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特許拒絶査定不服審判

2023-004991

ヘッドアップディスプレイ及びそれに対するコーティング

審判番号
2023-004991
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-512562
請求日
2023年03月27日
審決日
2025年11月27日
公報発行日
2026年05月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ビトロ フラット グラス エルエルシー
  • 【請求人代理人】弁理士法人浅村特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 野村 伸雄
  • 審判官 横井 亜矢子
分類
P18 .121-WZ (G02B) / P18 .561-WZ (G02B) / P18 .57 -WZ (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第29条、特許法第184条の6第2項、特許法第17条の2第5項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2020-512562「ヘッドアップディスプレイ及びそれに対するコーティング」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月 7日国際公開、WO2019/046157、令和 2年11月12日国内公表、特表2020-532763〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)8月27日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年8月31日(以下「最先の優先日」という。)、2018年8月24日、いずれも米国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和2年 4月21日 :翻訳文の提出 令和4年 5月 6日付け:拒絶理由通知書 同年 8月10日 :意見書、手続補正書の提出 同年11月22日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月25日 :原査定の謄本の送達) 令和5年 3月27日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和6年 8月 1日付け:拒絶理由通知書 同年11月 5日 :意見書、手続補正書の提出 令和7年 1月27日付け:拒絶理由通知書(最後) 同年 6月30日 :意見書、手続補正書の提出 第2 令和7年6月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和7年6月30日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正前後の請求項1の記載 令和7年6月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年11月5日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。補正後のものにおいて下線は補正箇所を示す。また、対応する記載を補正前のものについても下線を引いて示した。 (1) 本件補正前 「【請求項1】 画像を投影するディスプレイシステムであって、 改良されたP偏光放射線反射性を有する積層体であって、 前記積層体の外面を備える第1の面及び前記第1の面に対向する第2の面を備える第1の層、 前記第2の面に隣接する第3の面及び前記第3の面に対向し且つ前記積層体の内面を備える第4の面を備える第2の層、 前記第1の層と前記第2の層との間に位置付けられる中間レイヤ、並びに 前記第1の層及び/又は前記第2の層の面の少なくとも1つにおける少なくとも一部上に位置付けられる改良P偏光反射性コーティングであって、 前記面の少なくとも1つの一部上に位置付けられるベースレイヤ、 前記ベースレイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第1金属機能レイヤ、 前記第1金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置づけられる第1犠牲金属レイヤ、 前記第1犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第1位相調節レイヤ、 前記第1位相調節レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2金属機能レイヤ、 前記第2金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2犠牲金属レイヤ、 選択的に、前記第2犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2位相調節レイヤ、前記第2位相調節レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第3金属機能レイヤ、及び前記第3金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第3犠牲金属レイヤ、 前記第2犠牲金属レイヤ又は存在すれば前記第3犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられるトップコートレイヤ、及び 前記トップコートレイヤの少なくとも一部上に位置付けられるオーバーコートを備える改良P偏光反射性コーティングを備え、 前記積層体が、前記積層体の法線に対して60°の角度で、P偏光放射線を備える、放射線源からの放射線と接触する場合に、標準光源Aにより測定された際に少なくとも70%の視感透過率(LTA)を示し、且つD65光源及び10度視野に基づく検出である10°検知器により測定した際にP偏光放射線の反射率が少なくとも10%である、前記積層体と、 P偏光放射線を備える放射線を放射する、前記積層体に向けられた放射線源とを備え、 変形(A)前記改良P偏光反射性コーティングの一部である2つの金属機能レイヤと前記改良P偏光反射性コーティングがあり、以下の厚さを示し、 [図:0001434430000001.jpg] 又は、 変形(B)前記改良P偏光反射性コーティングの一部である3つの金属機能レイヤと前記改良P偏光反射性コーティングがあり、以下の厚さを示し、 [図:0001434430000002.jpg] 前記変形(A)では、前記ベースレイヤは、2つの異なる膜から形成され、前記第1位相調整レイヤは、ZnSnOx/酸化亜鉛/ZnSnOxを備える3つの膜から形成され、前記変形(B)では、前記ベースレイヤは、2つの異なる膜から形成され、前記第1位相調整レイヤは、ZnSnOx/酸化亜鉛/ZnSnOxを備える3つの膜から形成され、前記第2位相調整レイヤは、2つの異なる膜から形成される、 ディスプレイシステム。」 (2) 本件補正後 「【請求項1】 画像を投影するディスプレイシステムであって、 改良されたP偏光放射線反射性を有する積層体であって、 前記積層体の外面を備える第1の面及び前記第1の面に対向する第2の面を備える第1の層、 前記第2の面に隣接する第3の面及び前記第3の面に対向し且つ前記積層体の内面を備える第4の面を備える第2の層、 前記第1の層と前記第2の層との間に位置付けられる中間レイヤ、並びに 前記第1の層及び/又は前記第2の層の面の少なくとも1つにおける少なくとも一部上に位置付けられる改良P偏光反射性コーティングであって、 前記面の少なくとも1つの一部上に位置付けられるベースレイヤ、 前記ベースレイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第1金属機能レイヤ、 前記第1金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置づけられる第1犠牲金属レイヤ、 前記第1犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第1位相調節レイヤ、 前記第1位相調節レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2金属機能レイヤ、 前記第2金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2犠牲金属レイヤ、 選択的に、前記第2犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2位相調節レイヤ、前記第2位相調節レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第3金属機能レイヤ、及び前記第3金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第3犠牲金属レイヤ、 前記第2犠牲金属レイヤ又は存在すれば前記第3犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられるトップコートレイヤ、及び 前記トップコートレイヤの少なくとも一部上に位置付けられるオーバーコートを備える改良P偏光反射性コーティングを備え、 前記改良P偏光反射性コーティングが、P偏光放射線を備える放射線源からの放射線と接触する場合に、標準光源Aにより測定された際に少なくとも70%の視感透過率(LTA)を示すような、且つD65光源及び10度視野に基づく検出である10°検知器により測定した際にP偏光放射線の反射率が少なくとも10%であるような、前記積層体と、 P偏光放射線を備える放射線を放射する、前記積層体に向けられた放射線源とを備え、 前記改良P偏光反射性コーティングの一部である2つの金属機能レイヤと前記改良P偏光反射性コーティングを有する変形(A)が、以下の厚さを示し、 [図:0001434430000003.jpg] 又は、 前記改良P偏光反射性コーティングの一部である3つの金属機能レイヤと前記改良P偏光反射性コーティングを有する変形(B)が、以下の厚さを示し、 [図:0001434430000004.jpg] 変形(A)では、前記ベースレイヤは、2つの異なる膜から形成され、前記第1位相調節レイヤは、酸化亜鉛/ZnSnOx/酸化亜鉛を備える3つの膜から形成され、 変形(B)では、前記ベースレイヤは、2つの異なる膜から形成され、前記第1位相調節レイヤは、酸化亜鉛/ZnSnOx/酸化亜鉛を備える3つの膜から形成され、前記第2位相調節レイヤは、3つの異なる膜から形成され、 変形(A)変形(B)の両方では、前記犠牲金属レイヤは金属チタンとして蒸着され、続いて、少なくとも一部が酸化され、酸化チタンのレイヤを形成する、 ディスプレイシステム。」 2 補正の適否 (1)本件補正の内容 本件補正は、次のア及びイに示す補正事項(以下、それぞれ「補正事項ア」及び「補正事項イ」という。)を含む。 ア 補正事項ア 次の(ア)に示す補正前の記載を(イ)に示す補正後の記載に補正すること。 (ア) 補正前の記載 「前記積層体が、前記積層体の法線に対して60°の角度で、P偏光放射線を備える、放射線源からの放射線と接触する場合に、標準光源Aにより測定された際に少なくとも70%の視感透過率(LTA)を示し、且つD65光源及び10度視野に基づく検出である10°検知器により測定した際にP偏光放射線の反射率が少なくとも10%である、前記積層体と」 (イ) 補正後の記載 「前記改良P偏光反射性コーティングが、P偏光放射線を備える放射線源からの放射線と接触する場合に、標準光源Aにより測定された際に少なくとも70%の視感透過率(LTA)を示すような、且つD65光源及び10度視野に基づく検出である10°検知器により測定した際にP偏光放射線の反射率が少なくとも10%であるような、前記積層体と」 イ 補正事項イ 変形(A)及び変形(B)において、次の(ア)及び(イ)の限定をすること。 (ア) 「第1金属レイヤ」と「第1位相調節レイヤ」との間に「10-150」オングストロームの厚さの「第1犠牲金属レイヤ」を備えること。 (イ) 「第2金属レイヤ」と「第2位相調節レイヤ」との間に「10-150」オングストロームの厚さの「第2犠牲金属レイヤ」を備えること。 (2) 新規事項の追加について 当合議体は、続くア及びイにおいて詳細に検討するとおり、前記補正事項ア及び補正事項イを含む本件補正は、特許法184条の6第2項の規定によりそれぞれ出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面とみなされた、国際出願日における国際特許出願の明細書、請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、本件補正は特許法17条の2第3項の規定に違反すると判断する。 ア 補正事項アについて (ア) 補正事項アの補正事項Aと補正事項Bへの分割と判断の概要 a 補正事項アは、次の補正事項A及び補正事項Bの二つの補正事項を含む。 (a) 補正事項A 「視感透過率(LTA)」及び「P偏光放射線の反射率」の「測定」対象を、補正前の「積層体」から補正後の「前記改良P偏光反射性コーティング」に変更すること。 (b) 補正事項B 放射線源からの放射線と接触する場合の条件について「前記積層体の法線に対して60°の角度」との条件を削除すること。 b 当合議体は、それぞれ(イ)及び(ウ)において詳細に検討するとおり、前記補正事項Aと補正事項Bはいずれも、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであると判断する。 (イ) 補正事項Aについて a 当初明細書等の記載 請求人は、補正事項Aの補正の根拠を説明していないところ、当該補正に関連する当初明細等の記載としては、以下の記載がある。下線は、当合議体による。 「【0009】 本発明は、改良されたP偏光放射線反射性を有する、フロントガラスといった積層体を対象にする。…(中略)…積層体が、積層体の法線に対して60°の角度で、P偏光放射線を有する、放射線源からの放射線と接触する場合、積層体は、標準光源Aを用いた値で少なくとも70%の視感透過率(LTA)及び、少なくとも5%、例えば少なくとも10%のP偏光放射線の反射率を示す。 …(中略)… 【0018】 また、本発明は、改良されたP偏光放射線反射性を有する積層体を含む、画像を投影するディスプレイシステムにも向けられる。積層体は、積層体の外面である第1の面及び第1の面に対向する第2の面を有する第1の層と、第2の面に面する第3の面及び第3の面に対向し且つ積層体の内面である第4の面を有する第2の層と、第1の層と第2の層との間に位置付けられる中間レイヤと、第1の層及び/又は第2の層の面の少なくとも1つにおける少なくとも一部上に位置付けられる改良P偏光反射性コーティングとを含む。」 「【0111】 図7を参照すると、放射線源14からの放射線16が、積層体12の法線に対して60°の角度で積層体12に接触する試験装置86が示されている。試験装置86では、放射線源14は、そこから放射される放射線16が、積層体12の法線に対して60°の入射角度で積層体12に接触するように位置付けられる。 【0112】 試験装置86を使用することで、上記の第1の層22と、第2の層28と、中間レイヤ34と、改良P偏光反射性コーティング36とを含む積層体12は、自動車産業規格に従って測定された、標準光源Aを用いた少なくとも70%の視感透過率(LTA)を示してもよい。試験装置86を使用することで、上記の第1の層22と、第2の層28と、中間レイヤ34と、改良P偏光反射性コーティング36とを含む積層体12は、D65光源及び10°検知器を用いた少なくとも10%のP偏光放射線の反射率を示してもよい。」 「【0114】 以下の例では、複数の比較例と並行して、本発明に係る改良P偏光反射性コーティングを示す。例及び比較例は、Lawrence Berkeley National Laboratory社から市販されているOPTICS(v.6.0)ソフトウェア及びWINDOW(v7.3.4.0)ソフトウェア又はJ. A. Woollam社から市販されているWVASEソフトウェアといった、市販のソフトウェアを用いて再現可能なコンピュータモデルサンプルである。改良P偏光反射性コーティングはモデル化され、積層体の表面上にコーティングを施した状態で値が計算された。積層体は、0.76mmのポリビニルブチラール(PVB)の中間レイヤを介した2層の2mmの透明ガラスを含むようにモデル化された。コーティングは、上述したように、積層体の第3の面の少なくとも一部の上に施された。 …(中略)… 【0117】 比較例1はコーティングされていない積層体である。比較例2及び3は市販のコーティングである。例1~7は、本発明の、積層体に施される、改良されたP偏光放射線反射性を有するように最適化された三重金属機能レイヤ改良P反射性反射性コーティングである。例8~13は、本発明の、積層体に施される、改良されたP偏光放射線反射性を有するように最適化された二重金属機能レイヤ改良P偏光反射性コーティングである。 …(中略)… 【0120】 表2は、上記のソフトウェアを用いて再現可能な関連特質の計算結果を示す。 【0121】 表2では、「P-Rg60-Y」は、CIE1964の10°補助標準観測者に従って、ガラス側(内側)からD65光源及び10°検知器を用いた、P偏光放射線の反射率を意味する。「LTA」は、標準光源Aを用いた視感透過率(LTA)を意味する。…(中略)…「Tsol」は、積層体の太陽光透過率を意味する。「RfSol」は、積層体の、膜側からの太陽光反射率を意味する。 …(中略)… 【0123】 発明された積層体は、少なくとも70%のLTAを維持しながら、P偏光放射線の反射率が少なくとも10%になるように改良されたP偏光放射線反射性を示す。」 b 補正事項Aについての判断 「積層体」は、「第1の層」、「第2の層」、「中間レイヤ」及び「改良P偏光反射性コーティング」から構成されるところ、前記aに摘記したように、当初明細書等には、「積層体」を測定対象とすることについて記載されているが、「積層体」の構成要素である「改良P偏光反射性コーティング」を単体として測定対象とすることについては記載されていない。 そして、「積層体」の「標準光源Aにより測定された際に少なくとも70%の視感透過率(LTA)」及び「D65光源及び10度視野に基づく検出である10°検知器により測定した際[の]P偏光放射線の反射率」が、「改良P偏光反射性コーティング」の前記特性と同一視できないことは、技術常識からして明らかである。 さらには、積層体としての透過率又は反射率が発明が解決しようとする課題の論点となっていることからして、「透過率」又は「反射率」の「測定」対象を「積層体」から「改良P偏光反射性コーティング」に変更する補正事項Aが誤記を訂正するものにも該当しないことも、技術常識からして明らかである。 以上のとおりであるから、補正事項アのうちの補正事項Aは、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 (ウ) 補正事項Bについて 補正事項Bにより、放射線源からの放射線と接触する場合の条件について「前記積層体の法線に対して60°の角度」との条件が削除されて、視感透過率(LTA)及びP偏光放射線の反射率が、どのような入射角度で測定されたものか特定されないものとなった。 請求人は、補正事項Bの補正の根拠を説明していないところ、当初明細等には、放射線の積層体への入射角度が60°ではない測定について記載されていない。 そして、視感透過率(LTA)及びP偏光放射線の反射率は入射角度に依存するものであり、入射角度について「前記積層体の法線に対して60°の角度」という技術事項の特定なしに「P偏光放射線を備える放射線源からの放射線と接触する場合に、標準光源Aにより測定された際に少なくとも70%の視感透過率(LTA)を示すような、且つD65光源及び10度視野に基づく検出である10°検知器により測定した際にP偏光放射線の反射率が少なくとも10%であるような」「積層体」が当初明細書等には記載されていないことは、技術常識からして明らかである。 以上のとおりであるから、補正事項アのうちの補正事項Bは、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 イ 補正事項イについて (ア) 論点となる補正事項 補正事項イにより、変形(A)及び変形(B)において、「第1犠牲金属レイヤ」及び「第2犠牲金属レイヤ」の「厚さ(Å(オングストローム)」として「10-150」の数値が追加された。 (イ) 当初明細書等の記載 請求人は、補正事項イの補正の根拠を説明していないところ、当該補正事項に関連する当初明細等の記載としては、以下の記載がある。なお、「第1犠牲金属レイヤ」には「犠牲金属レイヤ48」が対応し、「第2犠牲金属レイヤ」には「犠牲金属レイヤ54」が対応する。 「【0074】(前略)犠牲金属レイヤ48、54及び64は、同じ厚さである必要はない。」 「【0079】 犠牲金属レイヤ48、54及び64は、10~50オングストローム、例えば20~40オングストローム又は25~35オングストロームの範囲内で、同じ厚さを有してもよいし異なる厚さを有してもよい。犠牲金属レイヤの厚さは、下方の機能金属レイヤに十分な保護を提供する(例えば、好適には、犠牲金属等が酸化して、上方のレイヤの蒸着の間に下方の金属機能レイヤを保護する)ように選択されてもよい。」 「【0115】 表1は、モデル化されたコーティングにおける様々なレイヤの厚さを示す(オングストローム単位)。表1には、対応する角金属機能レイヤの上部上に直接モデル化された犠牲金属レイヤの厚さは示されていない。各犠牲金属レイヤの厚さの範囲は10~50オングストロームであったが、任意の適切な厚さを選択することが可能であった。」 「【0139】 第15項:第1犠牲金属レイヤ、第2犠牲金属レイヤ及び/又は第3犠牲金属レイヤが、10~50オングストローム、好適には20~40オングストローム、より好適には25~35オングストロームの範囲内の厚さを有する、第4項~第14項のいずれか一項に記載の積層体。」 「【0176】 第52項:第1犠牲金属レイヤ、第2犠牲金属レイヤ及び/又は第3犠牲金属レイヤが、10~50オングストローム、好適には20~40オングストローム、より好適には25~35オングストロームの範囲内の厚さを有する、第41項~第51項のいずれか一項に記載のシステム。」 (ウ) 補正事項イについての判断 前記(イ)に摘記した、当初明細書等には、「第1犠牲金属レイヤ」及び「第2犠牲金属レイヤ」の厚さの下限値として「10オングストローム」が例示され、最も大きな上限値として「50オングストローム」が例示されているが、上限値を「150オングストローム」とすることについては記載されていない。 確かに【0115】には、前記厚さを任意の適切なものとしてよいことが記載されているものの、この厚さを、例示される上限値に対してどの程度まで大きくして良いのか、具体的数値は記載されていない。 そして、犠牲金属レイヤを有する積層体は、光の干渉効果を用いた所定の視感透過率及びP偏光の反射率特性を有する積層体であり、「第1犠牲金属レイヤ」及び「第2犠牲金属レイヤ」の厚さを変更すると、光の位相と強度が変わり、その結果、「視感透過率」や「P偏光の反射率特性」に変化が生じることが予測され、犠牲金属レイヤの厚さの上限値を「50オングストローム」から「150オングストローム」に変更してもよことは、当初明細書等の記載からは明らかでなく、この変更を支持する技術常識や説明の提供もされていないから、補正事項イは、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでない、とはいえない。 (3) 目的外補正 補正事項アを含む本件補正が、特許法17条の2第5項各号に掲げる目的(請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明)のいずれを目的とするものにも該当しないことは、明らかである。 3 本件補正の却下の決定の理由のむすび 以上より、本件補正は、特許法17条の2第3項及び同条5項の規定に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明の認定 (1) 本件補正前の請求項1の記載における誤記について 本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるものである。 ただし、本件補正後の請求項1における下記の記載については、当初明細書等の記載(【0086】~【0089】)及び令和7年6月30日に提出された意見書における誤記である旨の説明を参酌して、次のとおり正すこととする。 ア (誤記を正す前の)請求項1の記載 「前記第1位相調整レイヤは、ZnSnOx/酸化亜鉛/ZnSnOxを備える3つの膜から形成され」 イ 誤記を正した記載 「前記第1位相調整レイヤは、酸化亜鉛/ZnSnOx/酸化亜鉛を備える3つの膜から形成され」 (2) 本願発明の分説 前記(1)の誤記を正した上で、検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成X並びに構成A~構成Ae及び構成Bに分説する。また、参考図1~3として、本願の【図6】、【図2B】及び【図4B】に部材名を記入したものを掲載する。 <本願発明の分説> (構成X) 画像を投影するディスプレイシステムであって、 (構成A) 改良されたP偏光放射線反射性を有する積層体であって、 (構成Aa) 前記積層体の外面を備える第1の面及び前記第1の面に対向する第2の面を備える第1の層、 (構成Ab) 前記第2の面に隣接する第3の面及び前記第3の面に対向し且つ前記積層体の内面を備える第4の面を備える第2の層、 (構成Ac) 前記第1の層と前記第2の層との間に位置付けられる中間レイヤ、並びに (構成Ad) 前記第1の層及び/又は前記第2の層の面の少なくとも1つにおける少なくとも一部上に位置付けられる改良P偏光反射性コーティングであって、 (構成Ad0) 前記面の少なくとも1つの一部上に位置付けられるベースレイヤ、 (構成Ad11) 前記ベースレイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第1金属機能レイヤ、 (構成Ad21) 前記第1金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置づけられる第1犠牲金属レイヤ、 (構成Ad31) 前記第1犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第1位相調節レイヤ、 (構成Ad12) 前記第1位相調節レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2金属機能レイヤ、 (構成Ad22) 前記第2金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2犠牲金属レイヤ、 (構成Ad4) 選択的に、前記第2犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2位相調節レイヤ、前記第2位相調節レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第3金属機能レイヤ、及び前記第3金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第3犠牲金属レイヤ、 (構成Ad5) 前記第2犠牲金属レイヤ又は存在すれば前記第3犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられるトップコートレイヤ、及び (構成Ad6) 前記トップコートレイヤの少なくとも一部上に位置付けられるオーバーコートを備える改良P偏光反射性コーティングを備え、 (構成Ae) 前記積層体が、前記積層体の法線に対して60°の角度で、P偏光放射線を備える、放射線源からの放射線と接触する場合に、標準光源Aにより測定された際に少なくとも70%の視感透過率(LTA)を示し、且つD65光源及び10度視野に基づく検出である10°検知器により測定した際にP偏光放射線の反射率が少なくとも10%である、前記積層体と、 (構成B) P偏光放射線を備える放射線を放射する、前記積層体に向けられた放射線源とを備え、 (構成AdA) 変形(A)前記改良P偏光反射性コーティングの一部である2つの金属機能レイヤと前記改良P偏光反射性コーティングがあり、以下の厚さを示し、 [図:0001434430000005.jpg] 又は、 (構成AdB) 変形(B)前記改良P偏光反射性コーティングの一部である3つの金属機能レイヤと前記改良P偏光反射性コーティングがあり、以下の厚さを示し、 [図:0001434430000006.jpg] (構成AdC) 前記変形(A)では、前記ベースレイヤは、2つの異なる膜から形成され、前記第1位相調整レイヤは、酸化亜鉛/ZnSnOx/酸化亜鉛を備える3つの膜から形成され、前記変形(B)では、前記ベースレイヤは、2つの異なる膜から形成され、前記第1位相調整レイヤは、酸化亜鉛/ZnSnOx/酸化亜鉛を備える3つの膜から形成され、前記第2位相調整レイヤは、2つの異なる膜から形成される、 (構成X) ディスプレイシステム。」 <参考図1(【図6】)> [図:0001434430000007.jpg] <参考図2(【図2B】)> <参考図3(【図4B】)> [図:0001434430000008.jpg] 2 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。 「【0002】 本発明は、改良されたP偏光放射線反射性を有する積層体、画像を投影するディスプレイシステム、及びヘッドアップディスプレイ内の画像を投影する方法に関する。 【背景技術】 【0003】 従来の自動車ヘッドアップディスプレイ(HUD)は、ダッシュボード内の電磁放射線源を用いて、運転手の目に反射される光をフロントガラス上に投影して車両データの仮想画像を作り出すことで、運転手が道路から目を離すことなく車両の動作についての情報にアクセスできるようにする。従来の車両で典型的に見られる、フロントガラスに角度をもって反射する電磁放射線及び、発光ダイオード(LED)といった典型的な非偏光光源については、反射光は主に、P偏光である光よりもはるかに成分が少ないS偏光である。極端な例では、電磁放射線のフロントガラスに対する入射の角度が空気‐ガラス界面のブルースター角(約57°)である場合、P偏光反射率はゼロパーセントである。 【0004】 放射線源からの光(主にS偏光)は、空気とガラスとの間の屈折率の不一致によって、フロントガラスの最内面及びフロンドガラスの最外面のいずれにも反射する。これによって、2つの反射画像が各面に1つずつ形成される。HUD内に形成された複数の画像は「ゴースト発生」と呼ばれる現象であり、「ゴースト」の存在を取り除いたり最小限に抑えたりすることがHUD技術の目標である。ゴースト発生を解消する従来の方法は、フロントガラスの内側及び外側のガラス積層の間に楔形状のビニルレイヤを使用して、2つのガラス積層の配置を2つの反射画像と並ぶように調節することによる。この楔形状のビニルによって、フロントガラスのコストが上がり、フロントガラスの製造の複雑性も上がる。 【0005】 また、ガラス積層の少なくとも1つにコーティングを施すことで、フロントガラスに対して太陽光制御、発熱、及び/又はアンテナ機能を設けることも望ましい。この追加のコーティングによって、第3の反射を引き起こす、フロントガラス内の第3の反射率の不一致及びHUDシステム上の第3の反射画像が生じ、これを楔形状のビニルレイヤで相殺するのは困難である。 【0006】 従来のHUDシステムには、多くの運転手が、運転中の道路や他の原因からの眩しさを軽減させるために偏光サングラスをかけるという事実に起因する他の問題がある。典型的な偏光サングラスは、S偏光放射線を遮断することによって機能する。P偏光放射線は偏光サングラスを通過することが可能である。しかしながら、上述したように、従来のHUDシステムでは、HUDの画像を形成するようにフロントガラスで反射するのは主にS偏光放射線であり、フロントガラス表面で反射されるP偏光放射線は極めて僅かである。これは特に、フロントガラスが、空気‐ガラス界面のブルースター角に近い角度で典型的に位置付けられている場合に当てはまる。このように、従来の偏光サングラスをかけている運転手は、主にS偏光放射線によって形成されたHUDの画像を見ることができない可能性がある。 【0007】 従って、この技術分野では、システム及び/又は構成要素によってこれらの問題の1つ以上を軽減するか取り除くことが求められている。例えば、偏光サングラスをかけている運転手が視認可能な画像を投影し、且つ/又はゴースト発生を軽減するか取り除くHUDシステムを提供することが望ましいといえるだろう。」 「【0042】 第1の層及び/又は第2の層22及び/又は28は、例えば、透明フロートガラスであってもよいし、染色又は着色されたガラスであってもよい。 …(中略)… 1.ベースレイヤ 【0055】 ベースレイヤ44は1つ又は複数の非金属レイヤを含んでもよい。例えば、ベース44レイヤは、誘電体又は半導体材料を含んでもよい。例えば、ベースレイヤ44は、酸化物、窒化物、酸窒化物及び/又はそれらの混合物を含んでもよい。ベースレイヤ44に適した材料の例には、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、亜鉛、ビスマス、鉛、インジウム、スズ及びそれらの混合物の酸化物、窒化物又は酸窒化物が含まれてもよい。これらは、酸化ビスマスや酸化インジウム内のスズ等におけるマンガンといった、少量の他の材料を有してもよい。また、亜鉛及びスズを含有する酸化物(例えばスズ酸亜鉛)、インジウムスズ合金の酸化物、窒化ケイ素、窒化ケイ素アルミニウム、又は窒化アルミニウムといった、金属合金又は金属混合物の酸化物が使用されてもよい。また、アンチモン若しくはインジウムドープ酸化スズ又はニッケル若しくはホウ素ドープ酸化ケイ素といったドープ金属酸化物が使用されてもよい。特定の材料の例には、酸化亜鉛、酸化スズ、窒化ケイ素、窒化ケイ素アルミニウム、窒化ケイ素ニッケル、窒化ケイ素クロム、アンチモンドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、酸化チタン及び/又はそれらの混合物が含まれてもよい。ベースレイヤ44は単一の材料を含んでもよい。或いは、ベースレイヤ44は複数の材料及び/又は複数のレイヤを含んでもよい。 【0056】 ベースレイヤ44は、改良P偏光反射性コーティング36のレイヤの様々な界面境界から部分的に反射したりそれらを部分的に透過したりする電磁放射線の、建設的及び相殺的な光学干渉の調節を可能にしてもよい。また、ベースレイヤ44は、金属機能レイヤ46、52及び62といった、改良P偏光反射性コーティング36の他のレイヤに対する化学的及び/又は機械的保護を提供してもよい。 …(中略)… 2.金属機能レイヤ 【0064】 金属機能レイヤ46、52及び62の少なくとも1つは連続的な金属レイヤであってもよい。「連続的な」金属レイヤは、均質レイヤといった、切れ目がない又は分離されていないレイヤを意味する。 【0065】 金属機能レイヤ46、52及び62は、例えば、電磁スペクトルの太陽赤外線放射線領域内及び/又は熱赤外線放射線領域内といった、電磁スペクトルの赤外線放射線領域の少なくとも一部における、電磁放射線の反射率を提供する。 …(中略)… 3.犠牲金属レイヤ 【0074】 犠牲金属レイヤ48、54及び64は、下方の対応する金属機能レイヤ46、52、62と直接的に接触して位置付けられてもよい。犠牲金属レイヤ48、54及び64は、熱焼き戻しといったコーティングプロセス及び/又は後続の処理の間、対応する金属機能レイヤ46、52及び62を保護してもよい。犠牲金属レイヤ48、54及び64は金属として蒸着されてもよい。上方の位相調節レイヤ50及び60又はトップコートレイヤ56の蒸着といった後続処理及び/又は熱焼き戻しの間、犠牲金属レイヤ48、54及び64の幾つか又は全てが酸化してもよい。酸化物又は窒化物材料が上方の位相調節レイヤ50及び60又はトップコートレイヤ56に使用されている場合、犠牲金属レイヤ48、54及び64は、酸素を形成しやすい(oxophillic)又は窒素を形成しやすい(nitrophillic)材料をそれぞれ含んでもよい。犠牲金属レイヤ48、54及び64は、全て同じ材料である必要はない。犠牲金属レイヤ48、54及び64は、同じ厚さである必要はない。 【0075】 犠牲金属レイヤ48、54及び64に有用な材料の例には、チタン、ニオブ、タングステン、ニッケル、クロム、鉄、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、シリコン、インジウム、スズ、亜鉛、モリブデン、ハフニウム、ビスマス、バナジウム、マンガン及びそれらの組み合わせを含む。 …(中略)… 4.位相調節レイヤ 【0080】 位相調節レイヤ50及び60は非金属レイヤであってもよい。例えば、位相調節レイヤ50及び60は、誘電体又は半導体材料を含んでもよい。例えば、位相調節レイヤ50及び60は、酸化物、窒化物、酸窒化物及び/又はそれらの混合物を含んでもよい。位相調節レイヤ50及び60に適した材料の例には、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、亜鉛、ビスマス、鉛、インジウム、スズ及びそれらの混合物の酸化物、窒化物又は酸窒化物が含まれてもよい。これらは、酸化ビスマスや酸化インジウム内のスズ等におけるマンガンといった、少量の他の材料を有してもよい。また、亜鉛及びスズを含有する酸化物(例えばスズ酸亜鉛)、インジウムスズ合金の酸化物、窒化ケイ素、窒化ケイ素アルミニウム、又は窒化アルミニウムといった、金属合金又は金属混合物の酸化物が使用されてもよい。また、アンチモン若しくはインジウムドープ酸化スズ又はニッケル若しくはホウ素ドープ酸化ケイ素といったドープ金属酸化物が使用されてもよい。特定の材料の例には、酸化亜鉛、酸化スズ、窒化ケイ素、窒化ケイ素アルミニウム、窒化ケイ素ニッケル、窒化ケイ素クロム、アンチモンドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、酸化チタン及び/又はそれらの混合物が含まれてもよい。 【0081】 位相調節レイヤ50及び60は単一の材料を含んでもよい。或いは、位相調節レイヤ50及び60は、複数の材料及び/又は複数のレイヤを含んでもよい。異なる位相調節レイヤ50及び60は、同じ材料を含んでもよいし異なる材料を含んでもよい。位相調節レイヤ50及び60は、同じ厚さを有してもよいし異なる厚さを有してもよい。 【0082】 位相調節レイヤ50及び60は、改良P偏光反射性コーティング36のレイヤの様々な界面境界から部分的に反射したりそれらを部分的に透過したりする電磁放射線の、建設的及び相殺的な光学干渉の調節を可能にしてもよい。位相調節レイヤ50及び60の厚さ及び/又は構成を変動させることによって、改良P偏光反射性コーティング36の全体の反射率、透過率及び/又は吸収率が変更されて、改良P偏光反射性コーティング36の太陽光制御性能、熱赤外線絶縁性能、色及び/又は美しさが変更されうる。また、位相調節レイヤ50及び60は、金属機能レイヤ46、52及び62といった、改良P偏光反射性コーティング36の他のレイヤに対する化学的及び/又は機械的保護を提供してもよい。 …(中略)… 5.トップコートレイヤ 【0093】 トップコートレイヤ56は、第1又は第2位相調節レイヤ50又は60に対して上述したような1つ以上の材料及び/又はレイヤを含んでもよい。 …(中略)… 【0096】 改良P偏光反射性コーティング36は、トップコートレイヤ56上に位置付けられたオーバーコート58を含んでもよい。オーバーコート58は、下方のレイヤに対する、処理中の機械的及び化学的な攻撃からの保護を助けるように、トップコートレイヤ56上に蒸着されてもよい。オーバーコート58は、例えば加熱又は曲げ加工の間の、改良P偏光反射性36の下方のレイヤ内への雰囲気酸素の通過を防止又は軽減するように、酸素障壁コーティングレイヤであってもよい。オーバーコート58は、任意の所望の材料又は材料の混合物を含んでもよい。例示的な一実施例では、オーバーコート58は、限定はされないが、アルミニウム、シリコン又はそれらの混合物の酸化物(例えば、シリカ・アルミナコーティングである)といった、1つ以上の金属酸化物材料を有したレイヤを含んでもよい。例えば、オーバーコート58は、0wt.%~100wt.%のアルミナ及び/又は100wt.%~0wt.%のシリカ、例えば5wt.%~95wt.%のアルミナ及び95wt.%~5wt.%のシリカ、例えば10wt.%~90wt.%のアルミナ及び90wt.%~10wt.%のシリカ、例えば15wt.%~90wt.%のアルミナ及び85wt.%~10wt.%のシリカ、例えば50wt.%~75wt.%のアルミナ及び50wt.%~25wt.%のシリカ、例えば50wt.%~70wt.%のアルミナ及び50wt.%~30wt.%のシリカ、例えば35wt.%~100wt.%のアルミナ及び65wt.%~0wt.%のシリカ、例えば、70wt.%~90wt.%のアルミナ及び30wt.%~10wt.%のシリカ、例えば、75wt.%~85wt.%のアルミナ及び25wt.%~15wt.%のシリカ、例えば、88wt.%のアルミナ及び12wt.%のシリカ、例えば、65wt.%~75wt.%のアルミナ及び35wt.%~25wt.%のシリカ、例えば、70wt.%のアルミナ及び30wt.%のシリカ、例えば、60wt.%~75wt.%未満のアルミナ及び25wt.%より大きい値~40wt.%のシリカをこれらの範囲内で含む単一のコーティングレイヤであってもよい。オーバーコート58は、85wt.%のシリカ及び15wt.%のアルミナを含む単一のコーティングレイヤであってもよい。例えばオーバーコート58の屈折率を調節するように、アルミニウム、クロム、ハフニウム、イットリウム、ニッケル、ホウ素、リン、チタン、ジルコニウム及び/又はそれらの酸化物といった他の材料も存在してもよい。非限定の一例では、オーバーコート58の屈折率は、1~3、例えば1~2、又は例えば1.4~2、例えば1.4~1.8の範囲内であってもよい。 …(中略)… 【0100】 図5A及び5Bを参照すると、積層体12は中間レイヤ34を含んでもよい。中間レイヤ34は、層22及び28を共に保持するのに適した材料を含んでもよい。中間レイヤ34は、ポリビニルブチラール(PVB)といった重合体から作られてもよい。中間レイヤ34は、第2の面26及び/又は第3の面30上に位置付けられてもよい。中間レイヤ34は、改良P偏光反射性コーティング36と接触していてもよい。中間レイヤ34は、層22及び28を共に保持するのに適した任意の厚さを有してもよい。中間レイヤ34は、0.76mmの厚さのPVBの中間レイヤ34であってもよい。 …(中略)… 【0123】 発明された積層体は、少なくとも70%のLTAを維持しながら、P偏光放射線の反射率が少なくとも10%になるように改良されたP偏光放射線反射性を示す。」 第4 当審において通知した拒絶の理由の概要 当審において令和7年1月27日付け拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知書」という。)により通知した拒絶の理由のうち、理由3(進歩性の欠如)の要旨は、次のとおりである。 本願発明は、最先の優先日前に日本国内又は外国において発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、最先の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 <主たる引用文献> 引用文献1.国際公開第2016/058474号 <そのほかの引用文献> 引用文献2.特開2000-229381号公報 引用文献3.特開2017-132666号公報 引用文献4.特表2005-516818号公報 第5 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定 1 引用文献1に記載された事項 当審拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用した文献であって、最先の優先日前に発行された引用文献1(国際公開第2016/058474号)には、以下の事項が記載されている。(引用文献1の記載箇所に続く括弧内に引用文献1の対応日本語公報である特表2017-538141号公報(以下「日本語公報」という。)の対応箇所を示し、引用文献1から摘記した記載の後に続く括弧内に、翻訳文に相当する日本語公報の記載をその段落番号等とともにそのまま記載した。) (1) 20~21ページ(【特許請求の範囲】) 「 [図:0001434430000009.jpg] [図:0001434430000010.jpg] (後略) (【請求項1】 投影光源および合わせガラスを備え、前記合わせガラスが、内側ガラス板と、外側ガラス板と、内側ガラス板と外側ガラス板との間に挟まれた中間膜と、を備えるヘッドアップディスプレイシステムであって、 透明ナノ膜を更に備え、前記透明ナノ膜が少なくとも二つの誘電体層及び少なくとも一つの金属層を備え、それぞれの金属層が二つの誘電体層の間に位置し、 前記内側ガラス板及び前記外側ガラス板のそれぞれは前記中間膜との屈折率差が0.1以下であり、 前記投影光源がP偏光を発生するためのものであり、 前記P偏光は、前記内側ガラス板における前記中間膜から離れた方の表面に入射し、入射角が42~72度であり、 前記透明ナノ膜が、入射した前記P偏光の一部を反射できることを特徴とするヘッドアップディスプレイシステム。 【請求項2】 前記金属層が銀層または銀を含む合金層であることを特徴する請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。 【請求項3】 前記P偏光は、入射角が55~70度であることを特徴する請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。) (後略)」 (2) 1ページ5行~5ページ最終行(【0002】~【0021】) 「 [図:0001434430000011.jpg] (【技術分野】 【0002】 本発明は、ヘッドアップディスプレイ技術分野に関し、特に、自動車用ヘッドアップディスプレイシステムに関する。) [図:0001434430000012.jpg] (【背景技術】 【0003】 科学技術の発展に伴い、ヘッドアップディスプレイ(HUD、Head Up Display)システムは自動車にますます多く用いられている。自動車用ヘッドアップディスプレイシステムは、例えば、速度、エンジンの回転数、油消費量、タイヤ空気圧、ナビゲーション及び外付けスマートデバイスの情報等の重要な運転情報をフロント風防ガラスにおけるドライバーの視野にリアルタイムに表示することができ、これによって、ドライバーは、頭を低くする必要なく、運転情報を見ることができ、前方の道に対する注意を逸らすことがなくなる。これと共に、ドライバーは、遠くの道と近くのメーターとの間に、目線を調整する必要がなく、目の疲労を回避することができ、運転安全性を大幅に向上させ、運転体験を改善することができる。) [図:0001434430000013.jpg] (【0004】 従来のヘッドアップディスプレイは、主に発光結像と投影結像の2種類の方法により、実現される。投影結像は、自動車のフロント風防ガラス又は別設された光学素子を利用して投影表示を行うものであり、且つ、フロント風防ガラスを利用して投影画像を反射することは、構造的に最も簡単である方式である。一般的に、フロント風防ガラスは、いずれも、一定の曲率を備えた少なくとも二つのガラス基板の間に熱可塑性ポリマー膜(ポリビニールブチラール)が挟まれたことにより構造される合わせガラスである。ヘッドアップディスプレイシステムの投影光源が発生する光は、合わせガラスにおける空気に接触した二つの表面を経る際にそれぞれ反射され、これらの二つの表面における反射像がずれるため、互いに干渉する二重像(ゴースト)は形成され、特に、合わせガラスの厚さが比較的に厚い(一般的に、3mmを超え)場合、一層顕著に形成され、投影表示画像の鮮明さが大幅に制限される。) [図:0001434430000014.jpg] (【0005】 自動車のフロント風防ガラスにおけるヘッドアップディスプレイシステムの二重像の問題を解決するために、従来技術には、若干の手段が開示される。例えば、特許文献CN101038349A、US2002172804A1及びUS2007148472A1には、楔形のポリマー膜が合わせガラスの中間層として用いられるため、合わせガラスが上方から下方へ薄くなる楔形断面を備えることにより、ドライバーが見る二つの表面における反射像がほぼ重なり合い、ついに、二重像が大幅に防止されるという手段が開示される。上述手段と同様に、ガラス基板の一部が楔形断面を備えるという手段は、特許US6414796B1に開示される。しかしながら、これらの技術手段においては、(1)二重像が完全に防止されることができないため、高解像度画像表示に適合しなく、(2)価格が普通のPVB膜の7~10倍である特殊な仕様のPVB膜を使用する必要があり、且つ、プロセスの難度が高いため、材料とプロセスのコストが非常に高くなり、(3)車の形状の光学的な設計から影響が及ぼされやすくため、特定の車の形状のフロント風防ガラスに関して改めて設計する必要がある、という欠点があった。) [図:0001434430000015.jpg] [図:0001434430000016.jpg] (【0006】 もう一つの技術手段では、合わせガラスの表面又は内部に、偏光方向を変えることができる光学機能層、または、P偏光またはs偏光を反射できる反射偏光子が設置され、且つ、ヘッドアップディスプレイシステムの投影光源から発光されたP偏光またはs偏光が特定角(例えば、ブリュースター角)で入射することにより、合わせガラスの異なる偏光に対する反射特性によって、ある表面における反射像ができるだけ解消され、ついに、二重像が防止される。このような技術手段は、特許文献EP0836108(A2)、EP0844507(A1)、US6327089(B1)、CN1969219(A)、US7355796(B2)、CN101151568(A)、US7839574(B2)、CN1732404(A)及びCN102256910(A)等に開示される。しかしながら、このような技術手段の実現は、合わせガラスの一部(つまり、ヘッドアップディスプレイ投影領域)に付加的な光学機能層または反射偏光子を増設することを前提とするため、これは必ず材料コスト及びプロセス難度を向上させる。例えば、CN1732404(A)に開示されたP偏光反射偏光子は数十乃至数百層のポリマーを備えるとともに、フロント風防ガラスは全体の均一性が壊され、美観性が低減される。なお、合わせガラスの一部における光学機能層または反射偏光子が設置された領域での接着強度が低減される恐れがあるため、隠れた危険が生じる。且つ、光学機能層または反射偏光子の一部の可視光透過率が比較的に低いため、ドライバーの視野やフロント風防ガラスの外観に影響を及ぼす。) [図:0001434430000017.jpg] (【0007】 また、従来技術においては、合わせガラスの表面に反射防止(AR)膜が増設されることにより、一つの界面に形成された反射像の輝度が低減されるという手段はある。例えば、特許US7864431(B2)には、合わせガラスにおける空気に接触した表面に反射防止膜が設置され、或いは、反射防止膜が設置されない表面に低放射率めっき層が増設されるという技術手段が開示される。しかしながら、このような技術手段においては、(1)反射防止膜は、合わせガラスにおける空気に接触した表面に形成され、特に、合わせガラスの外側表面に形成される場合、悪い利用環境、例えば、酸性雨、粉塵、窓ふき器の摩擦またはアルカリ洗浄剤等に耐えにくくなり、(2)反射防止膜は、比較的に複雑な構造を有しており、特に、良い広帯域反射防止性および略ゼロの反射率を有し且つ小さい角と大きい角のそれぞれでの良い外観性を有する反射防止膜は、一般的に、多層形成されるべきであり、数百のナノメートルの合計厚さを有するため、自動車のフロント風防ガラスでの大面積成膜に適合しなく、(3)反射防止膜においては、二重像が完全に防止されにくく、特に、大きい角で観察する場合、淡青色または淡紫色の反射光がまだ見え、(4)合わせガラスの外側表面に形成される反射防止膜は、雨の場合、水層で覆われ、反射防止効果が大幅に低減され、ついに、二重像現象がひどくなり、(5)反射防止膜は、合わせガラスにおける空気に接触した表面に設置されるため、増設された低放射率めっき層に生じる反射像が解消されることができなく、ある程度の二重像がまだ見える、という欠点があった。) [図:0001434430000018.jpg] (【0008】 同様に、合わせガラスにおける空気に接触した表面に形成される反射光を補強することにより、肉眼で見える二重像を低減することができる。例えば、部品市場でありふれた膜式のHUD投影器では、HUD投影領域に半透明の反射膜が予め貼り付く。或いは、特許文献US6137630(A)に開示されるように、高い屈折率の材料と低い屈折率の材料が交替する複数の誘電体層が合わせガラスにおける空気に接触した一方の表面に形成されることにより、この表面での反射光強度が補強され、他方の表面での反射光強度が殆ど変らないため、肉眼で見える反射像は、主に、めっき層表面での反射光からなる。明らかに、このような技術手段は、自動車のフロント風防ガラスの全体の均一性または外観の美観性を壊す一方、二重像を完全に防止することができない。) [図:0001434430000019.jpg] (【0009】 自動車のヘッドアップディスプレイシステムにおいては、上記の二重像問題を解決すべきである以外、多種の異なる情報画像を表示できるために、ディスプレイシステムはできるだけ多くの色を表示できる能力を有する。例えば、中国実用新案CN2694293(Y)に開示されるように、複数の異なる屈折率の膜が基板にめっきされることにより、ヘッドアップ表示装置が赤、緑、青の三原色の狭波長反射帯域を有する。或いは、特許US6137630(A)に開示されるように、高い屈折率の材料と低い屈折率の材料が交替する複数の誘電体層が合わせガラスにおける空気に接触した一方の表面に形成されることにより、フルカラー表示を実現する。実際には、フルカラー表示の要求が満たされない場合、肉眼が最も敏感な緑光の反射ができるだけ保証される。) [図:0001434430000020.jpg] (【0010】 本発明は、従来技術の上記欠点に鑑み、ゴースト画像なしにはっきりとし、多色表示を実現し、且つ、構造およびプロセスが簡単で、コストが低いヘッドアップディスプレイシステムを提供する。) [図:0001434430000021.jpg] (【0011】 上記欠点を克服するための本発明の技術手段は、投影光源および合わせガラスを備え、前記合わせガラスが、内側ガラス板と、外側ガラス板と、内側ガラス板と外側ガラス板との間に挟まれた中間膜と、を備えるヘッドアップディスプレイシステムであって、透明ナノ膜をさらに備え、前記透明ナノ膜が少なくとも二つの誘電体層及び少なくとも一つの金属層を備え、それぞれの金属層が二つの誘電体層の間に位置し、前記内側ガラス板及び前記外側ガラス板のそれぞれは前記中間膜との屈折率差が0.1以下であり、前記投影光源がP偏光を発生するためのものであり、前記P偏光は、前記内側ガラス板における前記中間膜から離れた方の表面に入射し、入射角が42~72度であり、前記透明ナノ膜が、入射した前記P偏光の一部を反射できることを特徴とするヘッドアップディスプレイシステム。) [図:0001434430000022.jpg] [図:0001434430000023.jpg] (【0012】 更に、前記金属層が銀層または銀を含む合金層である。 【0013】 更に、前記P偏光は、入射角が55~70度である。 【0014】 更に、前記内側ガラス板及び前記外側ガラス板のそれぞれは前記中間膜との屈折率差が0.05以下である。 【0015】 更に、前記透明ナノ膜が、前記内側ガラス板における前記中間膜に接触した表面または前記外側ガラス板における前記中間膜に接触した表面に設置される。) [図:0001434430000024.jpg] (【0016】 更に、前記透明ナノ膜がポリマー膜に設置され、前記ポリマー膜と前記内側ガラス板及び前記外側ガラス板のそれぞれとの屈折率差が0.1以下であり、前記透明ナノ膜が設置されたポリマー膜が前記内側ガラス板と前記外側ガラス板との間に位置し、或いは、前記内側ガラス板における前記中間膜から離れた方の表面に位置する。) [図:0001434430000025.jpg] (【0017】 更に、前記投影光源が発生するP偏光の色が、赤色、緑色および青色から少なくとも一つ選択される。 【0018】 好ましくは、前記透明ナノ膜が二つの金属層を備える場合、前記投影光源が発生するP偏光の色が、緑色および青色から少なくとも一つ選択される。) [図:0001434430000026.jpg] (【0019】 更に、前記透明ナノ膜が二つの金属層または三つの金属層を備える場合、補助膜が更に増設され、前記補助膜が少なくとも一つの補助ポリマー膜と該補助ポリマー膜に設置され且つ金属層を備える補助透明ナノ膜とを備え、前記補助膜が前記P偏光の入射領域に位置し、前記補助膜の補助透明ナノ膜と二つの金属層または三つの金属層を備える前記透明ナノ膜との間の距離が350μm以下である。) [図:0001434430000027.jpg] (【0020】 好ましくは、前記補助膜の補助透明ナノ膜と二つの金属層または三つの金属層を備える前記透明ナノ膜との間の距離が100μm以下である。) [図:0001434430000028.jpg] (【0021】 本発明に係るヘッドアップディスプレイシステムは、ガラスと空気との界面に入射するP偏光に関する反射率が比較的に低く、透明ナノ膜がP偏光の一部を反射できるため、肉眼で見える二重像が完全に防止され、表示品質を大幅に向上させることができ、高解像度画像表示に適合する。また、構造およびプロセスが非常に簡単であり、つまり、特定の光学素子が別設される必要がなく、透明ナノ膜が設置されたフロント風防ガラスを備える自動車にP偏光を発光できる投影光源を取り付けることのみにより、高品質のヘッドアップディスプレイ機能を実現することができるため、コストが非常に低くなる。また、異なる透明ナノ膜の構造によって、単色表示、多色表示、さらにはフルカラー表示を実現することができる。)」 (3) 6ページ17行~11ページ19行、図1~3、8(【0024】~【0032】) 「 [図:0001434430000029.jpg] [図:0001434430000030.jpg] (【0024】 図1に示すように、本発明に係るヘッドアップディスプレイシステムは、投影光源1および合わせガラス2を備える。前記合わせガラス2は、内側ガラス板21と、外側ガラス板22と、内側ガラス板21と外側ガラス板22との間に挟まれた中間膜23を備える。二重像を防止するために、前記ヘッドアップディスプレイシステムは更に透明ナノ膜3を備える。前記透明ナノ膜3は、少なくとも二つの誘電体層及び少なくとも一つの金属層を備える。それぞれの金属層は、二つの誘電体層の間に位置する。前記投影光源1は、P偏光11を発生するためのものである。前記P偏光11は、内側ガラス板21における中間膜23から離れた方の表面211、即ち、第一表面211に入射し、入射角が42~72度である。前記透明ナノ膜3は、入射する前記P偏光11の一部を反射できる。且つ、合わせガラス2内部が入射するP偏光11に及ぼす影響を防止するために、好ましくは、前記内側ガラス板21及び外側ガラス板22のそれぞれは前記中間膜23との屈折率差が0.1以下である。本発明においては、ガラスと空気との界面に入射するP偏光11に関する反射率が比較的に低く、特に、P偏光11がブリュースター角θB(57度)で入射する際に反射されなく、且つ、透明ナノ膜3がP偏光11の一部を反射できるため、肉眼で見える二重像が完全に防止される。)」 「 [図:0001434430000031.jpg] 」 「 [図:0001434430000032.jpg] [図:0001434430000033.jpg] (【0025】 図1においては、投影光源1が発生するP偏光11は、ブリュースター角θB(57度)で、内側ガラス板21における中間膜23から離れた方の表面211に入射する。P偏光11の特性に応じて、P偏光11は、第一表面211で反射されることなく、合わせガラス2内に入る第一屈折光12だけ形成する。合わせガラス2内部には、中間膜23と前記内側ガラス板21及び外側ガラス板22のそれぞれとの屈折率差が0.1以下であり、つまり、それらの屈折率が大体同じであるため、前記第一屈折光12は、前記透明ナノ膜3に到達するまで、中間膜23における内側ガラス板21または外側ガラス板22に接触した表面で反射されることなく、伝播方向が殆ど変わらない。前記透明ナノ膜3の金属層が第一屈折光12の一部を反射しており、第一反射光13が形成される。また、第一屈折光12の残りは、前記透明ナノ膜3を透過して、外側ガラス板22における中間膜23から離れた方の表面221、即ち、第二表面221に伝播して到達する。前記透明ナノ膜3が非常に薄いため、第一屈折光12の、前記透明ナノ膜3を透過した部分の伝播方向が殆ど変わらない。光伝播の可逆性に応じて、第一屈折光12の、外側ガラス板22における中間膜23から離れた方の表面221に到達する部分は、第二表面221で反射されることなく、空気に入る第二屈折光14だけ形成する。第一反射光13は、第一表面211に伝播して到達する。光伝播の可逆性に応じて、第一反射光13は、第一表面211で反射されることなく、観察者16が識別できる第三屈折光15だけ形成する。前記P偏光11の伝播経路を検討して分かるように、観察者16が識別できる表示画像は、第三屈折光15だけからのものである。これによって、二重像を完全に防止し、表示品質を大幅に向上させ、高解像度画像表示に適合する。) [図:0001434430000034.jpg] (【0026】 前記投影光源1は、文字、画像等の情報の表示装置として、自動車に関するインストルメント、外付けセンザー又は外付けスマートデバイス等に接続され、且つ、関連する文字や画像情報、例えば、速度、エンジンの回転数、油消費量、タイヤ空気圧、ナビゲーション及び暗視等をP偏光で合わせガラス2に投影するため、これらの情報が自動車内の観察者16に観察されることが可能になる。前記投影光源1は、当業者にとって周知の素子であり、レーザー、発光ダイオード(LED)、液晶ディスプレイ(LCD)、電界発光(EL)、陰極線管(CRT)、蛍光表示管(VFD)、コリメーティングミラー、球面ミラー、凸レンズ、凹レンズ、反射ミラー及び/又は偏光子などを含むが、これらに限定されない。なお、投影光源1は、車内の異なる位置または高度に位置する観察者16に適応するように、位置と入射角度を調節することができる。) [図:0001434430000035.jpg] (【0027】 合わせガラス2は、内側ガラス板21と、外側ガラス板22と、内側ガラス板21と外側ガラス板22との間に挟まれた中間膜23を備える。内側ガラス板21は、自動車の内部を向く一方、外側ガラス板22は、自動車の外部を向く。前記中間膜23は、熱可塑性ポリマー膜である。中間膜23が第一屈折光12に及ぼす影響を低減するために、中間膜23は、屈折率がガラスの屈折率に近いように選択され、つまり、中間膜23と前記内側ガラス板21及び外側ガラス板22のそれぞれとの屈折率差が0.1以下であり、好ましくは、中間膜23と前記内側ガラス板21及び外側ガラス板22のそれぞれとの屈折率差が0.05以下であり、例えば、よく使用されているPVB膜である。図1に示される合わせガラス2は、製図の便利のために、平坦に描かられるが、実際に、合わせガラス2は湾曲する。湾曲した合わせガラス2が本発明の好適な実施形態であるが、これに限定されないことは理解されるべきである。他の透明部材、例えば、単層または多層積層された、平坦または湾曲(曲率が均一または変化である)の、無色または有色の、普通ガラス及び/又はプラスチックからなる透明部材は、合わせガラス2に代わってもよい。) [図:0001434430000036.jpg] [図:0001434430000037.jpg] (【0028】 本発明に係るP偏光11が、57度(つまり、ブリュースター角θB)で空気から内側ガラス板21における中間膜23から離れた方の表面211に入射することにより、第一表面211での反射が防止できる。ここでのブリュースター角θBは、特定の光学材料の屈折率に関するが、本発明では、自動車のための普通のフロント風防ガラス材料にとっては、前記ブリュースター角θBは略57度である。厳密に言えば、前記ブリュースター角θBがP偏光の波長に関するが、本発明では、一般的に、このような影響が小さいため、普通の場合、可視光波長(380~780nm)範囲内で、前記ブリュースター角θBが常数と見なされてもよい。図8Aに示すように、P偏光11の入射角度がブリュースター角である57度であるため、本発明に係るヘッドアップディスプレイシステムにおいては、HUD画像(速度情報)がゴースト画像なしにはっきりとする。また、実際の投影結像の過程においては、光源と投影虚像のサイズ関係、及びフロント風防ガラスの取り付け構造、光源の位置などに起因して、P偏光の入射角度がブリュースター角θBからずれる可能性があるが、ずれ角度は15度以下であり、即ち、入射角度は42~72度、好ましくは55~70度、より好ましくは55~64度、さらに好ましくは56~59度である。この場合、第一表面211と第二表面221からの反射光は、完全に解消されることができないが、透明ナノ膜3に生じる反射光に比べて、強度が依然としてかなり低いである。図8Bに示すように、P偏光の入射角度がブリュースター角から9度ずれたものであり、即ち、入射角度が66度である場合、ゴースト反射像は、主反射像に比べて、輝度が十分に低いため、主反射像に隣接する比較的に弱い光暈を呈しており、実際に、ゴースト画像が肉眼で見られにくいため、ゴースト画像が肉眼で依然として見えない。図8Aと図8Bに比べて、図8Cは、普通の合わせガラスのヘッドアップディスプレイ画像であり、ゴースト画像反射率が主反射像の略60%であるため、ゴースト画像がはっきりと見え、実際の使用効果は明らかに本発明の図8Aと8Bに示すものに劣る。)」 「 [図:0001434430000038.jpg] 」 「 [図:0001434430000039.jpg] (【0029】 前記透明ナノ膜3は、入射した前記P偏光11の一部を反射できる。透明ナノ膜3の金属層の材料は、P偏光11を反射できる任意の材料、例えば、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等であるが、これらに限定されない。本発明においては、銀または銀を含む合金が好ましい。本発明においては、銀を含む合金は、好ましくは、銀と金、アルミニウム、銅の少なくとも一つとからなる合金である。本発明の実施形態のそれぞれにおいては、銀が選択されるが、実施形態に係る銀の厚さは本発明の範囲を限定しない。) [図:0001434430000040.jpg] (【0030】 透明ナノ膜3の利用環境を保証し、且つ、酸性雨、粉塵、窓ふき器の摩擦またはアルカリ洗浄剤等の悪い環境から透明ナノ膜3を保護するために、図2Aに示すように、好ましくは、前記透明ナノ膜3は、内側ガラス板21における中間膜23に接触した表面212、即ち、第三表面212に設置され、或いは、図2Bに示すように、好ましくは、前記透明ナノ膜3は、外側ガラス板22における中間膜23に接触した表面222、即ち、第四表面222に設置される。この設置のプロセスは、当分野で周知されたマグネトロンスパッタリングプロセスであってもよく、つまり、前記透明ナノ膜3に含まれた層は、スパッタリングによって、内側ガラス板21の第三表面212または外側ガラス板22の第四表面222に直接形成される。)」 「 [図:0001434430000041.jpg] 」 「 [図:0001434430000042.jpg] [図:0001434430000043.jpg] (【0031】 同様に、透明ナノ膜3の利用環境を保証し、且つ、酸性雨、粉塵、窓ふき器の摩擦またはアルカリ洗浄剤等の悪い環境から透明ナノ膜3を保護するために、図3A、3B、3C及び3Dに示すように、更に、透明ナノ膜3は一つのポリマー膜4に設置されてもよく、このポリマー膜4は、透明ナノ膜3を支持し且つ保護するためのものである。ポリマー膜4が第一屈折光12に及ぼす影響を低減するために、好ましくは、前記ポリマー膜4と前記内側ガラス板21及び外側ガラス板22のそれぞれとの屈折率差が0.1以下であり、例えば、よく使用されているPET膜である。図3Aに示すように、透明ナノ膜3が設置されたポリマー膜4は、内側ガラス板21と中間膜23との間に位置し、且つ、透明ナノ膜3は中間膜23に隣接し、ポリマー膜4は内側ガラス板21に隣接する。或いは、図3Bに示すように、透明ナノ膜3が設置されたポリマー膜4は、外側ガラス板22と中間膜23との間に位置し、且つ、透明ナノ膜3は中間膜23に隣接し、ポリマー膜4は外側ガラス板22に隣接する。或いは、図3Cに示すように、透明ナノ膜3が設置されたポリマー膜4は、内側ガラス板21における中間膜23から離れた方の表面211、即ち、第一表面211に位置し、且つ、透明ナノ膜3と第一表面211との間に、透明ナノ膜3と第一表面211との間の接着強度を補強するための一つの同様なポリマー膜4は更に増設される。或いは、図3Dに示すように、透明ナノ膜3が設置されたポリマー膜4は、二つの中間膜23の間に位置する。図3A、3B及び3Dに示す実施形態においては、透明ナノ膜3と中間膜23との間に、透明ナノ膜3の保護層としての少なくとも一つの透明ポリマー膜が増設されてもよく、図3Aに示す実施形態においては、ポリマー膜4と内側ガラス板21との間に少なくとも一つの透明ポリマー接着層が増設されてもよく、図3Bに示す実施形態においては、ポリマー膜4と外側ガラス板22との間に少なくとも一つの透明ポリマー接着層が増設されてもよいことは理解されるべきである。)」 「 [図:0001434430000044.jpg] 」 「 [図:0001434430000045.jpg] (【0032】 本発明に係る前記透明ナノ膜3は、少なくとも二つの誘電体層及び少なくとも一つの金属層を備え、更にバリア層及び/又は保護層等を備えてもよい。それぞれの金属層が二つの誘電体層の間に位置する。前記膜の特定構造は、本発明の範囲に影響を及ぼさないため、ここで、詳しい説明は省略される。実際応用の要求に応じて、前記透明ナノ膜の金属層は、数がある程度異なり、特に、よく使用されている銀層または銀を含む合金層が金属層とする場合、一般的に、一つ、二つ、または三つの銀層、さらに、三つ以上の銀層が含まれてもよい。前記誘電体層は、ZnSnMgOx、ZnSnOx、ZnO、SnO2、TiO2、Si3N4、またはAlN等から形成される。本発明に係る透明ナノ膜は、材料及び厚さが好適に設計されることにより、後の高温熱処理または他の製造プロセスに耐えることができるとともに、仕上げられたヘッドアップディスプレイシステムの光学性能が自動車ガラスの規格を満たすことができるため、純粋な金属薄層における良くない耐久性、悪い光学外観等の問題を完全に解決する。本発明に係るヘッドアップディスプレイシステムは、一つの銀層を備えた透明ナノ膜3を備える場合、可視光透過率TLが70%以上であり、太陽エネルギー直接透過率TEは50%以下である。また、本発明に係るヘッドアップディスプレイシステムは、二つの銀層を備えた透明ナノ膜3を備える場合、可視光透過率TLが75%以上であり、太陽エネルギー直接透過率TEは47%以下である。また、本発明に係るヘッドアップディスプレイシステムは、三つの銀層を備えた透明ナノ膜3を備える場合、可視光透過率TLが70%以上であり、太陽エネルギー直接透過率TEは34%以下であり、太陽エネルギー合計透過率Ttsは40%以下である。また、外観色は、必要に応じて、人の好きな中間色、淡青色、淡青緑色または淡紫色に調節されてもよい。)」 (4) 11ページ20行~13ページ5行、図4(【0033】~【0036】) 「 [図:0001434430000046.jpg] [図:0001434430000047.jpg] (【0033】 図4に示すように、A0は、57度(ブリュースター角θB)で普通の合わせガラスに入射するP偏光に関する反射率スペクトルであり、A1は、57度(ブリュースター角θB)で一つの銀層を備えた透明ナノ膜を備えるヘッドアップディスプレイシステムに入射するP偏光に関する反射率スペクトルであり、A2は、57度(ブリュースター角θB)で二つの銀層を備えた透明ナノ膜を備えるヘッドアップディスプレイシステムに入射するP偏光に関する反射率スペクトルであり、A3は、57度(ブリュースター角θB)で三つの銀層を備えた透明ナノ膜を備えるヘッドアップディスプレイシステムに入射するP偏光に関する反射率スペクトルである。)」 「 [図:0001434430000048.jpg] 」 「 [図:0001434430000049.jpg] (【0034】 A0曲線は、ゼロに極めて近いものであり、つまり、めっき層がないガラスは、入射するP偏光に対する反射に非常に弱いである。A1曲線は、一つの銀層を備えた透明ナノ膜を備えるヘッドアップディスプレイシステムの、肉眼で見える可視光波長(400~700nm)範囲内でのP偏光反射率スペクトル曲線が比較的に平坦であり、その反射率は10%を超えることを示す。これから分かるように、A1曲線と肉眼のP偏光波長に対する敏感性および快適性とに従って、好ましくは、前記透明ナノ膜3が一つの金属層(例えば、銀層)を備える場合、前記投影光源1が発生するP偏光11の色は、赤色、緑色および青色から少なくとも一つ選択され、例えば、フルカラー表示を実現できる、赤色、緑色および青色の組み合わせである。) [図:0001434430000050.jpg] (【0035】 A2曲線は、二つの銀層を備えた透明ナノ膜を備えるヘッドアップディスプレイシステムのP偏光反射率が青色(450~500nm)と緑色(500~550nm)の領域に主にあることを示す。このため、適切なP偏光波長を選択することのみにより、単色(青色または緑色)表示または二色(青色および緑色)表示を実現することができる。また、A1曲線に比べて、A2曲線におけるP偏光反射率は、青色および緑色の領域において比較的に低いである。昼間に太陽光の下で表示画像がはっきりと見えるために、投影光源1の発光輝度を補強することにより補償を行うことができる。これから分かるように、A2曲線と肉眼のP偏光波長に対する敏感性および快適性とに従って、好ましくは、前記透明ナノ膜3が二つの金属層(例えば、銀層)を備える場合、前記投影光源1が発生するP偏光11の色は、緑色および青色から少なくとも一つ選択される。例えば、前記投影光源1が広域スペクトル光源(例えば、LEDバックライト付きのTFT-LCD)である場合、緑色および青色の二色の表示を実現することができる。) [図:0001434430000051.jpg] [図:0001434430000052.jpg] (【0036】 A3曲線は、三つの銀層を備えた透明ナノ膜を備えるヘッドアップディスプレイシステムのP偏光反射率スペクトル曲線が平坦ではないことを示す。しかしながら、肉眼で見える可視光波長(400~700nm)範囲内で適切な波長範囲、例えば、青光波長450~500nm、緑光波長500~550nm及び赤光波長630~680nmを選択することにより、ヘッドアップディスプレイを実現することができる。同様に、A1曲線に比べて、A3曲線におけるP偏光反射率は比較的に低いである。昼間に太陽光の下で表示画像がはっきりと見えるために、投影光源1の発光輝度を補強することにより補償を行うことができる。これから分かるように、A3曲線と肉眼のP偏光波長に対する敏感性および快適性とに従って、好ましくは、前記透明ナノ膜3が三つの金属層(例えば、銀層)を備える場合、前記投影光源1が発生するP偏光11の色は、赤色、緑色および青色から少なくとも一つ選択され、例えば、フルカラー表示を実現できる、赤色、緑色および青色の組み合わせである。)」 (5) 14ページ19行~16ページ5行、17ページ7行~18ページ7行、図6、7(【0039】~【0048】、【0053】~【0058】) 「 [図:0001434430000053.jpg] [図:0001434430000054.jpg] [図:0001434430000055.jpg] (【0039】 本発明の発想を一層詳しく説明し且つ説得力を一層持って支持するために、若干の実施例を挙げて詳しく説明する。 (実施例1~3および比較例1) 【0040】 福耀ガラス産業グループ株式会社により製造された、厚さが2.1ミリメートルであるソ-ダ石灰珪酸塩フロートガラス(soda lime silicate float glass)を基板として、切断、エッジング、洗浄および乾燥などの工程を経て、マグネトロンスパッタリングラインで成膜する。誘電体層および銀層は、以下に示される構造のように基板に形成される。) [図:0001434430000056.jpg] (【0041】 実施例1:ガラス基板/Si3N4 30nm/TiO2 5nm/ZnO 8nm/Ag 11.9nm/NiCrOx 3nm/ZnSnMgOx 38nm/Si3N4 5nm; 【0042】 実施例2:ガラス基板/Si3N4 23nm/ZnO 7nm/Ag 10nm/NiCrOx 2nm/ZnO 7nm/Si3N4 63nm/ZnO 7nm/Ag 10nm/NiCrOx 2nm/ZnO 8nm/ZnSnMgOx 31nm/Si3N4 4nm; 【0043】 実施例3:ガラス基板/Si3N4 22nm/ZnO 7nm/Ag 10nm/Zr 1nm/ZnO 7nm/Si3N4 58nm/ZnO 7nm/Ag 10nm/Zr 1nm/ZnO 7nm/Si3N4 62nm/ZnO 7nm/Ag 10nm/Zr 1nm/ZnO 9nm/ZnSnMgOx 30nm/Si3N4 4nm。) [図:0001434430000057.jpg] (【0044】 成膜が完了した後、このガラスは、相手基板としての、福耀ガラス産業グループ株式会社により製造された、厚さが2.1ミリメートルであるもう一つのソ-ダ石灰珪酸塩フロートガラスと共に、自動車ガラス高温成型プロセスで成型される。そして、これらのガラスは、厚さが0.76ミリメートルである無色PVB膜を間に挟み、高圧オートクレーブ内に高圧で合わせられる。他のプロセス、例えば、アクセサリの装着を経た後、透明ナノ膜を備える合わせガラスが仕上げられる。) [図:0001434430000058.jpg] (【0045】 比較例1は、めっき層がない普通のフラット合わせガラスであり、構造は、二つの2.1ミリメートルのフロートガラスの間に一つの0.76ミリメートルの無色PVB膜が挟まれたものである。成膜以外、他のプロセスは上記と同じである。) [図:0001434430000059.jpg] (【0046】 実施例1~3および比較例1のヘッドアップディスプレイシステムの投影光源は、LEDバックライト付きの、P偏光を発光できるTFT-LCD投影機であり、複数の反射ミラーを備え、投影機の位置および出射光の入射方向は、観察者が見る表示画像が最もはっきりするように調節される。比較例1のガラスで結像する場合、結像輝度を向上させるために、投影機とガラスとの間に、偏光方向をs偏光方向に変えるための樹脂製の1/2波長板が添付される。実施例1~3においては、相変わらず、P偏光が入射する。実施例1~3および比較例1のヘッドアップディスプレイシステムにおいては、投影光源から発光された偏光はブリュースター角θBである57度で入射する。他の設定パラメーターおよび表示画像品質は、表1に示される。) [図:0001434430000060.jpg] [図:0001434430000061.jpg] 」 (【0047】 【表1】 [図:0001434430000062.jpg] 【0048】 表1から分かるように、実施例1~3のヘッドアップディスプレイシステムは、二重像を防止することができ、且つ、画像をはっきりと表示することができる。さらに、P偏光は、入射角が57度(ブリュースター角θB)から離れてもよく、例えば、実施例1においては、P偏光の入射角が68度に増加してもよいが、画像が依然としてはっきりしており、ゴースト画像が肉眼で見えない。実施例2および実施例3においては、P偏光の入射角が62度に設定されてもよいが、画像が依然としてはっきりしており、ゴースト画像が肉眼で見えない。) …(中略)… 「 [図:0001434430000063.jpg] ((実施例7~8) 【0053】 実施例7および8は、それぞれ、実施例2および3とほぼ同様であるが、図6に示すように、前記P偏光の入射領域、つまり、ヘッドアップディスプレイシステムの投影表示領域に補助膜5が増設されるという点で、相違している。前記補助膜5は、一つの厚さが50μmであるPET膜と該PET膜に形成された補助透明ナノ膜52とを備える。) [図:0001434430000064.jpg] (【0054】 実施例7における補助膜5の補助透明ナノ膜52の構造:PET膜/ZnSnOx 27nm/ZnO 7nm/Ag 10nm/Ti 1nm/ZnO 8nm/ZnSnOx 21nm; 【0055】 実施例8における補助膜5の補助透明ナノ膜52の構造:PET膜/ZnSnOx 26nm/ZnO 10nm/Ag 10nm/Ti 1nm/ZnO 9nm/ZnSnOx 39nm。)」 「 [図:0001434430000065.jpg] 」 「 [図:0001434430000066.jpg] [図:0001434430000067.jpg] (【0056】 実施例7~8のヘッドアップディスプレイシステムにおいては、投影光源から発光されたP偏光はブリュースター角θBである57度で入射し、且つ、P偏光はフルカラー表示である。自然光が垂直入射角と60度の角とのそれぞれで入射する場合の関連技術パラメーターは、表3に示される。また、図7は、実施例7~8のヘッドアップディスプレイシステムのP偏光反射率スペクトルを示す。)」 「 [図:0001434430000068.jpg] 」 「 [図:0001434430000069.jpg] (【0057】 【表3】 [図:0001434430000070.jpg] ) [図:0001434430000071.jpg] (【0058】 表3および図7から分かるように、実施例7~8のヘッドアップディスプレイシステムは、二重像を防止することができ、且つ、フルカラー画像をはっきりと表示することができる。且つ、補助膜の、一つの銀層を備えた透明ナノ膜の構造および厚さを最適化することにより、補助膜が設置された領域および補助膜がない領域には、色がほぼ一致する。また、補助膜がない領域に比べて、補助膜が設置された領域は、可視光透過率(TL%)が僅かに低減されるが、P偏光反射率が(RL%)が二倍に増加するため、投影画像が一層はっきりする。)」 2 引用文献1に記載された事項から当業者が把握できる事項 引用文献1の【0053】の「実施例7および8は、それぞれ、実施例2および3とほぼ同様であるが、図6に示すように、前記P偏光の入射領域、つまり、ヘッドアップディスプレイシステムの投影表示領域に補助膜5が増設されるという点で、相違している。」との記載を参酌しつつ、【0057】に記載された【表3】の記載を参酌すると、実施例3について、次のことが読み取れる(以下「認定事項1」という。)。 <認定事項1> 「実施例3は、自然光が60度で入射した場合の可視光透過率(TL%)が66.77%であり、P偏光が57度で入射した場合の可視光反射率(RL%)が4.55%であること。」 【表3】 [図:0001434430000072.jpg] 3 引用発明の認定 前記1に摘記した引用文献1の記載事項及び前記2において認定した認定事項1を総合すると、引用文献1には、実施例3(図1及び図2B)のヘッドアップディスプレイシステムに係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる日本語公報の記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「ゴースト画像なしにはっきりとし、多色表示を実現し、且つ、構造およびプロセスが簡単で、コストが低いヘッドアップディスプレイシステムであって、(【0010】) 投影光源および合わせガラスを備え、前記合わせガラスが、内側ガラス板と、外側ガラス板と、内側ガラス板と外側ガラス板との間に挟まれた中間膜と、を備え、 透明ナノ膜をさらに備え、前記透明ナノ膜が少なくとも二つの誘電体層及び少なくとも一つの金属層を備え、それぞれの金属層が二つの誘電体層の間に位置し、 前記投影光源がP偏光を発生するためのものであり、 前記P偏光は、前記内側ガラス板における前記中間膜から離れた方の表面に入射し、入射角が42~72度であり、 前記透明ナノ膜が、入射した前記P偏光の一部を反射でき、(【0011】) 前記金属層が銀層または銀を含む合金層であり、(【0012】) 前記透明ナノ膜3は、外側ガラス板22における中間膜23に接触した表面222、即ち、第四表面222に設置され、(【0030】) 前記透明ナノ膜3は、少なくとも二つの誘電体層及び少なくとも一つの金属層を備え、更にバリア層及び/又は保護層等を備えてもよく、それぞれの金属層が二つの誘電体層の間に位置するものであり、(【0032】) 三つの銀層が含まれており、(【0032】) 誘電体層および銀層は、ガラス基板/Si3N4 22nm/ZnO 7nm/Ag 10nm/Zr 1nm/ZnO 7nm/Si3N4 58nm/ZnO 7nm/Ag 10nm/Zr 1nm/ZnO 7nm/Si3N4 62nm/ZnO 7nm/Ag 10nm/Zr 1nm/ZnO 9nm/ZnSnMgOx 30nm/Si3N4 4nmという構造で基板に形成されるものであり、(【0040】、【0043】) 自然光が60度で入射した場合の可視光透過率(TL%)が66.77%であり、P偏光が57度で入射した場合の可視光反射率(RL%)が4.55%である、(「認定事項1」) ヘッドアップディスプレイシステム」 <参考図(図1)> [図:0001434430000073.jpg] 第6 引用文献3、4の記載事項及び周知技術Aの認定 1 引用文献3、4の記載事項 (1) 引用文献3に記載された事項 当審拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用した文献であって、最先の優先日前に日本国内又は外国において発行された引用文献3(特開2017-132666号公報)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付したものであり、以下ほかの引用文献についても同様である。 「【0001】 本発明は、ガラス表面に低放射膜を有する低放射ガラスに関するものであり、特に透過色調がグレー色調の低放射ガラスに関するものである。」 「【0022】 1:低放射ガラス 本発明の低放射膜の好適な実施形態を図1に示した。低放射膜2はガラス板1上に形成されるものであり、通常のガラス板1よりも放射率が低いものであればよい。…(中略)… 【0035】 第1の誘電体層11aは第1のAg層12aの下地層として作用し、第1のAg層12aとガラス板1との密着性を向上させる。(後略) 【0036】 第2の誘電体層11bは、第1のバリア層13aの上に形成されるものであり、低放射膜2の反射色調や日射透過率に大きく影響を及ぼす層である。…(中略)… 【0037】 第3の誘電体層11cは、第2のバリア層13bの上に形成されるものであり、他の誘電体層と相互に作用し合い、反射色調や日射透過率を調整する層である。該第3の誘電体層11cは、第1の誘電体層11aと同様、ZnO、SnO2、ZnSnO、Si3N4及びTiO2を用いるのが好ましい。また、第3の誘電体層11cは2層以上とするのが好ましく、最も表面側に形成する最上層14は、低放射膜2の耐湿性や耐久性を向上させる膜を用いるのが望ましい。例えば、Al、Si、及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物、窒化物、又は酸窒化物の透明な薄膜が挙げられる。また、物理膜厚を3~20nmとすれば耐湿性や耐久性が向上するため好ましい。」 「【図1】 [図:0001434430000074.jpg] 」 (2) 引用文献4に記載された事項 当審拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用した文献であって、最先の優先日前に日本国内又は外国において発行された引用文献4(特表2005-516818号公報)には、次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は一般的には多層被覆に関し、そして、一態様においては、反射率、熱安定性、機械的耐久性および化学的耐久性の諸特性のような領域における改善を示す多層の日射(太陽光)コントロール被覆(multi-layered solar control coating)に関する。 …(中略)… 【0013】 図1は被覆物品10を図解しており、それは基体12を有し、基体12の少なくとも一部分の上に、たとえば、基体12の主表面の少なくとも一部分の上に、付着された本発明の多層被覆14をもつ。 …(中略)… 【0017】 被覆14は基体12の主表面の少なくとも一部分の上に付着されたベース層すなわち第一の反射防止層16を含む。…(中略)… 【0019】 第一の赤外(IR)反射フィルム24は第一の反射防止層16の上に付着されることができる。…(中略)… 【0020】 第一のプライマーフィルム26が第一のIR反射フィルム24の上に付着されることができる。…(中略)… 【0021】 第二の反射防止層30は第一のプライマーフィルム26の上に付着されることができる。…(中略)… 【0022】 第二のIR反射フィルム40は第二の反射防止層30の上に付着されることができる。…(中略)… 【0023】 第二のプライマーフィルム42は第二のIR反射フィルム40の上に付着されることができる。…(中略)… 【0024】 第三の反射防止層46は第二のプライマーフィルム42の上に付着されることができる。…(中略)… 【0025】 従来の日射コントロール被覆と違って、本発明の被膜スタックは第三の反射防止層46の上に付着された第三のIR反射フィルム58をさらに含んでいる。…(中略)… 【0026】 第三のプライマーフィルム60は第三の赤外反射フィルム58の上に付着されることができる。…(中略)… 【0027】 第四の反射防止層66は第三のプライマーフィルム60の上に付着されることができる。…(中略)… 【0028】 保護オーバーコート74は機械的および化学的攻撃に抗して保護を与えるのを助けるために第四の反射防止層66の上に付着されることができる。一態様においては、保護オーバーコート74は約25Å~100Åの範囲、たとえば、40Å~60Å、たとえば、50Å、の厚さを有する、二酸化チタンまたは酸化ジルコニウムのような金属酸化物であることができる。別の態様においては、保護オーバーコート74は10Å~100Åの範囲、たとえば、25Å~75Å、たとえば、50Å、の厚さを有するチタン金属であることができる。…(中略)… 【0029】 当業者によって認識されるであろうように、本発明の被覆14は積層物品および非積層物品たとえば単一プライのどちらにも利用できる。・・・(中略)・・・物品は乗物(たとえば、自動車または航空機)用透明体であることができる。ここに使用されるとき、用語「自動車用透明体」は自動車のフロントガラス(windshield)、サイドライト、バックライト、ムーンルーフ(moon roof)、サンルーフ(sunroof)などを称している。(後略)」 「【図1】 [図:0001434430000075.jpg] 」 2 周知技術Aの認定 前記1に摘記した引用文献3、4の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、最先の優先日前において周知の技術(以下「周知技術A」という。)であると認められる。 <周知技術A> 「多層光学干渉膜において、機械的及び化学的に保護して耐久性を持たせるために、最上層に保護膜を設けること。」 第7 本願発明と引用発明の対比 1 対比分析 本願発明は、「金属機能レイヤ」が二つあるものと三つあるものの和集合になっているところ、このうち「金属機能レイヤ」が三つあるものについて対比する。 (1) 構成Xの観点(ディスプレイシステム) ア 構成Xは、「画像を投影するディスプレイシステム」に係る発明であることを特定するものである。 イ 引用発明は、「ゴースト画像なしにはっきりとし、多色表示を実現し、且つ、構造およびプロセスが簡単で、コストが低いヘッドアップディスプレイシステム」であって、「投影光源」を備えるものであるから、本願発明にいうところの「画像を投影するディスプレイシステム」であるといえる。 したがって、本願発明は引用発明と「画像を投影するディスプレイシステム」に係る発明である点において一致する。 (2) 構成Aの観点(積層体) ア 構成Aは、「改良されたP偏光放射線反射性を有する積層体」を備えることである。 イ(ア) 引用発明における「合わせガラス」は、「内側ガラス板と、外側ガラス板と、内側ガラス板と外側ガラス板との間に挟まれた中間膜と、を備え」、「透明ナノ膜をさらに備え[る]」ものであるから、本願発明にいうところの「積層体」であるといえる。 (イ) そして、引用発明においては、「前記透明ナノ膜が、入射した前記P偏光の一部を反射でき」、「ゴースト画像なしにはっきりとし[た]「ヘッドアップディスプレイシステム」となるから、引用発明における「合わせガラス」は、本願発明にいうところの「改良されたP偏光放射線反射性を有する積層体」であるといえる。 ウ したがって、本願発明は引用発明と、構成Aの観点である次の点において一致する。 「改良されたP偏光放射線反射性を有する積層体」を備える点。 (3) 構成Aaの観点(第1の層) ア 構成Aaは、「前記積層体の外面を備える第1の面及び前記第1の面に対向する第2の面を備える第1の層」を備えることである。 イ 引用発明における「合わせガラス」(「積層体」に相当する。)の構成要素である「外側ガラス板」が「外面を備える第1の面及び前記第1の面に対向する第2の面を備える」ことは明らかである。 ウ したがって、本願発明は引用発明と、構成Aaの観点である次の点において一致する。 「前記積層体の外面を備える第1の面及び前記第1の面に対向する第2の面を備える第1の層」を備える点。 (4) 構成Abの観点(第2の層) ア 構成Abは、「前記第2の面に隣接する第3の面及び前記第3の面に対向し且つ前記積層体の内面を備える第4の面を備える第2の層」を備えることである。 イ 前記(3)の検討結果も踏まえると、引用発明における「合わせガラス」の構成要素である「内側ガラス板」が「前記第2の面に隣接する第3の面及び前記第3の面に対向し且つ前記積層体の内面を備える第4の面を備える」ことは明らかである。 ウ したがって、本願発明は引用発明と、構成Abの観点である次の点において一致する。 「前記第2の面に隣接する第3の面及び前記第3の面に対向し且つ前記積層体の内面を備える第4の面を備える第2の層」を備える点。 (5) 構成Acの観点(中間レイヤ) ア 構成Acは、「前記第1の層と前記第2の層との間に位置付けられる中間レイヤ」を備えることである。 イ 前記(3)及び(4)の検討結果も踏まえると、引用発明における「内側ガラス板と外側ガラス板との間に挟まれた中間膜」は、本願発明における「前記第1の層と前記第2の層との間に位置付けられる中間レイヤ」に相当する。 したがって、本願発明は引用発明と、構成Acの観点である次の点において一致する。 「前記第1の層と前記第2の層との間に位置付けられる中間レイヤ」を備える点。 (6) 構成Adの観点(改良P偏光反射性コーティング) ア 構成Adは、「前記第1の層及び/又は前記第2の層の面の少なくとも1つにおける少なくとも一部上に位置付けられる改良P偏光反射性コーティング」を備えることである。 イ 引用発明における「外側ガラス板22における中間膜23に接触した表面222、即ち、第四表面222に設置され[た]」「透明ナノ膜3」は、「入射した前記P偏光の一部を反射でき[る]」ものであることから、前記(2)から(4)の検討結果も踏まえると、本願発明における「前記第1の層及び/又は前記第2の層の面の少なくとも1つにおける少なくとも一部上に位置付けられる改良P偏光反射性コーティング」に相当する。 したがって、本願発明は引用発明と、構成Adの観点である次の点において一致する。 「前記第1の層及び/又は前記第2の層の面の少なくとも1つにおける少なくとも一部上に位置付けられる改良P偏光反射性コーティング」を備える点。 (7) 構成Ad0の観点(ベースレイヤ) ア 構成Ad0は、「改良P偏光反射性コーティング」が「前記面の少なくとも1つの一部上に位置付けられるベースレイヤ」を備えることである。 イ 引用発明における「透明ナノ膜3」(「改良P偏光反射性コーティング」に相当する。)の構成要素である「誘電体層および銀層」のうち、「ガラス基板」の直上に積層された「Si3N4 22nm/ZnO 7nm」は、前記(6)の検討結果も踏まえると、本願発明における「改良P偏光反射性コーティング」のうちの「前記面の少なくとも1つの一部上に位置付けられるベースレイヤ」に相当する。 したがって、本願発明は引用発明と、構成Ad0の観点である次の点において一致する。 「改良P偏光反射性コーティング」が「前記面の少なくとも1つの一部上に位置付けられるベースレイヤ」を備える点。 (8) 構成Ad11の観点(第1金属機能レイヤ) ア 構成Ad11は、「改良P偏光反射性コーティング」が「前記ベースレイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第1金属機能レイヤ」を備えることである。 イ 引用発明における、前記(7)において検討した「Si3N4 22nm/ZnO 7nm」(「ベースレイヤ」に相当する。)の上に積層される「Ag 10nm」は、本願発明における「前記ベースレイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第1金属機能レイヤ」に相当する。 したがって、本願発明は引用発明と、構成Ad11の観点である次の点において一致する。 「改良P偏光反射性コーティング」が「前記ベースレイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第1金属機能レイヤ」を備える点。 (9) 構成Ad21の観点(第1犠牲金属レイヤ) ア 構成Ad21は「改良P偏光反射性コーティング」が「前記第1金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置づけられる第1犠牲金属レイヤ」を備えることである。 イ 引用発明における、前記(8)において検討した「Ag 10nm」(「第1金属機能レイヤ」に相当する。)の上に積層される「Zr 1nm」は、本願発明における「前記第1金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置づけられる第1犠牲金属レイヤ」に相当する。 したがって、本願発明は引用発明と、構成Ad21の観点である次の点において一致する。 「改良P偏光反射性コーティング」が「前記第1金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置づけられる第1犠牲金属レイヤ」を備える点。 (10) 構成Ad31の観点(第1位相調節レイヤ) ア 構成Ad31は、「改良P偏光反射性コーティング」が「前記第1犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第1位相調節レイヤ」を備えることである。 イ 引用発明における、前記(9)において検討した「Zr 1nm」(「第1犠牲金属レイヤ」に相当する。)の上に積層される「ZnO 7nm/Si3N4 58nm/ZnO 7nm」は、本願発明における「前記第1犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第1位相調節レイヤ」に相当する。 したがって、本願発明は引用発明と、構成Ad31の観点である次の点において一致する。 「改良P偏光反射性コーティング」が「前記第1犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第1位相調節レイヤ」を備える点。 (11) 構成Ad12の観点(第2金属機能レイヤ) ア 構成Ad12は、「改良P偏光反射性コーティング」が「前記第1位相調節レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2金属機能レイヤ」を備えることである。 イ 引用発明における、前記(10)において検討した「ZnO 7nm/Si3N4 58nm/ZnO 7nm」(「第1位相調節レイヤ」に相当する。)の上に積層される「Ag 10nm」は、本願発明における「前記第1位相調節レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2金属機能レイヤ」に相当する。 したがって、本願発明は引用発明と、構成Ad12の観点である次の点において一致する。 「改良P偏光反射性コーティング」が「前記第1位相調節レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2金属機能レイヤ」を備える点。 (12) 構成Ad22の観点(第2犠牲金属レイヤ) ア 構成Ad22は、「改良P偏光反射性コーティング」が「前記第2金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2犠牲金属レイヤ」を備えることである。 イ 引用発明における、前記(11)において検討した「Ag 10nm」」(「第2金属機能レイヤ」に相当する。)の上に積層される「Zr 1nm」は、本願発明における「前記第2金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2犠牲金属レイヤ」に相当する。 したがって、本願発明は引用発明と、構成Ad22の観点である次の点において一致する。 「改良P偏光反射性コーティング」が「前記第2金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2犠牲金属レイヤ」を備える点。 (13) 構成Ad4の観点(第2位相調節レイヤ等) ア 構成Ad4は、「改良P偏光反射性コーティング」が「前記第2犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2位相調節レイヤ、前記第2位相調節レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第3金属機能レイヤ、及び前記第3金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第3犠牲金属レイヤ」を備えることである。 イ 引用発明における、前記(12)において検討した「Zr 1nm」(「第2犠牲金属レイヤ」に相当する。)の上に積層される「ZnO 7nm/Si3N4 62nm/ZnO 7nm/Ag 10nm/Zr 1nm」は、本願発明における「前記第2犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2位相調節レイヤ、前記第2位相調節レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第3金属機能レイヤ、及び前記第3金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第3犠牲金属レイヤ」に相当する。 したがって、本願発明は引用発明と、構成Ad4の観点である次の点において一致する。 「改良P偏光反射性コーティング」が「前記第2犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2位相調節レイヤ、前記第2位相調節レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第3金属機能レイヤ、及び前記第3金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第3犠牲金属レイヤ」を備える点。 (14) 構成Ad5の観点(トップコートレイヤ) ア 構成Ad5は、「改良P偏光反射性コーティング」が「前記第3犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられるトップコートレイヤ」を備えることである。 イ 引用発明における、前記(13)において検討した「ZnO 7nm/Si3N4 62nm/ZnO 7nm/Ag 10nm/Zr 1nm」」の上に積層される「ZnO 9nm/ZnSnMgOx 30nm/Si3N4 4nm」は、本願発明における「前記第3犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられるトップコートレイヤ」に相当する。 したがって、本願発明は引用発明と、構成Ad5の観点である次の点において一致する。 「改良P偏光反射性コーティング」が「前記第3犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられるトップコートレイヤ」を備える点。 (15) 構成Ad6の観点(オーバーコート) ア 構成Ad6は、「改良P偏光反射性コーティング」が「前記トップコートレイヤの少なくとも一部上に位置付けられるオーバーコートを備える改良P偏光反射性コーティング」を備えることである。 イ 引用発明は、本願発明の構成Ad6に相当する構成を備えていないから、本願発明は、引用発明と構成Ad6の観点において次の点で相違する。 <構成Ad6の観点における相違点> 本願発明においては、「改良P偏光反射性コーティング」が「前記トップコートレイヤの少なくとも一部上に位置付けられるオーバーコート」を備えるのに対して、 引用発明においては、「オーバーコート」に相当する構成を備えない点。 (16) 構成Aeの観点(視感透過率、P偏光放射線の反射率) ア 構成Aeは、「前記積層体が、前記積層体の法線に対して60°の角度で、P偏光放射線を備える、放射線源からの放射線と接触する場合に、標準光源Aにより測定された際に少なくとも70%の視感透過率(LTA)を示し、且つD65光源及び10度視野に基づく検出である10°検知器により測定した際にP偏光放射線の反射率が少なくとも10%である」ことである。 イ 引用発明においては、「自然光が60度で入射した場合の可視光透過率(TL%)が66.77%であり、P偏光が57度で入射した場合の可視光反射率(RL%)が4.55%である」ことを踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 <構成Aeの観点における一致点> 「前記積層体が、前記積層体の法線に対して60°の角度で、P偏光放射線を備える、放射線源からの放射線と接触する場合に、標準光源Aにより測定された際に相当程度の視感透過率(LTA)を示し、且つD65光源及び10度視野に基づく検出である10°検知器により測定した際にP偏光放射線の反射率がディスプレイとして有意な程度である」点。 ウ 本願発明は引用発明と、構成Aeの観点において、次の点において相違する。 <構成Aeの観点における相違点> 本願発明においては、「前記積層体が、前記積層体の法線に対して60°の角度で、P偏光放射線を備える、放射線源からの放射線と接触する場合に、標準光源Aにより測定された際に少なくとも70%の視感透過率(LTA)を示し、且つD65光源及び10度視野に基づく検出である10°検知器により測定した際にP偏光放射線の反射率が少なくとも10%である」のに対して、 引用発明においては、「自然光が60度で入射した場合の可視光透過率(TL%)が66.77%であり、P偏光が57度で入射した場合の可視光反射率(RL%)が4.55%である」点。 (17) 構成Bの観点(放射線源) ア 構成Bは、「P偏光放射線を備える放射線を放射する、前記積層体に向けられた放射線源」を備えることである。 イ 引用発明における「P偏光を発生するためのものであ[る]」「投影光源」は、本願発明における「P偏光放射線を備える放射線を放射する、前記積層体に向けられた放射線源」に相当する。 したがって、本願発明は引用発明と、構成B観点である次の点において一致する。 「P偏光放射線を備える放射線を放射する、前記積層体に向けられた放射線源」を備える点。 (18) 構成AdBの観点(各層の厚さの数値範囲) ア 構成AdBは、「前記改良P偏光反射性コーティングの一部である3つの金属機能レイヤと前記改良P偏光反射性コーティングがあり、以下の厚さを示[す] [図:0001434430000076.jpg] 」ことである。 イ 引用発明においては、「透明ナノ膜3」の積層構造は「Si3N4 22nm/ZnO 7nm/Ag 10nm/Zr 1nm/ZnO 7nm/Si3N4 58nm/ZnO 7nm/Ag 10nm/Zr 1nm/ZnO 7nm/Si3N4 62nm/ZnO 7nm/Ag 10nm/Zr 1nm/ZnO 9nm/ZnSnMgOx 30nm/Si3N4 4nm」であるから、これを用いて計算すると、次のとおりとなる。単位はオングストロームである。なお、本願発明の構成AdBの要件を満たさないものに下線を付した。 ベースレイヤ 290 第1金属機能レイヤ 100 第1位相調節レイヤ 720 第2金属機能レイヤ 100 第2位相調節レイヤ 760 第3金属機能レイヤ 100 トップコートレイヤ 430 オーバーコート層 0(無し) 全厚さ 2530 全金属厚さ 330 全位相調節厚さ 1480 全ベース及び位相調節厚さ 1770 全位相調節及びトップコート厚さ 1910 全位相調節、ベース及びトップコート厚さ 2200 ウ そうすると、構成AdBの観点における本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下の(ア)及び(イ)に示すとおりである。 (ア) 構成AdBの観点における一致点 前記改良P偏光反射性コーティングの一部である3つの金属機能レイヤと前記改良P偏光反射性コーティングがあり、以下の厚さの条件を満たす点(本願発明の構成の数値範囲の外側にある数値に下線を引いた。)。 厚さ(Å(オングストローム) ベースレイヤ 290-500 第1金属機能レイヤ 50-150 第1位相調節レイヤ 650-950 第2金属機能レイヤ 50-125 第2位相調節レイヤ 550-900 第3金属機能レイヤ 55-175 トップコートレイヤ 375-450 全厚さ 2530-3500 全金属厚さ 200-350 全位相調節厚さ 1300-1700 全ベース及び位相調節厚さ 1725-2175 全位相調節及びトップコート厚さ 1600-2100 全位相調節、ベース及びトップコート厚さ 2000-2600 (イ) 構成AdBの観点における相違点 本願発明においては、ベースレイヤの厚さが400-500(Å(オングストローム))であり、オーバーコートの厚さがが500-900Åであり、全厚さが3100-3500Åであるのに対して、 引用発明においては、ベースレイヤの厚さは290(Å(オングストローム))であり、オーバーコートは無く、全厚さが2530Åである点。 (19) 構成AdCの観点(ベースレイヤ、第1位相調整レイヤ) ア 構成AdCのうち「変形(B)」に係るものは、「前記ベースレイヤは、2つの異なる膜から形成され、前記第1位相調整レイヤは、酸化亜鉛/ZnSnOx/酸化亜鉛を備える3つの膜から形成され、前記第2位相調整レイヤは、2つの異なる膜から形成される」ことである。 イ(ア) 前記(7)において検討したとおり、引用発明における、「ガラス基板」の直上に積層された「Si3N4 22nm/ZnO 7nm」は、本願発明における「ベースレイヤ」に相当するところ、Si3N4層及びZnO層の二つの異なる膜から形成されるから、本願発明と引用発明は次の点において一致する。 「前記ベースレイヤは、2つの異なる膜から形成され[る]」点。 (イ) 前記(10)において検討したとおり、引用発明における、前記(9)において検討した「Zr 1nm」の上に積層される「ZnO 7nm/Si3N4 58nm/ZnO 7nm」は、本願発明における「第1位相調節レイヤ」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明は、「前記第1位相調整レイヤ」が「3つの膜から形成され[る]」点において共通し、 前記「3つの膜」が、本願発明においては、「酸化亜鉛/ZnSnOx/酸化亜鉛」であるのに対して、引用発明においては「ZnO/Si3N4/ZnO」である点において相違する。 (ウ) 前記(13)において検討したとおり、引用発明における、前記(12)において検討した「Zr 1nm」(「第2犠牲金属レイヤ」に相当する。)の上に積層される「Si3N4 62nm/ZnO 7nm」は、本願発明における「第2位相調節レイヤ」に相当するところ、Si3N4層及びZnO層の二つの異なる膜から形成されるから、本願発明と引用発明は次の点において一致する。 「前記第2位相調整レイヤは、2つの異なる膜から形成される」点。 。 ウ 前記イの検討結果をまとめると、構成AdCの観点における本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下の(ア)及び(イ)に示すとおりである。 (ア) 構成AdCの観点における一致点 「前記ベースレイヤは、2つの異なる膜から形成され、 前記第1位相調整レイヤが3つの膜から形成され、 前記第2位相調整レイヤは、2つの異なる膜から形成される」点。 (イ) 構成AdCの観点における相違点 「前記第1位相調整レイヤ」を形成する「3つの膜」が、 本願発明においては、「酸化亜鉛/ZnSnOx/酸化亜鉛」であるのに対して、 引用発明においては「ZnO/Si3N4/ZnO」である点。 2 一致点及び相違点 前記1の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ(1)及び(2)に示すとおりである。 (1) 一致点 「画像を投影するディスプレイシステムであって、 改良されたP偏光放射線反射性を有する積層体であって、 前記積層体の外面を備える第1の面及び前記第1の面に対向する第2の面を備える第1の層、 前記第2の面に隣接する第3の面及び前記第3の面に対向し且つ前記積層体の内面を備える第4の面を備える第2の層、 前記第1の層と前記第2の層との間に位置付けられる中間レイヤ、並びに 前記第1の層及び/又は前記第2の層の面の少なくとも1つにおける少なくとも一部上に位置付けられる改良P偏光反射性コーティングであって、 前記面の少なくとも1つの一部上に位置付けられるベースレイヤ、 前記ベースレイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第1金属機能レイヤ、 前記第1金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置づけられる第1犠牲金属レイヤ、 前記第1犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第1位相調節レイヤ、 前記第1位相調節レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2金属機能レイヤ、 前記第2金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2犠牲金属レイヤ、 前記第2犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第2位相調節レイヤ、前記第2位相調節レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第3金属機能レイヤ、及び前記第3金属機能レイヤの少なくとも一部上に位置付けられる第3犠牲金属レイヤ、及び、 前記第3犠牲金属レイヤの少なくとも一部上に位置付けられるトップコートレイヤを備える改良P偏光反射性コーティングを備え、 前記積層体が、前記積層体の法線に対して60°の角度で、P偏光放射線を備える、放射線源からの放射線と接触する場合に、標準光源Aにより測定された際に相当程度の視感透過率(LTA)を示し、且つD65光源及び10度視野に基づく検出である10°検知器により測定した際にP偏光放射線の反射率がディスプレイとして有意な程度である、前記積層体と、 P偏光放射線を備える放射線を放射する、前記積層体に向けられた放射線源とを備え、 前記改良P偏光反射性コーティングの一部である3つの金属機能レイヤと前記改良P偏光反射性コーティングがあり、以下の厚さを示し、 ベースレイヤ 290-500 第1金属機能レイヤ 50-150 第1位相調節レイヤ 650-950 第2金属機能レイヤ 50-125 第2位相調節レイヤ 550-900 第3金属機能レイヤ 55-175 トップコートレイヤ 375-450 全厚さ 2530-3500 全金属厚さ 200-350 全位相調節厚さ 1300-1700 全ベース及び位相調節厚さ 1725-2175 全位相調節及びトップコート厚さ 1600-2100 全位相調節、ベース及びトップコート厚さ 2000-2600 前記ベースレイヤは、2つの異なる膜から形成され、 前記第1位相調整レイヤが3つの膜から形成され、 前記第2位相調整レイヤは、2つの異なる膜から形成される ディスプレイシステム」の発明である点。 (2) 相違点 ●本願発明においては、 <部分相違点1> 「前記トップコートレイヤの少なくとも一部上に位置付けられる、オーバーコート」を備え、 <部分相違点2> オーバーコートの厚さが500-900Åであり、 ベースレイヤの厚さが400-500(Å(オングストローム))であり、 「前記第1位相調整レイヤ」を形成する「3つの膜」が、「酸化亜鉛/ZnSnOx/酸化亜鉛」であり、 全厚さが3100-3500Åであり、 <部分相違点3> 「前記積層体が、前記積層体の法線に対して60°の角度で、P偏光放射線を備える、放射線源からの放射線と接触する場合に、標準光源Aにより測定された際に少なくとも70%の視感透過率(LTA)を示し、且つD65光源及び10度視野に基づく検出である10°検知器により測定した際にP偏光放射線の反射率が少なくとも10%である」 のに対して、 ●引用発明においては、 <部分相違点1に対応する引用発明の構成> オーバーコートは無く、 <部分相違点2に対応する引用発明の構成> ベースレイヤの厚さは290(Å(オングストローム))であり、 「前記第1位相調整レイヤ」を形成する「3つの膜」が、「ZnO/Si3N4/ZnO」であり、 全厚さが2530Åであり、 <部分相違点3に対応する引用発明の構成> 自然光が60度で入射した場合の可視光透過率(TL%)が66.77%であり、P偏光が57度で入射した場合の可視光反射率(RL%)が4.55%である点。 第8 判断 1 相違点の想到容易性について (1) 部分相違点1(オーバーコートを設けること)について 引用発明は、「前記透明ナノ膜は、更にバリア層及び/又は保護層等を備えてもよく、(【0032】)」と保護層を備えることが想定されており、しかも、多層光学干渉膜において、機械的及び化学的に保護して耐久性を持たせるために、最上層に保護膜を設けることは、周知の技術である(前記「周知技術A」参照)。 したがって、引用発明において、当該周知技術Aを採用して、保護膜(本願発明の「オーバーコート」に相当する。)を設けることは、当業者には自明の設計上の選択肢にすぎない。 (2) 部分相違点3について 前期第7の2(2)において認定した相違点に係る本願発明の構成のうち、部分相違点3である「前記積層体が、前記積層体の法線に対して60°の角度で、P偏光放射線を備える、放射線源からの放射線と接触する場合に、標準光源Aにより測定された際に少なくとも70%の視感透過率(LTA)を示し、且つD65光源及び10度視野に基づく検出である10°検知器により測定した際にP偏光放射線の反射率が少なくとも10%である」ことは、引用発明にも共通する自明の課題を物理学的又は光学的に表現したものにすぎず、自明の望ましい仕様を特定したにすぎないから、当業者が容易に想到し得た設計上の事項というべきであり、かかる特定をもって進歩性を認めることはできない。 (3) 部分相違点2について 引用発明においては、誘電体層(「第1位相調整レイヤ」に相当する。)を形成する「3つの膜」が、「ZnO/Si3N4/ZnO」であるところ、引用文献1の【0032】に誘電体層の材料として「ZnSnOx」も示唆されているように「ZnSnOx」は透明光学材料として周知のものであり、かつ、ZnとSnとの組成比を調整することにより屈折率の調整が可能となることから、引用発明において、「Si3N4」を「ZnSnOx」に代えたもの、すなわち、誘電体層(「第1位相調整レイヤ」に相当する。)を形成する「3つの膜」を「ZnO(酸化亜鉛)/ZnSnOx/ZnO(酸化亜鉛)」としたものは、自明の設計変更上の選択肢にすぎない。 そして、引用発明は、光の干渉効果を用いた光学干渉多層膜であるから、前記アの自明の課題を解決するために光の位相に関連する屈折率のほか各層の厚さを調整すべきことは当業者に自明であり、前記(1)において採用した保護膜(「オーバーコート」に相当する。)及び引用発明における「ベースレイヤ」に相当する膜の厚さを(したがって「全体厚さ」も)好適化することは、当業者にとっては、設計活動にほかならない。 また、部分相違点2は、部分相違点3の目的・効果を達成するための技術手段を特定しようとするものであるが、十分条件にはなっていない。なぜならば、部分相違点3に係る「視感透過率(LTA)」及び「P偏光放射線の反射率」を達成するためには、本願発明に係る積層体は、光の干渉効果を用いているものであるから、各層の屈折率及び厚さが厳密に特定されなければならないところ、本願発明の特定は、各層の屈折率を特定するには十分な特定ではなく、各層の厚さはかなりの幅を持っているからである。 以上のとおりであるから、部分相違点2は、設計事項としてしか評価できないものであり、部分相違点2の特定をもって進歩性を認めることはできない。 (4) 総合検討 前記(1)~(3)において検討したとおり、部分相違点1~3は、いずれも設計上の事項としてしか評価できないものである。 そして、本願発明の効果としては、本願発明の構成が奏するものとして、当業者が予測することが困難な効果であって、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 請求人の主張について (1) 請求人の主張について(その1) ア 請求人は、令和7年6月30日提出の意見書において、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、本件補正発明で特定される視感透過率と反射率特性を達成するために使用される非常に詳細な構造を有していること、及び、本件補正発明で特定される視感透過率と反射率特性の両方を達成するのは本件補正発明のみであることを主張している。 イ 請求人の上記主張は、補正却下した請求項の記載に基づくものであって、本願発明に対する主張であるとは認めることができないから、前記1(4)の結論を左右するものではない。 また、前記1(2)において説示したとおり、本願発明は、各層の屈折率及び厚さの特定が本件補正発明で特定される視感透過率と反射率特性の両方を達成するための十分条件になっているとはいえないから、本願発明に進歩性を認めることはできない。 (2) 請求人の主張について(その2) ア 請求人は、引用文献1~4には、「3つの膜で形成される第1位相調節レイヤ」である「酸化亜鉛/ZnSnOx/酸化亜鉛」について記載されていない旨、主張する。 イ しかしながら、これが自明な設計上の選択肢であることは、前記1(3)において説示したとおりであるから、請求人の前記主張は、前記1(4)の結論を左右するものではない。 第9 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-004991

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