特許拒絶査定不服審判
2023-009891
ブラシヘッド製造方法
- 審判番号
- 2023-009891
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-570813外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年06月14日
- 審決日
- 2025年02月10日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
- 【請求人代理人】笛田 秀仙
- 【請求人代理人】五十嵐 貴裕
- 【請求人代理人】矢ヶ部 喜行
- 分類
- P18 .121-WZ (A46B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-570813「ブラシヘッド製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月17日国際公開、WO2019/011599、令和 2年 8月31日国内公表、特表2020-526249〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願は、2018年(平成30年)6月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年7月12日 米国、2017年10月24日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和4年5月25日付けの拒絶理由の通知に対し、令和4年11月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和5年2月24日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和5年6月14日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものであり、その後、当審において、令和6年6月5日付けで拒絶理由が通知され、令和6年7月8日に意見書が提出されるとともに、誤訳訂正書を提出して補正がされたものである。
第2 本願発明
この出願の請求項に係る発明は、令和6年7月8日に誤訳訂正書を提出して補正がされた特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「ブラシヘッドのための溶接された房アセンブリを製造するための方法であって、
保持要素における開口に少なくとも1つの毛房を挿入するステップと、
前記毛房の近位端と前記保持要素の近位側とをレーザ溶接して、前記毛房と前記保持要素の近位側の少なくとも一部をともに溶融し、溶接された房アセンブリを保持する結合された近位端ヘッド部を生成するステップと、
を有し、
前記近位端ヘッド部が、前記保持要素の近位側と略同じ高さにある、
方法。」
第3 拒絶の理由
令和6年6月5日付けで当審が通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、理由1(進歩性)の請求項1に係る発明に対するものは、概略、次のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2~4に記載されるような周知の事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特表2017-508544号公報
引用文献2:独国特許出願公開第19606416号明細書(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2014-42661号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2005-245719号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付加した。以下、同様である。)。
ア「【請求項1】
遠位端を有するブラシヘッドであって、
第1の表面を含む弾性マトリックスと、
該弾性マトリックス内に配置される複数の保持リングと、
複数の剛毛房と、
ネックとを含み、
前記複数の保持リングの各々は、第1の端と、該第1の端よりも前記弾性マトリックスの前記第1の表面により近接して位置付けられる第2の端と、中心長手軸を備える内部空間を形成する内壁と、外壁とを含み、
前記複数の保持リングの少なくとも第1の保持リングの内壁は、概ね円形の形状であり、
前記複数の保持リングの少なくとも第2の保持リングの内壁は、概ね非円形の形状であり、
前記複数の保持リングの各々の保持リングの外壁は、概ね非円形の形状であり、
前記複数の保持リングの各々の保持リングの内壁又は外壁のうちの少なくとも一方は、前記中心長手軸に向かう方向において前記第1の端から前記第2の端に延びるテーパを含み、
前記複数の剛毛房の各々は、前記複数の保持リングのうちの1つの保持リングの内部空間内に挿入され、複数の剛毛束を含み、近位端及び自由端を有し、前記複数の保持リングのうちの1つの保持リングの第2の端の外部に隣接する前記剛毛房のヘッド部分の形成によってその近位端で保持され、
前記ネックの遠位プラテン部分は、前記弾性マトリックスの前記近位端に接続され、前記弾性マトリックスの前記近位端内に少なくとも部分的に埋め込まれ、前記ネックは、前記弾性マトリックスよりも高い弾性率値を備える材料で形成される、
ブラシヘッド。
・・・(中略)・・・
【請求項13】
ブラシヘッドアセンブリを製造する方法であって、
複数のポリプロピレン剛毛房保持リングを提供するステップであって、該複数のポリプロピレン剛毛房保持リングの各々は、第1の端と、該第1の端よりも弾性マトリックスの第1の表面により近接して位置付けられる第2の端と、中心長手軸を備える内部空間を形成する内壁と、外壁とを含み、前記複数の保持リングの各々の保持リングの前記内壁又は前記外壁の少なくとも一方は、前記中心長手軸に向かう方向において前記第1の端から前記第2の端に延びるテーパを含み、前記複数の剛毛房保持リングは、網目リンクの網目組織によって少なくとも部分的に相互接続される、ステップと、
それぞれのナイロン剛毛房を前記剛毛房保持リングの各々の内に挿入するステップと、
前記剛毛房近位端を少なくとも部分的に溶解させて、前記複数の保持リングの各々の保持リングの前記第2の端の外部に隣接する近位ヘッド部分を創り出すのに十分な温度で、各剛毛房近位端に熱を適用するステップと、
前記近位ヘッド部分に対して前記ブラシヘッドのネックのプラテン部分を位置付けるステップであって、前記ネックの前記プラテン部分の前記位置付けは、熱可塑性エラストマの射出のための前記近位ヘッド部分に関する空間を定める、ステップと、
前記プラテン部分及び前記近位ヘッド部分を少なくとも部分的に取り囲む弾性マトリックスを創り出すよう、前記ネックにあるゲートを通じて前記熱可塑性エラストマを前記空間内に射出するステップとを含む、
方法。」
イ「【0039】
ブラシヘッドアセンブリ
【0040】
図1Aを参照すると、1つの実施態様において、ブラシヘッドアセンブリ100の組み立て状態の斜視頂面図の概略的な表示が提供されている。より具体的には、ブラシヘッドアセンブリ100は、好ましくは実質的に平面的な(しかしながら、平面的であることは必要とされない)第1の表面32を含む、弾性マトリックス30を含み得るが、それに限定されない。各々が複数の剛毛束(bristle strands)を含む、複数の個々の剛毛房21(bristle tufts)が、弾性マトリックス30内に配置される複数の個々の保持リング50内に保持される。複数の個々の剛毛房21は、弾性マトリックス30の第1の表面32から延びた状態で示されている。ネック40の、プラテンと呼ばれる遠位部分42も、弾性マトリックス30内に少なくとも部分的に取り囲まれ、弾性マトリックス30に接続される。」
ウ「【0044】
図2Bを参照すると、1つの実施態様において、図2Aに示すブラシヘッドアセンブリ100のA-Aに沿う断面図の概略的な表示が提供されている。この断面図は、弾性マトリックス30内に配置される幾つかの個々の保持リング50を示している。各個々の保持リング50は、第1の端51と、(第1の端51よりも弾性マトリックス30の第1の表面32により近接して位置付けられる)第2の端53と、内部空間59を形成する内壁55(内部空間59の各々は剛毛房によって充填される)と、外壁57とを含む。加えて、複数の剛毛房の各々は、近位端23と、自由端25とを含む。図2Bに示す各個々の剛毛房は、その近位端23にヘッド部分26を含む。ヘッド部分26は、保持リングの第1の端51に隣接して位置付けられ、保持リング50の第1の端51よりも大きい領域(面積)を有し、剛毛房は、保持リング50内に保持される。このヘッド部分26は、保持リング内に剛毛房を保持するのを助ける。」
エ「【0050】
図6を参照すると、1つの実施態様において、内部空間59を含み、外壁57及び内壁55を含む、複数の保持リングのうちの1つの保持リング50の実施例の側面図の概略的な表示が示されており、内部空間59内には複数の剛毛房のうちの1つの剛毛房21が保持され、外壁及び内壁の各々はテーパを含む。より具体的には、保持リング50は、相互に異なる外壁テーパ61及び内壁テーパ63を備えて示されている。例えば、内壁テーパ63は、保持リング50の第2の端53から開始して保持リング50の長さの4分の1と保持リング50の中間との間ぐらいまでより著しい。図6は、剛毛房21の近位端にあるヘッド部分26も示しており、ヘッド部分26は、保持リング50の第2の端53の外側で第2の端53に隣接して位置付けられ、保持リング50の第2の端53よりも大きい領域を有する。外壁テーパ61及び内壁テーパ63の多くの他の実施態様及び組み合わせが可能である。例えば、内壁テーパ63及び外壁テーパ61の各々の、(保持リング50の第2の端53で開始する)「頂」部分は、ヘッド部分26に順応するよう、より広くあり得る。」
オ「【0051】
ブラシヘッドアセンブリの製造方法
【0052】
ブラシヘッドアセンブリを製造するに際して、複数の保持リング50が提供され、それらの各々は、内部空間59を形成する内壁55と、外壁57とを含む。保持リング50は、ここに記載される或いはその他に予見される形状、大きさ、及び/又は構成のいずれかであり得る。例えば、複数の保持リング50は、同じ大きさ及び形状であってよく、或いは(非円形の形状を含む同じ又は異なる形状の外壁及び外壁を含む)多数の異なる大きさ及び形状であってよく、テーパを備える内壁及び/又は外壁を含んでよい。1つの実施態様では、複数の保持リング50のうちの2つ又はそれよりも多くは、ブラシヘッド内の保持リング及び剛毛房保持を向上させるために、網目又は網目リンク91の網状組織(network)によって接続され或いは少なくとも部分的に相互接続されるが、網目リンク91は不要であり、複数の個々の保持リング50を用い得る。代替的な実施態様によれば、例えば、複数の保持リング50を房リングによって或いは何らかの他の支持機構によって所定の場所に保持し得る。房リング又は他の支持機構は、1つ又はそれよりも多くの下流のステップに先立って取り外されてよく、或いは完全なブラシヘッドアセンブリの部分を形成してよい。
【0053】
(複数の剛毛束を含む)剛毛房21は、複数の保持リング50の各々の保持リングに挿入される。剛毛房21の各々は、近位端23及び自由端25を含み、近位端23が保持リング50内に挿入される。
【0054】
熱が複数の剛毛房21の近位端23に加えられ、近位端ヘッド部分26を創り出す。近位端ヘッド部分26は、剛毛房21の溶解端である。例えば、剛毛房21の近位端23と直接的に物理的に接触するようになる熱源によって熱を供給し得る。加えて、加熱空気又は任意の様々な他の熱源によって熱を供給し得る。幾つかの実施態様では、弾性マトリックス30及び剛毛房21の化学組成、従って、融点に依存して、複数の剛毛房21の近位端23の加熱を、以下の弾性マトリックス30を提供するステップと共に行い得る。
【0055】
ある実施態様によれば、熱は、少なくとも部分的に保持リングを剛毛房にも溶解させるのに十分な程に熱く且つ/或いは十分な程に長く適用される。これは剛毛房21内の個々の剛毛が保持リング50から脱ける或いは保持リング50の内側で動き回るのを更に防止する。
【0056】
次に、ブラシヘッドネック40は、剛毛房21が挿入された状態の保持リング50及び網目リンク91に対する適切な場所にプラテン42を置くよう、位置付けられる。例えば、プラテン42は、保持リング50内の剛毛房21のヘッド部分26の直ぐ上に位置付けられる。例えば、型又は他の位置付け機構を用いて、プラテン42を適切に位置付け得る。これは弾性材料を射出し得る空間を創り出す。
【0057】
弾性材料がプラテン42、剛毛房のヘッド部分26、及び保持リング50に亘って、並びに存在するならば網目リンク91に亘って、空間内に鋳込まれる。鋳込まれる弾性材料は、弾性マトリックス30を形成する。ある実施態様によれば、弾性マトリックス30は、フレキシブルな熱可塑性エラストマで作られるのが好ましいが、保持リング50は、ポリプロピレンのような、熱可塑性ポリマで作られるのが好ましい。この実施態様によれば、プラテン42及び保持リング50の各々は、弾性マトリックス30よりも高い弾性率を備える材料で作られる。ある実施態様(図示せず)によれば、ブラシヘッドのネック40及びプラテン42は型内に挿入され、型空洞から弾性材料が出るのを妨げる。図1Bに示すように、ネック40は、溶融弾性材料が型の空洞内に射出されるのを可能にする、1つ又はそれよりも多くのゲート41を含む。」
カ 図1A、図2B、図6として、次の事項が図示されている。
[図:0001423931000001.jpg]
[図:0001423931000002.jpg]
[図:0001423931000003.jpg]
キ 引用文献1の段落【0051】~【0057】(前記オ参照。)には、ブラシヘッドアセンブリの製造方法が記載されており、そのうち、段落【0053】には、剛毛房21の近位端23を保持リング50内に挿入することが記載されている。そして、この保持リング50内に剛毛房21の近位端23を挿入することは、段落【0050】(前記エ参照。)の「内部空間59内には複数の剛毛房のうちの1つの剛毛房21が保持され」るという記載を踏まえると、保持リング50における内部空間59に剛毛房21を挿入するステップであるといえる。
ク 同じく、引用文献1の段落【0051】~【0057】(前記オ参照。)に記載された、ブラシヘッドアセンブリの製造方法のうち、段落【0054】及び【0055】に記載された事項は、剛毛房21の溶解端である近位端ヘッド部分26を創り出すステップであるといえる。
また、この段落【0054】及び【0055】の記載によると、熱源による熱は、複数の剛毛房21の近位端23に供給されるとともに、少なくとも部分的に保持リング50を剛毛房21にも溶解させるのに十分な程に供給されることが把握できる。そして、段落【0050】(前記エ参照。)の記載及び図6(前記カ参照。)の図示内容も考慮すると、この熱源による熱は、剛毛房21の近位端23の他、保持リング50の第2の端53に供給され、剛毛房21の近位端23と保持リング50の第2の端53をともに溶解させているといえる。さらに、段落【0056】の「剛毛房21が挿入された状態の保持リング50」という記載も踏まえると、段落【0054】及び【0055】に記載された、剛毛房21の溶解端である近位端ヘッド部分26を創り出すステップは、剛毛房21が挿入された状態の保持リング50に該近位端ヘッド部分26を創り出すものといえる。
以上によると、剛毛房21の近位端23と保持リング50の第2の端53とに熱源による熱が供給され、剛毛房21の近位端23と保持リング50の第2の端53をともに溶解し、剛毛房21が挿入された状態の保持リング50に剛毛房21の溶解端である近位端ヘッド部分26を創り出すステップが把握できる。
なお、審判請求人は、令和6年7月8日に提出した意見書の「2.理由」「(2)理由1について」において、「上記参照箇所(当審注:[0044]及び図2B等が参照箇所として記載されている。)に鑑みれば、[0050]及び図6における第2の端53は、第1の端51の誤記と思われる」と主張している。確かに、段落【0044】(前記ウ参照。)の記載及び図2B(前記カ参照。)の図示内容によると、近位端ヘッド部分26は、保持リング50の第1の端51に隣接して位置付けられていることが把握でき、一方、段落【0050】(前記エ参照。)の記載及び図6(前記カ参照。)の図示内容によると、近位端ヘッド部分26は、保持リング50の第2の端53に隣接して位置付けられていることが把握できるから、両者は矛盾している。したがって、両者のうち、いずれかの記載に誤りがあると解されるが、引用文献1の特許請求の範囲の請求項1(前記ア参照。)に「保持リングの第2の端の外部に隣接する前記剛毛房のヘッド部分」と記載され、請求項13(前記ア参照。)に「保持リングの前記第2の端の外部に隣接する近位ヘッド部分」と記載されていることを踏まえ、段落【0044】の記載及び図2Bの図示内容に誤りがあり、段落【0050】の記載及び図6の図示内容が正しい、つまり、近位端ヘッド部分26は、保持リング50の第2の端53に隣接して位置付けられていると解して、引用文献1に記載された事項を把握することとした。
ケ 前記クに示した事項を踏まえると、引用文献1の段落【0050】(前記エ参照。)の記載から、近位端ヘッド部分26は、保持リング50の第2の端53の外側で第2の端53に隣接して位置付けられることが把握できる。
コ 前記キ及びクに示した事項を踏まえると、引用文献1の段落【0051】~【0057】(前記オ参照。)に記載された、ブラシヘッドアセンブリの製造方法のうち、段落【0053】~【0055】には、ブラシヘッドアセンブリのための剛毛房21が挿入された状態の保持リング50に剛毛房21の溶解端である近位端ヘッド部分26を創り出す方法が記載されているといえる。
(2)引用発明
引用文献1の前記(1)ア~コの記載及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ブラシヘッドアセンブリのための剛毛房21が挿入された状態の保持リング50に剛毛房21の溶解端である近位端ヘッド部分26を創り出す方法であって、
保持リング50における内部空間59に剛毛房21を挿入するステップと、
前記剛毛房21の近位端23と前記保持リング50の第2の端53とに熱源による熱が供給され、前記剛毛房21の前記近位端23と前記保持リング50の前記第2の端53をともに溶解し、剛毛房21が挿入された状態の保持リング50に剛毛房21の溶解端である近位端ヘッド部分26を創り出すステップと、
を有し、
前記近位端ヘッド部分26が、前記保持リング50の第2の端53の外側で第2の端53に隣接して位置付けられる、
方法。」
2 引用文献2
当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。
(1)「
[図:0001423931000004.jpg]
」(第3欄第4行~第19行)[当審訳:レーザ光線は、光線の発散が小さいことにより、加工表面上で均一なエネルギー密度によりレーザ光線の高い方向安定性を確保することができるため、本発明に従う方法では有利である。さらに、レーザ光線はスペクトル帯域幅が狭く、スペクトルエネルギー密度が高いため、比較的大きなエネルギー量を短いタクト時間で適用することができ、エネルギーによる作用を局所的に狭い範囲で制限できる。レーザ光線の高い時間的コヒーレンスと空間的コヒーレンスにより、一定のプロセス条件が確保され、高い加工精度と成形品品質が保証される。さらに、レーザ光線は非常に短い光パルスを生成できるため、エネルギーを非常に正確な量で適用できる。]
(2)「
[図:0001423931000005.jpg]
」(第6欄第28行~第33行)[当審訳:同様の方法で、ブラシ本体10には、下端に脚を備えていない毛の束13を溶着することも可能である(図1c)。図1dは、毛の束13の下端に形成された脚14を備える対応した実施形態を示す。ブラシ本体10の表面にへこみ15がある場合、図1eに従う毛の束13は、その脚14をへこみ15に挿入し、それによって前記方法でブラシ本体10に溶着できる。]
(3)「
[図:0001423931000006.jpg]
」(第6欄第51行~第59行)[当審訳:図4は、ブラシ本体10に止まり穴の代わりに毛12がブラシ本体10の裏側から突出するまで挿入される貫通穴18を備えたバリエーションを示す。次に、2つの構成要素は前記方法でレーザ光線を適用することによって溶着され、それによって突出した材料は、貫通穴18と毛12との隙間を埋めるように機能することができる。]
(4)FiG.1a~1f、FiG.4には、次の事項が図示されている。
[図:0001423931000007.jpg]
[図:0001423931000008.jpg]
3 引用文献3
当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献3には、図面とともに、次の記載がある。
(1)「【0033】
次に、図6に示すように用毛束3が用毛孔21に挿入された状態で、図7(a)に示すように、挿入された用毛束3の植毛孔21から(背面200a側に)突出する片端部を加熱して、図7(b)に示すように仮固定する(仮固定工程)。仮固定部32は少なくとも用毛束3の周囲部の用毛300が溶融接着していることが好ましく、用毛束3の全ての用毛300が溶融接着していることが更に好ましい。
第1実施態様においては、非接触式溶融手段(図示せず)を用いて、図7(a),(b)に示すように、用毛束3の片端部を加熱して仮固定部32を形成して、用毛300で構成される用毛束3が束状を維持するように仮固定する。」
(2)「【0037】
次に、図7(c),(d)に示すように、植毛孔21の開口周縁部210を溶融変形させ植毛孔21の開口面積を狭くして、仮固定された用毛束3の外周31に開口周縁部210を密着させる(密着工程)。第1実施態様においては、図7(c)に示すように、植毛孔21の開口周縁部210を非接触式溶融手段(図示せず)で加熱して、図7(d)に示すように、開口周縁部210等を溶融変形させて植毛孔21の上方側の開口面積を狭くし、開口周縁部210等を用毛束3の外周31に密着させる。この開口周縁部210及び開口内周面部211の用毛束3の外周31への密着は、樹脂の溶融流動、溶融後の固化収縮及び樹脂の弾性変形等による。
【0038】
前記溶融流動については、開口周縁部210にテーパー状の部分があることで、溶融樹脂が該テーパー状の部分に沿って用毛束3の挿入方向に流動する為、用毛束3と植毛孔21の変形密着が一層効果的になされる。
【0039】
次に、図7(e),(f)に示すように、密着した用毛束3における仮固定された片端部を加熱して溶融塊33を形成する(熱加工工程)。第1実施態様においては、図7(e)に示すように、用毛束3の片端部に形成された仮固定部32を非接触式溶融手段で更に加熱し、図7(f)に示すように、溶融塊33を形成して当該溶融塊33と植毛孔21の開口周縁部210とを固着させる。このとき、溶融塊33を押圧せずに形成できれば、用毛束3に応力がかかり難く用毛300のねじれや乱れが発生し難く、一層程度の高い植毛状態が達成できる。また、溶融塊33形成後に押圧手段(図示せず)で用毛束3の配向に影響を与えない範囲で溶融箇所(溶融塊33が固まる前のもの)を押圧し、溶融塊33と開口周縁部210との密着性をさらに高めることもできる。」
(3)「【0041】
第1実施態様において、前記非接触式溶融手段はレーザービームであり、仮固定部32の形成、開口周縁部210等の溶融変形及び溶融塊33の形成手段として、所定のレーザー発振器からレーザービームを照射する方法が採用されている。この方法は、個々の溶融塊を必要形状に精度良く且つ効率よく形成する上で好ましい。密着工程と熱加工工程とで、非接触式溶融手段は同じ装置を用いてもよく、別の装置で行ってもよい。」
(4)「【0052】
非接触式溶融手段としてレーザービームを用いると、仮固定部32又は溶融塊33の形成時にかかる用毛300への応力も低く抑えることができる。さらにレーザービームでは、仮固定部32又は溶融塊33の形成時に、溶融する箇所のみに熱を加え、加熱不要な部分には熱を加えないようにすることができる。また、植毛基板20の植毛孔開口周縁部210等の溶融についても、狭い範囲での集中溶融が可能であり不要な部分への熱影響が少ない。これらの点からも、熱風方式や全体的に熱源でプレスする方式に比べ、植毛基部2の変形やそりが極めて小さい歯ブラシの製造が可能となる。」
(5)図7には、次の事項が図示されている。
【図7】
[図:0001423931000009.jpg]
4 引用文献4
当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献4には、図面とともに、次の記載がある。
(1)「【0039】
次に、図9に示すように、用毛束3の片端部を非接触式溶融手段で溶融し、溶融塊30を形成して当該溶融塊30と植毛孔21の開口周縁部210とを固着させる。このとき、溶融塊30を押圧せずに形成すると、用毛束3に応力がかからず、用毛のねじれや乱れが無く、高品質な植毛状態を維持できる。植毛基部20と被覆材4との接着面積や用毛束3の配向に影響を与えない範囲で押圧手段(図示せず)で溶融箇所を押圧し、溶融塊30と開口周縁部210との密着性をさらに高めることもできる。
【0040】
本実施形態では、前記非接触式溶融手段による溶融塊30の形成手段として、所定のレーザー発振器からレーザービームを照射する方法が採用される。この方法では、個々の溶融塊30を必要形状に精度良く且つ効率よく形成する上で好ましい。
【0041】
本実施形態においては、レーザー発振器から結像レンズに至るレーザー光の光路において、植毛孔21及び各用毛束3の片端部の断面形態に応じ、予め記憶部に登録された照射パターン(走査パターン)に基づいて、コントローラーが前記光路内に配された反射鏡の角度をサーボー制御するとともにフォーカスレンズの位置を制御することで、結像レンズから照射されるレーザービームを正確に各用毛束3の片端部に走査照射する。
【0042】
前記レーザービームのビームの太さ(ビーム径)は、植毛孔21及び用毛束3の断面形態、数、位置等に応じて適宜設定する。
本実施形態では、個々の植毛孔21の開口周縁部210及び個々の用毛束3の片端部に走査照射するために、ビーム径は0.1~4mmであることが好ましい。なお、レーザービームのエネルギーを高めて細かな走査形態で、個々の植毛孔21の開口周縁部210の溶融変形並びに個々の用毛束3に溶融塊30を形成する場合は、0.1~1mmであることがより好ましい。
【0043】
前記レーザービームの照射パターンについては、前記各用毛束3の用毛の長さ、各用毛束3の断面寸法、各用毛束3の植毛基部20における植毛位置、各用毛束3の植毛基部20に対する角度、各用毛束の用毛密度、各用毛束の用毛の種類(太さ、色(光吸収率))や先端形状等に基づいて、最適なパラメーター(照射スポット径、照射熱量、照射時間、走査速度、走査ピッチなど)を設定し、個々の用毛束3に対応した走査照射を行うことで、良好な溶融塊30の形成がなされる。」
(2)「【0048】
レーザービームの走査照射は、用毛束3の高い部分(多く溶融させたい部分)に集中して熱量を与えることができるほか、走査ピッチを部分的に狭くしたり、走査速度を部分的に変更し、必要な部分に集中して溶融熱量を多く加えることができるため、その特徴を活した適切な形態の溶融塊を形成することができる。
【0049】
非接触式溶融手段としてレーザービームを用いると、溶融塊30の形成時にかかる用毛への応力も低く抑えることができる。特にレーザービームでは、溶融塊30の形成時に、溶融する箇所のみに熱を加え、加熱不要な部分には熱を加えないようにすることができるので、熱風方式や熱プレス方式などに比べ、植毛基部20の変形やそりが極めて小さい歯ブラシの製造が可能となる。」
(3)図9には、次の事項が図示されている。
[図:0001423931000010.jpg]
第5 対比・判断
1 対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「ブラシヘッドアセンブリ」、「剛毛房21」、「保持リング50」及び「近位端ヘッド部分26」は、それぞれ本願発明の「ブラシヘッド」、「毛房」、「保持要素」及び「近位端ヘッド部」に相当し、引用発明の「剛毛房21」、「保持リング50」及び「近位端ヘッド部分26」を合わせたものは、「剛毛房21が挿入された状態の保持リング50に剛毛房21の溶解端である近位端ヘッド部分26を創り出す」ことにより、一体化されるものであって、本願発明の「房アセンブリ」に相当する。また、引用発明の「剛毛房21が挿入された状態の保持リング50に剛毛房21の溶解端である近位端ヘッド部分26を創り出す」という事項は、「前記剛毛房21の前記近位端23と前記保持リング50の前記第2の端53をともに溶解し」、該近位端ヘッド部分26を創り出すものであるから、剛毛房21と保持リング50とが溶解後、固まって一体化された剛毛房21、保持リング50及び近位端ヘッド部分26を創り出しているといえ、該一体化は溶接によるものといえるから、本願発明の「溶接された房アセンブリを製造する」という事項に相当する。
すると、引用発明の「ブラシヘッドアセンブリのための剛毛房21が挿入された状態の保持リング50に剛毛房21の溶解端である近位端ヘッド部分26を創り出す方法」は、本願発明の「ブラシヘッドのための溶接された房アセンブリを製造するための方法」に相当する。
(2)引用発明の「内部空間59」は、本願発明の「開口」に相当し、引用発明の「保持リング50における内部空間59に剛毛房21を挿入するステップ」は、本願発明の「保持要素における開口に少なくとも1つの毛房を挿入するステップ」に相当する。
(3)引用発明の「剛毛房21の近位端23」、「保持リング50の第2の端53」及び「溶解」は、それぞれ本願発明の「毛房の近位端」、「保持要素の近位側」及び「溶融」に相当し、引用発明の「前記剛毛房21の前記近位端23と前記保持リング50の前記第2の端53をともに溶解し」という事項は、本願発明の「前記毛房と前記保持要素の近位側の少なくとも一部をともに溶融し」という事項に相当する。
そして、引用発明の「前記剛毛房21の近位端23と前記保持リング50の第2の端53とに熱源による熱が供給され、前記剛毛房21の前記近位端23と前記保持リング50の前記第2の端53をともに溶解し、剛毛房21が挿入された状態の保持リング50に剛毛房21の溶解端である近位端ヘッド部分26を創り出すステップ」は、熱が供給され、溶解した剛毛房21及び保持リング50が、固まって、剛毛房21及び保持リング50を一体化する近位端ヘッド部分26を創り出すものであり、該一体化は溶接によるものといえるから、本願発明の「前記毛房の近位端と前記保持要素の近位側とをレーザ溶接して、前記毛房と前記保持要素の近位側の少なくとも一部をともに溶融し、溶接された房アセンブリを保持する結合された近位端ヘッド部を生成するステップ」と、毛房の近位端と保持要素の近位側とに熱を供給して、前記毛房と前記保持要素の近位側の少なくとも一部をともに溶融し、溶接された房アセンブリを保持する結合された近位端ヘッド部を生成するステップである点において共通する。
(4)そうすると、本願発明と引用発明とは、
「ブラシヘッドのための溶接された房アセンブリを製造するための方法であって、
保持要素における開口に少なくとも1つの毛房を挿入するステップと、
前記毛房の近位端と前記保持要素の近位側とに熱を供給して、前記毛房と前記保持要素の近位側の少なくとも一部をともに溶融し、溶接された房アセンブリを保持する結合された近位端ヘッド部を生成するステップと、
を有する、
方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
熱を供給することについて、本願発明は、毛房の近位端と保持要素の近位側とを「レーザ溶接して」いるのに対し、引用発明は、剛毛房21の近位端23と保持リング50の第2の端53とに熱源による熱が供給されるものの、レーザによるものか明らかでない点。
<相違点2>
本願発明は、「前記近位端ヘッド部が、前記保持要素の近位側と略同じ高さにある」のに対し、引用発明は、「前記近位端ヘッド部分26が、前記保持リング50の第2の端53の外側で第2の端53に隣接して位置付けられる」ものであり、近位端ヘッド部分26が、保持リング50の第2の端53と略同じ高さとはいえない点。
2 判断
(1)相違点について
以下、<相違点1>、<相違点2>について検討する。
ア <相違点1>について
引用文献1の段落【0054】(第4 1(1)オ参照。)には、近位端ヘッド部分26を創り出す際に、剛毛房21の近位端23等を溶解させるための熱源として、任意の様々な熱源を用いることができる旨の記載があり、剛毛房21の近位端23等に任意の様々な手段で熱を供給し得ることが示唆されている。
そして、ブラシの毛房を溶解させて固定するために熱を供給する手段として、レーザを用いることは、例えば、引用文献2の第3欄第4行~第19行、第6欄第28行~第33行、第51行~第59行、FiG.1a~1f、FiG.4(第4 2(1)~(4)参照。)、引用文献3の段落【0033】、【0037】~【0039】、【0041】、【0052】、図7(第4 3(1)~(5)参照。)、引用文献4の段落【0039】~【0043】、【0048】、【0049】、図9(第4 4(1)~(3)参照。)等に記載されているように、この出願の優先日前から周知の事項である。また、該レーザを用いることにより、溶接の精度や効率が向上することも、引用文献2の第3欄第4行~第19行(第4 2(1)参照。)、引用文献3の段落【0052】(第4 3(4)参照。)、引用文献4の段落【0048】、【0049】(第4 4(2)参照。)に示唆されているように、同様に周知の事項である。
以上を踏まえると、引用発明において、剛毛房21の近位端23と保持リング50の第2の端53に熱を供給する手段として、様々な手段の中から、近位端ヘッド部分26を精度良く、また効率良く、創り出すべく、前記周知の事項であるレーザを採用し、本願発明の相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
イ <相違点2>について
引用発明の近位端ヘッド部分26の機能は、引用文献1の段落【0044】(第4 1(1)ウ参照。)の記載によると、「保持リング内に剛毛房を保持するのを助ける。」ことであり、当業者であれば、該機能を奏する範囲で、近位端ヘッド部分26に必要とされる強度、そのための溶解の程度、溶解させる範囲や、近位端ヘッド部分26を創り出すための時間、コスト等を考慮の上、近位端ヘッド部分26を創り出すために供給する熱の量、時間、位置等を調整し、近位端ヘッド部分26の形状、配置等を任意に設計し得るものである。また、毛房の近位端を溶解させたヘッド部分を、毛房を保持する部材の端部と略同じ高さとすること自体、引用文献2の第6欄第51行~第59行、FiG.4(第4 2(3)及び(4)参照。)に示唆されているように、格別のものではない。
以上を踏まえると、引用発明の近位端ヘッド部分26を創り出すステップにおいて、剛毛房21の近位端23と保持リング50の第2の端53へ供給する熱を調整し、本願発明の相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(2)本願発明の作用効果について
本願発明の「前記近位端ヘッド部が、前記保持要素の近位側と略同じ高さにある」という事項について、この出願の明細書には、段落【0023】に「図2Aに示されるように、結合された近位端ヘッド部26は、保持要素52の近位端23と略同一面上にあるか、又は図2Bに示されるように、結合された近位端ヘッド部26は、ドーム状又はキノコ型の形状を持つよう形成されても良い。」と記載されているのみであり、「前記近位端ヘッド部が、前記保持要素の近位側と略同じ高さにある」構成を備えることによる、格別の作用効果は認められない。
そして、本願発明の「ここでの種々の実施例及び実装例を用いて、コスト効率が良く効率的なブラシヘッドの製造が、かなり改善される」(段落【0005】)という作用効果は、引用発明及び前記周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。
(3)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和6年7月8日に提出した意見書の「2.理由」の「(2)理由1について」において、引用文献1は、本願発明の「前記近位端ヘッド部が、前記保持要素の近位側と略同じ高さにある」構成を何ら開示していない旨を主張している。
しかしながら、前記構成を備えることは、前記(1)イに示したように、引用発明の近位端ヘッド部分26を創り出すステップにおいて、剛毛房21の近位端23と保持リング50の第2の端53へ供給する熱を調整し、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、審判請求人の主張は、採用できない。
3 まとめ
そうすると、本願発明は、引用発明及び前記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-009891