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特許拒絶査定不服審判

2024-013229

マイクロリング変調器及びその製造方法

審判番号
2024-013229
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-571734
請求日
2024年08月15日
審決日
2026年02月26日
公報発行日
2026年08月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】中興通訊股▲ふん▼有限公司
  • 【請求人代理人】宮田 英毅
  • 【請求人代理人】酒井 宏明
審判長/審判官
  • 審判長 波多江 進
  • 審判官 横井 亜矢子
  • 審判官 吉野 三寛
分類
P18 .121-Z (G02F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-571734「マイクロリング変調器及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年11月25日国際公開、WO2021/233390、令和 5年 6月20日国内公表、特表2023-526109〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本願は、2021年(令和3年)5月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2020年5月21日(以下「優先日」という。)、中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和4年11月21日 :手続補正書の提出 令和5年10月18日付け:拒絶理由通知書 令和6年 1月24日 :意見書、手続補正書の提出 同年 4月10日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月16日 :原査定の謄本の送達) 同年 8月15日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年10月29日付け:前置報告書 2 本願発明について (1) 本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年8月15日に提出された手続補正書の請求項1(なお、同手続補正書は請求項1の内容を変更するものではない。)に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 マイクロリング変調器であって、 少なくとも1つの直導波材と、前記直導波材と互いに結合関係にある少なくとも1つの表面プラズモンマイクロリング共振器とを備え、 前記直導波材は、光信号を伝送するように構成されており、 前記表面プラズモンマイクロリング共振器は、前記表面プラズモンマイクロリング共振器に対応する波長の光信号の強度を変調するように構成されており、 前記互いに結合関係にあるとは、 前記表面プラズモンマイクロリング共振器と前記直導波材と同一の平面にあって既定距離だけ離れており、前記表面プラズモンマイクロリング共振器と前記直導波材とが互いに水平結合関係にある ことを特徴とするマイクロリング変調器。」 (2) 本願発明の分説 検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Cまでに分説する。また、参考図として、本願の【図3】、【図7】、【図8】に部材名を記入したものを掲載する。 <本願発明の分説> X マイクロリング変調器であって、 A 少なくとも1つの直導波材と、 B 前記直導波材と互いに結合関係にある少なくとも1つの表面プラズモンマイクロリング共振器とを備え、 A1 前記直導波材は、光信号を伝送するように構成されており、 B1 前記表面プラズモンマイクロリング共振器は、前記表面プラズモンマイクロリング共振器に対応する波長の光信号の強度を変調するように構成されており、 C 前記互いに結合関係にあるとは、 前記表面プラズモンマイクロリング共振器と前記直導波材と同一の平面にあって既定距離だけ離れており、前記表面プラズモンマイクロリング共振器と前記直導波材とが互いに水平結合関係にある X ことを特徴とするマイクロリング変調器。 <参考図(【図3】)> 「 [図:0001437801000001.jpg] 」 <参考図(【図7】)> 「 [図:0001437801000002.jpg] 」 <参考図(【図8】)> 「 [図:0001437801000003.jpg] 」 (3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願の明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は通信技術の分野に関するものであり、具体的にはマイクロリング変調器及びその製造方法を開示する。 【背景技術】 【0002】 ラック、ボード、モジュール間の光相互接続技術が日増しに成熟するのに伴い、人々は研究目標を徐々にチップ内部の光相互接続に向けるようになってきている。近赤外波長帯でのシリコンの低光損失特性により、絶縁体上シリコンは現在産業界で最も重要なオンチップフォトニクスプラットフォームであり、CMOS技術と互換性があるだけでなく、高屈折率導波材及びさまざまな能動フォトニックデバイス(主にレーザー、変調器と検出器)、受動フォトニックデバイス(カプラ、偏光ビームスプリッタ、波長分割マルチプレクサとデマルチプレクサ、多モード干渉計など)の製造に便利である。 【0003】 変調器は、オンチップ光相互接続の能動コアデバイスとして、低い挿入損失と高い変調帯域幅を満足することを前提に、より小さなデバイス長さで、電気信号の作用下で、光信号に対してより大きな変調深さを実現する必要がある。しかしながら、従来のシリコンマイクロリング変調器のサイズは10マイクロメートル前後であり、デバイスサイズをこれ以上小さくすることはできない。 【0004】 したがって、光信号の損失が小さく且つデバイスのサイズが小さい変調器が強く求められている。」 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明の実施形態の主な目的は、光信号の損失が小さく且つデバイスのサイズが小さい変調器を実現するためのマイクロリング変調器及びその製造方法を提案することである。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記目的を達成するために、本発明の実施形態は、マイクロリング変調器を提供し、前記マイクロリング変調器は、少なくとも1つの直導波材と、前記直導波材と互いに結合関係にある少なくとも1つの表面プラズモンマイクロリング共振器とを備え、前記直導波材は、光信号を伝送するように構成されており、前記表面プラズモンマイクロリング共振器は、前記表面プラズモンマイクロリング共振器に対応する波長の光信号の強度を変調するように構成されている。 【0007】 上記目的を達成するために、本発明の実施形態はさらに、マイクロリング変調器の製造方法を提案し、前記方法は、光信号を伝送するように構成された少なくとも1つの直導波材を製造するステップと、前記直導波材と互いに結合関係にある少なくとも1つの表面プラズモンマイクロリング共振器を製造するステップであって、前記表面プラズモンマイクロリング共振器は、前記表面プラズモンマイクロリング共振器に対応する波長の光信号の強度を変調するように構成されているステップと、を含む。 【0008】 本発明により提案されるマイクロリング変調器及びその製造方法によれば、直導波材と、直導波材と互いに結合関係にある表面プラズモンマイクロリング共振器とを備え、直導波材により光信号を伝搬させ、表面プラズモンマイクロリング共振器は、表面プラズモンマイクロリング共振器に対応する波長の光信号の強度を変調するために用いられ、表面プラズモンデバイスに比べて、直導波材により光信号を伝送させることで、光信号の伝送損失を大幅に下げ、シリコンマイクロリング変調器に比べて、表面プラズモンマイクロリング共振器により、光信号をより小さいスケール下に限定して伝搬させることができるので、マイクロリング共振器のサイズを小さくできる。 …(中略)… 【0012】 上記した背景技術にも説明されたように、従来のシリコンマイクロリング変調器のサイズは10マイクロメートル前後であり、デバイスサイズをこれ以上小さくすることはできない。その原因として、従来のシリコンベースの光変調器はシリコン材料の微弱なプラズマ波長分散効果に制限されており、より小さなスケールでより大きな変調深さを得ることは困難である。しかし、表面プラズモン(SPP:surface plasmon polariton)フォトニクスは金属性ナノ構造が回折限界により制限される誘電体光学系とナノオーダーのオンチップ電子素子との間のスケール不整合を解決する潜在力を明らかにした。表面プラズモン変調器は、僅か数マイクロメートルの大きさで大きな光変調幅を実現することができる。しかし、表面プラズモンを発生させる活性層に固有に存在する自由キャリア吸収により、この変調器は通常、大きなオンチップ損失を有する。したがって、光信号の損失が小さく且つデバイスのサイズが小さい変調器が強く求められている。 【0013】 上述した技術問題に対して、本発明の実施形態は、光信号に対する低変調損失を保証しつつ、装置のサイズを小さくするマイクロリング変調器を提供する。 …(中略)… 【0016】 (前略)例えば、図3を参照し、表面プラズモンマイクロリング共振器20に対応する波長の光信号は、直導波材10の入力端10Aから表面プラズモンマイクロリング共振器20を通過する際に、表面プラズモンマイクロリング共振器20を1周伝送されると、直導波材10の出力端10Bから出力される。表面プラズモンマイクロリング共振器20と直導波材10とが互いに結合関係にあり、この結合関係は水平結合であっても垂直結合であってもよく、表面プラズモンマイクロリング共振器20に対応する波長の光信号が表面プラズモンマイクロリング共振器20における伝送中に共振状態にあるため、表面プラズモンマイクロリング共振器20は、表面プラズモンマイクロリング共振器20に対応する波長の光信号の強度を変調することができる。ここで、表面プラズモンマイクロリング共振器に対応する波長は表面プラズモンマイクロリング共振器20のサイズに相関する。光信号が表面プラズモンマイクロリング共振器20内を1周伝送される長さと、結合領域30内の表面プラズモンマイクロリング共振器20の長さとの差は、表面プラズモンマイクロリング共振器に対応する波長の整数倍である。 …(中略)… 【0018】 表面プラズモン(SPP:surface plasmon polariton)フォトニクスは金属性ナノ構造が回折限界により制限される誘電体光学系とナノオーダーのオンチップ電子素子との間のスケール不整合を解決する潜在力を明らかにした。表面プラズモン変調器は、僅か数マイクロメートルの大きさで大きな光変調幅を実現することができる。具体的には、表面プラズモンマイクロリング共振器20は、一般に、活性層及び誘電体層を含み、電気信号の作用により、活性層と誘電体層との界面に表面プラズモンが発生し、該活性層の比誘電率は限りなくゼロに近く、光信号に対するインピーダンスは限りなくゼロに近く、位相変化は限りなく小さく、光信号の指向性発射、及び光信号を小スケール下に制限することができる。具体的には、従来のシリコンマイクロリング変調器のサイズは10マイクロメートル前後であるが、表面プラズモンマイクロリング共振器20の場合、マイクロリングのサイズを1マイクロメートル前後に小さくすることができる。これにより、光信号が共振状態にあるとき、光信号は活性層と誘電体層との界面で伝搬することができ、伝搬の媒体は表面プラズモンである。また、該活性層は、比較的良好なイオン波長分散作用を有し、すなわち、表面プラズモンマイクロリング共振器20は、電気信号の作用により、キャリアを生成して、活性層と誘電体層との界面における実効屈折率を変化させて光信号の強度を変調することができる。また、非マイクロリング表面プラズモンマイクロリング共振器と比べて、表面プラズモンマイクロリング共振器を光スイッチとして機能させ、光信号が非共振状態にある場合の表面プラズモンマイクロリング共振器による光信号の損失をなくすことができる。 【0019】 本発明の実施形態における技術案は、直導波材10と、直導波材と互いに結合関係にある表面プラズモンマイクロリング共振器20とを備え、直導波材により光信号を伝搬させ、表面プラズモンマイクロリング共振器20は、表面プラズモンマイクロリング共振器に対応する波長の光信号の強度を変調するように構成されており、表面プラズモンデバイスに比べて、直導波材10により光信号を伝送させることで、光信号の伝送損失を大幅に下げ、シリコンマイクロリング変調器に比べて、表面プラズモンマイクロリング共振器20により、光信号をより小さいスケール下に限定して伝搬させることができるので、マイクロリング共振器のサイズを小さくする。なお、シリコンベースの共振器に比べて、本発明の実施形態における技術案は、デバイスのサイズを小さくするとともに、損失をわずかに減少させることで、マイクロリング変調器の変調帯域幅を向上させるため、上記技術案により、光信号に対する損失が小さく、変調帯域幅が大きく、且つデバイスのサイズが小さい変調器を実現することができる。 …(中略)… 【0031】 図7は本発明の実施形態により提供される別のマイクロリング変調器の平面図である。図8は図7のB-B’方向の断面図である。図7及び図8に示すように、該マイクロリング変調器に備えられる表面プラズモンマイクロリング共振器20は、第2導波層210と、第2誘電体層211と、第2表面プラズモン活性層212とを備え、第2導波層210は、第2水平導波材210Aと、第2水平導波材210Aの表面にあるマイクロリング導波材210Bとを備え、マイクロリング導波材210Bには溝213が設けられており、溝213の底面は第2水平導波材210Aの表面の一部を露出させ、第2誘電体層211は第2導波層210の表面にあり、マイクロリング導波材210Bの周囲に位置する第2水平導波材210Aは、第2誘電体層を貫通する導電ビアを介して第3電気信号に接続され、第2表面プラズモン活性層212は、マイクロリング導波材210B上の第2誘電体層211のマイクロリング導波材210Bから離れた側の表面にあり、第4電気信号に接続されるように構成され、第2表面プラズモン活性層212と第2誘電体層との接触面は、光信号を変調する表面プラズモンを生成させるように構成されている。なお、マイクロリング導波材210Bの周囲に位置する第2水平導波材210Aは、第2誘電体層を貫通する導電ビアを介して第3電気信号に接続されるが、マイクロリング導波材210Bと第2水平導波材210Aとが電気的に接続されているため、マイクロリング導波材210Bは第3電気信号に接続される。 【0032】 具体的には、第2導波層210はシリコン材料であり、直導波材10内の第1導波層103とが同一層であり、マイクロリング導波材210Bはリブ型導波材1032と既定距離L1だけ離れており、該既定距離L1は結合状態に影響する。既定距離L1が小さいほど、表面プラズモンマイクロリング共振器20と直導波材10との結合強度が大きくなり、表面プラズモンマイクロリング共振器20による光信号の変調効率が高くなる。既定距離L1が小さいほど、表面プラズモンマイクロリング共振器20と直導波材10との結合強度が小さくなり、表面プラズモンマイクロリング共振器20による光信号の変調効率が低くなる。 【0033】 第2誘電体層211として、例えば、二酸化ケイ素、二酸化ハフニウム(HFO2)とすることができる。第2誘電体層211の厚さの範囲は、5ナノメートル以上、又は15ナノメートル以下とすることができる。この範囲とすることで、表面プラズモンマイクロリング共振器20の変調効率を十分な変調帯域幅を考慮しつつ、表面プラズモンマイクロリング共振器20の十分な変調帯域幅を保証することができる。 【0034】 第2表面プラズモン活性層212は、電気信号の作用によりプラズモンを生成させることができ、具体例としては誘電率の値が0に近い材料とすることができる。誘電率の値が0に近い(ENZ:Epsilon near zero)材料とは、比誘電率が限りなくゼロに近い一種のメタマテリアルである。比誘電率は限りなくゼロに近く、光信号に対するインピーダンスは限りなくゼロに近く、位相変化は限りなく小さく、光信号の指向性発射、及び光信号をより小さいスケール下に制限することができる。このため、光信号が共振状態にあるとき、第2表面プラズモン活性層212と第2誘電体層211との界面で伝搬することができ、伝搬の媒体は表面プラズモンである。また、第2表面プラズモン活性層212は、比較的良好なイオン波長分散作用を有し、すなわち、表面プラズモンマイクロリング共振器20は、電気信号の作用により、第2表面プラズモン活性層212によりキャリアを生成し、第2表面プラズモン活性層212と第2誘電体層211との界面における実効屈折率を変化させて光信号の強度を変調することができる。よく使われる誘電率の値が0に近い材料として、透明導電酸化物薄膜(TCO)とすることができる。このような薄膜は、バンドギャップが大きい、可視スペクトル領域の光透過率が高い、抵抗率が低い等共通の光電特性を有する。透明導電酸化物薄膜の例としては、酸化インジウムスズ(ITO:Indium tin oxide)薄膜、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)薄膜、酸化カドミウム(CdO)薄膜などとすることができる。」 3 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.特表2018-511084号公報 4 引用文献1の記載事項並びに引用発明及び引用文献1技術事項の認定 (1) 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である引用文献1(特表2018-511084号公報)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(3)の引用発明の認定及び後記(4)の引用文献1技術事項の認定に直接用いる記載に下線を付した。また、最も関連する記載のある段落に続けて、図を掲載した。)。 ア 特許請求の範囲 「【請求項1】 強誘電材料を備える第1のコアと、 第1のクラッド部分を備えるクラッドであって、前記強誘電材料との第1のインタフェースで、負の実部を有する誘電率を有する第1のクラッド材料を備えるクラッドと、 を備えるプラズモン導波路である第1の導波路を備える電気光学素子であって、 前記強誘電材料の屈折率の少なくとも実部を変調するため、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加して前記強誘電材料に電場を生じさせるための前記第1および前記第2の電極を素子が備え、前記素子がさらに結晶基板を備え、この上に前記強誘電材料が成長、特にエピタキシャル成長させられ、前記基板と前記強誘電材料との間には中間層が全くないか、または1つ以上あり、前記中間層が1つ以上存在する場合は、これが前記基板上に成長、特にエピタキシャル成長させられ、前記基板と前記第1のコアとが、垂直方向とされる方向で積層され、前記垂直方向に対して直角の方向が横方向とされる、素子。 …(中略)… 【請求項8】 前記第1の導波路の付近に配置される第2のコアを備えるフォトニック導波路である第2の導波路を、前記第1の導波路と前記第2の導波路との間のエバネセント結合を可能にするためにさらに備え、特に前記第2の導波路が垂直方向で前記基板と前記第1の導波路との間に配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載の素子。 …(中略)… 【請求項11】 前記素子が、光を受光し、前記光の位相シフトを誘起し、前記位相シフトされた光を出力するよう特に構成および構築されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気光学素子を備える光変調器。 …(中略)… 【請求項14】 前記電気光学素子を備える無限入力応答光学フィルタ型進行波光共振器を備え、特に前記フィルタが光リング共振器である、請求項11に記載の変調器。」 イ 技術分野、背景技術(段落【0001】~【0003】) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、電気光学素子、およびこれを備える光変調器に関する。これは、電気光学位相変調、ならびに光位相、振幅および強度の変調を可能にするための装置に関する。これらの素子、装置および変調器は、たとえば光データ通信、光通信、光記憶装置および光検知に応用される。 【背景技術】 【0002】 電気的データの情報を光信号に変換するために使用される電気光学変調器は、フォトニックリンクにおける主要な構成要素である。これらの装置に対しては、高い速度、低い電力消費、低光学損失、高い変調度、コンパクトな設置面積、高密度集積化が要求される。これまでには、化合物半導体、液晶、LiNbO3またはポリマーの機能材料に基づく光変調器が、実際に使用されてきた。しかし、これらの光変調器は一般に、誘電体媒質における光の回折限界により、個別的で嵩高である。したがって、光変調器に課される要件の全てを同時に満たす十分なチップスケール装置の解決策であることが望ましい。よって、新たな光学技術および光学材料が多いに望まれており、研究団体により調査されている。この課題または問題の解決のアプローチとして、光の局在化および誘導のため負の誘電体誘電率を有する材料(より詳細には、負の実部を有する誘電率の材料)を誘導するプラズモニック装置が、サブ回折限界光閉じ込めおよび広帯域性を提供する。その結果、光と物質の相互作用の強化による低電力消費、ならびに装置の高密度集積化に望ましい小型な光学装置が達成可能である。機能性光学材料に関しては、高速応答型の高い電気光学効果を示す固形の強誘電材料が、高速で統合的かつ省エネルギー性の能動的光学装置のために使用可能である。強誘電材料の複雑な屈折率、それに続いて、入射する導波光の位相および/または振幅は、外部電場を印加することにより変調可能である。プラズモニック導波機構および強誘電材料の両方の組合せは、所望の優れた装置性能を有する新世代の光変調器を実現するための有望な技術である。 …(後略)」 ウ 発明の概要(段落【0004】~【0035】) 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明において考えられる目的は、以下の1つまたは複数のものである。 ・超高周波における光変調を可能にすること、 ・高い変調効率のプラズモン導波路を提供すること、 ・特に小型のプラズモン導波路を提供すること、 ・電気光学素子、特に位相変調器および光変調器をウエハレベルで製造可能にすること ・電気光学部品におけるエネルギー消費を低減させること、 ・標準的な半導体製造工程、特にCMOS技術または微小電気機械システム技術において、プラズモン導波路を集積化すること、 ・たとえば100℃を超える高い温度下において、光変調を高い信頼性で可能にすること。 …(中略)… 【課題を解決するための手段】 【0007】 電気光学素子は、以下を備えるプラズモン導波路である第1の導波路を備える。 ・強誘電材料を備える第1のコア、 ・第1のクラッド部を備えるクラッドであって、強誘電材料との第1のインタフェースで負の実部を有する誘電率を有する第1のクラッド材料を備えるクラッド。 【0008】 素子は第1および第2の電極を備え、誘電材料の屈折率の少なくとも実部を変調するために、第1および第2の電極の間に電圧が印加されて強誘電材料に電場を生じさせ、素子はさらに結晶基板を備え、この上に強誘電材料が成長、特にエピタキシャル成長させられ、基板と強誘電材料との間には中間層が全くないか、または1つ以上あり、1つ以上の中間層が存在する場合は、これが基板上に成長、特にエピタキシャル成長させられ、基板と第1のコアとが、垂直方向とされる方向で積層され、この垂直方向に対して直角の方向は横方向とする。 【0009】 こうして、高品質の強誘電材料を有するコア、特に高結晶性および低欠陥密度のものが製造可能であり、これによりコア、特に強誘電材料が特に優れた光学的性質を有することが可能である。 【0010】 電場により、インタフェースにおけるプラズモンポラリトンモードの位相が変調可能である。 【0011】 第1の導波路では、モードは導波されること(「導波モード」)が可能であり、これは導波路の特性に応じて、プラズモンポラリトンモードおよび/またはハイブリッドプラズモニックフォトニックモードであることができる。 【0012】 電気光学素子は、印加電場の変調によって、インタフェースにおける周波数fのプラズモンポラリトンモードの位相の変調用に使用可能である。よって、より詳細には、第1のクラッド材料は通常、上記の周波数fでは負の実部を持つ誘電率を有し、プラズモンの存在を可能にする。 【0013】 特に、第1のインタフェースにある強誘電材料における電場によって、第1のインタフェースの強誘電材料の屈折率の少なくとも実部が変調可能である。ハイブリッドプラズモニックフォトニックモードの変調のためには、強誘電材料の屈折率の実部の変調用に強誘電材料全体に渡って存在する電場が使用可能である。 …(中略)… 【0031】 一実施形態では、素子は追加的に第2の導波路を備え、これは第1の導波路と第2の導波路との間のエバネセント結合を可能にするための第1の導波路の付近に配置される第2のコアを備えるフォトニック導波路であり、その際特に第2の導波路は垂直方向で基板と第1の導波路との間に配置されている。これは電気光学素子の高密度集積化に大きく貢献する。 【0032】 第2の導波路は典型的には、横方向である伝播方向に沿ってフォトニック光モードを導波するために設けられており、特に第1および第2の導波路は同一の横方向で平行に延伸することができ、相互に対して垂直および/または横方向に変位して配置されている。 【0033】 第1の導波路と第2の導波路との間のエバネセント結合は通常、フォトニック光モードが第2の導波路内に伝播するとき存在している。このエバネセント結合により(これには第1および第2のコアがごく接近している必要がある)、第2の導波路内のフォトニック光モードは、第1の導波路において導波モード、特にプラズモンポラリトンモードを励起することが可能、または逆も可能であり、第1の導波路内で導波されるモード(特にプラズモンポラリトンモード)は、第2の導波路内にフォトニック光モードを励起可能である。 【0034】 第2のコアはシリコン製であることができる。シリコンはたとえば赤外線に対して透過性を有する。 【0035】 本発明は、上述の種の電気光学素子を備える多様な光変調器も含む。 したがって、超小型の、高速かつエネルギー効率の高い光位相変調器が本発明により得られる。」 エ 図面の簡単な説明(段落【0037】) 「【図面の簡単な説明】 【0037】 【図1】第1の実施形態に係る、誘電体装荷金属-絶縁体-金属プラズモン導波路型強誘電材料集積プラズモニック位相変調素子の例を示す断面図である。 【図1a】図1の電気光学素子の斜視図である。 …(中略)… 【図5】マッハツェンダまたは遅延干渉計のような、有限入力応答光学フィルタ構造におけるプラズモニック位相変調素子を示す平面図例である。 …(中略)… 【図7】光リング共振器のような、無限入力応答フィルタ型進行波光共振器におけるプラズモニック位相変調素子を示す平面図例である。」 オ 第1の実施形態(段落【0039】~【0041】) 「【0039】 第1の実施形態 図1は、電気光学素子の例を示す断面図であり、より詳細には、第1の実施形態に係る、誘電体装荷金属-絶縁体-金属プラズモニック導波路型強誘電材料集積プラズモニック位相変調素子を示している。この図は、導波路の伝播方向に対して垂直の横断面である。図1aは、図1の電気光学素子の斜視図である。 【0040】 基板または基板層105上に、別の層および構造が、特にエピタキシャル成長により設けられ、すなわち、光導波路(「第2の導波路」)の緩衝化絶縁体層107と、中にコア104(「第2のコア」)がある上部素子層とが構成されている。コア104に隣接する素子層の108での材料は、素子の動作波長、すなわち第2の導波路を導波され、後述の第1の(プラズモン)導波路へ少なくとも部分的に結合される光の波長において、コア104より低い屈折率を有する。ここでは、シリコンオン絶縁体ウエハが例として挙げられる。第2の導波路のコア104は、Si素子層内に作られる。SiN、SiONまたはポリマーを含むがこれに限定されないSiO2またはその他の誘電材料108が、図1に示されるように、素子層内で導波路コア104を包囲することが可能である。108における埋められた誘電材料の所望の特性は、コア104に比べて低い光学損失および屈折率である。続いて強誘電材料101が、適切な材料成長または堆積法(典型的にはエピタキシャル成長により)により堆積され、これには高周波スパッタリング、パルスレーザ堆積、金属有機化学蒸着、分子線エピタキシ、化学溶液堆積、または上記の方法の組み合わせが含まれるが、これに限定されるものではない。強誘電材料101は、第1の導波路のコア(「第2のコア」)を形成する。随意的に、単一または複数の緩衝層および/またはシード層109が、下のSi系素子層(108および104)と強誘電材料101との間に、たとえばスペーサとして、または格子不整合を緩和し、強誘電材料101のエピタキシャルの品質を向上させるため、挿入されることが可能である。101における強誘電材料の結晶品質の向上のため、堆積後のアニールが用いられることが可能である。強誘電材料101は、横方向のクラッド材料として用いられる金属または非金属の導電性材料102に横方向で挟まれている。よって、金属または非金属の導電性材料は、中央の強誘電体ブロックにより絶縁されている。これにより、素子の動作波長においてそれぞれ金属および非金属の導電性材料の誘電率の実部が、第1の導波路のクラッドでゼロより低い場合、そしてコアにおける強誘電材料101の誘電率の実部が正である場合、プラズモン導波路は形成される。表面プラズモンポラリトンモードは、紙面に対して垂直の方向で導波されることが可能である。プラズモン導波機構により、強誘電材料のブロックの幅は、λ/2nより大幅に小さいことが可能であり、その際、λは素子の動作波長であり、nは強誘電材料101の屈折率である。導波モード(プラズモンポラリトンモード、ハイブリッドプラズモニックフォトニックモード)は、強誘電材料内に強く閉じ込められることが可能である。金属または非金属の導電性材料は、電極としても使用可能である。2つの電極を介して、電気変調信号パルスのような外部電圧が加えられると、電場(110で示される電場ベクトル)が強誘電材料101に渡って生成され、強誘電性による効果を含む、電気光学効果による強誘電材料101における屈折率変化を誘起する。続いて、表面プラズモンポラリトンモードは、外部からの印加電圧により変調される。強誘電材料ブロックの(横方向の)幅は極めて狭いことが可能であるため、強い電場が得られ、これは加えられた外部電圧と強誘電材料101のブロックの幅との比率により概算可能であるが、結果として顕著な電気光学効果が得られる。」 「【図1】 [図:0001437801000004.jpg] 」 「【0041】 図1aでは、第2の導波路のコアは、(共通の)導波路方向に沿って第1の導波路のコアと重なる部分の領域でくびれがあることが分かる。」 「【図1a】 [図:0001437801000005.jpg] 」 カ 第5の実施形態(段落【0046】) 「【0046】 第5の実施形態 図5は、マッハツェンダまたは遅延干渉計のような、有限入力応答光学フィルタ構造におけるプラズモニック位相変調素子520を示す平面図例である。干渉計は、本特許出願に記載される2つの光位相変調素子(520で示す)を備える。この光変調器では、入力光511は2つの光路に分岐され、これらはそれぞれ本特許出願において説明される位相変調素子として機能する電気光学素子により位相変調され、最終的に出力光512となるよう再び結合される。よって、素子520により誘起される位相変調は、2つの位相変調光部分の干渉による強度変調に変換される。マッハツェンダ干渉計の2つのアームにおいて反対の極性の位相変化が生成されるプッシュプル構成が用いられることが可能である。その結果、プラズモニック位相変調素子520の長さは半分に(1つの素子520を使用する場合と比較して)低減されることが可能である。導波路530および光パワースプリッタは、連続接続されるSi系導波路530または真下のクラッド材料より高い屈折率を有し、光学的に透明であるか、または素子の動作波長領域で許容可能な光学的損失を有するその他の材料からなる導波路により実現可能である。スプリッタの構成は、たとえば図に示されるY型スプリッタ550、または方向性結合器、またはマルチモード干渉モード分割構造に基づくものであることが可能である。モード整合およびアクセス導波路530からプラズモン導波路520への光透過の向上のため、断熱テーパリング構造540が挿入可能である。位相変調素子520内のプラズモン導波路により、素子の長さは数マイクロメーターという短さであることが可能である。」 「【図5】 [図:0001437801000006.jpg] 」 キ 第7の実施形態(段落【0048】) 「【0048】 第7の実施形態 図7は、光リング共振器720のような、無限入力応答フィルタ型進行波光共振器におけるプラズモニック位相変調素子を示す平面図例である。リング共振器720の少なくとも一部は、本特許出願に記載されるプラズモニック位相変調素子により具体化される。光リング共振器720の共振波長と一致する入射光711が、リング共振器720に入ることが可能であり、透過の低下または反射の増加が生じる。共振器の共振波長は、本明細書で説明したように、プラズモニック位相変調素子(720により示す)に外部電圧を加えることにより可変である。したがって、透過光712または反射光713のいずれかの変調前および変調後の強度変化を比較することにより、位相変調が強度変調へ変換される。」 「【図7】 [図:0001437801000007.jpg] 」 (2) 引用文献1の記載事項から当業者が把握できる事項の認定 ア 【図7】に示される第7の実施形態は、【請求項11】、【請求項14】に係る発明の光変調器であることを当業者は把握することができる。 イ 当業者は、第7の実施形態を示す【図7】において、光リング共振器720の下部に図示され、入射光711が入射し、透過光712及び反射光713が出射する部材が、【請求項8】でいう第2の導波路であることを把握することができる。 ウ 【図7】は、プラズモニック位相変調素子を示す平面図(【0037】)であるところ、前記イ及び【0048】の記載を踏まえて図7を参照すると、当業者は次の事項(以下「図7からの認定事項1~3」という。)を把握することができる。 <図7からの認定事項1> 「第2の導波路は、直線状であること。」 <図7からの認定事項2> 「第2の導波路は、入射光が入射し、透過光及び反射光が出射するものであること。」 <図7からの認定事項3> 「光リング共振器720と、第2の導波路は、平面視で離間して配置されること。」 (3) 引用発明の認定 前記(2)において認定した事項及び前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、電気光学素子の第7の実施形態(【図7】)に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。また、参考図として、【図7】に部材名を記入したものを掲載する。 <引用発明> 「光変調器であって、(【請求項11】) 電気光学素子が、光を受光し、前記光の位相シフトを誘起し、前記位相シフトされた光を出力するよう特に構成および構築されており、(【請求項11】) 電気光学素子を備える無限入力応答光学フィルタ型進行波光共振器を備え、前記フィルタが光リング共振器であり、(【請求項14】) 前記電気光学素子は、強誘電材料を備える第1のコアと、第1のクラッド部分を備えるクラッドであって、前記強誘電材料との第1のインタフェースで、負の実部を有する誘電率を有する第1のクラッド材料を備えるクラッドと、を備えるプラズモン導波路である第1の導波路を備え、(【請求項1】) 前記強誘電材料の屈折率の少なくとも実部を変調するため、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加して前記強誘電材料に電場を生じさせるための前記第1および前記第2の電極を素子が備え、前記素子がさらに結晶基板を備え、この上に前記強誘電材料が成長させられ、前記基板と前記強誘電材料との間には中間層が全くないか、または1つ以上あり、前記基板と前記第1のコアとが、垂直方向とされる方向で積層され、前記垂直方向に対して直角の方向が横方向とされ、(【請求項1】) 前記第1の導波路の付近に配置される、フォトニック導波路である第2の導波路を、前記第1の導波路と前記第2の導波路との間のエバネセント結合を可能にするためにさらに備え、(【請求項8】) エバネセント結合により、第2の導波路内のフォトニック光モードは、第1の導波路において、プラズモンポラリトンモードを励起することが可能であり、(【0033】) 第2の導波路は、直線状であり、(図7からの認定事項1) 第2の導波路は、入射光711が入射し、透過光712及び反射光713が出射するものであり、(図7からの認定事項2) 光リング共振器720と、第2の導波路は、平面視で離間して配置され、(図7からの認定事項3) リング共振器720の少なくとも一部は、プラズモニック位相変調素子により具体化され、 光リング共振器720の共振波長と一致する入射光711が、リング共振器720に入ることが可能であり、透過の低下または反射の増加が生じ、 共振器の共振波長は、プラズモニック位相変調素子に外部電圧を加えることにより可変であり、 透過光712または反射光713のいずれかの変調前および変調後の強度変化を比較することにより、位相変調が強度変調へ変換される、(【0048】) 光変調器。」 <参考図(【図7】)> 「 [図:0001437801000008.jpg] 」 (4) 引用文献1技術事項の認定 引用文献1の【0004】、【0035】及び【0046】の記載から、当業者は次の事項(以下「引用文献1技術事項」という。)を把握することができる。 <引用文献1技術事項> 「発明の目的の1つが、特に小型のプラズモン導波路を提供することであり、(【0004】) 超小型の、高速かつエネルギー効率の高い光位相変調器がこの発明により得られ、(【0035】) 第5の実施形態において、位相変調素子520内のプラズモン導波路により、素子の長さは数マイクロメーターという短さであることが可能であること。(【0046】)」 5 本願発明と引用発明の対比 (1) 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 ア 構成Xの観点(マイクロリング変調器) (ア) 構成Xは、「マイクロリング変調器」の発明であることを特定するものである。 (イ) 引用発明である「光変調器」は、「電気光学素子を備える無限入力応答光学フィルタ型進行波光共振器を備え、前記フィルタが光リング共振器であ[る]」ことを踏まえると、本願発明の「マイクロリング変調器」と引用発明の「光変調器」は、「リング変調器」である点で共通する。 (ウ) 本願発明が「マイクロリング変調器」であるのに対して、引用発明である「光変調器」の大きさは不明である。 (エ) これらを踏まえると、本願発明と引用発明の構成Xの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。 a 構成Xの観点における一致点 「リング変調器」である点 b 構成Xの観点における相違点 リング変調器が、 本願発明においては「マイクロ」リング変調器であるのに対して、 引用発明においては、光変調器の大きさが不明である点。 イ 構成Aの観点(直導波材) (ア) 構成Aは、「マイクロリング変調器」が「少なくとも1つの直導波材」を備えることである。 (イ) 引用発明における「直線状であ[る]」「第2の導波路」は、本願発明における「直導波材」に相当する。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「少なくとも1つの直導波材」を備える点。 ウ 構成Bの観点(表面プラズモンマイクロリング共振器) (ア) 構成Bは、「マイクロリング変調器」が「前記直導波材と互いに結合関係にある少なくとも1つの表面プラズモンマイクロリング共振器」を備えることである。 (イ) 引用発明は、「リング共振器720の少なくとも一部は、プラズモニック位相変調素子により具体化され[る]」ものであるから、本願発明の「表面プラズモンマイクロリング共振器」と引用発明の「リング共振器720」は、「表面プラズモン」「リング共振器」である点で共通する。 (ウ) 引用発明における「プラズモン導波路である第1の導波路」は、「プラズモニック位相変調素子により具体化され[る]」「光リング共振器720」を構成するものと理解されるところ、引用発明において、「第1の導波路と前記第2の導波路との間」は「エバネセント結合」されることから、前記イも踏まえると、引用発明の「光リング共振器720」は、本願発明でいう「前記直導波材と互いに結合関係にある」ものであるといえる。 (エ) これらを踏まえると、本願発明と引用発明の構成Bの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。 a 構成Bの観点における一致点 「前記直導波材と互いに結合関係にある少なくとも1つの表面プラズモン」「リング共振器」を備える点。 b 構成Bの観点における相違点 表面プラズモンリング共振器が、 本願発明においては、表面プラズモン「マイクロ」リング共振器であるのに対して、 引用発明においては、リング共振器720の大きさが不明である点。 エ 構成A1の観点(直導波材) (ア) 構成A1は、「前記直導波材は、光信号を伝送するように構成されて[いる]」ことである。 (イ) 引用発明は、「第2の導波路は、入射光711が入射し、透過光712及び反射光713が出射するものであり」、「透過光712または反射光713のいずれかの変調前および変調後の強度変化を比較することにより、位相変調が強度変調へ変換される」ものであるところ、変調対象となる光は一般に光信号であることが技術常識であるから、引用発明の「入射光711」、「透過光712」及び「反射光713」は、本願発明の「光信号」に相当し、引用発明の「第2の導波路」は、本願発明でいう「光信号を伝送するように構成され[る]」ものであるといえる。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「直導波材は、光信号を伝送するように構成されて[いる]」点。 オ 構成B1の観点(光信号の強度変調) (ア) 構成B1は、「前記表面プラズモンマイクロリング共振器は、前記表面プラズモンマイクロリング共振器に対応する波長の光信号の強度を変調するように構成されて[いる]」ことである。 (イ) 引用発明は、「リング共振器720の少なくとも一部は、プラズモニック位相変調素子により具体化され、光リング共振器720の共振波長と一致する入射光711が、リング共振器720に入ることが可能であり、透過の低下または反射の増加が生じ、共振器の共振波長は、プラズモニック位相変調素子に外部電圧を加えることにより可変であり、透過光712または反射光713のいずれかの変調前および変調後の強度変化を比較することにより、位相変調が強度変調へ変換される」ものであるから、引用発明の「リング共振器720」は、本願発明でいう「前記表面プラズモン」「リング共振器に対応する波長の光信号の強度を変調するように構成されて[いる]」といえる。 (ウ) そうすると、本願発明と引用発明の構成B1の観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。 a 構成B1の観点における一致点 「前記表面プラズモン」「リング共振器は、前記表面プラズモン」「リング共振器に対応する波長の光信号の強度を変調するように構成されて[いる]」点。 b 構成B1の観点における相違点 表面プラズモンリング共振器が、 本願発明においては、表面プラズモン「マイクロ」リング共振器であるのに対して、 引用発明においては、「リング共振器」の大きさが不明である点。 カ 構成Cの観点(水平結合関係) (ア) 構成Cは、「前記互いに結合関係にあるとは、前記表面プラズモンマイクロリング共振器と前記直導波材と同一の平面にあって既定距離だけ離れており、前記表面プラズモンマイクロリング共振器と前記直導波材とが互いに水平結合関係にある」ことである。 (イ) 引用発明は、「光リング共振器720と、第2の導波路は、平面視で離間して配置され[る]」ものであるから、本願発明でいう「前記表面プラズモン」「リング共振器と前記直導波材と」「既定距離だけ離れて[いる]」ものであるといえる。 (ウ) 前記ウ(ウ)で説示したとおり、引用発明は、本願発明でいう「前記表面プラズモン」「リング共振器と前記直導波材とが互いに」「結合関係にある」ものであるといえる。一方、引用発明では、「光リング共振器720」と「第2の導波路」が同一の平面にあるかどうかは不明である。 (エ) これらを踏まえると、本願発明と引用発明の構成Cの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。 a 構成Cの観点における一致点 「前記互いに結合関係にあるとは、前記表面プラズモン」「リング共振器と前記直導波材と既定距離だけ離れており、前記表面プラズモン」「リング共振器と前記直導波材とが互いに」「結合関係にある」点。 b 構成Cの観点における相違点 表面プラズモンリング共振器が、 本願発明においては、表面プラズモン「マイクロ」リング共振器であるのに対して、 引用発明においては、「リング変調器」の大きさが不明であり、 表面プラズモンリング共振器と直導波材について、 本願発明においては、「同一の平面にあ[り]」、両者の結合関係が「水平」結合関係であるのに対して、 引用発明においては、「光リング共振器720と、第2の導波路は、平面視で離間して配置され[る]」ものであるが、同一の平面にあり、水平結合関係にあるかどうかは不明である点。 (2) 一致点及び相違点 前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。 ア 一致点 「リング変調器であって、 少なくとも1つの直導波材と、 前記直導波材と互いに結合関係にある少なくとも1つの表面プラズモンリング共振器とを備え、 前記直導波材は、光信号を伝送するように構成されており、 前記表面プラズモンリング共振器は、前記表面プラズモンリング共振器に対応する波長の光信号の強度を変調するように構成されており、 前記互いに結合関係にあるとは、 前記表面プラズモンリング共振器と前記直導波材と既定距離だけ離れており、前記表面プラズモンリング共振器と前記直導波材とが互いに結合関係にある リング変調器」の発明である点。 イ 相違点 (ア) 相違点1 リング変調器が、 本願発明においては、「マイクロ」リング変調器であるのに対して、 引用発明においては、光変調器の大きさが不明である点。 (イ) 相違点2 表面プラズモンリング共振器が、 本願発明においては、表面プラズモン「マイクロ」リング共振器であるのに対して、 引用発明においては、リング共振器720の大きさが不明である点。 (ウ) 相違点3 表面プラズモンリング共振器と直導波材について、 本願発明においては、「同一の平面にあ[り]」、両者の結合関係が「水平」結合関係であるのに対して、 引用発明においては、「光リング共振器720と、第2の導波路は、平面視で離間して配置され[る]」ものであるが、同一の平面にあり、水平結合関係にあるかどうかは不明である点。 6 判断 (1) 相違点1及び2について これらは関連するものであるので、合わせて検討する。 前記4(4)で認定した引用文献1技術事項を踏まえると、引用発明において、光変調器及びこれを構成する光リング共振器720をより小さなものとして構成すること、具体的には、その大きさを数マイクロメートル程度とすることにより、相違点1、2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2) 相違点3について 引用発明は、「光リング共振器720と、第2の導波路は、平面視で離間して配置され[る]」ものであり、光リング共振器720と、第2の導波路は、同一平面上の配置であるか、同一平面上ではない配置(例えば、斜め上又は斜め下)が考えられるから、当業者は、光リング共振器720と第2の導波路の配置を設計する必要がある。そこで、当業者がどのように当該設計を行うかについて検討する。 引用発明において、「第2の導波路」は、「光リング共振器720」を構成する「前記第1の導波路の付近に配置される」ものであり、しかも、「前記第1の導波路と前記第2の導波路との間のエバネセント結合を可能にする」ものである。そして、エバネセント結合を可能にするためには、結合対象の距離は極めて近い必要があることは技術常識である。したがって、当業者が光リング共振器720と第2の導波路の配置を設計するに際して、エバネセント結合を可能にするために、図7の平面視を前提としたときに両者の距離がより近い同一平面上の配置とし、両者を相違点3に係る本願発明でいう「水平」結合関係とすることは、当業者にとってごく自然な設計事項にすぎない。 したがって、引用発明において、「光リング共振器720」と「第2の導波路」を、同一平面上に配置することにより、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3) 総合評価 前記(1)及び(2)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点1~3に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び引用文献1技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、相違点を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 7 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、引用文献1の光リング共振器はアイソプラズマを有さないため、本願発明の効果が達成できず本願の表面プラズモンマイクロリング共振器と異なること、引用文献1の光リング共振器はゲルマニウムを用いているが、ゲルマニウムには表面プラズモン特性がないこと、について主張している。 しかしながら、本願発明は「アイソプラズマ」についての構成を有しておらず、明細書にも「アイソプラズマ」なる用語は記載がなく、その意味するところも不明であるから、請求人の主張は請求項又は明細書の記載に基づくものではない。また、引用文献1には、「ゲルマニウム」を用いることは記載されておらず、請求人の主張は前提を欠くものであり失当である。したがって、請求人の主張はいずれも採用できない。 8 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-013229

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