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特許拒絶査定不服審判

2023-010108

蓄電デバイスの製造方法、及び蓄電デバイス用負極の製造方法

審判番号
2023-010108
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-501034
請求日
2023年06月19日
審決日
2024年10月23日
公報発行日
2025年02月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】武蔵エナジーソリューションズ株式会社
  • 【請求人代理人】名古屋国際弁理士法人
審判長/審判官
  • 審判長 井上 信一
  • 審判官 岩間 直純
  • 審判官 渡辺 努
分類
P18 .121-Z (H01G) / P18 .575-Z (H01G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第159条第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2020-501034「蓄電デバイスの製造方法、及び蓄電デバイス用負極の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月29日国際公開、WO2019/163896〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(平成31年)2月21日(優先権主張 2018年(平成30年)2月22日、2018年(平成30年)4月9日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。 令和4年 5月23日付け 拒絶理由通知書 令和4年 6月30日 意見書・手続補正書の提出 令和4年11月 8日付け 拒絶理由通知書(最後) 令和4年12月20日 意見書・手続補正書の提出 令和5年 4月10日付け 補正却下の決定、拒絶査定 令和5年 6月19日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出 令和5年 9月26日 上申書の提出 第2 令和5年6月19日にされた手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和5年6月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。 [理由] 1 補正の概要 本件補正は、令和4年6月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲 「【請求項1】 正極、セパレータ、及び、負極を備える電極ユニットと、電解液と、 を備え、 前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも片面に形成された負極活物質層とを備え、 前記負極にリチウムがドープされた蓄電デバイスであって、 前記負極集電体の開口率が0%であり、 前記負極活物質層は孔を有し、 前記負極活物質層の開口率が0.001%以上10%以下であり、 前記孔の開口間隔が10μm以上5000μm以下である蓄電デバイス。 【請求項2】 請求項1に記載の蓄電デバイスであって、 前記負極活物質層の厚みに対する前記孔の深さの割合である孔深さ割合が95%以下である蓄電デバイス。 【請求項3】 請求項2に記載の蓄電デバイスであって、 前記孔深さ割合が20%以上90%以下である蓄電デバイス。 【請求項4】 請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイスであって、 前記負極集電体の両面に前記負極活物質層が形成され、 前記負極集電体の両面において、それぞれ、前記負極活物質層の開口率が0.001%以上10%以下である蓄電デバイス。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイスであって、 前記孔の深さが1μm以上100μm以下である蓄電デバイス。 【請求項6】 請求項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイスであって、 前記孔の開口幅が0.1μm以上100μm以下である蓄電デバイス。 【請求項7】 請求項1~6のいずれか1項に記載の蓄電デバイスであって、 1mm2当たりの前記孔の数が0.1個以上1000個以下である蓄電デバイス。 【請求項8】 請求項1~7のいずれか1項に記載の蓄電デバイスであって、 前記負極におけるリチウムイオンのドープ量が、前記負極活物質層に含まれる負極活物質1g当たり、50mAh以上5000mAh以下である蓄電デバイス。 【請求項9】 負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備え、リチウムがドープされた蓄電デバイス用負極であって、 前記負極集電体の開口率が0%であり、 前記負極活物質層は孔を有し、 前記負極活物質層の開口率が0.001%以上1%以下であり、 前記孔の開口間隔が10μm以上5000μm以下である蓄電デバイス用負極。 【請求項10】 請求項9に記載の蓄電デバイス用負極であって、 前記負極活物質層の厚みに対する前記孔の深さの割合である孔深さ割合が95%以下である蓄電デバイス用負極。 【請求項11】 請求項10に記載の蓄電デバイス用負極であって、 前記孔深さ割合が20%以上90%以下である蓄電デバイス用負極。 【請求項12】 負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも片面に形成された負極活物質層とを備え、リチウムがドープされた蓄電デバイス用負極の製造方法であって、 前記負極集電体の開口率が0%であり、 前記負極活物質層は孔を有し、 前記負極活物質層の開口率が0.001%以上10%以下であり、 前記孔の開口間隔が10μm以上5000μm以下であり、 前記負極にリチウムイオンをドープする蓄電デバイス用負極の製造方法。 【請求項13】 請求項12に記載の蓄電デバイス用負極の製造方法であって、 前記負極活物質層の厚みに対する前記孔の深さの割合である孔深さ割合が95%以下である蓄電デバイス用負極の製造方法。 【請求項14】 請求項13に記載の蓄電デバイス用負極の製造方法であって、 前記孔深さ割合が20%以上90%以下である蓄電デバイス用負極の製造方法。 【請求項15】 請求項12~14のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用負極の製造方法であって、 前記リチウムイオン及び溶媒を含むドープ溶液、並びに、導電性基材及びリチウム金属含有板を積層した構成を有する対極ユニットを収容する電解液槽内において、前記負極集電体と未だドープされていない前記負極活物質層とを備える電極前駆体と、前記対極ユニットとを電気的に接続することで前記負極活物質層に前記リチウムイオンをドープする、 蓄電デバイス用負極の製造方法。 【請求項16】 電極セルを備える蓄電デバイスの製造方法であって、 請求項12~15のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用負極の製造方法により製造した蓄電デバイス用負極と、セパレータと、前記蓄電デバイス用負極とは異なる電極とを順次積層して前記電極セルを形成する蓄電デバイスの製造方法。」 を、 「【請求項1】 負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも片面に形成された負極活物質層とを備え、リチウムがドープされた蓄電デバイス用負極の製造方法であって、 前記負極集電体の開口率が0%であり、 前記負極活物質層は孔を有し、 前記負極活物質層の開口率が0.001%以上10%以下であり、 前記孔の開口間隔が10μm以上5000μm以下であり、 前記負極活物質層に前記孔を形成した後に、リチウムイオン及び溶媒を含むドープ溶液、並びに、導電性基材及びリチウム金属含有板を積層した構成を有する対極ユニットを収容する電解液槽内において、前記負極集電体と未だドープされていない前記負極活物質層とを備える電極前駆体と、前記対極ユニットとを電気的に接続することで前記負極活物質層に前記リチウムイオンをドープする、 蓄電デバイス用負極の製造方法。 【請求項2】 請求項1に記載の蓄電デバイス用負極の製造方法であって、 前記負極活物質層の厚みに対する前記孔の深さの割合である孔深さ割合が95%以下である蓄電デバイス用負極の製造方法。 【請求項3】 請求項2に記載の蓄電デバイス用負極の製造方法であって、 前記孔深さ割合が20%以上90%以下である蓄電デバイス用負極の製造方法。 【請求項4】 電極セルを備える蓄電デバイスの製造方法であって、 請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用負極の製造方法により製造した蓄電デバイス用負極と、セパレータと、前記蓄電デバイス用負極とは異なる電極とを順次積層して前記電極セルを形成する蓄電デバイスの製造方法。 」 と補正することを含むものである(下線は新たに追加された補正箇所を示すものとして請求人が付与したものである。)。 2 補正の適否 (1) 補正の目的要件 本件補正後の請求項1についての上記補正は、本件補正前の請求項12を引用する請求項15に「前記負極活物質層に前記孔を形成した後に」、前記負極活物質層に前記リチウムイオンをドープすることをさらに限定するものである。よって、当該補正は特許請求の範囲の限定的減縮に該当する。 本件補正後の請求項2は本件補正前の請求項13を引用する請求項15に、本件補正後の請求項3は本件補正前の請求項14を引用する請求項15に、本件補正後の請求項4は、本件補正前の請求項12~14のいずれか1項を引用する請求項15を引用する請求項16に、「前記負極活物質層に前記孔を形成した後に」、前記負極活物質層に前記リチウムイオンをドープすることをさらに限定するものである。よって、当該補正は特許請求の範囲の限定的減縮に該当する。 したがって、上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。 また、本件補正前の請求項1~11は削除されており、当該補正は特許法第17条の2第5項第1号に掲げる事項も目的とするものである。 (2) 独立特許要件 本件補正後の請求項1~4に係る上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて、以下検討する。 ア 本願補正発明 本願の請求項1~4に係る発明は、令和5年6月19日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。 「負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも片面に形成された負極活物質層とを備え、リチウムがドープされた蓄電デバイス用負極の製造方法であって、 前記負極集電体の開口率が0%であり、 前記負極活物質層は孔を有し、 前記負極活物質層の開口率が0.001%以上10%以下であり、 前記孔の開口間隔が10μm以上5000μm以下であり、 前記負極活物質層に前記孔を形成した後に、リチウムイオン及び溶媒を含むドープ溶液、並びに、導電性基材及びリチウム金属含有板を積層した構成を有する対極ユニットを収容する電解液槽内において、前記負極集電体と未だドープされていない前記負極活物質層とを備える電極前駆体と、前記対極ユニットとを電気的に接続することで前記負極活物質層に前記リチウムイオンをドープする、 蓄電デバイス用負極の製造方法。」 イ 引用例1の記載と引用発明 原査定の拒絶の理由(令和4年11月8日付け拒絶理由通知書に記載した理由)に引用された特開2016-058375号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。 (ア) 「【0020】 このように従来は、高容量で内部抵抗の低いリチウムイオン二次電池を作製することが困難であった。 【0021】 そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、高容量で素早く充放電できるリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。」 (イ) 「【0059】 以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。 【0060】 1.本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構成 図1に示すように、リチウムイオン二次電池1は、本発明のリチウムイオン二次電池用負極2(以下、負極2という。)と正極3とセパレータ4とを備えている。負極2と正極3とは、セパレータ4を挟んで対向配置されている。負極2、正極3、及びセパレータ4は、例えば、エチレンカーボネート(以下、ECという。)やジエチルカーボネート(以下、DECという。)、ジメチルカーボネート(以下、DMCという。)メチルエチルカーボネート(以下、MECという。)等を含む非水溶媒にLiPF6やLiBF4、LiClO4等のリチウム塩を混合した電解液に浸されている。 【0061】 負極2は、負極2の表面に開口9を有する穴7が形成されている。負極2は、穴7の開口9がセパレータ4と向き合うように配置されている。 【0062】 正極3は、集電体10の両面に活物質層11が形成されており、負極2と同様に、表面に開口13を有する穴12が形成されている。正極3に形成された穴12は、セパレータ4を挟んで、負極2の穴7の開口9と向き合うように配置されている。負極2に形成された穴7の開口9と正極3に形成された穴12の開口13とは、必ずしも向き合っている必要はないが、少なくとも1つ以上の穴7の開口9と穴12の開口13とが向き合っている方が望ましい。穴7と穴12とが向き合っていると、負極2の穴7と正極3の穴12との間をリチウムイオンやカウンターイオン(例えば、PF6―イオン)がスムーズに移動でき、より電池反応が早くなる。」 (ウ) 「【図1】 [図:0001418707000001.jpg] 【図2】 [図:0001418707000002.jpg] 」 (エ) 【0064】 2.本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の構成 図1に示すように、負極2は、集電体5と2つの活物質層6とを備え、集電体5の両面に活物質層6が形成されている。集電体5は、板状の部材であり、好ましくは厚さが5~20μmの薄膜状の部材である。集電体5の大きさ、形状などは、作製するリチウムイオン二次電池に合わせて適宜変更できる。集電体5は、電池の充放電時に生じる化学反応に対して安定的であり、導電性を有している部材で形成されていれば特に限定されない。例えば、集電体5は、銅、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、チタン、鉄、ステンレスなどで形成された箔を用いることができる。また、集電体5としては、金属繊維や炭素繊維で形成された不織布等も用いることができる。 (略) 【0081】 図2に示すように、穴7は開口9の形状が丸形をしている。穴7は、活物質層6の表面に所定の間隔を空けて縦横等間隔に開口9が並ぶように配置されている。 【0082】 なお、穴7の最大径は特に限定されないが、5~1500μmであることが望ましい。穴7の最大径が5~1500μmであると、負極2は、穴7に含浸された電解液中をリチウムイオンがスムーズに移動できるので、電池反応の速度をさらに向上できる。そして負極2は、穴7を形成するときの圧縮により減少する活物質層6中の空隙が少なく、穴7を形成することで有効に利用できる活物質が増加する。 【0083】 さらに、穴7の最大径は100~1000μmであることが特に望ましい。穴7の最大径が100~1000μmであると、負極2は、穴7の径が大きくなったことで、穴7に収容された電解液中をリチウムイオンがよりスムーズに移動できるようになり、電池反応の速度がさらに向上する。 【0084】 また、隣接する穴7同士の中心間の長さ(穴の中心間隔)は、特に限定されないが、500~6000μmであることが望ましい。穴7の中心間隔が500~6000μmであると、負極2は、1つの穴7から電解液中のリチウムイオンが届く範囲が重複せず、活物質層6において電解液中のリチウムイオンが届き難い領域が減少するので、穴7を形成することで有効に利用できる活物質が増加する。 【0085】 さらに、穴7の中心間隔は、500~2000μmであることが特に望ましい。穴7の中心間隔が500~2000μmであると、負極2は、負極2全体にさらに電解液中のリチウムイオンがいきわたりやすくなり、有効に利用できる活物質が増加する。 【0086】 また、穴7の深さは特に限定されないが、活物質層6の厚さの5%以上であることが望ましい。穴7の深さが5%以上であると、活物質層6の深さ方向において深い位置まで電解液中のリチウムイオンが届きやすくなり、有効に利用できる活物質が増加する。 【0087】 さらに、穴7の深さは、活物質層6の厚さの75%以上であることが特に望ましい。穴の深さが75%以上であると、活物質層6の深さ方向において深い位置まで電解液中のリチウムイオンがさらに届きやすくなり、有効に利用できる活物質がより増加する。」 (オ) 「【0135】 (実施例I) (1)電気化学セルの作製 実施例1~6では、活物質として天然黒鉛を用いたリチウムイオン二次電池用負極を作製し、電気化学セルの負極に適用した。実施例1~6の電気化学セルは、活物質層に形成した穴の深さが異なるが、他の構成は同じであるので、実施例1を例として電気化学セルの作製方法を説明する。 【0136】 最初に、活物質として天然黒鉛、バインダーとしてSBR、増粘剤としてCMCを質量比が98:1:1となるように計量した。計量後、水にCMCを溶解させ濃度1%の水溶液を作製し、当該水溶液と天然黒鉛とを自転公転ハイブリッドミキサー((株)シンキー製、モデル:ARE-310)に投入して10分撹拌した。さらに、SBRを分散させた溶液を投入して10分撹拌した。その後、適宜水を加えさらに攪拌し、粘度を800mPa・sに調整した負極スラリーを得た。 【0137】 次に、集電体として3cm×3cmの大きさにカットした厚さ10μmの銅箔を用意し、銅箔の一表面に負極スラリーをコンマロールコータによって塗工し、120℃で1時間乾燥させて活物質層を形成した。その後、銅箔の他表面にも同様に活物質層を形成した。形成した活物質層の厚さは300μmである。 【0138】 次いで、活物質層を両面に形成した銅箔をロールプレス機(サンクメタル社製、製品名:5トンエアーハイドロプレス)にかけて、活物質層の厚さが200μmとなるように圧縮した。圧縮した活物質層の一表面に剣山状の針を突き刺し、表1に示すパラメータの穴を形成した。その後、圧縮した活物質層の他表面にも同様に複数の穴を形成した。以上の工程を経て、活物質密度が1.70g/cm3(真密度の77%)で、34mg/cm2の天然黒鉛を含む活物質層を両面に有する負極を作製した。 【0139】 続いて、作製した負極と同じサイズに金属リチウムを打ち抜いて対極を作製した。負極と対極の間に無数の微細孔を有するポリエチレン製のセパレータを挟み、EC(エチレンカーボーネート)とDMC(ジメチルカーボネート)とMEC(メチルエチルカーボネート)を体積比1:1:1の割合で混合した溶媒に1MのLiPF6を添加した電解液と共に、アルミラミネートパックに挿入し、真空パックをしてラミネートセルを作製した。当該ラミネートセルを実施例1の電気化学セルとした。電極の有効面積は9cm2である。 【0140】 実施例2~6の電気化学セルも実施例1と同様の方法により作製した。 【0141】 また比較のために、比較例1として負極に穴が形成されていない点以外実施例1と同様の電気化学セルを作製した。実施例1~6の負極及び比較例1の負極のデータを表1に示す。 【0142】 【表1】 [図:0001418707000003.jpg] 」 (カ) 引用発明 前記(エ)(【0064】)より、引用例1には「集電体と2つの活物質層とを備え、集電体の両面に活物質層が形成されている負極」が記載されている。 前記(イ)(【0061】)、(ウ)より、引用例1には「負極の表面には開口を有する穴が形成」されていることが記載されている。 前記(オ)より、引用例1には「リチウムイオン二次電池用負極を作製」する方法が記載されていると認められる。また、特に表1の実施例より、活物質層の前記穴の最大径は500μm、前記穴の中心間隔は4000μmであり、集電体に穴は形成されていないことが見て取れる。 これより、引用例1には、 「リチウムイオン二次電池用負極を作製する方法であって、 前記負極は集電体と当該集電体の両面に形成された活物質層とを備え、 前記負極の表面に開口を有する穴を形成し、 前記集電体には穴は形成されておらず、前記活物質層には前記穴があり、前記穴の最大径は500μm、前記穴の中心間隔は4000μmとした、 リチウムイオン二次電池用負極を作製する方法。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 ウ 引用例3の記載と引用例3記載技術 原査定の拒絶の理由(令和4年11月8日付け拒絶理由通知書に記載した理由)に引用された国際公開第2017/146223号(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。 (ア) 「[0008] 本開示の一態様は、活物質を含む層を有する帯状の電極前駆体における前記活物質にアルカリ金属をドープするドーピングシステムであって、アルカリ金属イオンを含む溶液を収容するドーピング槽と、前記電極前駆体を、前記ドーピング槽内を通過する経路に沿って搬送する搬送ユニットと、前記ドーピング槽に収容される対極ユニットと、前記電極前駆体と前記対極ユニットとを電気的に接続する接続ユニットと、前記電極前駆体と前記対極ユニットとの間に配置され、前記電極前駆体と非接触である多孔質絶縁部材と、を備えるドーピングシステムである。」 (イ) 「[0025] 本開示の実施形態を説明する。 <第1実施形態> 1.ドーピングシステム1の構成 ドーピングシステム1の構成を、図1~図4に基づき説明する。ドーピングシステム1は、図1に示すように、ドーピング槽3と、洗浄槽7と、搬送ローラ9、11、13、15、17、19、21、33、35、37、39、41、43、45(以下ではこれらをまとめて搬送ローラ群と呼ぶこともある)と、供給ロール47と、巻取ロール49と、対極ユニット51と、多孔質絶縁部材53と、支持台55と、循環濾過ユニット57と、直流電源61と、ブロア63と、を備える。 [0026] ドーピング槽3は、図1及び図2に示すように、上方が開口した角型の槽である。ドーピング槽3の底面は、略U字型の断面形状を有する。ドーピング槽3内には、仕切り板69と、4個の対極ユニット51と、4個の多孔質絶縁部材53と、搬送ローラ17とが存在する。 [0027] 仕切り板69は、その上端を貫く支持棒67により支持されている。支持棒67は図示しない壁等に固定されている。仕切り板69のうち、上端を除く部分は、ドーピング槽3内にある。仕切り板69は上下方向に延び、ドーピング槽3の内部を2つの空間に分割している。仕切り板69の下端に、搬送ローラ17が取り付けられている。仕切り板69と搬送ローラ17とは、それらを貫く支持棒68により支持されている。なお、仕切り板69の下端付近は、搬送ローラ17と接触しないように切り欠かれている。搬送ローラ17と、ドーピング槽3の底面との間には空間が存在する。 [0028] 4個の対極ユニット51は、それぞれ、それらの上端を貫く支持棒70により支持され、上下方向に延びている。支持棒70は図示しない壁等に固定されている。対極ユニット51のうち、上端を除く部分は、ドーピング槽3内にある。4個の対極ユニット51のうち、2個は、仕切り板69を両側から挟むように配置されている。残りの2個の対極ユニット51は、ドーピング槽3の内側面に沿って配置されている。 [0029] 仕切り板69側に配置された対極ユニット51と、ドーピング槽3の内側面に沿って配置された対極ユニット51との間には空間71が存在する。対極ユニット51は、直流電源61のプラス極に接続される。対極ユニット51の詳しい構成は後述する。 [0030] それぞれの対極ユニット51における空間71側の表面に、多孔質絶縁部材53が取り付けられている。多孔質絶縁部材53の詳しい構成は後述する。 洗浄槽7は、基本的にはドーピング槽3と同様の構成を有する。ただし、洗浄槽7の内部には、対極ユニット51及び多孔質絶縁部材53は存在しない。 [0031] 搬送ローラ群は、後述する電極前駆体73を一定の経路に沿って搬送する。その経路は、供給ロール47から、ドーピング槽3の中、洗浄槽7の中を順次通り、巻取ロール49に至る経路である。 [0032] その経路のうち、ドーピング槽3の中を通る部分は、まず、ドーピング槽3の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を下方に移動し、次に、搬送ローラ17により移動方向を上向きに変えられ、最後に、ドーピング槽3の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を上方に移動するという経路である。 [0033] また、上記の経路のうち、洗浄槽7の中を通る部分は、まず、洗浄槽7の内側面と、仕切り板69との間を下方に移動し、次に、搬送ローラ37により移動方向を上向きに変えられ、最後に、洗浄槽7の内側面と、仕切り板69との間を上方に移動するという経路である。 [0034] 搬送ローラ群のうち、搬送ローラ15、21は導電性の材料から成る。また、搬送ローラ15、21は、直流電源61のマイナス極に接続される。搬送ローラ13は、電極前駆体73を搬送ローラ15の方向に押圧する。搬送ローラ19は、電極前駆体73を搬送ローラ21の方向に押圧する。搬送ローラ群は搬送ユニットに対応する。 [0035] 供給ロール47は、その外周に電極前駆体73を巻き回している。すなわち、供給ロール47は、巻き取られた状態の電極前駆体73を保持している。搬送ローラ群は、供給ロール47に保持された電極前駆体73を引き出し、搬送する。供給ロール47は保持ユニットに対応する。 [0036] 巻取ロール49は、搬送ローラ群により搬送されてきた電極75を巻き取り、保管する。なお、電極75は、電極前駆体73に対し、ドーピング槽3においてアルカリ金属のドープを行うことで製造されたものである。 [0037] なお、アルカリ金属のドープの態様としては、アルカリ金属をイオンの状態で活物質にインターカレーションさせる態様であってもよいし、アルカリ金属の合金が形成される態様であってもよいし、アルカリ金属イオンがSEI被膜となって消費される態様であってもよい。 [0038] 対極ユニット51は、上記のように、ドーピング槽3に収容されている。対極ユニット51は、板状の形状を有する。図3に示すように、対極ユニット51は、導電性基材77と、アルカリ金属含有板79とを積層した構成を有する。導電性基材77の材質としては、例えば、銅、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。アルカリ金属含有板79の形態は特に限定されず、例えば、アルカリ金属板、アルカリ金属の合金板等が挙げられる。アルカリ金属含有板79の厚さは、例えば、0.03~3mmとすることができる。 [0039] 多孔質絶縁部材53は、板状の形状を有する。多孔質絶縁部材53は、図3に示すように、アルカリ金属含有板79の上に積層され、対極ユニット51の表面に取り付けられている。多孔質絶縁部材53が有する板状の形状とは、多孔質絶縁部材53が対極ユニット51の表面に取り付けられている際の形状である。多孔質絶縁部材53は、それ自体で一定の形状を保つ部材であってもよいし、例えばネット等のように、容易に変形可能な部材であってもよい。 [0040] 図1、図3に示すように、多孔質絶縁部材53と、搬送ローラ群により搬送される電極前駆体73とは非接触である。多孔質絶縁部材53の表面から、電極前駆体73までの最短距離dは、0.5~100mmの範囲内であることが好ましく、1~10mmの範囲内であることが特に好ましい。最短距離dとは、多孔質絶縁部材53の表面のうち、電極前駆体73に最も近い点と、電極前駆体73との距離である。 [0041] 多孔質絶縁部材53は多孔質である。そのため、後述するドープ溶液は、多孔質絶縁部材53を通過することができる。そのことにより、対極ユニット51は、ドープ溶液に接触することができる。 [0042] 多孔質絶縁部材53としては、例えば、樹脂製のメッシュ等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。メッシュの目開きは適宜設定でき、例えば、0.1μm~10mmとすることができるが、0.1~5mmの範囲内にあることが好ましい。メッシュの厚みは適宜設定でき、例えば、1μm~10mmとすることができるが、30μm~1mmの範囲内にあることが好ましい。メッシュの目開き率は適宜設定でき、例えば、5~98%とすることができるが、5~95%であることが好ましく、50~95%の範囲内にあることがさらに好ましい。 [0043] 多孔質絶縁部材53は、その全体が絶縁性の材料から成っていてもよいし、その一部に絶縁性の層を備えていてもよい。 支持台55は、ドーピング槽3及び洗浄槽7を下方から支持する。支持台55は、その高さを変えることができる。仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53の上下方向における位置を維持したまま、支持台55を低くすると、図2に示すように、仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53に対し、ドーピング槽3を相対的に下方に移動させることができる。また、支持台55高くすると、仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53に対し、ドーピング槽3を相対的に上方に移動させることができる。支持台55は槽移動ユニットに対応する。 [0044] 循環濾過ユニット57は、フィルタ81と、ポンプ83と、配管85と、を備える。配管85は、ドーピング槽3、ポンプ83、及びフィルタ81を順次通る循環配管である。配管85は、ドーピング槽3の上下移動に追従可能なフレキシブルな配管であることが好ましい。ドーピング槽3内のドープ溶液は、ポンプ83の駆動力により、配管85、及びフィルタ81内を循環し、再びドーピング槽3に戻る。このとき、ドープ溶液中の異物等は、フィルタ81により濾過される。異物としては、ドープ溶液から析出した異物や、電極前駆体73から発生する異物等が挙げられる。フィルタ81の材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂とすることができる。フィルタ81の孔径は適宜設定でき、例えば、30~50μmとすることができる。 [0045] 直流電源61のマイナス端子は、図4に示すように、ケーブル87を介して、搬送ローラ15、21とそれぞれ接続する。また、直流電源61のプラス端子は、ケーブル89を介して、合計4個の対極ユニット51にそれぞれ接続する。電極前駆体73は、導電性の搬送ローラ15、21と接触し、また、電極前駆体73と対極ユニット51とは電解液であるドープ溶液中にあるから、電極前駆体73と対極ユニット51とは電気的に接続する。直流電源61、ケーブル87、89、及び搬送ローラ15、21は接続ユニットに対応する。 [0046] ブロア63は、洗浄槽7から出てきた電極75にガスを吹きつけて洗浄液を気化させ、電極75を乾燥させる。使用するガスは、アルカリ金属がドープされた活物質に対して不活性なガスであることが好ましい。そのようなガスとして、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、水分が除去された除湿空気等が挙げられる。」 (ウ) 「 [図:0001418707000004.jpg] 」 (エ) 「[0047] 2.電極前駆体73の構成 電極前駆体73の構成を図5及び図6に基づき説明する。電極前駆体73は、図5に示すように、帯状の形状を有する。電極前駆体73は、図6に示すように、帯状の集電体93と、その両側に形成された活物質層95とを備える。 [0048] 集電体93としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス等の金属箔が好ましい。また、集電体93は、上記金属箔上に炭素材料を主成分とする導電層が形成されたものであってもよい。集電体93の厚みは、例えば、5~50μmとすることができる。 [0049] 活物質層95は、例えば、アルカリ金属をドープする前の活物質及びバインダー等を含有するスラリーを調製し、このスラリーを集電体93上に塗布し、乾燥させることにより作製できる。 [0050] 上記バインダーとしては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、NBR等のゴム系バインダー;ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、特開2009-246137号公報に開示されているようなフッ素変性(メタ)アクリル系バインダー等が挙げられる。 [0051] 上記スラリーは、活物質及びバインダーに加えて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、気相成長炭素繊維、金属粉末等の導電剤;カルボキシルメチルセルロース、そのNa塩又はアンモニウム塩、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等の増粘剤が挙げられる。 [0052] 活物質層95の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、5~500μm、好ましくは10~200μm、特に好ましくは10~100μmである。 活物質層95に含まれる活物質は、アルカリ金属イオンの挿入/脱離を利用する電池又はキャパシタに適用可能な電極活物質であれば特に限定されるものではなく、負極活物質であってもよいし、正極活物質であってもよい。 [0053] 負極活物質は、特に限定されるものではないが、例えば、黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、黒鉛粒子をピッチや樹脂の炭化物で被覆した複合炭素材料等の炭素材料;リチウムと合金化が可能なSi、Sn等の金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料等が挙げられる。炭素材料の具体例としては、特開2013-258392号公報に記載の炭素材料が挙げられる。リチウムと合金化が可能な金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料の具体例としては、特開2005-123175号公報、特開2006-107795号公報に記載の材料が挙げられる。 [0054] 正極活物質としては、例えば、コバルト酸化物、ニッケル酸化物、マンガン酸化物、バナジウム酸化物等の遷移金属酸化物;硫黄単体、金属硫化物等の硫黄系活物質が挙げられる。 [0055] 正極活物質、及び負極活物質のいずれにおいても、単一の物質から成るものであってもよいし、2種以上の物質を混合して成るものであってもよい。本開示のドーピングシステム1は、負極活物質にアルカリ金属をドープする場合に適しており、特に、負極活物質が炭素材料又はSi若しくはその酸化物を含む材料であることが好ましい。 [0056] 活物質にドープするアルカリ金属としては、リチウム又はナトリウムが好ましく、特にリチウムが好ましい。 電極前駆体73を、リチウムイオン二次電池の電極の製造に用いる場合、活物質層95の密度は、好ましくは1.50~2.00g/ccであり、特に好ましくは1.60~1.90g/ccである。 [0057] 3.ドープ溶液の組成 ドーピングシステム1を使用するとき、ドーピング槽3に、アルカリ金属イオンを含む溶液(以下ではドープ溶液とする)を収容する。 [0058] ドープ溶液は、アルカリ金属イオンと、溶媒とを含む。溶媒として、例えば、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、非プロトン性の有機溶媒が好ましい。非プロトン性の有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)等が挙げられる。 (略) [0060] 上記ドープ溶液に含まれるアルカリ金属イオンは、アルカリ金属塩を構成するイオンである。アルカリ金属塩は、好ましくはリチウム塩又はナトリウム塩である。アルカリ金属塩を構成するアニオン部としては、例えば、PF6-、PF3(C2F5)3-、PF3(CF3)3-等のフルオロ基を有するリンアニオン;BF4-、BF2(CF)2-、BF3(CF3)-、B(CN)4-等のフルオロ基又はシアノ基を有するホウ素アニオン;N(FSO2)2-、N(CF3SO2)2-、N(C2F5SO2)2-等のフルオロ基を有するスルホニルイミドアニオン;CF3SO3-等のフルオロ基を有する有機スルホン酸アニオンが挙げられる。」 (オ) 「[0068] 4.ドーピングシステム1を用いた電極75の製造方法 まず、電極75を製造するための準備として、以下のことを行う。電極前駆体73を供給ロール47に巻き回す。次に、搬送ローラ群により、電極前駆体73を供給ロール47から引き出し、上述した経路に沿って巻取りロール49まで通紙する。そして、ドーピング槽3および洗浄槽7を上昇させ、図1に示す定位置へセットする。ドーピング槽3にドープ溶液を収容する。ドープ溶液は、上記「3.ドープ溶液の組成」で述べたものである。洗浄槽7に洗浄液を収容する。洗浄液は有機溶剤である。その結果、ドーピング槽3の空間71は電解液で満たされる。洗浄槽7の空間71は洗浄液で満たされる。 [0069] 次に、搬送ローラ群により、供給ロール47から巻取りロール49まで通紙された電極前駆体73を供給ロール47から巻取りロール49に向かって、引き出し、上述した経路に沿って搬送する。電極前駆体73がドーピング槽3内を通過するとき、活物質層95に含まれる活物質にアルカリ金属がドープされる。活物質にアルカリ金属がドープされることにより、電極前駆体73が電極75となる。電極75は搬送ローラ群により搬送されながら、洗浄槽7で洗浄される。最後に、電極75は、巻取ロール49に巻き取られる。 [0070] ドーピングシステム1を用いて製造する電極75は、正極であってもよいし、負極であってもよい。正極を製造する場合、ドーピングシステム1は、正極活物質にアルカリ金属をドープし、負極を製造する場合、ドーピングシステム1は、負極活物質にアルカリ金属をドープする。 [0071] ドーピングシステム1は、アルカリイオン型のキャパシタ又は電池が備える負極の製造に適しており、アルカリイオン型のキャパシタ又は二次電池が備える負極の製造により適しており、リチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン二次電池が備える負極の製造に特に適している。 [0072] アルカリ金属のドープ量は、リチウムイオンキャパシタの負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは70~95%であり、リチウムイオン二次電池の負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは10~30%である。」 (カ) 引用例3記載技術 前記(ア)([0008])より、引用例3には、「活物質を含む層を有する帯状の電極前駆体における前記活物質にアルカリ金属をドープするドーピングシステムであって、アルカリ金属イオンを含む溶液を収容するドーピング槽と、前記ドーピング槽に収容される対極ユニットと、電極前駆体と前記対極ユニットとを電気的に接続する接続ユニットと、を備えるドーピングシステム」が記載されている。 前記(エ)([0047])より、引用例3には、「帯状の集電体と、その両側に形成された活物質層とを備える電極前駆体」が記載されている。 前記(イ)([0038])より、引用例3には「導電性基材と、アルカリ金属含有板とを積層した構成を有する対極ユニット」が記載されている。 前記(エ)([0057]、[0058])より、引用例3には「アルカリ金属イオンと溶媒とを含むドープ溶液をドーピング槽3に収容」することが記載されている。 前記(エ)([0056])より、引用例3には「活物質にドープするアルカリ金属としては、リチウム又はナトリウムが好ましく、特にリチウムが好ましい。」ことが記載されている。これより、アルカリ金属含有板として「リチウム金属含有板」が、アルカリ金属イオンとして「リチウムイオン」がそれぞれ記載されていると認められる。 前記(エ)([0069]、[0070])より、引用例3には電極前駆体がドーピング槽内を通過するとき、活物質層95に含まれる活物質にアルカリ金属がドープされること、負極を製造する場合、ドーピングシステム1は、負極活物質にアルカリ金属をドープすることが記載されているから、「電極前駆体の負極活物質層にリチウムイオンをドープする」ことが記載されていると認められる。 よって、引用例3には、「リチウムイオンと溶媒とを含むドープ溶液、導電性基材とリチウム金属含有板とを積層した構成を有する対極ユニットを収容するドーピング槽内において、帯状の集電体とその両側に形成された活物質層とを備える電極前駆体と、前記対極ユニットとを電気的に接続し、前電極前駆体の負極活物質層にリチウムイオンをドープする」技術(以下「引用例3記載技術」という。)が記載されている。 エ 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「リチウムイオン二次電池用負極」は、本願補正発明の「蓄電デバイス用負極」に対応する。そして、引用発明の「前記負極は集電体と当該集電体の両面に形成された活物質層とを備え」と、本願補正発明の「負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも片面に形成された負極活物質層とを備え、リチウムがドープされた蓄電デバイス用負極」とでは、「負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも片面に形成された負極活物質層とを備えた蓄電デバイス用負極」との点で共通し、後記する相違点で相違する。 引用発明の「前記集電体には穴は形成されておらず」との事項は、本願補正発明の「前記負極集電体の開口率が0%であり」に相当する。 引用発明の「前記負極の表面に開口を有する穴を形成し」及び「前記活物質層には前記穴があり」は、本願補正発明の「前記負極活物質層は孔を有し」に相当する。 引用発明の「前記穴の中心間隔は4000μm」は、本願補正発明の「前記孔の開口間隔が10μm以上5000μm以下であり」に含まれる。 引用発明の穴の最大径は500μmであり、穴の中心間隔は4000μmであるから、穴を円で近似した場合、その開口率は、最大で、3.14*500^2/4000^2=0.049(4.9%)である。穴は針で空けていることからその径のばらつきがあったとしても、穴の径の最小値は技術常識から穴の径の最大値から桁が2桁異なることはないと考えられる。してみれば、引用発明における穴の開口率は本願補正発明の「前記負極活物質層の開口率が0.001%以上10%以下」に含まれるといえる。 してみれば、本願補正発明と引用発明とでは、以下の点で一致及び相違する。 [一致点] 負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも片面に形成された負極活物質層とを備えた、蓄電デバイス用負極の製造方法であって、 前記負極集電体の開口率が0%であり、 前記負極活物質層は孔を有し、 前記負極活物質層の開口率が0.001%以上10%以下であり、 前記孔の開口間隔が10μm以上5000μm以下である、 蓄電デバイス用負極の製造方法。 [相違点1] 本願補正発明では、蓄電デバイス用負極が「リチウムがドープされた」ものであり、「前記負極活物質層に前記孔を形成した後に、リチウムイオン及び溶媒を含むドープ溶液、並びに、導電性基材及びリチウム金属含有板を積層した構成を有する対極ユニットを収容する電解液槽内において、前記負極集電体と未だドープされていない前記負極活物質層とを備える電極前駆体と、前記対極ユニットとを電気的に接続することで前記負極活物質層に前記リチウムイオンをドープする」のに対し、引用発明にはそのような特定がない点。 オ 判断 上記[相違点1]について検討する。 前記のとおり、引用例3には、「リチウムイオンと溶媒とを含むドープ溶液、導電性基材とリチウム金属含有板とを積層した構成を有する対極ユニットを収容するドーピング槽内において、帯状の集電体とその両側に形成された活物質層とを備える電極前駆体と、前記対極ユニットとを電気的に接続し、前電極前駆体の負極活物質層にリチウムイオンをドープする」との引用例3記載技術が記載されている。 そして、引用例3([0004])にも記載があるように、「このような電池やキャパシタにおいては、様々な目的のために、予めアルカリ金属を電極にドープするプロセス(一般にプレドープと呼ばれている)が採用されている」のであるから、引用発明に引用例3記載技術を適用することは容易である。そして、引用発明に引用例3記載技術を適用する際、リチウムイオンをドープするタイミングは「前記負極活物質層に前記孔を形成した後に」行うか、前記孔を形成する前に行うかの2つの選択肢しかないことは明らかなところ、引用発明に対して、どちらを採用するにしても、適用を阻害するような要因は特になく、技術的に格別の困難は認められない。 さらに、負極活物質層に前記孔を形成する前にリチウムイオンをドープすることに対する「負極活物質層に前記孔を形成した後に」リチウムイオンをドープすることの格別の効果も、本願明細書等の記載からは認められない。 よって、引用発明に引用例3記載技術を適用することは前記のとおり容易であって、当該適用を行うにあたり、「前記負極活物質層に前記孔を形成した後に」リチウムイオンをドープすることも、当業者が合わせて設計的に決定できた事項であると認める。すなわち、相違点1に係る、蓄電デバイス用負極が「リチウムがドープされた」ものであり、「前記負極活物質層に前記孔を形成した後に、リチウムイオン及び溶媒を含むドープ溶液、並びに、導電性基材及びリチウム金属含有板を積層した構成を有する対極ユニットを収容する電解液槽内において、前記負極集電体と未だドープされていない前記負極活物質層とを備える電極前駆体と、前記対極ユニットとを電気的に接続することで前記負極活物質層に前記リチウムイオンをドープする」との事項は、引用発明及び引用例3記載技術に基づき、当業者が容易に想到することができた事項である。 してみれば、本願補正発明は、引用発明及び引用例3記載技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。 カ 審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書において、まず、 「ドープを行うタイミングを「前記負極活物質層に前記孔を形成した後に」特定し、さらに、「前記負極活物質層に前記孔を形成した後に」行うドープの態様を、上記のように特定するという非常に複雑な上記相違点1の構成は、決して周知技術等ではなく、当業者が当然なすべき事項でもありません。」 と主張している。 しかしながら、前記のとおりであり、本願補正発明のドープの態様それ自体は、引用例3記載技術である。そして、「前記負極活物質層に前記孔を形成した後に」引用例3記載技術を適用することも、前記のとおり、当業者が容易に想到することができた範囲内である。 次に、審判請求人は、審判請求書において、 「さらに、「前記負極活物質層に前記孔を形成した後に」行うドープの態様が、上記相違点1の構成で規定する態様であることにより、顕著な効果を奏することができます。すなわち、「前記負極活物質層に前記孔を形成した後に」行うドープの態様が、一般によく行われるLiと負極とを直接短絡させるような態様であると、孔と非孔面(表面のうち孔ではない部分)とで不均一なドープとなり、結果としてLi析出が生じ易いという問題が生じてしまいますが、「前記負極活物質層に前記孔を形成した後に」、上記相違点1の構成で規定するドープの態様を適用することにより、孔と非孔面とにおいて均一なドープを行うことが可能となり、サイクル特性向上とLi析出抑制を両立することが可能になります。 この効果は、本願明細書の表2に記載の実験結果により明確に裏づけられています。すなわち、上記相違点1の構成を備える実施例9、10ではサイクル特性が優れ、Liが析出し難くなっています。一方、負極活物質層に孔を形成せずに、実施例9、10と同様にドープを行った(すなわち上記相違点1の構成を備えない)比較例6では、サイクル特性が劣り、Liが析出し易くなっています。」 と主張しているが、審判請求人の主張する比較例6は、孔が形成されていないため、孔を形成する「前」に行うドープ態様に比べて、孔を形成した「後」に行うドープ態様の方がサイクル特性が優れている理由の根拠とはならない。 また、「孔と非孔面とにおいて均一なドープを行うことが可能」との効果もプレドープの際には、負極活物質層の表面からリチウムイオンが拡散するという技術常識から明らかであり、格別なものとはいえない。 次に、令和5年9月26日提出の上申書において、審判請求人は、 「(2-3)構成A(特に、負極活物質層に孔を形成した後に行うプレドープの態様が「リチウムイオン及び溶媒を含むドープ溶液、並びに、導電性基材及びリチウム金属含有板を積層した構成を有する対極ユニットを収容する電解液槽内において、前記負極集電体と未だドープされていない前記負極活物質層とを備える電極前駆体と、前記対極ユニットとを電気的に接続すること」という態様である点)の容易想到性について (略) 構成Aでは、負極活物質層に孔を形成した後に行うプレドープの態様が「リチウムイオン及び溶媒を含むドープ溶液、並びに、導電性基材及びリチウム金属含有板を積層した構成を有する対極ユニットを収容する電解液槽内において、前記負極集電体と未だドープされていない前記負極活物質層とを備える電極前駆体と、前記対極ユニットとを電気的に接続すること」という態様であることにより、負極活物質層のうち、孔を形成した部分と、非孔面との間での、Liイオン濃度の偏りを抑制し、均一なプレドープが可能になります。 そして、孔を形成した部分と、非孔面との間で均一なプレドープを行うことと、負極活物質層に孔が形成されていることとにより、電池セル組み立て後のセル内部における電極部分でのLiイオンの吸収、放出が容易となります。その結果、サイクル特性向上とLi析出抑制を両立することが可能になります。 よって、構成Aは、負極活物質層に孔を形成した後に行うプレドープの態様を限定することによって上記の顕著な効果を奏する構成ですので、決して容易に想起することはできません。」 と主張している。 しかしながら、前記オで検討したとおり、引用発明に引用例3記載技術を適用することは容易である。そして、「均一なプレドープが可能にな」るとの効果も、前記のとおり技術常識から明らかである。 よって、審判請求人の主張は採用することができない。 キ 小括 以上のとおり、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び引用例3に記載された技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本願補正発明は独立して特許を受けることができないから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和5年6月19日にされた手続補正は、上記のとおり却下され、令和4年12月20日にされた手続補正も補正却下の決定がなされているので、本願の請求項1~16に係る発明は、前記第2の1に記載した、令和4年6月30日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲1~16に記載された事項により特定されるものである。ここで、請求項12を引用する請求項15に係る発明は、下記のとおりのものと認める。 「負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも片面に形成された負極活物質層とを備え、リチウムがドープされた蓄電デバイス用負極の製造方法であって、 前記負極集電体の開口率が0%であり、 前記負極活物質層は孔を有し、 前記負極活物質層の開口率が0.001%以上10%以下であり、 前記孔の開口間隔が10μm以上5000μm以下であり、 前記負極にリチウムイオンをドープする蓄電デバイス用負極の製造方法、 であって、 前記リチウムイオン及び溶媒を含むドープ溶液、並びに、導電性基材及びリチウム金属含有板を積層した構成を有する対極ユニットを収容する電解液槽内において、前記負極集電体と未だドープされていない前記負極活物質層とを備える電極前駆体と、前記対極ユニットとを電気的に接続することで前記負極活物質層に前記リチウムイオンをドープする、 蓄電デバイス用負極の製造方法。」 (以下「本願発明」という。) 2 原査定の拒絶の理由 原査定は、令和4年11月8日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶をすべきものとするものであって、当該理由の概要は、 「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」 というものであり、本願発明は、下記引用例1,3又は2,3に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたとするものである。 引用例 1.特開2016-058375号公報 2.特開2013-020820号公報 3.国際公開第2017/146223号 3 引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例1の記載事項は、前記第2の2(2)イに、同引用例3の記載事項は、前記第2の2(2)ウに記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本願補正発明から、本件補正に係る「前記負極活物質層に前記孔を形成した後に」との限定を省いたものである。 してみれば、本願発明と引用発明とでは、以下の点で相違する。(本願発明と引用発明の一致点は、前記第2の2(2)エに記載した、本件補正発明と引用発明との一致点と同一である。) [相違点2] 本願発明では、蓄電デバイス用負極が「リチウムがドープされた」ものであり、「リチウムイオン及び溶媒を含むドープ溶液、並びに、導電性基材及びリチウム金属含有板を積層した構成を有する対極ユニットを収容する電解液槽内において、前記負極集電体と未だドープされていない前記負極活物質層とを備える電極前駆体と、前記対極ユニットとを電気的に接続することで前記負極活物質層に前記リチウムイオンをドープする」のに対し、引用発明にはそのような特定がない点。 前記第2の2(2)オで検討したとおり、相違点1に係る事項は、引用発明及び引用例3記載技術に基づき、当業者が容易に想到することができた事項であるから、前記相違点1に係る事項から、「前記負極活物質層に前記孔を形成した後に」との特定を除いた相違点2に係る事項も同様の理由により、引用発明及び引用例3記載技術に基づき、当業者が容易に想到することができた事項である。 してみれば、本願発明は、引用発明及び引用例3記載技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例3に記載された技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-010108

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