特許拒絶査定不服審判
2023-019222
積層セラミックコンデンサ
- 審判番号
- 2023-019222
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-166431
- 請求日
- 2023年11月13日
- 審決日
- 2025年02月03日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社村田製作所
- 【請求人代理人】加藤 竜太
- 【請求人代理人】芝 哲央
- 審判長/審判官
- 審判長 岩間 直純
- 審判官 畑中 博幸
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P18 .113-Z (H01G) / P18 .121-Z (H01G) / P18 .575-Z (H01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第159条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-166431「積層セラミックコンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 4月11日出願公開、特開2022- 57919〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年9月30日の出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
令和5年 3月13日付け 拒絶理由通知書
令和5年 5月 1日 意見書の提出
令和5年 8月10日付け 拒絶査定
令和5年11月13日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
第2 令和5年11月13日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和5年11月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。
[理由]
1 補正の概要
本件補正は、出願時の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層体と、
前記積層体における、積層方向と交差する長さ方向の両端面のそれぞれに配置されて前記内部電極層と接続されるとともに、ガラス及び銅を含む下地電極層と、
前記下地電極層の外側に配置されたメッキ層と、を備え、
前記下地電極層に含まれる前記ガラスと前記メッキ層との間に、硫黄を含む保護層が形成されている、
積層セラミックコンデンサ。」
という発明(以下「本願発明」という。)を、
「誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層体と、
前記積層体における、積層方向と交差する長さ方向の両端面のそれぞれに配置されて前記内部電極層と接続されるとともに、ガラス及び銅を含む下地電極層と、
前記下地電極層の外側に配置されたメッキ層と、を備え、
前記下地電極層に含まれる前記ガラスと前記メッキ層との間に、硫黄を含み、且つ少なくとも一部には、前記ガラスに接している領域が存在する保護層が形成されている、
積層セラミックコンデンサ。」
という発明(以下「本願補正発明」という。)とすることを含むものである(下線は新たに追加された補正箇所を示すものとして請求人が付与したものである。)。
2 補正の適否
(1)補正の目的要件
請求項1についての上記補正は、「前記下地電極層に含まれる前記ガラスと前記メッキ層との間に、硫黄を含む保護層が形成されている」を「前記下地電極層に含まれる前記ガラスと前記メッキ層との間に、硫黄を含み、且つ少なくとも一部には、前記ガラスに接している領域が存在する保護層が形成されている」と補正するものである。これは、「保護層」に関し、「少なくとも一部には、前記ガラスに接している領域が存在する」ことをさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の限定的減縮に該当する。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第3項、同第4項の規定に違反するところはない。
(2) 独立特許要件
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて、以下検討する。
ア 本願補正発明
本願の請求項に係る発明は、令和5年11月13日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、上記1の本願補正発明のとおりのものと認める。
イ 引用例の記載と引用発明
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された特開2020-72246号公報(以下、「引用例1」という。)には、「キャパシタ部品」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。
「【0002】
キャパシタ部品の一つである積層セラミックキャパシタ(Multi-Layered Ceramic Capacitor、MLCC)は、小型でありながらも高容量が保証され、実装が容易であるという利点により、通信、コンピュータ、家電、自動車などの産業で用いられる重要なチップ部品であり、特に、携帯電話、コンピュータ、デジタルTVなどの各種電気、電子、情報通信機器に用いられる核心受動素子である。
【0003】
近年、モバイル(mobile)機器、ウェアラブル(wearable)機器などの需要が増加するにつれて、様々な気候や環境下で使用できるように、キャパシタ部品の耐湿信頼性を確保することがますます重要となっている。
【0004】
一般的に、機械的、電気的、化学的安定性、及び実装性を向上させるために、積層セラミックキャパシタの外部電極は、電極層上に形成されためっき層を含む。
【0005】
しかし、めっき層を形成するためのめっき工程中、めっき液によって電極層のガラスなど耐薬品性が弱い成分がエッチングされるか、電極層が切れている部分を介してめっき液がキャパシタ本体の内部に浸透して発生する内部欠陥によって、耐熱及び耐湿信頼性が低下する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、耐熱及び耐湿信頼性に優れたキャパシタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体に配置される外部電極と、を含み、上記外部電極は、上記内部電極と連結される電極層と、上記電極層上に配置されるめっき層と、上記めっき層と上記電極層との間の界面に配置される二次相と、を含み、上記二次相は硫黄(S)を含む、キャパシタ部品を提供する。」
「【0026】
図1~図4を参照すると、本発明の一実施形態によるキャパシタ部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体に配置される外部電極131、132と、を含み、上記外部電極は、上記内部電極と連結される電極層と、上記電極層上に配置されるめっき層と、上記めっき層と上記電極層との間の界面に配置される二次相と、を含み、上記二次相は硫黄(S)を含む。
【0027】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0028】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状やそれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれているセラミック粉末の収縮により、本体110は、完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0029】
本体110は、厚さ方向(Z方向)に互いに対向する第1及び第2面1、2と、第1及び第2面1、2と連結され、長さ方向(X方向)に互いに対向する第3及び第4面3、4と、第1及び第2面1、2と連結され、且つ第3及び第4面3、4と連結され、幅方向(Y方向)に互いに対向する第5及び第6面5、6と、を有することができる。
・・・(中略)・・・。
【0031】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量を得ることができる限り、特に制限されず、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)粉末であることができる。誘電体層111を形成する材料としては、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粉末に、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。」
「図2
[図:0001421994000001.jpg]
」
「図4
[図:0001421994000002.jpg]
」
「【0056】
外部電極131、132は、本体110に配置され、電極層131a、132a、二次相131b、132b、及びめっき層131c、132cを含む。
【0057】
外部電極131、132は、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結される第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0058】
このとき、第1及び第2外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4から本体110の第1及び第2面1、2の一部までそれぞれ延長されるように形成されることができる。また、第1及び第2外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4から本体の第5及び第6面5、6の一部までそれぞれ延長されるように形成されることができる。
【0059】
以下、第1外部電極131を中心に説明するが、第2外部電極132にも同様に適用されることができる。
【0060】
一般的に、機械的、電気的、化学的安定性、及び実装性を向上させるために、積層セラミックキャパシタの外部電極は、電極層上に形成されためっき層を含む。
【0061】
しかし、めっき層を形成するためのめっき工程中、めっき液によって電極層のガラスなど耐薬品性が弱い成分がエッチングされるか、電極層が切れている部分を介してめっき液がキャパシタ本体の内部に浸透して発生する内部欠陥によって、耐熱及び耐湿信頼性が低下する恐れがある。
【0062】
図7a~図7cはめっき工程が進むにつれて電極層に含まれたガラスが浸食されて気孔が形成される様子を示す模式図である。図7aはめっき前の電極層を示す模式図であり、図7bはめっき中の電極層を示す模式図であり、図7cはめっき後の電極層を示す模式図である。
【0063】
図7a~図7cを参照すると、めっきが進むにつれて、めっき液によってガラスgなどのような耐薬品性が弱い物質がエッチングされて孔hを形成するようになり、かかる気孔hは、めっき液又は水分の浸透経路となって耐熱及び耐湿信頼性が低下する。」
「図7a
[図:0001421994000003.jpg]
」
「図7b
[図:0001421994000004.jpg]
」
「図7c
[図:0001421994000005.jpg]
」
「【0064】
本発明の一実施形態に従って、外部電極131、132の電極層131a、132aとめっき層131c、132cの間の界面に硫黄(S、Sulfur)を含む二次相131b、132bが配置される場合、二次相131b、132bが電極層の侵食を抑制する保護膜の役割を果たすことができ、電極層自体の切れも緩和する役割を果たすことによって、耐熱及び耐湿信頼性を向上させることができる。
【0065】
硫黄(S)を含む二次相131b、132bは、めっき液に対する耐薬品性に優れるため、電極層131a、132aに含まれるガラスgなどのような耐薬品性が弱い物質がエッチングされることを防止し、電極層131a、132aに気孔hが形成されることを防止することができる。これにより、外部電極131、132の緻密度を向上させることができる。
【0066】
二次相131b、132bは硫黄(S)を含み、硫黄(S)は、ガラス成分、めっき中に還元される金属成分、又はめっき工程の添加剤成分と混合物をなすことができる。例えば、硫黄(S)は、Sn、Cu、Ni、Ba、Al、Si、及びOからなるグループから選択された1以上と化合物を形成して二次相に含まれることができる。
【0067】
このとき、二次相131b、132bは、硫酸塩(sulfate)系の二次相であることができる。
【0068】
二次相131b、132bは、上記電極層131a、132aと上記めっき層131c、132cとの間の界面の2~50面積%であることができる。二次相131b、132bの面積%は、めっき層131c、132cの形成前に電極層131a、132aの表面に突出したガラスの面積を考慮して決定することができる。
【0069】
二次相131b、132bが、上記電極層131a、132aと上記めっき層131c、132cの間の界面の2面積%未満の場合には、めっき前に電極層131a、132aの表面に突出したガラスの面積を考慮すると、電極層の侵食を抑制する保護膜の役割が不十分であり、電極層131a、132a自体の切れを緩和することが困難であり得る。これに対し、二次相131b、132bが50面積%を超える場合は、電気的連結性が低下する恐れがあり、めっき層131c、132c切れが発生する恐れがある。
【0070】
上記二次相131b、132bを形成する方法は特に限定しない。例えば、めっき工程前に化学的及び電気的前処理により形成されることができ、めっき工程中にめっき液の組成を変更することにより、めっき工程中に形成されることもできる。
【0071】
めっき工程前の化学的前処理としては、硫黄(sulfur)を含む前処理液に電極層が形成された本体を含浸した後、還元/析出反応を誘導して二次相を形成する方法や、ガラスと反応可能な金属化合物又は添加剤を添加して二次相を形成する方法を用いることができる。
【0072】
めっき工程前の電気的前処理としては、硫黄(sulfur)を含む電解液及び添加剤を投入してシード(seed)めっきの形式で二次相を形成することができる。
【0073】
また、硫黄(sulfur)添加剤又は溶剤の割合が全体めっき液の1~60vol%となるようにめっき液の組成を変更して、めっき工程中に二次相を形成することもできる。」
【0074】
電極層131a、132aは、本体110と外部電極131、132とを機械的に接合させる役割を果たし、内部電極121、122と外部電極131、132とを電気的及び機械的に接合させる役割を果たす。
【0075】
電極層131a、132aは、金属などのように導電性を有するものであれば、どのような物質を用いて形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して、具体的な物質が決定されることができる。
【0076】
但し、電極層131a、132aが導電性金属e1及びガラスgを含む場合、ガラスgは、めっき液に対する耐薬品性が弱いため、電極層131a、132a内に気孔が容易に形成される可能性があり、気孔がめっき液又は水分の浸透経路となるため、耐熱及び耐湿信頼性が特に問題となり得る。
【0077】
したがって、電極層131a、132aが導電性金属e1及びガラスgを含む場合、本発明による耐熱及び耐湿信頼性向上効果がより顕著になる。
【0078】
ガラスgは、本体110と外部電極131、132とを機械的に接合させる役割を果たし、導電性金属e1は、内部電極121、122と外部電極131、132とを電気的及び機械的に接合させる役割を果たす。このとき、導電性金属e1は、Cu、Pd、及びAgからなるグループから選択された1以上であることができる。
【0079】
このとき、電極層131a、132aの厚さは1~10μmであることができる。」
【0092】
(実験例)
下記表1は、電極層とめっき層との間の界面に配置される二次相による効果を確認するための実験結果を示したものである。
【0093】
発明例は、本体にCu及びガラスで構成された電極層を形成した後、硫黄(sulfur)成分を含む酸性系添加剤が5%以下の濃度で含有された前処理液に含浸し、さらに水洗して前処理を行った。その後、電極層上に電解めっきでNiめっき層及びSnめっき層を順に形成した。Niめっき層及びSnめっき層のそれぞれの厚さは4μmであった。
【0094】
比較例は、本体にCu及びガラスで構成された電極層を形成した後、上述の発明例の前処理を行わずに電極層上に電解めっきでNiめっき層及びSnめっき層を順に形成した。Niめっき層及びSnめっき層のそれぞれの厚さは4μmであった。
【0095】
発明例及び比較例のそれぞれのサンプル100個に対して、めっき層切れが発生したサンプル個数を測定して下記表1に記載した。めっき層切れは、各サンプルの幅方向中央部で長さ方向及び厚さ方向の断面を観察して測定した。
【0096】
また、発明例及び比較例のそれぞれのサンプル400個に対して、半田不良、高温/高圧信頼性不良、及び耐湿信頼性不良が発生したサンプル個数を測定して下記表1に記載した。
【0097】
高温/高圧信頼性は、温度150℃の環境下で基準電圧の2倍を12時間印加した後、絶縁抵抗値が初期値に比べて1.0E+1以上劣化したサンプルを不良と判定した。
【0098】
耐湿信頼性は、温度85℃、相対湿度85%の環境下で基準電圧を12時間印加した後、絶縁抵抗値が初期値に比べて1.0E+1以上劣化したサンプルを不良と判定した。
【0099】
【表1】
[図:0001421994000006.jpg]
」
「【0100】
電極層とNiめっき層との間の界面に二次相が存在しない比較例の場合、めっき層切れ、半田不良、高温/高圧信頼性不良、及び耐湿信頼性不良が発生したことが確認できる。
【0101】
これに対し、電極層とNiめっき層との間の界面に二次相が存在する発明例の場合、めっき層切れ、半田不良、高温/高圧信頼性不良、及び耐湿信頼性不良が発生していないことが確認できる。
【0102】
図6a~図6fは、発明例の外部電極を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いて分析した結果である。
【0103】
図6aは発明例の幅方向中央部で長さ方向及び厚さ方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いて撮影した写真である。
【0104】
図6bは図6aのB領域を拡大した写真である。
【0105】
図6cは図6bのC線に沿ってC、O、Ba、及びSに対してラインマッピング(line mapping)分析を行った結果である。図6cを参照すると、発明例では電極層とNiめっき層との間の界面に硫酸バリウム(barium sulfate)系の二次相が存在することが確認できる。
【0106】
図6dは図6aのB領域におけるNiに対する2Dマッピング分析結果である。図6eは図6aのB領域におけるCuに対する2Dマッピング(mapping)分析結果である。図6fは図6aのB領域におけるSに対する2Dマッピング(mapping)分析結果である。2Dマッピング(mapping)は、各元素の分布度を色で区分して分析する方法であって、図6d~6fにおいて明るい領域であるほど、当該元素の含量が高いことを意味する。
【0107】
図6d~図6fを参照すると、発明例では電極層とNiめっき層との間の界面に硫黄(S)を含む二次相が存在することが確認できる。
【0108】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。」
(イ)引用例1の上記記載によれば、次の事項が記載されている。
a 段落【0026】によれば、引用例1には、キャパシタ部品100が記載されており、同段落によれば、キャパシタ部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体に配置される外部電極131、132と、を含み、上記外部電極は、上記内部電極と連結される電極層と、上記電極層上に配置されるめっき層と、上記めっき層と上記電極層との間の界面に配置される二次相と、を含み、上記二次相は硫黄(S)を含むものである。
b 段落【0027】ないし【0029】によれば、本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層され、六面体形状からなり、厚さ方向(Z方向)に互いに対向する第1及び第2面1、2と、第1及び第2面1、2と連結され、長さ方向(X方向)に互いに対向する第3及び第4面3、4と、第1及び第2面1、2と連結され、且つ第3及び第4面3、4と連結され、幅方向(Y方向)に互いに対向する第5及び第6面5、6と、を有する。
c 段落【0031】によれば、誘電体層111はチタン酸バリウム(BaTiO3)粉末により形成される。
d 段落【0056】、【0058】によれば、外部電極131、132は、電極層131a、132a、二次相131b、132b、及びめっき層131c、132cを含み、本体110の第3及び第4面3、4に形成される。
また、図2、図4によれば、めっき層131c、132cは、電極層131a、132a上に配置されることが見て取れる。
e 段落【0074】によれば、電極層131a、132aは、本体110と外部電極131、132とを機械的に接合させる役割を果たし、内部電極121、122と外部電極131、132とを電気的及び機械的に接合させる役割を果たすものであって、段落【0076】ないし【0078】、【0093】によれば、電極層131a、132aは、ガラス及びCuを含む。
f 段落【0064】、【0065】によれば、電極層131a、132aとめっき層131c、132cの間の界面に、硫黄(S、Sulfur)を含む二次相131b、132bを配置し、該二次相131b、132bは、めっき液に対する耐薬品性に優れるため、電極層131a、132aに含まれるガラスgがエッチングされることを防止し、電極層131a、132aに気孔hが形成されることを防止する保護膜の役割を果たすものである。
そして、段落【0068】によれば、二次相131b、132bの面積%は、めっき層131c、132cの形成前に電極層131a、132aの表面に突出したガラスの面積を考慮して決定する。
(ウ)上記(イ)によれば、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明
」という。)が記載されている。
「誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体に配置される外部電極131、132と、を含み、上記外部電極は、上記内部電極と連結される電極層と、上記電極層上に配置されるめっき層と、上記めっき層と上記電極層との間の界面に配置される二次相と、を含み、上記二次相は硫黄(S)を含むキャパシタ部品100であって、
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層され、六面体形状からなり、厚さ方向(Z方向)に互いに対向する第1及び第2面1、2と、第1及び第2面1、2と連結され、長さ方向(X方向)に互いに対向する第3及び第4面3、4と、第1及び第2面1、2と連結され、且つ第3及び第4面3、4と連結され、幅方向(Y方向)に互いに対向する第5及び第6面5、6と、を有し、
誘電体層111はチタン酸バリウム(BaTiO3)粉末により形成され、
外部電極131、132は、電極層131a、132a、二次相131b、132b、及び電極層131a、132a上に配置されるめっき層131c、132cを含み、本体110の第3及び第4面3、4に形成され、
電極層131a、132aは、本体110と外部電極131、132とを機械的に接合させる役割を果たし、内部電極121、122と外部電極131、132とを電気的及び機械的に接合させる役割を果たすものであって、ガラス及びCuを含み、
電極層131a、132aとめっき層131c、132cの間の界面に、硫黄(S、Sulfur)を含む二次相131b、132bを配置し、該二次相131b、132bは、めっき液に対する耐薬品性に優れるため、電極層131a、132aに含まれるガラスgがエッチングされることを防止し、電極層131a、132aに気孔hが形成されることを防止する保護膜の役割を果たすものであり、
二次相131b、132bの面積%は、めっき層131c、132cの形成前に、電極層131a、132aの表面に突出したガラスの面積を考慮して決定する、
キャパシタ部品。」
ウ 引用発明との対比
(ア)本願補正発明と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層され」た「本体110」は、本願補正発明の「誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層体」に相当する。
b 引用発明の「本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層され、六面体形状からなり、厚さ方向(Z方向)に互いに対向する第1及び第2面1、2と、第1及び第2面1、2と連結され、長さ方向(X方向)に互いに対向する第3及び第4面3、4と、第1及び第2面1、2と連結され、且つ第3及び第4面3、4と連結され、幅方向(Y方向)に互いに対向する第5及び第6面5、6と、を有」することから、「第3及び第4面3、4」は、「厚さ方向(Z方向)」に交差する「長さ方向(X方向)に互いに対向する」面であるといえる。
そして、引用発明の「外部電極131、132は、電極層131a、132a」「を含み、本体110の第3及び第4面3、4に形成され、」「電極層131a、132aは、本体110と外部電極131、132とを機械的に接合させる役割を果たし、内部電極121、122と外部電極131、132とを電気的及び機械的に接合させる役割を果たすものであ」ることから、引用発明の「電極層131a、132a」は、「本体110の第3及び第4面3、4に形成され、」「内部電極121、122」と「電気的及び機械的に接合さ」れるといえる。
してみると、引用発明において、「本体110」の「厚さ方向(Z方向)」に交差する「長さ方向(X方向)に互いに対向する」「第3及び第4面3、4に形成され、」「内部電極121、122」と「電気的及び機械的に接合さ」れ、「ガラス及びCuを含」む「電極層131a、132a」は、本願補正発明の「前記積層体における、積層方向と交差する長さ方向の両端面のそれぞれに配置されて前記内部電極層と接続されるとともに、ガラス及び銅を含む下地電極層」に相当する。
c 引用発明の「電極層131a、132a上に配置されるめっき層131c、132c」は、本願補正発明の「下地電極層の外側に配置されたメッキ層」に相当する。
d 引用発明の「二次相131b、132は、硫黄(S、Sulfur)を含み、電極層131a、132aとめっき層131c、132cの間の界面に配置され、電極層131a、132aに含まれるガラスがエッチングされることを防止し、電極層131a、132aに気孔hが形成されることを防止する保護膜の役割を果たすものであ」る。
してみると、引用発明の「二次相131b、132」が、「電極層131a、132aとめっき層131c、132cの間の界面に配置され」、「硫黄(S、Sulfur)を含み」、「電極層131a、132aに含まれるガラスがエッチングされることを防止し、電極層131a、132aに気孔hが形成されることを防止する保護膜の役割を果たす」ことと本願補正発明とは、「下地電極層と前記メッキ層との間に、硫黄を含む保護層が形成されている」点で共通する。
ただし、保護層に関し、本願補正発明は「ガラス」とメッキ層との間に、「且つ少なくとも一部には、前記ガラスに接している領域が存在する」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
e 引用発明の「チタン酸バリウム(BaTiO3)粉末により形成され」る「誘電体層111」「を含む本体110」を「含むキャパシタ部品100」は、本願補正発明の「積層セラミックコンデンサ」に相当する。
(イ)してみれば、本願補正発明と引用発明は、以下の点で一致及び相違する。
[一致点]
「誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層体と、
前記積層体における、積層方向と交差する長さ方向の両端面のそれぞれに配置されて前記内部電極層と接続されるとともに、ガラス及び銅を含む下地電極層と、
前記下地電極層の外側に配置されたメッキ層と、を備え、
下地電極層と前記メッキ層との間に、硫黄を含む保護層が形成されている、
積層セラミックコンデンサ。」
[相違点]
保護層に関し、本願補正発明は「ガラス」とメッキ層との間に、「且つ少なくとも一部には、前記ガラスに接している領域が存在する」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点。
エ 相違点に対する判断
(ア)引用発明に基づく新規性
引用発明において、「電極層131a、132aとめっき層131c、132cの間の界面に」「配置」される「二次相131b、132bは、めっき液に対する耐薬品性に優れるため、電極層131a、132aに含まれるガラスgがエッチングされることを防止し、電極層131a、132aに気孔hが形成されることを防止する保護膜の役割を果た」すものであり、「二次相131b、132bの面積%は、めっき層131c、132cの形成前に、電極層131a、132aの表面に突出したガラスの面積を考慮して決定」している。そして、二次相131b、132bの面積%について、引用例1の段落【0069】には、「二次相131b、132bが、上記電極層131a、132aと上記めっき層131c、132cの間の界面の2面積%未満の場合には、めっき前に電極層131a、132aの表面に突出したガラスの面積を考慮すると、電極層の侵食を抑制する保護膜の役割が不十分であり、電極層131a、132a自体の切れを緩和することが困難であり得る。これに対し、二次相131b、132bが50面積%を超える場合は、電気的連結性が低下する恐れがあり、めっき層131c、132c切れが発生する恐れがある。」と記載されている。
一方、引用例1の段落【0060】ないし【0063】、図7a~図7cによれば、「めっき工程が進むにつれて電極層に含まれたガラスが浸食されて気孔が形成される様子」として、電極層の表面に突出したガラスgにメッキ液が触れて、当該ガラスがエッチングされて孔hを形成することが見て取れる。
してみれば、引用発明の「二次相131b、132b」が「電極層131a、132aに含まれるガラスgがエッチングされることを防止し、電極層131a、132aに気孔hが形成されることを防止する保護膜の役割」を果たすためには、「電極層131a、132a」の表面に突出したガラスにメッキ液が触れないよう、当該「電極層131a、132a」の表面に突出したガラスに接する領域が十分に存在する必要があると解され、このために、引用発明では「二次相131b、132bの面積%は、めっき層131c、132cの形成前に電極層131a、132aの表面に突出したガラスの面積を考慮して決定することができる」ものと解される。
よって、引用発明において、「二次相131b、132b」は「電極層131a、132a」の表面に突出したガラスに接する領域を有し、保護層として当該ガラスを直接に保護している蓋然性が高いものと認められる。
以上から、引用例1の図面(特に図4、図6a~図6f)には、電極層の表面に突出したガラスに接している二次相は見て取れないとしても、引用発明は、実質的に「少なくとも一部には、前記ガラスに接している領域が存在する保護層が形成されている」ものと認められるから、前記相違点は実質的な相違点ではない。
(イ)引用発明に基づく進歩性
仮に、前記相違点1が実質的な相違点であるとしても、「めっき層を形成するためのめっき工程中、めっき液によって電極層のガラスなど耐薬品性が弱い成分がエッチングされるか、電極層が切れている部分を介してめっき液がキャパシタ本体の内部に浸透して発生する内部欠陥によって、耐熱及び耐湿信頼性が低下する恐れがある。」(引用例1の段落【0005】)との引用発明の課題を解決するためには、引用例1の段落【0060】ないし【0063】、図7a~図7cから、引用発明の「電極層131a、132a」の表面に突出したガラスを保護すれば良いことは当業者にとって自明である。
そして、前記したように引用例1の段落【0071】には、「ガラスと反応可能な金属化合物又は添加剤を添加して二次相を形成する方法を用いることができる」ことが記載されていることより、ガラスに接して二次相を形成し、ガラスを保護することが示唆されているといえる。
してみれば、引用発明において、「少なくとも一部には、前記ガラスに接している領域が存在する保護層が形成されている」構成とすることは、当業者が容易に想到することができた事項と認められる。
よって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人は、審判請求書において、概略次のように主張する。
a 引用例1のベース電極のガラスとめっき層の界面に二次相が形成されている特徴に係る構成を有している蓋然性が高いならば、引用例1に示されているデータ(図6a-f、特に図6a,d-f)はガラス上に二次相がなければならないと考えます。
引用例1図6a-f(特に図6a,d-f)によれば、ベース電極の導電性金属上に二次相が配置されており、ベース電極のガラス上に二次相が配置されておらず、審査官の認定と引用例1のデータ(引用例1図6a,d-f)とは矛盾が生じます。(第5頁11ないし18行)
b 引用例1において二次相は、Sを含む処理液に電極層が形成された本体を浸して形成されます。引用例1においては、例えば下記[0071]のように、単に「処理液にSを含む」ことのみ記載されています。すなわち、二次相は、ガラスから提供された硫黄やバリウムを二次相に含むことの記載や示唆が一切ありません。このため、二次相は、処理液に含まれたSのみにより形成されることが読み取れます。
そして、今回の補正により新たに追加した特徴は、保護層にガラスに含有された硫黄を含むことによる特有の特徴であるため、保護層形成メカニズムを考慮しても、補正した本願と引用例1は明らかに区別されるものと考えます。
さらに、本願[0081]には、ガラスに含まれたSを保護層に含有すること、つまり、「前記保護層の少なくとも一部には、前記ガラスに接している領域が存在する、」ことにより、一定以上のガラスの浸食がされなくなるという格別な効果が記載されています。
一方、引用例1には、上記特徴が記載も示唆もされていないため、当然、上記特徴による格別な効果の記載や示唆もありません。(第6頁下から5行ないし7頁15行)
(イ)審判請求人の主張について検討する。
a 主張aについて
引用例の段落【0102】によれば、図6a~図6fは、発明例の外部電極を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いて分析した結果であるところ、図6a~図6fを参酌しても、二次相131bが電極層131aに含まれるガラスg上に配置されているか明らかではない。
しかし、段落【0103】に「図6aは発明例の幅方向中央部で長さ方向及び厚さ方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いて撮影した写真である」と記載されているとおり、図6a~図6fは、発明例の「幅方向中央部で長さ方向及び厚さ方向の断面」、即ち、発明例の一部分を撮影した写真に過ぎないから、図6a~図6fにおいて、二次相131bが電極層131aに含まれるガラスg上に配置されているか明らかではないとしても、必ずしも電極相131aにおいてガラス上に二次相131bが配置されていないとはいえない。むしろ前記エ(ア)で検討したとおり、二次相131b、132bは、電極層131a、132aの表面に突出したガラスに接する領域を有し、保護層として当該ガラスを直接に保護している蓋然性が高いものと認められる。
よって、審判請求人の主張は採用できない。
b 主張bについて
本願補正発明は「少なくとも一部には、前記ガラスに接している領域が存在する保護層が形成されている」との点を特定するものの、保護層形成メカニズムを直接的に特定するものではなく、また、ガラスに含まれたSを保護層に含有することを特定するものではない。
そして、請求人が摘記するとおり、引用例1は「ガラスと反応可能な金属化合物又は添加剤を添加して二次相を形成する方法を用いることができる」もの(段落【0071】)であって、ガラスと反応して二次相が形成されるものと解され、その場合、本願補正発明の「ガラスに接している領域が存在する保護層」に相当するものが形成されることは当業者にとって明らかである。
よって、審判請求人の主張は採用できない。
カ 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものである。仮に、特許法第29条第1項第3号に該当しないとしても、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願補正発明は独立して特許を受けることができないから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年11月13日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、出願時の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、上記第2の1の本願発明に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、令和5年3月13日付け拒絶理由の理由1、2によって拒絶をすべきものとするものであって、当該理由1、2の概要は、
「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものであり、本願発明は、以下の引用例1に記載された発明である、又は、引用例1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたとするものである。
引用例1:特開2020-72246号公報
3 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及びその記載事項は、上記第22(2)イに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、本件補正に係る限定を省いたものである。
そして、本願補正発明と引用発明との相違点は、上記本件補正に係る事項のみであるから、本願発明と引用発明とでは上記相違点は存在しない。よって、本願発明は引用例1に記載された発明である。また、仮に上記相違点が実質的な相違点であるとしても、本願発明は引用例1に記載された発明に基づき、当業者が容易に想到することができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。仮に、本願発明は、引用例1に記載された発明でないとしても、引用例1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-019222