特許拒絶査定不服審判
2022-013415
フレキシブル電池及びフレキシブル電池を生成する方法
- 審判番号
- 2022-013415
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-553522
- 請求日
- 2022年08月26日
- 審決日
- 2023年08月16日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】リベスト インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】水野 勝文
- 【請求人代理人】井出 真
- 【請求人代理人】須澤 洋
- 【請求人代理人】久松 洋輔
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 須原 宏光
- 審判官 篠原 功一
- 分類
- P18 .121-Z (H01M) / P18 .56 -Z (H01M) / P18 .572-Z (H01M) / P18 .575-Z (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-553522「フレキシブル電池及びフレキシブル電池を生成する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年12月 5日国際公開、WO2019/231176、令和 3年 7月26日国内公表、特表2021-517722〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年5月24日(優先権主張 2018年6月1日、韓国)を国際出願日とする出願であって、その手続の概略は以下のとおりである。
令和3年 9月13日付け:拒絶理由通知
令和3年12月21日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 4月20日付け:拒絶査定
令和4年 8月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年8月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年8月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正による特許請求の範囲の記載
本件補正による特許請求の範囲の請求項1(以下「本件補正発明」という。)の記載は、次のとおりである(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
フレキシブル電池であって、
負極である第1の電極及び正極である第2の電極を含む電極群と、
前記第1の電極及び第2の電極にそれぞれ連結される一対の電極リードと、
前記電極群を構成する前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれを同じ電極同士で連結して固定する電極並列連結用タブと、
前記電極群を収容するハウジングと、
を含み、
前記電極リードは、前記電極群の第1の末端において前記第1の電極及び前記第2の電極にそれぞれ接続され、
前記電極並列連結用タブは、前記電極群において、前記第1の末端の反対側である第2の末端に位置し、
前記電極群は、前記第1の末端において非固定となっており、前記第2の末端において前記電極並列連結用タブによって固定され、
前記第1の電極は、第1の集電体と、前記第1の集電体の表面に形成された第1の活物質層と、を含み、前記第2の電極は、第2の集電体と、前記第2の集電体の表面に形成された第2の活物質層と、を含み、
前記第1の活物質層は、前記第1の末端において前記第2の活物質層に対して第1の非対面部を有し、前記第1の末端の反対側である前記第2の末端において前記第2の活物質層に対して第2の非対面部を有し、
前記第1の非対面部の最短長さは、前記第2の非対面部の最短長さ以上であり、前記第1の非対面部は、前記フレキシブル電池が曲げられる場合に短くなり、前記フレキシブル電池が曲げられることによって短くなっても予め設定した閾値である0.1mm以上が残り、
前記第1の電極は、前記第1の電極の前記第1の非対面部が形成された一端において前記電極リードと連結される電極リード連結用タブを含み、前記第1の電極の前記第2の非対面部が形成された他端において前記電極並列連結用タブを含む、フレキシブル電池。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年12月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
フレキシブル電池であって、
負極である第1の電極及び正極である第2の電極を含む電極群と、
前記第1の電極及び第2の電極にそれぞれ連結される一対の電極リードと、
前記電極群を構成する前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれを同じ電極同士で連結して固定する電極並列連結用タブと、
前記電極群を収容するハウジングと、
を含み、
前記電極リードは、前記電極群の第1の末端において前記第1の電極及び前記第2の電極にそれぞれ接続され、
前記電極並列連結用タブは、前記電極群において、前記第1の末端の反対側である第2の末端に位置し、
前記電極群は、前記第1の末端において非固定となっており、前記第2の末端において前記電極並列連結用タブによって固定され、
前記第1の電極は、第1の集電体と、前記第1の集電体の表面に形成された第1の活物質層と、を含み、前記第2の電極は、第2の集電体と、前記第2の集電体の表面に形成された第2の活物質層と、を含み、
前記第1の活物質層は、前記第1の末端において前記第2の活物質層に対して第1の非対面部を有し、前記第2の末端において前記第2の活物質層に対して第2の非対面部を有し、
前記第1の非対面部の最短長さは、前記電極並列連結用タブによって固定された前記第2の末端に位置する前記第2の非対面部の最短長さ以上である、フレキシブル電池。」
2 補正の適否
本件補正は、実質的に、
ア 本件補正前の請求項1の「前記電極並列連結用タブによって固定された前記第2の末端に位置する前記第2の非対面部」とあったところを、「前記電極並列連結用タブによって固定された前記第2の末端に位置する」を削除して、「前記第2の非対面部」と補正し、
イ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の非対面部」について、「前記フレキシブル電池が曲げられる場合に短くなり、前記フレキシブル電池が曲げられることによって短くなっても予め設定した閾値である0.1mm以上が残」ることの限定を付加し、
ウ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の電極」について、「前記第1の電極は、前記第1の電極の前記第1の非対面部が形成された一端において前記電極リードと連結される電極リード連結用タブを含み、前記第1の電極の前記第2の非対面部が形成された他端において前記電極並列連結用タブを含む」ことの限定を付加するものである。
上記イ及びウに係る補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記アに係る補正は、拒絶査定の備考欄で指摘された事項を明確にするために、「前記電極並列連結用タブによって固定された前記第2の末端に位置する」の記載を削除するものであり、特許法17条の2第5項4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号、及び第4号に掲げる事項を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1(1)」に記載したとおりのものである。
(2)引用例及びその記載事項
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用例である韓国登録特許第10-1783703号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の各記載がある(なお、引用例1に係る出願を優先権主張の基礎とする国際出願において、国内段階で公表された特表2020-513222号公報の記載を参考にした翻訳文を付記する。下線は当審で付した。)。
「
[図:0001405368000001.jpg]
」
「
[図:0001405368000002.jpg]
」
「
[図:0001405368000003.jpg]
」
「(図1)
[図:0001405368000004.jpg]
」
「(図2)
[図:0001405368000005.jpg]
」
「(図10)
[図:0001405368000006.jpg]
」
以下、翻訳文を付記する。
「[0024]
図1 本発明に係るフレキシブル電池を構成する電極組立体の例示的な構成を示す。
図2 図1の電極組立体の分解図を示す。・・・
図10 電極組立体及び前記電極組立体を包む外装材部を有するフレキシブル電池を示す。」
「[0031]
電極組立体は、分離膜30を間に挟んで陰極板10と陽極板20とに区分された単位セルAと、陰極板と陽極板との間でイオン受け渡しの媒介体としての役割をする電解液と、電極板から突出した状態で用途に応じて電極並列連結用と電極リード連結用とに分けられる電極タブと、を含む。前記陰極板10と陽極板20とを含む電極板のうち何れか1つ以上の電極板は、電極並列連結用タブと電極リード連結用タブを両側に離れて配置することができる。例えば、電極組立体100の最下段に配置される任意の陰極板10は、陰極並列連結用タブ12と陰極リード連結用タブ14とを備え、前記任意の陰極板10と対面している分離膜の反対側に対面している任意の陽極板20は、陽極並列連結用タブ22と陽極リード連結用タブ24とを備える。
[0032]
ここで、電極板は、電極合材が電極集電体である電極板の片面又は両面に塗布され、前記電極並列連結用タブ及び電極リード連結用タブは、前記電極板から突出した形態である。一方、前記電極並列連結用タブ及び電極リード連結用タブには、電極合材が塗布されていない状態で露出した形態である。
[0033]
前記複数の電極板は、電極並列連結用電極タブを介して同じ極同士で連結される。即ち、複数の陰極板10及び複数の陽極板20は、それぞれ電極タブの間を連結するタブ-タブ結合部によって電気的に並列連結される。一方、電極組立体は、電極リード連結用タブを介して外装材の外部に露出している電極リードと電気的に連結される構造を有する。分離膜は、電極板を物理的に離隔させるが、電解液に含まれたイオンは通過させる機能をする。」
「[0036]
本発明において、電極板に形成された電極並列連結用タブ12、22が互いに並列連結されたタブ-タブ結合部及び電極リード連結用タブ14、24と電極リードとが互いに連結されたタブ-リード結合部の間の連結及び接合は、スポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接、及び導電性接着剤による結合を含む接合方式のうち何れか1つによって電気的に連結される。」
(イ)上記記載より、引用例1にはフレキシブル電池に関して、次の事項が記載されている。
a 電極組立体及び電極組立体を包む外装材部を有するフレキシブル電池である([0024])。
b 図2及び[0031]によれば、電極組立体100は、分離膜30を間に挟んで陰極板10と陽極板20とに区分された単位セルAを複数含むことが読み取れる。
c 図2及び[0031]によれば、電極組立体100の最下段に配置される陰極板10は、一方側に陰極リード連結用タブ14、反対側に陰極並列連結用タブ12とを備え、他の陰極板10は、反対側に陰極並列連結用タブ12を備え、最下段の陰極板10と対面している分離膜30の反対側に対面している陽極板20は、一方側に陽極リード連結用タブ24、反対側に陽極並列連結用タブ22とを備え、他の陽極板20は、反対側に陽極並列連結用タブ22を備えることが読み取れる。
d [0033]に記載された電気的に並列連結される「電極タブ」は、[0031]の記載によれば陰極並列連結用タブ12及び陽極並列連結用タブ22のことである。
したがって、[0033]によれば、複数の陰極板10及び複数の陽極板20は、それぞれ、陰極並列連結用タブ12の間、陽極並列連結用タブ22の間を連結するタブ-タブ結合部によって、同じ極同士が電気的に並列連結されている。
e [0033]に記載された「電極リード連結用タブ」は、[0031]の記載によれば陰極リード連結用タブ14及び陽極リード連結用タブ24のことである。
したがって、[0033]及び[0036]によれば、陰極リード連結用タブ14及び陽極リード連結用タブ24に、それぞれ電極リードが電気的に連結されている。
f タブ-タブ結合部は、スポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接、及び導電性接着剤による結合である([0036])。
g [0032]に記載された「電極板」は、[0031]の記載によれば陰極板10及び陽極板20のことである。また、[0032]に記載された「電極集電体である電極板」は、陰極板10及び陽極板20の電極集電体と解される。
したがって、[0032]によれば、陰極板10及び陽極板20は、電極合材が電極集電体の片面又は両面に塗布されている。
(ウ)以上によれば、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「電極組立体100及び電極組立体100を包む外装材部を有するフレキシブル電池であって、
電極組立体100は、分離膜30を間に挟んで陰極板10と陽極板20とに区分された単位セルAを複数含み、
電極組立体100の最下段に配置される陰極板10は、一方側に陰極リード連結用タブ14、反対側に陰極並列連結用タブ12とを備え、他の陰極板10は、反対側に陰極並列連結用タブ12を備え
最下段の陰極板10と対面している分離膜30の反対側に対面している陽極板20は、一方側に陽極リード連結用タブ24、反対側に陽極並列連結用タブ22とを備え、他の陽極板20は、反対側に陽極並列連結用タブ22を備え、
複数の陰極板10及び複数の陽極板20は、それぞれ、陰極並列連結用タブ12の間、陽極並列連結用タブ22の間を連結するタブ-タブ結合部によって、同じ極同士が電気的に並列連結され、
陰極リード連結用タブ14及び陽極リード連結用タブ24に、それぞれ電極リードが電気的に連結され、
タブ-タブ結合部は、スポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接、及び導電性接着剤による結合であり、
陰極板10及び陽極板20は、電極合材が電極集電体の片面又は両面に塗布された、フレキシブル電池。」
イ 引用例2
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用例である国際公開第2016/051645号(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「[0007] 通常、二次電池においては、負極におけるデンドライトの析出を防止する目的で、正極よりも負極を大きくすることが行われている。しかし、このような電極群を使用しても、電池を屈曲すると、負極の端部と正極の端部とが対向できない部分が生じ得る。例えば、正極と、正極を介して、正極よりも大きい2つの負極が積層されている電極群(負極/正極/負極)を屈曲した場合、負極と正極ではそれぞれ曲率が異なるため、負極の端部と正極の端部とにズレが生じ得る。」
「[0009] 正極活物質層300Aは、その両面の全面が、各負極200の負極活物質層200Aに対向するように配置される。具体的には、S1t側の負極活物質層200Aは、正極活物質層300Aとの非対向部分Ptを備え、S1tとは反対側(S1n)の負極活物質層200Aは、正極活物質層300Aとの非対向部分Pnを備える。電池性能の低下抑制の観点から、非対向部分PtおよびPnの大きさがほぼ同じになるように、負極活物質層200Aの中央に正極活物質層300Aが配置される。」
「[0011] 本発明は、屈曲状態において正極の活物質層と負極の活物質層とが対向するように、各活物質層を配置することにより、屈曲状態で充放電を繰返した場合であっても、性能低下が起りにくいフレキシブル電池を提供することを目的とする。」
「[0020] 電極群10を構成する第一電極2(D1)は、第一集電体5と、その片面に第一活物質層A1とを備えており、第二電極3(D2)は、第二集電体6と、その両面に第二活物質層A2とを備えている。電極群10の一辺S1t側の第一電極D1および第二電極D2の活物質層が形成されていない部分(例えば、リードタブ)には、電極リード端子30および40がそれぞれ接合している。電極リード端子30が接合されていない第一電極D1のリードタブは、電極リード端子30が接合されているリードタブと溶接等され、電気的に接合される。同様に、第二電極D2が複数積層されている場合には、それぞれのリードタブは溶接等によって電気的に接合される。図2および後述する図4、5では、便宜的に、リードタブ同士が溶接されている様子を図示していない。
[0021] 第二活物質層A2は、その両面の全面が、隣接する各第一電極D1の第一活物質層A1に対向するように配置される。具体的には、S1t側の第一活物質層A1は、第二活物質層A2との非対向部分Ptを備え、S1tとは反対側(S1n)の第一活物質層A1は、第二活物質層A2との非対向部分Pnを備える。ここで、非対向部分PtおよびPnは、非対向部分PtのS1tに対して垂直な方向における最短の長さLAtと、非対向部分PnのS1tに対して垂直な方向における最短の長さLAnとが、図2(a)に示す水平状態において、LAt<LAnの関係を満たしている。」
「[0024] 図2(b)に示すように、屈曲状態では、屈曲の外側である第二電極D2の上部に配置されている第一活物質層A1における非対向部分Pnは、水平状態と比べて小さくなり得る。そのため、屈曲状態において、LAt<LAnを満たすことまでは要さない。ただし、屈曲状態であっても、第一活物質層A1は非対向部分Pnを備えている。一方、屈曲の内側である第二電極D2の下部に配置されている第一活物質層A1における非対向部分Pnは、水平状態と比べて大きくなり得る。」
「
[図:0001405368000007.jpg]
」
(イ)上記記載によれば、引用例2には、次の事項が記載されている。
引用例2に記載された発明の課題は、負極におけるデンドライトの析出を防止するために、正極活物質層よりも負極活物質層を大きくしたフレキシブル電池において、屈曲状態において正極活物質層と負極活物質層とが対向するように、各活物質層を配置することである([0007]、[0009]、[0011])。
そして、[0020]によれば、第一電極D1及び第二電極D2を含む電極群10において、電極群10の一辺S1t側の第一電極D1および第二電極D2のリードタブには、電極リード端子30および40がそれぞれ接合し、電極リード端子30が接合されていない第一電極D1のリードタブは、電極リード端子30が接合されているリードタブと溶接等され、電気的に接合され、同様に、第二電極D2が複数積層されている場合には、それぞれのリードタブは溶接等によって電気的に接合されるので、
電極群10は一辺S1t側がリードタブの溶接によって固定され、S1tとは反対側が非固定となっていることが解る。
そうすると、[0021]及び[0024]によれば、引用例2には、
「負極におけるデンドライトの析出を防止するために、正極活物質層よりも負極活物質層を大きくしたフレキシブル電池において、屈曲状態において第二活物質層(正極活物質層)と第一活物質層(負極活物質層)とが対向するように、
電極群の固定された一辺側の第一活物質層は第二活物質層との非対向部分Ptを備え、非固定である反対側の第一活物質層は第二活物質層との非対向部分Pnを備え、非対向部分Ptの最短の長さLAtと、非対向部分Pnの最短の長さLAnとが、水平状態においてLAt<LAnの関係を満たし、
屈曲状態では、第一活物質層の非対向部分Pnは水平状態と比べて小さくなり、そして屈曲状態であっても、第一活物質層は非対向部分Pnを備える技術。」が記載されている。
(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「陰極板10」、「陽極板20」は、それぞれ、本件補正発明の「負極である第1の電極」、「正極である第2の電極」に相当する。
したがって、引用発明の「陰極板10と陽極板20と」を含む「電極組立体100」は、本件補正発明の「負極である第1の電極及び正極である第2の電極を含む電極群」に相当する。
イ 引用発明の「陰極板10」の「陰極リード連結用タブ14」及び「陽極板20」の「陽極リード連結用タブ24」に、それぞれ「連結され」る「電極リード」は、本件補正発明の「前記第1の電極及び第2の電極にそれぞれ連結される一対の電極リード」に相当する。
ウ 引用発明の「タブ-タブ結合部は、スポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接、及び導電性接着剤による結合」であるから、「それぞれ、陰極並列連結用タブ12の間、陽極並列連結用タブ22の間を連結するタブ-タブ結合部」によって、「陰極並列連結用タブ12」及び「陽極並列連結用タブ22」は、それぞれ連結して固定されている。
そして、引用発明は「複数の陰極板10及び複数の陽極板20は、それぞれ、陰極並列連結用タブ12の間、陽極並列連結用タブ22の間を連結するタブ-タブ結合部によって、同じ極同士が電気的に並列連結され」るのであるから、「陰極並列連結用タブ12」及び「陽極並列連結用タブ22」は、「複数の陰極板10」及び「複数の陽極板20」のそれぞれを同じ電極同士で連結して固定しているといえる。
したがって、引用発明の「電極組立体100」を構成する「複数の陰極板10及び複数の陽極板20」のそれぞれを同じ電極同士で連結して固定する「陰極並列連結用タブ12」及び「陽極並列連結用タブ22」は、本件補正発明の「前記電極群を構成する前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれを同じ電極同士で連結して固定する電極並列連結用タブ」に相当する。
エ 引用発明の「電極組立体100を包む外装材部」は、本件補正発明の「前記電極群を収容するハウジング」に相当する。
オ 引用発明は「陰極リード連結用タブ14及び陽極リード連結用タブ24に、それぞれ電極リードが電気的に連結され」ており、「陰極板10は、一方側に陰極リード連結用タブ14」「を備え」及び「陽極板20は、一方側に陽極リード連結用タブ24」「を備え」ているので、「電極リード」は「電極組立体100」の「一方側」において「陰極板10」と「陽極板20」にそれぞれ接続されているといえる。このことは、本件補正発明の「前記電極リードは、前記電極群の第1の末端において前記第1の電極及び前記第2の電極にそれぞれ接続され」ていることに相当する。
カ 引用発明の「陰極板10は、」「反対側に陰極並列連結用タブ12とを備え、」「陽極板20は、」「反対側に陽極並列連結用タブ22を備え」ているので、「陰極並列連結用タブ12」及び「陽極並列連結用タブ22」は、「電極組立体100」の「反対側」に位置している。このことは、本件補正発明の「前記電極並列連結用タブは、前記電極群において、前記第1の末端の反対側である第2の末端に位置」することに相当する。
キ 上記ウで検討したように、引用発明は、「陰極並列連結用タブ12」及び「陽極並列連結用タブ22」が、「電極組立体100」を構成する「複数の陰極板10」及び「複数の陽極板20」のそれぞれを同じ電極同士で連結して固定している。
したがって、引用発明の「電極組立体100」は、「反対側」で「陰極並列連結用タブ12」及び「陽極並列連結用タブ22」によって固定されているが、「一方側」は非固定となっている。このことは、本件補正発明の「前記電極群は、前記第1の末端において非固定となっており、前記第2の末端において前記電極並列連結用タブによって固定され」ていることに相当する。
ク 引用発明の「陰極板10及び陽極板20」は、「電極合材が電極集電体の片面又は両面に塗布され」ている。ここで、「陰極板10」に使用する「電極合材」には負活物質が含まれ、「陽極板20」に使用する「電極合材」には正活物質が含まれていることは明らかである。そうすると、「陰極板10」は、電極集電体と、電極集電体の表面に形成された負活物質を含み、「陽極板20」は、電極集電体と、電極集電体の表面に形成された正活物質を含んでいる。
したがって、引用発明の「陰極板10及び陽極板20は、電極合材が電極集電体の片面又は両面に塗布された」ことは、本件補正発明の「前記第1の電極は、第1の集電体と、前記第1の集電体の表面に形成された第1の活物質層と、を含み、前記第2の電極は、第2の集電体と、前記第2の集電体の表面に形成された第2の活物質層と、を含」むことに相当する。
但し、本件補正発明は「前記第1の活物質層は、前記第1の末端において前記第2の活物質層に対して第1の非対面部を有し、前記第1の末端の反対側である前記第2の末端において前記第2の活物質層に対して第2の非対面部を有」するのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。
また、本件補正発明は「前記第1の非対面部の最短長さは、前記第2の非対面部の最短長さ以上であり、前記第1の非対面部は、前記フレキシブル電池が曲げられる場合に短くなり、前記フレキシブル電池が曲げられることによって短くなっても予め設定した閾値である0.1mm以上が残」るのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。
ケ 引用発明は「陰極リード連結用タブ14」に「電極リードが電気的に連結され」ている。
したがって、引用発明の「電極組立体100の最下段に配置される陰極板10は、一方側に陰極リード連結用タブ14、反対側に陰極並列連結用タブ12とを備え」ることと本件補正発明とは、「前記第1の電極は、前記第1の電極の一端において前記電極リードと連結される電極リード連結用タブを含み、前記第1の電極の他端において前記電極並列連結用タブを含む」点で共通する。
但し、第1の電極について、本件補正発明は「前記第1の非対面部が形成され」「前記第2の非対面部が形成され」ているのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違するが、このことは、上記クで検討したとおりである。
上記アないしケによれば、本件補正発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。
(一致点)
「フレキシブル電池であって、
負極である第1の電極及び正極である第2の電極を含む電極群と、
前記第1の電極及び第2の電極にそれぞれ連結される一対の電極リードと、
前記電極群を構成する前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれを同じ電極同士で連結して固定する電極並列連結用タブと、
前記電極群を収容するハウジングと、
を含み、
前記電極リードは、前記電極群の第1の末端において前記第1の電極及び前記第2の電極にそれぞれ接続され、
前記電極並列連結用タブは、前記電極群において、前記第1の末端の反対側である第2の末端に位置し、
前記電極群は、前記第1の末端において非固定となっており、前記第2の末端において前記電極並列連結用タブによって固定され、
前記第1の電極は、第1の集電体と、前記第1の集電体の表面に形成された第1の活物質層と、を含み、前記第2の電極は、第2の集電体と、前記第2の集電体の表面に形成された第2の活物質層と、を含み、
前記第1の電極は、前記第1の電極の一端において前記電極リードと連結される電極リード連結用タブを含み、前記第1の電極の他端において前記電極並列連結用タブを含む、フレキシブル電池。」
(相違点)
本件補正発明は「前記第1の活物質層は、前記第1の末端において前記第2の活物質層に対して第1の非対面部を有し、前記第1の末端の反対側である前記第2の末端において前記第2の活物質層に対して第2の非対面部を有し、前記第1の非対面部の最短長さは、前記第2の非対面部の最短長さ以上であり、前記第1の非対面部は、前記フレキシブル電池が曲げられる場合に短くなり、前記フレキシブル電池が曲げられることによって短くなっても予め設定した閾値である0.1mm以上が残」るのに対して、引用発明はそのような特定がない点。
(4)相違点についての判断
二次電池において、負極におけるデンドライトの析出を防止する目的で、正極活物質層よりも負極活物質層の面積を大きくすることは、例示するまでもなく周知である。
また、引用例2には「負極におけるデンドライトの析出を防止するために、正極活物質層よりも負極活物質層を大きくしたフレキシブル電池において、屈曲状態において第二活物質層(正極活物質層)と第一活物質層(負極活物質層)とが対向するように、電極群の固定された一辺側の第一活物質層は第二活物質層との非対向部分Ptを備え、非固定である反対側の第一活物質層は第二活物質層との非対向部分Pnを備え、非対向部分Ptの最短の長さLAtと、非対向部分Pnの最短の長さLAnとが、水平状態においてLAt<LAnの関係を満たし、屈曲状態では、第一活物質層の非対向部分Pnは水平状態と比べて小さくなり、そして屈曲状態であっても、第一活物質層は非対向部分Pnを備える技術。」が記載されている。
そして、引用発明において、負極におけるデンドライトの析出を防止するため正極活物質層よりも負極活物質層の面積を大きくする周知の構成を採用することは当業者がごく普通になし得ることであるところ、引用発明はフレキシブル電池に関するものであるから、引用例2に記載された技術を適用することも、当業者が容易に想到し得ることである。なお、その際、引用例2に記載の非固定側の非対向部分Pn の最短の長さを、固定側の非対向部分Ptの最短の長さより長くする関係は、引用発明の「電極組立体100」における非固定の「一歩側」、固定された「反対側」に対して適用されることになるのは、当然のことである。
また、引用例2記載の技術は、屈曲状態であっても非対向部分Pnを備えるように構成するのであるから、引用発明に引用例2に記載された技術を適用したものにおいて、屈曲状態における非固定側の非対向部分Pnの余裕長さをどの程度にするか、例えば0.1mm以上が残るようにすることは当業者が適宜定め得る設計的事項に過ぎない。
そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用例2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、本件補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである
(5)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年12月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1(2)」に記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうちの理由3(進歩性)の概略は次のとおりである。
理由3(進歩性)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1~12
・引用文献等 2、1
<引用文献等一覧>
1:国際公開第2016/051645号(当審決の引用例2)
2:韓国登録特許第10-1783703号公報(当審決の引用例1)
3 対比・判断
本願発明は、実質的に、
ア 前記「第2[理由]2」で検討した本件補正発明から「前記第1の非対面部は、前記フレキシブル電池が曲げられる場合に短くなり、前記フレキシブル電池が曲げられることによって短くなっても予め設定した閾値である0.1mm以上が残り、」及び「前記第1の電極は、前記第1の電極の前記第1の非対面部が形成された一端において前記電極リードと連結される電極リード連結用タブを含み、前記第1の電極の前記第2の非対面部が形成された他端において前記電極並列連結用タブを含む、」に係る限定事項を削除したものであり、
イ 本件補正発明の「第1の非対面部の最短長さ」について、「前記第2の非対面部の最短長さ以上」であることに、さらに「前記電極並列連結用タブによって固定された前記第2の末端に位置する」構成を加えて、「前記電極並列連結用タブによって固定された前記第2の末端に位置する前記第2の非対面部の最短長さ以上」にしたものである。
ここで、上記イにおいて、「第2の非対面部」が「前記電極並列連結用タブによって固定された前記第2の末端に位置する」ことの付加は、本願発明の「前記第2の末端において前記電極並列連結用タブによって固定され」及び「前記第2の末端において前記第2の活物質層に対して第2の非対面部を有し」の記載と重複する構成であり、上記イの追加により、本願発明の構成を変更することはない。
そうすると、本願発明の発明特定事項を実質的に全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2[理由]2(3)、(4)」に記載したとおり、引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その他の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-013415