特許拒絶査定不服審判
2023-000814
エンジン装置
- 審判番号
- 2023-000814
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-103826外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年01月18日
- 審決日
- 2024年10月29日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人 佐野特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (F02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-103826「エンジン装置」拒絶査定不服審判事件〔令和3年9月30日出願公開、特開2021-152366〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特願2021-103826号(以下、「本願」という。)は、平成28年4月26日に出願した特願2016-88492号(以下、「原出願」という。)の一部を令和3年6月23日に新たな特許出願としたものであり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和4年5月 20日付け:拒絶理由通知(発送日:同年5月31日)
令和4年7月26日 :意見書の提出
令和4年10月20日付け:拒絶査定(発送日:同年10月25日)
令和5年 1月18日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和5年 7月 3日付け:拒絶理由通知(発送日:同年7月4日)
令和5年8月24日 :意見書及び手続補正書の提出
令和5年12月12日付け:拒絶理由通知<最後>(発送日:同年12月
19日)
令和6年2月15日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 令和6年2月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年2月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「 【請求項1】
過給機に、潤滑油を注油する注油管が連結されたエンジン装置であって、
前記潤滑油が通るオイルフィルタがシリンダブロックに配置され、オイルクーラが前記オイルフィルタと前記シリンダブロックの間に配置され、
前記注油管の一端は、潤滑油導入継手を介して前記シリンダブロックに接続され、他端は、潤滑油導出継手を介して前記過給機に接続され、
前記潤滑油導入継手は、前記潤滑油導出継手よりも前後方向の一方側に配置され、
前記シリンダブロックにおける前後方向の一方の面側にフライホイルが配置され、
前記潤滑油導入継手は、前記潤滑油導出継手よりも前記フライホイル側に配置され、
前記シリンダブロック上に搭載されるシリンダヘッドの左右方向の一方の側面に、排気マニホールドが配置され、
前記注油管は、前記排気マニホールドの前記フライホイル側から前記排気マニホールドの外周を迂回して前記潤滑油導出継手に接続されている、エンジン装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の、令和5年8月24日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
過給機に、潤滑油を注油する注油管が連結されたエンジン装置であって、
前記注油管の一端は、潤滑油導入継手を介してシリンダブロックに接続され、他端は、潤滑油導出継手を介して前記過給機に接続され、
前記潤滑油導入継手は、前記潤滑油導出継手よりも前後方向の一方側に配置され、
前記シリンダブロックにおける前後方向の一方の面側にフライホイルが配置され、
前記潤滑油導入継手は、前記潤滑油導出継手よりも前記フライホイル側に配置され、
前記シリンダブロック上に搭載されるシリンダヘッドの左右方向の一方の側面に、排気マニホールドが配置され、
前記注油管は、前記排気マニホールドの前記フライホイル側から前記排気マニホールドの外周を迂回して前記潤滑油導出継手に接続されている、エンジン装置。」
2 補正の適否
2-1 本件補正の目的
(1)請求項1に係る補正について
本件補正における請求項1に関する補正の内容について検討する。
本件補正後の請求項1において追加された「前記潤滑油が通るオイルフィルタがシリンダブロックに配置され、オイルクーラが前記オイルフィルタと前記シリンダブロックの間に配置され、」という事項については、本件補正前の請求項1に係る発明のいずれの事項について限定を付加するものではないことから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものではなく、また、特許法第17条の2第5項各号のその他のいずれを目的とするものでもない。
2-2 独立特許要件
本件補正は、上記2-1のとおり、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもないが、仮に、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当するとした場合について、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下 、「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献1の記載事項及び引用発明
ア 引用文献1の記載事項
(ア)原出願の出願前に日本国内又は外国において頒布され令和5年12月12日付け拒絶理由通知において引用文献1とした特開2011-196336号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
a「【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機を備えるエンジンに関し、特に、過給機に潤滑油を速やかに供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャーや排気タービン式過給機等と称される過給機(以下単に「過給機」という。)を備えるエンジンは、広く一般に普及している。過給機は、同一の回転軸上に設けられるタービン及びコンプレッサと、これらを収めるハウジングと、を備えている。過給機を備えるエンジンでは、排気ガスのエネルギーによってタービンが回転し、このタービンと共に回転するコンプレッサが吸気を圧縮し、この圧縮された吸気が各シリンダへと送り込まれる。これにより、シリンダ内の吸気充填効率が向上するため、エンジンの出力が増大する。
【0003】
ここで、タービン及びコンプレッサは、排気ガスのエネルギーによって高速で回転するため、回転軸を支持する軸受が非常に摩耗し易い、という問題があった。そこで、流体軸受の一種であるフローティングメタル式軸受が、回転軸の軸受として一般的に採用されている。フローティングメタル式軸受は、外輪と内輪との間が潤滑油で満たされて、金属同士が接触しないため、転がり軸受に比べて摩耗が少ないという特徴がある。フローティングメタル式軸受を潤滑する潤滑油は、エンジンに備えられる潤滑装置によって過給機に供給される。
【0004】
そして、従来より、エンジンに備えられる潤滑装置によって、過給機に潤滑油を供給する技術が公知となっている。特許文献1には、オイルポンプが圧送した潤滑油を、油路によって過給機に送る過給機焼付防止装置が記載されている。特許文献1に記載の過給機焼付防止装置における油路は、オイルポンプからメインギャラリを経由して過給機に至る。」
b「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の過給機焼付防止装置における油路は、メインギャラリを経由するため、メインギャラリ内における潤滑油の圧力損失により、過給機における潤滑油圧力の立ち上がり(潤滑油圧力の上昇)速度が遅くなり、過給機に潤滑油を速やかに供給できない、という問題があった。
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、過給機に潤滑油を速やかに供給することができるエンジンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上のとおりであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
すなわち、請求項1においては、過給機と、該過給機を含むエンジン各部に潤滑油を供給する潤滑装置と、を備え、該潤滑装置は、潤滑油を圧送するオイルポンプと、該オイルポンプからの潤滑油を前記エンジン各部へと分配するメインギャラリと、前記オイルポンプから該メインギャラリを経由して過給機に至る潤滑油の通路となるメイン油路と、を備えるエンジンにおいて、前記潤滑装置は、バイパス油路を備え、該バイパス油路は、前記メイン油路から分岐して前記メインギャラリを経由せずに前記過給機に至る潤滑油の通路となるものである。
【0010】
請求項2においては、前記メイン油路上には、潤滑油を冷却するオイルクーラが設けられ、前記バイパス油路は、前記オイルクーラを経由せずに前記過給機に至る潤滑油の通路となるものである。
【0011】
請求項3においては、前記バイパス油路の途中には、開閉弁が設けられ、該開閉弁は、前記メインギャラリ内の油圧が所定値未満の場合は「開」となり、該メインギャラリ内の油圧が該所定値以上の場合は「閉」となるものである。
【0012】
請求項4においては、前記バイパス油路及び前記メイン油路は、油路を一部共有するものである。
【0013】
請求項5においては、前記バイパス油路は、前記メイン油路から分岐する流入管と、前記メイン油路と共有する油路であり、該流入管からの潤滑油を前記過給機に送る流出管と、を備え、該流入管、該流出管及び前記メインギャラリは、管継手部材を介して接続され、該管継手部材には、前記流入管と接続される第一流入孔、前記メインギャラリと接続される第二流入孔、及び前記流出管と接続される流出孔が連通可能に設けられ、該流出孔は、該第一流入孔と該第二流入孔との接続部近傍に設けられ、該第一流入孔の流路面積は、該第二流入孔の流路面積よりも大きいものである。
【0014】
請求項6においては、前記管継手部材は、ボルトによって構成されるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1においては、バイパス油路によって潤滑油を過給機に送ることにより、メインギャラリ内における潤滑油の圧力損失を回避することができる。従って、潤滑装置によって、過給機における潤滑油圧力を速やかに立ち上げて、過給機に潤滑油を速やかに供給することができる。
【0017】
請求項2においては、バイパス油路によって潤滑油を過給機に送ることにより、オイルクーラ内における潤滑油の圧力損失を回避することができる。従って、オイルクーラを備えるエンジンであっても、潤滑装置によって、過給機における潤滑油圧力を速やかに立ち上げて、過給機に潤滑油を速やかに供給することができる。
【0018】
請求項3においては、メインギャラリ内の油圧が小さい場合(エンジンの始動直後等、潤滑油の温度が低い場合)は、開閉弁が「開」となり、バイパス油路によって潤滑油が過給機に送られる。一方、メインギャラリ内の油圧が大きい場合(エンジンの始動から一定時間経過後等、潤滑油の温度が高い場合)は、開閉弁が「閉」となってバイパス油路内の潤滑油の流れが遮断され、メイン油路によって潤滑油が過給機に送られる。従って、潤滑装置によって、潤滑油の温度が低い場合は、過給機における潤滑油圧力を速やかに立ち上げて、過給機に潤滑油を速やかに供給することができると共に、潤滑油の温度が高い場合は、潤滑油をオイルクーラで冷却して、潤滑油の過度の温度上昇を防止することができる。
【0019】
請求項4においては、油路の一部を共有化することにより、部品コストの増加を抑制して、エンジンの製造コストの増加を抑制することができる。
【0020】
請求項5においては、流路面積が大きい第一流入孔内の油圧の方が、流路面積が小さい第二流入孔内の油圧よりも大きくなり、流入管からの潤滑油の方がメインギャラリからの潤滑油よりも流出孔側(流出管)に流れ易いため、バイパス油路内の潤滑油の流れがスムーズになる。従って、潤滑装置によって、過給機における潤滑油圧力を速やかに立ち上げて、過給機に潤滑油を速やかに供給することができる。
【0021】
請求項6においては、安価な部品であるボルトにより、部品コストの増加を抑制して、エンジンの製造コストの増加を抑制することができる。」
c「【0025】
図1から図3に示すように、エンジン1は、直列四気筒型のエンジンである。なお、エンジンの気筒配列及び気筒数は、本実施形態に係る直列及び四気筒に限定するものではない。エンジン1において、シリンダブロック10内には、クランク軸11が前後方向に架設される。クランク軸11の前後両端部は、それぞれシリンダブロック10の前後両側から突出する。シリンダブロック10の上側には、シリンダヘッド12が取り付けられる。」
d「【0027】
シリンダヘッド12の左側面には、排気マニホールド14が取り付けられる。シリンダヘッド12の左側面側には、過給機16が配置される。過給機16を含むエンジン各部には、潤滑装置によって潤滑油が供給される。シリンダブロック10の下側には、潤滑油を貯溜するオイルパン17が取り付けられる。
【0028】
シリンダブロック10の前面側には、ラジエータ(図示省略)に冷却風を送風する冷却ファン18が配置される。冷却ファン18には、クランク軸11前端側からベルト181を介してクランク軸11の動力が伝達される。
【0029】
シリンダブロック10の後面側には、フライホイル19が配置される。フライホイル19は、クランク軸11後端側に取り付けられ、クランク軸11と一体的に回転する。フライホイル19は、フライホイルハウジング191内に収められる。」
e「【0036】
図1に戻って、シリンダブロック10の右側面には、オイルフィルタ21が取り付けられ、オイルフィルタ21の近傍には、オイルポンプ22(図5参照)が取り付けられる。シリンダブロック10の右側面においてオイルフィルタ21の上方には、オイルクーラ23が取り付けられる。
【0037】
そして、シリンダブロック10の右側部には、前後方向に伸びるメインギャラリ24が形成されると共に、オイルポンプ22からオイルクーラ23までの潤滑油の通路となる第一油路25(図5参照)、及びオイルクーラ23からメインギャラリ24までの潤滑油の通路となる第二油路26(図5参照)が形成される。第一油路25の途中には、オイルフィルタ21が設けられる。
【0038】
また、潤滑油の通路となる流入管27が、シリンダブロック10の右側面に沿って配置される。具体的には、流入管27は、シリンダブロック10の右側面に沿ってオイルフィルタ21から後上方に斜めに延び、管継手部材となる管継手ボルト28を介してメインギャラリ24に至るように配置される。流入管27は、パイプ状の部材(例えば鋼管)によって構成される。流入管27の途中には、開閉弁29が設けられる。
【0039】
図1から図3に示すように、潤滑油の通路となる流出管30が、シリンダブロック10の右側面、後面、左側面、及びシリンダヘッド12の左側面に沿って配置される。具体的には、流出管30は、シリンダブロック10の右側面に沿ってメインギャラリ24(管継手ボルト28)からシリンダブロック10の上部まで延びた後、シリンダブロック10の後面に沿って左右略水平方向に延びてシリンダブロック10の左側面に至り、その後、シリンダヘッド12の左側面及びシリンダヘッド12の左側面に沿って上方に延びて過給機16に至るように配置される。流出管30は、パイプ状の部材(例えば鋼管)によって構成される。流出管30の過給機16側の端部は、タービンハウジング161又は/及びコンプレッサハウジング162に設けられる前記油路(フローティングメタル式軸受に潤滑油を供給するための油路)に接続される。
【0040】
次に、潤滑装置について、図5から図9により説明する。
【0041】
図5に示すように、潤滑装置は、オイルポンプ22と、オイルフィルタ21と、オイルクーラ23と、メインギャラリ24と、メイン油路31と、バイパス油路32と、開閉弁29と、を備えている。
【0042】
オイルポンプ22は、濾し器221及び吸入管222を介してオイルパン17内の潤滑油を汲み上げて圧送するものであり、本実施形態ではトロコイドポンプとされている。なお、オイルポンプは、トロコイドポンプに代えて、ギヤポンプとしてもよい。
【0043】
オイルクーラ23は、潤滑油を冷却するものであり、本実施形態では水冷式の多板式オイルクーラとされている。図6に示すように、オイルクーラ23は、内部に潤滑油(図6中の黒塗り矢印)の通路が形成されたプレート231・231・・・が、ケース232内に複数枚重ねて設けられ、ケース232内においてプレート231・231・・・の外側を冷却水(図6中の白塗り矢印)が流れるように構成されている。なお、オイルクーラは、多板式オイルクーラに代えて、多管式オイルクーラとしてもよい。
【0044】
図5に戻って、メインギャラリ24は、オイルポンプ22からの潤滑油をエンジン各部(クランク軸11、吸排気弁を駆動するカム軸33、過給機16等)へと分配する。メインギャラリ24からは、クランク軸11に至る油路241、カム軸33に至る油路242、過給機16に至る流出管30等が分岐する。
【0045】
メイン油路31は、オイルポンプ22からオイルクーラ23及びメインギャラリ24を経由して過給機16に至る潤滑油の通路となる。メイン油路31は、第一油路25と、第二油路26と、流出管30と、を備えている。
【0046】
バイパス油路32は、メイン油路31のオイルクーラ23及びメインギャラリ24よりも上流側であってオイルフィルタ21よりも下流側から分岐してメインギャラリ24を経由せずに過給機16に至る潤滑油の通路となる。バイパス油路32は、第一油路25から分岐する流入管27と、メイン油路31と共有する油路であり、流入管27からの潤滑油を過給機16に送る流出管30と、を備えている。流入管27と流出管30とは、管継手ボルト28を介して接続される。
【0047】
流入管27は、第一油路25の分岐箇所Aから分岐する。分岐箇所Aは、第一油路25において、オイルフィルタ21の潤滑油出口側に設けられて、オイルフィルタ21とオイルクーラ23(メインギャラリ24)との間に位置する。これにより、オイルフィルタ21を通過して第一油路25内に流れ込んだ潤滑油は、オイルクーラ23(メインギャラり24)に至る前に、分岐箇所Aにおいてオイルクーラ23側と流入管27側とに分岐する。
【0048】
図7に示すように、開閉弁29の弁ケース291内には、弁体293が移動可能に設けられる。弁体293は、バネ292によってメインギャラリ24側に付勢される。弁ケース291において、弁体293を挟んでメインギャラリ24側は、メインギャラリ24と接続される一方、メインギャラリ24と反対側は、流入管27と接続される。
【0049】
このような構成により、弁体293をメインギャラリ24側に付勢する力(バネ292の付勢力と流入管27内の油圧との和)よりも、メインギャラリ24内の油圧が小さい場合(潤滑油の温度が低い場合)は、弁体293がメインギャラリ24側に移動して、開閉弁29が「開」となる。一方、弁体293をメインギャラリ24側に付勢する力よりも、メインギャラリ24内の油圧が大きい場合(潤滑油の温度が高い場合)は、弁体293が反対側に移動(図7に示す二点鎖線の位置)して、開閉弁29が「閉」となって流入管27内の潤滑油の流れが遮断される。
【0050】
図8及び図9に示すように、管継手ボルト28は、メインギャラリ24と連通するボルト孔(図示省略)にねじ込まれて、シリンダブロック10の右側面に取り付けられる(図1参照)。管継手ボルト28の頭部281には、流入管27が取り付けられ、軸部282には流出管30が取り付けられる。」
f「【0056】
次に、潤滑装置における潤滑油の流れについて、図5及び図10により説明する。
【0057】
先ず、図5に示すように、メインギャラリ24内の油圧が小さい場合(エンジンの始動直後等、潤滑油の温度が低い場合)は、開閉弁29が「開」となり、バイパス油路32によって潤滑油が過給機16に送られる。なお、図5中の黒矢印は、潤滑油の流れを示し、黒矢印のうち太い矢印が、過給機16への潤滑油の流れを示す。
【0058】
具体的には、図5に示すように、オイルポンプ22が圧送した潤滑油は、オイルフィルタ21によって潤滑油に混入している不純物(ゴミやスラッジ、金属粉等)が取り除かれた後、第一油路25内に流れ込む。そして、第一油路25内の潤滑油は、分岐箇所Aにおいてオイルクーラ23側と流入管27側とに分岐する。
【0059】
オイルクーラ23側に分岐した潤滑油は、オイルクーラ23で冷却された後、第二油路26内を流れてメインギャラリ24内に流れ込む。メインギャラリ24内の潤滑油は、油路241によってクランク軸11に供給され、油路242によってカム軸33に供給される。
【0060】
一方、流入管27側に分岐した潤滑油は、「開」となっている開閉弁29を通過して、管継手ボルト28の第一流入孔284内に流れ込むと共に、メインギャラリ24からの潤滑油も、管継手ボルト28の第二流入孔283内に流れ込む。そして、メインギャラリ24内の油圧が小さい結果、第一流入孔284内の油圧が第二流入孔283内の油圧よりも大きくなると、第一流入孔284内の潤滑油(流入管27からの潤滑油)が、流出孔285・285内に流れ込む(第二流入孔283内の潤滑油(メインギャラリ24からの潤滑油)は、流出孔285・285内に流れ込まない。)。従って、流出孔285・285内に流れ込んだ流入管27からの潤滑油が、流出管30内を流れて過給機16に供給される。
【0061】
次に、図10に示すように、メインギャラリ内の油圧が大きい場合(エンジンの始動から一定時間経過後等、潤滑油の温度が高い場合)は、開閉弁29が「閉」となり、メイン油路31によって潤滑油が過給機16に送られる。なお、図10中の黒矢印は、潤滑油の流れを示し、黒矢印のうち太い矢印が、過給機16への潤滑油の流れを示す。
【0062】
具体的には、図10に示すように、流入管27側に分岐した潤滑油は、「閉」となっている開閉弁29によって遮断されるため、管継手ボルト28側に流れない。一方、オイルクーラ23側に分岐した潤滑油は、前述の通り、メインギャラリ24内に流れ込み、クランク軸11及びカム軸33に供給される。
【0063】
そして、潤滑油の温度上昇によってメインギャラリ24内の油圧が大きくなった結果、第二流入孔283内の油圧が第一流入孔284内の油圧よりも大きくなると、第二流入孔283内の潤滑油(メインギャラリ24からの潤滑油)が、流出孔285・285内に流れ込む(第一流入孔284内の潤滑油(流入管27からの潤滑油)は、流出孔285・285内に流れ込まない。)。従って、流出孔285・285内に流れ込んだメインギャラリ24からの潤滑油が、流出管30内を流れて過給機16に供給される。
【0064】
以上のように、本発明の一実施形態に係るエンジン1は、過給機16と、過給機16を含むエンジン各部に潤滑油を供給する潤滑装置と、を備え、潤滑装置は、潤滑油を圧送するオイルポンプ22と、オイルポンプ22からの潤滑油をエンジン各部へと分配するメインギャラリ24と、オイルポンプ22からメインギャラリ24を経由して過給機16に至る潤滑油の通路となるメイン油路31と、を備えるエンジン1において、潤滑装置は、バイパス油路32を備え、バイパス油路32は、メイン油路31から分岐してメインギャラリ24を経由せずに過給機16に至る潤滑油の通路となるものである。
【0065】
このような構成により、バイパス油路32によって潤滑油を過給機16に送ることにより、メインギャラリ24内における潤滑油の圧力損失を回避することができる。従って、潤滑装置によって、過給機16における潤滑油圧力を速やかに立ち上げて、過給機16に潤滑油を速やかに供給することができる。
【0066】
そして、メイン油路31上には、潤滑油を冷却するオイルクーラ23が設けられ、バイパス油路32は、オイルクーラ23を経由せずに過給機16に至る潤滑油の通路となるものである。
【0067】
このような構成により、バイパス油路32によって潤滑油を過給機16に送ることにより、オイルクーラ23内における潤滑油の圧力損失を回避することができる。従って、オイルクーラ23を備えるエンジン1であっても、潤滑装置によって、過給機16における潤滑油圧力を速やかに立ち上げて、過給機16に潤滑油を速やかに供給することができる。
【0068】
また、バイパス油路32の途中には、開閉弁29が設けられ、開閉弁29は、メインギャラリ24内の油圧が所定値未満の場合は「開」となり、メインギャラリ24内の油圧が所定値以上の場合は「閉」となるものである。
【0069】 このような構成により、メインギャラリ24内の油圧が小さい場合(エンジン1の始動直後等、潤滑油の温度が低い場合)は、開閉弁29が「開」となり、バイパス油路32によって潤滑油が過給機16に送られる。一方、メインギャラリ24内の油圧が大きい場合(エンジン1の始動から一定時間経過後等、潤滑油の温度が高い場合)は、開閉弁29が「閉」となってバイパス油路32内の潤滑油の流れが遮断され、メイン油路31によって潤滑油が過給機16に送られる。従って、潤滑装置によって、潤滑油の温度が低い場合は、過給機16における潤滑油圧力を速やかに立ち上げて、過給機16に潤滑油を速やかに供給することができると共に、潤滑油の温度が高い場合は、潤滑油をオイルクーラ23で冷却して、潤滑油の過度の温度上昇を防止することができる。
【0070】
さらに、バイパス油路32及びメイン油路31は、流出管30を共有するものである。
【0071】
このような構成により、流出管30を共有化することにより、部品コストの増加を抑制して、エンジン1の製造コストの増加を抑制することができる。
【0072】
そして、バイパス油路32は、メイン油路31から分岐する流入管27と、メイン油路31と共有する油路であり、流入管27からの潤滑油を過給機16に送る流出管30と、を備え、流入管27、流出管30及びメインギャラリ24は、管継手ボルト28を介して接続され、管継手ボルト28には、流入管27と接続される第一流入孔284、メインギャラリ24と接続される第二流入孔283、及び流出管30と接続される流出孔285・285が連通可能に設けられ、流出孔285・285は、第一流入孔284と第二流入孔283との接続部近傍に設けられ、第一流入孔284の流路面積は、第二流入孔283の流路面積よりも大きいものである。
【0073】
このような構成により、流路面積が大きい第一流入孔284内の油圧の方が、流路面積が小さい第二流入孔283内の油圧よりも大きくなり、流入管27からの潤滑油の方がメインギャラリ24からの潤滑油よりも流出孔285・285側(流出管30)に流れ易いため、バイパス油路32内の潤滑油の流れがスムーズになる。従って、潤滑装置によって、過給機16における潤滑油圧力を速やかに立ち上げて、過給機16に潤滑油を速やかに供給することができる。
【0074】
また、管継手部材は、管継手ボルト28によって構成されるものである。
【0075】
このような構成により、安価な部品であるボルトにより、部品コストの増加を抑制して、エンジン1の製造コストの増加を抑制することができる。」
g「【0076】
なお、実施の形態は、上記に限定されるものではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0077】
図11に示すように、開閉弁29には、バネ(バネ292に相当するもの)を設けなくてもよい。
【0078】
このような構成により、弁体293をメインギャラリ24側に付勢する力(流入管27内の油圧)よりも、メインギャラリ24内の油圧が小さい場合(潤滑油の温度が低い場合)は、弁体293がメインギャラリ24側に移動して、開閉弁29が「開」となる。一方、弁体293をメインギャラリ24側に付勢する力よりも、メインギャラリ24内の油圧が大きい場合(潤滑油の温度が高い場合)は、弁体293が反対側に移動(図11に示す二点鎖線の位置)して、開閉弁29が「閉」となって流入管27内の潤滑油の流れが遮断される。
【0079】 図12に示すように、流入管27を管継手ボルト28に接続せずに過給機16に接続してもよい。このような構成により、開閉弁29から過給機16までの配管の長さが短くなり、バイパス油路32の送油距離を短くすることができる。従って、過給機16に潤滑油を速やかに供給することができるとともに、部品コストの増加を抑制して、エンジン1の製造コストの増加を抑制することができる。」
h「
[図:0001418543000001.jpg]
」(【図1】)
i「
[図:0001418543000002.jpg]
」(【図2】)
j「
[図:0001418543000003.jpg]
」(【図3】)
k「
[図:0001418543000004.jpg]
」(【図4】)
l「
[図:0001418543000005.jpg]
」(【図5】)
m「
[図:0001418543000006.jpg]
」(【図7】)
n「
[図:0001418543000007.jpg]
」(【図8】)
o「
[図:0001418543000008.jpg]
」(【図9】)
p「
[図:0001418543000009.jpg]
」(【図10】)
(イ)引用文献1の記載から以下の事項が認定できる。
a 上記(ア)eの段落【0039】の記載、上記(ア)eの段落【0050】の記載、上記(ア)hの【図1】の図示内容、上記(ア)kの【図4】の図示内容、上記(ア)nの【図8】の図示内容及び上記(ア)oの【図9】の図示内容からみて、流出管30の管継手ボルト28側の端部は、管継手ボルト28を介してシリンダブロック10に取り付けられ、過給機16側の端部は、過給機16側の管継手を介して過給機16に接続されていることが看取される。
b 上記(ア)hの【図1】の図示内容及び上記(ア)iの【図2】の図示内容からみて、管継手ボルト28は、過給機16側の管継手よりも前面側に配置されていることが看取される。
c 上記(ア)hの【図1】の図示内容及び上記(ア)iの【図2】の図示内容からみて、管継手ボルト28は、過給機16側の管継手よりも前面側に配置されていることが看取される。
d 上記(ア)eの段落【0039】の記載、上記(ア)hの【図1】ないし上記(ア)kの【図4】の図示内容からみて、流出管30は、排気マニホールド14のフライホイル19側から過給機16側の管継手に接続されていることが看取される。
イ 引用発明
上記アを総合すると、引用文献1には、実施の形態として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「 過給機16に、潤滑油を供給する流出管30が取り付けられたエンジン1であって、
潤滑油が流れるオイルフィルタ21がシリンダブロック10に取り付けられ、オイルクーラ23がオイルフィルタ21の上方であってシリンダブロック10の右側面に取り付けられ、
流出管30の管継手ボルト28側の端部は、管継手ボルト28を介してシリンダブロック10に取り付けられ、過給機16側の端部は、過給機16側の管継手を介して過給機16に接続され、
管継手ボルト28は、過給機16側の管継手よりも前面側に配置され、
シリンダブロック10における後面側にフライホイル19が配置され、
管継手ボルト28は、過給機16側の管継手よりも前面側に配置され、
シリンダブロック10の上側に取り付けられるシリンダヘッド12の左側面に、排気マニホールド14が取り付けられ、
流出管30は、排気マニホールド14のフライホイル19側から過給機16側の管継手に接続されている、
エンジン1。」
(3)引用文献2ないし4の記載及び引用文献2ないし4にて例示される周知技術1
ア 引用文献2の記載事項及び引用文献2に記載された技術的事項
(ア)引用文献2の記載事項
a 原出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された特開2003-65023号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(a)「【0015】車両にシリンダ軸線C2を傾斜させて搭載したエンジン2には、シリンダブロック4下方の傾斜下側の側面26にエンジン側アダプタ取付部48を設けている。エンジン側アダプタ取付部48には、図4に示す如く、オイル入口通路50とオイル出口通路52とを設けている。エンジン側アダプタ取付部48には、オイルフィルタアダプタ54が取付けられる。オイルフィルタアダプタ54は、エンジン側アダプタ取付部48に図示しないアダプタ取付ボルトにより取付けられる本体部56と、この本体部56から延設される連絡部58と、この連絡部58の先端に連設されるアダプタ側オイルフィルタ取付部60とを有している。
【0016】前記本体部56は、短円柱形状に形成され、軸方向の一端側に前記エンジン側アダプタ取付部48に取付けられるアダプタ側エンジン取付部62を設け、他端側にアダプタ側オイルクーラ取付部64を設けている。アダプタ側オイルクーラ取付部64には、短円柱形状に形成されたオイルクーラ66のクーラ側アダプタ取付部68を当接させ、クーラ取付ボルト70を締付けることによりオイルクーラ66を取付けて設けている。オイルクーラ66には、冷却水入口管72と冷却水出口管74とによりエンジン2の冷却水が貫流され、オイルを冷却する。
【0017】前記連絡部58は、オイルフィルタアダプタ54をエンジン2に取付けた状態において車両前側に指向するように本体部56の外周から延設され、オイル導入管部76とオイル導出管部78とから構成される。オイル導入管部76とオイル導出管部78との先端には、アダプタ側オイルフィルタ取付部60を設けている。アダプタ側オイルフィルタ取付部60には、円柱形状のオイルフィルタ80の長手方向一端側のフィルタ側アダプタ取付部82を当接させ、図示しないフィルタ取付ボルトによりオイルフィルタ80を取付けて設けている。
【0018】オイルフィルタ80は、エンジン2のオイルポンプ(図示せず)の吐出するオイルをエンジン側アダプタ取付部48のオイル入口通路50からオイルフィルタアダプタ54のオイル導入管部76を経て導入し、オイル中の不純物や塵埃を除去してオイル導出管部78によりオイルクーラ66側に導出する。オイルクーラ66により冷却されたオイルは、オイル出口通路52を経てエンジン2のメインギャラリ(図示せず)に戻される。」
(b)「
[図:0001418543000010.jpg]
」(【図1】)
(c)「
[図:0001418543000011.jpg]
」(【図4】)
b 引用文献2の記載から以下の事項が認定できる。
(a)上記a(a)の記載並びに上記a(b)の【図1】の図示内容及び上記a(c)の【図4】の図示内容からみて、オイルクーラ66がオイルフィルタ80とシリンダブロック4の間に取付けて設けられるものであることが理解できる。
(イ)引用文献2に記載された周知の技術的事項
上記(ア)を総合すると、引用文献2には、次の周知の技術的事項が記載されているものと認められる。
「 オイルがエンジン側アダプタ取付部48のオイル入口通路50からオイルフィルタアダプタ54のオイル導入管部76を経て導入し、オイル中の不純物や塵埃を除去してオイル導出管部78により導出するオイルフィルタ80がシリンダブロック4に取付けたオイルフィルタアダプタ54に取付けて設けられ、オイルクーラ66がオイルフィルタ80とシリンダブロック4の間に取付けて設けられること。」
イ 引用文献3の記載事項及び引用文献3に記載された技術的事項
(ア)引用文献3の記載事項
a 原出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された実願昭57-188385号(実開昭59-91468号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(a)「第1図は本考案の第1実施例によるディーゼルエンジンの燃料加熱装置を示すものであり、第2図はその断面図である。なお第2図においては熱交換器下部を90°回転されて図示してある。第1図に示されるようにエンジンのシリンダブロックあるいはシリンダヘッド等のエンジン本体1には取付ブラケット2がボルト等によって固定され、該取付ブラケット2にオイルフィルター3、オイル冷却用熱交換器4および燃料加熱用熱交換器5が取り付けられている。」(明細書第6ページ第1行ないし第11行)
(b)「第2図に示すようにオイルフィルター3は、缶状のフィルターケース10内に略円筒状のフィルターエレメント11を収容してなり、その底面中央には、先端部外周面に雄ネジ12aが設けられた中空の取付ボルト12が固着されている。オイル冷却用熱交換器4は隔壁4aによって内部空間が細かく仕切られた要素2個が上下方向に積層されてなるものであり、その中央部には貫通孔が設けられている。また燃料加熱用熱交換器5も上記オイル冷却用熱交換器4の要素と同様の要素からなるものであり、これら両熱交換器4,5は、前記オイルフィルター3がその取付ボルト12をオイル流入孔6の大径の開口部内周面に形成された雄ネジ2cに螺合、締結させて取付ブラケット2に固定される際に、上記中央の貫通孔に該取付ボルト12を通してこのオイルフィルター3とともに、該取付ブラケット2に共締め固定される。
このようにオイルフィルター3、熱交換器4,5が一体的に取付ブラケット2に固定されると、オイルフィルター3のフィルターエレメント11内側は中空の取付ボルト12を介してオイル流入孔6と連通する。したがってエンジン本体1内のオイル通路高圧部から供給されるエンジン潤滑オイルは、第2図中実線の矢印で示すようにフィルターエレメント11の内側から外側に浸透通過し、該オイルに含まれていた不純物が該フィルターエレメント11に捕捉される。
フィルターエレメント11の内側から外側に通過して清浄化された潤滑オイルは、フィルターケース10の底面に設けられた連通孔10aからフィルターケース10外に流出し、オイル冷却用熱交換器4の環状の当接部(突出部)4bとフィルターケース10底面との間に画成された空間14から、連通孔4cを通って該熱交換器4の潤滑オイル通路4d内に流入する。この潤滑オイル通路4dは隔壁4aによって仕切られた平たい小室が連通孔4fによって部分的に連通する状態に形成されてなるものであり、潤滑オイルはこの潤滑オイル通路4d内を迂流した後、連通孔4gからオイル冷却用熱交換器4外に流出する。上記隔壁4aによって潤滑オイル通路4dと仕切られた部分は、積層小室が連通孔4hによって部分的に連通されて冷却水通路4kが形成され、該冷却水通路4kの一端には冷却水流入孔15が、そして他端には冷却水流出孔16が連通されている。冷却水流入孔15、流出孔16はそれぞれ、図示しない配管によってエンジン冷却水通路の高圧部、低圧部に連通され、したがってエンジン冷却水は第2図中破線の矢印で示すように冷却水流入孔15から上記冷却水通路4k内に流入し、該通路4k内を流れて冷却水流出孔16から流出する。このとき、エンジン潤滑オイルは隔壁4aを介して該冷却水によって冷却される。それによって潤滑オイルの温度上昇が抑えられ、オイル粘度の低下、油性の劣化が防止される。
前述のように連通孔4gからオイル冷却用熱交換器4外に流出した潤滑オイルは、該オイル冷却用熱交換器4下端部の環状の当接部(突出部)4lと、該当接部4lに当接する燃料加熱用熱交換器5の上端部の環状の当接部(突出部)5bとの間に画成された空間17から、連通孔5cを通って該熱交換器5の潤滑オイル通路5d内に流入する。この潤滑オイル通路5dは前記オイル冷却用熱交換器4の潤滑オイル通路4dと同様に形成されており、流入した潤滑オイルは連通孔5eを通過して該潤滑オイル通路5dを迂流し、下端部の環状の当接部(突出部)5gの内側に形成された連通孔5hから熱交換器5外に流出する。該当接部5gと取付ブラケット2との間に画成された空間18に流出した潤滑オイルは、オイル流入孔6のまわりに形成された環状溝2dに開口したオイル流出孔7に流入し、エンジン本体1内のオイル通路に環流する。隔壁5aによって潤滑オイル通路5dと仕切られた部分は、積層小室が連通孔5kによって部分的に連通されて燃料通路5lとされ、該通路5lの一端には燃料流入孔19が、そして他端には燃料流出孔20が連通されている。」(明細書第7ページ第4行ないし第11ページ第8行)
(c)「
[図:0001418543000012.jpg]
」(第1図)
(d)「
[図:0001418543000013.jpg]
」(第2図)
b 引用文献3の記載から以下の事項が認定できる。
(a)上記a(a)の記載及び上記a(b)の記載並びに上記a(c)の第1図の図示内容及び上記a(d)の第2図の図示内容からみて、オイル冷却用熱交換器4がオイルフィルター3とエンジンのシリンダブロックあるいはシリンダヘッド等のエンジン本体1の間に取り付けられるものであることが理解できる。
(イ)引用文献3に記載された周知の技術的事項
上記(ア)を総合すると、引用文献3には、次の周知の技術的事項が記載されているものと認められる。
「 エンジン潤滑オイルが通過するオイルフィルター3がエンジンのシリンダブロックあるいはシリンダヘッド等のエンジン本体1に固定された取付ブラケット2に取り付けられ、オイル冷却用熱交換器4がオイルフィルター3とエンジンのシリンダブロックあるいはシリンダヘッド等のエンジン本体1の間に取り付けられること。」
ウ 引用文献4の記載事項及び引用文献4に記載された周知の技術的事項
(ア)引用文献4の記載事項
a 原出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された実願平3-99529号(実開平5-47340号)のCD-ROM(以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(a)「 【0007】
ウォータインレット通路4近傍のシリンダーブロック1の側面には、図1に示すように、取付けフランジ5が同ブロックと一体成形されており、この取付けフランジ5には図3に示す水冷式のオイルクーラ6が装着される。オイルクーラ6は潤滑オイルを冷却するもので、その冷却にはエンジ内部を循環している冷却水が用いられている。また、このオイルクーラ6の一方にはオイルフィルタ7が一体的に装着されており、他方、つまりフランジ部5との接触面6Aには図5に示すオイルシール7が装着されている。
【0008】
取付けフランジ5の中央には、図5に示すオイルクーラ6の排油口6aと連通する排出部5aが、その周部には同クーラ6の吸油口6bにつながるオイル溜り5bが、さらに、フランジ5の上部縁にはオイルクーラ6の給水口6c、排水口6dにそれぞれ連通する冷却水の吸入路5cと排出路5dがシリンダーブロック1と一体成形されている。」
(b)「
[図:0001418543000014.jpg]
」(【図1】)
(c)「
[図:0001418543000015.jpg]
」(【図3】)
b 引用文献4の記載から以下の事項が認定できる。
(a)上記a(a)の記載並びに上記a(b)の【図1】の図示内容及び上記a(c)の【図3】の図示内容からみて、オイルクーラ6がオイルフィルタ7とシリンダーブロック1の間に装着されるものであることが理解できる。
(イ)引用文献4に記載された周知の技術的事項
上記(ア)を総合すると、引用文献4には、次の周知の技術的事項が記載されているものと認められる。
「 潤滑オイルが通るオイルフィルタ7がシリンダーブロック1と一体成形された取付けフランジ5に装着されたオイルクーラ6の一方に一体的に装着され、オイルクーラ6がオイルフィルタ7とシリンダーブロック1の間に装着されること。」
エ 引用文献2ないし4にて例示される周知技術1
上記アないしウを踏まえると、エンジン装置の技術分野において
「潤滑油が通るオイルフィルタがシリンダブロックに配置され、オイルクーラがオイルフィルタとシリンダブロックの間に配置されること。」
は原出願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。)といえる。
(4)引用文献5ないし7の記載及び引用文献5ないし7にて例示される周知技術2
ア 引用文献5の記載事項及び引用文献5に記載された周知の技術的事項
(ア)引用文献5の記載事項
a 原出願の出願前に日本国内又は外国において頒布され令和5年12月12日付け拒絶理由通知において引用文献2とした特開2013-133796号公報(以下、「引用文献5」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(a)「【0014】
(1).エンジンの概略構造
はじめに、図1~図6を参照しながら、コモンレール式のエンジン1の概略構造について説明する。なお、以下の説明では、クランク軸線と平行な両側部(クランク軸線を挟んで両側の側部)を左右、冷却ファン9配置側を前側、フライホイルハウジング10配置側を後側と、排気マニホールド7配置側を左側、吸気マニホールド6配置側を右側と称して、これらを便宜的に、エンジン1における四方及び上下の位置関係の基準としている。」
(b)「【0016】
エンジン1は、エンジン出力軸であるクランク軸3とピストン(図示省略)とを内蔵したシリンダブロック4を備えている。シリンダブロック4上にはシリンダヘッド5が搭載されている。シリンダヘッド5の右側面に吸気マニホールド6が配置され、シリンダヘッド5の左側面には排気マニホールド7が配置されている。シリンダヘッド5の上面側はヘッドカバー8にて覆われている。シリンダブロック4の前後両側面から、クランク軸3の前後両端側を突出させている。エンジン1の前面側に冷却ファン9が設けられている。クランク軸3の前端側から冷却ファン用Vベルト22を介して冷却ファン9に回転動力が伝達される。」
(c)「【0025】
図1~図5に示すように、シリンダヘッド5の右側方で且つ排気マニホールド7の上方には、ターボ過給機32が配置されている。ターボ過給機32は、タービンホイル(図示省略)を内蔵したタービンケース33と、ブロアホイル(図示省略)を内蔵したコンプレッサケース34とを備えている。タービンケース33の排気入口側は、排気マニホールド7の出口部に接続されている。タービンケース33の排気出口側は、DPF2を介してテールパイプ(図示省略)に連結されている。エンジン1の各気筒から排気マニホールド7に排出された排気ガスは、ターボ過給機32のタービンケース33及びDPF2等を経由して、テールパイプから外部に放出される。」
(d)「
[図:0001418543000016.jpg]
」(【図1】)
(e)「
[図:0001418543000017.jpg]
」(【図2】)
(f)「
[図:0001418543000018.jpg]
」(【図4】)
b 引用文献5の記載から以下の事項が認定できる。
(a) 上記a(d)の【図1】及び上記a(e)の【図2】の図示内容からみて、ターボ過給機32をシリンダブロック4におけるクランク軸線方向の略中央に配置するものであることが看取される。
(イ)引用文献5に記載された周知の技術的事項
上記(ア)を総合すると、引用文献5には、次の周知の技術的事項が記載されているものと認められる。
「シリンダブロック4の上方にターボ過給機32が配置されたエンジン1において、ターボ過給機32をシリンダブロック4におけるクランク軸線方向の略中央に配置すること。」
イ 引用文献6の記載及び引用文献6に記載された周知の技術的事項
(ア)引用文献6の記載事項
a 原出願の出願前に日本国内又は外国において頒布され令和5年12月12日付け拒絶理由通知において引用文献3とした国際公開第2016/060026号(以下、「引用文献6」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(a)「[0033] エンジン5のターボ過給機81は、ブロアホイルを内蔵したコンプレッサケース83を備えており、コンプレッサケース83の吸気取入れ側を、給気管222を介してエアクリーナ221の吸気排出側と接続する一方、コンプレッサケース83の吸気排出側を、上流側中継管223と接続する。ターボ過給機81は、タービンホイルを内蔵したタービンケース82を備えており、タービンケース82の排気取入れ側を排気マニホールド57の排気ガス出口と連結する一方、タービンケース82の吸気排出側を、後処理装置である排気ガス浄化装置52の排気ガス入口と連結する。」
(b)「[0073] 本実施形態では、図16に示すように、ターボ過給機81の潤滑油取込み口が、潤滑油供給管89を介して、オイルフィルタ支持部材88の潤滑油吐出口88bに連結している。ターボ過給機81は、フローティングメタル式軸受に潤滑油を供給するための油路が設けられている。オイルフィルタ支持部材88の潤滑油吐出口88bと連通させた潤滑油供給管89が、シリンダブロック54の右側面とシリンダヘッド55の後面及び左側面とに沿って配置され、ターボ過給機81に設けた前記油路(フローティングメタル式軸受に潤滑油を供給するための油路)に接続される。」
(c)「[0090] 図23~図31を参照しながら、上記作業車両に搭載されるコモンレール式のディーゼルエンジン5の概略構造について説明する。なお、以下の説明では、出力軸53に沿う両側部(出力軸53を挟んだ両側部)を左右、冷却ファン59配置側を前側、フライホイル61配置側を後側、排気マニホールド57配置側を左側、吸気マニホールド56配置側を右側と称し、これらを便宜的に、ディーゼルエンジン5における四方及び上下の位置関係の基準としている。」
(d)「[0092] ディーゼルエンジン5は、出力軸53(クランク軸)とピストン(図示省略)とを内蔵するシリンダブロック54を備える。シリンダブロック54上にシリンダヘッド55を搭載している。シリンダヘッド55の右側面に吸気マニホールド56を配置する。シリンダヘッド55の左側面に排気マニホールド57を配置する。すなわち、ディーゼルエンジン5において出力軸53に沿う両側面に、吸気マニホールド56と排気マニホールド57とを振り分けて配置する。シリンダヘッド55の上面にヘッドカバー58を配置する。ディーゼルエンジン5において出力軸53と交差する一側面、具体的にはシリンダブロック54の前面に、冷却ファン59を設ける。出力軸53の前端側から冷却ファン用Vベルト72aを介して、冷却ファン59に回転動力を伝達する。」
(e)「[0103] シリンダヘッド5の左側方で排気マニホールド57の上方には、ターボ過給機81を配置している。ターボ過給機81は、タービンホイル内蔵のタービンケース82と、ブロアホイル内蔵のコンプレッサケース83とを備えている。排気マニホールド57の出口部にタービンケース81の排気取込側を連結する。タービンケース81の排気排出側は、排気連絡管84を介して、排気ガス浄化装置52の排気取込側と連結している。すなわち、ディーゼルエンジン5の各気筒から排気マニホールド7に排出した排気ガスは、ターボ過給機81及び排気ガス浄化装置52等を経由して外部に放出される。」(審決注:「排気マニホールド7」は「排気マニホールド57」の誤記と認める。))
(f)「
[図:0001418543000019.jpg]
」([図23])
(g)「
[図:0001418543000020.jpg]
」([図29])
b 引用文献6の記載から以下の事項が認定できる。
(a)上記a(f)の[図23]及び上記a(g)の[図29]の図示内容からみて、ターボ過給機81をシリンダブロック54における出力軸53に沿う方向の略中央に配置するものであることが看取される。
(イ)引用文献6に記載された周知の技術的事項
上記(ア)を総合すると、引用文献6には、次の周知の技術的事項が記載されているものと認められる。
「シリンダブロック54の上方にターボ過給機81が配置されたディーゼルエンジン5において、ターボ過給機81をシリンダブロック54における出力軸53に沿う方向の略中央に配置すること。」
ウ 引用文献7の記載及び引用文献7に記載された周知の技術的事項
(ア)引用文献7の記載事項
a 原出願の出願前に日本国内又は外国において頒布され令和5年12月12日付け拒絶理由通知において引用文献4とした特開2006-316657号公報(以下、「引用文献7」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(a)「【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る過給機付エンジンAの車輌後方側の側部を示す図であり、要部を実線でその他を破線で示したものである。過給機付エンジンAは、エンジン本体を構成するシリンダブロック1とシリンダブロック1上に設けられたシリンダヘッド2とを備え、シリンダブロック1内の複数の気筒(本実施形態では4気筒)が直列に配列されている、直列4気筒式のガソリンエンジンである。本実施形態の過給機付エンジンAは気筒列方向が車幅方向となるように車輌前部のエンジンルーム内において横置きにて配置されることを前提とし、過給機付エンジンAの車輌前方側の側部には吸気系要素が、車輌後方側の側部には排気系要素がそれぞれ配設される。以下、排気系要素について説明する。
【0012】
シリンダヘッド2には排気マニホールド3が接続されている。排気マニホールド3は各気筒毎の排気通路を形成する4つの分岐管を備え、その下部で排気通路が合流するよう接続されている。なお、以下、各/気筒を個別に言うときは図1の右側の気筒から順に気筒♯1、♯2、♯3、♯4という。排気マニホールド3には過給機4のタービンケース部が一体鋳造され、その結果、排気マニホールド3と過給機4とが接続されている。なお、排気マニホールドとタービンケース部とは別々製作されたものであってもよいことは言うまでもない。
【0013】
過給機4は、タービン室41と、コンプレッサ室42と、タービン室41とコンプレッサ42との間に介在し、不図示のロータシャフトを軸支する軸受部43と、を備え、これらがシリンダブロック1内の各気筒の気筒列方向(本実施形態では車幅方向)に並ぶよう配設されている。排気マニホールド3とタービン室41とは連通しており、排気マニホールド3からの排気ガスはタービン室41内に導入され、タービン室41内のタービンホイールに回転力を付勢して不図示の排気管に接続される排気口44から排出される。コンプレッサ室42にはタービンホイールと同軸のコンプレッサホイールが収納されており、不図示のエアークリーナ、エアフローメータからの空気をコンプレッサホイールの回転により吸気口45から吸引して過給する。
【0014】
過給された空気は吸気出口46から排出され、不図示のパイプ、インタークーラ等を通過して車輌前方側に配置されたエアーインテーク2aへ導入される。過給機4には負圧アクチュエータ47が取り付けられており、作動ロッド47aを介して、不図示のバイパス弁を開閉する。バイパス弁は排気マニホールド3からの排気ガスをタービン室42を介さずに排気口44へ排出させるバイパス通路を開閉する。」
(b)「
[図:0001418543000021.jpg]
」(【図1】)
(c)「
[図:0001418543000022.jpg]
」(【図2】)
(d)「
[図:0001418543000023.jpg]
」(【図3】)
b 引用文献7の記載から以下の事項が認定できる。
(a) 上記a(a)の段落【0011】及び【0012】の記載並びに上記a(b)の【図1】の図示内容からみて、過給機付エンジンAは、シリンダブロック1の上方に過給機4が配設されたものであることが理解できる。
(b) 上記a(a)の段落【0011】ないし【0013】の記載並びに上記a(b)の【図1】及び上記a(d)の【図3】の図示内容からみて、過給機4をシリンダブロック1における気筒列方向の略中央に配設するものであることが理解できる。
(イ)引用文献7に記載された周知の技術的事項
上記(ア)を総合すると、引用文献7には、次の周知の技術的事項が記載されているものと認められる。
「シリンダブロック1の上方に過給機4が配設された過給機付エンジンAにおいて、過給機4をシリンダブロック1における気筒列方向の略中央に配設すること。」
エ 引用文献5ないし7にて例示される周知技術
上記アないしウを踏まえると、エンジン装置の技術分野において、
「シリンダブロックの上方に過給機が配置されたエンジン装置において、過給機をシリンダブロックにおける長手方向の略中央に配置すること。」
は原出願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。)といえる。
(5)引用文献6に記載された技術的事項
ア 引用文献6の記載事項
(ア)引用文献6には、上記(4)イ(ア)aに加えて、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「[0031] エンジン5の後側面から後ろ向きに突設するエンジン出力軸53には、フライホイル61を直結するように取り付けている。両端に自在軸継手を有する動力伝達軸29を介して、フライホイル61から後ろ向きに突出した主動軸27と、ミッションケース17前面側から前向きに突出した主変速入力軸28とを連結している。ミッションケース17内には、油圧無段変速機、前後進切換機構、走行副変速ギヤ機構及び後輪用差動ギヤ機構を配置している。エンジン5の回転動力は、主動軸27及び動力伝達軸29を経由してミッションケース17の主変速入力軸28に伝達され、油圧無段変速機及び走行副変速ギヤ機構によって適宜変速される。そして、当該変速動力が後輪用差動ギヤ機構を介して左右の後車輪4に伝達される。」
b 「
[図:0001418543000024.jpg]
」([図17])
c 「
[図:0001418543000025.jpg]
」([図20])
d 「
[図:0001418543000026.jpg]
」([図27])
e 「
[図:0001418543000027.jpg]
」([図30])
(イ)引用文献6の記載から以下の事項が認定できる。
a 上記(4)イ(ア)の記載及び図示内容並びに上記(ア)の記載及び図示内容からみて、潤滑油供給管89は、排気マニホールド57のフライホイル61側から排気マニホールド57の略後方及び略上方を経由してターボ過給機81側の管継手に連通されていることが看取される。
イ 引用文献6に記載された技術的事項
上記(4)イ(ア)及びアを総合すると、引用文献6には、次の技術的事項(以下、「引用文献6記載技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
「潤滑油供給管89は、排気マニホールド57のフライホイル61側から排気マニホールド57の略後方及び略上方を経由してターボ過給機81側の管継手に連通されていること。」
(6)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明における「過給機16」は本件補正発明における「過給機」に相当し、以下同様に、「潤滑油」は「潤滑油」に、「供給する」ことは「注油する」ことに、「流出管30」は「注油管」に、「取り付けられた」ことは「連結された」ことに、「エンジン1」は「エンジン装置」に、それぞれ相当する。
(イ)引用発明における「流れる」ことは本件補正発明における「通る」ことに相当し、以下同様に、「オイルフィルタ21」は「オイルフィルタ」に、「シリンダブロック10」は「シリンダブロック」に、「取り付けられ」ることは「配置され」ることに、「オイルクーラ23」は「オイルクーラ」に、「取り付けられ」ることは「配置され」ることに、それぞれ相当する。そして、引用発明における「オイルクーラ23がオイルフィルタ21の上方であってシリンダブロック10の右側面に取り付けられ」ることは本件補正発明における「オイルクーラがオイルフィルタとシリンダブロックの間に配置され」ることと「オイルクーラがシリンダブロック上に配置され」ることという限りで一致する。
(ウ)引用発明における「管継手ボルト28」は本件補正発明における「潤滑油導入継手」に相当し、以下同様に、「流出管30の管継手ボルト28側の端部」は「注油管の一端」に、「取り付けられ」ることは「接続され」ることに、「過給機16側の端部」は「他端」に、「過給機16側の管継手」は「潤滑油導出継手」に、「接続され」ることは「接続され」ることに、それぞれ相当する。
(エ)引用発明における「前面側」は本件補正発明における「前後方向の一方側」に相当し、同様に、「配置され」ることは「配置され」ることに相当する。
(オ)引用発明における「後面側」は本件補正発明における「前後方向の一方の面側」に相当し、以下同様に、「フライホイル19」は「フライホイル」に、「配置され」ることは「配置され」ることに、それぞれ相当する。
(カ)引用発明における「前面側」は本件補正発明における「フライホイル側」と「前後方向の一方側」の限りにおいて一致する。また、引用発明における「配置され」ることは本件補正発明における「配置され」ることに相当する。
(キ)引用発明における「シリンダブロック10の上側」は本件補正発明における「シリンダブロック上」に相当し、以下同様に、「取り付けられる」ことは「搭載される」ことに、「シリンダヘッド12」は「シリンダヘッド」に、「左側面」は「左右方向の一方の側面」に、「排気マニホールド14」は「排気マニホールド」に、「取り付けられ」ることは「配置され」ることに、それぞれ相当する。
(ク)引用発明における「排気マニホールド14のフライホイル19側」は本件補正発明における「排気マニホールドのフライホイル側」に相当し、以下同様に、「接続されている」ことは「接続されている」ことに、それぞれ相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「 過給機に、潤滑油を注油する注油管が連結されたエンジン装置であって、
潤滑油が通るオイルフィルタがシリンダブロックに配置され、オイルクーラがシリンダブロック上に配置され、
注油管の一端は、潤滑油導入継手を介してシリンダブロックに接続され、他端は、潤滑油導出継手を介して過給機に接続され、
潤滑油導入継手は、潤滑油導出継手よりも前後方向の一方側に配置され、
シリンダブロックにおける前後方向の一方の面側にフライホイルが配置され、
潤滑油導入継手は、潤滑油導出継手よりも前後方向の一方側に配置され、
シリンダブロック上に搭載されるシリンダヘッドの左右方向の一方の側面に、排気マニホールドが配置され、
注油管は、排気マニホールドのフライホイル側から潤滑油導出継手に接続されている、
エンジン装置。」
<相違点1>
シリンダブロック上に配置される「オイルクーラ」について、本件補正発明では、オイルクーラがオイルフィルタ「と」シリンダブロック「の間」に配置されるものであるのに対し、引用発明では、オイルクーラ23(オイルクーラ)がオイルフィルタ21(オイルフィルタ)「の上方であって」シリンダブロック10「の右側面」に取り付けられるものである点。
<相違点2>
潤滑油導出継手よりも「前後方向の一方側」に配置される潤滑油導入継手について、本件補正発明では、潤滑油導入継手は、潤滑油導出継手よりも「フライホイル側」に配置されるものであるのに対し、引用発明では、管継手ボルト28(潤滑油導入継手)は、過給機16側の管継手(潤滑油導出継手)よりも「前面側」(フライホイル側の反対側)に配置される(配置される)ものである点。
<相違点3>
排気マニホールドのフライホイル側から潤滑油導出継手に接続されている注油管について、本件補正発明では、「排気マニホールド(「排気マニホールド14」)の外周を迂回して」潤滑油導出継手に接続されているのに対し、引用発明では、そのようなものであるか明らかでない点。
(7)判断
ア 相違点の検討
(ア)相違点1について
上記(3)エのとおり、エンジン装置の技術分野において、
「潤滑油が通るオイルフィルタがシリンダブロックに配置され、オイルクーラがオイルフィルタとシリンダブロックの間に配置されること」
は原出願の出願前に周知の技術(周知技術1)である。
一方、引用発明のシリンダブロック10(シリンダブロック)に取り付けられ(配置され)たオイルクーラ23(オイルクーラ)は、オイルフィルタ21(オイルフィルタ)の上方であってシリンダブロック10(シリンダブロック)の右側面に取り付けられ(配置され)てはいるものの、その位置とする固有の事情があるとまでは認められない。
そうすると、エンジン装置が備える各種機器の配置については、当業者の設計上の自由度の範囲内で適宜選択を試みるのが通常であるところ、引用文献1の段落【0006】及び【0007】に記載された引用発明の課題解決を阻害することなく、引用発明においても他の配置の選択を試みるべく、オイルクーラ23(オイルクーラ)の取り付け(配置)について、周知技術1のようにオイルフィルタとシリンダブロックの間を選択することは当業者の通常の創作能力の発揮により適宜なし得るものである。
なお、引用発明において、オイルクーラ23(オイルクーラ)の取り付け(配置)について、周知技術1のようなオイルフィルタとシリンダブロックの間を選択する際に、引用文献1の段落【0006】及び【0007】に記載された課題を解決する上で、引用文献1の段落【0041】、【0046】、【0047】、【0057】、【0058】、【0060】及び【0064】ないし【0073】等に記載され【図1】及び【図5】に図示された流入管27を備えるバイパス油路32を備えることについては、オイルクーラ23(オイルクーラ)の取り付け(配置)についての形式変更に伴う通常の設計変更の範囲内で適宜なし得るものであって、特段困難性を伴うものとは認められず、かかる設計変更を伴う上記位置の選択が何ら阻害されるものとは認められない。
してみると、引用発明及び周知技術1に基いて相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項に想到することは当業者が容易になし得るものである。
(イ)相違点2及び3について
上記拒絶理由通知において説示したのと同様に、相違点2及び3(上記拒絶理由通知においては相違点1及び2)をまとめて検討する。
上記(4)エのとおり、エンジン装置の技術分野において、
「シリンダブロックの上方に過給機が配置されたエンジン装置において、過給機をシリンダブロックにおける長手方向の略中央に配置すること」
は原出願の出願前に周知の技術(周知技術2)である。
一方、引用発明のエンジン1(エンジン装置)に取り付けられた(連結された)過給機16(過給機)のシリンダブロック10(シリンダブロック)における前後方向の位置については、引用文献1の段落【0027】の「シリンダヘッド12の左側面側には、過給機16が配置される。」なる記載並びに【図1】及び【図2】の図示内容からみて「シリンダヘッド12の左側面側」のうちシリンダブロック10(シリンダブロック)における後面側(前後方向の一方の面側)に配置され(配置され)てはいるものの、その位置とする固有の事情があるとまでは認められない。
そうすると、エンジン装置が備える各種機器の配置については、当業者の設計上の自由度の範囲内で適宜選択を試みるのが通常であるところ、引用文献1の段落【0006】及び【0007】に記載された引用発明の課題解決を阻害することなく、引用発明においても他の配置の選択を試みるべく、引用発明のエンジン1(エンジン装置)のシリンダブロック10(シリンダブロック)の上方に配置された過給機16(過給機)のシリンダブロック10(シリンダブロック)における前後方向の位置について、周知技術2のようにシリンダブロックにおける長手方向の略中央を選択することは当業者の通常の創作能力の発揮により適宜なし得るものである。
なお、引用発明において、エンジン1(エンジン装置)のシリンダブロック10(シリンダブロック)の上方に配置された過給機16(過給機)のシリンダブロック10(シリンダブロック)における前後方向の位置について、周知技術2のようなシリンダブロックにおける長手方向の略中央を選択することは、前提となる過給機16(過給機)の配置の形式の変更に過ぎず、かかる位置の選択により、引用文献1の段落【0006】及び【0007】に記載された「メインギャラリを経由するため、メインギャラリ内における潤滑油の圧力損失により、過給機における潤滑油圧力の立ち上がり(潤滑油圧力の上昇)速度が遅くなり、過給機に潤滑油を速やかに供給できない、という問題があった」(段落【0006】)「状況に鑑みて」「過給機に潤滑油を速やかに供給することができるエンジンを提供する」(段落【0007】)という課題を解決する上で、引用文献1の段落【0041】、【0046】、【0047】、【0057】、【0058】、【0060】及び【0064】ないし【0073】等に記載され【図1】及び【図5】に図示されたバイパス油路32によって潤滑油を過給機16に送ることにより、メインギャラり24内における潤滑油の圧力損失を回避できるようにすることが何ら妨げられるものではなく、上記位置の選択は阻害されるものとは認められない。
そして、そのような過給機16(過給機)のシリンダブロック10(シリンダブロック)における前後方向の位置の選択に伴い、引用文献1の【図4】に図示された引用発明の過給機16(過給機)の上部に設けられている過給機16側の管継手(潤滑油導出継手)も、シリンダブロック10(シリンダブロック)における前後方向の略中央に位置することとなるといえる。かかる位置は、引用文献1の【図1】に図示された引用発明の管継手ボルト28(潤滑油導入継手)の位置よりも右側に位置することとなるといえる。これを【図1】の左端に図示されたフライホイル19(フライホイル)との関係でみると、相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項のように、管継手ボルト28(潤滑油導入継手)が、過給機16側の管継手(潤滑油導出継手)よりもシリンダブロック10(シリンダブロック)側に配置され(配置され)ることとなるのは明らかであるといえる。
してみると、引用発明及び周知技術2に基いて相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項に想到することは当業者が容易になし得るものである。
また、上記(5)イのとおり、引用文献6には、以下の引用文献6記載技術的事項が記載されていると認められる。
「潤滑油供給管89は、排気マニホールド57のフライホイル61側から排気マニホールド57の略後方及び略上方を経由してターボ過給機81側の管継手に連通されていること。」
ここで、引用文献6記載技術的事項における「潤滑油供給管89」は本願発明における「注油管」に相当し、以下同様に、「排気マニホールド57」は「排気マニホールド」に、「フライホイル61側」は「フライホイル側」に、「排気マニホールド57」は「排気マニホールド」に、「排気マニホールド57の略後方及び略上方を経由して」は「排気マニホールドの外周を迂回して」に、「ターボ過給機81側の管継手」は「潤滑油導出継手」に、「連通されている」ことは「接続されている」ことに、それぞれ相当する。
そうすると、引用文献6記載技術的事項を本件補正発明の用語を用いて整理すると以下のようになる。
「注油管は、排気マニホールドのフライホイル側から排気マニホールドの外周を迂回して潤滑油導出継手に接続されていること。」
そして、上記のように引用文献1の【図4】に図示された引用発明の過給機16(過給機)の上部に設けられている過給機16側の管継手(潤滑油導出継手)もシリンダブロック10(シリンダブロック)における前後方向の略中央に位置することとなることに伴い、過給機16側の管継手(潤滑油導出継手)に至るまでの潤滑油供給管89(注油管)の配置について、引用文献6記載技術的事項を参酌することにより、相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易になし得るものである。
そして、本願発明が奏する効果は、全体としてみても、引用発明、周知技術1、周知技術2及び引用文献6記載技術的事項から当業者が予測し得る程度のものである。
(8)審判請求人の令和6年2月15日に提出された意見書における主張の検討
ア 審判請求人の上記意見書における主張の内容
審判請求人は、令和6年2月15日に提出された意見書において、令和5年12月12日付けの拒絶理由通知書の「●理由1(進歩性)について」に対して次のように主張している(下線は当審において付した。)。
(ア)上記意見書の「[3]本願発明と引用発明との対比」(ア)欄における主張
a「引用文献1は、過給機に潤滑油を速やかに供給することができるエンジンを提供することを目的としています(段落[0007]を参照)。」
b「そして、引用文献1の実施形態には、過給機16までの配管の長さを短くすることにより、過給機16に潤滑油を速やかに供給することも記載されています(段落[0079]を参照)。」
c「引用文献1には、過給機16までの配管の長さを長くすることはありません。」
d「拒絶理由通知では、「本願発明1は、引用発明1の1、周知技術及び引用文献3記載技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである」とご指摘を受けています。」
e「引用文献1の図2では過給機16が後端側にありますが、もし周知技術及び引用文献3に記載の技術的事項を採用して、過給機16の位置を前後方向の中央側にすると、流出管30を前方に引き延ばす必要があります。」
f「すなわち、引用文献1において、周知技術及び引用文献3に記載の技術的事項を採用すると、過給機16までの配管の長さは長くなり、過給機16に潤滑油を速やかに供給するという目的に反します。」
g「審査基準の第III部第2章第2節 3.2.2には、以下のような阻害要因の例が記載されています。
阻害要因の例としては、副引用発明が以下のようなものであることが挙げられる。
(i) 主引用発明に適用されると、主引用発明がその目的に反するものとなるような副引用発明 (例1)」
h「引用文献1に、周知技術及び引用文献3に記載の技術的事項を採用することは、上記の阻害要因の例の(i)に該当します。」
i「よって、本願発明を引用文献から想到するものではありません。」
(イ)上記意見書の「[3]本願発明と引用発明との対比」(イ)欄における主張
a「補正後の請求項1に係る発明では、「オイルクーラが前記オイルフィルタと前記シリンダブロックの間に配置され、」となっています。すなわち、オイルクーラがオイルフィルタと同じ位置にあります。」
b「一方、引用文献1では、図1に示すように、オイルフィルタ21とオイルクーラ23は別々の位置にあります。
オイルクーラ23は、オイルフィルタ21とシリンダブロック10の間に配置されていません。」
c「よって、補正後の請求項1に係る発明は、引用文献1とはより一層異なります。」
d「既に述べたように、引用文献1は、過給機に潤滑油を速やかに供給することができるエンジンを提供することを目的としています(段落[0007]を参照)。」
e「引用文献1の主要な特徴は、図5、図10に示すように、潤滑油の通路が、オイルフィルタ21からオイルクーラ23を経由するメイン油路31と、オイルフィルタ21からオイルクーラ23を経由しないバイパス油路32に分離することになっています。
引用文献1では、バイパス油路32によって潤滑油を過給機16に送ることにより、オイルクーラ23内における潤滑油の圧力損失を回避することができ、過給機16に潤滑油を速やかに供給することができるようになっています(段落[0067]を参照)。」
f「もし引用文献1において、他の文献の技術を採用して、オイルクーラ23をオイルフィルタ21とシリンダブロック10の間に配置すると、オイルフィルタ21とオイルクーラ23が同じ位置になり、オイルフィルタ21からオイルクーラ23を経由しないバイパス油路32が形成できず、バイパス油路32を利用して過給機16に潤滑油を速やかに供給することができませんので、引用文献1の目的に反し、引用文献1が機能しなくなります。」
g「よって、引用文献1において、他の文献の技術を採用して、オイルクーラ23をオイルフィルタ21とシリンダブロック10の間に配置することは、上記の阻害要因の例の(i)と(ii)に該当します。」
h「すなわち、補正後の請求項1に係る発明は、引用文献1に、他の文献の技術を採用して想到することはありません。」
イ 上記アの主張に対する検討
以下、上記アの主張について検討する。
(ア)上記ア(ア)の主張について
a 上記(7)ア(イ)の相違点2及び3についての検討において説示したとおり、引用発明において、エンジン1(エンジン装置)シリンダブロック10(シリンダブロック)の上方に配置された過給機16(過給機)のシリンダブロック10(シリンダブロック)における前後方向の位置について、周知技術2のようなシリンダブロックにおける長手方向の略中央を選択することは、前提となる過給機16(過給機)の配置の形式の変更に過ぎず、かかる位置の選択により、段落【0006】及び【0007】に記載された「メインギャラリを経由するため、メインギャラリ内における潤滑油の圧力損失により、過給機における潤滑油圧力の立ち上がり(潤滑油圧力の上昇)速度が遅くなり、過給機に潤滑油を速やかに供給できない、という問題があった」(段落【0006】)「状況に鑑みて」「過給機に潤滑油を速やかに供給することができるエンジンを提供する」(段落【0007】)という課題を解決する上で、引用文献1に記載されたバイパス油路32によって潤滑油を過給機16に送ることにより、メインギャラり24内における潤滑油の圧力損失を回避できるようにすることが何ら妨げられるものではなく、上記位置の選択は阻害されるものとは認められない。
b 意見書における上記ア(ア)aの主張は、引用文献1の段落【0006】に記載された問題となる具体的な状況を踏まえずに、段落【0007】の記載の一部分を取り上げて課題を上位化したものであって、引用文献1に記載された発明の課題の把握として妥当なものではなく、採用することはできない。
c 意見書における上記ア(ア)bないしiの主張は、上記ア(ア)aの主張のもとで、引用発明を認定する根拠とした引用文献1の段落【0023】ないし【0075】に記載され【図1】ないし【図10】に図示された実施の形態に基づくものではなく、段落【0079】に記載され【図12】に図示された変形例に基づくものであり、引用発明についての主張としては妥当性を欠くものであることから、採用することはできない。
他方、同変形例に基づく主張を考慮に入れたとしても、同段落【0079】に記載された「開閉弁29から過給機16までの配管の長さが短くなり、バイパス油路32の送油距離を短くすることができる。」ことについては、引用発明において認定した「オイルフィルタ21」及び「オイルクーラ23」を「潤滑油」が「流れる」メイン油路31についてではなく、バイパス油路32についての記載であるとともに、段落【0006】及び【0007】に記載された課題を解決するための手段としてのバイパス油路32によって潤滑油を過給機16に送ることにより、メインギャラリ24内における潤滑油の圧力損失を回避できるようにすることに対して、副次的なものにすぎず、また、配管の長さが、該課題を解決するための手段を損なわせるものとは認められないことから、かかる変形例に基づく主張は、採用することはできない。
(イ)上記ア(イ)の主張について
a 上記(7)ア(ア)の相違点1についての検討において説示したとおり、引用発明において、オイルクーラ23(オイルクーラ)の取り付け(配置)について、周知技術1のようなオイルフィルタとシリンダブロックの間を選択する際に、段落【0006】及び【0007】に記載された課題を解決する上で、引用文献1に記載された流入管27を備えるバイパス油路32を備えることについては、オイルクーラ23(オイルクーラ)の取り付け(配置)についての形式変更に伴う通常の設計変更の範囲内で適宜なし得るものであって、特段困難性を伴うものとは認められず、かかる設計変更を伴う上記位置の選択が何ら阻害されるものとは認められない。
b 意見書における上記ア(イ)aないしcの主張については、上記(6)の相違点1のとおり、本件補正発明と引用発明の相違点である。
c 意見書における上記ア(イ)dの主張は、上記(ア)のとおり、引用文献1の段落【0006】に記載された問題となる具体的な状況を踏まえずに、段落【0007】の記載の一部分を取り上げて課題を上位化したものであって、引用文献1に記載された発明の課題の把握として妥当なものではなく、採用することはできない。
d 意見書における上記ア(イ)eないしhの主張については、上記aのとおりであり、妥当なものではなく、採用することはできない。
したがって、上記アの主張は採用することができない。
(9) 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1、周知技術2及び引用文献3記載技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、また、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、令和5年8月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 当審より通知した拒絶の理由
令和5年12月12日付けで当審より請求項1について通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
1(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、原出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2及び3にて例示される周知技術並びに引用文献3に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2011-196336号公報
引用文献2:特開2013-133796号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:国際公開第2016/060026号(周知技術を示す文献)
3 引用文献
拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記第2の[理由]2-2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
(1)対比
本願発明は、前記第2の[理由]2-2で検討した本件補正発明において「前記潤滑油が通るオイルフィルタがシリンダブロックに配置され、オイルクーラが前記オイルフィルタと前記シリンダブロックの間に配置され、」という事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明は、上記第2の[理由]2-2(4)アに記載した対比と同様に対比すると、以下の点で一致し、上記第2の[理由]2-2(4)イの相違点2及び3と同様な点で相違する。
<一致点>
「 過給機に、潤滑油を注油する注油管が連結されたエンジン装置であって、
注油管の一端は、潤滑油導入継手を介してシリンダブロックに接続され、他端は、潤滑油導出継手を介して過給機に接続され、
潤滑油導入継手は、潤滑油導出継手よりも前後方向の一方側に配置され、
シリンダブロックにおける前後方向の一方の面側にフライホイルが配置され、
潤滑油導入継手は、潤滑油導出継手よりも前後方向の一方側に配置され、
シリンダブロック上に搭載されるシリンダヘッドの左右方向の一方の側面に、排気マニホールドが配置され、
注油管は、排気マニホールドのフライホイル側から潤滑油導出継手に接続されている、
エンジン装置。」
(2)判断
相違点2及び3に係る本願発明の特定事項のように構成することについては、上記第2の[理由]2-2(7)に記載したとおり、引用発明、周知技術2及び引用文献6記載技術的事項(すなわち、上記2の引用文献3に記載された技術的事項)に基いて、当業者であれば容易になし得るものである。
また、本願発明の効果の予測性についても、上記第2の[理由]2-2(7)に記載したとおり、引用発明、周知技術2及び引用文献6記載技術的事項(すなわち、上記2の引用文献3に記載された技術的事項)に基いて、当業者が予測し得る程度のものである。
(3)小括
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術2及び引用文献6記載技術的事項(すなわち、上記2の引用文献3に記載された技術的事項)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、原出願の出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、周知技術2及び上記第3の2の引用文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-000814