特許拒絶査定不服審判
2023-022033
積層セラミックコンデンサ
- 審判番号
- 2023-022033
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-186022
- 請求日
- 2023年12月26日
- 審決日
- 2024年10月21日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社村田製作所
- 【請求人代理人】加藤 竜太
- 【請求人代理人】芝 哲央
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 ▲高▼橋 徳浩
- 審判官 山本 章裕
- 分類
- P18 .121-Z (H01G) / P18 .572-Z (H01G) / P18 .575-Z (H01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-186022「積層セラミックコンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 7月29日出願公開、特開2021-108364〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年11月6日(優先権主張 令和元年12月27日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 5月30日付け:拒絶理由通知
令和5年 8月 4日 :意見書の提出
令和5年10月 3日付け:拒絶査定(原査定)
令和5年12月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年12月26日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和5年12月26日の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
積層方向に積層される、誘電体セラミック層及び内部電極層を含む積層体と、
前記内部電極層に接続される外部電極と、を備える積層セラミックコンデンサであって、
前記積層体は、前記積層方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、前記積層方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、前記積層方向及び前記幅方向に直交する長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面と、を有し、
前記内部電極層は、前記第1の端面に引き出される第1の内部電極層と、前記誘電体セラミック層を介して前記第1の内部電極層と対向するように前記第2の端面に引き出される第2の内部電極層と、を含み、
前記外部電極は、前記第1の端面上に配置され、かつ、前記第1の内部電極層と接続される第1の外部電極と、前記第2の端面上に配置され、かつ、前記第2の内部電極層と接続される第2の外部電極と、を含み、
前記誘電体セラミック層は、第1の誘電体セラミック層と第2の誘電体セラミック層からなり、
前記第1の誘電体セラミック層は、前記第1の内部電極層と前記第2の内部電極層との間に配置されており、
前記第2の誘電体セラミック層は、前記内部電極層を介して対向する前記第1の誘電体セラミック層間の、前記内部電極層が配置されていない領域を含んで、その一部が前記第1の誘電体セラミック層と前記積層方向において重畳するように配置されており、
前記積層体は、前記第1の内部電極層及び前記第2の内部電極層が前記誘電体セラミック層を介して交互に積層される内層部と、前記内層部を前記積層方向に挟むように配置され、かつ、セラミック材料で構成される外層部と、前記内層部及び前記外層部を前記幅方向に挟むように配置され、かつ、誘電体セラミック材料で構成される第3の誘電体セラミック層と、を有し、
前記第1の内部電極層における前記第2の外部電極と接続されていない前記長さ方向の端部、及び、前記第2の内部電極層における前記第1の外部電極と接続されていない前記長さ方向の端部、のそれぞれには、Mg、Mn、Siのうちの少なくとも1種類の元素による第1の偏析が存在しており、
前記第1の内部電極層の前記幅方向端部、及び、前記第2の内部電極層の前記幅方向端部、のそれぞれには、Mg、Mn、Siのうちの少なくとも1種類の元素による第2の偏析が存在しており、
前記第1の内部電極層における、前記第1の偏析が存在する前記長さ方向端部と、前記第2の偏析が存在する前記幅方向端部とが重なる第1の角部領域、及び、
前記第2の内部電極層における、前記第1の偏析が存在する前記長さ方向端部と、前記第2の偏析が存在する前記幅方向端部とが重なる第2の角部領域、のそれぞれに、
前記第1の偏析及び前記第2の偏析のそれぞれの元素による第3の偏析が存在し、
前記第1の内部電極層および前記第2の内部電極層は、Snを含む、積層セラミックコンデンサ。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、出願当初の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
積層方向に積層される、誘電体セラミック層及び内部電極層を含む積層体と、
前記内部電極層に接続される外部電極と、を備える積層セラミックコンデンサであって、
前記積層体は、前記積層方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、前記積層方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、前記積層方向及び前記幅方向に直交する長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面と、を有し、
前記内部電極層は、前記第1の端面に引き出される第1の内部電極層と、前記誘電体セラミック層を介して前記第1の内部電極層と対向するように前記第2の端面に引き出される第2の内部電極層と、を含み、
前記外部電極は、前記第1の端面上に配置され、かつ、前記第1の内部電極層と接続される第1の外部電極と、前記第2の端面上に配置され、かつ、前記第2の内部電極層と接続される第2の外部電極と、を含み、
前記誘電体セラミック層は、第1の誘電体セラミック層と第2の誘電体セラミック層からなり、
前記第1の誘電体セラミック層は、前記第1の内部電極層と前記第2の内部電極層との間に配置されており、
前記第2の誘電体セラミック層は、前記内部電極層を介して対向する前記第1の誘電体セラミック層間の、前記内部電極層が配置されていない領域を含んで、その一部が前記第1の誘電体セラミック層と前記積層方向において重畳するように配置されており、
前記積層体は、前記第1の内部電極層及び前記第2の内部電極層が前記誘電体セラミック層を介して交互に積層される内層部と、前記内層部を前記積層方向に挟むように配置され、かつ、セラミック材料で構成される外層部と、前記内層部及び前記外層部を前記幅方向に挟むように配置され、かつ、誘電体セラミック材料で構成される第3の誘電体セラミック層と、を有し、
前記第1の内部電極層における前記第2の外部電極と接続されていない前記長さ方向の端部、及び、前記第2の内部電極層における前記第1の外部電極と接続されていない前記長さ方向の端部、のそれぞれには、Mg、Mn、Siのうちの少なくとも1種類の金属元素による第1の偏析が存在しており、
前記第1の内部電極層の前記幅方向端部、及び、前記第2の内部電極層の前記幅方向端部、のそれぞれには、Mg、Mn、Siのうちの少なくとも1種類の金属元素による第2の偏析が存在しており、
前記第1の内部電極層における、前記第1の偏析が存在する前記長さ方向端部と、前記第2の偏析が存在する前記幅方向端部とが重なる第1の角部領域、及び、
前記第2の内部電極層における、前記第1の偏析が存在する前記長さ方向端部と、前記第2の偏析が存在する前記幅方向端部とが重なる第2の角部領域、のそれぞれに、
前記第1の偏析及び前記第2の偏析のそれぞれの金属元素による第3の偏析が存在している、積層セラミックコンデンサ。」
2.補正の適否
本件補正は、
・補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の偏析」及び「第2の偏析」について、「Mg、Mn、Siのうちの少なくとも1種類の金属元素による」との記載を、「Mg、Mn、Siのうちの少なくとも1種類の元素による」との記載に補正し、
・補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第3の偏析」について、「前記第1の偏析及び前記第2の偏析のそれぞれの金属元素による」との記載を、「前記第1の偏析及び前記第2の偏析のそれぞれの元素による」との記載に補正し、更に、
・補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の内部電極層」及び「第2の内部電極層」について、「Snを含む」ことの限定を付加する補正を含むものである。
このうち、「第1の偏析」ないし「第3の偏析」についての記載の補正は、「Mg、Mn、Si」のうちの「Si」は半導体元素または半金属元素であり、「金属元素」には該当しないことに鑑みて、「金属元素」なる用語を「元素」に訂正する補正であり、当該補正の前後で特許請求の範囲を実質的に変更するものではないから、特許法第17条の2第5項第3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものである。
また、「第1の内部電極層」及び「第2の内部電極層」について、「Snを含む」ことの限定を付加する補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
よって、上記補正を含む本件補正は、少なくとも特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正を含むものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)否かについて以下に検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「1.(1)」の【請求項1】に記載したとおりのものである。
(2)引用例の記載事項
ア.原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2011-9369号公報(以下、「引用例」という。)には、「積層セラミックコンデンサ1」について、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型セラミック電子部品に関し、特に耐電圧特性が向上された積層型セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型セラミック電子部品は、小型、高性能、高信頼性の電子部品として広く利用されており、電気機器および電子機器の中で使用される個数も多数にのぼる。近年、機器の小型かつ高性能化に伴い、積層型セラミック電子部品に対する更なる小型化、高性能化、高信頼性化への要求はますます厳しくなっている。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、耐電圧特性が向上され、信頼性の高い積層型セラミック電子部品を提供することを目的とする。」
(ウ)「【0020】
積層セラミックコンデンサ1
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、セラミック層としての誘電体層2(図示省略)と、内部電極層3と、が交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
【0021】
コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、図1に示すように、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
【0022】
誘電体層2
誘電体層2は、主相と偏析相20とから構成されている。本実施形態では、主相と偏析相20とは組成が異なっており、主相は、誘電体磁器組成物から構成される。誘電体磁器組成物を構成する材質は特に限定されないが、主成分としては、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムあるいはこれらの混合物などが好ましい。特に、チタン酸バリウム(好ましくは、組成式Bam TiO2+m で表され、mが0.995≦m≦1.010であり、BaとTiとの比が0.995≦Ba/Ti≦1.010である)が好適に使用できる。」
(エ)「【0027】
偏析相20
偏析相20は、主相および内部電極層3とは組成が異なり、主相よりも絶縁性の高い相である。この偏析相20は、主相よりも絶縁性が高い相であれば、特に制限されないが、Mgと、Mnおよび/またはCrと、の複合酸化物を含んでいることが好ましい。上記の複合酸化物を構成する酸化物は、積層セラミックコンデンサの特性向上のために用いられる酸化物であり、かつ、その複合酸化物の絶縁性が非常に高く、耐電圧特性を向上させる効果が大きいためである。
【0028】
偏析相20は、内部電極層の周端部近傍の少なくとも一部に形成されており、偏析相20以外の誘電体層2(主相)に囲まれた周端部全体に形成されていることが好ましい。本実施形態では、図2に示すように、積層面に垂直であって、外部電極4を含まない面(図1のII-II線方向)で切断した断面においては、内部電極の両端部近傍に偏析相20が形成されている。ただし、内部電極層3の層間には、偏析相20は存在していない。
【0029】
また、図3に示すように、積層面に垂直であって、外部電極4を含む面(図1のIII-III線方向)で切断した断面においては、内部電極の一方の端部近傍に偏析相20が形成されている。なお、内部電極層3の他方の端部は外部電極4と接続されている。
【0030】
また、図4に示すように、内部電極層3を含む積層面(図1のIV-IV線方向)で切断した断面においては、外部電極4と接続している端部(辺)を除き、内部電極層3の周端部近傍に偏析相20が形成されている。」
(オ)「【0044】
積層セラミックコンデンサ1の製造方法
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。」
(カ)「【0058】
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷し内部電極パターンを形成した後、これらを積層してグリーンチップとする。」
(キ)「【0072】
たとえば、上述した実施形態において、グリーンシート上に内部電極層用ペーストを印刷して、内部電極パターンを形成した後、積層している。これに対し、内部電極パターンの段差を解消するために、余白ペーストを用いて、グリーンシート上の内部電極パターンが形成されていない隙間部分に、焼成後に誘電体層となる余白パターンを形成してもよい。この余白ペーストに、偏析相を構成する酸化物を含有させて余白パターンを形成することで、焼成後、内部電極層の周端部近傍に、余白ペーストに含まれる酸化物が析出して形成された偏析相が得られる。」
(ク)【図3】
「
[図:0001418104000001.jpg]
」
(ケ)【図4】
「
[図:0001418104000002.jpg]
」
イ.上記記載から、引用例には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(ア)上記引用例に記載の「積層セラミックコンデンサ1」は、上記「ア.(ウ)」の段落【0020】の記載によれば、セラミック層としての誘電体層2と、内部電極層3と、が交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10と、一対の外部電極4と、を有する積層セラミックコンデンサ1である。
(イ)上記「ア.(ウ)」の段落【0022】の記載によれば、誘電体層2は、主相と偏析相20とから構成されるものである。
(ウ)上記「ア.(ウ)」の段落【0020】の記載によれば、内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層されるものである。
(エ)上記「ア.(ウ)」の段落【0020】の記載によれば、一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されるものである。
(オ)上記「ア.(ウ)」の段落【0021】の記載によれば、コンデンサ素子本体10は、直方体状の形状である。
(カ)上記「ア.(エ)」の段落【0027】~【0029】の記載によれば、偏析相20は、Mgと、Mnと、の複合酸化物を含み、積層面に垂直であって、外部電極4を含まない面で切断した断面においては、内部電極層3の両端部近傍に偏析相20が形成され、積層面に垂直であって、外部電極4を含む面で切断した断面においては、内部電極層3の一方の端部近傍に偏析相20が形成され、内部電極層3の他方の端部は外部電極4と接続されるものである。
(キ)上記「ア.(オ)」の段落【0044】、「ア.(カ)」の段落【0058】、「ア.(キ)」の段落【0072】の記載によれば、積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、グリーンシート上に内部電極層用ペーストを印刷して、内部電極パターンを形成した後、余白ペーストを用いて、グリーンシート上の内部電極パターンが形成されていない隙間部分に、焼成後に誘電体層となる余白パターンを形成し、積層してグリーンチップを作製し、焼成することにより製造されるものである。
(ク)上記「ア.(ク)」の【図3】から、コンデンサ素子本体10は、内部電極層3が誘電体層2を介して交互に積層される内層部と、内層部を積層方向に挟むように配置される外層部と、を有することが見てとれる。
(ケ)上記「ア.(ケ)」の【図4】から、内部電極層3を含む積層面で切断した断面においては、内部電極層3の周端部近傍に形成された偏析相20は、その長さ方向端部と幅方向端部とが重なる角部領域にも形成されることが見てとれる。
ウ.以上のことから、上記記載及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「セラミック層としての誘電体層2と、内部電極層3と、が交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10と、一対の外部電極4と、を有する積層セラミックコンデンサ1であって、
誘電体層2は、主相と偏析相20とから構成され、
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層され、
一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続され、
コンデンサ素子本体10は、直方体状の形状であり、
偏析相20は、Mgと、Mnと、の複合酸化物を含み、積層面に垂直であって、外部電極4を含まない面で切断した断面においては、内部電極層3の両端部近傍に偏析相20が形成され、積層面に垂直であって、外部電極4を含む面で切断した断面においては、内部電極層3の一方の端部近傍に偏析相20が形成され、内部電極層3の他方の端部は外部電極4と接続され、
積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、グリーンシート上に内部電極層用ペーストを印刷して、内部電極パターンを形成した後、余白ペーストを用いて、グリーンシート上の内部電極パターンが形成されていない隙間部分に、焼成後に誘電体層となる余白パターンを形成し、積層してグリーンチップを作製し、焼成することにより製造され、
コンデンサ素子本体10は、内部電極層3が誘電体層2を介して交互に積層される内層部と、内層部を積層方向に挟むように配置される外層部と、を有し、
内部電極層3を含む積層面で切断した断面においては、内部電極層3の周端部近傍に形成された偏析相20は、その長さ方向端部と幅方向端部とが重なる角部領域にも形成される、
積層セラミックコンデンサ1。」
(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア.引用発明における「内部電極層3」、「外部電極4」は、それぞれ、本願補正発明でいう「内部電極層」、「外部電極」に相当する。また、引用発明における「誘電体層2」は、「セラミック層として」構成されるものであり、本願補正発明でいう「誘電体セラミック層」に相当する。更に、引用発明における「コンデンサ素子本体10」は、誘電体層2と内部電極層3とが「交互に積層された構成」を有するものであり、本願補正発明でいう「積層体」に相当する。
そして、引用発明における「コンデンサ素子本体10」が、「誘電体層2と、内部電極3と、が交互に積層された構成」であることは、本願補正発明でいう「積層体」が、「積層方向に積層される、誘電体セラミック層及び内部電極層を含む」ことに相当する。また、引用発明における「外部電極4」が、「内部電極層3」「に接続され」ることは、本願補正発明でいう「外部電極」が、「内部電極層に接続される」ことに相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「積層方向に積層される、誘電体セラミック層及び内部電極層を含む積層体と、前記内部電極層に接続される外部電極と、を備える」ものである点で一致する。
イ.上記「ア.」に記載したように、引用発明における「コンデンサ素子本体10」は、本願補正発明でいう「積層体」に相当する。そして、引用発明における「コンデンサ素子本体10」は、誘電体層2と内部電極層3とが「交互に積層された構成」を有する「直方体状の形状」であることから、積層方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、積層方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、積層方向及び幅方向に直交する長さ方向において対する第1の端面及び第2の端面と、を有するといえる。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記積層体は、前記積層方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、前記積層方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、前記積層方向及び前記幅方向に直交する長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面と、を有」するものである点で一致する。
ウ.上記「ア.」に記載したように、引用発明における「内部電極層3」は、本願補正発明でいう「内部電極層」に相当する。そして、引用発明における「コンデンサ素子10」は、「誘電体層2と、内部電極層3と、が交互に積層された構成」を有することから、互いに対向する少なくとも2つの内部電極層3と、当該2つの内部電極層3の間に介在する誘電体層2と、を含むものといえ、このことは、本願補正発明でいう「内部電極層」が、「第1の内部電極層と」、「誘電体セラミック層を介して」「第1の内部電極層と対向する」「第2の内部電極層と、を含」むことに相当する。また、引用発明における「内部電極層3」は、「各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層され」ることから、上記「少なくとも2つの内部電極層3」のうち、一方の端面はコンデンサ素子本体10の一方の端部の表面に露出し、他方の端面はコンデンサ素子本体10の他方の端部の表面に露出するものであり、ここで、上記「一方の端部の表面」及び「他方の端部の表面」は、それぞれ、本願補正発明でいう「第1の端面」及び「第2の端面」に相当することを踏まえると、本願補正発明でいう「内部電極層」が、「第1の端面に引き出される第1の内部電極層と」、「第2の端面に引き出される第2の内部電極層と、を含」むことに相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記内部電極層は、前記第1の端面に引き出される第1の内部電極層と、前記誘電体セラミック層を介して前記第1の内部電極層と対向するように前記第2の端面に引き出される第2の内部電極層と、を含」むものである点で一致する。
エ.上記「ア.」に記載したように、引用発明における「外部電極4」は、本願補正発明でいう「外部電極」に相当する。そして、引用発明における「一対の外部電極4」は、「コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続され」ることから、上記「一対の外部電極4」のうち、一方の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の一方の端部に形成され、かつ、上記「ウ.」に記載した「少なくとも2つの内部電極層3」のうちの一方に接続され、他方の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の他方の端部に形成され、かつ、上記「ウ.」に記載した「少なくとも2つの内部電極層3」のうちの他方に接続されることになる。ここで、上記「一方の外部電極4」、「他方の外部電極4」、「少なくとも2つの内部電極層3のうちの一方」、「少なくとも2つの内部電極層3のうちの他方」、「一方の端部」及び「他方の端部」は、それぞれ、本願補正発明でいう「第1の外部電極」、「第2の外部電極」、「第1の内部電極層」、「第2の内部電極層」、「第1の端面」及び「第2の端面」に相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記外部電極は、前記第1の端面上に配置され、かつ、前記第1の内部電極層と接続される第1の外部電極と、前記第2の端面上に配置され、かつ、前記第2の内部電極層と接続される第2の外部電極と、を含」むものである点で一致する。
オ.上記「ア.」に記載したように、引用発明における「誘電体層2」は、本願補正発明でいう「誘電体セラミック層」に相当する。そして、引用発明における「積層セラミックコンデンサ1」は、「誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し」、かつ、「余白ペーストを用いて」「焼成後に誘電体層となる余白パターンを形成し」、「焼成することにより製造され」るものであり、引用発明において、グリーンシートを焼成することにより製造された部分、及び、余白パターンを焼成することにより製造された部分は、それぞれ、本願補正発明でいう「誘電体セラミック層」を構成する「第1の誘電体セラミック層」及び「第2の誘電体セラミック層」に相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記誘電体セラミック層は、第1の誘電体セラミック層と第2の誘電体セラミック層から」なるものである点で一致する。
カ.引用発明における「積層セラミックコンデンサ1」は、「内部電極パターンを形成した後」、「焼成することにより製造され」るものであり、引用発明において、内部電極パターンを焼成することにより製造された部分は、本願補正発明でいう「内部電極層」に相当し、当該「内部電極層」は、上記「ウ.」に記載したように、「第1の内部電極層」及び「第2の内部電極層」を含んでなるものである。そして、引用発明における「積層セラミックコンデンサ1」は、「グリーンシートを形成し、グリーンシート上に」「内部電極パターンを形成した後」、「積層してグリーンチップを作製し、焼成することにより製造され」るのだから、これら内部電極パターンを焼成することにより製造された部分、すなわち、本願補正発明でいう「第1の内部電極層」及び「第2の内部電極層」の間には、グリーンシートを焼成することにより製造された部分、すなわち、本願補正発明でいう「第1の誘電体セラミック層」に相当するものが配置されることになる。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記第1の誘電体セラミック層は、前記第1の内部電極層と前記第2の内部電極層との間に配置されて」いるものである点で一致する。
キ.引用発明における「積層セラミックコンデンサ1」は、「グリーンシート上の内部電極パターンが形成されていない隙間部分に、焼成後に誘電体層となる余白パターンを形成し、積層してグリーンチップを作製し、焼成することにより製造され」るものであり、ここで、引用発明における「グリーンシート上の内部電極パターンが形成されていない隙間部分」は、本願補正発明でいう「第1の誘電体セラミック層間の」「内部電極層が配置されていない領域」に相当し、また、上記「オ.」に記載したように、引用発明において、余白パターンを焼成することにより製造された部分は、本願補正発明でいう「第2の誘電体セラミック層」に相当することを踏まえると、当該余白パターンを焼成することにより製造された部分、すなわち、本願補正発明でいう「第2の誘電体セラミック層」に相当するものは、グリーンシート上の内部電極パターンが形成されていない隙間部分、すなわち、本願補正発明でいう「第1の誘電体セラミック層間の」「内部電極層が配置されていない領域」に、少なくともその一部が、グリーンシートを焼成することにより製造された部分、すなわち、本願補正発明でいう「第1の誘電体セラミック層」に相当するものと、積層方向において重畳するように配置されることになる。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記第2の誘電体セラミック層は、前記内部電極層を介して対向する前記第1の誘電体セラミック層間の、前記内部電極層が配置されていない領域を含んで、その一部が前記第1の誘電体セラミック層と前記積層方向において重畳するように配置されて」いるものである点で一致する。
ク.上記「ア.」に記載したように、引用発明における「コンデンサ素子本体10」は、本願補正発明でいう「積層体」に相当する。そして、引用発明における「内層部」、「外層部」は、それぞれ、本願補正発明でいう「内層部」、「外層部」に相当する。また、引用発明における「コンデンサ素子本体10」が、「内層部と」、「外層部と、を有」することは、本願補正発明でいう「積層体」が、「内層部と」、「外層部と」、を有することに相当する。更に、引用発明における「内層部」が、「内部電極層3が誘電体層2を介して交互に積層される」ことは、本願補正発明でいう「内層部」が、「第1の内部電極層」及び「第2の内部電極層」が「誘電体セラミック層を介して交互に積層される」ことに相当する。加えて、引用発明における「外層部」が、「内層部を積層方向に挟むように配置される」ことは、本願補正発明でいう「外層部」が、「内層部」を「積層方向に挟むように配置」されることに相当する。そして、引用発明における「積層セラミックコンデンサ1」は、「グリーンシート」を「積層してグリーンチップを作製し、焼成することにより製造され」るものであるから、引用発明における「外層部」も、グリーンシートを焼成することにより製造されることになり、セラミック材料で構成されるものであるといえる。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記積層体は、前記第1の内部電極層及び前記第2の内部電極層が前記誘電体セラミック層を介して交互に積層される内層部と、前記内層部を前記積層方向に挟むように配置され、かつ、セラミック材料で構成される外層部」と、を有するものである点では一致する。
しかしながら、「積層体」について、本願補正発明では、「前記内層部及び前記外層部を前記幅方向に挟むように配置され、かつ、誘電体セラミック材料で構成される第3の誘電体セラミック層」を有することを特定するのに対して、引用発明では、そのような特定を有していない点で相違する。
ケ.引用発明における「偏析相20」は、本願補正発明でいう「第1の偏析」ないし「第3の偏析」を合わせた構成に相当する。また、引用発明における「偏析相20」が、「Mgと、Mnと、の複合酸化物を含」むことは、本願補正発明でいう「第1の偏析」及び「第2の偏析」が、「Mg、Mn、Siのうちの少なくとも1種類の元素による」ものである、という構成を充足する。更に、引用発明における「積層面に垂直であって、外部電極4を含む面で切断した断面」は、上記「(2)ア.(ク)」に摘記した【図3】に相当する断面、すなわち、本願補正発明でいう「積層方向において相対する第1の主面及び第2の主面」及び「長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面」により画定される断面に相当するものである。加えて、引用発明における「内部電極層3の他方の端部」は、「外部電極4と接続され」るものであり、本願補正発明でいう「内部電極層」における、外部電極と接続されている「端部」に相当するものであることを踏まえると、引用発明における「内部電極層3の一方の端部」は、本願補正発明でいう「内部電極層」における、外部電極と接続されていない「端部」に相当することになる。そうすると、引用発明における「偏析相20」が、「積層面に垂直であって、外部電極4を含む面で切断した断面においては、内部電極層3の一方の端部近傍」に形成されることは、本願補正発明でいう「第1の偏析」が、「第1の内部電極層」における「第2の外部電極と接続されていない」「長さ方向の端部」、及び、「第2の内部電極層」における「第1の外部電極と接続されていない」「長さ方向の端部、のそれぞれに」「存在して」いることに相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記第1の内部電極層における前記第2の外部電極と接続されていない前記長さ方向の端部、及び、前記第2の内部電極層における前記第1の外部電極と接続されていない前記長さ方向の端部、のそれぞれには、Mg、Mn、Siのうちの少なくとも1種類の元素による第1の偏析が存在して」いるものである点で一致する。
コ.引用発明における「積層面に垂直であって、外部電極を含まない面で切断した断面」は、本願補正発明でいう「積層方向において相対する第1の主面及び第2の主面」及び「幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面」により画定される断面に相当するものであることを踏まえると、引用発明における「内部電極層3の両端部」は、本願補正発明でいう「内部電極層」における「幅方向端部」に相当することになる。そうすると、引用発明における「偏析相20」が、「積層面に垂直であって、外部電極4を含まない面で切断した断面においては、内部電極層3の両端部近傍」に形成されることは、本願補正発明でいう「第2の偏析」が、「第1の内部電極層」の「幅方向端部」、及び、「第2の内部電極層」の「幅方向端部、のそれぞれに」「存在して」いることに相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記第1の内部電極層の前記幅方向端部、及び、前記第2の内部電極層の前記幅方向端部、のそれぞれには、Mg、Mn、Siのうちの少なくとも1種類の元素による第2の偏析が存在して」いるものである点で一致する。
サ.引用発明における「内部電極層3を含む積層面で切断した断面」は、上記「(2)ア.(ケ)」に摘記した【図4】に相当する断面、すなわち、本願補正発明でいう「幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面」及び「長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面」により画定される断面に相当するものであることを踏まえると、引用発明における「内部電極層3の周端部」は、本願補正発明でいう「内部電極層」における、「長さ方向端部」及び「幅方向端部」に相当し、引用発明における「内部電極層3の周端部近傍に形成された偏析相20」は、本願補正発明でいう「第1の偏析」及び「第2の偏析」に相当することになる。そして、引用発明における「長さ方向端部と幅方向とが重なる角部領域」は、本願補正発明でいう「第1の角部領域」及び「第2の角部領域」に相当するといえる。そうすると、引用発明における「偏析相20」が、「内部電極層3を含む積層面で切断した断面においては」、「その長さ方向端部と幅方向端部とが重なる角部領域にも形成される」ことは、本願補正発明でいう「第3の偏析」が、「第1の内部電極層における」「第1の角部領域」、及び、「第2の内部電極層における」「第2の角部領域、のそれぞれに」「存在」していることに相当する。そして、上記「ケ.」に記載したように、引用発明における「偏析相20」は、本願補正発明でいう「第1の偏析」ないし「第3の偏析」を合わせた構成に相当し、引用発明における「偏析相20」は、「Mgと、Mnと、の複合酸化物を含」むのであるから、本願補正発明でいう「第3の偏析」も、「第1の偏析」及び「第2の偏析」と同様に、「Mg、Mn、Siのうちの少なくとも1種類の元素による」ものである、という条件を充足することになり、本願補正発明でいう「第3の偏析」は、「第1の偏析」及び「第2の偏析のそれぞれの元素による」ものである、ということができる。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記第1の内部電極層における、前記第1の偏析が存在する前記長さ方向端部と、前記第2の偏析が存在する前記幅方向端部とが重なる第1の角部領域、及び、前記第2の内部電極層における、前記第1の偏析が存在する前記長さ方向端部と、前記第2の偏析が存在する前記幅方向端部とが重なる第2の角部領域、のそれぞれに、前記第1の偏析及び前記第2の偏析のそれぞれの元素による第3の偏析が存在」するものである点で一致する。
シ.「第1の内部電極層」及び「第2の内部電極層」について、本願補正発明では、「Snを含む」ことを特定するのに対して、引用発明では、そのような特定を有していない点で相違する。
ス.そして、引用発明における「積層セラミックコンデンサ1」は、本願補正発明における「積層セラミックコンデンサ」に相当するものである。
よって、上記「ア.」ないし「ス.」によれば、本願補正発明と引用発明とは、
「積層方向に積層される、誘電体セラミック層及び内部電極層を含む積層体と、
前記内部電極層に接続される外部電極と、を備える積層セラミックコンデンサであって、
前記積層体は、前記積層方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、前記積層方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、前記積層方向及び前記幅方向に直交する長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面と、を有し、
前記内部電極層は、前記第1の端面に引き出される第1の内部電極層と、前記誘電体セラミック層を介して前記第1の内部電極層と対向するように前記第2の端面に引き出される第2の内部電極層と、を含み、
前記外部電極は、前記第1の端面上に配置され、かつ、前記第1の内部電極層と接続される第1の外部電極と、前記第2の端面上に配置され、かつ、前記第2の内部電極層と接続される第2の外部電極と、を含み、
前記誘電体セラミック層は、第1の誘電体セラミック層と第2の誘電体セラミック層からなり、
前記第1の誘電体セラミック層は、前記第1の内部電極層と前記第2の内部電極層との間に配置されており、
前記第2の誘電体セラミック層は、前記内部電極層を介して対向する前記第1の誘電体セラミック層間の、前記内部電極層が配置されていない領域を含んで、その一部が前記第1の誘電体セラミック層と前記積層方向において重畳するように配置されており、
前記積層体は、前記第1の内部電極層及び前記第2の内部電極層が前記誘電体セラミック層を介して交互に積層される内層部と、前記内層部を前記積層方向に挟むように配置され、かつ、セラミック材料で構成される外層部と、を有し、
前記第1の内部電極層における前記第2の外部電極と接続されていない前記長さ方向の端部、及び、前記第2の内部電極層における前記第1の外部電極と接続されていない前記長さ方向の端部、のそれぞれには、Mg、Mn、Siのうちの少なくとも1種類の元素による第1の偏析が存在しており、
前記第1の内部電極層の前記幅方向端部、及び、前記第2の内部電極層の前記幅方向端部、のそれぞれには、Mg、Mn、Siのうちの少なくとも1種類の元素による第2の偏析が存在しており、
前記第1の内部電極層における、前記第1の偏析が存在する前記長さ方向端部と、前記第2の偏析が存在する前記幅方向端部とが重なる第1の角部領域、及び、
前記第2の内部電極層における、前記第1の偏析が存在する前記長さ方向端部と、前記第2の偏析が存在する前記幅方向端部とが重なる第2の角部領域、のそれぞれに、
前記第1の偏析及び前記第2の偏析のそれぞれの元素による第3の偏析が存在する、
積層セラミックコンデンサ。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
「積層体」について、本願補正発明では、「前記内層部及び前記外層部を前記幅方向に挟むように配置され、かつ、誘電体セラミック材料で構成される第3の誘電体セラミック層」を有することを特定するのに対して、引用発明では、そのような特定を有していない点。
[相違点2]
「第1の内部電極層」及び「第2の内部電極層」について、本願補正発明では、「Snを含む」ことを特定するのに対して、引用発明では、そのような特定を有していない点。
(4)判断
上記相違点1及び相違点2について検討する。
ア.相違点1について
例えば原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用された特開2019-9442号公報(特に、段落【0032】~【0035】、【0042】、【図4】を参照)、更には、特開2017-59820号公報(特に、段落【0025】~【0029】、【0039】、【0043】、【0048】、【0050】、【図2A】を参照)に記載されているように、積層セラミックコンデンサにおいて、サイドマージン部の幅を小さくするために、誘電体セラミック材料で構成される層を、内層部及び外層部を幅方向に挟むようにサイドマージン部に相当する領域に配置することは、周知の技術事項である。よって、上記「(2)ア.(ア)」に段落【0002】として摘記したように、引用発明において、積層セラミックコンデンサ1を小型化するために、引用発明における「誘電体層2」のサイドマージン部に相当する領域に対して上記周知の技術事項を適用し、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ.相違点2について
例えば国際公開第2014/024592号(特に、段落[0020]~[0022]、[0044]を参照)、更には、国際公開第2012/111592号(特に、段落[0006]、[0019]を参照)に記載されているように、積層セラミックコンデンサにおいて、高電圧印加時における信頼性を向上させるために、内部電極層として、Snを含むものを用いることは、周知の技術事項である。よって、上記「(2)ア.(イ)」に段落【0007】として摘記したように、引用発明において、耐電圧特性が向上され、信頼性の高い積層セラミック電子部品を得るために、上記周知の技術事項を採用し、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1.本願発明
令和5年12月26日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 [理由]1.(2)」の【請求項1】に記載したとおりのものである。
2.原査定の概要
本願の請求項1に対する原査定(令和5年10年3日付け拒絶査定)の拒絶の理由のうち、理由2(進歩性)の概要は以下のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項(下記の引用文献4等に記載された技術事項)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開2011-9369号公報
引用文献4:特開2019-9442号公報
3.引用例、引用発明
原査定の拒絶の理由で引用した引用例(引用文献1)の記載事項及び引用発明は、上記「第2 [理由]2.(2)」に記載したとおりである。
4.対比・判断
本願発明は、上記「第2 [理由]2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である、
(1)「第1の偏析」及び「第2の偏析」について、「Mg、Mn、Siのうちの少なくとも1種類の元素による」ことの限定を、「Mg、Mn、Siのうちの少なくとも1種類の金属元素による」ことの限定に変更し、
(2)「第3の偏析」について、「前記第1の偏析及び前記第2の偏析のそれぞれの元素による」ことの限定を、「前記第1の偏析及び前記第2の偏析のそれぞれの金属元素による」ことの限定に変更し、更に、
(3)「第1の内部電極層」及び「第2の内部電極層」について、「Snを含む」ことの限定、すなわち、上記「第2 [理由]2.(3)」で認定した[相違点2]に係る構成を省いたものに相当する。
このうち、上記(1)及び(2)の変更については、対応する補正が誤記の訂正を目的とするものであり、当該補正の前後で特許請求の範囲を実質的に変更するものではない。そうすると、本願補正発明から、「第1の偏析」ないし「第3の偏析」について、上記(1)及び(2)に記載した誤記の訂正を目的とする補正をする以前の限定に変更し、更に、上記(3)に記載した[相違点2]に係る構成を省いた残りの発明特定事項については、[相違点1]を除いて、上記「第2 [理由]2.(3)」の「ア.」ないし「ス.」に記載したとおり、引用発明における「積層セラミックコンデンサ1」においても備える事項である。また、[相違点1]については、上記「第2 [理由]2.(4)ア.」と同様の理由により、引用発明及び周知の技術事項(引用文献4等に記載された技術事項)に基いて、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本願発明も、引用発明及び周知の技術事項(引用文献4等に記載された技術事項)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-022033