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特許拒絶査定不服審判

2023-008922

組織学的試料のための試薬のインクジェット沈着

審判番号
2023-008922
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-051403外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年05月31日
審決日
2024年04月17日
公報発行日
2024年10月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021- 51403「組織学的試料のための試薬のインクジェット沈着」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 7月26日出願公開、特開2021-105612〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

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本件出願(以下「本願」という。)は、2016年(平成28年)4月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年4月20日(以下、「優先日」という。) (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2017-554833号の一部を令和3年3月25日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和3年 4月23日 :手続補正書の提出
令和4年 5月 9日付け:拒絶理由通知
令和4年 7月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 9月 2日付け:拒絶理由通知
令和4年 12月 6日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 2月 6日付け:拒絶査定
令和5年 5月31日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和5年 11月24日 :上申書の提出

第2 令和5年5月31日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和5年5月31日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1) 令和4年12月6日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正前発明」という。)は、以下のとおりである。なお、当審において本件補正発明の各構成単位冒頭に「A」などの分説番号を付した。以下、該各構成単位について、該分説番号を用い「構成A」などということがある。

「 【請求項1】
2A スライド上に沈着された生物学的試料に試薬組成物を分配する方法であって:
2B 360nL/in2~14.4μL/in2の間の試薬組成物を、圧電沈着装置を用いて、パスを通じてスライド上に沈着された生物学的試料に分配する、ここで、当該分配はあらかじめ決定された分配パターンに基づく、当該あらかじめ決定された分配パターンは、(i)生物学的試料の画像において、当該試薬組成物を適用するための、生物学的試料の1またはそれより多い領域を同定し、そして(ii)当該1またはそれより多い同定された領域のx-y座標を決定することにより生成される
ことを含む、前記方法。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)は、以下のとおりである。分説番号について、本件補正前発明と同様。(下線は、補正箇所を示すため、当審で付した。)

「 【請求項1】
A スライド上に沈着された生物学的試料に試薬組成物を分配する方法であって:
B 55.8nL/cm2~2.2μL/cm2の間の試薬組成物を、圧電沈着装置を用いて、パスを通じてスライド上に沈着された生物学的試料に分配する、ここで、当該分配はあらかじめ決定された分配パターンに基づく、当該あらかじめ決定された分配パターンは、(i)生物学的試料の画像において、当該試薬組成物を適用するための、生物学的試料の1またはそれより多い領域を同定し、そして(ii)当該1またはそれより多い同定された領域のx-y座標を決定することにより生成される ことを含み、
C 当該試薬組成物は一次染色試薬を含む、 前記方法」

2 補正の適否について

(1)本件補正

本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、以下に挙げる補正事項を含むものである。

ア 補正事項1

本件補正前発明の構成2Bにおける「360nL/in2~14.4μL/in2」との記載を、「55.8nL/cm2~2.2μL/cm2」(構成2B)との記載にする補正。

イ 補正事項2

本件補正前発明における「試薬組成物」が、「一次染色試薬を含む」ものである点を限定する補正。

(2)補正の目的

ア 上記補正事項1は、令和4年9月2日付け拒絶理由通知及び令和5年2月6日付けの拒絶査定のなお書きにおいて、「in」という単位は計量法に基づくものでない点が指摘されていた記載について、単位換算を行い、平方センチメートル(cm2)あたりの量で規定するようにしたものであるから、補正事項1は、特許法第17条の2第5項4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

イ 補正事項2については、本件補正前発明を特定するために必要な事項である「試薬組成物」を、「一次染色試薬を含む」ものに限定するものであつて、本件補正前発明と本件補正発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、補正事項2は、特許法第17条の2第5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮)を目的とする補正に該当する。

(3) 以上のとおり、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、少なくとも補正事項2の点において、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものを含むことから、本件補正発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

ア 引用文献の記載事項

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(ア) 引用文献1

a 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2003-130866号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。

「【0011】微小反応機構部には、数pl(ピコリットル)以下ないし数十nl(ナノリットル)の液を吸引・滴下する微小ノズル機構部をもうけてもよい。そのノズル機構の位置を制御する2次元または3次元移動機構部及び微小領域の洗浄機構部を備える。また、反応させるための試薬液を保管する試薬保管機能も備えることができる。
【0012】微小ノズル機構部は、試薬液を目的の領域に連続的にまたは間欠的に滴下する機能、または滴下・吸引を繰り返す機能を有する。これにより、試薬液の反応効率が向上し、反応時間の短縮が可能になる。また試薬液を高濃度の溶液とすることで、反応効率の向上,反応時間の短縮を可能にする。なお、必要に応じ、少なくとも標本の微小領域部分で湿度を制御できる加湿機構または温度を制御できる恒温機能を備える。加湿機構と恒温機能の両者をそなえていてもよい。微小反応手段により反応操作した後の標本の画像、例えばハイブリダイゼーション蛍光画像または発光画像,免疫染色蛍光画像または発光画像等を測定し記録表示する画像測定記録表示機能及びその制御のための画像処理機能を備える。
【0013】また、上記目的を達成するため、測定対象の標本の透過画像(非染色での微分干渉像または位相差像,染色標本の透過カラー画像等)を測定・記録する機能、また、透過画像から特徴を抽出して、詳細を調べるべき注目領域を決定またはサポートする領域選別機能、さらに、選別した領域の透過画像と位置情報を記憶するデータ記録機能を備えることで、自動化が実現できる。」

「【0016】特に、本発明によれば細胞塗抹標本,組織標本等を観察・検査するために必要な試薬を滴下し反応させ画像等で測定・解析する方法であって、少なくとも標本の一部の領域の透過画像を測定し、透過画像から注目すべき微小領域を選別し、注目すべき該微小領域の位置情報を位置情報に基づき標本を移動させ、数pl以下~数十nlの試薬を一滴または連続的または間欠的に滴下して反応させ、該微小領域の部分の画像を測定することを特徴とする標本中の微小領域測定方法を提供することができる。」

「【0021】〔実施例1〕図1に本発明の微小領域測定装置の構成図を示す。標本には、スライドガラスに貼りつけた組織切片または塗抹標本を使用し、周知のようなin situ ハイブリダイゼーション法等の手順に従い用意する。スライドガラス1a,1b...は標本ストッカー2に挿入し、標本ストッカー2を装置本体に取り付けることで、挿入されている複数のスライドガラスが順番に処理される。スライドガラス1aはスライドガラスローダ3により、測定用のステージ5に運ばれる。その際、バーコードリーダ4を通過する事によりスライドガラスが識別され、標本の情報として記録される。ステージ5上のスライドガラス1aは、移動機構部6により移動でき、スライドガラス全面にわたって画像測定ができるようになっている。
【0022】まず、ステージ5上に運ばれたスライドガラス1aは、透過照明光源7及びコンデンサレンズ8により上方からケーラー照明され、その透過光は対物レンズ9,励起光照明用フィルターミラーユニット10,光路切替部11,結像レンズ12を通過して、光検出器13により検出される。光検出器として2次元CCDカメラ等を使えば、そのまま透過光像として測定される。一般に測定視野はスライドガラスまたは標本の全面よりも小さいため、標本の全面の像を得るためには、移動機構部6により、視野をずらして複数枚の画像を取得し、合成する必要がある。光検出器として光電子増倍管等を使う場合は、必要な分解能まで照明光を細く絞り、移動機構部6によりスライドガラスを2次元に走査しながら、透過光強度を検出していくことにより、標本の全面の像を取得できる。その際、RGB3色のフィルタを介して順番に取ることにより、カラー画像を得ることもできる。
【0023】透過光測定の時は、励起光照明用フィルターミラーユニット10と光路切替部11は素通しである。また、透過光像として、微分干渉像,位相差像等にすることも可能であり、目的に合わせて変更できる。その際は周知のように偏光板等の光学素子を適切な位置に追加する必要がある。測定した画像データはメモリ,CPUを含む制御装置17に蓄えられ、画像合成などを行い、モニタ18に表示などする。得られた画像から、オペレータが設定したパラメータ条件に基づき、複数の注目領域を選び出し、領域番号、その位置を記録する。その際、それらの領域近傍をより高解像度で再測定し、高解像度透過光像を記録しておくとより詳細な解析が可能になる。
【0024】選ばれた注目領域に対して、その部分のみに標識プローブを含む反応試薬を滴下し、ハイブリダイゼーションや免疫染色などを局所的に行う。これらは微小反応機構部19により行う。微小反応機構部19は標本の上部に配置されており、反応操作時、透過照明光源7及びコンデンサレンズ8が横にずれ、微小反応機構部19が標本の真上部に移動する。
【0025】微小反応機構部19は図2及び図3に示すような構成になっている。図2は試薬液の分注機構部の構成図であり、標識プローブ液などの試薬液を分注するための微小ノズル部100,移動機構101,シリンジポンプ102,ノズル洗浄液103、及び試薬104で構成される。図3は洗浄機構部の構成図である。洗浄ノズル110は内管111,外管112の2重管構造をしており、洗浄液115を送液ポンプ113により内管の先端から送出し、吸引ポンプ114により外管112から吸引する構造となっており、微小領域を洗浄できる。
【0026】注目領域の位置に一致するように、移動機構部6及び移動機構を有する微小反応機構部19を調整し、数十nl以下の液滴を注目領域の標本部に分注する。通常は細胞1個~数個分の領域に試薬を滴下するので、通常は数plから十数plの液を滴下する。この試薬液は、反応速度を速めるため、通常適用される周知の試薬濃度より数倍から数十倍の濃度の試薬液を使う。また、さらに反応効率を向上させるために、滴下を連続的にまたは間欠的に行ったり、滴下と吸引を繰り返して、攪拌効果を持たせることで反応時間が短縮できるようになる。反応後は、図3の様な機構により反応領域を洗浄する。これにより、微小領域での反応時間を短縮することができるようになる。反応は標本ひいてはスライドガラス全面に対して行わず、異常細胞などの注目すべき特定の位置,領域に対して実施するので、試薬液量を低減が可能である。」

「【0030】以上により、通常染色像または非染色透過光像を基に、異常細胞などの注目領域を識別し、その領域で迅速なハイブリダイゼーション,免疫染色等の反応操作を行い、ハイブリダイズ像や免疫染色像を測定し、より詳細な情報を迅速に得ることができるようになる。特に蛍光像と透過光像との位置情報が正確に規定されるため、像の位置対応関係が明確であり、蛍光DNAプローブの局在を細胞像等の透過光像に照らし合わせて比較することができ、より詳細な解析が可能になる。また、図2に記載の分注機構部の替わりに、圧電素子などを使ったインクジェット方式の構成でも同様に実現できる。この場合、滴下がより高速にできる。なお、反応操作時には、反応領域の温度湿度を制御できる恒温恒湿ユニットをスライドガラス上部に配置するか、または全体が恒温恒湿槽内に配置することで、反応をより安定に行うことができる。また、上記実施例は、個々のスライドガラス標本に対して、透過光像測定,反応,蛍光像測定と順番に行っているが、すべてのスライドガラス標本に対して透過光像測定を行った後、反応,蛍光像測定を行ってもよい。そのために、スライドガラス標本には位置決め用のマーカが記され、その読みとり機能部を設けている(図示していない)。また、同一標本において、通常染色像または非染色透過光像を得ることができ、遺伝子や抗体の局在と、細胞像との比較が迅速に且つ容易に行えるようになる。」

「図1
[図:0001414793000001.jpg]
」

b 看取・認定事項

(a)上記aの摘記事項からすると、引用文献1に記載の「反応試薬」、「試薬液」、「試薬」は、全て同一のものを指すと認められるから、表記を「反応試薬」に統一する。

(b)【0030】の記載「また、図2に記載の分注機構部の替わりに、圧電素子などを使ったインクジェット方式の構成でも同様に実現できる。」における「図2に記載の分注機構部」が、「微小反応機構部19」の構成の一例であること(【0025】)を踏まえると、【0026】に記載された「注目領域の位置に一致するように、移動機構部6及び移動機構を有する微小反応機構部19を調整し、数十nl以下の液滴を注目領域の標本部に分注する」ことを、上記【0030】の記載に従って「圧電素子などを使ったインクジェット方式の構成で」「同様に実現」した場合、「注目領域の位置に一致するように、移動機構部6及び」「圧電素子などを使ったインクジェット方式の構成」「を調整し、数十nl以下の液滴を注目領域の標本部に分注する」こととなるものと認められる。

(c)【0016】に記載された「位置情報に基づき標本を移動させ、数pl以下~数十nlの試薬を一滴または連続的または間欠的に滴下して反応させ」のように、標本における反応試薬の滴下位置の調整には「位置情報」が用いられるものと認められる。

c 引用発明

上記a及びbから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、各構成単位冒頭に、本願発明の分説記号「A~C」に概ね対応させて、「a~c」を用いた分説記号を付し、各構成単位の末尾の括弧内に認定の根拠となる記載箇所を示した。

「a スライドガラスに貼りつけた組織切片または細胞塗抹標本である標本に、標識プローブを含む反応試薬を滴下する方法であって、(【0016】、【0021】、【0024】)
b1 ステージ5上に運ばれたスライドガラス1aは、透過照明光源7及びコンデンサレンズ8により上方からケーラー照明され、その透過光は対物レンズ9,励起光照明用フィルターミラーユニット10,光路切替部11,結像レンズ12を通過して、2次元CCDカメラである光検出器13により、少なくとも標本の一部の領域の透過光像として検出され、(【0016】、【0022】、図1)
b2 得られた画像から、オペレータが設定したパラメータ条件に基づき、複数の注目領域を選び出し、選別した注目領域の透過画像と位置情報をデータ記録機能により記憶し、(【0013】、【0023】)
bc 選ばれた注目領域に対して、その部分のみに標識プローブを含む反応試薬を滴下し、免疫染色を局所的に行うため、注目領域の位置に一致するように、位置情報に基づき移動機構部6及び圧電素子を使ったインクジェット方式の構成を調整し、数plから十数plの反応試薬の液滴を注目領域の標本部に分注する、(【0016】、【0024】、【0026】、【0030】、図1、b(b)、b(c))
方法。」

(イ) 引用文献2

a 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2008-96245号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

「【0013】
本発明における生体標本は、固相化処理を受けていない生物の細胞または組織を含んでいる。細胞または組織は、生体内における微細構造をそのまま保持した状態のものを用いることができる。このような状態を得るために、細胞または組織が適当な包埋剤によって包埋されたものを用いることができる。生体内における微細構造を保持した生体標本を用いることができるため、本発明の方法によって解析することができる標的物質の局在は、生体内におけるのと同じものとして形態学的に検証することができる。前記生体標本は、ガラス製支持体、樹脂製支持体、金属製支持体等の支持体の表面に固着させて使用するか、または電気的にメンブレンに転写させて使用することができる。これらの標本は、必要に応じ、定法による染色、洗浄、脱塩等の前処理を行う。」
「【0021】
上述のようにして用意した生体標本上の特定の領域に対し、試薬溶液を分注する。本発明においては、分注方法としてインクジェット法を用い、試薬溶液の微小滴を前記特定の領域に供給し付着させる。本発明において用いるインクジェット法の機構としては、例えば機械的加圧パルス方式(ピエゾ)を利用したピエゾジェット法および、電気熱変換体による膜沸騰方式(バブルジェット)等を用いることができるが、これに限定されない。
【0022】
本発明の分注方法においては、インクジェット法を用いることにより、極微量の試薬を吐出することが可能となる。このとき、1個のインクジェット吐出部からの1回の吐出につき供給される試薬量(1液滴分の量)を例えば数pl程度に制御することができるが、インクジェットの機構によっては、さらに少ない量に制御することもできる。また、吐出を繰り返すことができるため、試薬を連続的に供給することが可能であり、このことからも分注する量の上限は特に限定されない。特定の1つの領域に対しては、例えばナノリットルレベル、通常100nl程度の試薬量を分注することができる。インクジェット吐出部が複数の吐出口を有し、同時に複数の液滴を吐出することにより特定の領域に試薬を供給する態様も本発明に含まれる。複数の液滴を重ね打ちすることにより、試薬の種類、濃度および吐出量をコントロールして処理することが可能である。」
「【0024】
本発明においては、例えば1pl程度の吐出によって直径10μm程度の極小の分注範囲を生じる。この極小の分注範囲を用いることにより、細胞の1つ1つを区別して、特定の細胞の範囲に位置する細孔への分注が可能となる。インクジェットの機構によってさらに小さい範囲に限局することもできる。細胞を区別して試薬処理するためには細孔間で試薬が混合しないことが望ましく、そのために分配される試薬は細孔間で分離されるように注入量を設定する必要がある。」
「【0031】
本発明において、生体標本中の標的物質である生体物質が抗原(ハプテンを含む)である場合、認識化のために免疫組織化学的手法を用いることができる。抗原としては、タンパク質、ペプチド、核酸、糖、脂質等が挙げられる。免疫組織化学的手法としては、常法を用いることができる。すなわち、蛍光抗体法、酵素抗体法、重金属抗体法、放射線同位元素抗体法等を特に限定されることなく用いることができる。また、これら方法においては、標識抗体法及び非標識抗体法、さらには直接抗体法及び間接抗体法を問わない。従ってこの場合、本発明における試薬としては、タンパク質、ペプチド、又はこれらに標識物質が導入されたもの等、すなわち一次抗体、二次抗体等が挙げられる。さらにこれら抗体に対して染色等の可視化を行う場合は染色剤等も挙げられる。」

b 引用文献2技術事項

上記aにより、引用文献2には、次の技術的事項(以下、「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「機械的加圧パルス方式(ピエゾ)を利用したピエゾジェット法の機構を有するインクジェット法を用いて、一次抗体、二次抗体等の標識物質が導入されたタンパク質、ペプチドである試薬溶液の微小滴を、ガラス製支持体の表面に固着させた生体標本上の特定の領域に供給し付着させる方法であって、インクジェット法では、1個のインクジェット吐出部からの1回の吐出につき供給される試薬量(1液滴分の量)を例えば数pl程度に制御することができ、1pl程度の吐出によって直径10μm程度の極小の分注範囲を生じる、方法。」

イ 引用発明との対比

(ア) 本件補正発明と引用発明とを対比する。

a 構成A

引用発明の構成aの「スライドガラス」、「組織切片または細胞塗抹標本である標本」、「標識プローブを含む反応試薬」は、それぞれ本件補正発明の構成Aの「スライド」、「生物学的試料」、「試薬組成物」に相当し、構成aの「滴下する方法」は、構成Aの「分配する方法」に相当する。

そして、引用発明の「スライドガラスに貼りつけた組織切片または細胞塗抹標本である標本」は、本件補正発明の「スライド上に沈着された生物学的試料」に相当する。

b 構成B

(a) 構成bcの「圧電素子を使ったインクジェット方式の構成」は、構成Bの「圧電沈着装置」に相当する。

そして、引用発明の「圧電素子を使ったインクジェット方式の構成を調整し、数plから十数plの反応試薬の液滴を注目領域の標本部に分注する」ことと、本件補正発明の「55.8nL/cm2~2.2μL/cm2の間の試薬組成物を、圧電沈着装置を用いて、パスを通じてスライド上に沈着された生物学的試料に分配する」こととは、「試薬組成物を、圧電沈着装置を用いて、スライド上に沈着された生物学的試料に分配する」点で共通する。

(b) 引用発明において、同一の「標本」について選択された「複数の注目領域」の「位置情報」(構成b2)の集まりは、それらに基づき「反応試薬の液滴」を「注目領域の標本部に分注」することが行われるものであるから(構成bc)、当該標本についての「分注」(分配)に先だって(あらかじめ)決定されている、「分注」(分配)のための情報である。してみると、同一の「標本」について選択された「複数の注目領域」の「位置情報」(構成b2)の集まりは、構成Bの「あらかじめ決定された分配パターン」に相当する。

(c) 引用発明の構成b1の「少なくとも標本の一部の領域の透過光像」は、本件補正発明の構成Bの「生物学的試料の画像」に相当する。

(d) 引用発明の構成b2の「選び出」された「複数の注目領域」は、本件補正発明の構成Bの「1」「より多い同定された領域」に相当する。

(e) 引用発明の構成bcによると、「選ばれた注目領域に対して、その部分のみに標識プローブを含む反応試薬を滴下し、免疫染色を局所的に行う」のであるから、構成b2の「複数の注目領域」は、「反応試薬」(「試薬組成物」に相当)を適用するための領域であるといえる。

(f) 引用発明の構成b2によると「選別した注目領域の」「位置情報をデータ記録機能により記憶し」ていることから、引用発明において、「選別した注目領域の」「位置情報」が決定されている、といえる。すると、上記(d)の認定事項も踏まえると、引用発明の構成b2と、本件補正発明の構成Bの「当該1またはそれより多い同定された領域のx-y座標を決定すること」とは、≪当該1より多い同定された領域の位置情報を決定すること≫である点で共通する構成を備える。

c 構成C

(a) 本件補正発明の構成Cの「一次染色試薬」に関連し、本願明細書には、次のように説明されている。

「【0049】
[0064]本明細書において、用語「一次染色剤」は、組織試料において、コントラストを増進する色素または類似の分子である。いくつかの態様において、一次染色剤は、細胞内または細胞上の生物学的構造を、特定の結合剤、例えば抗体の使用を伴わずに直接「標識する」ものである。」

(b) 引用発明の構成bcの「免疫染色」は、技術常識によれば色素等で標識した抗体を用いてサンプル中の抗原のみを可視化して検出する手法であるが、色素等で標識した抗体は、上記本願明細書に説明における「コントラストを増進する色素または類似の分子である」といえることから、引用発明における「免疫染色を局所的に行うため」に「滴下」される「標識プローブを含む反応試薬」は、本件補正発明の構成Cにおける「一次染色試薬」を含むものといえる。

上記本願明細書の記載では、「一次染色剤」として「抗体の使用を伴わずに直接「標識する」もの」が例示されているものの、当該例示は「いくつかの態様にお」ける例にすぎず、本件補正発明の「一次染色試薬」から抗体の使用を伴うものが排除されるとまで解すべき理由はない。

むしろ、本願特許請求の範囲において、本願の請求項1を引用して「試薬組成物」を限定具体化する請求項5において「前記試薬組成物は抗体を含む」と特定されていることから、試薬組成物は本質的な成分として「抗体」を含む場合があると解される。これは、請求項5を引用する請求項6において「前記試薬組成物は、界面活性剤および粘性修飾剤を更に含む」と記載されていることから、界面活性剤および粘性修飾剤については「更に」付加的に添加される成分であるが、「抗体」については「更に」付加的に添加される成分ではないことから、本質的な成分であるといえる。

(c)以上(a)及び(b)のとおりであるから、引用発明の「標識プローブを含む反応試薬」は、本件補正発明の構成Cの「一次染色試薬を含む」「試薬組成物」に相当する。

(イ) 以上のことから、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致する。

(一致点)

「A スライド上に沈着された生物学的試料に試薬組成物を分配する方法であって:
B’ 試薬組成物を、圧電沈着装置を用いて、スライド上に沈着された生物学的試料に分配する、ここで、当該分配はあらかじめ決定された分配パターンに基づく、当該あらかじめ決定された分配パターンは、(i)生物学的試料の画像において、当該試薬組成物を適用するための、生物学的試料の1またはそれより多い領域を同定し、そして(ii)当該1またはそれより多い同定された領域の位置情報を決定することにより生成される ことを含み、
C 当該試薬組成物は一次染色試薬を含む、 前記方法。」

本件補正発明と引用発明とは、以下の点で相違する。

(相違点1)

圧電沈着装置を用いて、スライド上に沈着された生物学的試料に分配することについて、本件補正発明は、「パスを通じて」分配するのに対し、引用発明では、「パスを通じて」分配するものであるか不明である点。

(相違点2)

圧電沈着装置を用いて、スライド上に沈着された生物学的試料に分配される試薬組成物が、本件補正発明では、「55.8nL/cm2~2.2μL/cm2の間」であるのに対し、引用発明では、「数plから十数plの反応試薬の液滴を注目領域の標本部に分注する」ものの、標本上の単位面積当たりの反応試薬の分注量が不明である点。

(相違点3)

同定された領域の位置情報が、本件補正発明では、x-y座標であるのに対し、引用発明では位置情報の具体的内容が不明である点。

ウ 判断

以下、相違点について検討する。

(ア) 相違点1について

a 本件補正発明の「パス」について、本願明細書にその定義について明確に記載されているわけではない。そこで、令和4年12月6日に提出された意見書を参照すると、同意見書には「本願発明における「パス」とは、試薬組成物を採取又は吸引した分配機構(圧電沈着装置又は圧電沈着システム)が、試料のある場所へ移動し、当該試料の上を往復して試薬組成物を分配する操作における、往復であることが理解できます。このような意味で「パス」は当業者に慣用されています(要すれば、参考資料1("https://sanryunews.com/2019/04/17/multi-and-single-pass/"より入手)を参照)。」と説明されている。また、同意見書に添付された参考資料1には、「一般的なインクジェットプリンタはマルチパス方式(またはシリアルヘッド方式とも言う)で、プリントヘッドが往復しインクを滴下します。この往復をPass(パス)と呼び、2Passなら、プリントヘッドが往復し2回重ね印刷を行って品質を上げていきます。」と記載され、さらに「シングルパス方式(またはラインヘッド方式とも言う)は、プリントヘッドを固定して搬送装置が移動し1Pass印刷を行います。」(下線は当審で付与した。)とも記載されている。

上記参考資料1の「シングルパス方式」のように、プリントヘッドが固定された印刷の場合にも、「パス」と称されることからすると、意見書で説明される「パス」における「往復」とは、分注機構自体が試料の場所へ移動した後元の場所へ戻ることに限られず、より一般に分注機構と滴下すべき試料の場所との相対的な位置関係が一致して1回の印刷が行われれば、1つの「パス」と呼ばれる動作が行われたものと解すべきである。

b 引用文献1には、「微小反応機構部19は標本の上部に配置されており、反応操作時、透過照明光源7及びコンデンサレンズ8が横にずれ、微小反応機構部19が標本の真上部に移動する。」(【0024】)、「注目領域の位置に一致するように、移動機構部6及び移動機構を有する微小反応機構部19を調整し、数十nl以下の液滴を注目領域の標本部に分注する。」(【0026】)と記載されているから、上記aで検討した本件補正発明の「パス」の解釈を踏まえると、引用文献1には、「試薬液を分注するための微小ノズル部100」等(【0025】)を有した「微小反応機構部19」が、「パスを通じて」「スライド上に沈着された生物学的試料に分配する」ことに相当する構成が記載されていると認められる。

そして、圧電沈着装置がパスを通じて液滴を分配することは、上記意見書に説明されているように、周知慣用技術であるから、「圧電素子を使ったインクジェット方式の構成」で「反応試薬の液滴を注目領域の標本部に分注する」引用発明において、「パスを通じて」「スライドガラスに貼りつけた組織切片または細胞塗抹標本である標本に、標識プローブを含む反応試薬を滴下する」ものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ) 相違点2について

引用文献2技術事項では、圧電機構を有するインクジェット法において、1液滴の量が1pl程度の吐出によって直径10μm程度の極小の分注範囲を生じており、当該分注範囲を平方センチメートル当たりの値に換算すると、1.27μL/cm2程度となる。

引用発明と引用文献2技術事項とは、いずれも圧電素子を使ったインクジェット方式の構成により、ガラス支持体に固着された生体標本上の特定の領域に数pl程度の抗体等の標識物質を含む試薬溶液を分注する技術である点で共通しているから、引用発明の注目領域の標本部に分注された反応試薬の液滴のサイズとして引用文献2技術事項における1.27μL/cm2程度を採用し、55.8nL/cm2~2.2μL/cm2の間となるようにすることに、何ら技術的困難性はなく、当業者が容易になし得たことである。

(ウ) 相違点3について

引用発明において、「選別した注目領域の」「位置情報」(構成b2)は、「2次元CCDカメラである光検出器13により」「検出され」た「透過光像」上の位置に関する情報であるから、2次元平面内の位置を表す情報である。そして、2次元平面内の位置を、x-y座標で表現することは、例示するまでもない周知技術であるから、引用発明の「位置情報」を、x-y座標で表現されたものとすることは、当業者であれば周知技術に基づき容易になし得たことである。

(エ)本件補正発明の奏する作用効果について

本件補正発明によってもたらされる効果は、引用文献1及び2の記載事項から当業者が予測し得る程度を超えるものとはいえない。

(オ) 請求人の主張について

請求人は、審判請求書において、引用文献1及び2には、標本中の選択された微小領域に、一次染色試薬を含む試薬組成物を分配することや試薬組成物を「パス」を通じて生物学的試料中の特定領域に分配することは記載や示唆されていない点を主張している。しかしながら、上記イ(ア)cで検討したように、引用文献1には、一次染色試薬を含む試薬組成物を分配することが記載されており、上記(イ)で検討したように、圧電沈着装置においてパスを通じて分配することは、周知慣用技術であるから、これらの構成により本件補正発明に進歩性を有することはない。

請求人は、審判請求書において、引用文献1の発明において、試薬液の滴下量を、引用文献2に記載された量に変更したとすれば、引用文献2の【0003】に記載された、試薬の拡散、流出による分布の拡大化、または、試薬の蒸発による反応条件の低下などの問題が発生し、引用文献1の発明の課題が解決できなくなるから、試薬液の滴下量を、本願発明で特定した量(55.8nL/cm2~2.2μL/cm2)に変更することは、当業者といえども容易なことではないと主張する。しかしながら、引用文献2に記載された、試薬の拡散、流出による分布の拡大化、または、試薬の蒸発による反応条件の低下などの問題は、「通常の1つの細胞径以内での情報取得を目的とした際」(【0003】)の問題であるところ、引用文献1は「通常は細胞1個~数個分の領域に試薬を滴下するので、通常は数plから十数plの液を滴下する。」(【0026】)のであるから、請求人の指摘する問題が発生し得ないことが明らかであるし、引用文献1に記載される滴下量「数plから十数pl」(【0026】)は、引用文献2に記載された滴下量「数pl程度」(【0022】)と同程度であるから、請求人の主張は根拠を欠く。

請求人は、引用文献1には、微小ノズル機構部として、圧電沈着装置を有するものは記載や示唆されていないと主張されているが、引用文献1の【0030】には「また、図2に記載の分注機構部の替わりに、圧電素子などを使ったインクジェット方式の構成でも同様に実現できる。」と記載されているから、請求人の主張は事実と異なる。

請求人は、引用文献1には、試薬を分配するための領域をどのように決定するか明記されず、x-y座標を決定するステップは教示されていないことを主張するが、引用発明において、「注目領域」が「得られた画像から、オペレータが設定したパラメータ条件に基づき」「選び出」されるものであることは明確であるし、x-y座標を決定することも、上記(ウ)に説示するとおり、当業者が容易になし得たことである。

以上のとおりであるから、請求人の主張は、いずれも採用できない。

(カ) したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2技術事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 小括

以上ア~ウにより、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 上申書の補正案について

請求人は、上申書において補正案を提示していることから、念のため補正案についても検討する。

(1) 上申書発明

請求人は、令和5年11月24日に提出された上申書において本件補正後の請求項1~42をさらに補正する補正案を示し、そのうち請求項1に係る発明(以下、「上申書発明」という。)は、本件補正発明の構成Aと構成Bの間に、「非混和性油を含有する保護液体層を前記生物学的試料の上に重層する、」(以下、「構成D」という)との構成が付加されたものである。

(2) 引用文献3

a 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、国際公開第2004/111610号(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。なお、原文に続けて、括弧書きで当審訳を示す。また、下線は、当審で付与した。

「[0036] As will be appreciated by one of skill in the art, if the cell array is to be used for diagnoses based on fluorescent in situ hybridization assay, the predetermined analyte or target within the cell samples may be a particular gene that can be detected with a commercially available nucleic acid probe. Similarly, if the cell array is to be used for diagnoses based on an immunohistochemistry assay, the predetermined analyte or target within the cell samples may be a particular protein that can be detected with a commercially available antibody. The antibody may be primarily labeled or capable of being detected with a subsequent reagent. Additionally, if the cell array is to be used for diagnosis based on a cytogenetic assay, the predetermined analyte is a chromosome that can be stained with a commercially available chromosome staining reagent. One of ordinary skill in the art will appreciate that the present invention is not limited to particular diagnostic assays that can be performed on a cell array, nor is the present invention intended to be limited to any particular predetermined analyte, whether commercially available or otherwise. Indeed, the cell arrays formed according to the methods described herein are amenable to any type of diagnostic, assay that benefits from discrete cell samples arranged substantially in a monolayer on a single substrate.」

([0036]当業者に理解されるように、細胞アレイが蛍光in situハイブリダイゼーションアッセイに基づく診断に使用される場合、細胞試料内の所定の被分析物または標的は、市販の核酸プローブで検出できる特定の遺伝子であってもよい。同様に、細胞アレイが免疫組織化学アッセイに基づく診断に使用される場合、細胞試料内の所定の被分析物または標的は、市販の抗体で検出可能な特定のタンパク質であってもよい。抗体は一次標識されていてもよいし、後続の試薬で検出可能であってもよい。さらに、細胞アレイが細胞遺伝学的アッセイに基づく診断に使用される場合、所定の被分析物は、市販の染色体染色試薬で染色可能な染色体である。当業者であれば、本発明が細胞アレイで実施可能な特定の診断アッセイに限定されるものではなく、また、市販されているか否かにかかわらず、本発明が特定の被分析物に限定されることを意図するものでもないことを理解できよう。実際、本明細書に記載された方法に従って形成された細胞アレイは、単一の基板上に実質的に単層で配置された離散的な細胞試料から利益を得るあらゆるタイプの診断アッセイに 適している。)

「[0039] As shown in FIG. 1, the dispensing apparatus 108 may be implemented using any. one of a number of commercially available reagent dispensers, piezoelectric dispensers, solenoid valve dispensers, and the like, although a solenoid valve, dispenser is preferred for general applications. While the selection of the dispenser head 128 is not critical to practicing the present invention, it has been found that a solenoid actuated valve dispenser provides good results when used in accordance with the teachings herein. Those of skill in the art will appreciate that other types of dispensers and valve actuation devices exist and may be used efficaciously. Examples of dispensers that may be used in the present invention include, for example, air brush dispensers, piezoelectric dispensers, fluid impulse dispensers, heat actuated dispensers, and the like.」

(図1に示すように、分注装置108は、市販の試薬ディスペンサー、圧電ディスペンサー、ソレノイドバルブディスペンサーなどのいずれかを使用して実施することができるが、一般的な用途にはソレノイドバルブディスペンサーが好ましい。ディスペンサーヘッド128の選択は本発明を実施する上で重要ではないが、本明細書の教示に従って使用する場合、ソレノイド作動バルブディスペンサーが良好な結果をもたらすことが判明している。当業者であれば、他のタイプのディスペンサーやバルブ作動装置が存在し、効果的に使用できることを理解するであろう。本発明で使用できるディスペンサーの例としては、例えば、エアブラシディスペンサー、圧電ディスペンサー、流体インパルスディスペンサー、熱作動ディスペンサーなどが挙げられる。)

「[0089] Example 2 ― Dispensing Through a Cover Fluid
[0090] Some embodiments described herein relate generally to dispensing droplets and in particular to methods for mixing, aspirating, transporting, metering and dispensing droplets of cell suspension or test reagent below the surface of a cover fluid using without contacting the dispenser with the surface of the cover fluid in order to for a cell assay or to conduct a diagnostic assay. Advantageously, evaporation of valuable test regents and cell samples is substantially, prevented or reduced by using a cover fluid. Another advantage, in the case of miscible reagents, is that the droplet velocities provide good mixing. Yet another advantage is that, in the non-contact dispensing scheme, the nozzle or tip is not immersed in the cover fluid, thereby facilitating cleaning.
[0091] Mineral oil may be used as a cover fluid over the. cell array. Mineral oil is frequently used as an evaporation barrier. Typically, the cell array is formed on the substrate, and mineral oil is dispensed to cover the discrete cell samples. Thus, in one embodiment, the test reagents are dispensed through the mineral oil. One of skill in the art will appreciate that drops of reagents can be dispensed through a cover fluid provided that the density of the drops is higher than the density of the cover fluid. For example, 100 nL drops of test reagent(s) can be dispensed through a mineral oil cover layer onto the discrete cell samples of the array. In some embodiments, it is possible, to selectively heat the discrete cell samples after the test reagent(s) have been dispensed through the mineral oil, thereby increasing the kinetics of the interaction between the test reagent and the predetermined analyte, which may increase the speed with which the diagnostic assay can be performed.」

(実施例2 - カバー液を通しての分注

[0090] 本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、一般に液滴分注に関し、特に、細胞アッセイまたは診断アッセイを実施するために、カバー液の表面に分注装置を接触させることなく、カバー液の表面下に細胞懸濁液または試験試薬の液滴を混合、吸引、輸送、計量および分注する方法に関する。有利なことに、カバー液を使用することにより、貴重な検査試薬や細胞サンプルの蒸発が実質的に防止または低減される。もう一つの利点は、混和性試薬の場合、液滴速度が良好な混合をもたらすことである。さらにもう一つの利点は、非接触分注方式では、ノズルまたは先端がカバー液に浸漬されないため、洗浄が容易になることである。

[0091] 鉱物油は、細胞アレイ上のカバー液として使用することができる。鉱物油は蒸発バリアとしてよく使われる。一般的に、細胞アレイは基板上に形成され、鉱物油は個々の細胞サンプルを覆うように分注される。このように、一実施形態では、試験試薬は鉱物油を通して分注される。当業者であれば、滴下試薬の密度がカバー液の密度より高ければ、カバー液を通して滴下試薬を分注することができることを理解するであろう。例えば、100nLの試験試薬を鉱物油のカバー層を通してアレイの個々の細胞試料に滴下することができる。いくつかの実施形態では、検査試薬が鉱物油を通して分注された後、個々の細胞サンプルを選択的に加熱することが可能であり、それにより検査試薬と所定の分析物との間の相互作用の運動を増加させ、診断アッセイを実施する速度を増加させることができる。)

b 上記aによれば、引用文献3には、次の技術的事項(以下、「引用文献3技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「圧電ディスペンサー等の分注装置により細胞試料に染色体染色試薬等の試験試薬を分注する際、蒸発バリアとしてよく使われる鉱物油を細胞試料を覆うカバー液として分注し、試験試薬を鉱物油を通して細胞試料に滴下すること。」

(3) 対比・判断

上申書発明と引用発明とを対比すると、上記2(3)イ(イ)に示した一致点で一致し、相違点1~3に加え下記の点で相違する。

(相違点7)(構成D)

上申書発明は、「非混和性油を含有する保護液体層を前記生物学的試料の上に重層する」との構成を備えるのに対し、引用発明は、そのような構成を備えない点。

相違点1~3については、上記2(3)ウで検討したとおりである。

相違点7について、以下に検討する。

引用発明と引用文献3技術事項は、染色のための試薬を生体試料の上に圧電沈着装置により分注する技術である点で共通する。してみれば、引用発明に引用文献3技術事項を適用し、反応試薬を滴下する標本に、蒸発バリアとしてよく使われる鉱物油(構成Dの「非混和性油」に相当する。)を細胞試料を覆うカバー液として分注する(構成Dの「重層する」ことに相当する。)ようになすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4) 小括

以上(3)により、上申書発明は、引用発明、引用文献2技術事項、引用文献3技術事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上申書の主張に基づいてさらに補正の機会を付するべき事情はない。

4 本件補正についてのむすび

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和5年5月31日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~42に係る発明は、令和4年12月6にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~42に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明である本願発明は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(3)アに記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明と引用発明とを対比する。

ア 構成2A

本願発明の構成2Aは、本件補正発明の構成Aと同一であるから、構成2Aと引用発明との対比は、上記第2の[理由]2(3)イ(ア)aのとおりである。

イ 構成2B

本願発明の構成2Bは、本件補正発明の構成Bと、単位換算による数値の表現上の相違を除いて一致しており、技術的な構成として相違しない。よって、構成2Bと引用発明との対比は、上記第2の[理由]2(3)イ(ア)bのとおりである。

ウ 以上のことから、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。

(一致点)

「2A スライド上に沈着された生物学的試料に試薬組成物を分配する方法であって:
2B’ 試薬組成物を、圧電沈着装置を用いて、パスを通じてスライド上に沈着された生物学的試料に分配する、ここで、当該分配はあらかじめ決定された分配パターンに基づく、当該あらかじめ決定された分配パターンは、(i)生物学的試料の画像において、当該試薬組成物を適用するための、生物学的試料の1またはそれより多い領域を同定し、そして(ii)当該1またはそれより多い同定された領域の位置情報を決定することにより生成される
ことを含む、前記方法。」

本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。

(相違点4)

圧電沈着装置を用いて、スライド上に沈着された生物学的試料に分配することについて、本願発明は、「パスを通じて」分配するのに対し、引用発明では、「パスを通じて」分配するものであるか不明である点。

(相違点5)

圧電沈着装置を用いて、スライド上に沈着された生物学的試料に分配される試薬組成物が、本願発明では、「360nL/in2~14.4μL/in2の間」であるのに対し、引用発明では、標本上の単位面積当たりの反応試薬の分注量が不明である点。

(相違点6)

同定された領域の位置情報が、本願発明では、x-y座標であるのに対し、引用発明では位置情報の具体的内容が不明である点。

エ 判断

相違点4~6は、相違点1~3と対応するものであるから、上記第2の[理由]2(3)ウに示した判断により、相違点4~6に係る本願発明の構成は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基づき、当業者が容易になし得たものである。

オ 小括

よって、本願発明は、引用発明、引用文献2技術事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2023-008922

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