特許拒絶査定不服審判
2023-002785
脂肪結合性組成物
- 審判番号
- 2023-002785
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-017313
- 請求日
- 2023年02月17日
- 審決日
- 2024年08月19日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】イーストポンド・ラボラトリーズ・リミテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 天野 宏樹
- 審判官 淺野 美奈
- 分類
- P18 .575-Z (A23L) / P18 .121-Z (A23L) / P18 .14 -Z (A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 17313「脂肪結合性組成物」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 5月13日出願公開、特開2021- 72850〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願は、2011年3月13日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2010年3月13日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2012-557627号の一部を、平成27年4月22日に新たな出願とした特願2015-87926号の一部を、平成29年11月1日に新たな出願とした特願2017-211616号の一部を、さらに令和3年2月5日に新たな出願としたものであって、その後の手続の経緯は、概略、次のとおりである。
令和 3年12月17日付け 拒絶理由通知
令和 4年 6月24日 意見書及び手続補正書の提出
同年10月 7日付け 補正の却下の決定及び拒絶査定
令和 5年 2月17日 審判請求書及び手続補正書の提出
令和 5年 4月20日 上申書の提出
令和 5年 7月18日 上申書の提出
令和 5年 9月27日 上申書の提出
第2 令和 5年 2月17日提出の手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 5年 2月17日提出の手続補正書による手続補正を却下する。
[理由]
1 令和 5年 2月17日提出の手続補正書による手続補正の内容
令和 5年 2月17日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の(すなわち、願書に最初に添付した)下記(1)に示す特許請求の範囲を、下記(2)に示す特許請求の範囲とするものである。なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体を含む食品組成物であって、
生理的条件下でゲスト分子が脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する食品組成物。
【請求項2】
組成物が、飲料である食品である、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
組成物が乾燥固体であり、水を組成物に添加すると、飲料が得られる、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項4】
組成物が、デンプンを含む食品である、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項5】
組成物が、穀物粒またはデンプン質の根から調製された食品である、請求項4に記載の食品組成物。
【請求項6】
α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体を含む、飲料を調製するための組成物であって、
生理的条件下でゲスト分子が脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する組成物。
【請求項7】
組成物が乾燥固体であり、水を組成物に添加すると、飲料が得られる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、錠剤、ペレット、顆粒、または粉末の形をとる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
組成物が、水を添加すると発泡性飲料になる粉末である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子であって、生理的条件下で脂肪分子で置換されて次に脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体を含む食品組成物を調製する方法であって、
a)ホスト分子とゲスト分子を、ゲスト-ホスト包接複合体を形成するのに適した条件下で合わせるステップと、
b)ゲスト-ホスト包接複合体を精製および単離するステップと、
c)精製されたゲスト-ホスト包接複合体と1種または複数の追加の成分を合わせて、食品組成物を得るステップと
を含む方法。
【請求項11】
ゲスト-ホスト包接複合体を精製するステップが、複合体形成していないゲスト分子を除去することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ホスト分子とゲスト分子を合わせるステップが、溶液、懸濁液、またはスラリーを調製することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ホスト分子とゲスト分子を合わせるステップが、ドライブレンドプロセスを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ホスト分子とゲスト分子を合わせるステップが、飽和溶液の調製を含み、ゲスト-ホスト包接複合体を精製するステップが、包接複合体の結晶化および濾過を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
動物の消化管で吸収される脂肪を低減する方法であって、
a)α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と栄養補助食品、香味剤、香味改良剤、芳香性物質または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体を含む食品を調製するステップであって、ホスト分子およびゲスト分子が、動物の消化管内でゲスト分子がホスト分子から実質的に遊離されかつホスト分子が消化管に存在する脂肪分子と第2のゲスト-ホスト包接複合体を形成するように選択されるステップと、
b)その後の摂取のために、調製された食品を動物に供給するステップであって、食品の摂取により、脂肪分子がホスト分子に実質的に不可逆的に結合し、それによって消化管から除去されるステップと
を含む方法。
【請求項16】
食品を調製するステップが、飲料であるかまたは水と混合すると飲料になる乾燥固体である食品組成物を調製することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
脂肪分子とホスト分子との実質的に不可逆的な結合によって、水不溶性のゲスト-ホスト包接複合体が生成する、請求項15に記載の方法。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
α-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体およびカーボネーション発生成分を含む食品組成物であって、
生理的条件下でゲスト分子が直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する食品組成物。
【請求項2】
組成物が、飲料である食品である、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
組成物が乾燥固体であり、水を組成物に添加すると、飲料が得られる、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項4】
組成物が、デンプンを含む食品である、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項5】
組成物が、穀物粒またはデンプン質の根から調製された食品である、請求項4に記載の食品組成物。
【請求項6】
α-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体およびカーボネーション発生成分を含む、飲料を調製するための組成物であって、
生理的条件下でゲスト分子が直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する組成物。
【請求項7】
組成物が乾燥固体であり、水を組成物に添加すると、飲料が得られる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、錠剤、ペレット、顆粒、または粉末の形をとる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
組成物が、水を添加すると発泡性飲料になる粉末である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
α-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子であって、生理的条件下で直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子で置換されて次に脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体およびカーボネーション発生成分を含む食品組成物を調製する方法であって、
a)ホスト分子とゲスト分子を、ゲスト-ホスト包接複合体を形成するのに適した条件下で合わせるステップと、
b)ゲスト-ホスト包接複合体を精製および単離するステップと、
c)精製されたゲスト-ホスト包接複合体と1種または複数の追加の成分を合わせて、食品組成物を得るステップと
を含む方法。
【請求項11】
ゲスト-ホスト包接複合体を精製するステップが、複合体形成していないゲスト分子を除去することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ホスト分子とゲスト分子を合わせるステップが、溶液、懸濁液、またはスラリーを調製することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ホスト分子とゲスト分子を合わせるステップが、ドライブレンドプロセスを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ホスト分子とゲスト分子を合わせるステップが、飽和溶液の調製を含み、ゲスト-ホスト包接複合体を精製するステップが、包接複合体の結晶化および濾過を含む、請求項10に記載の方法。」
2 本件補正の適否
2-1.本件補正の目的(特許法第17条の2第5項)について
本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正といえる。
2-2.独立特許要件(特許法第17条の2第6項)について
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~14に係る発明のうち、まず、同請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、検討する。
(1)本願補正発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~14に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
α-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体およびカーボネーション発生成分を含む食品組成物であって、
生理的条件下でゲスト分子が直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する食品組成物。」
(2)引用文献15に記載された発明に基づく進歩性
ア 引用文献15に記載された事項及び引用文献15に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開平7-238008号公報(以下、「引用文献15」という。)には、次の記載がある。下線は当審が付した。
摘記(15-1)
「【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A) 口腔内で溶解時に二酸化炭素を発生する発泡剤 0.5~40重量%
(B) 口腔内で溶解時に吸熱反応を起こす吸熱剤 50~98重量%
(C) l-メントールのデンプン分解物による包接又は吸着物
l-メントールの量として0.02~20重量%
を含有することを特徴とする口腔用発泡性固形組成物。」
摘記(15-2)
「【0005】しかしながら、従来の口腔用発泡性固形組成物はl-メントールに代表される清涼剤を含有し、冷涼でスッキリさせる香味を感じさせることはできる……。」
摘記(15-3)
「【0015】また、l-メントールの包接又は吸着に用いられるデンプン分解物は特に限定されるものではないが、例えば包接作用があるものとして、α型、β型、γ型のシクロデキストリンやマルトシルシクロデキストリン等が挙げられる。……。」
摘記(15-4)
「【0021】本発明の口腔用発泡性固形組成物は、常法により製造され、医薬部外品、化粧品、食品の分野に用いられる。……。」
摘記(15-5)
「【0024】
【発明の効果】本発明の口腔用発泡性固形組成物は、舌上で溶解時に(A)成分の発泡剤により二酸化炭素を発生しながら(B)成分の吸熱剤が口腔内に直接作用することで冷却作用を示すと共に、(C)成分のデンプン分解物による包接又は吸着物中のl-メントールが揮発性を抑制されながら徐々に溶解して口中に作用することで相乗的な清涼効果を示す。従って、本発明の口腔用発泡性固形組成物は優れた清涼効果を有すると共に、l-メントール等による舌の苦味や喉のいがらっぽさを生じず、医薬部外品、化粧品、食品等の分野において有用である。」
摘記(15-6)
「【0026】実施例1 トローチ剤(口中清涼剤):表1に示す成分を撹拌混合後、打錠機で1錠が20φ,2gの錠剤を圧縮成形してトローチ剤を得た。これを専門のフレーバリストに舌上で溶解してもらい、香味の官能評価(全体的な清涼感、舌上の感じ、喉の感じ)を下記基準により行った。その結果を表2に示す。
【0027】(香味の官能評価基準)
5:よい。
4:ややよい。
3:どちらともいえない。
2:あまりよくない。
1:よくない。
【0028】
【表1】
[図:0001418582000001.jpg]
【0029】
【表2】
[図:0001418582000002.jpg]
【0030】表2の結果より、本発明品は比較品よりも全体的な清涼感、舌上の感じ、喉の感じ共に優れていることわかる。
【0031】実施例2 丸剤(口中清涼剤)
遠心流動型造粒装置(CFグラニュレーター、フロイント社製)を用い、結晶状ソルビトール(20メッシュ)を核として、1層成分、2層成分、3層成分の順に微量の1重量%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を噴霧して乾燥させながらコーテイングし、造粒した。その後、乾熱乾燥機で水分を除去して丸剤を得た。これは、口腔内適用時に咀嚼して使用される。尚、下記組成中、吸着多孔質還元デンプン分解物は、l-メントールをエタノールに溶解後、多孔質還元デンプン分解物(平均分子量約1000,DE約2,吸油度:サラダ油で約150%)と共にヘンシェルミキサーで撹拌し、吸着させながら整粒調製したものを用いた。吸着多孔質還元デンプン分解物の各成分の内訳は、組成全量に対して多孔質還元デンプン分解物デキストリン3.5重量%、l-メントール1.0重量%、エタノール0.5重量%である。
【0032】
【表3】
〈核成分〉
結晶状ソルビトール(20メッシュ) 10.9(重量%)
〈1層成分〉
結晶状ソルビトール(微粉末) 26.0
炭酸水素ナトリウム 5.0
〈2層成分〉
結晶状エリスリトール(微粉末) 21.0
アスパルテーム 0.1
吸着多孔質還元デンプン分解物 5.0
〈3層成分〉
結晶状エリスリトール(微粉末) 26.0
クエン酸粉末 3.0
酒石酸粉末 2.5
L-アスコルビン酸粉末 0.5
計 100.00」
摘記(15-7)
「【0033】実施例3 粉歯磨剤
下記成分を混合して粉歯磨剤を得た。尚、下記組成中、ポリエチレングリコール処理クエン酸は、クエン酸にポリエチレングリコールをヘンシェルミキサーで撹拌吸着させたものを用いた。ポリエチレングリコール処理クエン酸の各成分の内訳は、組成全量に対してポリエチレングリコール1.0重量%、クエン酸5.0重量%である。また、下記組成中、包接シクロデキストリンは、l-メントールをペパーミント油に溶解後、若干の水とα-シクロデキストリン(セルデックスA-100,日食加工社製)、β-シクロデキストリン(セルデックスB-100,日食加工社製)と共にヘンシェルミキサーで撹拌後、乾燥させることで包接したものを用いた。包接シクロデキストリンの各成分の内訳は、組成全量に対してα-シクロデキストリン0.7重量%、β-シクロデキストリン1.5重量%、l-メントール0.4重量%、ペパーミント油0.4重量%である。
【0034】
【表4】
結晶状ソルビトール(50メッシュ) 51.74(重量%)
水酸化アルミニウム 25.0
4A型ゼオライト 5.0
ミリスチルリン酸 1.0
ポリエチレングリコール処理クエン酸 6.0
炭酸水素ナトリウム 8.0
フッ化ナトリウム 0.20
サッカリンナトリウム 0.05
グリチルリチン酸ジカリウム 0.01
包接シクロデキストリン 3.0
100.00
」
摘記(15-1)及び摘記(15-6)より、引用文献15には、
「次の成分(A)、(B)及び(C):
(A) 口腔内で溶解時に二酸化炭素を発生する発泡剤 0.5~40重量%
(B) 口腔内で溶解時に吸熱反応を起こす吸熱剤 50~98重量%
(C) l-メントールのデンプン分解物による包接又は吸着物
l-メントールの量として0.02~20重量%
を含有する口腔用発泡性固形組成物である、トローチ剤(口中清涼剤)又は丸剤(口中清涼剤)。」の発明(以下、「引用発明15」という。)が記載されているといえる。
イ 本願補正発明と引用発明15との対比
本願補正発明と引用発明15とを対比する。
引用発明15の「(A) 口腔内で溶解時に二酸化炭素を発生する発泡剤」は、本願明細書の発明の詳細な説明の段落0069の記載からみて、本願補正発明の「カーボネーション発生成分」に該当する。
また、摘記(15-2)に「l-メントール」が「香味」を感じさせるものであることが示され、また、摘記(15-3)により「包接物」は「ゲスト分子-ホスト包接複合体」と同義であると認められるから、引用発明15の「(C) l-メントールのデンプン分解物による包接又は吸着物」は、本願補正発明の「ホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体」に該当する。
また、摘記(15-4)及び摘記(15-5)に口腔用発泡性固形組成物が食品分野に用いられることが示され、摘記(15-5)に「トローチ剤(口中清涼剤)又は丸剤(口中清涼剤)」は舌上で溶解または口腔内で咀嚼して使用されるものであることが示されていることから、引用発明15の「トローチ剤(口中清涼剤)又は丸剤(口中清涼剤)」は、本願補正発明の「食品組成物」に該当する。
したがって、本願補正発明と引用発明15とは、
(一致点)
両者とも、
「ホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体およびカーボネーション発生成分を含む食品組成物。」である点で一致し、
(相違点(15-a))
ホスト分子が、
本願補正発明では「α-シクロデキストリンであるホスト分子」とされるのに対し、
引用発明15では「デンプン分解物」とされる点で相違し(以下、「相違点(15-a)」という。)、
(相違点(15-b))
ゲスト-ホスト包接複合体におけるゲスト分子とホスト分子の状態について、
本願補正発明では、
「生理的条件下でゲスト分子が直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する」とされる一方、
引用発明15では、
その特定事項がない点で相違する(以下、「相違点(15-b)」という。)。
ウ 相違点についての判断
(ア)相違点(15-a)について
摘記(15-3)には、l-メントールの包接作用があるデンプン分解物としてα-シクロデキストリンが挙げられており、また、摘記(15-7)には、実際にl-メントールをα-シクロデキストリン(セルデックスA-100,日食加工社製)により包接物とすることができることが記載されているから、当業者が、引用発明15のデンプン分解物としてα-シクロデキストリンを選択して「α-シクロデキストリンであるホスト分子」とすることは、容易に想到し得たことである。
(イ)相違点(15-b)について
「生理的条件下でゲスト分子が直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する」ことに関して、本願明細書及び図面(以下、「本願明細書等」という。)には、次の記載がある。
「【0011】
脂肪結合性組成物は食品組成物の形をとることができ、食品には、α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と栄養補助食品、香味改良剤(flavor enhancer)、または香気改良剤(aroma enhancer)であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体が含まれる。食品の摂取後に、ゲスト分子と脂肪分子が生理的条件下で置換され、次いで脂肪分子がホスト分子に実質的に不可逆的に結合する。ただし、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合していることを条件とする。」、
「【0016】
本明細書で論じられたように、ホスト分子は、生理的条件下で脂肪分子と密接に結合する化合物である。好適なホスト分子の例としては、シクロデキストリンおよび/またはアミロース分子が挙げられる。包接複合体のホスト分子は、ホスト分子と少なくともある程度ホスト分子の内部で結合するゲスト分子のホストとして作用する。ゲスト分子は、包接複合体が生理的条件下などの水性環境で存在するとき、ホスト分子から解離することができる。」
上記のとおり、本願明細書等の段落0011及び段落0016には、脂肪分子がα-シクロデキストリンと実質的に不可逆的に結合する性質を有するものであって、α-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体において、ゲスト分子が「ホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する」状態にあれば、「生理的条件下でゲスト分子が脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合する」ものとなることが記載されている。
摘記(15-5)には、(C)成分のデンプン分解物による包接又は吸着物中のl-メントールが揮発性を抑制されながら徐々に溶解して口中に作用することが示されていることから、引用発明15の「l-メントールのデンプン分解物による包接又は吸着物」において、ゲスト分子であるl-メントールは「ホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する」状態にあると認められるので、引用発明15のデンプン分解物としてα-シクロデキストリンを選択して「α-シクロデキストリンであるホスト分子」とすることにより、必然的に、「生理的条件下でゲスト分子が直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する」ものとなるといえる。
上記(ア)に示したとおり、相違点(15-a)は当業者が容易に想到し得たことである以上、相違点(15-b)はそれに伴い当業者が容易になし得たことである。
(ウ)相違点についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)より、相違点(15-a)及び相違点(15-b)は、引用文献15の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
エ 効果についての判断
本願補正発明が発揮する、ホスト分子(α-シクロデキストリン)に弱く会合したゲスト分子(栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤)が包摂されるゲスト-ホスト複合体を利用することにより、ゲスト分子の送達機構として機能するとともに、脂肪分子と結合するホストを供給するという効果(【0008】等)は、本願明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌しても、引用文献15の記載及び技術常識に照らして、当業者の予想し得ない顕著な効果であるとは認められない。
オ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において
「この度の手続補正により、本発明の組成物において、シクロデキストリンはα-シクロデキストリンに特定され、生理的条件下でゲスト分子と置換される脂肪分子は、直鎖状飽和脂肪酸から選択されることが特定されました。
本明細書実施例1においては、α-シクロデキストリン又はβ-シクロデキストリンが直鎖飽和脂肪酸(パルミテート)を固定および捕捉することができ、特にα-シクロデキストリンが最も好適であることが実証されています。
一方、引用文献においては、α-シクロデキストリンの包接複合体が直鎖飽和脂肪酸を特に効果的に包接(捕捉)し、固定化することができることについて、何ら開示されていません。……。」などと述べて、本願補正発明は、引用文献15に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない旨を主張する。
しかし、直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子が、α-シクロデキストリンと実質的に不可逆的に結合する性質を有するものであることは、本願の優先日当時における技術常識である(必要ならば、樫野悦子 ほか,“シクロデキストリンと油性物質との相互作用”,日本家政学会誌,Vol.56,No.8,pp.533-539(2005)(URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1987/56/8/56_8_533/_pdf/-char/ja)の「4.要約」等を参照)から、請求人の主張によっても、上記ウに示した相違点についての判断及び上記エに示した効果についての判断を覆すことはできない。
カ 引用文献15に記載された発明に基づく進歩性についてのまとめ
上記ア~オにより、本願補正発明は、引用文献15に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)引用文献16に記載された発明に基づく進歩性
ア 引用文献16に記載された事項及び引用文献16に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開平7-188304号公報(以下、「引用文献16」という。)には、次の記載がある。下線は当審が付した。
摘記(16-1)
「【請求項10】 チオクト酸がシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体との包接化合物の形で存在する顆粒、噛砕き-または発泡錠剤。」
摘記(16-2)
「【0011】
【課題を解決するための手段】……。従って、本発明の対象は、作用物質としてチオクト酸またはその塩を含有する顆粒、または噛砕き錠剤または発泡錠剤である。この顆粒は直接摂取するか、食物と混ぜるかまたは液体中に懸濁させるか、もしくは食物または飲料物に溶かして適用することができる。……。」
摘記(16-3)
「【0031】シクロデキストリンとして次のものが使用できる:α-シクロデキストリン(シクロヘキサアミロース、6-グルコース単位から環状に構成された)、β-シクロデキストリン(シクロヘプタアミロース、7-グルコース単位から環状に構成された)、γ-シクロデキストリン(シクロオクタアミロース、8-グルコース単位から環状に構成された)。」
摘記(16-4)
「【0055】今まで記載したチオクト酸およびジヒドロリポ酸ならびにそれらの塩のシクロデキストリン、多様な埋込み物質中への封入物および被覆された粒子の形での封入物は、噛砕き-または発泡錠剤としてまたは顆粒(発泡顆粒)として調製されて存在することができる。本発明による形が発泡顆粒または発泡錠剤である場合、これらはさらに常用の生理学的に懸念のない発泡混合物を含有する。この発泡混合物の量は、チオクト酸の重量に対して、0.05~30重量部である。このようなものは、水性もしくはアルコール性媒質中で酸の存在で二酸化炭素を発生する物質(CO2-供給物)および生理学的に認容性の有機酸からなる。
【0056】CO2-供給物質として、たとえば次のものが挙げられる:ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウムの炭酸塩または炭酸水素塩、マグネシウムおよびカルシウムの場合には、有利に中性の炭酸塩が有利である。これらの炭酸塩の混合物も可能である。このような炭酸塩から二酸化炭素を遊離する有機酸としては、次のものが挙げられる:2~8個の、有利に2~6個のC原子を有する有機の飽和または不飽和のジ-およびトリカルボン酸、これは1、2、3または4個の、有利に1または2個のヒドロキシ基を含有することもできる。これについての例は:クエン酸、酒石酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸である。同様にアルギン酸も使用可能である。同様に前記の酸の混合物も可能である。」
摘記(16-5)
「【0075】例7:α-シクロデキストリンとの包接化合物としてのチオクト酸1000mgを有する顆粒剤
チオクト酸33.01gを0.5mmのメッシュ幅の篩を通して篩別した。α-シクロデキストリン(水約10%を含有)172.8gを水700g中に50℃で懸濁させた。これに、アスコルビン酸Na3.3gを添加した。引続き、篩別したチオクト酸を添加した。こうして得られた懸濁液を50℃で3時間撹拌した。引続き、この懸濁液を濾過し、濾液を冷却させた(5℃で、12時間)。
【0076】その際生じた沈殿物を濾過により分離し、真空乾燥棚中で乾燥させた(30℃で2時間、圧力<10mbar)。こうして製造された粉末は、粉末1gあたりチオクト酸157.8mgを含有していた。この包接化合物50gをコポリビドン(Copolyvidon)1gおよびサッカリン-ナトリウム0.5gと混合し、少量の水の添加により通常の方法で造粒した。乾燥した顆粒を矯味剤2gおよび高分散二酸化ケイ素0.5gと混合し、薬袋中に6.84g充填した。薬袋1袋はα-シクロデキストリンとの包接化合物としてのチオクト酸1000mgを含有していた。」
摘記(16-1)より、引用文献16には、
「チオクト酸がシクロデキストリンとの包接化合物の形で存在する発泡錠剤。」の発明(以下、「引用発明16」という。)が記載されているといえる。
イ 本願補正発明と引用発明16との対比
本願補正発明と引用発明16とを対比する。
引用発明16の「チオクト酸」は、栄養補助食品の成分とされるものであるので(必要ならば、平成16年3月31日付け「医薬品の範囲に関する基準の一部改正について(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省医薬食品局長通知)」(薬食発第0331009号)(URL:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta8123&dataType=1&pageNo=1)の記2(1) 3)を参照)、本願補正発明の「栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤」に該当し、引用発明16の「チオクト酸がシクロデキストリンとの包接化合物の形で存在する」は、本願補正発明の「シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体」に該当する。
また、引用発明16の「発泡錠剤」は、摘記(16-4)及び本願明細書の発明の詳細な説明の段落0069の記載からみて、本願補正発明の「カーボネーション発生成分を含む…組成物」に該当する。
したがって、本願補正発明と引用発明16とは、
(一致点)
両者とも、
「シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体およびカーボネーション発生成分を含む組成物。」である点で一致し、
(相違点(16-a))
シクロデキストリンが、
本願補正発明では「α-シクロデキストリン」とされるのに対し、
引用発明16では「シクロデキストリン」とされる点で相違し(以下、「相違点(16-a)」という。)、
(相違点(16-b))
本願補正発明では、
「生理的条件下でゲスト分子が直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する」とされるのに対し、
引用発明16では、
その特定事項のない点で相違し(以下、「相違点(16-b)」という。)、
(相違点(16-c))
組成物が、
本願補正発明では「食品組成物」とされるのに対し、
引用発明16では「組成物」とされる点で相違する(以下、「相違点(16-c)」という。)。
ウ 相違点についての判断
(ア)相違点(16-a)について
摘記(16-3)には、シクロデキストリンとしてα-シクロデキストリンが挙げられており、また、摘記(16-5)には、チオクト酸をα-シクロデキストリンにより包接物とした具体例が記載されているから、当業者が、引用発明16の「シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体」のシクロデキストリンとして、α-シクロデキストリンを選択することは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ)相違点(16-b)について
「生理的条件下でゲスト分子が直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する」ことに関して、本願明細書等の段落0011及び段落0016には、脂肪分子がα-シクロデキストリンと実質的に不可逆的に結合する性質を有するものであって、α-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体において、ゲスト分子が「ホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する」状態にあれば、「生理的条件下でゲスト分子が脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合する」ものとなることが記載されている。
引用発明16は、チオクト酸を摂取者に吸収させるための組成物であるから、チオクト酸とシクロデキストリンとの会合は、当然、体内環境でα-シクロデキストリンからチオクト酸が放出され得る、弱くかつ可逆的なものと認められ、また、α-シクロデキストリンは、直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子と強く結合する性質を持つのだから、引用発明16の「シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体」のシクロデキストリンとして、α-シクロデキストリンを選択して「α-シクロデキストリンであるホスト分子」とした場合には、自ずと、「生理的条件下でゲスト分子が直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する」ものとなるといえる。
上記(ア)に示したとおり、相違点(16-a)は当業者が容易に想到し得たことである以上、相違点(16-b)はそれに伴い当業者が容易になし得たことである。
(ウ)相違点(16-c)について
引用発明16の「チオクト酸」は、上記イに示したとおり、栄養補助食品の成分とされるものであるから、引用発明16は食品組成物ということができ、また、摘記(16-2)に、チオクト酸を含有する顆粒を、食物と混ぜるかまたは液体中に懸濁させるか、もしくは食物または飲料物に溶かして適用することができることが記載されていることから、引用発明16を食物又は飲料物に溶かした形態の食品組成物にすることも、当業者が容易に想到し得たことである。
エ 効果についての判断
本願補正発明が発揮する、ホスト分子(α-シクロデキストリン)に弱く会合したゲスト分子(栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤)が包摂されるゲスト-ホスト複合体を利用することにより、ゲスト分子の送達機構として機能するとともに、脂肪分子と結合するホストを供給するという効果(【0008】等)は、本願明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌しても、引用文献16の記載及び技術常識に照らして、当業者の予想し得ない顕著な効果であるとは認められない。
オ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において
「この度の手続補正により、本発明の組成物において、シクロデキストリンはα-シクロデキストリンに特定され、生理的条件下でゲスト分子と置換される脂肪分子は、直鎖状飽和脂肪酸から選択されることが特定されました。
本明細書実施例1においては、α-シクロデキストリン又はβ-シクロデキストリンが直鎖飽和脂肪酸(パルミテート)を固定および捕捉することができ、特にα-シクロデキストリンが最も好適であることが実証されています。
一方、引用文献においては、α-シクロデキストリンの包接複合体が直鎖飽和脂肪酸を特に効果的に包接(捕捉)し、固定化することができることについて、何ら開示されていません。……。」などと述べて、本願補正発明は、引用文献16に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない旨を主張する。
しかし、直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子が、α-シクロデキストリンと実質的に不可逆的に結合する性質を有するものであることは、本願の優先日当時における技術常識である(必要ならば、樫野悦子 ほか,“シクロデキストリンと油性物質との相互作用”,日本家政学会誌,Vol.56,No.8,pp.533-539(2005)(URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1987/56/8/56_8_533/_pdf/-char/ja)の「4.要約」等を参照)から、請求人の主張によっても、上記ウに示した相違点についての判断及び上記エに示した効果についての判断を覆すことはできない。
カ 引用文献16に記載された発明に基づく進歩性についてのまとめ
上記ア~オにより、本願補正発明は、引用文献16に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)引用文献20に記載された発明に基づく進歩性
ア 引用文献20に記載された事項及び引用文献20に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、国際公開第2008/083213号(以下、「引用文献20」という。)には、次の記載がある(和訳として、ファミリー文献である特表2010-514794号公報の記載を示す)。下線は当審が付した。
摘記(20-1)
「特許請求の範囲
5. 少なくとも約88°Fの温度で約30日間保存された際、産物中のゲスト濃度が、約25%より多くは減少しない、シクロデキストリンと複合体化されたゲストを含む産物。
……
20. ゲストがフレーバーを含む、請求項1~11および13~19のいずれか一項記載の産物。
……
23. ゲストが栄養補助剤を含む、請求項1~11および13~19のいずれか一項記載の産物。
24. 飲料である、請求項1~23のいずれか一項記載の産物。
25. 飲料が炭酸飲料である、請求項24記載の産物。
……」
摘記(20-2)
「[0047] 本明細書において、そして付随する請求項において、用語「シクロデキストリン」は、デンプンの酵素変換によって形成される環状デキストリン分子を指してもよい。……。シクロデキストリンには、限定されるわけではないが、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、およびその組み合わせの少なくとも1つが含まれる。β-シクロデキストリンは、何らかの毒性効果を持つことは知られておらず、世界GRASとされ(すなわち一般的に安全と見なされている)、そして天然で、そしてFDAに認可されている。α-シクロデキストリンおよびγ-シクロデキストリンもまた、天然産物と見なされ、そして米国およびE.U.GRASとされている。」
摘記(20-3)
「[0053] ケトンフレーバーの例には、限定なしに:d-カルボン(キャラウェイ);l-カルボン(スペアミント);ジアセチル(バター、チーズ、「クリーム」);・・・およびその組み合わせの少なくとも1つが含まれてもよい。」
摘記(20-4)
「[0080] 本明細書において、そして付随する請求項において、用語「シクロデキストリン封入複合体」は、三次元空洞内にゲスト分子を捕捉しそして保持することにより、1以上のシクロデキストリン分子で、1以上のゲスト分子の少なくとも部分を被包する(分子レベルでの被包)ことによって形成される複合体を指す。ゲストは、水素結合および親水性-疎水性相互作用の少なくとも1つによって、ファンデルワールス力により空洞内の適所に保持されうる。シクロデキストリン封入複合体を水に溶解すると、ゲストが空洞から放出されうる。」
摘記(20-5)
「[0084] 本発明のシクロデキストリン封入複合体を多様な適用または最終産物中で用いてもよく、これには、限定なしに、食品(例えば炭酸飲料、柑橘飲料、レモネード、ジュース、ソフトドリンク、スポーツドリンク、ビタミン強化飲料などの飲料、サラダドレッシング、ポップコーン、シリアル、アップルソース、コーヒー、クッキー、ブラウニー、ゼラチン、他のデザート、他の焼き菓子、調味料など)、チューインガム、練り歯磨きおよび口内洗浄剤などの歯磨剤、キャンディ、香味料、香料、薬剤(例えば咳止めシロップ調製物など)、栄養補助剤、化粧品、農業適用(例えば除草剤、殺虫剤など)、写真乳剤、およびその組み合わせの少なくとも1つが含まれる。いくつかの態様において、さらにプロセシングされ、単離されそして乾燥されるべき中間体単離マトリックスとして(例えば廃棄物流とともに用いるものとして)、シクロデキストリン封入複合体を用いてもよい。」
摘記(20-6)
「[00153] 本発明の多様な特徴および側面が以下の実施例に示され、該実施例は、例示を意図され、そして限定を意図されない。すべての実施例は、別に記載しない限り、大気圧で実行された。
実施例1:β-シクロデキストリンおよびジアセチル、乳化剤としてのペクチンを含むシクロデキストリン封入複合体、ならびに該複合体を形成するためのプロセス
[00154] 大気圧で、100ガロン反応装置中、49895.1600g(110.02lb)のβ-シクロデキストリンを、997.9g(2.20lb)のビートペクチン(2wt%のペクチン:β-シクロデキストリン;Degussa-Franceより入手可能なXPQ EMP 5ビートペクチン)と乾式混合して、乾燥混合物を形成した。・・・次いで、反応装置を一時的に開放し、そして11226.4110g(24.75lb)のジアセチルを添加した(本明細書において以後、実施例中の「ジアセチル」は、Aldrich Chemical、ウィスコンシン州ミルウォーキーから購入したジアセチルを指す)。反応装置を再密封し、そして生じた混合物に熱を加えずに、これを8時間攪拌した。次いで、反応装置ジャケットをプロピレングリコール・クーラント系に連結した。クーラントを作動させて、およそ40°F(4.5℃)にし、そして混合物をおよそ36時間攪拌した。次いで、スプレー乾燥操作で典型的に用いられるものなどの高剪断タンク混合装置を用いて、混合物を乳化した。次いで、およそ410°F(210℃)の注入口温度およびおよそ221°F(105℃)の排出口温度を有するノズルドライヤー上で、混合物をスプレー乾燥した。シクロデキストリン封入複合体中で、ジアセチルの12.59wt%の保持パーセントを達成した。水分含量は、4.0%と測定された。シクロデキストリン封入複合体には、0.3%未満の表面ジアセチルが含まれ、そしてシクロデキストリン封入複合体の粒子サイズは、80メッシュのスクリーンを99.7%通過すると測定された。当業者は、加熱および冷却が、他の手段によって制御可能であることを理解するであろう。例えば、室温スラリーにジアセチルを添加してもよく、そして自動的に加熱および冷却してもよい。
実施例2:α-シクロデキストリンおよびジアセチル、乳化剤としてのペクチンを含むシクロデキストリン封入複合体、ならびに該複合体を形成するためのプロセス
[00155] 実施例1のβ-シクロデキストリンをα-デキストリンと置き換えて、そして1wt%ペクチン(すなわち1wt%のペクチン:β-シクロデキストリン;Degussa-Franceより入手可能なXPQ EMP 5ビートペクチン)と乾式混合した。混合物をプロセシングし、そして実施例1に示す方法によって乾燥させた。シクロデキストリン封入複合体中のジアセチルの保持パーセントは11.4wt%であった。」
摘記(20-1)及び摘記(20-5)より、引用文献20には、
「少なくとも約88°Fの温度で約30日間保存された際、産物中のゲスト濃度が、約25%より多くは減少しない、シクロデキストリンと複合体化されたゲストを含む産物であって、
ゲストがフレーバー又は栄養補助剤を含み、
炭酸飲料である前記産物。」の発明(以下、「引用発明20」という。)が記載されているといえる。
イ 本願補正発明と引用発明20との対比
本願補正発明と引用発明20とを対比する。
引用発明20の
「シクロデキストリンと複合体化されたゲストを含む産物であって、ゲストがフレーバー又は栄養補助剤を含み」は、本願補正発明の「シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体」に該当する。
また、引用発明20の「炭酸飲料」は、本願明細書の発明の詳細な説明の段落0069の記載及び摘記(20-5)からみて、本願補正発明の「カーボネーション発生成分を含む食品組成物」に該当する。
したがって、本願補正発明と引用発明20とは、
(一致点)
両者とも、
「シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体およびカーボネーション発生成分を含む食品組成物。」である点で一致し、
(相違点(20-a))
シクロデキストリンであるホスト分子が、
本願補正発明では「α-シクロデキストリンであるホスト分子」とされるのに対し、
引用発明20では「シクロデキストリン」とされる点で相違し(以下、「相違点(20-a)」という。)、
(相違点(20-b))
ゲスト-ホスト包接複合体におけるゲスト分子とホスト分子の状態について、
本願補正発明では、
「生理的条件下でゲスト分子が直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する」とされる一方、
引用発明20では、
その特定事項がない点で相違する(以下、「相違点(20-b)」という。)。
ウ 相違点についての判断
(ア)相違点(20-a)について
摘記(20-2)には、シクロデキストリンとしてα-シクロデキストリンが挙げられており、また、摘記(20-6)の実施例2には、ケトンフレーバーの一種であるジアセチル(摘記(20-3)参照)をα-シクロデキストリンと複合体化した具体例が記載されているから、当業者が、引用発明20のシクロデキストリンとしてα-シクロデキストリンを選択して「α-シクロデキストリンであるホスト分子」とすることは、容易に想到し得たことである。
(イ)相違点(20-b)について
「生理的条件下でゲスト分子が直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する」ことに関して、本願明細書等の段落0011及び段落0016には、脂肪分子がα-シクロデキストリンと実質的に不可逆的に結合する性質を有するものであって、α-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体において、ゲスト分子が「ホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する」状態にあれば、「生理的条件下でゲスト分子が脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合する」ものとなることが記載されている。
引用発明20は、フレーバー又は栄養補助剤を送達するためのものであり、かつ、摘記(20-4)には、シクロデキストリン封入複合体を水に溶解すると、ゲストが空洞から放出されうることも示されているから、フレーバー又は栄養補助剤を含むゲストとシクロデキストリンとの会合は、当然、体内環境でフレーバー又は栄養補助剤が放出され得る、弱くかつ可逆的なものと認められ、また、α-シクロデキストリンは、直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子と強く結合する性質を持つのだから、引用発明20の「シクロデキストリンと複合体化されたゲストを含む産物」のシクロデキストリンとして、α-シクロデキストリンを選択して「α-シクロデキストリンであるホスト分子」とした場合には、自ずと、「生理的条件下でゲスト分子が直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する」ものとなるといえる。
上記(ア)に示したとおり、相違点(20-a)は当業者が容易に想到し得たことである以上、相違点(20-b)はそれに伴い当業者が容易になし得たことである。
(ウ)相違点についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)より、相違点(20-a)及び相違点(20-b)は、引用文献20の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
エ 効果についての判断
本願補正発明が発揮する、ホスト分子(α-シクロデキストリン)に弱く会合したゲスト分子(栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤)が包摂されるゲスト-ホスト複合体を利用することにより、ゲスト分子の送達機構として機能するとともに、脂肪分子と結合するホストを供給するという効果(【0008】等)は、本願明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌しても、引用文献20の記載及び技術常識に照らして、当業者の予想し得ない顕著な効果であるとは認められない。
オ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において
「この度の手続補正により、本発明の組成物において、シクロデキストリンはα-シクロデキストリンに特定され、生理的条件下でゲスト分子と置換される脂肪分子は、直鎖状飽和脂肪酸から選択されることが特定されました。
本明細書実施例1においては、α-シクロデキストリン又はβ-シクロデキストリンが直鎖飽和脂肪酸(パルミテート)を固定および捕捉することができ、特にα-シクロデキストリンが最も好適であることが実証されています。
一方、引用文献においては、α-シクロデキストリンの包接複合体が直鎖飽和脂肪酸を特に効果的に包接(捕捉)し、固定化することができることについて、何ら開示されていません。……。」などと述べて、本願補正発明は、引用文献20に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない旨を主張する。
しかし、直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子は、α-シクロデキストリンと実質的に不可逆的に結合する性質を有するものであることは、本願の優先日当時における技術常識である(必要ならば、樫野悦子 ほか,“シクロデキストリンと油性物質との相互作用”,日本家政学会誌,Vol.56,No.8,pp.533-539(2005)(URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1987/56/8/56_8_533/_pdf/-char/ja)の「4.要約」等を参照)から、請求人の主張によっても、上記ウに示した相違点についての判断及び上記エに示した効果についての判断を覆すことはできない。
カ 引用文献20に記載された発明に基づく進歩性についてのまとめ
上記ア~オにより、本願補正発明は、引用文献20に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明15、引用発明16、引用発明20のそれぞれに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
2-3.補正の適否についてのむすび
以上のとおり、本件補正後の特許請求の範囲の請求項2~11に係る発明について検討するまでもなく、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記のとおり、却下されたので、本願の請求項1~17に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定される、次のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】
α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体を含む食品組成物であって、
生理的条件下でゲスト分子が脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する食品組成物。
【請求項2】
組成物が、飲料である食品である、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
組成物が乾燥固体であり、水を組成物に添加すると、飲料が得られる、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項4】
組成物が、デンプンを含む食品である、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項5】
組成物が、穀物粒またはデンプン質の根から調製された食品である、請求項4に記載の食品組成物。
【請求項6】
α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体を含む、飲料を調製するための組成物であって、
生理的条件下でゲスト分子が脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する組成物。
【請求項7】
組成物が乾燥固体であり、水を組成物に添加すると、飲料が得られる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、錠剤、ペレット、顆粒、または粉末の形をとる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
組成物が、水を添加すると発泡性飲料になる粉末である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子であって、生理的条件下で脂肪分子で置換されて次に脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体を含む食品組成物を調製する方法であって、
a)ホスト分子とゲスト分子を、ゲスト-ホスト包接複合体を形成するのに適した条件下で合わせるステップと、
b)ゲスト-ホスト包接複合体を精製および単離するステップと、
c)精製されたゲスト-ホスト包接複合体と1種または複数の追加の成分を合わせて、食品組成物を得るステップと
を含む方法。
【請求項11】
ゲスト-ホスト包接複合体を精製するステップが、複合体形成していないゲスト分子を除去することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ホスト分子とゲスト分子を合わせるステップが、溶液、懸濁液、またはスラリーを調製することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ホスト分子とゲスト分子を合わせるステップが、ドライブレンドプロセスを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ホスト分子とゲスト分子を合わせるステップが、飽和溶液の調製を含み、ゲスト-ホスト包接複合体を精製するステップが、包接複合体の結晶化および濾過を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
動物の消化管で吸収される脂肪を低減する方法であって、
a)α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と栄養補助食品、香味剤、香味改良剤、芳香性物質または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体を含む食品を調製するステップであって、ホスト分子およびゲスト分子が、動物の消化管内でゲスト分子がホスト分子から実質的に遊離されかつホスト分子が消化管に存在する脂肪分子と第2のゲスト-ホスト包接複合体を形成するように選択されるステップと、
b)その後の摂取のために、調製された食品を動物に供給するステップであって、食品の摂取により、脂肪分子がホスト分子に実質的に不可逆的に結合し、それによって消化管から除去されるステップと
を含む方法。
【請求項16】
食品を調製するステップが、飲料であるかまたは水と混合すると飲料になる乾燥固体である食品組成物を調製することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
脂肪分子とホスト分子との実質的に不可逆的な結合によって、水不溶性のゲスト-ホスト包接複合体が生成する、請求項15に記載の方法。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、令和3年12月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由1~3であり、その概要は、次のとおりの理由を含むものである。
「1.(発明該当性)この出願の下記の請求項に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
2.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
(A)
●理由1(発明該当性)について
・請求項:15~17
上記請求項に係る「動物の消化管で吸収される脂肪を低減する方法」の発明は、人間を治療する方法を包含しており、これは医療行為であるから、産業上利用することができる発明に該当しない。
……。
……
(E)
●理由2(新規性)、理由3(進歩性)について
・請求項:1~14
・引用文献:9~20
……
<引用文献等一覧>
……
15.特開平07-238008号公報
16.特開平07-188304号公報
……
20.国際公開第2008/083213号
……」
3 原査定の拒絶の理由についての判断
事案に鑑み、理由3について検討する。
請求項1に係る発明は、本願補正発明における特定事項のうち、
・「α-シクロデキストリンであるホスト分子」を「α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子」とし、
・「直鎖状飽和脂肪酸から選択される脂肪分子」を「脂肪分子」とし、
・「ゲスト-ホスト包接複合体およびカーボネーション発生成分」を「ゲスト-ホスト包接複合体」としたものであるから、請求項1に係る発明は、本願補正発明を包含するものである。
そして、本願補正発明は、前記第2 2 2-2.(2)カ、(3)カ及び(4)カに示したとおり、引用発明15、引用発明16、引用発明20のいずれかに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明もまた、引用発明15、引用発明16、引用発明20のいずれかに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明は、引用発明15、引用発明16、引用発明20のいずれかに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-002785