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特許拒絶査定不服審判

2023-007938

2種以上の抗C5抗体の組み合わせおよび使用方法

審判番号
2023-007938
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-218147
請求日
2023年05月16日
審決日
2025年07月23日
公報発行日
2025年10月31日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .536-WZ (C07K) / P18 .537-WZ (C07K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-218147「2種以上の抗C5抗体の組み合わせおよび使用方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月15日出願公開、特開2021- 59591〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成28年 1月22日(優先権主張 2015年 1月22日)を国際出願日とする特願2017-538734号の一部を新たな特許出願として令和 2年12月28日に出願されたものであって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和 5年 2月21日付け 拒絶査定 同年 5月16日 審判請求書・手続補正書の提出 同年 7月11日付け 拒絶理由通知書(前置審査) 同年 9月 5日 意見書の提出 令和 6年12月16日 上申書の提出 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲に記載された発明は、令和 5年 5月16日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1、2に係る発明は、以下のとおりである(以下、請求項2に係る発明を「本願発明」という。)。 「【請求項1】 2種の抗C5抗体の結合部位を含む二重特異性抗体であって、以下のいずれかの二重特異性抗体: 最適化20//18(VH配列番号:NO:52;VL配列番号:NO:53;VH配列番号:NO:54;VL配列番号:53)、 最適化20//18-FS156(VH配列番号:NO:58;VL配列番号:NO:57;VH配列番号:NO:59;VL配列番号:57)、 最適化20//18-FS154(VH配列番号:NO:60;VL配列番号:NO:57;VH配列番号:NO:61;VL配列番号:57)、 20//18cLリード(VH配列番号:NO:29;VL配列番号:NO:35;VH配列番号:NO:25;VL配列番号:35)、 20//18(VH配列番号:NO:29;VL配列番号:NO:30;VH配列番号:NO:25;VL配列番号:26)、 15//11(VH配列番号:NO:19;VL配列番号:NO:20;VH配列番号:NO:17;VL配列番号:18)、 15//17(VH配列番号:NO:19;VL配列番号:NO:20;VH配列番号:NO:23;VL配列番号:24)、 15//18(VH配列番号:NO:19;VL配列番号:NO:20;VH配列番号:NO:25;VL配列番号:26)、 15//19(VH配列番号:NO:19;VL配列番号:NO:20;VH配列番号:NO:27;VL配列番号:28)、 15//21(VH配列番号:NO:19;VL配列番号:NO:20;VH配列番号:NO:31;VL配列番号:32)、 20//11(VH配列番号:NO:29;VL配列番号:NO:30;VH配列番号:NO:17;VL配列番号:18)、 20//17(VH配列番号:NO:29;VL配列番号:NO:30;VH配列番号:NO:23;VL配列番号:24)、または 20//21(VH配列番号:NO:29;VL配列番号:NO:30;VH配列番号:NO:31;VL配列番号:32)。 【請求項2】 2種の抗C5抗体の結合部位を含む二重特異性抗体であって、請求項1に記載の二重特異性抗体と競合し、かつ、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合する、二重特異性抗体。」 本願発明について、請求項2が引用する請求項1の記載も含めて書き下すと以下のとおりである。 「2種の抗C5抗体の結合部位を含む二重特異性抗体であって、以下の(1)に記載の二重特異性抗体と競合し、かつ、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合する、二重特異性抗体。 (1)2種の抗C5抗体の結合部位を含む二重特異性抗体であって、以下のいずれかの二重特異性抗体: 最適化20//18(VH配列番号:NO:52;VL配列番号:NO:53;VH配列番号:NO:54;VL配列番号:53)、 最適化20//18-FS156(VH配列番号:NO:58;VL配列番号:NO:57;VH配列番号:NO:59;VL配列番号:57)、 最適化20//18-FS154(VH配列番号:NO:60;VL配列番号:NO:57;VH配列番号:NO:61;VL配列番号:57)、 20//18cLリード(VH配列番号:NO:29;VL配列番号:NO:35;VH配列番号:NO:25;VL配列番号:35)、 20//18(VH配列番号:NO:29;VL配列番号:NO:30;VH配列番号:NO:25;VL配列番号:26)、 15//11(VH配列番号:NO:19;VL配列番号:NO:20;VH配列番号:NO:17;VL配列番号:18)、 15//17(VH配列番号:NO:19;VL配列番号:NO:20;VH配列番号:NO:23;VL配列番号:24)、 15//18(VH配列番号:NO:19;VL配列番号:NO:20;VH配列番号:NO:25;VL配列番号:26)、 15//19(VH配列番号:NO:19;VL配列番号:NO:20;VH配列番号:NO:27;VL配列番号:28)、 15//21(VH配列番号:NO:19;VL配列番号:NO:20;VH配列番号:NO:31;VL配列番号:32)、 20//11(VH配列番号:NO:29;VL配列番号:NO:30;VH配列番号:NO:17;VL配列番号:18)、 20//17(VH配列番号:NO:29;VL配列番号:NO:30;VH配列番号:NO:23;VL配列番号:24)、または 20//21(VH配列番号:NO:29;VL配列番号:NO:30;VH配列番号:NO:31;VL配列番号:32)。」(以下、特に第5において「本願発明の抗体」ともいう。) 第3 拒絶の理由 前置審査において、令和 5年 7月11日付けで通知した拒絶理由の理由1、2の概要は、次のとおりのものである。 理由1(サポート要件)及び2(実施可能要件)について 発明の詳細な説明には、補体介在性の疾患または状態を有する個体を治療するため、または、個体における血漿からのC5のクリアランスを増強するための「2種以上の抗C5抗体の組み合わせとその使用方法」を提供することを課題とする旨記載されている。 本願発明の「2種の抗C5抗体の結合部位を含む二重特異性抗体」には、請求項1に記載の二重特異性抗体と競合し、かつ、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合する、様々な二重特異性抗体が包含されるところ、本願明細書には、そのような二重特異性抗体を具体的に得たことは示されていない。ここで、抗体が認識するエピトープは数個~十数個程度のアミノ酸残基であり、また、立体エピトープ(不連続エピトープ)などといった抗原の高次構造を認識する抗体も存在することは技術常識であることを参酌すると、C5を使用して抗体を産生した場合、連続エピトープあるいは不連続エピトープを含むC5の様々な部位を認識する多種多様な抗体が産生されるから、そのようにして得られた多種多様な抗体の中から、請求項1に記載の二重特異性抗体と競合し、かつ、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合する抗体を得るためには、スクリーニング等の作業を要し、これは当業者に過度の負担を要求することとなる。 したがって、この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 同様の理由により、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 第4 発明の詳細な説明の記載事項 本願の発明の詳細な説明には以下の事項が記載されている。当審注がある部分を除き、下線は当審による。 明ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、2種以上の抗C5抗体の組み合わせおよびその使用方法に関する。 ・・・ 【0006】 C5は、約80μg/ml(0.4μM)で正常血清中に見出される190kDaのタンパク質である。C5はグリコシル化されており、その質量の約1.5~3%が炭水化物に起因する。成熟C5は、75kDaのβ鎖にジスルフィド結合された115kDaのα鎖のヘテロダイマーである。C5は、1676アミノ酸の単鎖前駆タンパク質(プロC5前駆体)として合成される(例えば、特許文献1および特許文献2を参照されたい)。プロC5前駆体は切断され、アミノ末端断片としてβ鎖を、カルボキシル末端断片としてα鎖をもたらす。α鎖およびβ鎖ポリペプチド断片は、ジスルフィド結合を介して相互に連結されて、成熟C5タンパク質を構成する。 【0007】 成熟C5は、補体経路の活性化の間にC5aおよびC5b断片に切断される。C5aは、C5転換酵素によって、α鎖の最初の74アミノ酸を含むアミノ末端断片としてC5のα鎖から切断される。成熟C5の残りの部分は断片C5bであり、これはβ鎖にジスルフィド結合されたα鎖の残部を含む。11kDa質量のC5aの約20%は炭水化物に起因する。 【0008】 C5aは別のアナフィラトキシンである。C5bは、C6、C7、C8およびC9と結合して、標的細胞の表面で膜侵襲複合体(MAC、C5b-9、終末補体複合体(TCC))を形成する。充分な数のMACが標的細胞膜に挿入されると、MAC孔が形成され、標的細胞の急速な浸透圧溶解を媒介する。 【0009】 上述したように、C3aおよびC5aはアナフィラトキシンである。これらは、マスト細胞の脱顆粒を誘発することができ、これによりヒスタミンおよび他の炎症メディエーターが放出され、このことが平滑筋の収縮、血管透過性の増加、白血球の活性化、および他の炎症現象、例えば、細胞過形成をもたらす細胞増殖をもたらす。C5aはまた、好中球、好酸球、好塩基球および単球などの顆粒球を補体活性化部位に引き寄せるのに役立つ走化性ペプチドとしても機能する。 【0010】 C5aの活性は、C5aからカルボキシ末端アルギニンを除去してC5a-des-Arg誘導体を形成する血漿酵素カルボキシペプチダーゼNによって、調節される。C5a-des-Argは、未改変C5aのアナフィラキシー活性および多形核球走化活性(polymorphonuclear chemotactic activity)のうちたった1%しか示さない。 【0011】 適切に機能する補体系は、感染微生物に対する強固な防御を提供するが、補体の不適切な調節または活性化は、例えば以下を含む、種々の障害の病因に関与している:関節リウマチ(RA);ループス腎炎;虚血再灌流障害;発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH);非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS);デンスデポジット病(DDD);黄斑変性症(例えば、加齢性黄斑変性症(AMD)); HELLP(hemolysis, elevated liver enzymes, and low platelets)症候群;血栓性血小板減少性紫斑病(TTP);自然胎児消失;寡免疫性血管炎;表皮水疱症;習慣性流産;多発性硬化症(MS);外傷性脳損傷;ならびに、心筋梗塞、心肺バイパスおよび血液透析に起因する損傷(例えば、非特許文献1を参照されたい)。したがって、補体カスケードの過剰な活性化または制御されない活性化の抑制は、このような疾患を有する患者に臨床的恩恵をもたらすことができる。 ・・・ 【0014】 エクリズマブは、補体タンパク質C5に対するヒト化モノクローナル抗体であり、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)および非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の治療のために承認された最初の治療薬である(例えば、非特許文献2を参照されたい)。エクリズマブは、C5転換酵素によるC5のC5aおよびC5bへの切断を阻害し、これによって、終末補体複合体C5b-9の生成を防止する。C5aとC5b-9はどちらも、PNHおよびaHUSに特徴的である終末補体介在性の事象を引き起こす(さらに、特許文献3、特許文献4、特許文献5、および特許文献6も参照されたい)。 【0015】 いくつかの報告が抗C5抗体を記述している。例えば、特許文献7は、C5のα鎖に結合するがC5aには結合せず、C5の活性化を阻止する抗C5抗体を記載し、一方で、特許文献8は、C5aの形成を阻害する抗C5モノクローナル抗体を記載した。他方、特許文献9は、C5のα鎖上のC5転換酵素のためのタンパク質分解部位を認識して、C5のC5aおよびC5bへの転換を阻害する抗C5抗体を記載した。特許文献10は、少なくとも1×107M-1のアフィニティ定数を有する抗C5抗体を記載した。 ・・・ 【0017】 最近、pH依存的様式で抗原に結合する抗体が報告されている(例えば、特許文献11および非特許文献12を参照されたい)。該抗体は、血漿中の中性条件下で抗原に強く結合し、エンドソーム中の酸性条件下で抗原から解離する。抗原から解離した後、該抗体は、FcRnを介して血漿へとリサイクルされた際に抗原に再び結合できるようになる。こうして、単一の抗体分子が、複数の抗原分子に繰り返し結合することができる。一般に、抗原の血漿中滞留性は、上述したFcRn介在性のリサイクル機構を有する抗体のそれよりもはるかに短い。したがって、抗原が抗体に結合すると、該抗原は通常、延長された血漿中滞留性を示し、これは、該抗原の血漿中濃度の増加をもたらす。一方、pH依存的様式で抗原に結合する上記の抗体は、FcRn介在性のリサイクル過程の間にエンドソーム内で抗原から解離するため、典型的な抗体よりも迅速に血漿から抗原を消失させることが報告されている。加えて、特許文献13には、pH依存的様式で抗原に結合する抗体に、2つ以上の抗体を含む免疫複合体を形成させることにより、典型的な抗体と比較して血漿からの抗原の消失を促進できることが開示されている。特許文献13では、そのような複合体に2つ以上のFc領域が含まれることにより、アビディティによるFc受容体への抗体の結合を介してそのような複合体が細胞に取り込まれることが可能となり、血漿からの抗原消失の亢進につながりうることが示唆されている。特許文献14もまた、C5に対してpH依存的結合する抗体が抗原のノックダウンを引き延ばすことができることを示すコンピュータモデリング解析を記載している。」(【0001】~【0017】) 明イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0020】 本発明の目的は、2種以上の抗C5抗体の組み合わせと、その使用方法とを提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0021】 本発明は、2種以上の抗C5抗体の組み合わせと、その使用方法とを提供する。 ・・・ 【0023】 いくつかの態様において、本発明の2種以上の単離または精製された抗C5抗体の組み合わせは、C5のβ鎖(配列番号:1)内またはα鎖(配列番号:10)内の互いに異なる少なくとも2種のエピトープに結合する単離または精製された多重特異性抗体であることができ、ここで、単離または精製された多重特異性抗体の結合部位は、エピトープへの結合に関して互いに競合しない。・・・いくつかの態様において、本発明の2種以上の単離または精製された抗C5抗体の組み合わせは、C5のβ鎖(配列番号:1)のアミノ酸33~124からなる断片内、またはC5のα鎖(配列番号:10)のアミノ酸1~999からなる断片内の少なくとも2種のエピトープに結合する単離または精製された多重特異性抗体であることができ、ここで、単離または精製された多重特異性抗体の結合部位は、エピトープへの結合に関して互いに競合しない。さらなる態様において、本発明の2種以上の単離または精製された抗C5抗体の組み合わせは、C5内の少なくとも2種のエピトープに結合する単離または精製された多重特異性抗体であることができ、ここで、単離または精製された多重特異性抗体の1つまたは複数の結合部位は、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合し、単離または精製された多重特異性抗体の結合部位は、エピトープへの結合に関して互いに競合しない。さらなる態様において、本発明の2種以上の単離または精製された抗C5抗体の組み合わせは、C5内の少なくとも2種のエピトープに結合する単離または精製された多重特異性抗体であることができ、ここで、単離または精製された多重特異性抗体の1つまたは複数の結合部位は、低カルシウム濃度においてよりも高カルシウム濃度において高いアフィニティでC5に結合し、単離または精製された多重特異性抗体の結合部位は、エピトープへの結合に関して互いに競合しない。別の態様において、本発明の2種以上の単離または精製された抗C5抗体の組み合わせは、表2に記載される参照抗体が結合する少なくとも2種のエピトープに結合する単離または精製された多重特異性抗体であることができ、ここで、単離または精製された多重特異性抗体の結合部位は、エピトープへの結合に関して互いに競合しない。別の態様において、本発明の2種以上の単離または精製された抗C5抗体の組み合わせは、C5への結合に関して、表2に記載される少なくとも2種の参照抗体と競合する単離または精製された多重特異性抗体であることができ、ここで、単離または精製された多重特異性抗体の結合部位は、エピトープへの結合に関して互いに競合しない。このような本発明の単離または精製された多重特異性抗体の1つまたは複数の結合部位は、C5の生物学的機能を調節、阻害、阻止、または中和することができる。・・・」(【0020】~【0023】) 明ウ 「【発明を実施するための形態】 【0032】 態様の説明 本明細書に記載または引用される手法および手順は、概して充分に理解されており、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3d edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel, et al. eds., (2003));the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.): PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1987));Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait, ed., 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R.I. Freshney), ed., 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, and D.G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons; Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994);Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan et al., eds., 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (C.A. Janeway and P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989);Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000);Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995);およびCancer: Principles and Practice of Oncology (V.T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993)に記載された広範に利用されている技法などの従来の技法を用いて、当業者により一般的に使用される。」(【0032】) 明エ 「【0099】 1.抗体のアフィニティ 特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。 【0100】 一態様において、Kdは、放射性標識抗原結合測定法 (radiolabeled antigen binding assay: RIA) によって測定される。一態様において、RIAは、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて実施される。例えば、抗原に対するFabの溶液中結合アフィニティは、非標識抗原の漸増量系列の存在下で最小濃度の (125I) 標識抗原によりFabを平衡化させ、次いで結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングされたプレートにより捕捉することによって測定される。(例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881(1999) を参照のこと)。測定条件を構築するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート (Thermo Scientific) を50mM炭酸ナトリウム (pH9.6) 中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体 (Cappel Labs) で一晩コーティングし、その後に室温(およそ23℃)で2~5時間、PBS中2% (w/v) ウシ血清アルブミンでブロックする。非吸着プレート (Nunc #269620) において、100 pMまたは26 pMの [125I]-抗原を、(例えば、Presta et al., Cancer Res. 57:4593-4599 (1997) における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と同じように)目的のFabの段階希釈物と混合する。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、このインキュベーションは、平衡が確実に達成されるよう、より長時間(例えば、約65時間)継続され得る。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために捕捉プレートに移す。次いで溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター (Packard) においてプレートを10分間カウントする。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選択する。 【0101】 別の態様によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000 (BIAcore, Inc., Piscataway, NJ) を用いる測定法が、およそ10反応単位 (response unit: RU) の抗原が固定されたCM5チップを用いて25℃で実施される。一態様において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ (CM5、BIACORE, Inc.) は、供給元の指示にしたがいN-エチル-N'- (3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド (EDC) およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS) を用いて活性化される。抗原は、およそ10反応単位 (RU) のタンパク質の結合を達成するよう、5μl/分の流速で注入される前に、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8を用いて5μg/ml(およそ0.2μM)に希釈される。抗原の注入後、未反応基をブロックするために1Mエタノールアミンが注入される。キネティクスの測定のために、25℃、およそ25μl/分の流速で、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤含有PBS (PBST) 中のFabの2倍段階希釈物 (0.78nM~500nM) が注入される。結合速度 (kon) および解離速度 (koff) は、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて、結合および解離のセンサーグラムを同時にフィッティングすることによって計算される。平衡解離定数 (Kd) は、koff/kon比として計算される。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999) を参照のこと。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによってオン速度が106M-1s-1を超える場合、オン速度は、分光計(例えばストップフロー式分光光度計 (Aviv Instruments) または撹拌キュベットを用いる8000シリーズのSLM-AMINCO(商標)分光光度計 (ThermoSpectronic))において測定される、漸増濃度の抗原の存在下でのPBS、pH7.2中20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、バンドパス16nm)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を用いることによって決定され得る。」(【0099】~【0101】) 明オ 「【0117】 6.多重特異性抗体 特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に結合特異性を有する、モノクローナル抗体である。特定の態様において、二重特異性抗体は、C5の異なる2つのエピトープに結合してもよい。二重特異性抗体は、全長抗体としてまたは抗体断片として調製され得る。 【0118】 多重特異性抗体を作製するための手法は、これらに限定されるものではないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組み換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305:537 (1983)、WO93/08829、およびTraunecker et al., EMBO J. 10:3655 (1991) 参照)、および「knob-in-hole」技術(例えば、米国特許第5,731,168号参照)を含む。多重特異性抗体は、Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング効果 (electrostatic steering effect) を操作すること (WO2009/089004A1);2つ以上の抗体または断片を架橋すること(米国特許第4,676,980号およびBrennan et al., Science 229:81 (1985)参照);ロイシンジッパーを用いて2つの特異性を有する抗体を作成すること(Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992) 参照);「ダイアボディ」技術を用いて二重特異性抗体断片を作製すること(Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993) 参照);および、単鎖Fv (sFv) 二量体を用いること(Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994) 参照);および、例えばTutt et al., J. Immunol., 147:60 (1991) に記載されるように三重特異性抗体を調製すること、によって作製してもよい。二重特異性抗体を作製するための手法は、これらに限定されるものではないが、二重特異性IgG1抗体を生成するためにIgG1半分子を他のIgG1半分子と交換するのに用いられるインビトロの産生後プロセス(例えば、Labrijn et al., J Immunol., 187: 3238 (2011) 参照)を含む。 【0119】 「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を伴う改変抗体も、本明細書では含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576号A1参照)。 【0120】 本明細書で抗体または断片は、C5と別の異なる抗原とに結合する1つの抗原結合部位を含む、「デュアルアクティングFab」または「DAF」も含む(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号参照)。」(【0117】~【0120】) 明カ 「【0166】 別の局面において、C5またはC5のエピトープへの結合に関して、本明細書に記載される任意の抗C5抗体と競合するまたは競合しない抗体を同定するために、競合アッセイが使用され得る。特定の態様において、そのような競合抗体が過剰に存在する場合、これは、C5に対する参照抗体の結合を少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、またはそれ以上阻止する(例えば低減させる)。特定の態様において、そのような非競合抗体が過剰に存在する場合、これは、C5に対する参照抗体の結合を多くとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、またはそれ未満阻止する(例えば低減させる)。特定の態様において、結合は少なくとも80%、85%、90%、95%、またはそれ以上阻害される。特定の態様において、そのような競合抗体は、本明細書に記載される抗C5抗体(例えば、表2に記載される抗C5抗体)によって結合されるのと同じエピトープ(例えば、線状または立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングする、詳細な例示的方法は、Morris (1996) "Epitope Mapping Protocols," in Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供されている。 【0167】 例示的な競合アッセイにおいて、固定化されたC5は、C5に結合する第1の標識された抗体およびC5への結合に関して第1の抗体と競合する能力に関して試験される第2の未標識の抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清に存在し得る。対照として、固定化されたC5が、第1の標識された抗体を含むが第2の未標識の抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のC5に対する結合を許容する条件下でのインキュベーションの後、余分な未結合の抗体が除去され、固定化されたC5に結合した標識の量が測定される。固定化されたC5に結合した標識の量が対照サンプルと比較して試験サンプルにおいて実質的に減少している場合、それは第2の抗体がC5への結合に関して第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照のこと。 【0168】 特定の態様において、本発明の抗C5抗体が特定のエピトープに結合するかどうかを、次のように判定することができる:C5のアミノ酸(アラニンを除く)がアラニンで置換されたC5点変異体を293細胞において発現させ、抗C5抗体の該C5変異体への結合をELISA、ウエスタンブロットまたはBIAcoreにより試験し;ここで、抗C5抗体の野生型C5への結合と比べた、抗C5抗体の該C5変異体への結合の実質的な低下または消失は、抗C5抗体がC5上の該アミノ酸を含むエピトープに結合することを示す。 【0169】 別の態様において、pH依存的結合特性を有する抗C5抗体が特定のエピトープに結合するかどうかを、次のように判定することができる:C5上のヒスチジン残基が別のアミノ酸(例えば、チロシン)で置換されたC5点変異体を293細胞において発現させ、抗C5抗体の該C5変異体への結合をELISA、ウエスタンブロットまたはBIAcoreにより試験し;ここで、酸性pHでの抗C5抗体の該C5変異体への結合と比べた、酸性pHでの抗C5抗体の野生型C5への結合の実質的な低下は、抗C5抗体がC5上の該ヒスチジン残基を含むエピトープに結合することを示す。さらなる態様において、中性pHでの抗C5抗体の野生型C5への結合は、中性pHでの抗C5抗体の該C5変異体への結合と比べて、実質的に低下しない。」(【0166】~【0169】) 明キ 「【0174】 3.少なくとも2つ以上の抗体を含む抗原-抗体免疫複合体を形成する本発明の組み合わせの能力を試験するためのアッセイ 一局面において、本発明の2種以上の抗体の組み合わせは、該組み合わせをその抗原[例えばC5]と接触させたときに、該組み合わせが少なくとも2つ以上の抗体を含む抗原-抗体免疫複合体を形成する能力に関して試験される。当業者は、従来の技法を用いて、本発明の抗C5抗体の組み合わせとC5とを、それらが少なくとも2つ以上の抗体を含む抗原-抗体免疫複合体を形成することを可能にする条件下で接触させることができる(The Protein Protocols Handbook(Walker et al. eds.)3rd edition(2009)Humana Press)。 【0175】 特定の態様において、少なくとも2つ以上の抗体を含む抗原-抗体免疫複合体の形成を試験するための方法には、そのような免疫複合体が抗体単独または抗原分子単独よりも大きな分子になるという性質を利用する方法を含む、分析化学における技術、例えばサイズ排除(ゲル濾過)クロマトグラフィー、超遠心分析法、光散乱法、電子顕微鏡法、および/または質量分析が含まれる(例えばFerrant et al., Molecular Immunology(2002), 39, 77-84; Oda et al., Molecular Immunology(2009), 47, 357-364を参照されたい)。例えばサイズ排除(ゲル濾過)クロマトグラフィーを用いる場合には、分析物中の抗原分子単独または抗体分子単独の分子種よりも大きな分子種が存在するかどうかを観察することによって、少なくとも2つ以上の抗体を含む抗原-抗体免疫複合体が形成されるかどうかを試験する。 【0176】 さらに、抗体または抗原が免疫グロブリン定常領域を有する場合は、抗体単独または抗原単独よりも強くFc受容体または補体成分に結合するという免疫複合体の性質を利用する方法を含む免疫化学的方法、例えばELISA、FACS、またはSPR法(例えばBiacoreを用いる方法)が、例として挙げられる(例えばShields et al., The Journal of Biological Chemistry(2001)276(9), 6591-6604; Singh et al., Journal of Immunological Methods(1982)50, 109-114; Suzuki et al., Journal of Immunology(2010)184(4), 1968-1976; Luo et al., mAbs(2009)1(5)491-504を参照されたい)。例えば、Fc受容体を固定化してELISAを行う場合は、抗原分子単独または抗体分子単独を試験した場合と比較して、検出されるシグナルが増強されるかどうかを観察することによって、免疫複合体の形成を試験する。」(【0174】~【0176】) 明ク 「【0195】 抗原が可溶性タンパク質である場合、抗体のその抗原への結合は、抗体自身が比較的長い血漿中半減期を有しかつ抗原のキャリアとして働くため、抗原の血漿中半減期の延長(すなわち、血漿からの抗原のクリアランスの低減)をもたらし得る。これは、細胞中のエンドソーム経路を介した、FcRnによる抗原-抗体複合体のリサイクルに起因する(Roopenian and Akilesh(2007)Nat Rev Immunol 7(9): 715-725)。しかしながら、中性の細胞外環境では抗原に結合するが細胞内に侵入した後に酸性のエンドソーム区画内に抗原を放出する、pH依存的結合特性を有する抗体は、pH非依存的様式で結合する対応物に比べて抗原の中和およびクリアランスの点で優れた特質を有することが予想される(Igawa et al(2010)Nature Biotechnol 28(11); 1203-1207; Devanaboyina et al(2013)mAbs 5(6):851-859;国際特許出願公開番号WO 2009/125825)。 【0196】 さらなる態様において、本発明は、血漿からのC5のクリアランスの増強において使用するための、2種以上の抗C5抗体の組み合わせを提供する。特定の態様において、本発明は、個体における血漿からのC5のクリアランスを増強する方法であって、血漿からのC5のクリアランスを増強するために2種以上の抗C5抗体の組み合わせの有効量を個体に投与する工程を含む方法において使用するための、2種以上の抗C5抗体の組み合わせを提供する。一態様において、2種以上の抗C5抗体の組み合わせは、pH依存的結合特性を有さない従来の抗C5抗体と比較して、血漿からのC5のクリアランスを増強する。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。 【0197】 さらなる態様において、本発明は、血漿中のC5の蓄積の抑制において使用するための、2種以上の抗C5抗体の組み合わせを提供する。特定の態様において、本発明は、個体における血漿中のC5の蓄積を抑制する方法であって、血漿中のC5の蓄積を抑制するために2種以上の抗C5抗体の組み合わせの有効量を個体に投与する工程を含む方法において使用するための、2種以上の抗C5抗体の組み合わせを提供する。一態様において、血漿中のC5の蓄積は抗原-抗体複合体の形成の結果である。別の態様において、2種以上の抗C5抗体の組み合わせは、pH依存的結合特性を有さない従来の抗C5抗体と比較して、血漿中のC5の蓄積を抑制する。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。 ・・・ 【0200】 さらなる態様において、医薬品は、血漿からのC5のクリアランスを増強するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体における血漿からのC5のクリアランスを増強する方法であって、血漿からのC5のクリアランスを増強するために医薬品の有効量を個体に投与する工程を含む方法において使用するためのものである。一態様において、2種以上の抗C5抗体の組み合わせは、pH依存的結合特性を有さない従来の抗C5抗体と比較して、血漿からのC5のクリアランスを増強する。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであり得る。 【0201】 さらなる態様において、医薬品は、血漿中のC5の蓄積を抑制するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体における血漿中のC5の蓄積を抑制する方法であって、血漿中のC5の蓄積を抑制するために医薬品の有効量を個体に投与する工程を含む方法において使用するためのものである。一態様において、血漿中のC5の蓄積は抗原-抗体複合体の形成の結果である。別の態様において、2種以上の抗C5抗体の組み合わせは、pH依存的結合特性を有さない従来の抗C5抗体と比較して、血漿中のC5の蓄積を抑制する。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであり得る。 ・・・ 【0204】 さらなる局面において、本発明は、個体における血漿からのC5のクリアランスを増強するための方法を提供する。一態様において、方法は、血漿からのC5のクリアランスを増強するために2種以上の抗C5抗体の組み合わせの有効量を個体に投与する工程を含む。一態様において、2種以上の抗C5抗体の組み合わせは、pH依存的結合特性を有さない従来の抗C5抗体と比較して、血漿からのC5のクリアランスを増強する。一態様において、「個体」はヒトである。 【0205】 さらなる局面において、本発明は、個体における血漿中のC5の蓄積を抑制するための方法を提供する。一態様において、方法は、血漿中のC5の蓄積を抑制するために2種以上の抗C5抗体の組み合わせの有効量を個体に投与する工程を含む。一態様において、血漿中のC5の蓄積は抗原-抗体複合体の形成の結果である。別の態様において、2種以上の抗C5抗体の組み合わせは、pH依存的結合特性を有さない従来の抗C5抗体と比較して、血漿中のC5の蓄積を抑制する。一態様において、「個体」はヒトである。」(【0195】~【0205】) 明ケ 「【0219】 実施例1 C5の調製 [組み換えヒトおよびカニクイザルC5の発現および精製] 組み換えヒトC5 (NCBI GenBankアクセッション番号: NP_001726.2、配列番号:13)を、FreeStyle293-F細胞株(Thermo Fisher, Carlsbad, CA, USA)を用いて一過性に発現させた。ヒトC5を発現する馴化培地を等量のmilliQ水で希釈し、次にQセファロースFFまたはQセファロースHPアニオン交換カラム(GE healthcare, Uppsala, スウェーデン)にアプライし、続いてNaCl勾配で溶出させた。ヒトC5を含む画分をプールし、その後塩濃度とpHをそれぞれ80mM NaClおよびpH6.4に調整した。得られたサンプルをSPセファロースHPカチオン交換カラム(GE healthcare, Uppsala, スウェーデン)にアプライして、NaCl勾配で溶出させた。ヒトC5を含む画分をプールし、CHTセラミックハイドロキシアパタイトカラム(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)に供した。その後、ヒトC5溶出物をSuperdex 200ゲル濾過カラム(GE healthcare, Uppsala, スウェーデン)にアプライした。ヒトC5を含む画分をプールして、-150℃で保存した。本研究では、自ら調製した組み換えヒトC5または血漿由来ヒトC5(CALBIOCHEM、カタログ番号204888)のいずれかを用いた。 組み換えカニクイザルC5(NCBI GenBankアクセッション番号: XP_005580972、配列番号:14)の発現および精製は、ヒト対応物と全く同じ方式で行った。 【0220】 実施例2 合成カルシウムライブラリーの調製 合成ヒト重鎖ライブラリーとして使用した抗体重鎖可変領域の遺伝子ライブラリーは、10個の重鎖ライブラリーからなる。このライブラリーのために、ヒトB細胞レパートリーにおける生殖細胞系頻度およびV遺伝子ファミリーの生物物理学的性質に基づいて、生殖細胞系フレームワークVH1-2、VH1-69、VH3-23、VH3-66、VH3-72、VH4-59、VH4-61、VH4-b、VH5-51、およびVH6-1を選択した。ヒトB細胞抗体レパートリーをまねて、この合成ヒト重鎖ライブラリーの抗体-結合部位を多様化した。 【0221】 抗体軽鎖可変領域の遺伝子ライブラリーは、カルシウム結合モチーフを有するように設計し、ヒトB細胞抗体レパートリーを参照して、抗原認識に寄与する位置を多様化した。抗原へのカルシウム依存的結合特性を発揮する抗体軽鎖可変領域の遺伝子ライブラリーの設計は、WO 2012/073992に記載されている。 【0222】 (Methods Mol Biol.(2002)178, 87-100)を参照して、重鎖可変領域ライブラリーと軽鎖可変領域ライブラリーの組み合わせをファージミドベクターに挿入し、ファージライブラリーを構築した。ファージミドベクターには、FabとpIIIタンパク質との間のリンカー領域にトリプシン切断部位を導入した。Fabディスプレイファージの調製には、geneIIIのN2ドメインとCTドメインとの間にトリプシン切断部位を有する改変M13KO7ヘルパーファージを用いた。 【0223】 実施例3 カルシウム依存的抗C5抗体の単離 最終濃度がそれぞれ4%および1.2mMのBSAおよびCaCl2を補足したTBSを用いて、ファージディスプレイライブラリーを希釈した。パニング法としては、一般的プロトコール(J. Immunol. Methods.(2008)332(1-2), 2-9、J. Immunol. Methods.(2001)247(1-2), 191-203、Biotechnol. Prog.(2002)18(2)212-20、Mol. Cell Proteomics(2003)2(2), 61-9)を参照して、従来の磁気ビーズ選択を利用した。磁気ビーズとしては、NeutrAvidinコートビーズ(Sera-Mag SpeedBeads NeutrAvidinコート)またはStreptavidinコートビーズ(Dynabeads M-280 Streptavidin)を利用した。ヒトC5(CALBIOCHEM、カタログ番号204888)を、EZ-Link NHS-PEG4-Biotin(PIERCE、カタログ番号21329)でラベルした。 【0224】 ファージ選択の最初のラウンドでは、ファージディスプレイライブラリーをビオチン化ヒトC5(312.5nM)と共に室温で60分間インキュベートした。次に、磁気ビーズを用いて、結合性のFab変異体をディスプレイしたファージを捕捉した。 【0225】 ビーズと共に室温で15分間インキュベートした後、1.2mM CaCl2および0.1% Tween20を含有する1mLのTBSでビーズを3回洗浄し、1.2mM CaCl2を含有する1mLのTBSでビーズを2回洗浄した。1mg/mLトリプシンを含有するTBSでビーズを15分間再懸濁することによって、ファージを溶出させた。溶出されたファージをER2738に感染させ、ヘルパーファージによるレスキューを行った。レスキューされたファージをポリエチレングリコールで沈殿させ、最終濃度がそれぞれ4%および1.2mMのBSAおよびCaCl2を補足したTBSを用いて再懸濁し、パニングの次のラウンドにおいて使用した。 【0226】 パニングの第1ラウンド後に、カルシウムイオンの存在下では抗体がより強くC5に結合するというそのカルシウム依存性についてファージを選択した。第2ラウンドおよび第3ラウンドでは、50nM(第2ラウンド)または12.5nM(第3ラウンド)のビオチン化抗原を使用した点以外は、第1ラウンドと同じ方法でパニングを行い、最後に0.1mLの溶出緩衝液(50mM MES、2mM EDTA、150mM NaCl、pH5.5)で溶出し、1μLの100mg/mLトリプシンと接触させることで、そのカルシウム依存性について選択した。選択後に、選択されたファージクローンをIgG型に変換した。 【0227】 変換されたIgG抗体のヒトC5に対する結合能力を、Octet RED384システム(Pall Life Sciences)を用いて、以下の2つの異なる条件で30℃にて評価した:結合および解離が1.2mM CaCl2-pH7.4(20mM MES、150mM NaCl、1.2mM CaCl2)、および結合が1.2mM CaCl2-pH7.4(20mM MES、150mM NaCl、1.2mM CaCl2)で解離が3μM CaCl2-pH5.8(20mM MES、150mM NaCl、3μM CaCl2)。25個のpH-カルシウム依存的抗原結合性クローンが単離された。これらの抗体のセンサーグラムを図1に示す。」(【0219】~【0227】) 「【図1-1】 [図:0001427128000001.jpg] 【図1-2】 [図:0001427128000002.jpg] 」(【図1】) 「【0031】 【図1-1】選択された25個のpH依存的および/またはカルシウム依存的抗原結合クローンのOctetのセンサーグラムを示す。 【図1-2】図1-1の続きである。 ・・・」(【0031】) 明コ 「【0228】 実施例4 多量体型の抗原-抗体免疫複合体(Ag-Ab IC)を形成することができる抗C5二重特異性抗体の同定 4.1.抗体発現ベクターの調製ならびに組換え抗体の発現および精製(当審注:左記部分の下線はもともと存在していたものである。) 実施例3で単離されたクローンから、さらなる分析のために、9つのpHまたはカルシウム依存的抗C5抗体クローンを選択した(CFP0008、0011、0015、0016、0017、0018、0019、0020、0021)。CFP0016重鎖可変領域には、物理化学的性質のような抗体の性質を改善するために、当業者に周知の方法によって、いくつかのアミノ酸置換を導入した。CFP0016の代わりに、このCFP0016変異体CFP0016H019を、さらなる分析に用いた。これら9つの抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列を表2に記載する。この表において括弧内に記載する名称は略称を表す。 【0229】 【表2】 [図:0001427128000003.jpg] 【0230】 抗体重鎖および抗体軽鎖をコードするヌクレオチド配列を有する全長遺伝子を、当業者に周知の方法によって合成し、調製した。得られたプラスミド断片を哺乳動物細胞発現用ベクターに挿入することによって、重鎖および軽鎖発現ベクターを調製した。得られた発現ベクターを当業者に周知の方法によって配列決定した。抗体を発現させるために、調製したプラスミドをFreeStyle293-F細胞株(Thermo Fisher Scientific)に一過性にトランスフェクトした。抗体を発現する培養上清からの精製は、rProtein A Sepharose Fast Flow(GE Healthcare)を用いて当業者に周知の方法によって行った。 【0231】 4.2.抗C5二重特異性抗体の作製(当審注:左記部分の下線はもともと存在していたものである。) 表2に記載される2つの異なるクローンの組み合わせによって、C5の2つの異なるエピトープを認識する可能性のある二重特異性抗体を作製した。二重特異性抗体は、抗体の各結合部位に2つの異なるFabクローンを有するIgGフォーマットとして調製した。これらの二重特異性IgG抗体では、2つの重鎖のヘテロ二量体が効率よく形成されるように、2つの重鎖が互いに異なる重鎖定常領域(F760G4P1、配列番号:33およびF760G4N1、配列番号:34)を含む。表2に記載される9種のモノクローナル抗体(MAb)の重鎖および軽鎖を含む2つの結合部位の組み合わせによって構築された21種の二重特異性抗体である、潜在的な二重特異性抗体を、当業者に周知の方法を用いて調製した。抗C5MAb「X」の結合部位と抗C5MAb「Y」の結合部位を含む抗C5二重特異性抗体を「X//Y」と表す。 【0232】 4.3. 多量体型のAg-Ab IC形成によるアビディティ効果の評価(当審注:左記部分の下線はもともと存在していたものである。) 3つ以上の抗体またはFcを含有するAg-Ab ICは、多価アビディティ結合によってFc受容体(FcRnまたはFcγ受容体)に結合することができる。本明細書では、3つ以上の抗体またはFcを含むAg-Ab ICのことを、多量体型または大型のAg-Ab ICと記載した。多量体型のAg-Ab ICの形成によるアビディティ効果を評価するために、マウスFcRn(当業者に周知の方法によって生産された組換え体であり、本明細書では、以下、mFcRnという)を、Series S Sensor Chip CM5(GE Healthcare、カタログ番号BR-1005-30)上に、アミンカップリング法により固定化した。上で調製した抗C5 MAbまたは二重特異性抗体をヒトC5とおよそ1対1のモル濃度比で接触させ、室温で約30分間インキュベートした結果、Ag-Ab IC形成の平衡に達した。Biacore T200機器(GE Healthcare)またはBiacore 4000機器(GE Healthcare)を用いて、pH7.4、37℃における、固定化されたmFcRnに対するAg-Ab ICの結合を評価した。使用したランニング緩衝液は、1.2mM Caを含有するpH7.4 ACES緩衝液(20mM ACES、150mM NaCl、1.2mM CaCl2、0.05% Tween 20)であった。固定化されたmFcRnからのAg-Ab ICの解離速度を比較するために、ベースラインのレスポンスを差し引き(この工程で決定された値を、ベースラインでノーマライズされたレスポンス(baseline normalized response)という)、次にそのベースラインでノーマライズされたレスポンスを、結合相の最後の時点における値を100としてノーマライズすることによって決定される、結合でノーマライズされたレスポンス(binding normalized response)を用いた。得られた、結合でノーマライズされたレスポンスを、抗C5二重特異性抗体と、その二重特異性抗体の結合部位の起源となる2つの抗C5 MAbとを比較して、図2に示す。 【0233】 試験した抗C5 MAbはいずれも、MabのAg-Ab ICのmFcRnとの弱い単量体型の相互作用またはアフィニティ結合ゆえに、mFcRnからの迅速な解離を示した。これに対し、二重特異性抗体のAg-Ab ICのmFcRnとの多量体型の相互作用またはアビディティ結合ゆえに、試験した抗C5二重特異性抗体の大半が、抗C5 MAbより遅い解離を示した。この結果から、遅い解離を示したこれらの抗C5二重特異性抗体は、同じC5分子上の2つの異なるエピトープを認識することにより、多量体型のAg-Ab ICを形成したことが示唆された。一方、一部の二重特異性組み合わせ(15//08、15//20および20//08)は、その二重特異性抗体(15//08、15//20および20//08)の結合部位の起源となるMAbと同等の、mFcRnからの迅速な解離を示したことから、これらの二重特異性抗体は多量体型のAg-Ab ICを形成することができなかった。」(【0228】~【0233】) 「【図2-1】 [図:0001427128000004.jpg] 【図2-2】 [図:0001427128000005.jpg] 」(【図2】) 「【0031】 ・・・ 【図2-1】抗C5二重特異性抗体を含む免疫複合体と抗C5モノクローナル抗体を含む免疫複合体とのmFcRn結合の比較を示す。 【図2-2】図2-1の続きである。 ・・・」(【0031】) 明サ 「【0234】 実施例5 軽鎖共通化 5.1.軽鎖変異体の作製および評価(当審注:左記部分の下線はもともと存在していたものである。) 実施例4において見いだしたC5のクリアランスを加速するのに適した抗C5二重特異性抗体は、互いに異なる2本の重鎖と2本の軽鎖を有する2つの結合部位を含んでいた。この態様において、共通軽鎖[例えば2つの結合部位の配列が同一である軽鎖]を含む結合部位を有する抗C5二重特異性抗体を提供する(PLoS One. 2013;8(2):e57479)。軽鎖共通化のために10個の抗C5二重特異性抗体クローン(15//11、15//17、15//18、15//19、15//21、20//11、20//17、20//18、20//19および20//21)を選択した。これらの抗C5二重特異性抗体のための共通軽鎖を同定するために、当業者に周知の方法を用いて軽鎖CDRにアミノ酸置換を導入することによって、いくつかの軽鎖変異体を作製した。アミノ酸置換は主に、二重特異性抗体の結合部位の起源となる2本の軽鎖の配列間でアミノ酸残基が相違している位置に導入した。2本の軽鎖間でのCDR配列の比較を図3に示す。この図において、*は、2つの軽鎖間で相違している残基を示している。Biacore T200機器(GE Healthcare)またはBiacore 4000機器(GE Healthcare)を用いて、軽鎖変異体を、pH7.4および37℃におけるC5への結合アフィニティについて試験した。プロテインA/G(Pierce、カタログ番号#21186)または抗ヒトIgG(Fc)抗体(Human Antibody Capture Kit(GE Healthcare、カタログ番号BR-1008-39)内)をSeries S CM4(GE Healthcare、カタログ番号BR-1005-34)上に、アミンカップリング法によって固定化した。固定化された分子上に抗C5抗体を捕捉させてから、ヒトC5を注入した。使用したランニング緩衝液は、1.2mM Caを含有するpH7.4 ACES緩衝液(20mM ACES、150mM NaCl、1.2mM CaCl2、0.05% Tween 20)であった。得られた結果を表3に示す。値(%結合)は、親軽鎖を含む抗体の結合レスポンスを100として結合レスポンスをノーマライズすることによって決定した。この置換研究から、どちらの軽鎖にも許容されうる同じ位置における同じアミノ酸への置き換えを同定することができた。 【0235】 5.2. 20//18用の共通軽鎖の同定(当審注:左記部分の下線はもともと存在していたものである。) 20//18二重特異性抗体の2本の軽鎖の配列を比較すると、位置53、92および96(Kabatナンバリングにしたがって表される)にある3つのアミノ酸残基が相違しており、これらの残基を共通化する必要があった。抗C5 Mab軽鎖変異体のC5への結合活性の分析から、位置53におけるHis、Asn、SerまたはThr、位置92におけるAsp、AsnまたはSer、および/または位置96におけるPhe、His、TrpまたはTyrが、C5結合アフィニティを維持する共通軽鎖にとって許容されうる残基として同定された。位置53、92および96にこれらの許容されうる残基の組み合わせを有する軽鎖20L065(配列番号:35)が、20//18用の共通軽鎖の一つとして同定された。次に、クローン20の重鎖および20L065の軽鎖と、クローン18の重鎖および20L065の軽鎖とを含む2つの抗体を前述のように調製した。共通軽鎖[例えば20L065]を含む2つの抗体の結合センサーグラムを、親軽鎖を含む抗体の結合センサーグラムと比較して、図4に示す。共通軽鎖20L065は、クローン20の重鎖でもクローン18の重鎖でもC5結合アフィニティを維持している。 【0236】 【表3】 [図:0001427128000006.jpg] [図:0001427128000007.jpg] 【0237】 実施例6 同時注射モデルにおけるいくつかの抗C5二重特異性抗体のインビボ研究 それぞれ他の重鎖に由来する2つの相異なるヒト改変IgG1定常領域(F1684mnP17(配列番号:49)、およびF1684mnN17(配列番号:50))を含む抗C5二重特異性抗体(15//11、15//17、15//18、15//19、15//21、20//11、20//17、20//18、20//19および20//21)を前述のように調製した。10個の抗C5二重特異性抗体をマウス同時注射モデルにおいて試験することで、それらが血漿からのC5のクリアランスを加速する能力を評価した。同時注射モデルでは、ヒトFcRnトランスジェニックマウス(hFcRn-Tgm、B6.mFcRn-/-.hFcRn Tg系統276+/+マウス、Jackson Laboratories)に、単回静脈内注射により、C5のみ、または前もって抗C5二重特異性抗体と混合しておいたC5を投与した。第1群には1.34mg/kgのC5を与え、他の群にはさらに1.0mg/kgの抗C5二重特異性抗体も与えた。抗C5 ECLIAによって血漿中総C5濃度を決定した。まず、抗ヒトC5マウスIgGをECLプレートに分注し、4℃で一晩放置することで、抗ヒトC5マウスIgG固定化プレートを調製した。標準曲線用サンプルおよびサンプルを抗ヒトC5ウサギIgGと混合した。これらのサンプルを抗ヒトC5マウスIgG固定化プレートに加え、室温で1時間放置した。次に、これらのサンプルをHRPコンジュゲート抗ウサギIgG(Jackson Immuno Research)と反応させた。プレートを室温で1時間インキュベートした後、スルホタグコンジュゲート抗HRPを加えた。ECLシグナルをSector Imager 2400(Meso Scale discovery)で読み取った。SOFTmax PRO(Molecular Devices)を用いて標準曲線におけるECLシグナルからヒトC5の濃度を算出した。図5にヒトFcRnトランスジェニックマウスにおける血漿中総C5濃度の時間プロファイルを示す。 【0238】 抗原-抗体複合体は抗原そのものよりも低いクリアランスを有するため、pH依存的抗原結合を伴わない従来の抗体の投与は、抗原のみの投与と比較して、血漿からの抗原のクリアランスを低減させることが知られているが(PLoS One. 2013 May 7;8(5):e63236)、この研究において試験した二重特異性抗体の大半は、血漿からの迅速なC5クリアランスを示した。試験した抗体の中から、さらなる最適化のために、クローン20//18を選択した。」(【0234】~【0238】) 「【図3A】 [図:0001427128000008.jpg] 【図3B】 [図:0001427128000009.jpg] 」(【図3】) 「【図4】 [図:0001427128000010.jpg] 」(【図4】) 「【図5】 [図:0001427128000011.jpg] 」(【図5】) 「【0031】 ・・・ 【図3A】抗C5二重特異性抗体に含まれる2つの軽鎖間のHVRの配列比較を示す。残基の位置はKabatナンバリングにしたがって表されている。 【図3B】図3Aの続きである。 【図4】C5に対する親軽鎖または共通軽鎖を含むクローン20およびクローン18のBiacore結合センサーグラムを示す。 【図5】抗C5二重特異性抗体を注射した後のヒトFcRnトランスジェニックマウスにおける血漿中総C5濃度の時間プロファイルを示す。 ・・・」(【0031】) 明シ 「【0239】 実施例7 抗C5二重特異性抗体の結合特徴決定および最適化 7.1.抗C5二重特異性抗体の結合特徴決定(当審注:左記部分の下線はもともと存在していたものである。) 2つの異なる軽鎖を有する抗C5二重特異性抗体20//18、および共通軽鎖を有する抗C5二重特異性抗体20//18 cLリード(これらの抗体のアミノ酸配列を表4に記す)の、組換えヒトC5に対する反応速度パラメーターを、Biacore T200機器(GE Healthcare)を用いて、2つの異なる条件下(例えば、a)結合および解離がpH7.4、ならびにb)結合がpH7.4で解離がpH5.8)で37℃にて評価した。プロテインA/G(Pierce、カタログ番号21186)または抗ヒトIgG(Fc)抗体(Human Antibody Capture Kit(GE Healthcare、カタログ番号BR-1008-39)内)をSeries S CM4(GE Healthcare、カタログ番号BR-1005-34)上に、アミンカップリング法によって固定化した。固定化された分子に抗C5抗体を捕捉させた後、ヒトC5を注入した。使用したランニング緩衝液は、ACES pH7.4およびpH5.8(20mM ACES、150mM NaCl、1.2mM CaCl2、0.05% Tween 20)であった。Biacore T200評価ソフトウェアバージョン2.0(GE Healthcare)を用いて、1:1結合RI(バルク効果の補正なし)モデルでセンサーグラムをフィッティングすることによって、両pH条件における反応速度パラメーターを決定した。これらの抗体のセンサーグラムを図6に示す。反応速度パラメーター、すなわち、pH7.4における結合速度(ka)、解離速度(kd)、および結合アフィニティ(KD)、ならびに各pH条件における解離相の計算のみによって決定した解離速度(kd)を表5に記す。20//18 cLリードは相対的に20//18より遅いpH7.4における結合速度および解離速度を示した。 【0240】 【表4】 [図:0001427128000012.jpg] 【0241】 【表5】 [図:0001427128000013.jpg] 【0242】 7.2.抗C5二重特異性抗体の最適化(当審注:左記部分の下線はもともと存在していたものである。) 20//18 cLリードを、pH7.4におけるC5への結合アフィニティが改善され、かつpH依存性が改善される(pH5.8においてより迅速な解離を示す)ように、さらに最適化した。アミノ酸置換がVH領域とVL領域の両方に導入された変異体を当業者に周知の方法によって調製した。これらの変異体をヒトC5に対する結合について試験した。有効な置換を組み合わせて、最適化20//18を同定した(アミノ酸配列を表4に記載する)。最適化20//18を、実施例7.1で述べた方法と同じ方法で、ヒトC5に対する結合について試験した。最適化20//18のセンサーグラムおよび反応速度パラメーターを図6および表5に示す。」(【0239】~【0242】) 「【図6】 [図:0001427128000014.jpg] 」(【図6】) 「【0031】 ・・・ 【図6】C5に対する20//18変異体の補正したBiacore結合センサーグラムを示す。実線は、pH7.4におけるヒトC5との結合およびヒトC5からの解離を示す。破線は、pH7.4におけるヒトC5との結合およびpH5.8におけるヒトC5からの解離を示す。 ・・・」(【0031】) 明ス 「【0243】 実施例8 カニクイザルにおける最適化20//18二重特異性抗体のFc変異体のインビボ研究 最適化20//18二重特異性抗体のFc変異体、最適化20//18-hIgG1(最適化クローン20-hIgG1(20H261-G1dP1、配列番号:55)、最適化クローン18-hIgG1(18H012-G1dN1、配列番号:56)および最適化共通L鎖(20L233-k0、配列番号:57))、最適化20//18-FS156(最適化クローン20-FS156(20H261-FS156P1、配列番号:58)、最適化クローン18-FS156(18H012-FS156N1、配列番号:59)および最適化共通L鎖(20L233-k0, 配列番号:57))、ならびに最適化20//18-FS154(最適化クローン20-FS154(20H261-FS154P1、配列番号:60)、最適化クローン18-FS154(18H012-FS154N1、配列番号:61)および最適化共通L鎖(20L233-k0、配列番号:57))を前述のように調製した。 【0244】 カニクイザルC5に対する最適化20//18の交差反応性を観察するために、実施例7.1で述べた方法と同じ方法でBiacore反応速度解析を行った。得られた反応速度パラメーターを表6に示す。 【0245】 【表6】 [図:0001427128000015.jpg] 【0246】 カニクイザルFcγ受容体(FcγR)に対するhIgG1、FS156およびFS154の結合アフィニティを表7に記す。FS156は、FcγR2aおよびFcγR2bに対しては同等または2倍未満の増強した結合アフィニティを有し、FcγR1およびFcγR3に対しては有意に低下した結合アフィニティを有する。FS154は、FcγR2aおよびFcγR2bに対しては5~10倍増強した結合アフィニティを有し、FcγR1およびFcγR3に対しては有意に低下した結合アフィニティを有する。 【0247】 カニクイザルへの投与は、抗C5二重特異性抗体の単回静脈内注射により、10mg/kgの用量で行った。血漿中総カニクイザルC5濃度は抗C5 ECLIAによって決定した。まず、抗カニクイザルC5ウサギIgGを96ウェルプレートに分注し、4℃で終夜放置することによって、抗カニクイザルC5ウサギIgG固定化プレートを調製した。標準曲線用サンプルおよびサンプルを過剰の抗カニクイザルC5ヒトIgGと混合した。これらのサンプルを抗カニクイザルC5ウサギIgG固定化プレートに加え、室温で1時間放置した。次に、これらのサンプルをスルホタグコンジュゲート抗ヒトIgGと反応させた。プレートを室温で1時間インキュベートした後、Sector Imager 2400(Meso Scale discovery)を用いてECLシグナルを読み取った。SOFTmax PRO(Molecular Devices)を用いて標準曲線におけるECLシグナルからカニクイザルC5の濃度を算出した。図7にカニクイザルにおける血漿中総C5濃度の時間プロファイルを記す。 【0248】 【表7】 [図:0001427128000016.jpg] 【0249】 最適化20//18-FS156は積極的に血漿からC5を排除して血漿中C5濃度をベースラインの約2分の1に低減し、最適化20//18-FS154は血漿中C5濃度をベースラインの約30分の1に低減したことから、抗C5二重特異性抗体である最適化20//18は、C5クリアランスを、FcγR2aおよびFcγR2b依存的に有意に増強することが実証された。これは、FcγR結合が増強した多量体型のAg-Ab ICを形成することができるpHおよび/またはカルシウム依存的な抗C5二重特異性抗体が、C5(血漿中濃度が非常に高く(最大100μg/mL)、従来のモノクローナル抗体を用いる場合は高い抗体投与量を必要とする)を標的とするのに非常に有効なアプローチであることを実証している。 」(【0243】~【0249】) 「【図7】 [図:0001427128000017.jpg] 」(【図7】) 「【0031】 ・・・ 【図7】最適化された20//18のFc変異体を注射した後のカニクイザルにおける血漿中総C5濃度の時間プロファイルを示す。」(【0031】) 第5 当審の判断 1.理由2(特許法第36条第4項第1号)について (1)規範 発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要する。 ここで、第2に記載したとおり、本願発明は、2種の抗C5抗体の結合部位を含む二重特異性抗体を、 ・請求項1に記載の二重特異性抗体(以下、「参照二重特異性抗体」ともいう。)と競合する性質(以下、「競合特性」ともいう。); ・酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合する性質(以下、「pH依存的結合特性」ともいう。); という2つの性質でさらに特定するものである。 したがって、本願発明の抗体を当業者が過度の試行錯誤を要することなく製造することができるというためには、上記2つの性質を有する、2種の抗C5抗体の結合部位を含む二重特異性抗体を、当業者が出願時の技術常識を参酌しながら製造できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明が記載されている必要がある。以下ではその点について検討する。 (2)発明の詳細な説明の記載及び判断 本願の発明の詳細な説明の実施例には、独自の抗体ライブラリーの構築、C5結合能やカルシウム依存的結合特性に基づく選択を経た抗C5抗体の取得(明ケ)、取得した抗C5抗体の抗原結合部位を組み合わせた二重特異性抗体の作製及び得られた二重特異性抗体の2つの抗原結合部位がC5結合に関して互いに競合し得るかの確認(明コ)、各抗原結合部位の軽鎖CDRにアミノ酸置換を導入することによる軽鎖を共通化した二重特異性抗体の作製(明サ)、軽鎖を共通化した二重特異性抗体のさらなる最適化(明シ)、各二重特異性抗体のC5結合能や血漿からのC5クリアランス能の確認(明コ【図2】、明サ【図5】、明シ【表5】、【図6】、明ス【表6】、【表7】、【図7】)、一部の二重特異性抗体についてのpH依存的結合特性の確認(明シ【図6】)等を行ったことが記載されており、CDR配列を含む得られた抗体の構造も開示されている。しかしながら、これらの記載は本願発明の抗体の競合相手である参照二重特異性抗体の製造やその特性の確認に関するものであって、本願発明の抗体を製造したことやその構造、本願発明の抗体を製造するための方法については実施例には何も記載されていない。 次に、発明の詳細な説明の実施例以外の部分には、補体系の概略及び抗C5抗体を作製する目的の説明(明ア、イ)に続き、当該分野において汎用される各種の手法(明ウ、エ、オ、キ)、二重特異性抗体についての説明(明オ)、任意の抗C5抗体と競合する抗体を取得する際に使用できる競合アッセイ法(明エ、カ)、pH依存的結合特性を確認するためのアッセイ法(明カ)などについて記載されているが、これらは背景技術及び抗体製造時の特定のステップで使用され得る各種の一般的な方法の記載に留まり、本願発明の抗体を製造するための具体的な方法や、CDR配列等の本願発明の抗体の構造に関する情報等は実施例以外の部分にも何ら記載されていない。 このように、本願の発明の詳細な説明には、本願発明の抗体を製造したことは記載されておらず、その構造や具体的な製造方法も何ら記載されていない。 そして、抗体製造時の各ステップ、具体的にはどのような抗体ライブラリー又はホスト動物を使用するか、どのような免疫原又は抗原を使用するか、どのような順番でどのようなスクリーニングを行うか、どのようなアミノ酸改変を行うか、といった各ステップの内容に依存して、得られる抗体の性質(エピトープやその他の特性)は大きく異なるということが本願出願時の技術常識であるところ、実施例における参照二重特異性抗体の製造や構造、性質に関する記載や、実施例以外における一般的な方法の記載を含む、発明の詳細な説明の記載からでは、所定の競合特性及びpH依存的結合特性を有する本願発明の抗体を製造するために各ステップで必要となる具体的な手段や条件について当業者といえども把握することはできない。 この点、抗体ライブラリーについて、本願実施例では上記のとおり、参照二重特異性抗体を作製するために独自の抗体ライブラリーを構築しており、当該ライブラリーを用いることで、本願発明の抗体が得られる可能性が皆無とまではいえないが、発明の詳細な説明にはライブラリーの構築方法などの詳細が開示されていないため、本願実施例で構築したライブラリーと同等のものを当業者が過度の試行錯誤を要することなく再構築することができるとは認められないし、当該ライブラリーが本願出願時に市販されているなど、当業者が容易に入手可能であったものとも認められない。仮に構築又は入手できたとしても、当該ライブラリーを使用しさえすれば本願発明の抗体が容易に得られるかも不明である。また、使用する免疫原又は抗原については、参照二重特異性抗体と競合するという性質から、本願発明の抗体は、参照二重特性抗体が結合するC5上のエピトープの少なくとも近傍に結合する蓋然性が高いものであるが、参照二重特異性抗体の各抗原結合部位が認識するC5タンパク質上のエピトープがどのようなものであるかについて、線状エピトープであるか立体構造エピトープであるかも含めて発明の詳細な説明には何ら開示されていないことから、本願発明の抗体がC5上のどのような領域に結合し得るのかを当業者は理解することができない。したがって、発明の詳細な説明の記載から、競合特性を有する抗体を効率的に得るための免疫原又は抗原(例えば、参照二重特異性抗体が認識するエピトープ構造を保持したC5断片など)を設計することも困難である。 そうすると、本願発明の抗体の製造にあたり、上記のような各ステップで、具体的な手段や条件の選択・設定それ自体において当業者は過度の試行錯誤を要するといえる。 さらに、各ステップでの具体的な手段や条件の選択・設定ができたとしても、その実行にあたって、所望の活性を有する抗体を選別するためのスクリーニング、又は抗体に所望の性質を付与するためのアミノ酸改変が必要となり、このような工程自体、当業者にとって過度の試行錯誤を要するものであるし、特に本願発明のような複数の性質を同時に満たす抗体を得るためには、多段階のスクリーニングや、アミノ酸配列からその抗体の活性を正確に予測できない中、単一の性質のみを付与する場合より複雑高度な試行錯誤を伴うアミノ酸改変を経る必要があるから、その負担は当業者にとって一層過度のものといわざるを得ない。 そうすると、本願の発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識から、本願発明の抗体を当業者が過度の試行錯誤を要することなく製造することができるとはいえない。 (3)請求人の主張について 請求人は、審判請求書及び令和5年9月5日付け意見書において、要するに以下のように主張している。 ・競合特性について 参照抗体の抗体配列さえ分かっていれば、当該参照抗体が結合する詳細なエピトープ情報が明らかになっていなかったとしても、当該参照抗体と抗原Xの結合に対して競合する抗体を取得してくる行為は、例えば、参照抗体との競合ELISAによるスクリーニングやファージディスプレイ法における参照抗体を用いた競合溶出などの実験手法を用いて、当業者が過度の負担なく実施することができる。競合ELISA以外の方法、例えば、SPR法(例えばBiacoreを用いる方法; 段落[0176]参照)やαLISAなどの方法も利用可能である。 ・pH依存的結合特性について 酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合するか否かの評価も、当業者においては、過度の負担なく実施することができる(例えば、本願明細書の段落[0099]~[0101]、実施例7、8参照)。 しかしながら、請求人は単に、アッセイ法が個別に実施可能であり、そのようなアッセイ法を組み合わせることで本願発明の抗体が得られる可能性がある、ということを述べているに過ぎず、実際に本願発明の抗体が取得できることは本願発明の詳細な説明では何ら実証されていない。また、参照抗体の配列さえ分かっていれば、エピトープ情報が不明であっても、参照抗体と競合し、かつpH依存的結合特性を示す抗体を当業者が過度の試行錯誤を要することなく得られるといえる根拠について請求人は何ら述べていない。 そして、請求人自身も述べているように、本願発明の抗体を得るにあたっては、抗原特異的結合能で選別するのみならず、競合特性、pH依存的結合特性という追加的な2つの性質についてスクリーニングを行う必要があるところ、当該工程自体が当業者にとって過度の試行錯誤を要するものである。さらに、本願発明の抗体を得るためには、スクリーニング以外にも、抗体製造の各ステップでの手段や条件の選択・設定や、場合によってはアミノ酸改変等も経る必要があることは既に述べたとおりであり、そのような工程も含めて当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施できるとはなおのこと認められない。 よって、請求人の主張は採用することができない。 (4)小括 このように、本願の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本願発明の実施をすることができるとは認められないから、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 2.理由1(特許法第36条第6項第1号)について (1)規範 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。この点から、本願特許請求の範囲の記載が、サポート要件を満たすものであるか否か検討する。 (2)本願発明が解決しようとする課題について 本願明細書には、補体系の不適切な調節又は活性化は、種々の障害の原因に関与していること、障害の治療等を目的とした抗C5抗体のpH依存的結合特性を有する抗体が、抗原の血漿中からのクリアランスに寄与すること、抗体-抗原複合体中にFc領域が2つ以上含まれることにより、血漿からの抗原消失の亢進に繋がり得ることなどが記載された上で(明ア)、発明が解決しようとする課題として、2種以上の抗C5抗体の組み合わせと、その使用方法とを提供することが記載されている(明イ【0020】)。また、本願発明の2種以上の抗C5抗体の組み合わせや、さらにpH依存的結合特性を有する抗体について、血漿中からのC5のクリアランスの増強や、C5の蓄積の抑制に使用することも記載されている(明ク)。 そうすると、本願発明が解決しようとする課題(以下、「本願課題」ともいう。)は、補体介在性の疾患または状態を有する個体を治療するため、または、個体における血漿からのC5のクリアランスを増強するための2種以上の抗C5抗体の組み合わせとその使用方法を提供することであると認める。 (3)本願発明 本願請求項2に係る発明(本願発明)は、第2に記載したとおりである。 (4)判断 1.(2)でも検討したように、本願発明の抗体を実際に製造したことについて、本願の発明の詳細な説明には記載がなく、その構造や具体的な製造方法も記載されていないから、本願発明の抗体が本願の発明の詳細な説明に実質的に開示されているとはいえない。 よって、本願発明は、発明の詳細な説明において本願発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えており、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。 審判請求書及び令和5年9月5日に提出された意見書における請求人の主張は1.(3)に記載したとおりであるが、請求人の主張は、単に本願発明の抗体が、周知のアッセイ法を組み合わせることによって得られる可能性がある、ということを述べているに過ぎず、そのような抗体が本願の発明の詳細な説明において実質的に開示されている根拠について、請求人は何ら具体的な主張をしていない。 そして、上記のとおり、本願の発明の詳細な説明を見ても、本願発明の抗体が本願明細書に実質的に開示されているとはいえないのであるから、請求人の主張は採用できない。 (5)小括 このように、本願発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えているものであるといえるから、本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 第6 むすび 以上のとおり、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、この出願の特許請求の範囲の請求項2において特許を受けようとする発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-007938

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