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特許拒絶査定不服審判

2023-000635

均一に封入されたナノ粒子及びその使用

審判番号
2023-000635
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-566669外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年01月13日
審決日
2025年02月17日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C09K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-566669「均一に封入されたナノ粒子及びその使用」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月6日国際公開、WO2018/220160、令和2年8月6日特許出願公表、特表2020-523432〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

1 手続の経緯

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本願は、2018年(平成30年)6月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年6月2日 米国(3件)、2017年9月22日 欧州特許庁(5件)、2017年12月11日 欧州特許庁、2017年12月22日 米国、2018年2月16日 米国、2018年3月13日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和2年 3月26日 :手続補正書の提出
令和3年10月26日付け:拒絶理由通知書
令和4年 5月 2日 :意見書、手続補足書及び手続補正書の提出

同年 9月 7日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

令和5年 1月13日 :審判請求書の提出

同年 2月21日 :手続補正書(方式)の提出

2 本願発明

本願の請求項に係る発明(以下、請求項5に係る発明を「本願発明」という。)は、令和4年5月2日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)後の特許請求の範囲の請求項1~21に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項5の記載は、次のとおりである。

<請求項5>

「酸化物材料に封入された複数のナノ粒子を含む、複合粒子であって、
前記酸化物材料が熱伝導性材料であり、
前記ナノ粒子が発光性であり、
前記ナノ粒子が、少なくとも1%の半導体ナノプレートレットを含む、
複合粒子。」

3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、概要、以下の内容を含むものである。

本願発明は、その最先の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献4に記載された発明及び引用文献5に記載された技術事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献4:特表2016-540852号公報
引用文献5:国際公開第2016/156266号

4 各引用文献に記載された事項

(1) 引用文献4に記載された事項及び引用発明の認定

ア 引用文献4の記載

原査定で引用された特表2016-540852号公報(引用文献4)には、以下の記載がある。(下線は当合議体が付した、以下同じ。)

「【請求項6】
1つ以上の発光ナノ材料の1つ以上の粒子を囲むガラスを含む表面を含むルミネッセンス粒子。
【請求項7】
ルミネッセンス粒子が、ガラスに分配された1つ以上の発光ナノ材料の1つ以上の粒子を含む、請求項6に記載のルミネッセンス粒子。
【請求項8】
発光ナノ材料の少なくとも1つが量子ドットを含む、請求項6または7に記載のルミネッセンス粒子。」
「【0036】
本発明のルミネッセンス粒子は、照明およびディスプレイ用途に含まれ得る。例えば、本発明に従うルミネッセンス粒子は、ルミネッセンス材料、光学部品、無機半導体発光デバイス(LED)または他の発光デバイス、バックライトユニットおよび/またはディスプレイに含まれることができる。
【0037】
本明細書に記載されるルミネッセンス粒子に含まれるガラスを含む表面は、ルミネッセンス粒子に含まれる1つ以上の発光材料の1つ以上の粒子の周りに気密バリアを提供できる。こうしたバリアは、1つ以上の粒子の酸化を防止できる。こうした防止はさらに、ダウンコンバージョン能の後続損失を低減もしくは遅延、または理想的には防止できる。ガラスを含む表面はまた、ルミネッセンス粒子が含まれる最終用途において遭遇し得る有害な種から、ルミネッセンス粒子に含まれる発光粒子および/または発光ナノ粒子を保護できる。例えば、ルミネッセンス粒子がLEDのためのシリコーンカプセル化剤に含まれる場合、ガラスコーティングは、シリコーンカプセル化剤に存在する酸から、ルミネッセンス粒子に含まれる発光粒子および/または発光ナノ粒子を保護できる。ガラスを含む表面はまた、例えばナノ粒子の拡散を制限することによってルミネッセンス粒子に含まれることができるナノサイズ化された発光粒子のアグロメレーションおよびオストワルド熟成を防止できる。
【0038】
好ましくはガラスを含む表面は、酸素ガスまたは水蒸気のルミネッセンス粒子への拡散に対するバリアを、1つ以上の発光材料またはナノ材料の1つ以上の粒子に与え、空気中で安定であることができるルミネッセンス粒子を提供する。これは、ルミネッセンス粒子が1つ以上の発光材料またはナノ材料の空気感受性粒子を含み、ルミネッセンス粒子が酸素を含む環境においてハイライトフラックスおよび/または高温に曝される用途に特に有利であることができる。こうした用途の1つの例としては、高温で操作できるハイフラックスライトLEDの色ダウンコンバージョンでの使用が挙げられる。」
「【0048】
本発明のさらなる態様によれば、1つ以上の発光材料の1つ以上の粒子を囲むガラスを含む表面を含むルミネッセンス粒子を製造するための方法が提供され、この方法が、キャリアストリーム中に、1つ以上の発光材料の1つ以上の少なくとも一部の外側表面の少なくとも一部上にビトリファイドガラスを形成するための前駆体を含む1つ以上の発光材料の1つ以上の粒子を懸濁させる工程およびキャリアストリーム中に懸濁した1つ以上の発光材料の1つ以上の少なくとも一部の外側表面の少なくとも一部上の前駆体を熱分解し、前駆体をビトリファイドガラスに転化して、ルミネッセンス粒子を形成する工程を含む。
【0049】
方法はさらに、1つ以上の発光材料および/またはナノ材料の1つ以上の粒子を、1つ以上の発光材料および/またはナノ材料の1つ以上の少なくとも一部の外側表面の少なくとも一部に前駆体を配設するためにビトリファイドガラスを形成するための前駆体と接触させる工程を含むことができる。
続きを表示(全34行)
【0050】
こうした接触工程は、場合により、1つ以上の発光材料および/またはナノ材料の1つ以上の粒子を、ビトリファイドガラスを形成するための前駆体を含むコーティング材料でコーティングする工程を含むことができる。例えば、ビトリファイドガラスを形成するための前駆体を含む液体は、混合、スプレーコーティング、または当業者によって選択される他の利用可能な技術によって、1つ以上の発光材料および/またはナノ材料の1つ以上の粒子に適用できる。前駆体はまた、1つ以上の発光材料および/または発光ナノ材料の1つ以上の粒子に固体形態、例えば粉末(例えばヒュームド金属酸化物粉末があるが、これらに限定されない。)として適用されてもよい。
【0051】
こうした接触工程は、場合により、1つ以上の発光材料および/またはナノ材料の1つ以上の粒子を、1つ以上の粒子が含まれる前駆体主部を形成するためのビトリファイドガラスを形成するための前駆体中にカプセル化する工程を含むことができる。こうした前駆体主部は、例えば固体または多孔質であることができる。(1つ以上の粒子は主部の表面にあることができ、前駆体によって完全に覆われていなくてもよいことが可能である)。前駆体主部を形成するために1つ以上の発光材料および/またはナノ材料の1つ以上の粒子をこうしてカプセル化するために使用される前駆体の例としては、エアロゲル、キセロゲルおよび低バルク密度を有する他のゾル-ゲル粒子が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくはこうしたエアロゲル、キセロゲルおよび他のゾル-ゲル粒子は、シリカまたは他のビトリファイド可能な金属酸化物を含む。こうした他のビトリファイド可能な金属酸化物は、当業者によって容易に同定できる。前駆体中に1つ以上の発光材料および/またはナノ材料をカプセル化できる他の前駆体の例としては、相変化材料、例えばP2O5および相変化を行うことによって熱を吸収する他の低溶融ガラスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
本発明の方法に使用できるビトリファイドガラスを形成するための前駆体の追加の例としては、ホスフェートまたはシリケートガラス、シリケート体またはメソリスまたはゾルーゲルまたは高温安定性特性を有する有機ガラスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書に記載される方法によれば、これらの外側表面の少なくとも一部にビトリファイドガラスを形成するための前駆体を含む1つ以上の発光材料および/またはナノ材料の1つ以上の粒子は、キャリアストリーム中に懸濁され、1つ以上の発光材料および/またはナノ材料の1つ以上の粒子上の前駆体は、熱分解されて、前駆体をビトリファイドガラスに転化し、1つ以上の発光材料の1つ以上の粒子を囲むガラスを含む表面を含むルミネッセンス粒子を形成する。
【0054】
キャリアストリームは、前駆体が熱分解によってビトリファイドガラスに転化される火炎または炉に、前駆体を含む1つ以上の発光材料および/またはナノ材料の1つ以上の粒子を輸送するために使用できる。
【0055】
キャリアストリームは、不活性ガスを含むことができる。例としては、窒素およびアルゴンなどが挙げられるが、これらに限定されない。キャリアストリームはまた、超臨界流体、例えばCO2を含むことができる。キャリアストリームはさらに、熱分解または燃焼工程の一部として除去されるキャリア溶媒を含むことができる。キャリア溶媒が有機溶媒を含む場合、酸素バランスは、好ましくは、熱分解中の黒鉛化を防止するために空気ストリームまたは酸化剤の導入によって制御される。
【0056】
キャリアはまた、1つ以上の発光材料および/または発光ナノ材料の1つ以上の粒子の少なくとも一部(さらにホスト材料または主部に含まれていてもよい。)をコーティングでき、ビトリファイドされて熱分解工程中にビトリファイドガラスを形成する金属酸化物前駆体、例えばTEOS、SiCl4、SiH4または別の反応性金属酸化物前駆体を含むことができる。一部の場合において、水または酸素は、こうした前駆体を酸化物に転化できるように、キャリアストリームに導入される必要がある場合がある。
【0057】
場合により、ガラスは、複数の前駆体から形成できる。
【0058】
固体粒子のエントレインメントまたは固体粒子の溶液のエアロゾル化は、例えばこれらに限定されないが、超音波噴霧または空気霧化もしくは液圧霧化を介して行われることができ、粒子を、約200ミクロン平均サイズ以下の熱分解またはビトリファイド粒子に縮小する。より大きな粒子も生じてよく、これは場合により、後に細砕できる。使用できる細砕技術の例としては、ボールミル、ジェットミルまたは別の既知の粒子縮小技術が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
熱分解工程は、これらの外側表面の少なくとも一部にビトリファイドガラスを形成するための前駆体を含む1つ以上の発光材料および/またはナノ材料の1つ以上の粒子を含むキャリアストリームを、Lindberg炉のような管状炉に、ルミネッセンス粒子内に含有されるべき1つ以上の粒子の外側表面の少なくとも一部、好ましくはすべての周りに前駆体を融合させるのに十分な滞留時間で通す工程を含むことができる。前駆体のすべてを完全にビトリファイドしなくてもよい。しかし、粒子表面の未反応または未ビトリファイド前駆体の一部はまた、炉中において吸熱相変化または反応を行うことによって熱損傷から粒子を保護してもよい。例えば、低溶融ホスフェートガラスで1つ以上の粒子を囲むことにより、使用される熱が、シリケート体またはメソリスの外側コーティングをビトリファイドし、部分的に融合して、発光粒子またはナノ粒子に到達する熱パルスを最小限にする。
【0060】
別の方法では熱分解工程は、これらの外側表面の少なくとも一部にビトリファイドガラスを形成するための前駆体を含む1つ以上の発光材料および/またはナノ材料の1つ以上の粒子を含むキャリアストリーム(好ましくはガスストリーム)を、バーナー火炎に通過させる工程を含むことができ、ここで前駆体はビトリファイドガラスに転化される。
【0061】
例えば、これらの外側表面の少なくとも一部にビトリファイドガラスを形成するための前駆体を含む1つ以上の発光材料および/またはナノ材料の1つ以上の粒子(「前駆体ストリーム」)は、バーナーノズルに供給される。バーナーノズルは、複数のアニュラスで構成されてもよい。1つの場合において、前駆体粒子ストリームは、中心アニュラスにある。外側2つのアニュラスはそれぞれ、燃焼に必要とされるH2および酸素(または空気)を供給する。別の方法では、前駆体ストリームは、同様に冷却ゾーンにおいて、火炎に対して直角に導入できる。
【0062】
熱分解工程後のルミネッセンス粒子を含む熱ガスストリームは、好ましくは回復または回収される前に冷却される。例えば、ルミネッセンス粒子は、熱分解炉または火炎から出て、さらに熱交換器を通過してストリームの温度をある温度に低下させることができる。例えば、ルミネッセンス粒子に含まれる発光材料の1つ以上の粒子が量子ドットを含む場合、温度は、好ましくは量子ドットが負の影響を受けない温度、例えば<400℃、<350℃、<320℃に低下される。特定の量子ドットに依存して、他の温度が選択されてもよい。好ましくは、温度はまた、ルミネッセンス粒子が反応ストリームから分離されるまで、熱分解工程のいずれかの凝縮性副生成物が蒸気状態のままであるのに十分高く維持される。
【0063】
方法はさらに、ルミネッセンス粒子を回収する工程を含むことができる。ルミネッセンス粒子の回収は、バッグフィルタ、電気集塵機、またはフィルタもしくは遠心分離機での後続固体/液体分離のためのスプレーコンデンサによる回収を含むことができる。他の好適な既知の粉末回収技術は、当業者によって容易に確定できる。
【0064】
場合により、本明細書に教示される方法の実施形態は、マトリックス(またはホスト材料(例えば本明細書に記載されるホスト材料)に組み込まれる1つ以上の発光材料および/またはナノ材料(例えばQD)を含む1つ以上の粒子を形成する工程、キャリアストリーム中に、粒子の少なくとも一部の外側表面の少なくとも一部上にビトリファイドガラスを形成するための前駆体を含む1つ以上の粒子を懸濁する工程およびキャリアストリーム中に懸濁される1つ以上の少なくとも一部の外側表面の少なくとも一部上の前駆体を熱分解して、前駆体をビトリファイドガラスに転化し、ルミネッセンス粒子を形成する工程を含むことができる。」
「【0082】
量子ドットは種々の形状を有することができ、これらとしては、球体、棒、円盤、他の形状および種々の形状粒子の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。」
「【0102】
本発明の量子ドットの狭い発光プロファイルは、飽和色を発光するために量子ドットおよび量子ドットの混合物を調整でき、これによって従来のLED発光ディスプレイの場合を超える色域および出力効率を増大させる。1つの態様によれば、主な波長、例えば約523nmを発光するように設計され、例えば約37nmのFWHMを有する発光プロファイルを有する緑色量子ドットは、例えば約617nmの主な波長を発光するように設計され、例えば約32nmのFWHMを有する発光プロファイルを有する赤色量子ドットと組み合わされ、混合され、またはそうでなければ組み合わせて使用される。こうした組み合わせは、青色光によって刺激され、三色白色光を創出できる。
【0103】
本明細書に記載され、または本明細書に記載される方法によって製造されるルミネッセンス粒子は、種々広範の他の消費者製品(平坦パネルディスプレイ、コンピュータモニタ、オールインワンコンピュータ、ノート型パソコン、タブレット、テレビ、ビルボード、内部または外部照明および/またはシグナル伝達のためのライト、ヘッドアップディスプレイ、完全透明ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンター、電話、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末(PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ファインダー、超小型表示装置、車両、大面積の壁、劇場またはスタジアムのスクリーン、標識、照明器具および各種の固体照明デバイスを含む。)に組み込まれてもよい。
【0104】
本明細書に記載されるまたは本明細書に記載される方法によって製造されるルミネッセンス粒子は、光学的に励起でき、光学励起は、発光粒子、好ましくは半導体ナノ結晶からの発光を介してダウンコンバージョンされる。こうしたフォトルミネッセンスは、LED光源が使用されるいずれかのデバイス/システムにおいて有用である(例えば固体照明、LEDバックライト(LED-BLU)、液晶ディスプレイ(LCD))。こうしたフォトルミネッセンスはまた、光源が他の波長にダウンコンバージョンされるいずれかのデバイス/システムに有用であることができる(例えば太陽光が、システムに使用される太陽電池の最も高い効率ウィンドウに調整された特定の波長に変換されるソーラーコンセントレイターまたはダウンコンバーター;高エネルギープラズマ発光が半導体ナノ結晶「蛍光体」ダウンコンバーターを励起できるプラズマ系システム;タガント;バイオラベリングまたは画像形成;バーコーディングまたはセキュリティ/秘密ラベリング用途)。」

イ 引用発明の認定

前記アによれば、引用文献4には、請求項6の記載を引用する請求項7の記載を引用する請求項8に係るルミネッセンス粒子について、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献4の記載に係る段落番号等を括弧内に付してある(以下同じ。)。

<引用発明>

「1つ以上の発光ナノ材料の1つ以上の粒子を囲むガラスを含む表面を含むルミネッセンス粒子であって、(【請求項6】)
ルミネッセンス粒子が、ガラスに分配された1つ以上の発光ナノ材料の1つ以上の粒子を含み、(【請求項7】)
発光ナノ材料の少なくとも1つが量子ドットを含み、(【請求項8】)
量子ドットは、種々の形状を有することができ、これらとしては、球体、棒、円盤、他の形状および種々の形状粒子の混合物が挙げられる、(【0082】)
ルミネッセンス粒子。」

(2) 引用文献5の記載より把握できる技術事項

ア 原査定で引用された国際公開第2016/156266号(引用文献5)には、以下の記載がある。なお、日本語訳は、引用文献5の日本語ファミリー文献である特表2018-512495号公報を参酌して当合議体が作成したものであり、参考までに当該公報の段落番号の記載も括弧内に付してある(以下、引用文献5技術事項の認定においても同じ。)。

(ア) 「The present invention relates to the field of nanoparticles and especially semiconductor nanocrystals. In particular, the present invention relates to nanoplatelets, nanoplatelets film and display device using said nanoplatelets film.」(第1頁第5~7行)

(日本語訳:

本発明は、ナノ粒子、殊に半導体ナノ結晶の分野に関する。特に、本発明は、ナノプレートレット、ナノプレートレット膜、及び当該ナノプレートレット膜を使用した表示装置に関する。(対応日本語公報の【0001】))

(イ) 「Semiconductor nanoparticles, commonly called "quantum dots", are known as emissive material. Said objects have a narrow fluorescence spectrum, approximately 30 nm full width at half maximum, and offer the possibility to emit in the entire visible spectrum as well as in the infrared with a single excitation source in the ultraviolet. They are currently used in display devices as phosphors. In this case an improvement of the gamut of polychromic displays requires a finesse of the emission spectra that is not accessible for quantum dots.」(第2頁第4~10行)

(日本語訳:

一般的に「量子ドット」と称される半導体ナノ粒子は、発光材料として既知である。当該対象物は、大凡30nm半値全幅の狭い蛍光スペクトルを有し、紫外線の単一の励起源を用いて可視スペクトル全体および赤外線の両方で発光する可能性を提供する。それらは現在、蛍光体として表示装置で使用されている。この場合、多色ディスプレイの色域の改善は、量子ドットが達成できない発光スペクトルの精巧さを必要とする。(対応日本語公報の【0007】))

(ウ) 「It is also known to use nanoplatelets to obtain great spectral emission finesse and a perfect control of the emission wavelength (see WO2013/140083).」(第2頁第11~12行)

(日本語訳:

ナノプレートレットを使用して、大きなスペクトル放射技術および発光波長の完全な制御を得ることも既知である(国際公開第2013/140083号参照)。(対応日本語公報の【0008】))

イ 引用文献5の記載より当業者が把握できる事項

前記ア(ア)に記載のとおり、引用文献5に記載された「ナノ粒子」は、「半導体ナノ結晶の分野に関する」ものであり、同(イ)に記載のとおり、「量子ドット」とは、一般的に半導体ナノ粒子を称するものであるから、同(ウ)に記載された「ナノプレートレット」は、半導体ナノプレートレットと理解することが自然といえる。

ウ 引用文献5技術事項の認定

前記ア及びイによれば、引用文献5には、以下の技術事項(以下「引用文献5技術事項」という。)が記載されていると認められる。

<引用文献5技術事項>

「一般的に「量子ドット」と称される半導体ナノ粒子は、大凡30nm半値全幅の狭い蛍光スペクトルを有し、紫外線の単一の励起源を用いて可視スペクトル全体および赤外線の両方で発光する可能性を提供し、現在、蛍光体として表示装置で使用されているが、この場合、多色ディスプレイの色域の改善は、量子ドットが達成できない発光スペクトルの精巧さを必要とするので(前記ア(ア))、半導体ナノプレートレットを使用して、大きなスペクトル放射技術および発光波長の完全な制御を得ることも既知である(同(イ)及び前記イ)こと。」

5 本願発明と引用発明の対比及び判断

(1) 対比

本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。

ア 本願発明の「酸化物材料に封入された複数のナノ粒子を含む、複合粒子であって、」との特定事項について

引用発明の「ルミネッセンス粒子」は、「ガラスに分配された1つ以上の発光ナノ材料の1つ以上の粒子を含」むものであるところ、技術常識に照らせば、当該「ガラス」は、酸化物からなるものと理解することが自然であり、また、「ガラスに分配された」との構成は、ガラスの中に配されていることを意味すると理解できる。したがって、引用発明の「ガラス」、「発光ナノ材料」「の粒子」及び「ルミネッセンス粒子」は、それぞれ本願発明の「酸化物材料」、「ナノ粒子」及び「複合粒子」に相当し、本願発明と引用発明は、「酸化物材料に封入された」「ナノ粒子を含む、複合粒子であ」る点で共通する。

イ 本願発明の「前記酸化物材料が熱伝導性材料であり、」との特定事項について

本願発明の「熱伝導性材料」の意味について、本願の明細書の発明の詳細な説明(以下「本願明細書」という。)の【0014】には、「0.1~450W/(m.K)の範囲」をもって標準的な条件での熱伝導性を有するとの記載があることから、このような範囲の熱伝導性をもつ材料は、本願発明の「熱伝導性材料」に該当するといえる。

これを引用発明についてみると、ガラスの熱伝導率は、技術常識に照らせば、一般に高いとはされていないものの、少なくとも0.1W/mKよりは大きな値であるから、引用発明の「ルミネッセンス粒子」を構成する「ガラス」は、本願発明でいう「熱伝導性材料であ」るとの特定事項を満たすといってよい。

ウ 本願発明の「前記ナノ粒子が発光性であり、」との特定事項について

引用発明の「発光ナノ材料」「の粒子」は発光するものであるから、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。

エ 本願発明の「前記ナノ粒子が、少なくとも1%の半導体ナノプレートレットを含む、」との特定事項について

引用発明の「発光ナノ材料」「の粒子」が、「少なくとも1%の半導体ナノプレートレットを含む」か否かは不明である。

オ 以上によれば、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>

「酸化物材料に封入されたナノ粒子を含む、複合粒子であって、
前記酸化物材料が熱伝導性材料であり、
前記ナノ粒子が発光性である、複合粒子。」

<相違点>

・相違点1

「ナノ粒子」について、本願発明は、「複数」であるのに対し、引用発明は、「1つ以上」である点。

・相違点2

「ナノ粒子」について、本願発明は、「少なくとも1%の半導体ナノプレートレットを含む」のに対し、引用発明は、「少なくとも1つが量子ドット」であり、当該「量子ドット」は、「種々の形状を有することができ」るものである点。

(2) 判断

ア 相違点1について

引用発明の「ルミネッセンス粒子」は、「ガラスに分配された1つ以上の発光ナノ材料の1つ以上の粒子」を含むものであるから、複数の粒子を含むよう構成することは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について

引用発明の「ルミネッセンス粒子」は、「発光ナノ材料」「の粒子」を含んでおり、当該「発光ナノ材料」「の粒子」は、種々の形状(球体、棒、円盤などが例示されている。)を有する「量子ドット」を含んでいる。そうすると、引用発明は、その「発光ナノ材料」「の粒子」のすべてが「量子ドット」である構成を含むものと理解できる。そして、引用発明を開示する引用文献4の記載によれば、当該「ルミネッセンス粒子」は、バックライトユニットおよび/またはディスプレイに含まれることができる(【0036】)ものであるところ、このような用途に用いられる以上、その発光強度を高めるとともに発光波長を制御することが当然の課題であるといえる。

他方、引用文献5技術事項によれば、引用文献5には、大きなスペクトル放射及び発光波長の完全な制御を得るために、量子ドットに代えて、半導体ナノプレートレットを用いることが記載されている。

そうすると、引用発明から出発した当業者にとって、上記課題を解決するために、引用文献5技術事項を採用して、「量子ドット」に代えて半導体ナノプレートレットを用いることは容易である。そして、この場合には、引用発明の「発光ナノ材料」「の粒子」は、そのすべてが半導体ナノプレートレットとなり、言い換えれば、引用発明の「発光ナノ材料」「の粒子」は、100%の半導体ナノプレートレットからなるものである。したがって、引用発明に引用文献5技術事項を適用することにより、相違点2に係る本願発明の「前記ナノ粒子が、少なくとも1%の半導体ナノプレートレットを含む」との特定事項は満たされることとなる。

ウ 本願発明の効果について

本願発明の効果は、本願明細書の【0013】によれば、環境悪化種の攻撃に対する安定性の向上であるといえるが、この効果は、本願発明の構成が奏するものとして、引用発明及び引用文献5技術事項に基づいて当業者が予測し得たものにすぎない。また、本願発明は、「半導体ナノプレートレット」を含んでおり、これによる効果は、一次元での励起子の閉じ込めを可能とし他の2つの次元で自由な伝搬を可能にすることや、半導体量子ドットよりもカドミウム重量が少ないというもの(同【0488】・【0490】)と解されるところ、当該効果は、半導体ナノプレートレット自身が有する特性にすぎないものであって、引用文献5技術事項においても当然に奏するものであり、いわゆる相乗効果とはいえないことから、引用発明及び引用文献5技術事項に基づいて当業者にとって格別顕著なものということはできない。

(3)請求人の主張について

ア 請求人は、引用文献4(【0040】)には、「本明細書に記載されるルミネッセンス粒子に含まれることができるホスト材料の例としては、ポリマー、オリゴマー、モノマー、樹脂、バインダー、ガラス、金属酸化物および他の非ポリマー性材料を挙げることができる」と記載されているが、ホスト材料(本願発明でいう「複数のナノ粒子」を封入するものといえる。)として「金属酸化物」を用いてもよいことは、この箇所にしか記載されていない旨を主張する。請求人の主張は、結局のところ、本願発明における「複数のナノ粒子」を封入するものが「金属酸化物」であるとの前提に立つものと解されるが、本願発明は「酸化物材料」と特定するものであることから、請求人の主張はその前提が失当である。

イ 請求人は、引用文献4には、その全体を通して、実際に製造した例は何ら記載されておらず、特にガラスの内部に発光粒子をどのように分散させるのかは何ら教示されていない旨を主張する。しかしながら、引用文献4に記載された引用発明の技術的意義は、ルミネッセンス粒子に含まれる1つ以上の発光材料の1つ以上の粒子の周りに気密バリアを提供することにより、1つ以上の粒子の酸化を防止できる(【0037】及び【0038】)ことにあり、その作用機序は明確に理解できることから、引用発明は、それに係るルミネッセンス粒子を製造しない限りその効果が確認できないといったものではない。そして、引用文献4の【0048】~【0064】には、発光ナノ材料である複数の粒子をガラスでコーティングしたルミネッセンス粒子を製造するための方法が記載されており、例えば、ガラスを形成するための前駆体及びナノ材料の粒子をキャリアストリーム中に懸濁し、前駆体は熱分解されてガラスに転化し、発光材料の粒子を囲むガラスを含むルミネッセンス粒子が形成されること(【0053】)、不活性ガスを含むキャリアストリームは、炉に前駆体及びナノ材料の粒子を輸送すること(【0054】及び【0055】)、前駆体は、金属酸化物前駆体、例えばTEOSであること(【0056】)、キャリアストリームは、例えば超音波噴霧を介して行われ、粒子を約200ミクロン平均サイズ以下に縮小すること(【0058】)、ルミネッセンス粒子は、バッグフィルタにより回収されること(【0063】)、が記載されており、これらの方法は、その作用機序が理解できるし、各工程は、いずれも実現可能といえることから、当業者であれば、当該記載に基づいてルミネッセンス粒子を実際に製造することができるといえる。

したがって、請求人の前記主張は、前記判断を左右するものではない。

(4)小括

以上により、本願発明は、引用発明、引用文献4に記載された技術事項及び引用文献5技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2023-000635

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