜が絶縁破壊することを抑制でき,より信頼性の高い電力用半導体装置を提供することができる。
・・・
[0013] 実施の形態1.
本発明の実施の形態1においては,電流センサを内蔵した電力用半導体装置の一例として,縦型のn型チャネル炭化珪素MOSFETを主としたものを用いて説明する。また,下記各実施の形態では,第1導電型をn型,第2導電型をp型として説明するが,半導体の導電型については,その逆であっても構わない。
[0014] 図1は,本発明の実施の形態1の電力用半導体装置である炭化珪素MOSFETを主とした電力用半導体装置を上面から模式的に見た平面図である。図1において,電力用半導体装置の上面の中央部には,ソースパッド10が形成されている。ソースパッド10の上面から見た一方の側には,ゲートパッド11が形成されている。また,ソースパッド10を取り囲むように,ゲートパッド11から延伸してゲート配線12形成されている。さらに,ソースパッド10の内部の一部には,センスパッド13が形成されている。
・・・
[0016] 図2は,図1に示したソースパッド10,ゲートパッド11などの層より下部の層を上部から透視した,本実施の形態における電力用半導体装置の平面図である。図2において,図1に示したセンスパッド13の下部には,層間絶縁膜(図示せず)などの絶縁膜を貫通して複数のセンスソースコンタクトホール62と呼ぶ孔が形成されている。各センスソースコンタクトホール62の下部の炭化珪素層には,p型炭化珪素のセンスセルウェル領域42が形成されている。
・・・
[0020] ソースパッド10の下部には,上面から見てセンスパッド境界ウェル領域45およびセンスパッド境界ウェルコンタクトホール65を取り囲むように,多数のメインセルが形成されている。各メインセルにおいては,層間絶縁膜などの絶縁膜を貫通して形成されたソースコンタクトホール61の下部の炭化珪素層にp型炭化珪素のメインセルウェル領域41が形成されている。
[0021] また、上面から見て多数のメインセルを取り囲むように、ソースパッド10の外周の下部には、外周境界ウェル領域47、外周境界ウェルコンタクトホール67が形成されており、さらにその外側には、外周ウェル領域46、外周ウェルコンタクトホール66が形成されている。外周境界ウェル領域47および外周ウェル領域46は、p型炭化珪素で構成されており、外周境界ウェルコンタクトホール67および外周ウェルコンタクトホール66は、層間絶縁膜などの絶縁膜を貫通して形成されている。
・・・
[0024] 図3および図4は,それぞれ,図2の平面図のA-A’部分の断面,B-B’部分の断面を模式的に表した本実施の形態における電力用半導体装置の断面模式図である。
図3および図4において,n型で低抵抗の炭化珪素で構成される基板20の表面上に,n型の炭化珪素で構成されるドリフト層21が形成されている。センスパッド13の下方のドリフト層21の表層部の一部には,p型の炭化珪素で構成される複数のセンスセルウェル領域42が形成されている。センスセルウェル領域42から断面横方向に所定の間隔をおいて,ドリフト層21の表層部には,p型炭化珪素のセンスセル外周ウェル領域43が形成されている。
センスセル外周ウェル領域43から断面横方向に所定の間隔をおいて,ドリフト層21の表層部には,p型炭化珪素のセンスパッドウェル領域44が形成されている。さらに,センスパッドウェル領域44から所定の間隔をおいて,ドリフト層21の表層部には,センスパッド境界ウェル領域45が形成されている。
[0025] また,センスパッド境界ウェル領域45から断面横方向に所定の間隔をおいて,ドリフト層21の表層部には,p型炭化珪素のメインセルウェル領域41が多数形成されている。
本実施の形態の電力用半導体装置を上面から見てメインセルウェル領域41が多数形成されているメインセル領域の外側(図4の右側)のドリフト層21の表層部には,最外周のメインセルウェル領域41から所定の間隔をおいて,p型炭化珪素の外周境界ウェル領域47が形成されている。また,外周境界ウェル領域47のさらに外側(図4の右側)のドリフト層21の表層部には,外周境界ウェル領域47から所定の間隔をおいて,p型炭化珪素の外周ウェル領域46が形成されている。外周ウェル領域46のさらに外側のドリフト層21の表層部には,p型炭化珪素のJTE領域40が形成されている。さらに,図2では図示して説明しなかったが,JTE領域40の外側(図4の右側)には,所定の間隔をおいて,n型炭化珪素のフィールドストッパー領域83が形成されている。
・・・
[0030] ここで,本実施の形態の電力用半導体装置のp型の各ウェル領域(41~47)とn型のドリフト層21との間には,pnダイオードが形成され,メインセルウェル領域41にはメインMOSダイオード(D1)が,センスセルウェル領域42にはセンスMOSダイオード(D2)が,センスセル外周ウェル領域43にはセンスセル外周ダイオード(D3)が,センスパッドウェル領域44にはセンスパッドダイオード(D4)が,センスパッド境界ウェル領域45にはセンスパッド境界ダイオード(D5)がそれぞれ形成される。また,外周ウェル領域46とドリフト層21との間には外周ウェルダイオード(D6)が,外周境界ウェル領域47とドリフト層21との間には外周境界ウェルダイオード(D7)が,それぞれ形成される。JTE領域40とドリフト層21との間のダイオードは,外周ウェルダイオード(D6)につながっているので,外周ウェルダイオード(D6)の一部として見ることにする。
・・・
[0032] 以下,本実施の形態の電力用半導体装置の製造方法を順を追って説明する。
まず,n型で低抵抗の炭化珪素半導体の基板20上の表面(第1の主面)上に化学気相堆積(Chemical Vapor Deposition:CVD)法により1×1013cm-3~1×1018cm-3のn型の不純物濃度,4~200μmの厚さの炭化珪素で構成されるドリフト層21をエピタキシャル成長する。炭化珪素半導体の基板20は,第1の主面の面方位が(0001)面で4Hのポリタイプを有しc軸方向に対して8°以下に傾斜されているものを用いたが,他の面方位,ポリタイプ,傾斜角度であってもよく,また,傾斜していなくてもよい。
・・・
[0039] つづいて、図6にその断面図を示すように、メインセルウェル領域41およびセンスセルウェル領域42を中心とする活性領域に、熱酸化法または堆積法を用いて、フィールド絶縁膜31より厚さが小さく、例えば、厚さがフィールド絶縁膜31の1/10程度の二酸化珪素膜で構成されるゲート絶縁膜30を形成する。
ゲート絶縁膜30の膜厚としては、30nm以上300nm以下であれば良く、より好ましくは50nm以上150nm以下であればよい。なお、この膜厚値は、どの程度のゲート電圧及びゲート電界でMOSFETを駆動(スイッチング動作)させるかに依存し、好ましくはゲート電界(ゲート絶縁膜30に印加される電界)として3MV/cm以下の大きさであればよい。
・・・
[0047] 図7に示すように、本実施の形態の電力用半導体装置においては、メインMOSFET(メインセルのMOSFET:M1)の一部にメインMOSダイオード(D1,ボディダイオード)があり、また、センスMOSFET(センスセルのMOSTEF:M2)の内部にセンスMOSダイオード(D2,ボディダイオード)がある。メインMOSFET(M1)のゲートとセンスMOSFET(M2)のゲートはともにゲートパッド11またはゲート配線12に接続されている。また、メインMOSFET(M1)のソースはソースパッド10に、センスMOSFET(M2)のソースはセンスパッド13に、それぞれ接続されている。
・・・
[0049] つづいて,本実施の形態の電力用半導体装置の動作について説明する。図7の等価回路図のゲートパッド11(ゲート配線12)の電圧を,メインMOSFET(M1)およびセンスMOSFET(M2)がオン状態からオフ状態にスイッチングするように印加した場合,メインMOSFET(M1)およびセンスMOSFET(M2)のドレイン電圧,すなわち,ドレイン電極14の電圧が急激に上昇し,略0Vから数百Vに変化する。そうすると,メインMOSダイオード(D1),センスMOSダイオード(D2),センスセル外周ダイオード(D3),センスパッドダイオード(D4),センスパッド境界ダイオード(D5),外周ウェルダイオード(D6)および外周境界ウェルダイオード(D7)に蓄えられていた電荷が,カソード側ではドリフト層21から基板20を通りドレイン電極14に移動し,アノード側では,各ウェル領域41~47およびJTE領域40からそれぞれコンタクトホールを経由してソースパッド10またはセンスパッド13に移動する。ここで,これらの電荷の移動が変位電流となる。
・・・
[0062] なお,ソースパッド10,ゲートパッド11,センスパッド13などの形状については,本実施の形態に示したものに限るものではなく,他の形状であってもよい。例えば,センスパッド13の形状については,長方形のものを示したが,図11にその上面図を示すように,長方形から突起を有する形状とし,突起部分の下部にセンスセル(センスセルウェル領域42)を形成してもよい。突起部分の下部にセンスセルを設けることにより,センスパッド13の本体(長方形部分)の上部にワイヤーボンディングなどを形成した場合でも,センスセルの特性及ぼす影響を最小限に抑えることができる。」
「
[図:0001387170000001.jpg]
[図:0001387170000002.jpg]
[図:0001387170000003.jpg]
[図:0001387170000004.jpg]
」
「
[図:0001387170000005.jpg]
」
(イ)引用文献1の記載事項
a 前記(ア)の[0014],[0016],[0024]の記載によれば,同(ア)の記載は,炭化珪素MOSFETを主とした電力用半導体装置に関するものであるといえる。
b 同[0024]には,「n型で低抵抗の炭化珪素で構成される基板20の表面上に,n型の炭化珪素で構成されるドリフト層21が形成され」,「センスパッド13の下方のドリフト層21の表層部の一部には,p型の炭化珪素で構成される複数のセンスセルウェル領域42が形成されている」ことが記載されているから,炭化珪素MOSFETを主とした電力用半導体装置は,n型で低抵抗の炭化珪素で構成される基板20と,前記基板20の表面上に,n型の炭化珪素で構成されるドリフト層21と,センスパッド13と,前記センスパッド13の下方のドリフト層21の表層部の一部に形成された,p型の炭化珪素で構成される複数のセンスセルウェル領域42とを含んでいるといえる。
c 同[0020]には,「ソースパッド10の下部には,上面から見てセンスパッド境界ウェル領域45およびセンスパッド境界ウェルコンタクトホール65を取り囲むように,多数のメインセルが形成されている。各メインセルにおいては,層間絶縁膜などの絶縁膜を貫通して形成されたソースコンタクトホール61の下部の炭化珪素層にp型炭化珪素のメインセルウェル領域41が形成されている」と記載されているから,ソースパッド10の下部には,多数のメインセルが形成され,各メインセルにおいては,炭化珪素層にp型炭化珪素のメインセルウェル領域41が形成されているといえる。
また,同[0025]には,「ドリフト層21の表層部には,p型炭化珪素のメインセルウェル領域41が多数形成されている」ことが記載されている。
ここで,上記 [0020]の「炭化珪素層」と,上記[0025]の「ドリフト層21」は,いずれも,メインセルウェル領域41が形成されているものである。
したがって,上記 [0020]の「炭化珪素層」は,上記[0025]の「ドリフト層21」に対応するものである。
また,同[0024]には,「n型の炭化珪素で構成されるドリフト層21」と記載されているから,「ドリフト層21」は,「n型の炭化珪素で構成される」ものである。
以上によれば,同[0020]及び[0025]には,ソースパッド10の下部には,多数のメインセルが形成され,各メインセルにおいては,n型の炭化珪素で構成されるドリフト層21の表層部にp型炭化珪素のメインセルウェル領域41が形成されていることが記載されているといえる。
そうすると,炭化珪素MOSFETを主とした電力用半導体装置は,ソースパッド10と,前記ソースパッド10の下部に形成された多数のメインセルと,各メインセルにおいて,n型の炭化珪素で構成されるドリフト層21の表層部に形成された,p型炭化珪素のメインセルウェル領域41とを含んでいるといえる。
d さらに,同[0025]には,「メインセルウェル領域41が多数形成されているメインセル領域」と記載されているから,炭化珪素MOSFETを主とした電力用半導体装置は,メインセルウェル領域41が多数形成されているメインセル領域を含んでいるといえる。
e 同[0062]には,「なお,ソースパッド10,ゲートパッド11,センスパッド13などの形状については,本実施の形態に示したものに限るものではなく,他の形状であってもよい。例えば,センスパッド13の形状については,長方形のものを示したが,図11にその上面図を示すように,長方形から突起を有する形状とし,突起部分の下部にセンスセル(センスセルウェル領域42)を形成してもよい。突起部分の下部にセンスセルを設けることにより,センスパッド13の本体(長方形部分)の上部にワイヤーボンディングなどを形成した場合でも,センスセルの特性及ぼす影響を最小限に抑えることができる」と記載されているから,当該記載は,前記bにおけるセンスパッド13に関する形状及び構造を特定するものといえ,具体的には,センスパッド13は,上面から見て,長方形から突起を有する形状であり,当該突起部分の下部にセンスセル(センスセルウェル領域42)が形成され,センスパッドの本体である長方形部分にワイヤーボンディングがされているといえる。
ここで,前記bにおける,前記センスパッド13の下方のドリフト層21の表層部の一部に形成された,p型の炭化珪素で構成される複数のセンスセルウェル領域42は,上記突起部分の下部に形成されているセンスセル(センスセルウェル領域42)のことである。
そうすると,炭化珪素MOSFETを主とした電力用半導体装置は,前記センスパッド13の下方のドリフト層21の表層部の一部に形成された,p型の炭化珪素で構成される複数のセンスセル(センスセルウェル領域42)を含み,センスパッド13は,上面から見て,本体である長方形部分と突起部分とを有し,前記突起部分の下部のドリフト層21に,複数のセンスセル(センスウエル領域42)が形成され,前記センスパッド13の前記本体である長方形部分にワイヤーボンディングがされているといえる。
(ウ)引用文献1に記載された発明
前記(イ)の記載事項から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「n型で低抵抗の炭化珪素で構成される基板20と,
前記基板20の表面上に形成されたn型の炭化珪素で構成されるドリフト層21と,
センスパッド13と,
前記センスパッド13の下方の前記ドリフト層21の表層部の一部に形成された,p型の炭化珪素で構成される複数のセンスセル(センスセルウェル領域42)と,
ソースパッド10と,
前記ソースパッド10の下部に形成された多数のメインセルと,
各メインセルにおいて,n型の炭化珪素で構成されるドリフト層21の表層部に形成された,p型炭化珪素のメインセルウェル領域41と,
前記メインセルウェル領域41が多数形成されているメインセル領域と,
を含む炭化珪素MOSFETを主とした電力用半導体装置であって,
前記センスパッド13は,上面から見て,本体である長方形部分と,突起部分とを有し,
前記突起部分の下部の前記ドリフト層21に,前記複数のセンスセル(センスセルウェル領域42)が形成され,
前記センスパッド13の前記本体である長方形部分にワイヤーボンディングがされている,
炭化珪素MOSFETを主とした電力用半導体装置。」
イ 引用文献2について
(ア) 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013- 98316号公報(平成25年 5月20日出願公開,以下,「引用文献2」という。)には,次の記載がある。
「【0019】
・・・
測温抵抗体17の上部はシリコンの酸化物からなる層間絶縁膜9で覆われている。層間絶縁膜9の上にはアルミニウムからなる2つのセンスパッド18が設けられている。層間絶縁膜9には貫通孔が形成され、その貫通孔により、2つのセンスパッド18は帯状の測温抵抗体17のそれぞれ両端に電気的に接続されている。これら測温抵抗体17と2つのセンスパッド18とにより温度センサを構成している。
・・・
【0028】
外部への電気的な接続は,例えば半田によりドレイン電極15を外部電極に接合することにより,あるいは例えばアルミニウムのワイヤをワイヤボンド法でソース電極10,ゲートパッド13aおよびセンスパッド18と外部電極とを接続することにより実現される。主電流は炭化珪素半導体装置内部をドレイン電極15からソース電極10に流れるので,主電流によるワイヤ溶断を防止するために,ソース電極10に接続されるワイヤは直径200μmから400μmの太さのものを複数本使用する。ゲート配線13や測温抵抗体17に流れる電流は小さいので,ゲートパッド13aおよびセンスパッド18に接続するワイヤは直径が100μm以下のワイヤ1本で十分であるが,ソース電極10に接続されるワイヤと同じワイヤを使用することを妨げるものではない。」
(イ)引用文献2の記載事項
前記(ア)の【0019】には,「2つのセンスパッド18は帯状の測温抵抗体17のそれぞれ両端に電気的に接続されている。これら測温抵抗体17と2つのセンスパッド18とにより温度センサを構成している。」と記載されており,さらに,同【0028】には,「主電流は炭化珪素半導体装置内部をドレイン電極15からソース電極10に流れるので,主電流によるワイヤ溶断を防止するために,ソース電極10に接続されるワイヤは直径200μmから400μmの太さのものを複数本使用する」,「ゲート配線13や測温抵抗体17に流れる電流は小さいので,ゲートパッド13aおよびセンスパッド18に接続するワイヤは直径が100μm以下のワイヤ1本で十分である」と記載されているから,引用文献2には,炭化珪素半導体装置において,小さい電流が流れるセンスパッドに接続するワイヤの直径を,主電流によるワイヤ溶断を防止するための太さである,ソース電極に接続するワイヤの直径よりも細くすることが記載されているといえる。
(ウ) 引用文献2に記載された発明
前記(イ)の記載事項から,引用文献2には,次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「小さい電流が流れるセンスパッドに接続するワイヤの直径を,主電流によるワイヤ溶断を防止するための太さである,ソース電極に接続するワイヤの直径よりも細くする炭化珪素半導体装置。」
ウ 引用文献3について
(ア) 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2002-314086号公報(平成14年10月25日出願公開,以下,「引用文献3」という。)には,次の記載がある。
「【0006】センス部32は,過電流を保護するために,実動作領域35上の複数のMOSトランジスタを電流検出用のセンス端子として使用し,センスパッド電極33にコンタクトしている。センス部32を駆動するゲート電極はMOSFET本体のゲート電極と共通であり,チップ上でポリシリコンにより連結されている。
・・・
【0013】図5に,上記のセンス端子付きMOSFET200をコントロールIC230と1パッケージに実装する場合の断面図を示す。これは,主にRCC方式のスイッチング電源ICとセンス端子付きMOSFETを2段重ねにすることにより小型パッケージに内蔵できるようにするもので,図4の実動作領域上に破線で示すようにコントロールIC230を重ねて配置した場合のB-B線の断面図である。その際,同じワイヤで配線するソースパッド電極39とセンスパッド電極33では,ボンディングワイヤ220を往復させるように配線される。まず,センス端子付きMOSFET200のソースパッド電極39にワイヤボンドし(1’stボンド),矢印C方向に延在してコントロールIC230のワイヤボンド時に擦りつけて切断する(2’ndボンド)。次に,コントロールIC230にワイヤボンドし(1’stボンド)矢印D方向に延在してMOSFET200のセンスパッド電極33にワイヤボンドし,擦りつけて切断する(2’ndボンド)。
【0014】図6に,トレンチ型の各セル36の断面構造を示す。NチャンネルのパワーMOSFETにおいては,N+型の半導体基板41の上にN-型のエピタキシャル層からなるドレイン領域42を設け,その上にP型のチャネル層43を設ける。チャネル層43からドレイン領域42まで到達するトレンチ44を作り,トレンチ44の内壁をゲート酸化膜45で被膜し,トレンチ44に充填されたポリシリコンよりなるゲート電極46を設けて各セル36を形成する。トレンチ44に隣接したチャネル層43表面にはN+型のソース領域48が形成され,隣り合う2つのセルのソース領域48間のチャネル層43表面にはP+型のボディコンタクト領域49が形成される。さらにチャネル層43にはソース領域48からトレンチ44に沿ってチャネル領域47が形成される。トレンチ44上は層間絶縁膜50で覆い,ソース領域48およびボディコンタクト領域49にコンタクトするソース電極34を設ける。チップ全面を覆って設けた表面保護膜51に開口部を設けて,ゲートパッド電極およびセンスパッド電極,ソースパッド電極(図示せず)を形成する。かかるセル36は図4の実動作領域5に多数個配列される。具体的には小さい四角で表示したものが1個のセルである。」
(イ)引用文献3の記載事項
a 前記(ア)の【0013】には,「まず,センス端子付きMOSFET200のソースパッド電極39にワイヤボンドし(1’stボンド),矢印C方向に延在してコントロールIC230のワイヤボンド時に擦りつけて切断する(2’ndボンド)。次に,コントロールIC230にワイヤボンドし(1’stボンド)矢印D方向に延在してMOSFET200のセンスパッド電極33にワイヤボンドし,擦りつけて切断する(2’ndボンド)。」と記載されているから,センス端子付きMOSFETのセンスパッド電極にワイヤボンドすることが記載されているといえる。
b 同【0014】には,「チップ全面を覆って設けた表面保護膜51に開口部を設けて,ゲートパッド電極およびセンスパッド電極,ソースパッド電極(図示せず)を形成する。」と記載されており,前記aの検討を参酌すれば,センス端子付きMOSFETはチップに含まれるものであり,チップ全面を覆って設けた表面保護膜に開口部を設け,開口部から露出しているセンスパッド電極にワイヤボンドしているといえる。
(ウ) 引用文献3に記載された発明
前記(イ)の記載事項から,引用文献3には,次の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「センス端子付きMOSFETを含むチップであって,前記チップの全面を覆って表面保護膜を形成し,前記表面保護膜に開口部を設け,前記開口部から露出したセンスパッド電極にワイヤボンドする,センス端子付きMOSFETを含むチップ。」
エ 周知技術
(ア)本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平11-135391号公報(平成11年 5月21日出願公開)には,次の記載がある。
「【0007】
・・・
一般的に,半導体集積回路の配線を行う場合には,種々の機能素子を形成した半導体基板及び絶縁膜の上層に,アルミニウム配線層を形成し,更にその上層を覆うように形成した表面保護膜としてのシリコン酸化膜の一部を除去して,その後のワイヤボンディング等による配線工程で必要な部分のみのアルミニウム配線層を露出させ,配線用のボンディングパッドを開口する。」
(イ)本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2007-103656号公報(平成19年 4月19日出願公開)には,次の記載がある。
「【0031】
第2の配線5と衝撃吸収梁6を設けた前記能動回路1を保護膜7により被覆し,図1に示すように保護膜7上に衝撃吸収梁6を被覆しその一部が保護膜7に設けられた第2接続孔8を介して能動回路1と電気的に接続されるよう厚い電極9を設け,ワイヤ11をボンディングする際に必要な領域のみ開口した保護樹脂層10により表面を保護した構造である。」
(ウ)本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2001-203205号公報(平成13年 7月27日出願公開)には,次の記載がある。
「【0009】
【課題を解決するための手段】かくして本発明によれば,半導体基板上に形成された銅を主成分とする金属配線の上にワイヤをボンディングする工程を含む半導体装置の製造方法であって,半導体基板上に銅を主成分とする金属配線を形成する工程と,全面に絶縁膜を形成する工程と,金又はアルミニウムのワイヤをボンディングする部分のみの絶縁膜を除去して金属配線の一部を露出する工程と,露出した金属配線の一部の表面層に銅シリサイド層又は銅とホウ素との化合物層を形成する工程と,銅シリサイド層又は銅とホウ素との化合物層の表面にワイヤをボンディングする工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。」
(エ)本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開昭63-136637号公報(昭和63年 6月 8日出願公開)には,次の記載がある。
「その概要は半導体ペレットの各電極表面をワイヤボンディングに必要な部分のみをパッドとして露出させ,それ以外の各電極表面を絶縁膜で被覆し,露出電極面の相互の位置を充分に離すことでワイヤボンディングの際にボンディング位置ずれによる短絡事故等を防止するものである。」(第1ページ右下欄第5~11行。)
(オ)前記(ア)~(エ)から,電極配線を覆う絶縁膜に開口を設けてワイヤボンディングを行う際に,前記絶縁膜のうち前記ワイヤボンディングに必要な部分のみを開口させるようにすることは,本願の優先日前において当業者にとって周知の技術(以下,「周知技術」という。)であったといえる。
(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「n型で低抵抗の炭化珪素で形成される基板20と,前記基板20の表面上に形成されたn型の炭化珪素で構成されるドリフト層21」について,引用文献1の[0013](前記(2)ア(ア))において,「また,下記各実施の形態では,第1導電型をn型,第2導電型をp型として説明するが,半導体の導電型については,その逆であっても構わない。」と記載されているから,上記「n型」は,いずれも半導体の導電型を示すものである。
そうすると,上記「n型で低抵抗の炭化珪素で形成される基板20と,前記基板20の表面上に形成されたn型の炭化珪素で構成されるドリフト層21」は半導体であるといえる。
また,引用文献1の[0032](前記(2)ア(ア))には,「n型で低抵抗の炭化珪素半導体の基板20上の表面(第1の主面)上に化学気相堆積(Chemical Vapor Deposition:CVD)法により・・・炭化珪素で構成されるドリフト層21をエピタキシャル成長する。」と記載されていることから,「ドリフト層21」はエピタキシャル層である。
さらに,上記「基板20と,前記基板20の表面上に形成された」「ドリフト層21」は,当然に,表面と裏面とを有するものといえる。
一方,本願補正発明の「表面及び裏面を有する半導体層」について,本願明細書の【0006】には,「半導体装置1は,平面視四角形状の本発明の半導体層の一例としての半導体基板2を含む。」と記載されており,同【0017】には,「半導体基板2は,ベース基板28と,ベース基板28上のエピタキシャル層29とを含むSiCエピタキシャル基板であってもよい。」と記載されているから,本願補正発明の「半導体層」は,いずれもSiCからなるベース基板と,ベース基板上のエピタキシャル層とを含むものである。
したがって,引用発明1の「n型で低抵抗の炭化珪素で形成される基板20と,前記基板20の表面上に形成されたn型の炭化珪素で構成されるドリフト層21」は,本願補正発明の「表面および裏面を有する半導体層」に相当する。
イ 引用発明1は,「前記ソースパッド10の下部に形成された多数のメインセルと,各メインセルにおいて,n型の炭化珪素で構成されるドリフト層21の表層部に形成された,p型炭化珪素のメインセルウェル領域41と,前記メインセルウェル領域41が多数形成されているメインセル領域と,を含む」ことから,「メインセル」を多数含む「メインセル領域」は,「ドリフト層21の表層部」に形成されるものである。
ここで,前記アの検討によれば,引用発明1の「n型で低抵抗の炭化珪素で形成される基板20と,前記基板20の表面上に形成されたn型の炭化珪素で構成されるドリフト層21」は,本願補正発明の「表面および裏面を有する半導体層」に相当するから,引用発明1の「メインセル」を多数含む「メインセル領域」は,半導体層の表層部,すなわち表面側に形成されているといえる。
また,引用文献1の[0030](前記(2)ア(ア))の「メインセルウェル領域41にはメインMOSダイオード(D1)が・・・形成される」の記載,同[0047]の「メインMOSFET(メインセルのMOSFET:M1)の一部にメインMOSダイオード(D1,ボディダイオード)があり」との記載,及び,同[0039]の「メインセルウェル領域41およびセンスセルウェル領域42を中心とする活性領域に、熱酸化法または堆積法を用いて、・・・ゲート絶縁膜30を形成する。ゲート絶縁膜30の・・・膜厚値は、どの程度のゲート電圧及びゲート電界でMOSFETを駆動(スイッチング動作)させるかに依存し」との記載からすれば,引用発明1の「メインセルウェル領域41」は,駆動(スイッチング動作)されるメインセルのMOSFETの活性領域を構成するものであり,さらに,技術常識からすれば,MOSFETの駆動(スイッチング動作)によって当該MOSFETの活性領域に電流が流れるものといえるから,引用発明1の「メインセルウェル領域41」が形成されている「メインセル」には電流が流れるものであり,その電流はメインの電流,すなわち,主電流であるといえる。
一方,本願補正発明における「主電流」とは,本願明細書の【0019】の「主電流が流れる最小単位である主電流側単位セル34」との記載によれば,「第1単位セル」を流れる電流であるといえる。
そうすると,引用発明1の「メインセル」に流れる電流は,本願補正発明の「主電流」に相当し,引用発明1の「メインセル」は,主電流側にあるといえるから,本願補正発明の「主電流側の第1単位セル」に相当する。
以上によれば,引用発明1の「各メインセルにおいて,n型の炭化珪素で構成されるドリフト層21の表層部に形成された,p型炭化珪素のメインセルウェル領域41と,前記メインセルウェル領域41が多数形成されているメインセル領域」は,本願補正発明の「前記半導体層の前記表面側に形成され,主電流側の第1単位セルを複数含む第1素子部」に相当する。
ウ 引用発明1の「前記ドリフト層21の表層部の一部に形成された,p型炭化珪素の複数のセンスセル(センスセルウェル領域42)」について,引用文献1の[0011] (前記(2)ア(ア))の「本発明の電力用半導体装置によれば,電流センサなどのセンサを内蔵して電流値などをモニターできる電力用半導体装置において,センサパッドを備えた電力用半導体装置を高速駆動した場合においても,ゲート絶縁膜に大きな強度の電界が印加されずゲート絶縁膜が絶縁破壊することを抑制でき,より信頼性の高い電力用半導体装置を提供することができる。」との記載によれば,引用発明1の「複数のセンスセル」は,電流を検出するものであり,上記「複数のセンスセル」を含む領域は,電流検出側にあるといえる。
また,引用発明1の「ドリフト層21の表層部の一部に形成された,p型の炭化珪素で構成される複数のセンスセル(センスセルウェル領域42)」は,前記イの検討を参酌すると,「メインセル」を多数含む「メインセル領域」と同様に,半導体層の表層部,すなわち表面側に形成されているといえる。
以上によれば,引用発明1の「センスセル」は,本願補正発明の「第2の単位セル」に相当し,引用発明1の「ドリフト層21の表層部の一部に形成された,p型の炭化珪素で構成される複数のセンスセル(センスセルウェル領域42)」を含む領域は,本願補正発明の「前記半導体層の前記表面側に形成され,電流検出側の第2単位セルを含む電流センス部」に相当する。
エ 引用発明1においては,「ソースパッド10の下部」に「多数のメインセル」が形成され,「各メインセルにおいて」,「ドリフト層21の表層部」に「メインセルウェル領域41」が形成され,当該「メインセルウェル領域41」が「多数形成されている」領域が,「メインセル領域」であるから,「ソースパッド10の下部」には「メインセル領域」が配置されている,すなわち,「ソースパッド10」は,「メインセル領域」の上方に配置されているといえる。
また,前記イの検討のとおり,引用発明1の「メインセル領域」は,本願補正発明の「第1素子部」に相当するものである。
以上によれば,引用発明1の「ソースパッド10」は,本願補正発明の「前記第1素子部の上方に配置された第1素子側表面電極」に相当する。
オ 引用発明1の「センスパッド13」は,「上面から見て,本体である長方形部分と,突起部分とを有」するものであり,また,「前記センスパッド13の前記突起部分の下部の前記ドリフト層21に,前記複数のセンスセル(センスセルウェル領域42)が形成され」るものであるから,「センスパッド13」の「突起部の下部」の「ドリフト層21」に,「複数のセンスセル(センスセルウェル領域42)」を含む領域が配置されている,すなわち,「センスパッド13」は,「複数のセンスセル(センスセルウェル領域42)」を含む領域の上方を少なくとも一部に含むように配置されているといえる。
さらに,前記ウの検討のとおり引用発明1の「複数のセンスセル(センスセルウェル領域42)」を含む領域は,本願補正発明の「電流センス部」に相当するものである。
以上によれば,引用発明1の「センスパッド13」は,本願補正発明の「前記電流センス部の上方を少なくとも一部に含むように配置されたセンス側表面電極」に相当する。
カ 引用発明1は,「前記センスパッド13の前記本体である長方形部分にワイヤーボンディングがされている」ものであるから,「センスパッド13」には,「ワイヤー」が接合されており,当該「ワイヤー」は,センス側のワイヤーであるといえる。
また,前記オの検討のとおり引用発明1の「センスパッド13」は,本願補正発明の「センス側表面電極」に相当するものである。
以上によれば,引用発明1の「ワイヤー」は,本願補正発明の「センス側ワイヤ」に相当し,引用発明1と本願補正発明とは,「前記センス側表面電極に接合され」た「センス側ワイヤ」を含む点で共通する。
キ 引用発明1の「複数のセンスセル(センスセルウェル領域42)」は,「前記センスパッド13」の「前記突起部分の下部の前記ドリフト層21」に「形成され」ているから,「センスパッド13」の「突起部分」の下方に配置されているといえる。
また,引用発明1は,「前記センスパッド13の前記本体である長方形部分にワイヤーボンディングがされている」から,「センスパッド13」の「本体である長方形部分」が「ワイヤー」の接合部分であるといえる。
以上によれば,引用発明1の「複数のセンスセル(センスセルウェル領域42)」を含む領域は,「センスパッド13」の「突起部分」の下方に配置されるものであり,「ワイヤー」の接合部分の下方には配置されるものではないから,当該「ワイヤー」の接合部分の直下部を避けた位置に配置されているといえる。
そして,前記オ及びカの検討を参酌すれば,引用発明1と本願補正発明とは,「前記第2単位セルは,前記センス側表面電極の下方で,かつ前記センス側ワイヤの接合部分の直下部を避けた位置に配置されている」点で一致する。
ク 引用発明1の「炭化珪素MOSFETを主とした電力用半導体装置」は,本願補正発明の「半導体装置」に対応する。
以上のア~クによれば,本願補正発明と引用発明1の一致点及び相違点は,次のとおりである。
<一致点>
「表面および裏面を有する半導体層と,
前記半導体層の前記表面側に形成され,主電流側の第1単位セルを複数含む第1素子部と,
前記半導体層の前記表面側に形成され,電流検出側の第2単位セルを含む電流センス部と,
前記第1素子部の上方に配置された第1素子側表面電極と,
前記電流センス部の上方を少なくとも一部に含むように配置されたセンス側表面電極と,
前記センス側表面電極に接合されたセンス側ワイヤと,
を含み,
前記第2単位セルは,前記センス側表面電極の下方で,かつ前記センス側ワイヤの接合部分の直下部を避けた位置に配置されている,半導体装置。」
<相違点1>
本願補正発明は,「前記第1素子側表面電極に接合された第1素子側ワイヤ」を含むのに対し,引用発明1は,そのようなワイヤを含んでいるか不明である点。
<相違点2>
「センス側ワイヤ」について,本願補正発明は,「第1素子側ワイヤよりも細い」のに対し,引用発明1は,そのような構成を備えているか不明である点。
<相違点3>
本願補正発明は,「前記センス側表面電極の前記第2単位セルの直上部を被覆領域として覆い,前記センス側表面電極の一部をセンス側パッドとして露出させる第1開口を有するパッシベーション膜」を含むのに対し,引用発明1は,そのようなパッシベーション膜を含んでいるか不明である点。
(4)判断
以下,相違点について検討する。
ア 相違点1,2について
まず,相違点1,2については,いずれも「ワイヤ」に関するものであるから一緒に検討する。
(ア)引用発明1においては,「センスパッド13」に「ワイヤーボンディングがされている」から,「センスパッド13」に「ワイヤー」が接合されるものであるところ,半導体装置に含まれるセンスパッドと同様に,ソースパッド(電極)にもワイヤーを接合することは常套手段である(必要であれば,引用文献2参照。)。
(イ)また,前記(2)イ(ウ)に示したとおり,引用発明2は,小さい電流が流れるセンスパッドに接続するワイヤの直径を,主電流によるワイヤ溶断を防止するための太さである,ソース電極に接続するワイヤの直径よりも細くする炭化珪素半導体装置であって,センスパッドに流れる電流は,ソース電力に流れる電流よりも小さいといえる。
また,前記(3)ウで検討したように,引用発明1の「複数のセンスセル」は,電流を検知するものであるところ,引用文献1の[図2](前記(2)ア(ア))には,センスセルウェル領域42の数は,メインセルウェル領域41の数よりもはるかに少ないことが見てとれるから,引用発明1において,「センスパッド13」に流れる電流は,「ソースパッド10」に流れる電流よりも小さいといえる。
以上によれば,引用発明1と引用発明2とは,いずれも,「炭化珪素半導体装置」という共通の技術分野に属するものであり,かつ,両者は,センスパッド(電極)に流れる電流は,ソースパッドに流れる電流よりも小さいという点で共通しているから,引用発明1に引用発明2を適用する動機付けが存在する。
したがって,引用発明1において,上記常套手段及び引用発明2を適用して,「ソースパッド10」にワイヤを接合させるとともに,「センスパッド13」に接合される「ワイヤー」を,「ソースパッド10」に接合させるワイヤよりも細くすることにより,相違点1,2に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点3について
前記3(2)ウ(ウ)に示したとおり,引用発明3は,センス端子付きMOSFETを含むチップであって,前記チップの全面を覆って表面保護膜を形成し,前記表面保護膜に開口部を設け,前記開口部から露出したセンスパッド電極にワイヤボンドする,センス端子付きMOSFETを含むチップである。
また,引用文献3の【0006】(前記(2)ウ(ア))には,「センス部32は,過電流を保護するために,実動作領域35上の複数のMOSトランジスタを電流検出用のセンス端子として使用し,センスパッド電極33にコンタクトしている」と記載されているから,引用発明3のセンスパッド電極は,電流を検出するためのものであるといえる。
一方,引用文献1の[0011] (前記(2)ア(ア))には,「本発明の電力用半導体装置によれば,電流センサなどのセンサを内蔵して電流値などをモニターできる電力用半導体装置において,センサパッドを備えた電力用半導体装置を高速駆動した場合においても,ゲート絶縁膜に大きな強度の電界が印加されずゲート絶縁膜が絶縁破壊することを抑制でき,より信頼性の高い電力用半導体装置を提供することができる」と記載されているから,引用発明1のセンスパッド13は,電流を検出するためのものであるといえる。
以上によれば,引用発明1と引用発明3とは,いずれも,センスパッド(電極)を備える半導体装置という共通の技術分野に属するものであり,かつ,両者は,電流を検出するためのセンスパッド(電極)にワイヤーボンディングを行うものである点で共通するものであるから,引用発明1に引用発明3を適用する動機付けは存在する。
そして,前記(2)エ(オ)に示したとおり,電極配線を覆う絶縁膜に開口を設けてワイヤボンディングを行う際に,前記絶縁膜のうち前記ワイヤボンディングに必要な部分のみを開口させるようにすることは,本願の優先日前において周知技術であった。
以上によれば,引用発明1に上記引用発明3及び上記周知技術を適用して,「炭化珪素MOSFETを主とした電力用半導体装置」の全面を覆う表面保護膜を形成し,前記表面保護膜に開口部を設けてワイヤーボンディングをする際に,前記表面保護膜のうち前記ワイヤーボンディングに必要な部分のみを開口させることによって,「炭化珪素MOSFETを主とした電力用半導体装置」において,「センスパッド13」の「複数のセンスセル(センスセルウェル領域42)」の直上部を被覆領域として覆い,前記「センスパッド13」の一部をセンス側パッドとして露出させる開口を有する表面保護膜を含ませるようにすることで,相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者にとって格別の困難性を要するものではない。
ウ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願補正発明の奏する作用効果は,引用発明1~3及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
エ したがって,本願補正発明は,引用発明1~3及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 むすび
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また,仮に,本件補正が,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものと仮定した場合,本件補正は,同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年 9月13日にされた手続補正は,前記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和3年 5月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~22に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,
(1)この出願の請求項1~5,7,8,12,13,15,20~22に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1~3に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,
(2)この出願の請求項6,9~11に係る発明は,以下の引用文献1~4に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,
(3)この出願の請求項14に係る発明は,以下の引用文献1~3,5に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,
(4)この出願の請求項16~19に係る発明は,以下の引用文献1,3に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,
というものである。
引用文献1:国際公開第2011/161721号
引用文献2:特開2013- 98316号公報
引用文献3:特開2002-314086号公報
引用文献4:特開2015-220334号公報
引用文献5:特開2005-322781号公報
3 引用文献,引用発明等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1~3,その記載事項,引用発明1~3及び周知技術は,前記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願補正発明は,前記第2の[理由]2(1)で検討したとおり,本願発明から実質的に変更されていない。
そうすると,本願発明から実質的に変更されていない本願補正発明が,前記第2の[理由]3(3),(4)に記載したとおり,引用発明1~3及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明1~3及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2021-012178