特許拒絶査定不服審判
2023-008064
電気化学装置の充電方法、電子装置、及び読み取り可能な記憶媒体
- 審判番号
- 2023-008064
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-525850
- 請求日
- 2023年05月17日
- 審決日
- 2023年12月19日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東莞新能安科技有限公司
- 【請求人代理人】TRY国際弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 稲葉 崇
- 審判官 土居 仁士
- 分類
- P18 .113-Z (H01M) / P18 .121-Z (H01M) / P18 .56 -Z (H01M) / P18 .572-Z (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-525850「電気化学装置の充電方法、電子装置、及び読み取り可能な記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月30日国際公開、WO2021/189241、令和 4年 8月 8日国内公表、特表2022-535307〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)3月24日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 4年 8月 4日付け 拒絶理由通知書
11月 9日 意見書・手続補正書
令和 5年 1月12日付け 拒絶査定
5月17日 審判請求書・手続補正書
7月 3日 前置報告書
以下では、令和5年1月12日付け拒絶査定を「原査定」といい、同年5月17日の手続補正書による補正を「本件補正」という。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和4年11月9日の手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1~13を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~11へと補正するものである。なお、下記(2)における下線は補正箇所を示す。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
電気化学装置の充電方法であって、
充電段階が第1オフ電流を有する第1サイクル段階と、
充電段階が第2オフ電流を有する第2サイクル段階と、を含み、前記第2オフ電流は前記第1オフ電流より大きいことを特徴とする充電方法。
【請求項2】
前記第1サイクル段階の定電流充電と前記第2サイクル段階の定電流充電は同じであることを特徴とする請求項1に記載の充電方法。
【請求項3】
順次のn個のサイクル段階を含み、前記n個のサイクル段階は、それぞれ第iサイクル段階と定義され、i=1,2,…,nであり,nは1より大きい正の整数であり、前記第iサイクル段階の前サイクル段階は第i-1サイクル段階と定義され、前記第iサイクル段階の充電段階は第iオフ電流を有し、前記第i-1サイクル段階の充電段階は第i-1オフ電流を有し、前記第iオフ電流は前記第i-1オフ電流より大きいことを特徴とする請求項2に記載の充電方法。
【請求項4】
前記第iサイクル段階は定電圧充電段階を含み、前記第iサイクル段階の定電圧充電段階の電圧は第i電圧として定義され、第i-1サイクル段階の定電圧充電段階の電圧は、第i-1電圧として定義され、前記第i電圧は、前記第i-1電圧以下であることを特徴とする請求項2に記載の充電方法。
【請求項5】
前記第iサイクル段階は定電流充電段階を含み、前記第iサイクル段階の定電流充電段階の電流は第i電流として定義され、第i-1サイクル段階の定電流充電段階の電流は、第i-1電流として定義され、前記第i電流は、前記第i-1電流と等しく、前記第i電流は0.5C~6Cであることを特徴とする請求項3に記載の充電方法。
【請求項6】
前記第i電圧は3.8V~4.5Vであることを特徴とする請求項4に記載の充電方法。
【請求項7】
前記第iサイクル段階は10~500回のサイクルを有することを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の充電方法。
【請求項8】
前記電気化学装置は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された分離膜とを有する電極組立体を備え、前記正極および前記負極の少なくとも一方は、2つ以上のタブを有することを特徴とする請求項2に記載の充電方法。
【請求項9】
前記電極組立体は、巻取り型構造であり、前記正極および前記負極の少なくとも一方は、2周あたり1つのタブを有することを特徴とする請求項8に記載の充電方法。
【請求項10】
前記正極は、化学式LiαNixCoyM1zM2βO2(0.95≦α≦1.05、0.6≦x<1、0<y<0.4、0<z<0.4、0≦β≦0.05、x+y+z+β=1、M1元素はMnまたはAlから選択される1種または2種、M2元素はMg、Ti、Zr、Nb、Y、Cr、V、Ge、MoまたはSrから選択される少なくとも1種)で示される化合物のうちの少なくとも1種の正極活物質を含むことを特徴とする請求項8に記載の充電方法。
【請求項11】
前記正極活物質は、
(a)二次粒子を含む、
(b)Dv10≧5.0μm、
(c)7.5μm<Dv50<12.5μm、
(d)Dv90≦22.0μm、の少なくとも1つを有し、
前記Dv10は体積基準の粒度分布において、小粒径側から体積累積10%となる粒径を示し、前記Dv50は、体積基準の粒度分布において、小粒径側から体積累積50%となる粒径を示し、前記Dv90は、体積基準の粒度分布において、小粒径側から体積累積90%となる粒径を示すことを特徴とする請求項10に記載の充電方法。
【請求項12】
電子装置であって、
電気化学装置と、
請求項1から11のいずれか一項に記載の充電方法を実行して前記電気化学装置を充電するプロセッサと、を含むことを特徴とする電子装置。
【請求項13】
コンピュータ命令を記憶した読み取り可能な記憶媒体であって、前記コンピュータ命令が電子装置上で作動すると、請求項1から11のいずれか一項に記載の充電方法を前記電子装置に実行させることを特徴とする読み取り可能な記憶媒体。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
電気化学装置の充電方法であって、
前記充電方法は、順次のn個のサイクル段階を含み、前記n個のサイクル段階は、それぞれ第iサイクル段階と定義され、前記i=1,2,…,nであり,nは1より大きい正の整数であり、前記第iサイクル段階の前のサイクル段階は、第i-1サイクル段階と定義され、
前記第iサイクル段階は、定電圧充電段階を含み、
ここで、前記第iサイクル段階の定電圧充電段階の電圧は第i電圧として定義され、第i-1サイクル段階の定電圧充電段階の電圧は、第i-1電圧として定義され、前記第i電圧は、前記第i-1電圧以下であり、
前記第iサイクル段階の定電圧充電段階は第iオフ電流を有し、前記第i-1サイクル段階の定電圧充電段階は第i-1オフ電流を有し、前記第iオフ電流は前記第i-1オフ電流よりも大きいことを特徴とする充電方法。
【請求項2】
前記第1サイクル段階の定電流充電と前記第2サイクル段階の定電流充電は同じであることを特徴とする請求項1に記載の充電方法。
【請求項3】
前記第iサイクル段階は定電流充電段階を含み、前記第iサイクル段階の定電流充電段階の電流は第i電流として定義され、第i-1サイクル段階の定電流充電段階の電流は、第i-1電流として定義され、前記第i電流は、前記第i-1電流と等しく、前記第i電流は0.5C~6Cであることを特徴とする請求項1に記載の充電方法。
【請求項4】
前記第i電圧は3.8V~4.5Vであることを特徴とする請求項1に記載の充電方法。
【請求項5】
前記第iサイクル段階は10~500回のサイクルを有することを特徴とする請求項1に記載の充電方法。
【請求項6】
前記電気化学装置は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された分離膜とを有する電極組立体を備え、前記正極および前記負極の少なくとも一方は、2つ以上のタブを有することを特徴とする請求項1に記載の充電方法。
【請求項7】
前記電極組立体は、巻取り型構造であり、前記正極および前記負極の少なくとも一方は、2周あたり1つのタブを有することを特徴とする請求項6に記載の充電方法。
【請求項8】
前記正極は、化学式LiαNixCoyM1zM2βO2(0.95≦α≦1.05、0.6≦x<1、0<y<0.4、0<z<0.4、0≦β≦0.05、x+y+z+β=1、M1元素はMnまたはAlから選択される1種または2種、M2元素はMg、Ti、Zr、Nb、Y、Cr、V、Ge、MoまたはSrから選択される少なくとも1種)で示される化合物のうちの少なくとも1種の正極活物質を含むことを特徴とする請求項6に記載の充電方法。
【請求項9】
前記正極活物質は、
(a)二次粒子を含む、
(b)Dv10≧5.0μm、
(c)7.5μm<Dv50<12.5μm、
(d)Dv90≦22.0μm、の少なくとも1つを有し、
前記Dv10は体積基準の粒度分布において、小粒径側から体積累積10%となる粒径を示し、前記Dv50は、体積基準の粒度分布において、小粒径側から体積累積50%となる粒径を示し、前記Dv90は、体積基準の粒度分布において、小粒径側から体積累積90%となる粒径を示すことを特徴とする請求項8に記載の充電方法。
【請求項10】
電子装置であって、
電気化学装置と、
請求項1から9のいずれか一項に記載の充電方法を実行して前記電気化学装置を充電するプロセッサと、を含むことを特徴とする電子装置。
【請求項11】
コンピュータ命令を記憶した読み取り可能な記憶媒体であって、前記コンピュータ命令が電子装置上で作動すると、請求項1から9のいずれか一項に記載の充電方法を前記電子装置に実行させることを特徴とする読み取り可能な記憶媒体。
」
2 補正の適否について
(1)本件補正事項
本件補正は、本件補正前の請求項1について、以下のアを削除して以下のイを追加するもの(以下「補正事項」という。)を含む。
ア 「充電段階が第1オフ電流を有する第1サイクル段階と、
充電段階が第2オフ電流を有する第2サイクル段階と、を含み、前記第2オフ電流は前記第1オフ電流より大きい」
イ 「前記充電方法は、順次のn個のサイクル段階を含み、前記n個のサイクル段階は、それぞれ第iサイクル段階と定義され、前記i=1,2,…,nであり,nは1より大きい正の整数であり、前記第iサイクル段階の前のサイクル段階は、第i-1サイクル段階と定義され、
前記第iサイクル段階は、定電圧充電段階を含み、
ここで、前記第iサイクル段階の定電圧充電段階の電圧は第i電圧として定義され、第i-1サイクル段階の定電圧充電段階の電圧は、第i-1電圧として定義され、前記第i電圧は、前記第i-1電圧以下であり、
前記第iサイクル段階の定電圧充電段階は第iオフ電流を有し、前記第i-1サイクル段階の定電圧充電段階は第i-1オフ電流を有し、前記第iオフ電流は前記第i-1オフ電流よりも大きい」
(2)補正目的について
ア 特許法第17条の2第5項の規定によれば、拒絶査定不服審判の請求と同時にする特許請求の範囲についての補正は、請求項の削除(第1号)、特許請求の範囲の減縮(第2号)、誤記の訂正(第3号)、明りようでない記載の釈明(第4号)のいずれかを目的とするものに限るとされている。
イ そこで、補正事項について、以下、検討する。
ウ 補正事項により追加された前記(1)イにおいて規定される「n個のサイクル段階」は、「nは1より大きい正の整数」とされているとおり、「第1サイクル段階」、「第2サイクル段階」という2個に限定されない個数の「サイクル段階」を規定するものであるから、本件補正前の請求項1において記載された発明特定事項である「第1サイクル段階」、「第2サイクル段階」をさらに限定するものとはいえない。
したがって、補正事項は、本件補正前の請求項1を減縮するものとは認められない。
エ 補正事項により追加された前記(1)イの内の「順次のn個のサイクル段階を含み、前記n個のサイクル段階は、それぞれ第iサイクル段階と定義され、前記i=1,2,…,nであり,nは1より大きい正の整数であり、前記第iサイクル段階の前のサイクル段階は、第i-1サイクル段階と定義され、」、「前記第iサイクル段階の定電圧充電段階は第iオフ電流を有し、前記第i-1サイクル段階の定電圧充電段階は第i-1オフ電流を有し、前記第iオフ電流は前記第i-1オフ電流よりも大きい」は、本件補正前の請求項3に記載されている。
オ また、補正事項により追加された前記(1)イの内の「前記第iサイクル段階は、定電圧充電段階を含み、」、「前記第iサイクル段階の定電圧充電段階の電圧は第i電圧として定義され、第i-1サイクル段階の定電圧充電段階の電圧は、第i-1電圧として定義され、前記第i電圧は、前記第i-1電圧以下」は、本件補正前の請求項4に記載されている。
カ しかしながら、本件補正前の請求項3は、「請求項2に記載の充電方法」との発明特定事項を備えており、本件補正前の請求項2の発明特定事項である「前記第1サイクル段階の定電流充電と前記第2サイクル段階の定電流充電は同じであること」を備えているが、本件補正後の請求項1は当該発明特定事項を備えていない。
同様に、本件補正前の請求項4は、「請求項2に記載の充電方法」との発明特定事項を備えているが、本件補正後の請求項1は当該発明特定事項を備えていない。
したがって、本件補正後の請求項1は、本件補正前の特許請求の範囲における請求項3又は請求項4を減縮したものであるとも認められない。
キ 前記ウ及びカによれば、補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
ク また、補正事項が、同項第1、3、4の各号に掲げられたいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。
ケ してみると、補正事項は、同項第1号乃至第4号に掲げられたいずれを目的とするものにも該当しない。
よって、補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定を満たすものではない。
3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
4 独立特許要件について
上記のとおり、本件補正前の請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当するものではないが、念のため、本件補正前の請求項1に係る補正が限定的減縮であると仮定して、本件補正後の請求項1に係る発明(前記1(2)の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。))が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に示した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められる。
なお、後の参照の便宜のため、請求項1を以下のA~Eに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項1】
A 電気化学装置の充電方法であって、
B 前記充電方法は、順次のn個のサイクル段階を含み、前記n個のサイクル段階は、それぞれ第iサイクル段階と定義され、前記i=1,2,…,nであり,nは1より大きい正の整数であり、前記第iサイクル段階の前のサイクル段階は、第i-1サイクル段階と定義され、
C 前記第iサイクル段階は、定電圧充電段階を含み、
D ここで、前記第iサイクル段階の定電圧充電段階の電圧は第i電圧として定義され、第i-1サイクル段階の定電圧充電段階の電圧は、第i-1電圧として定義され、前記第i電圧は、前記第i-1電圧以下であり、
E 前記第iサイクル段階の定電圧充電段階は第iオフ電流を有し、前記第i-1サイクル段階の定電圧充電段階は第i-1オフ電流を有し、前記第iオフ電流は前記第i-1オフ電流よりも大きいことを特徴とする充電方法。
(2)引用文献の記載事項
ア 原査定で引用された特開2010-81683号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した。
(ア)「【0001】
本発明は、充電器に関する。」
(イ)「【0003】
ところで、リチウムイオン電池は、充電器による充電を繰り返すと、正極(カソード)のコバルトが溶出したり、負極(アノード)の集電体の銅が溶出したりして、ダメージが与えられそれが蓄積されて内部抵抗が次第に高くなるとともに充電容量も低下し二次電池として機能しなくなることが知られている。
【0004】
このように、充電回数が多くなった二次電池を充電器で充電を行うと、内部抵抗が高い状態にあることから、電池温度が上昇し、内圧が上昇して内部の電解液が漏れる虞がある。また、漏れ出た電解液は、可燃物であり、導電性も有するため、電池パック内に内蔵した電子回路や充電器側の回路とトラッキングを起こし、最悪の場合発火する虞もあった。
【0005】
しかしながら、ユーザは充電を行う際、充電回数が多い二次電池かどうか知ることができないため、充電回数を意識することなく通常の充電してしまうのが一般的であった。そのため、該充電によって、二次電池に大きなダメージを与えて、該電池の寿命を短くするといった問題があった。また、最悪の場合には上記した問題が生じる虞もあった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、電池のダメージを軽減し、二次電池の寿命を延ばすことのできる充電器を提供することにある。」
(ウ)「【0038】
そして、制御回路12は、装着した電池パック5に対して該制御回路12に内蔵したプログラムメモリに予め定めた記憶したプログラムに従って、充電を実行する。
詳述すると、図3に示すように、制御回路12は、まず、電池パック5に対して予備充電を行った後に、定電流充電を行い(定電流充電工程)する。そして、電池電圧Vnが予め制御回路12内のメモリ12aに記憶された該装着される電池パック5に対する充電制御電圧としての目標電池電圧Vnpに到達した時、次に定電圧充電を行って(定電圧充電工程)充電を完了するようになっている。」
(エ)「【0041】
期間T1が経過すると通常の定電流充電に移行する。定電流充電は、電池電圧Vnが目標電池電圧Vnpに達するまで行い、目標電池電圧Vnpに達すると、定電圧充電に移行する。
【0042】
この期間T2(定電流充電期間)、電池パック5は、電池電圧Vnが目標電池電圧Vnpに達していない電池電圧検出信号SG2が電圧測定回路13から制御回路12に出力されている。
【0043】
そして、期間T2が経過して電池電圧Vnが目標電池電圧Vnpになると、充電器1は時刻t2から定電流充電から定電圧充電に移行する。
定電圧充電への移行後は、充電器1は過充電信号SG1がアクティブになる度に充電電流Icを予め定める減分ずつ低下させていく多段定電流充電を行うことによって、セル電圧を目標セル電圧値に維持しながら、充電電流Icが抑制される。
【0044】
充電器1は、充電電流Icをその要領で下げてゆき、期間T3が経過して、予め定める値の充電終止電流Ieまで低下したら、該電池パック5の充電を完了する。
ところで、電池パック5の充電を開始するとき、制御回路12は、装着した電池パック5の充電回数Nをメモリ9から読み出し、その充電回数Nに対応した充電態様で該電池パック5に対して充電を実行するようになっている。」
(オ)図3
[図:0001411002000001.jpg]
図3によれば、定電圧充電において、電池電圧Vnは目標電池電圧Vnpで一定となる。
(カ)「【0080】
・上記実施形態では、充電回数Nに応じて、定電流充電工程における充電電流Icを変更した。これを、充電回数Nに応じて、充電の完了を決める充電終止電流Ieを変更して実施してもよい。図8に示すように、例えば、充電回数が第1規定回数N1未満の電池パック5の定電圧充電工程時の充電終止電流Ie1より、充電回数Nが第1規定回数N1~第2規定回数未満の電池パック5の定電圧充電工程時の充電終止電流Ie2を高くして、早めに充電を完了する。
【0081】
詳述すると、定電流充電工程及び定電圧充電工程における目標電池電圧Vnp、充電電流Icの値は、充電回数Nに関係なくすべての電池パック5に対して同じにする。ただ、充電を完了する際の、充電終止電流Ieの値を充電回数Nが多い電池パック5を充電回数Nが少ない電池パック5より大きくする。これによって、充電回数Nが多い電池パック5を、早く定電圧充電工程に移行させて電池セルE1~Enのダメージを軽減させることができる。そして、前記実施形態と同様に、電池セルE1~Enの長寿命化を図ることができる。」
イ 引用発明
前記アの記載によれば、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa~iに分説し、「構成a」のようにして参照する。
「a 充電器であって、(【0001】)
b リチウムイオン電池は、充電器による充電を繰り返すと、ダメージが与えられそれが蓄積されて内部抵抗が次第に高くなるとともに充電容量も低下し二次電池として機能しなくなることが知られており、充電回数が多くなった二次電池を充電器で充電を行うと、内部抵抗が高い状態にあることから、電池温度が上昇し、内圧が上昇して内部の電解液が漏れる虞があり、最悪の場合発火する虞もあり、ユーザは充電回数を意識することなく通常の充電してしまうのが一般的であり、そのため、該充電によって、二次電池に大きなダメージを与えて、該電池の寿命を短くするといった問題があり、また、最悪の場合には上記した問題が生じる虞もあるところ、電池のダメージを軽減し、二次電池の寿命を延ばすことのできる充電器を提供することを目的とし、(【0003】~【0006】)
c 制御回路12は、まず、電池パック5に対して予備充電を行った後に、定電流充電を行い(定電流充電工程)、電池電圧Vnが目標電池電圧Vnpに到達した時、次に定電圧充電を行って(定電圧充電工程)充電を完了するようになっており、(【0038】)
d 定電圧充電への移行後は、充電器1は多段定電流充電を行うことによって、セル電圧を目標セル電圧値に維持しながら、充電電流Icが抑制され、(【0043】)
e 充電器1は、充電電流Icをその要領で下げてゆき、予め定める値の充電終止電流Ieまで低下したら、該電池パック5の充電を完了し、電池パック5の充電を開始するとき、制御回路12は、装着した電池パック5の充電回数Nをメモリ9から読み出し、その充電回数Nに対応した充電態様で該電池パック5に対して充電を実行するようになっており、(【0044】)
f 定電圧充電において、電池電圧Vnは目標電池電圧Vnpで一定となり、(図3)
g 充電回数Nに応じて、充電の完了を決める充電終止電流Ieを変更して実施し、充電回数が第1規定回数N1未満の電池パック5の定電圧充電工程時の充電終止電流Ie1より、充電回数Nが第1規定回数N1~第2規定回数未満の電池パック5の定電圧充電工程時の充電終止電流Ie2を高くして、早めに充電を完了し、(【0080】)
h 定電流充電工程及び定電圧充電工程における目標電池電圧Vnp、充電電流Icの値は、充電回数Nに関係なくすべての電池パック5に対して同じにし、ただ、充電を完了する際の、充電終止電流Ieの値を充電回数Nが多い電池パック5を充電回数Nが少ない電池パック5より大きくし、これによって、電池セルE1~Enのダメージを軽減させることができ、電池セルE1~Enの長寿命化を図ることができる、(【0081】)
i 充電器。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 発明特定事項Aについて
引用発明では、「電池パック5」に対して、「定電流充電工程」、「定電圧充電工程」(分説c)により充電が行われており、電池は電極及び電解液において生じる化学反応により充電、放電を行うものであるから、「電池パック5」は「電気化学装置」であるといえる。また、「定電流充電工程」、「定電圧充電工程」により充電を行うことは、「充電方法」であるといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「電気化学装置の充電方法」である点で一致する。
イ 発明特定事項Bについて
(ア)引用発明は、「充電回数が第1規定回数N1未満の電池パック5の定電圧充電工程時の充電終止電流Ie1より、充電回数Nが第1規定回数N1~第2規定回数未満の電池パック5の定電圧充電工程時の充電終止電流Ie2を高く」(分説g)するから、引用発明では、充電回数が第1規定回数N1未満の場合と、充電回数Nが第1規定回数N1~第2規定回数未満の場合が区別されている。
そして、電池は充電と放電のサイクルを繰り返すことにより使用されるから、充電回数Nが第1規定回数N1未満である間、「電池パック5」は充電と放電の所定のサイクルが繰り返されると認められ、これを「第1サイクル段階」と称することは任意である。同様に、充電回数Nが第1規定回数N1~第2規定回数未満である間、「電池パック5」は充電と放電の所定のサイクルが繰り返されると認められ、これを「第2サイクル段階」と称することは任意である。
したがって、引用発明は、「第1サイクル段階」、「第2サイクル段階」という、「2個のサイクル段階」を備えており、前記アのとおり、引用発明の充電工程により充電を行うことは「充電方法」であるから、引用発明は、「充電方法は、2個のサイクル段階を含み、前記2個のサイクル段階は、それぞれ第iサイクル段階と定義され、前記i=1,2」であるといえる。
(イ)引用発明では、前記(ア)のとおり、「第1サイクル段階」は、充電回数Nが第1規定回数N1未満である間の充電と放電のサイクルであり、「第2サイクル段階」は、充電回数Nが第1規定回数N1~第2規定回数未満である間の充電と放電のサイクルであるから、充電回数がN1に到達すると、「第1サイクル段階」から「第2サイクル段階」に移ることになる。よって、「第1サイクル段階」と「第2サイクル段階」は、「順次の2個のサイクル段階」であり、また、「第1サイクル段階」は、「第2サイクル段階」の「前サイクル段階」であるといえる。
したがって、引用発明は、「順次の2個のサイクル段階を含み」、「第iサイクル段階の前サイクル段階は第i-1サイクル段階と定義され」るものといえる。
(ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、引用発明は、本件補正発明の「前記充電方法は、順次のn個のサイクル段階を含み、前記n個のサイクル段階は、それぞれ第iサイクル段階と定義され、前記i=1,2,…,nであり,nは1より大きい正の整数であり、前記第iサイクル段階の前のサイクル段階は、第i-1サイクル段階と定義され」という発明特定事項において、n=2の場合、すなわち、「前記充電方法は、順次の2個のサイクル段階を含み、前記2個のサイクル段階は、それぞれ第iサイクル段階と定義され、前記i=1,2であり,nは1より大きい正の整数であり、前記第iサイクル段階の前のサイクル段階は、第i-1サイクル段階と定義され」という構成を備えている。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記充電方法は、順次のn個のサイクル段階を含み、前記n個のサイクル段階は、それぞれ第iサイクル段階と定義され、前記i=1,2,…,nであり,nは1より大きい正の整数であり、前記第iサイクル段階の前のサイクル段階は、第i-1サイクル段階と定義され」る点で一致する。
ウ 発明特定事項Cについて
引用発明は、「充電回数が第1規定回数N1未満の電池パック5の定電圧充電工程時」、「充電回数Nが第1規定回数N1~第2規定回数未満の電池パック5の定電圧充電工程時」(分説g)を備えているから、充電回数が第1規定回数N1未満の場合、充電回数Nが第1規定回数N1~第2規定回数未満の場合の各々において、「定電圧充電工程」を有している。そして、引用発明では、「定電流充電工程」の次に「定電圧充電工程」が行われており(分説c)、このように順に行われる複数の工程の各々を「段階」と称することは任意である。よって、引用発明は、充電回数が第1規定回数N1未満の場合、充電回数Nが第1規定回数N1~第2規定回数未満の場合の各々において、「定電圧充電段階」を有している。
また、前記イ(ア)のとおり、「第1サイクル段階」は、充電回数Nが第1規定回数N1未満である間の充電と放電のサイクルであり、「第2サイクル段階」は、充電回数Nが第1規定回数N1~第2規定回数未満である間の充電と放電のサイクルであるから、引用発明では、「第1サイクル段階」、「第2サイクル段階」は各々、「定電圧充電段階」を含んでいるといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記第iサイクル段階は、定電圧充電段階を含」む点で一致する。
エ 発明特定事項Dについて
(ア)引用発明では、「第1サイクル段階」は「定電圧充電段階」を含んでおり(前記ウ)、「定電圧充電において、電池電圧Vnは目標電池電圧Vnpで一定」(分説f)となるから、「第1サイクル段階」の定電圧充電段階において電池電圧は目標電池電圧Vnpで一定となり、当該電圧を「第1電圧」と称することは任意である。
また、「第2サイクル段階」についても同様に、「第2サイクル段階」の定電圧充電段階において電池電圧は目標電池電圧Vnpで一定となり、当該電圧を「第2電圧」と称することは任意である。
したがって、引用発明では、「第2サイクル段階の定電圧充電段階の電圧は第2電圧として定義され、第1サイクル段階の定電圧充電段階の電圧は、第1電圧として定義され」ているといえる。
(イ)引用発明では、「定電流充電工程及び定電圧充電工程における目標電池電圧Vnp、充電電流Icの値は、充電回数Nに関係なくすべての電池パック5に対して同じ」(分説h)であり、前記イ(ア)のとおり、「第1サイクル段階」か「第2サイクル段階」かは、充電回数Nにより区別されるものであるから、引用発明では、「第1サイクル段階」における目標電池電圧Vnpと、「第2サイクル段階」における目標電池電圧Vnpは同じであるといえる。
そして、前記(ア)のとおり、「第1電圧」は「第1サイクル段階」における「目標電池電圧Vnp」であり、「第2電圧」は「第2サイクル段階」における「目標電池電圧Vnp」であるから、「第1電圧」と「第2電圧」は等しいと認められる。
(ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、引用発明は、「ここで、第2サイクル段階の定電圧充電段階の電圧は第2電圧として定義され、第1サイクル段階の定電圧充電段階の電圧は、第1電圧として定義され、第2電圧は、第1電圧と等しい」という構成を備えるものである。
(エ)他方、本件補正発明の「ここで、前記第iサイクル段階の定電圧充電段階の電圧は第i電圧として定義され、第i-1サイクル段階の定電圧充電段階の電圧は、第i-1電圧として定義され、前記第i電圧は、前記第i-1電圧以下であり」という発明特定事項における、「前記第i電圧は、前記第i-1電圧以下であり」との記載は、「第i電圧」が「第i-1電圧」と等しい場合を含むものである。
(オ)前記(ウ)及び(エ)によると、引用発明は、本件補正発明において「第i電圧」が「第i-1電圧」と等しい場合の構成を備えており、本件補正発明と引用発明は、「ここで、前記第iサイクル段階の定電圧充電段階の電圧は第i電圧として定義され、第i-1サイクル段階の定電圧充電段階の電圧は、第i-1電圧として定義され、前記第i電圧は、前記第i-1電圧以下であ」る点で一致する。
オ 発明特定事項Eについて
(ア)引用発明では、「充電回数が第1規定回数N1未満の電池パック5の定電圧充電工程時の充電終止電流Ie1より、充電回数Nが第1規定回数N1~第2規定回数未満の電池パック5の定電圧充電工程時の充電終止電流Ie2を高く」(分説g)しており、前記イ(ア)のとおり、「第1サイクル段階」は、充電回数Nが第1規定回数N1未満である間の充電と放電のサイクルであり、「第2サイクル段階」は、充電回数Nが第1規定回数N1~第2規定回数未満である間の充電と放電のサイクルであるから、引用発明は、「第1サイクル段階」の定電圧充電段階における「充電終止電流Ie1」より、「第2サイクル段階」の定電圧充電段階における「充電終止電流Ie2」を大きくするものである。
(イ)引用発明は、「定電圧充電」において「充電電流Ic」が「充電終止電流Ieまで低下したら、該電池パック5の充電を完了」(分説d、e)するから、充電電流Icが「充電終止電流Ie」まで低下したら、「定電圧充電」は終了する。よって、「充電終止電流Ie」は「定電圧充電」を終了させる電流、すなわち「オフ電流」とであるといえる。
(ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、引用発明は、「第1サイクル段階」の定電圧充電段階における「オフ電流」より、「第2サイクル段階」の定電圧充電段階における「オフ電流」を大きくするものであり、「第1サイクル段階」の定電圧充電段階における「オフ電流」を「第1オフ電流」、「第2サイクル段階」の定電圧充電段階における「オフ電流」を「第2オフ電流」と称することは任意である。
また、前記アのとおり、引用発明の充電工程により充電を行うことは「充電方法」である。
(エ)したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記第iサイクル段階の定電圧充電段階は第iオフ電流を有し、前記第i-1サイクル段階の定電圧充電段階は第i-1オフ電流を有し、前記第iオフ電流は前記第i-1オフ電流よりも大きいことを特徴とする充電方法」である点で一致する。
(4)判断
前記(3)によれば、本件補正発明と引用発明は
「 電気化学装置の充電方法であって、
前記充電方法は、順次のn個のサイクル段階を含み、前記n個のサイクル段階は、それぞれ第iサイクル段階と定義され、前記i=1,2,…,nであり,nは1より大きい正の整数であり、前記第iサイクル段階の前のサイクル段階は、第i-1サイクル段階と定義され、
前記第iサイクル段階は、定電圧充電段階を含み、
ここで、前記第iサイクル段階の定電圧充電段階の電圧は第i電圧として定義され、第i-1サイクル段階の定電圧充電段階の電圧は、第i-1電圧として定義され、前記第i電圧は、前記第i-1電圧以下であり、
前記第iサイクル段階の定電圧充電段階は第iオフ電流を有し、前記第i-1サイクル段階の定電圧充電段階は第i-1オフ電流を有し、前記第iオフ電流は前記第i-1オフ電流よりも大きいことを特徴とする充電方法」である点で一致し、相違がない。
したがって、本件補正発明は、引用発明と同一であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)効果についての判断
本件補正発明は引用発明と同一であるから、引用発明は本件補正発明と同一の効果を奏することが明らかであるため、本件補正発明の効果は格別のものではない。
(6)請求人の主張についての判断
請求人は、「審査官殿は、引用文献1の第[0081]段落で本願請求項4が限定した「前記第iサイクル段階は定電圧充電段階を含み、前記第iサイクル段階の定電圧充電段階の電圧は第i電圧として定義され、第i-1サイクル段階の定電圧充電段階の電圧は、第i-1電圧として定義され、前記第i電圧は、前記第i-1電圧以下である」という技術的特徴を開示していると認定されています。
しかし、出願人は確認した結果、引用文献1の第[0081]段落には、「定電流充電工程及び定電圧充電工程における目標電池電圧Vnp、充電電流Icの値は、充電回数Nに関係なくすべての電池パック5に対して同じにする。ただ、充電を完了する際の、充電終止電流Ieの値を充電回数Nが多い電池パック5を充電回数Nが少ない電池パック5より大きくする。これによって、充電回数Nが多い電池パック5を、早く定電圧充電工程に移行させて電池セルE1~Enのダメージを軽減させることができる。そして、前記実施形態と同様に、電池セルE1~Enの長寿命化を図ることができる。」と記載されています。
即ち、引用文献1には、本願請求項4に記載した上記技術的特徴について開示していないです。当該技術的特徴は、本願明細書の第[0063]段落の記載に対応しています。」、「また、上記の相違点によって、本願請求項1の発明は、定電圧充電段階での充電電圧をサイクル期間中に低下させることで、ガスの発生による電気化学装置の膨れを効果的に緩和でき、サイクル期間中に電気化学装置の容量減衰の傾向を緩和でき、電池の寿命を延ばすことができるとの顕著な効果を奏しています。」と主張する。(審判請求書3~4頁)
しかしながら、請求人が指摘する本願明細書の第[0063]段落には、「第i電圧」を「第i-1電圧」より小さくする実施形態が記載されているが、本件補正後の請求項1には、「前記第i電圧は、前記第i-1電圧以下であり」と記載されており、「第i電圧」が「第i-1電圧」より小さい場合だけでなく、「第i電圧」が「第i-1電圧」と等しい場合も含む記載となっている。そして、本願明細書の第[0062]段落には、「第i電圧」が「第i-1電圧」と等しい実施形態も記載されている。
したがって、本件補正発明は、「第i電圧」が「第i-1電圧」と等しい場合も含むものであり、前記(3)エのとおり、引用発明は、「第i電圧」が「第i-1電圧」と等しいものとなっている。
また、請求人は、ガスの発生による電気化学装置の膨れの緩和や、サイクル期間中に電気化学装置の容量減衰の傾向を緩和という本願の効果を主張しているが、前記(4)のとおり、本件補正発明は引用発明と同一であるから、引用発明も、本件補正発明と同一の効果を当然奏するものと認められる。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(7)小括
以上によれば、本件補正発明は、特許法29条1項3号に規定する発明である引用発明と同一であるから、同項の規定に違反し、特許を受けることができない。
また、本件補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
第3 本願発明
本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)に示した本件補正前の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められる。
なお、後の参照の便宜のため、請求項1を以下のA~Cに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項1】
A 電気化学装置の充電方法であって、
B 充電段階が第1オフ電流を有する第1サイクル段階と、
C 充電段階が第2オフ電流を有する第2サイクル段階と、を含み、前記第2オフ電流は前記第1オフ電流より大きいことを特徴とする充電方法。
第4 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。
1.(新規性)この出願の請求項1~4、6、12及び13に係る発明は、以下の文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の請求項1~9、12及び13に係る発明は、以下の文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
この出願の請求項10及び11に係る発明は、以下の文献1に記載された発明及び文献2に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
文献1.特開2010-81683号公報
文献2.国際公開2016/152861号公報(周知技術を示す文献)
第5 文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された文献1(この審決における引用文献)の記載事項は、前記第2[理由]4(2)に記載したとおりである。
第6 本願発明と引用発明との対比・判断
1 対比
(1)発明特定事項Aについて
前記第2[理由]4(3)アのとおり、引用発明は、「電気化学装置の充電方法」であるから、本願発明と引用発明は、「電気化学装置の充電方法」である点で一致する。
(2)発明特定事項Bについて
前記第2[理由]4(3)オのとおり、引用発明は、「第1サイクル段階」の定電圧充電段階における「第1オフ電流」を有しているから、本願発明と引用発明は、「充電段階が第1オフ電流を有する第1サイクル段階」を備える点で一致する。
(3)発明特定事項Cについて
前記第2[理由]4(3)オのとおり、引用発明は、「第2サイクル段階」の定電圧充電段階における「第2オフ電流」を有しており、「第1オフ電流」より「第2オフ電流」を大きくするものであるから、本願発明と引用発明は、「充電段階が第2オフ電流を有する第2サイクル段階と、を含み、前記第2オフ電流は前記第1オフ電流より大きいことを特徴とする充電方法」である点で一致する。
2 判断
前記1によれば、本願発明と引用発明は
「 電気化学装置の充電方法であって、
充電段階が第1オフ電流を有する第1サイクル段階と、
充電段階が第2オフ電流を有する第2サイクル段階と、を含み、前記第2オフ電流は前記第1オフ電流より大きいことを特徴とする充電方法」である点で一致し、相違がない。
したがって、本願発明は、引用発明と同一であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に規定する発明である引用発明と同一であるから、同項の規定に違反し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-008064