特許拒絶査定不服審判
2023-008081
セルロース合成酵素様酵素及びその使用
- 審判番号
- 2023-008081
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-512835外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年05月17日
- 審決日
- 2025年05月08日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】イエダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人大島特許事務所
- 分類
- P18 .56 -Z (C12P) / P18 .572-Z (C12P) / P18 .537-Z (C12P) / P18 .536-Z (C12P)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-512835「セルロース合成酵素様酵素及びその使用」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月12日国際公開、WO2020/049572、令和 4年 1月 4日国内公表、特表2022-500023〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和1年9月5日(パリ条約による優先権主張 2018年9月6日(US)アメリカ合衆国 2019年7月25日(IL)イスラエル)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和 4年 4月14日付け:拒絶理由通知書
令和 4年10月26日 :意見書、誤訳訂正書の提出
令和 5年 1月 6日付け:拒絶査定
令和 5年 5月17日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年5月17日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年5月17日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を以下のように補正することを含むものである(下線部は補正箇所である。)。
補正前:
「【請求項1】
植物またはその少なくとも一部の少なくとも1つの細胞における、少なくとも1つのステロイド系サポニン、または、少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニンの含有量を低減させる方法であって、
前記少なくとも1つの細胞の遺伝子を組み換える遺伝子組換えステップを含み、
前記遺伝子組換えステップは、
(a)セルロース合成酵素様G(CSLG)酵素をコードする核酸遺伝子配列を標的とする少なくとも1つのサイレンシング分子を用いて前記少なくとも1つの植物細胞を形質転換するステップであって、前記CSLG酵素をコードする前記核酸遺伝子配列は、配列番号30に記載の核酸配列を含むか、または、配列番号30に記載の核酸配列に対して少なくとも90%の同一性及び少なくとも55%のカバレッジを有するそのホモログである、該ステップ、または、
(b)前記CSLG酵素をコードする前記少なくとも1つの核酸遺伝子配列を突然変異させるステップであって、前記CSLG酵素をコードする前記少なくとも1つの核酸遺伝子配列は、配列番号30に記載の核酸配列を含むか、または、配列番号30に記載の核酸配列に対して少なくとも90%の同一性及び少なくとも55%のカバレッジを有するそのホモログを含み、前記突然変異が、(1)前記核酸配列内に1以上の点突然変異を導入すること、(2)前記核酸配列内に欠失を導入すること、(3)前記核酸配列内に挿入を導入すること、または、(4)それらの任意の組み合わせを含み、前記導入が、コード配列または非コード配列を突然変異させることを含む、該ステップ、を含み、
遺伝子が組み換えられた遺伝子組換え細胞における前記CSLG酵素をコードする遺伝子の発現は、対応する非組換え植物の細胞における発現と比較して減少し、
前記遺伝子組換え細胞を含む植物は、少なくとも1つのステロイド系サポニン、または、少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニンの含有量が、対応する非組換え植物と比較して減少する、方法。」とあったものを、
補正後:
「【請求項1】
植物またはその少なくとも一部の少なくとも1つの細胞における少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニンの含有量を低減させる方法であって、
前記少なくとも1つの細胞の遺伝子を組み換える遺伝子組換えステップを含み、
前記遺伝子組換えステップは、
(a)セルロース合成酵素様G(CSLG)酵素をコードする核酸遺伝子配列を標的とする少なくとも1つのサイレンシング分子を用いて前記少なくとも1つの植物細胞を形質転換するステップであって、前記CSLG酵素をコードする前記核酸遺伝子配列は、配列番号30に記載の核酸配列を含むか、または、配列番号30に記載の核酸配列に対して少なくとも90%の同一性及び少なくとも55%のカバレッジを有するそのホモログである、該ステップ、または、
(b)前記CSLG酵素をコードする前記少なくとも1つの核酸遺伝子配列を突然変異させるステップであって、前記CSLG酵素をコードする前記少なくとも1つの核酸遺伝子配列は、配列番号30に記載の核酸配列を含むか、または、配列番号30に記載の核酸配列に対して少なくとも90%の同一性及び少なくとも55%のカバレッジを有するそのホモログを含み、前記突然変異が、(1)前記核酸配列内に1以上の点突然変異を導入すること、(2)前記核酸配列内に欠失を導入すること、(3)前記核酸配列内に挿入を導入すること、または、(4)それらの任意の組み合わせを含み、前記導入が、コード配列または非コード配列を突然変異させることを含む、該ステップ、を含み、
遺伝子が組み換えられた遺伝子組換え細胞における前記CSLG酵素をコードする遺伝子の発現は、対応する非組換え植物の細胞における発現と比較して減少し、
前記遺伝子組換え細胞を含む植物は、少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニンの含有量が、対応する非組換え植物と比較して減少する、方法。」
2.補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要である「少なくとも1つのステロイド系サポニン、または、少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニンの含有量」という択一的記載から、「少なくとも1つのステロイド系サポニン」「の含有量」という要素を削除し、「少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニンの含有量」と限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。
(1)特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)及び同法第36条第4項第1号に規定する要件(いわゆる実施可能要件)について
ア 本願補正発明
補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、前記1.で示したとおりのものである。
イ 本願明細書及び図面の記載事項
本願明細書及び図面(以下、「本願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)背景技術
「【0003】
サポニン-アルカロイド化合物の広範なグループは、植物界に広く分布し、サイトゾルのメバロン酸イソプレノイド生合成経路に由来する。サポニン及びステロイドアルカロイド(SA)は、植物が産生する特異的代謝物(SM)の2つの大きなクラスである。
【0004】
サポニンは、無数の植物種と100以上の科に見られる特異的代謝物(SM)の大きなグループであり、1以上のグリコシド部分で修飾された親油性トリテルペノイドまたはステロイド骨格(アグリコン)を表す。
【0005】
サポニンは、その名前(ラテン語で石鹸を意味する)が示唆しているように、両親媒性構造を有するため、水溶液中では石鹸のような性質を示す。サポニンのユニークな物理化学的特性は、植物界において、抗真菌性、抗菌性及び殺虫性を含む幅広い機能を提供する。サポニンの活性は、アグリコンの構造に依存するが、多くの場合、結合した糖にさらに依存する。例えば、オレアノール酸やメジカゲン酸(MA)由来のサポニンは、C-28位にカルボキシルが存在することに起因して溶血作用を示すが、アベナシンA-1は、殺菌性を示すためには、C-3位にL-アラビノースが結合していることを必要とする。さらに、コレステロール由来のステロイドサポニンは、植物界に広く存在し、その構造は非常に多様であり、C-5、6位が飽和しているもの(例えば、サラサポゲニン)もあるし、C-5、6位が不飽和のもの(例えば、ジオスゲニン)もある。
【0006】
多くの報告が、抗炎症及び免疫増強(アジュバント)から抗癌特性に至るまでの、ヒトの健康及び医療用途に対するサポニンの利点を強調している。糖活性酵素(CAZY)糖転移酵素1(GT1)スーパーファミリーに属するUDP糖転移酵素(UGT)メンバーは、サポニン及び他のすべての特異的代謝物(SM)クラスにおいて糖転移反応を行う。サポニンを装飾する最も一般的な糖類としては、D-グルコース、D-ガラクトース、L-アラビノース、D-グルクロン酸、D-キシロース、L-ラムノース、及びD-フコースが挙げられる。
【0007】
サポゲニンのC-3位に結合したグルクロン酸の存在は、ナデシコ目の種で特に一般的であるが、それに関与する酵素は依然として不明である。
【0008】
したがって、トリテルペノイドサポニンを含むサポニン類を産生するための代謝経路に関与する酵素に関する知識、例えば、キレイン酸などにグルクロン酸を結合させるセルロース合成酵素様Gに関する知識に対する満たされていないニーズが依然として存在する。上記の知識が得られれば、自然に産生される産物の含有量を改変させるために、植物において鍵となる酵素を制御することができる。例えば、酵素を過剰に発現させたり、安定性を高めたりすることによって、天然の甘味料を大量に産生することができる。また、酵素を遺伝子レベルで下方制御することによって、植物産物(例えば、キノア)に苦味を加える化合物の産生を減少させることができる。さらに、高価値のサポニン(これに限定しないが、例えば、トリテルペノイドサポニン)を商業量で提供するために、異種系でこれらのサポニンを産生する方法に対する満たされていないニーズが依然として存在する。これらの高価値サポニンは、これに限定しないが、例えば、甘味料、発泡剤、乳化剤、防腐剤、抗発癌剤、コレステロール低下剤、抗炎症剤、抗酸化剤、生物学的アジュバント、抗微生物剤、殺虫剤、摂食阻害剤、抗真菌剤、またはそれらの任意の組み合わせとして使用することができる。
【0009】
加えて、アルカロイドなどの一部の特異的代謝物(SM)は、それらを産生する細胞にとって不可欠ではなく、生物の全体的な適応度に寄与するため、しばしば二次代謝産物と呼ばれる。アルカロイドは、一般的には複素環構造を有する、低分子量の窒素含有有機化合物であり、植物におけるそれらの生合成は、発生段階では、ストレス及び病原体に応答して厳密に制御されている。
【0010】
例えば、ステロイドアルカロイド(SA)は、ナス目(Solanales order)の多数の植物に多く含まれていることから「ソラマメアルカロイド」とも呼ばれており、幅広い範囲の科の多数の植物に共通して存在することが分かっている。ステロイドアルカロイド(SA)は、多様な構造組成及び生物活性を有する。これらは低分子量の窒素含有コレステロール由来有機化合物であり、一般的には、C-27コレスタン骨格と複素環窒素成分とから成る複素環構造を有する。
・・・
【0012】
C-27コレスタン骨格と複素環窒素成分とから成るステロイドアルカロイド(SA)は、サイトゾル内でコレステロールから合成されると考えられている。・・・
【0013】
ステロイド系グリコアルカロイド(SGA)は、ナス科の数多くの植物、及び他の多くの植物科によって産生される。SGAの例としては、トマト(Solanum lycopersicu)のα-トマチン及びデヒドロトマチン、ジャガイモ(Solanum tuberosum)のα-カコニン及びα-ソラニン、ナス(Solanum melongena)のα-ソラマルギン及びα-ソラソニンが挙げられる。また、SGAは、トウガラシ属の様々な種類のコショウにも見られる。トマトでは100種類以上のSGAが確認されており(Itkin et al. , 2011, Plant Cell 23:4507-4525)、ジャガイモでは50種類以上のSGAが確認されている(Shakya and Navarre, 2008, J. Agric. Food Chem. 56:6949-6958)。ナスにも、少なくとも1種類のSGAが含まれている(Friedmann, 2006, J. Agric. Food Chem. 54:8655-8681)。
・・・
【0028】
すべての動物が産生する主要なステロールであるコレステロールは、SGAの生合成において重要な構成要素である。コレステロールから始まるSGA生合成の中核に関与するトマト及びジャガイモの一連の遺伝子であるGLYCOALKALOIDMETABOLISM(GAME)が、近年報告された。トマトのSGA生合成経路は、2つの主要部分に分けられる。第1の主要部分では、GAME6、GAME8、GAME11、GAME4、及びGAME12酵素の作用により、コレステロールからSAアグリコンが形成されると考えられる。第2の主要部分では、UDP-糖転移酵素(UGT)の作用により、SGAが産生される(トマトではGAME1、GAME2、GAME17、GAME18、ジャガイモでは、ステロールアルカロイド・グリコシルト・ランスフェラーゼ(SGT1)、SGT2、SGT3)」
(イ)発明の概要
「【課題を解決するための手段】
【0037】
一態様によれば、本開示は、セルロース合成酵素様G(CSLG)酵素をコードする少なくとも1つの異種遺伝子の発現が、対応する非組換え細胞と比較して増加した遺伝子組換え細胞であって、少なくとも1つのステロイド系アルカロイド、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体、少なくとも1つのステロイド系サポニン、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体、または、少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニン、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体の含有量が、対応する非組換え細胞と比較して増加した、遺伝子組換え細胞を提供する。
【0038】
別の態様によれば、本開示は、セルロース合成酵素様G(CSLG)酵素をコードする少なくとも1つのCSLG遺伝子の発現が、対応する非組換え植物における前記CSLG遺伝子の発現と比較して改変された少なくとも1つの細胞を含む遺伝子組換え植物であって、少なくとも1つのステロイド系アルカロイド、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体、少なくとも1つのステロイド系サポニン、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体、または、少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニン、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体の含有量が、対応する非組換え植物と比較して改変された、遺伝子組換え植物を提供する。
【0039】
さらに別の態様によれば、本開示は、遺伝子組換え細胞内にステロイド系アルカロイド、ステロイド系サポニン、またはトリテルペノイド系サポニンを産生する方法であって、(a)前記細胞内に少なくとも1つの異種遺伝子を導入する導入ステップであって、前記少なくとも1つの異種遺伝子がセルロース合成酵素様G(CSLG)酵素をコードしており、前記少なくとも1つの異種遺伝子が任意選択でベクターに含まれている、該ステップと、(b)前記細胞内で前記少なくとも1つの異種遺伝子を発現させる発現ステップと、を含み、前記細胞は、少なくとも1つのステロイド系アルカロイド、少なくとも1つのステロイド系サポニン、または少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニンの含有量が、対応する非組換え細胞と比較して増加する、方法を提供する。
【0040】
さらに別の態様によれば、本開示は、植物またはその少なくとも一部の少なくとも1つの細胞における、少なくとも1つのステロイド系アルカロイド、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体、少なくとも1つのステロイド系サポニン、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体、または、少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニン、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体の含有量を低減させる方法であって、前記少なくとも1つの細胞の遺伝子を組み換える遺伝子組換えステップを含み、前記遺伝子組換えステップは、(a)セルロース合成酵素様G(CSLG)酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子を標的とする少なくとも1つのサイレンシング分子を用いて前記少なくとも1つの植物細胞を形質転換するステップ、または、(b)前記CSLG酵素をコードする前記少なくとも1つの遺伝子の核酸配列を突然変異させるステップであって、前記突然変異が、(1)前記核酸配列内に1以上の点突然変異を導入すること、(2)前記核酸配列内に欠失を導入すること、(3)前記核酸配列内に挿入を導入すること、または、(4)それらの任意の組み合わせを含み、前記導入が、コード配列または非コード配列を突然変異させることを含む、該ステップと、を含み、遺伝子が組み換えられた遺伝子組換え細胞における前記CSLG酵素をコードする遺伝子の発現は、対応する非組換え植物の細胞と比較して減少し、前記遺伝子組換え細胞を含む植物は、少なくとも1つのステロイド系アルカロイド、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体、少なくとも1つのステロイド系サポニン、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体、または、少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニン、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体の含有量が、対応する非組換え植物と比較して減少する、方法を提供する。
【0041】
さらに別の態様によれば、本開示は、植物またはその少なくとも一部の少なくとも1つの細胞における、少なくとも1つのステロイド系アルカロイド、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体、少なくとも1つのステロイド系サポニン、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体、または、少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニン、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体の含有量を増加させる方法であって、前記少なくとも1つの細胞の遺伝子を組み換える遺伝子組換えステップを含み、前記遺伝子組換えステップは、(a)セルロース合成酵素様G(CSLG)酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子の核酸配列を突然変異させるステップであって、前記突然変異が、(1)前記核酸配列内に1以上の点突然変異を導入すること、(2)前記核酸配列内に欠失を導入すること、(3)前記核酸配列内に挿入を導入すること、または、(4)それらの任意の組み合わせを含み、前記導入が、コード配列または非コード配列を突然変異させることを含む、該ステップと、を含み、(b)前記CSLG酵素をコードする前記核酸配列を発現させるステップと、を含み、遺伝子が組み換えられた遺伝子組換え細胞を含む植物は、少なくとも1つのステロイド系アルカロイド、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体、少なくとも1つのステロイド系サポニン、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体、または、少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニン、その誘導体、その代謝物、またはその生合成中間体の含有量が、対応する非組換え植物にと比較して増加する、方法を提供する。」
(ウ)発明を実施するための形態
「【0058】
「CSLG」という用語は、Gファミリー由来のセルロース合成酵素様酵素を包含する。セルロース合成酵素様(CSL)ファミリーには、例えばA、B、E、Gなどの、それぞれ異なる接尾辞を有するものがある。各ファミリーの接尾辞は、事前に特徴付けられたシロイヌナズナ由来のタンパク質に対する酵素の類似性に応じて基づいて付けられる。異なるファミリーのCSL酵素は、異なる技術的特徴を有する。本明細書を通じて使用される、A、B、またはEの接尾辞が付いていない用語「CSL」は、いくつかの実施形態では、「CSLG」という用語と、互換的に使用することができ、すべて同一の意味及び性質を有する。
【0059】
「CSLG」タンパク質は、いくつかの実施形態では、「GAME15」タンパク質及び「SOAP5」タンパク質を包含する。
【0060】
本明細書では、6つの検査済みCSLG遺伝子について説明する。いくつかの実施形態では、それらには、GAME15遺伝子と、それらがコードする酵素(トマト、野生トマト、ジャガイモ、野生ポテト、ナス、ピーマンの6種に由来する6つの酵素)が含まれる。これらは、グルクロン酸または他の糖部分を転移してステロイド系アルカロイドを産生するか、あるいは、グルクロン酸または他の糖部分をフロスタノール型サポニン(アグリコン)上に転移してステロイド系サポニンまたはその前駆体を産生するか、またはステロイド系アルカロイドまたはその前駆体を産生する(例えば、図1を参照)。
【0061】
本明細書では、グルクロン酸をトリテルペノイドアグリコン上に転移する7つの検査済みCSLG遺伝子(SOAP5遺伝子としても知られている)と、それがコードする酵素(ホウレンソウ、ウラルカンゾウ、レッドビート、キノア、アルファルファ、ダイズ、及びミヤコグサの7種に由来する7つの酵素)について説明する。「トリテルペノイドアグリコン」という用語は、いくつかの実施形態では、β-アミリンから誘導される化合物群を包含する。したがって、本明細書に開示されるCSLG酵素は、ユニークな活性を提供する。
【0062】
当業者であれば、細胞、例えば、植物細胞、酵母細胞、藻類細胞、細菌細胞におけるステロイド系アルカロイド、ステロイド系サポニン、またはトリテルペノイド系サポニンのうちの少なくとも1つの含有量を改変することは、内在性CSLG遺伝子を変異させることを含むか、CSLG遺伝子発現を調節することを含むか、あるいは、CSLG酵素を発現しない細胞に、または異種細胞で発現するCSLG酵素の活性を補うために、異種CSLGを添加することを含むことを理解できるであろう。いくつかの実施形態では、植物細胞は、植物またはその一部に含まれている。」
「【0085】
いくつかの実施形態では、(a)植物細胞がナデシコ目の植物の細胞を含む場合、植物は、ホウレンソウ、ビーツ、及びキノアからなる群から選択される、(b)植物細胞がナス目の植物の細胞を含む場合、植物は、トマト、野生型トマト、ジャガイモ、野生型ポテト、ナス、ペッパー、ピーマン、トウガラシ、チリペッパー、パプリカ、タバスコペッパー、グランドチェリー、タバコ、及びビタースイートからなる群から選択される、あるいは、(c)植物細胞がマメ目の植物の細胞を含む場合、植物は、アルファルファ、大豆、ミヤコグサ、及び甘草からなる群から選択される。」
(エ)実施例1~13
a ナス科植物では、トマトに関する図13の概略図に示すような生合成経路が提案され、コレステロールから変換される反応において、種々のGAME酵素が関与する(実施例5)。
b トマト、ジャガイモ、及びナスにおけるCLSG酵素であるGAME15酵素は、そのグルクロン酸トランスフェラーゼ活性によって、ステロイド系グリコアルカロイドの生合成に関与し、トマト(Solanum lycopersicum)由来のGAME15酵素をコードする核酸配列、そのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号30、配列番号31に示されるものとして同定された(実施例6)。
c トマト、ジャガイモ、及びナスについて、GAME15遺伝子に対してサイレンシングを行うGAME15-RNAiベクターを作製し、当該ベクターを用いて各植物を形質転換したところ、α-トマチン等、ステロイド系グリコアルカロイドの著しい低下が見られ(実施例6~9)、さらに、トマトにおいては、野生型に比べて、ステロイド系グリコアルカロイド前駆体であるコレステロールの約15~20倍の増加が認められた(実施例10)。
d トマト、ジャガイモ、ナスにおいて、α-トマチン等、ステロイド系グリコアルカロイドの産生を増加させるため、GAME15を過剰発現させた(実施例12)。
(オ)実施例14~25
a ホウレンソウの葉におけるトリテルペノイド系サポニンについて、その構造分析とその生合成経路に関与する酵素を同定する研究を行い、図20A等に示される生合成経路とこれに関与するSOAP酵素の関係を示した(実施例15~16)。
b ベンサミアナタバコにおいて、ホウレンソウ由来のSOAP1~4及び6~10を一過性発現させると、図20Aに示されるメディカゲン酸が産生された一方、ホウレンソウの葉で検出されたいずれのサポニンも産生されず、さらにホウレンソウ由来のCLSG酵素であるSOAP5を発現させると、図20Aに示されるメディカゲン酸3-O-グルクロニド、ヨッソシドVが産生され、当該SOAP5は、ホウレンソウサポニングルクロン酸トランスフェラーゼとして同定され、当該酵素をコードする塩基配列、そのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号65、66に示されるものである(実施例18、19)。
c ホウレンソウにおいてCSLG酵素であるSOAP5をサイレンシングしたところ、ホウレンソウの葉においてメディカゲン酸の高い蓄積が認められた(実施例19)。
d 酵素において、ホウレンソウ由来のSOAP1~4を発現させたところ、メディカゲン酸が産生し、さらにホウレンソウ由来のSOAP5、及びSOAP5に活性化糖を提供するUDP-グルコース6-デヒドロゲナーゼ1を発現させたところ、メディカゲン酸3-O-グルクロニドが産生された(実施例21)。
e 非ホウレンソウ植物種である、ダイズ(Glycine max)、アルファルファ(Medicago sativa)、ミヤコグサ(Lotus japonicus)、カンゾウ(ウラルカンゾウ(Glycyrrhiza uralensis))、ビートルート(Beta vulgaris)、及びキノア(Chenopodium quinoa)において、ホウレンソウSOAP5酵素と最も近いホモログをクローニングし、ベンサミアナタバコにおいて、SOAP1~4と共に一過性で発現させたところ、メディカゲン酸3-O-グルクロニドが産生された(実施例22)。
f 上記eに記載されるとおりクローニングされた、カンゾウ由来のCSLG酵素が、カンゾウで産生されるトリテルペノイド系サポニンであるグリチルリチンの生合成における、アグリコンへのグルクロン酸の付加に関与することが示された(実施例23)。
g ホウレンソウ由来のCSLG酵素であるSOAP5酵素を古典的なセルロース合成酵素A(CESA)と比較し、これらが約30%のアミノ酸配列類似性であり進化的に異なることが示され、さらに、SOAP5酵素は、CESAの特定のアミノ酸モチーフが保存されていないことが示された(実施例24)。
h 蛍光レポーターを用いた実験により、SOAP1~5タンパク質は、小胞体中で互いに近接して局在化していることが示された(実施例25)。
(カ)図面(図面の簡単な説明を含む)
「【図1】
[図:0001427134000001.jpg]
【図1】ナス科の植物のトリテルペノイド生合成経路において、コレステロールからα-トマチンに至るまでのステロイド系グリコアルカロイドの生合成経路を提案している。破線及び実線の矢印は、それぞれ、経路中の複数または単一の酵素反応を表す。」
「【図13】
[図:0001427134000002.jpg]
【図13】シクロアルテノール(Part I)から、コレステロール(Part II)、トマチジン(Part III)、α-トマチンを含むステロイド系グリコアルカロイドを経てリコペロシド/エスクレオシド(Part IV)に至る、ナス科植物における拡大された生合成経路の提案を示している。破線の矢印は、経路中の複数の酵素反応を表す。」
「図14D
[図:0001427134000003.jpg]
【図14D】トマチジンからトマチジン3-O-グルクロニドの生成までの、ナス科植物におけるSGA生合成経路の提案部分を示す図である。GAME15セルロース合成酵素様G酵素が、トマチジンの水酸基の位置にグルクロン酸の付加を触媒している。」
「【図20A】
[図:0001427134000004.jpg]
【図20A】共発現したサポニンβ-アミリン合成酵素(SOAP)遺伝子を含む、ホウレンソウのサポニンの生合成経路を示す図である。C-20位(赤で強調)にグルクロン酸が結合したアセチル化トリテルペノイドサポニンであるYossoside Vの生成に至る完全な生合成経路。SOAP酵素の活性による各生成物は緑色で表示されている。SOAP酵素は、ホウレンソウのサポニン生産に関与する酵素である。」
ウ 判断
(ア)本願補正発明が解決しようとする課題
本願明細書の前記イ(イ)に示す「【課題を解決するための手段】」として記載された事項(特に【0040】)から、本願補正発明が解決しようとする課題は、本願補正発明の発明特定事項にも反映されているとおり、セルロース合成酵素様G(CSLG)酵素の発現の制御、又はその遺伝子の配列改変により、少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニンの含有量を低減させる方法を提供すること、であると認められる。
そして、本願補正発明には、「セルロース合成酵素様G(CSLG)酵素をコードする核酸遺伝子配列」について、「配列番号30に記載の核酸配列を含むか、または、配列番号30に記載の核酸配列に対して少なくとも90%の同一性及び少なくとも55%のカバレッジを有するそのホモログ」であること、CSLG酵素の発現の制御として、「少なくとも1つのサイレンシング分子を用い」ること、CSLG酵素の遺伝子の配列改変として、「突然変異させる」ことが特定されている。
したがって、本願補正発明がサポート要件を満たすには、本願明細書等において、「セルロース合成酵素様G(CSLG)酵素をコードする核酸遺伝子配列」である「配列番号30に記載の核酸配列を含むか、または、配列番号30に記載の核酸配列に対して少なくとも90%の同一性及び少なくとも55%のカバレッジを有するそのホモログ」に対して、「少なくとも1つのサイレンシング分子を用い」ること、又は「突然変異させる」ことによって、「少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニンの含有量を低減させる」ことができ、上記課題を解決できると当業者が認識できるように記載されている必要がある。
(イ)ステロイド系サポニンとトリテルペノイド系サポニンについて
本願明細書等の【0004】(前記イ(ア))に記載されているように、サポニンは、1以上のグリコシド部分(糖部分)とトリテルペノイド又はステロイド骨格のアグリコン部分とからなる化合物の総称であるところ、本願明細書等に記載される「ステロイド系サポニン」、「トリテルペノイド系サポニン」は、それぞれ、アグリコン部分がステロイド骨格であるサポニン、アグリコン部分がトリテルペノイド骨格であるサポニンである。
さらに、ナス科植物における生合成経路の例として、トマトにおける生合成が示された図13から、「ステロイド系サポニン」は、シクロアルテノールからコレステロールを経由して生合成されるのに対して、「トリテルペノイド系サポニン」は、シクロアルテノールから直接生合成されるものである。
(ウ)セルロース合成酵素様G(CSLG)酵素について
本願の実施例には、CSLG酵素として、トマト、ジャガイモ、及びナス由来のGAME15(前記イ(エ))、並びにホウレンソウ、及び非ホウレンソウ植物種由来のSOAP5(前記イ(オ))が記載されている。両者は、共に、サポニン生合成において、アグリコンに糖を結合させる反応を触媒するが、基質とするアグリコンが、GAME15ではステロイド骨格であり、SOAP5ではトリテルペノイド骨格である点で異なり、その結果、生合成するサポニンの種類も、GAME15では「ステロイド系サポニン」である一方、SOAPでは「トリテルペノイド系サポニン」であり異なる(GAME15酵素:前記イ(エ)、前記イ(カ)図14D/SOAP5酵素:前記イ(オ)、図20A)。
酵素は、基質特異性を有するタンパク質であるから、上記のとおり基質が異なるGAME15とSOAP5は、関与する触媒反応が異なる、別の種類の酵素であるといえる。本願の実施例で代表的に示されているトマト由来のGAME15とホウレンソウ由来のSOAP5について、これらのアミノ酸配列(前者は配列番号31に示され、後者は配列番号66に示されるもの)の配列同一性を当審が算出したところ、確かに50%未満と低く、構造的にも類似性のないものである。
(エ)サポート要件、及び実施可能要件についての判断
前記(ウ)のとおり、GAME15とSOAP5は、基質が異なり、関与する触媒反応も異なる別の酵素と解され、GAME15は基質であるステロイド骨格を糖に結合させてステロイド系サポニンを生合成すものであるところ、本願の実施例には、GAME15がトリテルペノイド系サポニンの生合成にも関与することは、何ら具体的に示されていない。そうすると、本願補正発明において「配列番号30に記載の核酸配列」(上記のとおりトマト由来のCSLG酵素であるGAME15をコードする核酸配列)により特定される「セルロース合成酵素様G(CSLG)酵素」と本願補正発明の「トリテルペノイド系サポニン」の生合成との関係は何ら具体的な開示がないといえる。
本願明細書等の実施例以外の記載について検討しても、ステロイド系サポニン及びトリテルペノイド系サポニンが、CSLG酵素との関係で同列に一般的に記載されている箇所が多数存在する(前記イ(イ)【0037】~【0040】、前記イ(ウ)【0062】等)一方で、トリテルペノイド系サポニンの生合成においてGAME15が機能する、又は機能する蓋然性が高い、といえることの具体的な根拠は何ら示されていない。
そうすると、本願補正発明で特定される「配列番号30に記載の核酸配列」は、トマトのGAME15酵素をコードするものであるから、「セルロース合成酵素様G(CSLG)酵素をコードする核酸遺伝子配列」である「配列番号30に記載の核酸配列を含むか、または、配列番号30に記載の核酸配列に対して少なくとも90%の同一性及び少なくとも55%のカバレッジを有するそのホモログ」に対して、「少なくとも1つのサイレンシング分子を用い」ること、又は「突然変異させる」ことによってステロイド系サポニンの含有量を低減できることは把握できるとしても、「少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニンの含有量を低減させる」ことができることは、当業者といえども把握できるとは認められない。
したがって、本願補正発明は、前記(ア)に示す課題が解決できることを当業者が認識できるように本願明細書等に記載された範囲を超えているから、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、上記のとおり、実施例を含む本願明細書等には、トリテルペノイド系サポニンの生合成においてGAME15が機能することが何ら具体的に記載されておらず、本願出願時の技術常識を参酌しても、当業者がそのように把握できるともいえず、トマトのGAME15酵素に対して「サイレンシング分子を用い」る、又は「突然変異させる」ことにより、「トリテルペノイド系サポニンの含有量を低減させる」実施態様に係る本願補正発明について、これを実施することができる程度に本願の発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載したものとは認められないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
エ 請求人の主張について
請求人は、令和5年5月17日付け審判請求書において、概ね以下の点を主張している。
(ア)本願の発明の詳細な説明には、SOAP5の過剰発現及びサイレンシングによるトリテルペノイド系サポニンの調節、及びGAME15のサイレンシングによるエスクレオシド、α-ソラニン及びα-チャコニンの減少が実験的証拠に基づいて示されていること。
(イ)追加で提出する出願後データでは、エンドウのCSL遺伝子を遺伝子編集によって変異させたエンドウ植物を作製したところ、ソヤサポニンβg及びソヤサポニンBbがほぼ完全に消失したことが示されていること。
しかしながら、上記(ア)の主張について、前記ウ(エ)に示すとおり、本願明細書等において、ステロイド系サポニン及びステロイド系グリコアルカロイドの生合成においてGAME酵素が機能すること、及びトリテルペノイド系サポニンの生合成においてSOAP酵素が機能することが具体的に開示されていることは、当審で認めるところであり、この点を主張するにすぎないものである。
また、上記(イ)の主張について、本願補正発明で「配列番号30に記載の核酸配列」によって特定される「セルロース合成酵素様G(CSLG)酵素」の遺伝子とエンドウのCSL遺伝子との構造的な関係性は何ら示されておらず、本願明細書等のいずれの記載内容を補足するデータが不明であるところ、当該データを参酌することはできない。仮に、当該データが、カンゾウ等のマメ目の植物について具体的に開示する実施例14~25(前記イ(オ))を補足するものであるとしても、トリテルペノイド系サポニンの生合成においてSOAP酵素が機能することの根拠をさらに提示するものにすぎない。
以上のとおり、請求人の上記(ア)、(イ)の主張は、トリテルペノイド系サポニンの生合成においてGAME酵素が機能することの根拠を示すものではなく、採用できるものではない。
(2)補正の適否のまとめ
したがって、前記(1)に記載したとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものである。
4.補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであるから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、この出願の請求項1~15に係る発明は、令和4年10月26日付け誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載の事項により特定される発明であり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
植物またはその少なくとも一部の少なくとも1つの細胞における、少なくとも1つのステロイド系サポニン、または、少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニンの含有量を低減させる方法であって、
前記少なくとも1つの細胞の遺伝子を組み換える遺伝子組換えステップを含み、
前記遺伝子組換えステップは、
(a)セルロース合成酵素様G(CSLG)酵素をコードする核酸遺伝子配列を標的とする少なくとも1つのサイレンシング分子を用いて前記少なくとも1つの植物細胞を形質転換するステップであって、前記CSLG酵素をコードする前記核酸遺伝子配列は、配列番号30に記載の核酸配列を含むか、または、配列番号30に記載の核酸配列に対して少なくとも90%の同一性及び少なくとも55%のカバレッジを有するそのホモログである、該ステップ、または、
(b)前記CSLG酵素をコードする前記少なくとも1つの核酸遺伝子配列を突然変異させるステップであって、前記CSLG酵素をコードする前記少なくとも1つの核酸遺伝子配列は、配列番号30に記載の核酸配列を含むか、または、配列番号30に記載の核酸配列に対して少なくとも90%の同一性及び少なくとも55%のカバレッジを有するそのホモログを含み、前記突然変異が、(1)前記核酸配列内に1以上の点突然変異を導入すること、(2)前記核酸配列内に欠失を導入すること、(3)前記核酸配列内に挿入を導入すること、または、(4)それらの任意の組み合わせを含み、前記導入が、コード配列または非コード配列を突然変異させることを含む、該ステップ、を含み、
遺伝子が組み換えられた遺伝子組換え細胞における前記CSLG酵素をコードする遺伝子の発現は、対応する非組換え植物の細胞における発現と比較して減少し、
前記遺伝子組換え細胞を含む植物は、少なくとも1つのステロイド系サポニン、または、少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニンの含有量が、対応する非組換え植物と比較して減少する、方法。」
第4 原査定の理由
令和5年1月6日付け拒絶査定(原査定)は、本願の請求項1~15に係る発明は、特許法第36条第6項第1号、及び同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない、という理由を含むものである。
第5 当審の判断
本願発明の解決しようとする課題は、請求項1及び本願明細書の記載からみて、セルロース合成酵素様G(CSLG)酵素の発現の制御、又はその遺伝子の配列改変により、少なくとも1つのステロイド系サポニン、又は少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニンの含有量を低減させる方法を提供すること、であると認められる。
そして、本願発明における「少なくとも1つのステロイド系サポニン、または、少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニンの含有量を低減させる方法」は、本願補正発明(前記第2の2.(1)ア)における「少なくとも1つのトリテルペノイド系サポニンの含有量を低減させる方法」を含むものである。
したがって、前記第2の2.(1)と同様の理由により、本願発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えており、発明の詳細な説明は、本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
よって、本願発明は、特許法第36条第6項第1号、及び同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
第6 むすび
以上のとおり、この出願の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第1号、及び同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-008081