特許拒絶査定不服審判
2023-012404
ガラス板用合紙及びその製造方法
- 審判番号
- 2023-012404
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-545819外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年07月24日
- 審決日
- 2025年05月22日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】特種東海製紙株式会社
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 分類
- P18 .121-Z (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-545819「ガラス板用合紙及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和元年10月3日国際公開、WO2019/188974〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)3月25日(優先権主張 2018年(平成30年)3月29日。以下「優先日」という。)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 4年10月28日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 1月 5日 :意見書の提出
同年 4月18日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月24日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月24日 :審判請求書の提出
同年 8月22日 :審判請求書を対象とする手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~15に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
木材パルプを原料とするガラス板用合紙であって、
一方の表面に存在するモース硬度4以上の異物の存在割合が1000m2あたり10個未満であり、
一方の表面上の前記異物の存在割合と他方の表面上の前記異物の存在割合との差が1000m2あたり4個以内である、
ガラス板用合紙。」
第3 原査定の概要
原査定における拒絶の理由の概要は、次の理由を含むものである。
拒絶理由(進歩性)
本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、その出願の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献一覧>
1.国際公開第2015/137488号
第4 当審の判断
1 引用文献に記載された事項及び発明等
(1) 引用文献1について
ア 引用文献1の記載
原査定における拒絶の理由で引用された引用文献1(国際公開第2015/137488号)には、次の記載がある(下線は当審において付与。以下同様。)。
「[0001] 本発明は、ガラス板の運搬や保管をする過程において、ガラス板を包装する紙、および、ガラス板の間に挟み込む紙(合紙)に関するものである。特に、本発明は、液晶パネルディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ等のフラットパネル・ディスプレイ用のガラス合紙として好適に用いることができる紙に関する。」
「[0020]本発明のガラス合紙は、木材パルプを原料とするガラス合紙であって、その表面に存在するモース硬度4以上の異物の存在割合が1m2あたり0.010個未満である。ガラス板へ合紙が使用される際に、合紙表面の異物がガラス板に接触して傷をつける傾向があり、特に異物が表面1m2あたり0.010個以上存在する合紙をガラス板に使用すると、ガラス板表面に発生する微少な傷又は割れが著しく増加し、その結果、パネル形成時の問題を引き起こすことが今回明らかとなった。なお、「1m2あたり0.010個未満」とは、例えばガラス合紙表面500m2に存在する異物を検査し、異物の数を単位面積(1m2)あたりの個数に換算した数値が0.010個未満、という意味である。」
「[0032] 本発明においては、さらに、ガラス合紙の表面に存在するモース硬度4以上の異物の量が、1m2あたり0.005個未満であることが好ましく、1m2あたり0.003個未満がより好ましく、1m2あたり0.001個未満が更により好ましい。1m2あたり0.005個以上の量の異物が存在する場合、携帯端末など非常に高精細なディスプレイを必要とする場面において、ガラス表面に発生した傷又は割れが要因で発生するカラーフィルムの断線箇所が高精彩であるが故に目立ち、品質不良と判断されるおそれがあるからである。」
「[0038]本発明のガラス合紙はガラス板の間に挿入または包装されて使用される。例えば、本発明のガラス板合紙は複数のガラス板の間に、典型的には、1枚ずつ挿入され、全体として、積層体とされ、当該積層体が保管、運搬の対象となる。」
「[0048](1)ガラス表面に発生する傷の評価
サイズ1500mm×1800mm×0.7mmの液晶ディスプレイ用ガラス基板とガラス合紙を交互に100枚ずつ積層した。この積層体上下に同サイズで厚さ1mmのアクリル板を挟み、積層体全体をゴム紐で縛り固定し、これを振とう機に供し、300rpmで24時間振とうした。その後、ゴム紐を解いてガラスの側面から光を当て、100枚のガラス板の表裏面において傷が存在するか顕微鏡を用いて確認した。
[0049](2)ガラス合紙の異物調査
前記「(1)ガラス表面に発生する傷の評価」において傷の確認がなされたガラス板に貼付されていたガラス合紙を抜き取り、ガラス表面の傷発生の原因となった異物を100倍の実体顕微鏡にて探し、さらにX線解析顕微鏡を使用して当該異物の材質を特定した。異物の大きさを測定して体積を計算し、次にX線解析顕微鏡を使用して当該異物の材質を特定した。」
「[請求項1] 木材パルプを原料とするガラス合紙であって、
前記ガラス合紙の表面に存在するモース硬度4以上の異物が1m2あたり0.010個未満であるガラス合紙。」
イ 引用文献1の記載から認定できる事項
[0020]や[請求項1]等に記載されている「ガラス合紙」は、[0001]の「本発明は、ガラス板の運搬や保管をする過程において、ガラス板を包装する紙、および、ガラス板の間に挟み込む紙(合紙)に関するものである」という記載や、[0038]の「本発明のガラス合紙はガラス板の間に挿入または包装されて使用される。例えば、本発明のガラス板合紙は複数のガラス板の間に、典型的には、1枚ずつ挿入され、全体として、積層体とされ、当該積層体が保管、運搬の対象となる」という記載から、ガラス板の保管、運搬に用いられるものであることは明らかである。
ウ 引用発明
上記ア及びイから、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「木材パルプを原料とする、ガラス板の保管、運搬に用いられるガラス合紙であって、
ガラス合紙の表面に存在するモース硬度4以上の異物の存在割合が1m2あたり0.010個未満であるガラス合紙。」
(2) 引用文献2について
ア 引用文献2の記載
当審において新たに引用する特開昭61-289199号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある(「・・・」は省略を示す。以下同様。)。
「(産業上の利用分野)
本発明は、積層ガラス板の各隣接間等に挟み使用されるガラス用合紙に関する。
(従来の技術)
大部分の平判紙はその表面に字や画を書いたり印刷したりする機能を求めているため表裏のうち一面、又は両面を平滑な状態に仕上げられている。
従来は上記のような平判紙をガラス用の合紙として使用していた。その従来のガラス用合紙の抄造は、長網式抄紙又は短網式抄紙とヤンキ一式ドライヤーとの組合せで行なっており、片側脱水した紙をドライヤーに充てて急熱急乾する方式であり、片側が滑面になる。更に目的に応じて、様々の填料を加えた上で、片面又は両面を艶出し加工しており、従来のガラス用合紙は少なくとも片面が滑面となるものを積層ガラス板の各隣接間等に1枚又は滑面を対向させ粗面を外側とした2枚を挟み込んで使用していた。
(発明が解決しようとする問題点)
上記ガラス用合紙に於ては、少なくとも片面が滑面のため、その滑面とガラス表面との接触面積が大きくなり、吸湿性が低下して、合紙の中の樹脂分がガラスに転写される紙肌模様やヤケが生じやすい。・・・又、滑面を対向させて2枚使用するには、2度紙を挟み入れる必要があり、また滑面を対向させなければならず非常に手間がかかり機械化も困難である。
(問題点を解決するための手段)
上記技術課題を解決するために本発明は、ガラス用合紙の表裏がともにベック平滑度で20秒以下の粗面とし、更に好ましくは表裏ともにベック平滑度が20秒以下の粗面でかつ樹脂分が0.3重量%以下とした。」(第1頁左下欄第12行~第2頁左上欄第9行)
「(発明の効果)・・・隣接ガラス間等に挟み込むガラス用合紙はそれぞれ1枚のみで良いため、作業性が向上し、機械化の際にも有利である。」(第2頁右下欄第1行~第9行)
イ 引用文献2に記載の技術的事項
上記アに摘記した引用文献2の記載からみて、以下の点は当該技術分野において共通する課題であると認められる。
「2枚のガラス板の間に1枚のガラス用合紙を挟み使用する場合、ガラス用合紙の両面をガラス板に接触することに適したものとすること。」
2 対比
(1) 本願発明と引用発明を対比する。
ア ガラス板用合紙について
引用発明の「ガラス板の保管、運搬に用いられるガラス合紙」は、本願発明の「ガラス板用合紙」に相当する。
イ 表面について
引用発明の「ガラス合紙の表面」は、本願発明の「一方の表面」に相当する。
ウ モース硬度4以上の異物について
引用発明の「モース硬度4以上の異物が1m2あたり0.010個未満」という構成は、換算すると、「モース硬度4以上の異物の存在割合が1000m2あたり10個未満」となる。このことから、引用発明の「ガラス合紙の表面に存在するモース硬度4以上の異物の存在割合が1m2あたり0.010個未満」という構成は、本願発明の「一方の表面に存在するモース硬度4以上の異物の存在割合が1000m2あたり10個未満」という構成に相当する。
(2) 本願発明と引用発明は次の点で一致し、相違する。
ア 一致点
「木材パルプを原料とするガラス板用合紙であって、
一方の表面に存在するモース硬度4以上の異物の存在割合が1000m2あたり10個未満である、ガラス板用合紙。」
イ 相違点
ガラス板用合紙について、本願発明では、「一方の表面上の前記異物の存在割合と他方の表面上の前記異物の存在割合との差が1000m2あたり4個以内である」のに対して、引用発明では、一方の表面上の異物の存在割合と他方の表面上の異物の存在割合との差が不明である点。
3 判断
(1) 相違点について
上記1(1)アに示した、引用文献1の[0038]の「本発明のガラス合紙はガラス板の間に挿入または包装されて使用される。例えば、本発明のガラス板合紙は複数のガラス板の間に、典型的には、1枚ずつ挿入され、全体として、積層体とされ、当該積層体が保管、運搬の対象となる」という記載を踏まえれば、引用発明のガラス合紙は、2枚のガラス板の間に1枚挿入され、当該ガラス合紙の両面にガラス板が接触するものであることは明らかである。加えて、同[0048]の「サイズ1500mm×1800mm×0.7mmの液晶ディスプレイ用ガラス基板とガラス合紙を交互に100枚ずつ積層した。・・・100枚のガラス板の表裏面において傷が存在するか顕微鏡を用いて確認した」という記載と、同[0049]の「傷の確認がなされたガラス板に貼付されていたガラス合紙を抜き取り、ガラス表面の傷発生の原因となった異物を100倍の実体顕微鏡にて探し、さらにX線解析顕微鏡を使用して当該異物の材質を特定した」という記載を踏まえれば、ガラス板は表裏の両面において傷が発生し得るものであり、2枚のガラス板の間に挿入された1枚のガラス合紙の両面がガラス板の表裏の両面に傷を発生させ得ることは明らかである。
そして、引用発明において、「ガラス合紙の表面に存在するモース硬度4以上の異物の存在割合が1m2あたり0.010個未満である」という構成が、ガラス合紙の両面において満たされているかは不明であるが、上記引用文献1の[0038]、[0048]及び[0049]には、2枚のガラス板の間に1枚のガラス合紙を挿入する場合、そのガラス合紙の両面がガラス板に接触してガラス板に傷を発生させ得るものであることが示唆されているし、2枚のガラス板の間に1枚のガラス合紙を挿入する場合、ガラス合紙の両面をガラス板に接触することに適したものとすることは、例えば、引用文献2に記載の技術的事項に示されるように、当該技術分野における課題として当業者にとっては明らかなことであるから、引用発明において「ガラス合紙の表面に存在するモース硬度4以上の異物の存在割合が1m2あたり0.010個未満である」構成を、ガラス合紙の両面において満たすようにすることは、当業者にとって容易になし得たことである。
また、引用発明において「ガラス合紙の表面に存在するモース硬度4以上の異物の存在割合が1m2あたり0.010個未満である」構成を、ガラス合紙の一方の面と他方の面の両面において満たすようにしたものにおいて、一方の面と他方の面の両面における異物の存在割合をあえて異なるものとする理由はないから、一方の表面上の異物の存在割合と他方の表面上の異物の存在割合との差が1000m2あたり4個以内となるようにすることは、当業者の通常の創作能力の発揮といえる。加えて、上記1(1)アに示した、引用文献1の[0032]の「本発明においては、さらに、ガラス合紙の表面に存在するモース硬度4以上の異物の量が、1m2あたり0.005個未満であることが好ましく、1m2あたり0.003個未満がより好ましく、1m2あたり0.001個未満が更により好ましい」という記載を踏まえ、引用発明に係るガラス合紙における異物を減らすために、1m2あたり0.005個未満(1000m2あたり5個未満)や1m2あたり0.003個未満(1000m2あたり3個未満)とした場合は、一方の面と他方の面のいずれの面においても1000m2あたり4個以下となるため、本件発明において特定されるように「一方の表面上の前記異物の存在割合と他方の表面上の前記異物の存在割合との差が1000m2あたり4個以内」となることは必然である。
したがって、引用発明において、当該技術分野における課題を踏まえ、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者にとって容易になし得たことである。
(2) 効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び当該技術分野における課題から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(3) 請求人の主張について
請求人は、令和5年8月22日提出の審判請求書を対象とする手続補正書の「(構成の非容易想到性)」において、以下のとおり主張する。
「すなわち、審査官殿は、ガラス板用合紙がガラス板の間に挿入され、その際に、その表裏の両面がガラス板に接触することを理由として、引用文献1記載のガラス板用合紙の表裏の表面のモース硬度4以上の異物の数を同等とする示唆があると認定しております。
しかし、まず、ガラス板用合紙がガラス板の間に挿入されるからといって、ガラス板用合紙の表裏の表面の状態を同等とする動機があるとはいえません。そのような動機づけは、ガラス板用合紙の表裏の表面の状態の相違が問題となるという認識がない限り不可能です。
そもそも、ガラス板用合紙の表裏の表面の状態の差異が問題となるとの認識はこれまでにはなく、本出願人が初めて見出したものです。したがいまして、ガラス板用合紙がガラス板の間に挿入されるからといって、ガラス板用合紙の表裏の表面の状態の差異を解消しようとする理由がありません。」
しかしながら、上記(1)で検討したとおり、ガラス合紙の両面をガラス板に接触することに適したものとすることは、当業者にとって明らかであるから、請求人の上記主張は採用できない。
(4) 小括
よって、本願発明は、引用発明及び当該技術分野における課題に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び当該技術分野における課題に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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