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特許拒絶査定不服審判

2023-006298

提供装置、提供方法、および提供プログラム

審判番号
2023-006298
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-134752
請求日
2023年04月17日
審決日
2023年11月01日
公報発行日
2024年01月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】LINEヤフー株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 佐藤 智康
  • 審判官 渡邊 聡
  • 審判官 古川 哲也
分類
P18 .121-Z (G06Q) / P18 .575-Z (G06Q) / P18 .113-Z (G06Q)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-134752「提供装置、提供方法、および提供プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 2月15日出願公開、特開2021- 18668〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年7月22日の出願であって、手続の概要は以下のとおりである。 令和 4年 7月27日 :拒絶理由通知(起案日) 令和 4年10月 3日 :意見書・手続補正書の提出 令和 5年 1月11日 :拒絶査定(起案日) 令和 5年 4月17日 :審判請求書・手続補正書の提出 第2 令和5年4月17日にされた手続補正についての補正却下の決定 令和5年4月17日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)について次のとおり決定する。 《補正却下の決定の結論》 令和5年4月17日にされた手続補正を却下する。 《理由》 1 本件補正の内容 本件補正は、補正前の請求項1の記載を補正後の請求項1の記載とする以下のとおりの補正事項を含むものである。 (補正前) 【請求項1】 所定のウェブコンテンツ内に配置された所定の描画領域を介して、利用者が所定のグラフィックツールを用いて描画した描画画像を受付ける受付部と、 前記描画画像の内容に応じたコンテンツを前記利用者に提供する提供部と を有することを特徴とする提供装置。 (補正後:下線は補正箇所) 【請求項1】 所定のウェブコンテンツ内に配置された所定の描画領域を介して、利用者が所定のグラフィックツールを用いて、任意の色彩で描画した描画画像を受付ける受付部と、 前記描画画像の内容に応じたコンテンツを前記利用者に提供する提供部と を有することを特徴とする提供装置。 2 補正の適否 (2-1)補正の範囲・単一性 本件補正は、願書に最初に添付した明細書の記載に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。 また、以下の(2-2)で検討するように、補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明が、補正前の発明と単一性を満たすことは明らかである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するものである。 (2-2)補正の目的 上記補正事項は、補正前の請求項1の「描画画像を受付ける受付部」の構成について、本件補正により「利用者が所定のグラフィックツールを用いて、任意の色彩で描画した描画画像」との記載とすることで、「描画画像」の構成について、「任意の色彩で(描画した)」との特定事項を有するように補正したものである。 これは、本件補正前の「描画画像」の構成が、「所定のグラフィックツールを用いて描画した描画画像」であったのに対し、本件補正後は「任意の色彩で(描画した)」という限定事項を付加し、「所定のグラフィックツールを用いて、任意の色彩で描画した描画画像」となるように限定事項を付加した補正である。 したがって、本件補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、かつ、補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮に該当するものである。 (2-3)独立特許要件 そこで、以下、上記補正後の請求項1に係る発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。 ア 補正後の請求項1に記載された発明 本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正後発明」という。)は、以下のとおりである。 【請求項1】 所定のウェブコンテンツ内に配置された所定の描画領域を介して、利用者が所定のグラフィックツールを用いて、任意の色彩で描画した描画画像を受付ける受付部と、 前記描画画像の内容に応じたコンテンツを前記利用者に提供する提供部と を有することを特徴とする提供装置。 イ 引用文献の記載事項及び引用発明 (ア)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-122989号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、コンピュータ画面に表示する広告を、観る者に強く印象づけ、効率よく記憶させるための発明である。 【0002】 【従来の技術】バナー広告は、インターネットのウェブページに表示される横長長方形の画像広告である。多くの場合、広告主のウェブページにリンクが張られており、クリックされると広告主のウェブページが表示されるようになっている。インターネットが普及し始めた頃は、広告数が少なかったこともあり、このようなバナー広告は多くのユーザの興味をひいた。しかし、あらゆるウェブページにバナー広告が氾濫するようになった昨今では、以前に比べ広告としての効果が薄れつつあると言われている。この対策としては、バナー広告をアニメーション表示する、ユーザの閲覧ページの内容からユーザニーズを分析して関連する分野のバナー広告を表示するなど、ユーザの気を惹くための工夫がなされているものの、十分な効果を挙げているとは言い難い。 【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、コンピュータ画面に広告を表示する場合に、広告閲覧者にブランド名・企業名などの広告内容を強く印象づけ、効率よく記憶させることである。コンピュータ画面に表示する広告としては、CD-ROM内のファイルを開くと表示される広告や、インターネット上のオンライン広告がある。オンライン広告としては、上記バナー広告はもちろんのこと、ウェブページ全体を使った広告もある。さらには、ブラウザにより閲覧されるものに限らず、専用プログラムあるいは専用装置によって表示されるものも考えられる。 【0004】また、本発明は、広告の場合に限らず、ある者に対し所定の内容を強く印象付けたい場合に、その者の「記憶する」という行為を支援するプログラムを提供する。所定の内容を強く印象づけたい場合とは、広告、選挙活動のように他者に対して名前などの印象をしっかり刻みつけたい場合のほか、英語学習の単語暗記のように自分自身がある内容を覚えたい場合も含む。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために、以下のような広告方法を提案する。また、その広告方法を実施するための広告プログラム、サーバ、装置を提供する。 【0027】 【発明の実施の形態】実施の形態1.実施の形態1は、バナー広告を利用して広告を行う形態である。以下に示す例では、広告主(ゲームメーカ)は、このバナー広告によって、新しい分野の製品開発(キックボードの開発)に乗り出したことをアピールしたいと考えている。以下、その方法、およびその方法を実施するためのプログラムやシステムについて説明する。 【0028】図1は、このバナー広告の機能を説明するための図である。図1(a)はバナー広告の最初の状態、すなわちウェブページが開かれたときの表示を示している。この時点のバナー広告は従来と異なるところはなく、静止画像でもよいし、例えば文字が右から左へと流れるといったアニメーションでもよい。 【0029】広告閲覧者がこのバナー広告をマウスによりクリックすると、図1(b)に示すような白抜き文字が、「文字をなぞってね!」というメッセージとともに出現する。白抜き文字は広告主が広告閲覧者に強く印象付けたい内容「ナムコがキックボードをはじめました」を表している。図1(b)のバナー広告もまた、外観上は従来と異なるところはない。 【0030】しかし、このバナー広告は従来と機能が異なり、それ自体がペイント・ソフト(データを座標単位で管理するタイプのグラフィックスソフト)の基本機能を備えている。すなわち、広告閲覧者がこのバナー広告上にカーソルを配置し、マウスボタンを押したままマウスを引きずってカーソルを移動させると、カーソルが通過した部分に線が描かれる。よって、広告閲覧者が、「文字をなぞってね!」というメッセージに応えて、白抜き文字をなぞるようにマウス操作を行った場合には、図1(c)に示すように、なぞった部分が重ねて黒く表示される。 【0031】広告閲覧者が白抜き文字をすべてなぞり終えると、図1(d)に示すように、「購入金額20%OFF券 プリントアウトして使ってね!!」という文字が現れる。広告閲覧者は、このバナー広告を含むページをプリントアウトして店頭で提示することによって、対象製品(キックボード)を割引価格で購入することができる。 【0034】以上、バナー広告の機能について説明したが、次に、上述のようなバナー広告を実現するための技術的手段について説明する。図2は、このバナー広告を実現するためのネットワークシステムの概略図であり、バナー広告の広告主のサーバ1と、バナー広告が掲載されるウェブページを提供するウェブサーバ2と、そのウェブページを閲覧するクライアント端末3と、それらを接続するネットワーク4が示されている。クライアント端末3としては、ブラウザソフトを備えたパソコン、ワークステーションなどの情報処理装置のほか、通信機能を備えた家庭用ゲーム機器、PDAなどの携帯用情報端末などが考えられる。ネットワーク4は、クライアント端末とサーバコンピュータとの間で情報のやりとりが可能なネットワークであれば、どのようなものであってもよく、有線、無線を問わず、またインターネットなどの汎用ネットワークであるか、社内LANなどの私設ネットワークであるかも問わない。 【0035】図3は、図1に示したバナー広告を実現するためのクライアント端末3(パソコン端末のブラウザ)および広告主のサーバ1の処理の概略を示すフローチャートである。クライアント側のステップS101において、表示画面にはウェブサーバ2が提供するウェブページが表示されており、そのウェブページには図1(a)のバナー広告が掲載されている。ユーザが画面上のバナー広告にカーソルを合わせてマウスのボタンをクリックすると、そのクリック入力はステップS102において受け付けられ、アクセス待ち状態(S201)の広告主のサーバ1に対し、クライアント情報が送信される(S103)。クライアント情報とはそのパソコン端末を識別するためのアドレスなどである。広告主のサーバ1はステップS202においてクライアント情報を受信すると、ステップS203においてプログラム、トレース対象データ、特典データなどのコンポーネントを返信する。ここでプログラムとは、クライアント側で以下に説明する処理を実行するプログラムであり、トレース対象データとは、図1(b)のバナー広告の画像データであり、特典データは図1(d)の割引券表示がされた画像データである。 【0036】ステップS104においてこれらのプログラムおよびデータを受信したクライアントは、ステップS105において、トレース対象とトレース要求メッセージを表示画面に表示する。すなわち、図1(b)の画像を表示する。図1(b)のバナー広告の場合、「ナムコがキックボードはじめました!」の文字がトレース対象であり、「文字をなぞってね!」の文字がトレース要求メッセージである。但し、トレース要求メッセージは、音声メッセージとして出力してもよい。 【0037】次に、ユーザがマウスを用いて行ったトレース操作(図1(c)の操作)を、ステップS106においてトレース入力として取り込む(入力受付)。具体的には、カーソルが通過した位置を座標データとして順次取り込む。その後、ステップS107において、そのカーソルが通過した位置、すなわちトレース済範囲を、未トレース範囲と区別できるように表示する。例えば図1(c)に示したように、トレース対象が白抜き文字であれば、トレース済範囲についてのみ黒の線を重ねて表示する(トレース済範囲の表示色を反転する)。あるいはトレース対象が通常の(白抜きでない)文字であれば、異なる色の線を重ねるなどの表示方法が考えられる。 【0038】トレース終了はステップS108において判定する。判定の基準は任意に定めることができる。例えば最後の文字までトレースし終えた時点でトレース終了と判定してもよいし、カーソルがバナー広告の画像範囲外に移動した時点でトレース終了と判定してもよいし、その他の方法でもよい。 【0039】ステップS108においてトレース終了と判定された場合には、次にそのトレース状況を判定する。ここで「トレース状況」をどのように定義し、どのように判定するかについては、種々の定義、方法が考えられるが、本実施の形態では、トレース状況をトレース操作の質と定義し、実際にトレースされた範囲の画素数の、トレース対象全体の画素数に対する割合が高ければトレース操作の質が良く、割合が低ければトレースの質が悪いと評価する。図4は、トレース操作の質の判定方法を説明するために、表示画面の一部を画素の配列とみなして各画素5を四角形で表した図である。例えば、図の網掛領域6とベタ塗り領域7の両方を含む長方形の領域がトレース対象で、そのうちベタ塗り領域7が実際にトレースされた範囲であるとすると、トレース対象領域の画素数は60、トレース済範囲の画素数は38であるので、38/60という比率によってトレース操作の質を判定することができる。 【0040】図3のステップS109およびS111は、このトレース操作の質の判定処理である。まず、ステップS109においてトレース対象の90%以上がトレースされていると判定されれば、ステップS110において図1(d)に示した20%割引券が表示される。一方90%以下の場合には、ステップS111において70%以上がトレースされているか否かの判定が行われ、70%を越えていればステップ112において10%割引券が表示される。70%以下の場合には、割引券は表示されない。 【0041】このように、トレースの質によって特典の内容が変わるようにすれば、トレース操作のゲーム性が増す。この場合、与えられる特典サービスの内容に拘わらず、ゲーム感覚でトレースに挑戦する者が増えることが期待できる。また、1回目の挑戦で10%割引券しか表示されなかったため、再度トレースに挑戦する者も増えることが予想される。この場合、繰り返し文字をなぞらせることができるので、広告内容をより強く印象付けることができる。 [図:0001405697000001.jpg] [図:0001405697000002.jpg] 図2 [図:0001405697000003.jpg] (イ)引用発明 以上の引用文献1の記載からみて、引用文献1には、以下の技術事項が記載されている。 (a)【0034】には「このバナー広告を実現するためのネットワークシステムの概略図であり、バナー広告の広告主のサーバ1と、バナー広告が掲載されるウェブページを提供するウェブサーバ2と、そのウェブページを閲覧するクライアント端末3と、それらを接続するネットワーク4が示されている。」と記載されており、また、【0035】には「図1に示したバナー広告を実現するためのクライアント端末3(パソコン端末のブラウザ)および広告主のサーバ1の処理の概略を示すフローチャートである。クライアント側のステップS101において、表示画面にはウェブサーバ2が提供するウェブページが表示されており、そのウェブページには図1(a)のバナー広告が掲載されている。」と記載されている。 そして、図1(a)を参酌するとバナー広告の表示は「トレースゲームに挑戦しよう!!割引券がもらえます」という表示であることが理解できる。 また、上記【0034】及び【図2】の記載から、「バナー広告の広告主のサーバ1と、バナー広告が掲載されるウェブページを提供するウェブサーバ2と、そのウェブページを閲覧するクライアント端末3と、それらを接続するネットワーク4を備える、バナー広告を実現するためのネットワークシステム」が記載されている。 以上のことから、 「バナー広告の広告主のサーバ1と、バナー広告が掲載されるウェブページを提供するウェブサーバ2と、そのウェブページを閲覧するクライアント端末3と、それらを接続するネットワーク4を備える、バナー広告を実現するためのネットワークシステムにおけるクライアント端末3であって、 バナー広告を実現するための前記クライアント端末3(パソコン端末のブラウザ)では、表示画面にはウェブサーバ2が提供するウェブページが表示されており、そのウェブページには「トレースゲームに挑戦しよう!!割引券がもらえます」というバナー広告が掲載されている」といえる。 (b)【0035】には「ユーザが画面上のバナー広告にカーソルを合わせてマウスのボタンをクリックすると、そのクリック入力はステップS102において受け付けられ、アクセス待ち状態(S201)の広告主のサーバ1に対し、クライアント情報が送信される(S103)。クライアント情報とはそのパソコン端末を識別するためのアドレスなどである。広告主のサーバ1はステップS202においてクライアント情報を受信すると、ステップS203においてプログラム、トレース対象データ、特典データなどのコンポーネントを返信する。ここでプログラムとは、クライアント側で以下に説明する処理を実行するプログラムであり、トレース対象データとは、図1(b)のバナー広告の画像データであり、特典データは図1(d)の割引券表示がされた画像データである。」と記載されている。 すなわち、「ユーザが画面上のバナー広告にカーソルを合わせてマウスのボタンをクリックすると、広告主のサーバ1はプログラム、トレース対象データ、特典データなどのコンポーネントを返信する。」から、クライアント側から見ると、「ユーザが画面上のバナー広告にカーソルを合わせてマウスのボタンをクリックすると、広告主のサーバ1からプログラム、トレース対象データ、特典データなどのコンポーネントを受信する」ことが記載されているといえる。 ここで、「トレース対象データとは、図1(b)のバナー広告の画像データであり」とあり、また、【0036】には「図1(b)のバナー広告の場合、「ナムコがキックボードはじめました!」の文字がトレース対象であり」と記載され、【0029】には「広告閲覧者がこのバナー広告をマウスによりクリックすると、図1(b)に示すような白抜き文字が、「文字をなぞってね!」というメッセージとともに出現する。白抜き文字は広告主が広告閲覧者に強く印象付けたい内容「ナムコがキックボードをはじめました」を表している。」と記載されているから、トレース対象データは、「白抜きの「ナムコがキックボードはじめました!」の文字」であることが理解できる。 また、「特典データ」は、「特典データは図1(d)の割引券表示がされた画像データである」と記載されているところ、図1(d)を参酌すると「購入金額20%OFF券」を含む画像データであることが理解できる。 さらに、「プログラム」については、「ここでプログラムとは、クライアント側で以下に説明する処理を実行するプログラムであり」と記載されるところ、「以下に説明する処理」とは、【0035】-【0040】及び図3を参酌すると、「ステップS105において、トレース対象とトレース要求メッセージを表示画面に表示」、「ステップS106においてトレース入力として取り込む」、「ステップS107において、そのカーソルが通過した位置、すなわちトレース済範囲を、未トレース範囲と区別できるように表示」、「トレース終了はステップS108において判定」、「S109およびS111は、このトレース操作の質の判定処理」、「ステップS110において図1(d)に示した20%割引券が表示」、「ステップ112において10%割引券が表示」等の処理を行うプログラムであると理解できる。 加えて、【0030】には「しかし、このバナー広告は従来と機能が異なり、それ自体がペイント・ソフト(データを座標単位で管理するタイプのグラフィックスソフト)の基本機能を備えている。すなわち、広告閲覧者がこのバナー広告上にカーソルを配置し、マウスボタンを押したままマウスを引きずってカーソルを移動させると、カーソルが通過した部分に線が描かれる。」との記載があるから、上記【0035】-【0040】の処理を行うプログラムのうち、「広告閲覧者がこのバナー広告上にカーソルを配置し、マウスボタンを押したままマウスを引きずってカーソルを移動させると、カーソルが通過した部分に線が描かれる」処理を行うプログラムは、「ペイント・ソフト(データを座標単位で管理するタイプのグラフィックスソフト)の基本機能を備え」たプログラムであるといえる。 以上によれば、引用文献1には、「ユーザが画面上のバナー広告にカーソルを合わせてマウスのボタンをクリックすると、広告主のサーバ1から、ペイント・ソフト(データを座標単位で管理するタイプのグラフィックスソフト)の基本機能を備えたプログラム、トレース対象データ(白抜きの「ナムコがキックボードはじめました!」の文字)、特典データ(「購入金額20%OFF券」を含む画像データ)などのコンポーネントを受信する」ことが記載されているといえる。 (c)【0036】には、「ステップS104においてこれらのプログラムおよびデータを受信したクライアントは、ステップS105において、トレース対象とトレース要求メッセージを表示画面に表示する。すなわち、図1(b)の画像を表示する。図1(b)のバナー広告の場合、「ナムコがキックボードはじめました!」の文字がトレース対象であり、「文字をなぞってね!」の文字がトレース要求メッセージである。但し、トレース要求メッセージは、音声メッセージとして出力してもよい。」と記載されているから、 「これらのプログラムおよびデータを受信したクライアント端末3は、バナー広告として、トレース対象(「ナムコがキックボードはじめました!」の文字)とトレース要求メッセージ(「文字をなぞってね!」の文字)を表示画面に表示する。」ことが記載されている。 (d)【0037】には「次に、ユーザがマウスを用いて行ったトレース操作(図1(c)の操作)を、ステップS106においてトレース入力として取り込む(入力受付)。具体的には、カーソルが通過した位置を座標データとして順次取り込む。その後、ステップS107において、そのカーソルが通過した位置、すなわちトレース済範囲を、未トレース範囲と区別できるように表示する。例えば図1(c)に示したように、トレース対象が白抜き文字であれば、トレース済範囲についてのみ黒の線を重ねて表示する(トレース済範囲の表示色を反転する)。あるいはトレース対象が通常の(白抜きでない)文字であれば、異なる色の線を重ねるなどの表示方法が考えられる。」と記載されているから、「ユーザがマウスを用いて行ったトレース操作をトレース入力として取り込むことであって、具体的には、カーソルが通過した位置を座標データとして順次取り込み、そのカーソルが通過した位置、すなわちトレース済範囲を、未トレース範囲と区別できるように表示し、当該表示は、トレース対象が白抜き文字であれば、トレース済範囲についてのみ黒の線を重ねて表示することや、トレース対象が通常の(白抜きでない)文字であれば、異なる色の線を重ねるなどの表示方法が考えられる」ことが記載されている。 (e)【0039】、【0040】の記載を総合すると、「トレース終了と判定された場合には、次にそのトレース状況を判定することであって、本実施例では、トレースされた範囲の画素数の、トレース対象全体の画素数に対する割合によって判定し、トレース対象の90%以上がトレースされていると判定されれば、20%割引券が表示され、90%以下の場合には、70%以上がトレースされているか否かの判定が行われ、70%を越えていれば10%割引券が表示され、70%以下の場合には、割引券は表示されない」ことが記載されている。 (f)まとめ(引用発明) 以上まとめると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 バナー広告の広告主のサーバ1と、バナー広告が掲載されるウェブページを提供するウェブサーバ2と、そのウェブページを閲覧するクライアント端末3と、それらを接続するネットワーク4を備える、バナー広告を実現するためのネットワークシステムにおけるクライアント端末3であって、 バナー広告を実現するための前記クライアント端末3(パソコン端末のブラウザ)では、 表示画面にはウェブサーバ2が提供するウェブページが表示されており、そのウェブページには「トレースゲームに挑戦しよう!!割引券がもらえます」というバナー広告が掲載され、 ユーザが画面上のバナー広告にカーソルを合わせてマウスのボタンをクリックすると、広告主のサーバ1から、ペイント・ソフト(データを座標単位で管理するタイプのグラフィックスソフト)の基本機能を備えたプログラム、トレース対象データ(白抜きの「ナムコがキックボードはじめました!」の文字)、特典データ(「購入金額20%OFF券」を含む画像データ)などのコンポーネントを受信し、 これらのプログラムおよびデータを受信したクライアント端末3は、バナー広告として、トレース対象(「ナムコがキックボードはじめました!」の文字)とトレース要求メッセージ(「文字をなぞってね!」の文字)を表示画面に表示し、 ユーザがマウスを用いて行ったトレース操作をトレース入力として取り込むことであって、具体的には、カーソルが通過した位置を座標データとして順次取り込み、 そのカーソルが通過した位置、すなわちトレース済範囲を、未トレース範囲と区別できるように表示し、当該表示は、トレース対象が白抜き文字であれば、トレース済範囲についてのみ黒の線を重ねて表示することや、トレース対象が通常の(白抜きでない)文字であれば、異なる色の線を重ねるなどの表示方法が考えられ、 トレース終了と判定された場合には、次にそのトレース状況を判定することであって、トレースされた範囲の画素数の、トレース対象全体の画素数に対する割合によって判定し、トレース対象の90%以上がトレースされていると判定されれば、20%割引券が表示され、90%以下の場合には、70%以上がトレースされているか否かの判定が行われ、70%を越えていれば10%割引券が表示され、70%以下の場合には、割引券は表示されない、 処理を行うクライアント端末3。 ウ 対比 補正後発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「バナー広告」は、ウェブサーバ2が提供するウェブページに表示されるものであり、「ウェブサーバ2が提供するウェブページ」は「ウェブコンテンツ」であり、「バナー広告」は「ウェブサーバ2が提供するウェブページ」内に配置されたものであることは明白である。 ここで、引用発明の「バナー広告として、トレース対象(「ナムコがキックボードはじめました!」の文字)とトレース要求メッセージ(「文字をなぞってね!」の文字)を表示画面に表示」する「トレース対象」は、「ユーザがマウスを用いて行ったトレース操作をトレース入力として取り込むことであって、具体的には、カーソルが通過した位置を座標データとして順次取り込み、/そのカーソルが通過した位置、すなわちトレース済範囲を、未トレース範囲と区別できるように表示し当該表示は、トレース対象が白抜き文字であれば、トレース済範囲についてのみ黒の線を重ねて表示する」ためのものであるから、白抜き部分を黒に描画している描画領域といい得るものである。 また、ユーザがトレース対象に対して行う操作は、上記のとおり、白抜き部分の領域において、マウスを用いてカーソルを通過(移動)させ、通過した位置の座標を黒色で彩色することを受付けているから、描画画像を受付けるものであるといえ、当該受付部を備えている。 上記の描画処理は、広告主のサーバ1から送信された「ペイント・ソフト(データを座標単位で管理するタイプのグラフィックスソフト)の基本機能を備えたプログラム」によってなされているから、所定のグラフィックツールを用いて描画している。 したがって、引用発明の「ウェブサーバ2が提供するウェブページに表示される」、「バナー広告として」の「トレース対象(「ナムコがキックボードはじめました!」の文字)」に対して「ユーザがマウスを用いて行ったトレース操作をトレース入力として取り込」み、「そのカーソルが通過した位置、すなわちトレース済範囲を、未トレース範囲と区別できるように表示し、当該表示は、トレース対象が白抜き文字であれば、トレース済範囲についてのみ黒の線を重ねて表示する」手段は、補正後発明の「所定のウェブコンテンツ内に配置された所定の描画領域を介して、利用者が所定のグラフィックツールを用いて描画した描画画像を受付ける受付部」に対応する。 (イ)引用発明は、「トレース終了と判定された場合には、次にそのトレース状況を判定することであって、トレースされた範囲の画素数の、トレース対象全体の画素数に対する割合によって判定し、トレース対象の90%以上がトレースされていると判定されれば、20%割引券が表示され、90%以下の場合には、70%以上がトレースされているか否かの判定が行われ、70%を越えていれば10%割引券が表示され、70%以下の場合には、割引券は表示されない」処理を行っている。 上記「トレース対象の90%以上がトレースされている」、「トレース対象の70%以上がトレースされている」という判定基準は、「前記描画画像の内容に応じた」判定であるといえ、その判定に応じて、「トレース対象の90%以上がトレースされていると判定されれば、20%割引券が表示され」、「70%を越えていれば10%割引券が表示され」ることは、判定に応じて「20%割引券」あるいは「10%割引券」というコンテンツが利用者に提供されることであるといえるから、引用発明の「トレース終了と判定された場合には、次にそのトレース状況を判定することであって、トレースされた範囲の画素数の、トレース対象全体の画素数に対する割合によって判定し、トレース対象の90%以上がトレースされていると判定されれば、20%割引券が表示され、90%以下の場合には、70%以上がトレースされているか否かの判定が行われ、70%を越えていれば10%割引券が表示され」る処理を行う手段は、補正後発明の「前記描画画像の内容に応じたコンテンツを前記利用者に提供する提供部」に相当する。 (ウ)引用発明のクライアント端末3は、上記(イ)のとおり、ユーザに「20%割引券」あるいは「10%割引券」というコンテンツを提供しているから、提供装置といえる。 (エ)まとめ(一致点・相違点) 以上まとめると、補正後発明と引用発明とは、次の一致点で一致し相違点で相違する。 <一致点> 所定のウェブコンテンツ内に配置された所定の描画領域を介して、利用者が所定のグラフィックツールを用いて描画した描画画像を受付ける受付部と、 前記描画画像の内容に応じたコンテンツを前記利用者に提供する提供部と を有することを特徴とする提供装置。 <相違点> 「利用者が所定のグラフィックツールを用いて描画した描画画像」が、補正後発明では「利用者が所定のグラフィックツールを用いて、任意の色彩で描画した描画画像」であるのに対し、引用発明では色彩について特定されていない点。 エ 判断 上記相違点について判断する。 引用発明では、色彩について特定はされていないものの、「そのカーソルが通過した位置、すなわちトレース済範囲を、未トレース範囲と区別できるように表示し、当該表示は、トレース対象が白抜き文字であれば、トレース済範囲についてのみ黒の線を重ねて表示することや、トレース対象が通常の(白抜きでない)文字であれば、異なる色の線を重ねるなどの表示方法が考えられ」と特定されるように、黒以外の彩色も一応示唆されている。 また、一般的なグラフィックツールでは、何らかの描画を行おうとするとき描画をどのような彩色で行うかを適宜選択可能とすることが普通に行われているところ、引用発明の上記示唆に基づき、引用発明のグラフィックツールを「任意の彩色で」描画可能とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 さらに、補正後発明の効果も、引用発明および周知のグラフィックツールの機能を勘案すれば、当業者が予測可能な範囲のものであって、格別なものでない。 したがって、補正後発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 オ 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和5年4月17日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年10月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1から18に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2《理由》1(補正前)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。 (理由1)本願の請求項1-10、12、13、15、17、18に係る発明(令和4年10月3日にされた手続補正による)は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (理由2)本願の請求項1-10、12、13、15、17、18に係る発明(令和4年10月3日にされた手続補正による)は、下記引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 記 引用文献1:特開2003-122989号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の《理由》2(2-3)イ(ア)に記載したとおりである。 4 対比・判断 (1)対比 本願発明と補正後発明とを比べると、前記第2の《理由》2(2-3)で検討した補正後発明の「描画画像」に関する特定事項が、補正後発明では「利用者が所定のグラフィックツールを用いて、任意の色彩で描画した描画画像」であったのに対し、本願発明では「利用者が所定のグラフィックツールを用いて描画した描画画像」である点で、本願発明と補正後発明とは異なるといえる。 一方、上記第2の《理由》2(2-3)ウ(エ)に記載したとおり、補正後発明と引用発明とは、上記「描画画像」に関する特定事項において、「「利用者が所定のグラフィックツールを用いて描画した描画画像」が補正後発明では「利用者が所定のグラフィックツールを用いて、任意の色彩で描画した描画画像」であるのに対し、引用発明では色彩について格別特定がされていない」点で相違し、その余の点で一致しているのであるから、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、上記補正後発明と引用発明との対比を援用すれば、以下のとおりとなる。 <一致点> 所定のウェブコンテンツ内に配置された所定の描画領域を介して、利用者が所定のグラフィックツールを用いて描画した描画画像を受付ける受付部と、 前記描画画像の内容に応じたコンテンツを前記利用者に提供する提供部と を有することを特徴とする提供装置。 <相違点> なし したがって、本願発明と引用発明との間に相違点はないから、本願発明は、その出願前に日本国内において、頒布された引用文献1に記載された発明である。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項第3号の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-006298

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