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特許拒絶査定不服審判

2023-006661

生成方法、装置、設備、および二酸化炭素の分解方法

審判番号
2023-006661
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-197182
請求日
2023年04月21日
審決日
2024年06月11日
公報発行日
2024年08月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】キヤノン株式会社
  • 【請求人代理人】岡部 讓
  • 【請求人代理人】越智 隆夫
  • 【請求人代理人】吉澤 弘司
  • 【請求人代理人】本田 亜希
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 日比野 隆治
  • 審判官 後藤 政博
分類
P18 .121-Z (B01J) / P18 .575-Z (B01J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条特許法49条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第159条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-197182「生成方法、装置、設備、および二酸化炭素の分解方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月23日出願公開、特開2020- 62618〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年10月19日の出願であって、出願後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和 3年10月18日 手続補正書提出(自発) 令和 4年 8月10日付け 拒絶理由通知 同年10月14日 意見書・手続補正書提出 令和 5年 1月13日付け 拒絶査定 同年 4月21日 審判請求書・手続補正書提出 第2 令和5年4月21日付け手続補正(本件補正)についての補正の却下の決定 1 補正の却下の決定の結論 令和5年4月21日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 2 理由 (1) 本件補正の内容 本件補正は、願書に添付した特許請求の範囲について補正をするものである。 そして、そのうちの請求項1についてする補正の内容(本件補正前後の請求項1の記載)は、以下のとおりである(下線は補正箇所)。 ア 本件補正前の請求項1の記載 機械エネルギーを用いて、二酸化炭素と水とから、炭化水素ガスと水素ガスとを含む混合ガスを生成する生成方法であって、前記混合ガスにおいて前記水素ガスが前記炭化水素ガスよりも多いことを特徴とする生成方法。 イ 本件補正後の請求項1の記載 金属体に加えられる機械エネルギーを用いて、二酸化炭素と水とから、炭化水素ガスと水素ガスとを含む混合ガスを生成する生成方法であって、機械エネルギーを前記金属体に加えることで、前記金属体に含まれる金属が酸化されたことで生成された酸化物を、前記金属体から粉砕剥離し、前記混合ガスにおいて前記水素ガスが前記炭化水素ガスよりも多いことを特徴とする生成方法。 (2) 本件補正の適否 ア 目的要件について 上記の請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「機械エネルギーを用いて」いる点に関し、当該機械エネルギーが「金属体に加えられる」ものであること、及び、「機械エネルギーを前記金属体に加えることで、前記金属体に含まれる金属が酸化されたことで生成された酸化物を、前記金属体から粉砕剥離」するものであることを付加して限定するものであり、また、この補正前後の請求項1記載の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものと解することができる。 イ 独立特許要件について そこで、本件補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下、検討をする。 (ア) 本願補正発明 本願補正発明は、上記(1)イに記載されたとおりのものである。 (イ) 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された文献1ないし3は、以下のものである。 ・引用文献1 メカノケミカル反応を利用したSUS触媒的水素製造法と二酸化炭素完全分解法の開発、科学研究費助成事業2016年度実績報告書、課題番号16H05075、日本、2018年1月16日、https://kaken.nii.ac.jp/report/KAKENHI-PROJECT-16H05075/16H050752016jisseki/ ・引用文献2 国際公開第2013/121997号 ・引用文献3 特開2007-31169号公報 (ウ) 各引用文献の記載事項 a 引用文献1の記載事項 上記引用文献1の「2016年度実績報告書」は、その末尾に記載のとおり、2018年(平成30年)1月16日に電気通信回線を通じて公開されたものと認められる。また、この実績報告書は、「メカノケミカル反応を利用したSUS触媒的水素製造法と二酸化炭素完全分解法の開発」を研究課題として2016年度から2018年度にかけて行われた研究のうち、2016年度の状況を記したものであると解される。 そして、そこには、「研究実績の概要」、「現在までの達成度 (区分)」、「今後の研究の推進方策」といった項目が設けられ、各項目には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付したもの。引用文献2、3についても同じ)。 ・「研究実績の概要」の項目の記載内容 ステンレススチール(SUS)製遊星型ボールミル中で水をミリングすると、非加熱、非加圧で水の全量分解反応が進行し、水素が定量的に生成する。反応の進行にはSUS合金を構成する金属とメカノエネルギーが重要である。また、直鎖状のn-ペンタンやn-ヘキサンなどの低分子量炭化水素やジエチルエーテルからも同様に水素が効率良く発生する。また、水素とともにメタンなどの小分子量気体状炭化水素類も副生しており、水素の脱離だけではなく炭素-炭素結合が開裂して、水素と小分子量気体状炭化水素(微量のエタン、プロパンも確認されるが主としてメタン)に収束することが判った。また、SUS製遊星型ボールミル中で水とCO2をミリングすると、回転数が低いと水素と炭酸鉄が生じ、回転数が高いと水素とメタンが定量的に生成する。水素は水の定量的分解で生成し、炭酸鉄(あるいはH2CO3)からメタンへの還元に一部消費されている。本研究の申請時点ではメタンも水素と炭素に分解されているものと考えていたが、XPS等の詳細な分析研究の結果、気体状のメタンはほとんど分解されない事が判明した。ミリングによるメカノエネルギーの気体への伝播が困難であるため、メタンに収束すると考えれば合理的である。 また、エネルギー収支に関しては、ミリングで容易に水素が発生するSUS304ボールと、発生しにくいカーボンボール(ゼロ価の鉄が構成成分)を使用した場合の反応系内温度の差違が明確に生じることを明らかにした。このエネルギー差は『水分子から水素を取り出すために投入している基本的なメカノエネルギー』として解釈できるため、エネルギー収支の基盤として確立することができた。 無尽蔵な資源である水と多様な有機化合物(水素キャリア)の分子内水素を、効率良く取り出す方法論とともに、CO2を完全にメタンに変換して再利用する、ゼロエミッションの循環系構築を目指してさらに研究を遂行する。 ・「現在までの達成度 (区分)」の項目の記載内容 現在までの達成度 (区分) 2: おおむね順調に進展している 理由 1 メカノケミカル的水素発生効率の最適化: 水素発生効率の高い有機化合物はペンタン、ヘキサン、ジエチルエーテルであり、特にジエチルエーテルが高いことが明らかとなった。また水素発生効率はSUSボールの組成により大幅に変化し、「CrとFeのバランスが重要であること」、「ボールミル回転数に依存すること」、「使用するボールの適度な重量(メカノエネルギー)が重要であること」、「直径5 mmのボールと1 mmのボールを組み合わせると衝突効率が向上し効率良く水素が生成すること」が明らかとなった。なお研究開始当初は、「水を共存させて系内で水素ガスを発生することで、メタンが水素と炭素に変換される」ものと考えていたが、平成28年度の詳細な検討により、メタンに代表される小分子量気体状炭化水素はほとんど分解されず、メタン等のガスとして収束することが明らかとなった。 2 二酸化炭素完全分解法(二酸化炭素からメタンへの定量的変換法)の開発: SUS304容器中でCO2と水をミリングするのみでCO2をメタンに完全に変換することができるが、これは、対称構造で熱力学的に安定なCO2が水に溶解して炭酸、さらには炭酸鉄に変換されて反応が進行していることが明らかになった。現在反応スキームを明確にするため、「炭酸鉄と水素」あるいは「炭酸鉄と水酸化鉄」を組み合わせて反応の進行を詳細に追跡するなど、反応機構の解明を含めた最適化を推進している。 3 反応機構解明: 反応後に生成する金属を含む固体成分の微量分析を駆使して詳細に分析した結果、反応の進行過程で生じる中間体(水から水素が生じる反応では水酸化鉄や水酸化クロム、一方、CO2の分解反応では炭酸鉄)の存在に関する情報が収集されつつある。 以上の進捗状況より、当初の計画がそれぞれ達成されているだけでなく、反応スキームも明確になってきている現状から、研究計画は概ね順調に進行していると判断した。 ・「今後の研究の推進方策」の項目の記載内容 1 メカノケミカル的水素発生効率の最適化: <1>Crなどの金属粉を追加して更に効率化される条件を検討する。<2>水、小分子量液状炭化水素やジエチルエーテルから発生させた水素を、有機化合物に効率良く固定化するための反応条件を最適化して、有機合成化学的方法論として充実する。(当審注:原文では「<1>」及び「<2>」は丸囲み文字) 2 二酸化炭素からメタンへの定量的変換法の開発: H28年度の検討で、CO2と水からH2CO3あるいはFeCO3が生成する事で対称性が崩れた後、系内の水素源からの水素転写を受けてメタンと水に変換されることが明らかになった。さらに、水から水素を生成できないSUS以外の容器とボールを用いて、「CO2と水のみでメタンが生成するか」、「CO2と水に水素を共存させるとメタンが生成するか」、「炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムなどの塩をメカノケミカル的にメタンに変換できないか」などの検討を詳細に加えるとともに、反応機構を確認する事で、将来の地球温暖化対策に貢献できる基礎データを確立する。 3 反応機構解明: 有機化合物や水を構成する酸素は、鉄などの金属酸化物としてトラップされる。また炭素を含有する有機基質では、C-C結合も切断されて分子量の小さなメタン等の気体成分(燃料)が生成する。反応後に副生する金属を含む固体成分の分析と解析を継続して、反応機構を解明する。電子移動やラジカル反応を主体に進行しているはずなので、ラジカル補足剤の添加による反応効率の変化を追跡する。さらに、水から水素が発生する際の反応中間体と予想される水酸化クロムや水酸化鉄を始めとする金属水酸化物を、水を添加せずにミリングして水素ガスの発生を確認する。また、H28年度からの継続検討課題であるマテリアルバランスについては、硬質ガラス製ボールをミリングしてクラッシュさせ、粉砕エネルギーからメカノエネルギーを計算する。 b 引用文献2の記載事項 引用文献2は、2013年(平成25年)8月22日に国際公開された国際公開公報であり、「水素または重水素の製造方法、水素化または重水素化有機化合物の製造方法、有機化合物の水素化または重水素化方法、ハロゲンを有する有機化合物の脱ハロゲン化方法、メカノケミカル反応用ボ-ル」(発明の名称)に関する発明について、その「請求の範囲」及び「明細書」には、以下の事項が記載されている。 ・「請求の範囲」の記載内容 [請求項1] 水または重水を、触媒金属の存在下、メカノケミカル反応させる水素または重水素の製造方法であって、水または重水に、回転による加速度が75G以上のエネルギー密度を25分間以上与えることを特徴とする水素または重水素の製造方法。 [請求項2] メカノケミカル反応を遊星型ボ-ルミルで行う請求項1記載の水素または重水素の製造方法。 ・「明細書」の記載内容 発明を実施するための形態 ・・・ [0016] 本発明(1)は、水または重水を、触媒金属の存在下、メカノケミカル反応させる水素または重水素の製造方法であって、水または重水に、回転による加速度が75G以上のエネルギー密度を25分間以上与えることを特徴とする水素または重水素の製造方法である。 [0017] この方法で行われるメカノケミカル反応は、衝撃、摩擦等の機械的エネルギーにより反応物の活性を高めることにより行われるものである。本発明(1)において用いることのできるメカノケミカル装置としては、反応容器と機械的エネルギーを与える撹拌媒体を備え、回転により反応容器中の水または重水に機械的エネルギーを与えるものが挙げられ、例えば、遊星型ボ-ルミル、ボ-ルミル、ミキサ-ミル等が挙げられる。これらの中でも、反応容器と撹拌媒体が共に回転する遊星型ボ-ルミルを用いることが撹拌効率や与えるエネルギーの点から好ましい。 ・・・ [0020] 本発明(1)において、触媒金属の存在下でメカノケミカル反応をさせるには、触媒金属をメカノケミカル反応系に、触媒作用を発揮する量、例えば、水に対し、0.001モル%より多い量で存在させるだけでよい。触媒金属としては、パラジウム、鉄、ニッケル、クロム、マグネシウム、亜鉛等の遷移金属やそれらの酸化物等が挙げられ、好ましくは鉄、水酸化鉄(II)、ニッケル、酸化ニッケル(II)、クロム、酸化クロム(III)、パラジウム等が挙げられる。これらの触媒金属は1種または2種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、これらの触媒金属は、メカノケミカル反応に用いられる反応容器中に、粉末、ワイヤ-、ホイル等の形態で添加しても良いし、メカノケミカル反応に用いられる反応容器、ボ-ル、撹拌棒等の撹拌媒体に含まれていても良いし、前記撹拌媒体にメッキ等しても良い。 ・・・ 実施例 ・・・ [0051] <遊星型ボ-ルミル> (実施例1) 使用機器:ドイツ フリッチュ社製 遊星型ボ-ルミル プレミアムライン-7 自転:公転比率=1:-2 公転半径 0.07m 容 器:内容量 80mL 材質 ステンレススチ-ル(SUS304) 半径 0.0240m ステンレススチ-ル(SUS304)の組成; Fe(approx.) 67~70%、 C 0.12%、 Si 1%、 Mn 2%、 P 0.06%、 S 0.15~0.35%、 Cr 17~19%、 Ni 8~10% ・・・ [0054] 実 施 例 1 水素発生条件の検討: 遊星型ボ-ルミル容器(80mL)に、蒸留水(Wako 046-16971)270μL(15mmol)と、ステンレススチ-ル(SUS304)製のボ-ル(直径5~6mm)を100個入れた後、蓋をし、遊星型ボ-ルミル装置で5分~30分間、400~1100rpmで回転させ、撹拌した。攪拌終了後の容器内のガスを水上置換により捕集し、その組成をGC/TCD(島津製作所製:GC-2014)で分析した。 c 引用文献3の記載事項 引用文献3は、2007年(平成19年)2月8日に公開された公開特許公報であり、「水素の製造方法及び二酸化炭素の固定化方法」(発明の名称)に関する発明について、その「特許請求の範囲」及び「発明の詳細な説明」には、以下の事項が記載されている。 ・「特許請求の範囲」の記載内容 【請求項1】 金属体または低原子価の金属を含む物質体に、機械的衝撃ないし応力を加えるとともに水と接触させることにより、高原子価金属を生成し、水素を発生させることを特徴とする、水素の発生方法。 【請求項2】 前記機械的衝撃ないし応力を与える態様が、前記金属体または低原子価の金属を含む物質体に、硬質体を衝突させることによることを特徴とする、請求項1に記載する水素の発生方法。 【請求項3】 前記金属体または低原子価の金属を含む物質体と水との接触に際して、酸を添加することを特徴とする、請求項1又は2に記載する水素の発生方法。 【請求項4】 金属体または低原子価の金属を含む物質体に、機械的衝撃ないし応力を加えるとともに水と二酸化炭素とを供給することにより、水素を発生させると共に、二酸化炭素を高原子価金属の炭酸塩を含む物質に転換、固定することを特徴とする、水素の発生と二酸化炭素の固定化とを行う方法。 【請求項5】 前記機械的衝撃ないし応力を与える態様が、前記金属体または低原子価の金属を含む物質体に、硬質体を衝突させることによることを特徴とする、請求項4に記載する水素の発生と二酸化炭素の固定化とを行う方法。 ・「発明の詳細な説明」の記載内容 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 上記したように、水を原料とし、水と金属との反応によって水素を発生させ、製造するシステムにおいては、反応に際して高温に加熱することや、反応性を高めるためあらかじめ金属を粉末化することを要し、そのためかなりのエネルギー、コストを要するもので問題があったこと、また、上記特定の吸収材料による二酸化炭素固定化システムでは、今後膨大な量の吸収剤の確保とそのためのコスト、エネルギーも膨大となり、コスト的にもエネルギー的にも極めて問題であったことから、本発明は、このような問題のない全く新しい水素発生システムとこのシステムを利用した二酸化炭素固定化システムを提供しようというものである。 【課題を解決するための手段】 【0010】 そのため、本発明者らにおいては上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、金属または低原子価の金属を含む物質体にひずみを与えたり、変形させたり、破壊させたりできる程度の大きさの機械的衝撃ないし応力を加え、水を接触させることにより、金属と水とが反応し、水素を発生することができること、さらにその際、水とともに二酸化炭素を導入することによって、二酸化炭素は金属の安定な炭酸塩として転換され、これによって固定化しうることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものであって、その構成は、以下の通りである。 (1) 金属体または低原子価の金属を含む物質体に、機械的衝撃ないし応力を加えるとともに水と接触させることにより、高原子価金属を生成し、水素を発生させることを特徴とする、水素の発生方法。 (2) 前記機械的衝撃ないし応力を与える態様が、前記金属体または低原子価の金属を含む物質体に、硬質体を衝突させることによることを特徴とする、(1)に記載する水素の発生方法。 (3) 前記金属体または低原子価の金属を含む物質体と水との接触に際して、酸を添加することを特徴とする、(1)又は(2)に記載する水素の発生方法。 (4) 金属体または低原子価の金属を含む物質体に、機械的衝撃ないし応力を加えるとともに水と二酸化炭素とを供給することにより、水素を発生させると共に二酸化炭素を高原子価金属の炭酸塩を含む物質として転換、固定することを特徴とする、水素の発生と二酸化炭素の固定化とを行う方法。 (5) 前記機械的衝撃ないし応力を与える態様が、前記金属体または低原子価の金属を含む物質体に、硬質体を衝突させることによることを特徴とする、(4)に記載する水素の発生と二酸化炭素の固定化とを行う方法。 ・・・ 【発明を実施するための最良の形態】 ・・・ 【0026】 金属体と水との反応系に、水に溶けて酸性を示す気体として二酸化炭素を添加すると、酸の添加による水素生成の促進のみならず、別種の効果も得られる。すなわち、金属体に機械的エネルギーを与える際、水とともに二酸化炭素ないし二酸化炭素を含む気体を導入することによって、水素の生成とともに炭酸イオン(CO32-)や炭酸水素イオン(HCO3-)が生成し、さらには、酸化した金属体に起因する金属イオンと結合し、該金属の炭酸塩、炭酸水素塩に転換され、これにより、二酸化炭素を固定化することができる。すなわち、クリーン燃料の水素を製造すると同時に、言わばアンクリーン燃料等から発生した二酸化炭素を回収・固定できるという、一石二鳥の効果が得られる。なお、ここでいう炭酸塩は、炭酸塩や炭酸水素塩のほか、例えば水酸化炭酸塩M2CO3・nMOHのように水酸化物塩と炭酸塩が複合したものなど、他の陰イオン等が混ざったものを含み得、排除するものでない。 ・・・ 【0031】 本発明を実施する上において、金属体への機械的衝撃ないし応力の付与や、その結果として生じる歪み、変形、破壊、粉砕は、機械的な混合・攪拌・粉砕のための装置、例えばボールミルのようなミリング装置を用いることで効果的に行い得る。すなわち、ミルポットにボールと、金属粉または金属片(金属体)と、水を入れ、ポットを回転させる。金属体と水が激しく攪拌されながら、ボールやポット壁との衝突を繰り返して金属体が機械的衝撃を受け、粉砕、圧延され、一緒に混練されている水と反応して水素が生成する。この還元反応によって金属体中の金属は酸化される。すなわち水酸化物や酸化物等、金属の酸化数がより大きい化合物に変化する。 【0032】 またポットにボールと、金属体と、水を入れ、気相中に二酸化炭素を満たしてポットを回転させる。水素が発生し、金属は酸化されると同時に炭酸イオンと結合して金属炭酸塩が生成する。これによって二酸化炭素は、炭酸塩として固定される。 ・・・ 【0045】 これに対し本発明は、金属片に機械的衝撃を与えてこれを活性化し、これと接触する水と化学反応を起こして常温でも効率的に水素を発生させることができる。 【0046】 一般に固体に対し機械的衝撃や応力を与えると、構造が歪んだり破壊されたり、粉砕されたり展延されたりする。このとき固体は圧縮、摩擦、衝撃応力、せん断応力などを受けて励起され、エネルギーが蓄積される。これによって固体の形状が変わったり微細化したりするだけでなく、準安定相へ相転移したり、結晶構造が壊れて非晶質化するなどの現象が観測される。加えて周囲の物質との化学的相互作用が起こり易くなって固相反応が促進される、メカノケミカル反応と呼ばれる現象によって物質の合成が進められることも周知である。 【0047】 本発明においても、メカノケミカル反応によって説明することができる。すなわち、金属片に機械的衝撃を与えることで、メカノケミカル反応が進行し、金属体は、機械的エネルギーが与えられて励起・活性化され、準安定状態に移行すると共に、また、機械的衝撃による微細化によって比表面積が大きくなり、水との接触面積が広がって反応を起こす金属の割合が増え、全体としての反応速度が上昇し、量的にも反応が促進されうると考えられる。 【0048】 本発明は、機械的襲撃による微細化の効果に加えて、金属が活性化されて反応性が高められるという効果があるため、水との化学反応が促進され、効率的に水素を発生することができる。また機械的衝撃と同時に物質移動が促進される効果もある。 【0049】 すなわち、反応後に金属表面が酸化皮膜などの反応生成物によって覆われ、内部に未反応の金属が残ってしまったとしても、機械的衝撃によってこのような構造はすぐに破壊されるために未反応金属表面が露出し反応が進行する。また機械的衝撃が反応系の水にも及ぶと、水が攪拌されて金属表面へ迅速に供給されることになり、また同時に、生成した水素が金属表面から迅速に除去されるために表面に吸着残留等して反応進行を阻害するようなこともなく、反応速度が向上する。これらの相乗効果によって、従来技術のような高温への加熱を必ずしもする必要がなくなり、常温すなわち、20℃前後の室温やそれより低い温度においても水素を製造することができる。 ・・・ 【実施例】 ・・・ 【0052】 実施例1; 容積80mlのSUS304ステンレス製ポットに、同材質の直径0.5インチ(12.7mm)、質量8.5gのボール15個と、原料とを入れて回転させる遊星型ボールミル(伊藤製作所LPC-400)を用いた。原料として粒径80~100μm程度の鉄粉(添川理化学製99min%)0.15gと純水(ミリポア純水装置Elixより採取)2mlを入れ、空気を脱気して1気圧の二酸化炭素雰囲気または、1気圧の窒素雰囲気とし密閉した。 容積80mlからボール15個分の容積を差し引いた残りの容積に満たされた1気圧の気体のモル数は、0.15gの鉄のモル数にほぼ等しい。回転テーブルを毎分n回転の速度で公転運動させるとき、テーブル上のポットは公転運動するとともに、その回転方向とは逆方向に毎分n回転の速度で自転運動する。すなわち、ポットはテーブル上に固定した座標軸に対しては毎分2×n回転の運動をすることになる。n=200、または300の条件でミリングを行い、またミリング中は冷風をポットに吹き付けて冷却し、ポット内が摩擦熱によって熱くならないようにした。ポット回りは16℃前後に保たれた。数分後にミリングを止め、ポット内のガスをガスクロマトグラフィーによって分析すると、水素が生成していた。二酸化炭素雰囲気のときには、二酸化炭素が消費されていた。ポット内の水を乾燥させて除き、得られた粉末について粉末X線回折パターンを調べると、二酸化炭素雰囲気のときには、炭酸鉄(菱面体晶系FeCO3、鉱物名:菱鉄鉱)の生成が確認され、窒素雰囲気のときには、四三酸化鉄(立方晶系Fe3O4、逆スピネル型構造)の生成が確認された。 それぞれ反応式は(2)、(3)式で示される。 Fe + H2O + CO2 → FeCO3 + H2↑・・・・(2) 3/4Fe + H2O → 1/4Fe3O4 + H2↑・・・・(3) (2)式によって生成した上記炭酸鉄はシリカゲルとともに密閉した結果、一ヶ月が経過しても分解を起こさずに安定に保管できることが確認された。 (エ) 引用文献1に記載された発明(引用発明) 引用文献1の「研究実績の概要」の項目には、「SUS製遊星型ボールミル中で水とCO2をミリングすると、回転数が低いと水素と炭酸鉄が生じ、回転数が高いと水素とメタンが定量的に生成する。水素は水の定量的分解で生成し、炭酸鉄(あるいはH2CO3)からメタンへの還元に一部消費されている。」との記載があるから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「SUS製遊星型ボールミル中で、水と二酸化炭素をミリングして、水素とメタンを生成する方法」 (オ) 本願補正発明と引用発明との対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 両者の構成の相当関係は、以下のように解することができる。 ・引用発明における「SUS製遊星型ボールミル」を構成するSUS製のボールあるいは容器(ポット)は、本願補正発明における「金属体」に相当する。なお、引用文献1には、この「SUS製遊星型ボールミル」について詳述した箇所は見当たらないが、引用文献2、3の実施例に記載されたような、SUS製のボール及び容器から構成される一般的な遊星型ボールミルを指すものと解される。 ・引用発明における「ミリング」の際は、遊星型ボールミルの回転などによって、上記ボールあるいは容器には、衝撃、摩擦等の機械的エネルギーが加えられることから、当該「ミリング」は、本願補正発明における「金属体に加えられる機械エネルギーを用い」た工程に相当する。なお、もとより、引用発明は、引用文献1の表題にある、「メカノケミカル反応」を利用したものであって、このメカノケミカル反応とは、引用文献2の[0017]や引用文献3の【0046】に記載されているとおり、(遊星型ボールミルなどによる)衝撃、摩擦等の機械エネルギーにより反応物の活性を高めることにより行われ、周囲の物質との化学的相互作用が起こり易くなって固相反応が促進される現象であることからすれば、引用発明のミリング工程は、当該メカノケミカル反応を誘起する工程、すなわち、本願補正発明における「金属体に加えられる機械エネルギーを用い」た工程に相当することは明らかである。 ・引用発明における「メタン」は、本願補正発明における「炭化水素」に相当するものであり、引用発明において生成する「水素とメタン」はガス状の混合ガスとして生成されるものと考えるが合理的であるから、引用発明の「水素とメタンを生成する方法」は、本願補正発明における「炭化水素ガスと水素ガスを含む混合ガスを生成する生成方法」に相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は、以下のように認定することができる。 ・一致点 両者はともに「金属体に加えられる機械エネルギーを用いて、二酸化炭素と水とから、炭化水素ガスと水素ガスとを含む混合ガスを生成する生成方法」である点 ・相違点 (相違点1)本願補正発明は、「機械エネルギーを前記金属体に加えることで、前記金属体に含まれる金属が酸化されたことで生成された酸化物を、前記金属体から粉砕剥離」するものであるのに対して、引用発明は、このような工程について明示していない点 (相違点2)本願補正発明は、「前記混合ガスにおいて前記水素ガスが前記炭化水素ガスよりも多い」のに対して、引用発明は、混合ガスにおける水素ガス量と炭化水素(メタン)ガス量の多少について明示していない点 (カ) 相違点の検討 a 引用発明における水素及びメタンの生成機序について あらかじめ、引用発明において水素とメタンが生成する機序について確認しておくと、引用文献1の「研究実績の概要」の項目の冒頭には、「ステンレススチール(SUS)製遊星型ボールミル中で水をミリングすると、非加熱、非加圧で水の全量分解反応が進行し、水素が定量的に生成する。反応の進行にはSUS合金を構成する金属とメカノエネルギーが重要である。」と記載され、さらに、同項目の中程には、「SUS製遊星型ボールミル中で水とCO2をミリングすると、回転数が低いと水素と炭酸鉄が生じ、回転数が高いと水素とメタンが定量的に生成する。水素は水の定量的分解で生成し、炭酸鉄(あるいはH2CO3)からメタンへの還元に一部消費されている。」と記載されている。また、「現在までの達成度 (区分)」の項目には、「2 二酸化炭素完全分解法(二酸化炭素からメタンへの定量的変換法)の開発: SUS304容器中でCO2と水をミリングするのみでCO2をメタンに完全に変換することができるが、これは、対称構造で熱力学的に安定なCO2が水に溶解して炭酸、さらには炭酸鉄に変換されて反応が進行していることが明らかになった。」、「3 反応機構解明: 反応後に生成する金属を含む固体成分の微量分析を駆使して詳細に分析した結果、反応の進行過程で生じる中間体(水から水素が生じる反応では水酸化鉄や水酸化クロム、一方、CO2の分解反応では炭酸鉄)の存在に関する情報が収集されつつある。」との記載があり、「今後の研究の推進方策」の項目には、「3 反応機構解明: 有機化合物や水を構成する酸素は、鉄などの金属酸化物としてトラップされる。」との記載がある。 そうすると、引用発明においては、ミリングによって、まずは原料の水から水素が発生し、この水を構成する酸素は、鉄の金属酸化物・水酸化物などとしてトラップされるとともに、原料の二酸化炭素からは一旦、炭酸鉄が生じ、この炭酸鉄と、上記水素の一部が反応してメタンが生じるものと理解するのが合理的である。 なお、このような理解(金属酸化物や金属炭酸塩が形成される機序についての理解)は、引用文献3の【0031】、【0032】の記載(ただし、引用文献3は、金属体を別途添加するものである。)とも符合する。 b 相違点1について 上記aにおいて確認した機序を踏まえて、上記相違点1について検討をする。 引用発明は、上記の機序のとおり、機械的エネルギーをトリガーとしたメカノケミカル反応を利用して、金属体と水との反応を促進させ、水素を生成するものであり、この反応後の金属体の表面には、反応生成物である鉄酸化物が生成されることとなる。しかしながら、この鉄酸化物は、金属体表面を覆うものであり、当該金属体と水との直接接触を妨げるものであるから、この水素生成反応を持続的に行うという観点からすると、このような状況(反応生成物たる鉄酸化物が金属体表面を覆ってしまう状況)が好ましいことではないことは、当業者であれば想像に難くない。 一方で、機械的衝撃(機械的エネルギー)を伴うメカノケミカル反応を利用する場合、引用文献3の【0049】に記載されたような副次的効果が見込まれる。すなわち、機械的衝撃によって金属体表面を反応生成物が覆うような構造はすぐに破壊されるために未反応金属体表面が露出して反応が進行するという効果を期待することができる。また、引用文献2の[請求項1]に記載されているように、機械的衝撃(機械的エネルギー)を伴うメカノケミカル反応を利用して、水から水素を生成するために、相当程度の機械的エネルギーを与える必要があることはいうまでもない。 そうであれば、引用発明も、機械的衝撃(機械的エネルギー)を伴う上、この機械的エネルギーは相当程度のものと解されるから、反応生成物たる鉄酸化物は少なからず破壊されているものと考えるのが合理的である。 加えて、引用発明において、水素の生成工程は、その後のメタンの生成の前提となる工程であり、特に、引用文献1の表題にある「二酸化炭素完全分解」を達成するためには潤沢な水素が必要となることから、この前提工程である水素の生成工程には、潤沢な水素が定量的かつ持続的に生成することが望まれていると解するのが相当である。さすれば、水素の発生状況をみながら必要に応じて、当該破壊を意図的に行うようなミリング条件を採用することも、当業者であれば容易に想到し得るものというべきである。 したがって、引用発明は、既に、上記相違点1に係る「エネルギーを前記金属体に加えることで、前記金属体に含まれる金属が酸化されたことで生成された酸化物を、前記金属体から粉砕剥離」する工程を具備するものであるということができるため、上記相違点1は実質的なものとはいえないし、仮に、引用発明が当該工程を具備しないものであるとしても、当業者が必要に応じて当該工程を行うことに格別の困難性は見当たらないから、引用発明において当該相違点1に係る構成を採用することは当業者による容易想到の範疇の事項にすぎないものである。そして、当該構成の採用により奏される本願補正発明の効果(本願明細書の【0058】、【0059】などに記載の効果)も、引用文献3の【0049】の記載などからみて、格別のものとは到底いえない。 c 相違点2について 上述のとおり、引用文献1の「研究実績の概要」の項目の中程には、「水素は水の定量的分解で生成し、炭酸鉄(あるいはH2CO3)からメタンへの還元に一部消費されている。」と記載されているし、上記aにおいて確認した機序からみても、まずは、水素が生成し、その後、その水素を原料としてメタンの生成が開始されることが理解できる。加えて、メタンの生成に使用される二酸化炭素は一旦、炭酸鉄として捕捉される過程を経るものであり、直ちにメタンが生成されるわけではない。 このようなメタンガスの生成過程に照らすと、引用発明では、特に、メタンガスの生成の初期において、既に生成している水素ガスの方が、その後に生成するメタンガスよりも多いと解するのが合理的である。 また、上記bで述べたとおり、引用発明における水素の生成工程は、その後のメタンの生成の前提となる工程であり、二酸化炭素を完全に分解するための潤沢な水素(二酸化炭素の分解のために必要とされる化学量論的な量よりも余裕をもった水素ガス量)を定量的かつ持続的に生成する工程である必要がある(当然のことながら、その原料となる水も潤沢に存在することが必要である。)。確かに、炭酸鉄と水素からメタンを合成する反応を考えると、化学量論的には、メタンに対して大量の水素が消費されることになるから、この反応が進むと、混合ガス中のメタン量が増加し、水素量が加速的に減少することも考えられるが、水素ガスは上記のとおり定量的かつ持続的に生成されるとともに、もとより、この合成反応が進行していくためには、生成されるメタンガスに対する相当量の原料たる水素ガスが必要であるから、この点からみても引用発明における混合ガス中の水素ガスは、メタンガスよりも多いと解するのが合理的である。 さらにいうと、混合ガス中の水素ガス及びメタンガスは、いずれも有価物であり、その用途に応じてそれらの割合を設定することも可能であるから、原料となる水や二酸化炭素の量、混合ガスの回収時期などを調整して、それらの割合を調整し、引用発明においても、混合ガスにおいて水素ガスが炭化水素ガス(メタンガス)よりも多い状態とすることは、当業者にとって容易なことということができる。 したがって、引用発明は、既に、上記相違点2に係る混合ガスの組成を具備するものであるということができるから、上記相違点2は実質的なものとはいえない。また、仮に、引用発明が当該組成を具備しないものであるとしても、当業者が混合ガスの用途などに応じて当該組成を調整することに格別の困難性は見当たらないから、引用発明において当該相違点2に係る構成を採用することは当業者の容易想到の事項にすぎないものである。そして、当該構成の採用により奏される本願補正発明の効果も、格別のものとは認められない。 (キ) 本願補正発明の構成容易想到性と効果について 上記(カ)における検討のとおり、上記相違点1及び2に係る本願補正発明の各構成は、引用発明が既に具備するものであるか、当業者による容易想到の範疇の事項であるところ、とりわけ当該各構成を組む合わせた本願補正発明全体の構成容易想到性についてさらに考えてみても、考慮すべき事情は見当たらないし、当該組合せによる相乗的な効果も認められない。 (ク) 独立特許要件についてのまとめ 以上の検討のとおり、本願補正発明は、本願の特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明にあたる、引用文献1に記載された発明(引用発明)であるか、当該引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 補正の却下の決定のむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。 よって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである 第3 本願発明 令和5年4月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし48に係る発明は、令和4年10月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし48に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の2(1)アに記載したものであり、再掲すると次のとおりのものである。 「機械エネルギーを用いて、二酸化炭素と水とから、炭化水素ガスと水素ガスとを含む混合ガスを生成する生成方法であって、前記混合ガスにおいて前記水素ガスが前記炭化水素ガスよりも多いことを特徴とする生成方法。」 第4 原査定の拒絶の理由 上記本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、要するに、本願発明は、上記引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 第5 引用文献1の記載事項と引用発明 原査定の拒絶の理由において引用された「引用文献1」の記載事項は、上記第2の2(2)イ(ウ)aにおいて摘示したとおりであり、そこには、上記第2の2(2)イ(エ)において説示したとおりの「引用発明」を認めることができる。 第6 本願発明と引用発明との対比・検討 本願発明は、上記本願補正発明から上記相違点1に係る事項などを省いたものであるから、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、上記第2の2(2)イ(オ)の相違点2と同様の点でのみ相違し、その余の点については一致すると認められる。 そして、当該相違点2については、上記第2の2(2)イ(カ)において検討したのと同様の理由により、実質的な差異ではないか、容易想到の範疇の事項といえるから、本願発明は、原査定の拒絶の理由のとおり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものといわざるを得ない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本願発明、すなわち、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条の規定により特許を受けることができないものであるから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、同法第49条第2号に該当するので拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-006661

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