審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2022-701210

湯戻し用油揚げ即席麺の製造方法

審判番号
2022-701210
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-015217外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7080653
請求日
2022年12月06日
審決日
2023年03月23日
公報発行日
2023年04月28日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7080653号発明「湯戻し用油揚げ即席麺の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7080653号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7080653号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成30年1月31日(優先権主張 平成29年1月31日)を出願日とする特許出願であって、令和4年5月27日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年6月6日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月6日に特許異議申立人 金山 義信(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:請求項1ないし5)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという場合があり、また、これらをまとめて「本件特許発明」という場合がある。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 小麦粉および澱粉(前記小麦粉に含有される澱粉を除く)、ならびに増粘多糖類を含む原料に水を加え、混練して麺生地を得て、生麺線を切り出す工程と、 α化する工程を行うことなく前記生麺線を油で揚げる工程と を有する、湯戻し用油揚げ即席麺の製造方法。 【請求項2】 前記原料は、さらに、米粉またはそば粉を含む、請求項1に記載の湯戻し用油揚げ即席麺の製造方法。 【請求項3】 油で揚げる前の前記生麺線のα化度が30以下および水分含有率が40質量%以下であり、油で揚げた後の油揚げ即席麺のα化度が60以上75以下である、請求項1または2に記載の湯戻し用油揚げ即席麺の製造方法。 【請求項4】 前記増粘多糖類が、ペクチンおよび/またはアルギン酸類である、請求項1~3のいずれか1項に記載の湯戻し用油揚げ即席麺の製造方法。 【請求項5】 前記原料に含まれる前記澱粉の割合が主原料に対して10質量%以上30質量%以下であり、且つ、前記増粘多糖類がペクチンおよび/またはアルギン酸類である請求項1~3のいずれか1項に記載の湯戻し用油揚げ即席麺の製造方法。ここで前記主原料は、前記小麦粉および前記澱粉からなるが、前記原料が米粉またはそば粉を含む場合には、前記米粉又は前記そば粉も前記主原料に含まれる。」 第3 特許異議申立理由の概要 特許異議申立人が申し立てた請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 1 申立理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由1-2(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 申立理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由2の具体的理由はおおむね次のとおりである。 本件特許発明の課題は「低エネルギーで油揚げ即席麺を製造することができ、省エネルギーを達成できるとともに、製造される油揚げ即席麺の食感を良好にできる方法を提供すること」である。 この課題を解決する手段として、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明に係る油揚げ即席麺は、蒸し工程のない製造方法で製造するので、主に弾力に関する食感を改良することが難しいが、澱粉ならびに増粘多糖類を添加することによって、食感を補うことができる。」という記載、「主原料として澱粉を添加すると、油揚げ即席麺の湯戻りを早くでき、なめらかさや弾力に関する食感を改良できる。」という記載及び「副原料として増粘多糖類、たとえばペクチンおよび/またはアルギン酸類を用いると、硬さや弾力に関する食感を改良できる。」という記載がある。 しかしながら、本件特許の請求項1では、「澱粉」及び「増粘多糖類」を配合することのみ記載され、その種類や配合量は何ら特定されていない。 甲第9号証に記載されているように、原料に澱粉を添加することにより麺の食感を変化させることができるが、その効果は澱粉の種類や添加量により大きく異なる。また、甲第10号証に記載されているように、麺の原料に澱粉を配合する場合は、その種類・配合量によって麺の特性が変化するため、目的に応じて配合する澱粉の種類を選択し、配合量を決定することが本件特許の出願時の技術常識である。そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明にも、澱粉の配合量について「本発明に係る油揚げ即席麺が、湯戻ししたときに良好な食感を示すためには、小麦粉の割合は主原料の70~90質量%、澱粉の割合は主原料の30~10質量%であることが好ましく、小麦粉の割合は主原料の70~80質量%、澱粉の割合は主原料の30~20質量%であることがより好ましい。澱粉の割合が主原料の20質量%未満、さらに10質量%未満であると、油揚げ即席麺の弾力が出にくく、良好な食感を期待できない。澱粉の割合が主原料の30質量%を超えると、製麺性が悪くなる。」と記載されており、澱粉の配合が特定の範囲でないと、良好な食感の麺は得られず、本件特許発明の課題が解決できないことは明らかである。 また、澱粉の種類については、発明の詳細な説明に「澱粉としては、たとえば、トウモロコシ粉、ならびにジャガイモ(馬鈴薯など)、サトウキビおよびタピオカなどの澱粉が挙げられる。また、これらの澱粉を公知の手法を用いて加工した加工澱粉を用いてもよい。」との記載はあるが、実施例においては「澱粉」とのみ記載され、どの澱粉を用いたのは不明である。このため、例えば「α化澱粉」のようにα化度が高い澱粉を用いた場合でも、α化していない澱粉を用いた場合と同様の効果が得られるかは明らかでない。 増粘多糖類についても、同様に、種類や添加量によって効果が異なり、このことは、本件特許の出願時の技術常識であり、例えば、増粘多糖類の添加量がごく僅か(例えば1滴など)の場合や原料の大部分を占める場合では、良好な食感の麺は得られず、本件特許発明の課題が解決できないことは明らかである。 従って、本件特許発明1は、澱粉及び増粘多糖類の配合量が特定されていないから、発明の課題を解決するための手段が反映されていない。また、α化澱粉などのα化度が高い澱粉を用いる場合、澱粉や増粘多糖類の添加量がごく僅かの場合又は原料の大部分を占める場合をも包含する本件特許発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することもできない。 よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであり、本件特許発明2~5も同様である。 4 証拠方法 ・甲第1号証:特開平2-31654号公報 ・甲第2号証:国際公開第2014/112565号 ・甲第3号証:特開平9-294553号公報 ・甲第4号証:特開2000-333629号公報 ・甲第5号証:特開平6-292528号公報 ・甲第6号証:特開昭52-99248号公報 ・甲第7号証:特開2004-147576号公報 ・甲第8号証:国際公開第2012/002540号 ・甲第9号証:「デンプン質食品の食感」、高分子、第50巻、10月号、2001年、第711頁ないし第714頁 ・甲第10号証:小田 聞多、「めんの本」、株式会社食品産業新聞社、2013年7月31日初版発行、第43頁 第4 当審の判断 以下のとおり、当審は、何れの特許異議申立理由も、その理由がないものと判断する。 1 申立理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)について (1) 主な証拠の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、「麺の製造法」に関し、次の記載がある。 「小麦粉を主成分とする麺原料に活性酵母を添加し、これを混合、混練して後、途中醗酵時間をとり常法により麺線とし、次に該麺線を蒸煮することなく、油揚処理してなることを特徴とする麺の製造法。」(特許請求の範囲) 「本発明は活性酵母を使用する新規な即席タイプの麺の製造法に関する。」(第1頁左下欄第12ないし13行) 「本発明は、上述のような従来法を改良し、太い麺線でも調理時の湯戻りが早く、かつ喫食した時には弾力のある食感を有し、さらに風味にも優れている即席タイプの麺の製造法を提供するものである。」(第2頁左上欄第2ないし6行) 「本発明によれば、小麦粉を主成分とする麺原料に活性酵母を添加しこれを混合、混練して後、途中醗酵時間をとり常法により麺線とし、次に該麺線を蒸煮することなく、油揚げ処理することにより、細麺線から太麺線まで巾広く即席タイプの麺が製造でき、かつ食感、風味に優れたものを製造することが可能である。」(第2頁左上欄第8ないし14行) 「本発明に係る即席タイプの麺としては、ラーメン、うどん、そば等一般に食されている麺類であり、原料として、小麦粉、穀粉、澱粉、そば粉等を適宜選択して使用でき、これに食塩、水、さらに必要に応じてかんすい、ヤマイモ、卵、糖類等一般に麺原料として用いられている原料、添加物を用いることができる。本発明においては、上記の麺原料の外に活性酵母を使用する。又必要により酵母の醗酵を助長する糖類、pH調整剤等も用いることができる。活性酵母としてはパン、ビール、ワイン等の食品一般に用いられる酵母が使用でき、いずれも酵母としての活性を有しているものであればよい。特に、麺原料では酵母の醗酵に充分な糖類が少ないので好ましくは、インベルターゼ活性の高い酵母が良い。又、ドライタイプの顆粒状や粉末状の酵母は他の粉体原料と一緒にミキサー等によって容易に均一に混合ができるため好ましい。 活性酵母は、油揚げ処理前の麺線組織をポーラスにするため、油揚げされたとき、麺線は容易に膨化し、又均一に発泡する結果、油揚げ、乾燥を効率よく行なうことができ、このため蒸煮工程をとらなくともα化が充分に進み、得られる製品は調理時には湯戻りが良く、喫食するときには滑らかで弾力のある食感を得ることが可能となる。又活性酵母とともにベーキングパウダーをあわせて添加することができるが、ベーキングパウダーの発泡は主に油揚処理時だけであり、発泡が粗く不均一になり易く、過剰な場合組織を破壊する可能性もあり、弾力のない麺となり、食味、風味にも影響するため単独では好ましい物性が得られにくい。一方活性酵母は適度な環境下では徐々に醗酵し、ガスを発生するため組織中の発泡が緻密であり又、良好な風味を付与することも可能である。 切出された麺線を蒸煮せず、油揚げのみの工程で澱粉のα化を達成し、かつ均一な膨化を起させるため、本発明者らは鋭意研究の結果、前述のような活性酵母を適量麺原料に添加し、適当な醗酵をさせることにより、蒸煮工程をへず油揚工程のみで、良好な即席タイプの麺を製造することができることを見出した。」(第2頁左上欄第15行ないし同頁左下欄第15行) 「実施例3 麺用小麦粉1Kgに食塩12g、パン用生酵母(オリエンタル酵母工業社製)10gを水 370mlで溶解し混合機に投入し混練してソボロ状とした。ソボロ状のものを28℃で30分間発酵させたのち常法通り麺帯にし25℃、70%RHで30分間麺帯熟成したのち機械圧延して麺厚 1.5mmまで伸ばし切歯#10で線切りしたのち 130℃で2分間油揚げして、即席タイプのうどんを得た。このもの 100gに熱湯を 300mlそそぎ、5分間後に喫食した結果、麺の断面が線切りした時の角のある形状を呈し弾力のある食感であり、風味も優れたうどんであった。」(第3頁左下欄第4ないし15行) 「〔発明の効果〕 以上説明したように、活性酵母を麺原料に添加することにより、蒸煮処理をせず、油揚げ処理のみで、即席麺を製造することが可能となる結果、製造工程が簡略化でき、製品の品質も安定化させることができる。又得られる即席麺は調理の際湯戻りが早く喫食したときには弾力のある食感であり、さらに風味にも優れたものとなる。又本発明の製造法によれば、太い麺の即席麺も製造できるようになる。」(第3頁左下欄第16行ないし同頁右下欄第5行) イ 甲第1号証に記載された発明 上記アの記載、特に実施例3の記載を中心に整理すると、甲第1号証には次の発明が記載されているものと認める。 「麺用小麦粉1Kgに食塩12g、パン用生酵母(オリエンタル酵母工業社製)10gを水 370mlで溶解し混合機に投入し混練してソボロ状とし、ソボロ状のものを28℃で30分間発酵させたのち常法通り麺帯にし25℃、70%RHで30分間麺帯熟成したのち機械圧延して麺厚 1.5mmまで伸ばし切歯#10で線切りしたのち 130℃で2分間油揚げすることで得られるものであって、喫食の際は熱湯を注ぐものである即席タイプのうどんの製造方法。」(以下、「甲1実施例3発明」という。) なお、甲第1号証の第2頁左上欄には、「原料として、小麦粉、穀粉、澱粉、そば粉等を適宜選択して使用でき」る旨記載されているものの、当該記載は原料として使用できるものを選択的に列挙したにすぎない記載であるから、当該記載を根拠として、特許異議申立人が特許異議申立書第7頁に記載するような「甲1発明」を認定することはできない。 (2) 対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1実施例3発明とを対比すると、甲1実施例3発明の「麺帯」、麺帯を「70%RHで30分間麺帯熟成したのち機械圧延して麺厚 1.5mmまで伸ばし切歯#10で線切りした」ものは、それぞれ、本件特許発明1の「麺生地」、「生麺線」に相当する。 また、甲1実施例3発明の「即席タイプのうどん」は、油揚げされたものであって、喫食の際には熱湯を注ぐものであることからみて、本件特許発明1の「湯戻し用油揚げ即席麺」に相当する。 さらに、甲1実施例3発明は、その工程上、「油揚げ」する前に、本件特許発明1で特定するところの「α化する工程」を経ていないことも明らかである。 してみると、両者は、 「小麦粉を含む原料に水を加え、混練して麺生地を得て、生麺線を切り出す工程と、 α化する工程を行うことなく前記生麺線を油で揚げる工程と を有する、湯戻し用油揚げ即席麺の製造方法。」 で一致し、次の点で相違する。 ・相違点1 麺生地の原料として、本件特許発明1は「澱粉(前記小麦粉に含有される澱粉を除く)、ならびに増粘多糖類を含む」ことを特定するのに対して、甲1実施例3発明にはそのような特定がない点。 上記相違点1について検討する。 甲第1号証には、「原料として、小麦粉、穀粉、澱粉、そば粉等を適宜選択して使用でき」る旨の記載(第2頁左上欄)はあるものの、小麦に加え澱粉を添加した具体的な例の記載はなく、ましてや、増粘多糖類をさらに加えることについての記載も示唆もない。 そして、本件特許発明1は、相違点1に係る発明特定事項を有することにより、α化する工程を行うことなく前記生麺線を油で揚げる工程とを有する油揚げ即席麺の製造方法において、なめらかで弾力のある食感を有する油揚げ即席麺を提供できるとともに、低エネルギーで油揚げ即席麺製品を製造することができ、省エネルギーを達成でき、製造のためのランニングコストを抑えることができ、設備投資コストも低く抑えられるとの、格別の効果を奏するものである。 よって、甲1実施例3発明において、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。 この点について、特許異議申立人は、特許異議申立書において、増粘多糖類はあらゆる即席麺に添加されているものである(甲第2号証ないし甲第5号証)こと、澱粉は食感改善効果があることは公知であること(甲第9号証及び甲第10号証)などをあげ、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。 しかしながら、何れの証拠をみても、α化工程を経ず油揚げ工程をする即席麺の製造方法において、小麦とともに澱粉と増粘多糖類をあわせて用いたことによる効果について示唆されているものではないから、特許異議申立人の当該主張は採用しない。 したがって、本件特許発明1は、甲1実施例3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものである。 そして、上記アで検討のとおり、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1の全ての特定事項を含む本件特許発明2ないし5も同様に、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 申立理由1-1についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、申立理由1-1は、その理由がない。 2 申立理由1-2(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性)について (1) 主な証拠の記載事項等 ア 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、「即席麺の製造方法」に関し、次の記載がある。 「[0001] 本発明は、生麺を蒸煮処理せずに、高温熱風乾燥する即席麺の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、生麺を蒸煮処理せずに短時間で高温熱風乾燥を行った場合においても、従来よりも更に優れた食味食感を得ることができる、即席熱風乾燥麺の製造方法に関する。」 「[0009] 本発明のより具体的な目的は、従来において生麺線を蒸煮処理せずに、高温熱風乾燥処理を行うタイプにおいても、従来よりも更に優れた食味食感を得ることができる、即席熱風乾燥麺の製造方法を提供することにある。」 「[0010] 本発明者は鋭意研究の結果、生麺線を直接に高温乾燥処理するに際して、特定の範囲の湿度および温度の熱風を用いて、生麺線を調湿しつつ高温熱風乾燥することが、上記目的の達成に極めて効果的なことを見出した。 [0011] 本発明の即席熱風乾燥麺の製造方法は上記知見に基づくものであり、より詳しくは、少なくとも小麦粉および澱粉を含む主原料から作製した生麺線を成形充填した後、湿度80mmHg~300mmHg、温度が110℃~150℃の熱風を用いて生麺線を調湿高温熱風乾燥することを特徴とするものである。 [0012] 上記構成を有する本発明によれば、主原料として小麦粉と澱粉を使用し、且つ、調湿を行いつつ高温熱風処理を行うことで、従来からある製法と比べて、麺線表面の澱粉質のα化を適度に高めた状態で乾燥処理することができる。このため、(従来の技術においては避けがたかったところの)高温熱風処理による食味食感の低下を効果的に防止することが可能となった結果、本発明においては、従来におけるよりも、食味食感を向上させることができる。」 「[0029] (即席麺) 本発明における「即席麺」ないし「即席乾燥麺」は、いわゆる煮込みタイプ、熱湯を注加して調理するタイプ、等のいずれでもよい。食味食感、湯戻り時間の点からは、本発明は、煮込みタイプに対して、より好適に使用可能である。」 「[0031] (主原料) 本発明において使用する主原料(以下、本明細書において「粉原料」と称する場合がある)は、小麦粉と澱粉を使用する。本発明の製法においては、主原料として澱粉を使用しない場合には、高温熱風乾燥時のα化度が低くなる傾向があり、湯戻し時間が長く必要になる等の、不適当な即席麺しか得られない。」 「[0036] (副原料) 本発明において、使用可能な副原料としては、特に制限されない。本発明において、使用可能な副原料としては、例えば、かんすい、リン酸塩、塩、増粘多糖類、卵、グルテン等が挙げられる。」 「[0037] (麺の製法) 本発明において使用可能な「麺」の製法は、生麺線を成形充填し、次いで調湿高温熱風乾燥を行うことを除き、特に制限されない。本発明の好適な態様においては、例えば、主原料として、小麦粉と澱粉を使用し、常法によりミキシング処理を行い、ドウを作成した後、ドウを複合・圧延後、切刃で切り出した生麺線を、一食ずつリテイナー(バスケット)に成形充填し、湿度80mmHg~300mmHg、温度が110℃~150℃の熱風を用いて生麺線を調湿高温熱風乾燥する。これにより、食味食感・復元性に優れた膨化乾燥麺を得ることができる。」 「[請求項1] 少なくとも小麦粉および澱粉を含む主原料から作製した生麺線を成形充填した後、湿度80mmHg~300mmHg、温度が110℃~150℃の熱風を用いて生麺線を調湿高温熱風乾燥することを特徴とする即席熱風乾燥麺の製造方法。」 イ 甲第2号証に記載された発明 上記アの記載、特に請求項1の記載に着目して整理すると、甲第2号証には次の発明が記載されているものと認める。 「少なくとも小麦粉および澱粉を含む主原料から作製した生麺線を成形充填した後、湿度80mmHg~300mmHg、温度が110℃~150℃の熱風を用いて生麺線を調湿高温熱風乾燥する、即席熱風乾燥麺の製造方法。」(以下、「甲2発明」という。) (2) 対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。 ・相違点2 本件特許発明1は「生麺線を油で揚げる工程」を有するのに対し、甲2発明は「生麺線を調湿高温熱風乾燥する」ものである点。 上記相違点2について検討する。 甲2発明は、「生麺を蒸煮処理せずに短時間で高温熱風乾燥を行った場合においても、従来よりも更に優れた食味食感を得ることができる、即席熱風乾燥麺の製造方法に関する」([0001])ものであり、「「麺」の製法は、生麺線を成形充填し、次いで調湿高温熱風乾燥を行うことを除き、特に制限されない」([0037])、すなわち、調湿高温熱風乾燥を行うことが必須のものである。 してみると、甲2発明において、「調湿高温熱風乾燥」に代えて、「油で揚げる工程」を採用する動機はなく、むしろ阻害要因があるものといえる。 よって、甲2発明において、相違点2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。 この点について、特許異議申立人は特許異議申立書において、生麺の乾燥方法をフライにするか、熱風乾燥にするかは、当業者が適宜採用可能な選択肢の一つにすぎず、変更容易である旨主張するが、上記のとおり、甲2発明において、「調湿高温熱風乾燥」に代えて、「油で揚げる工程」を採用することには、阻害要因があるものといえるから、特許異議申立人の当該主張は採用しない。 したがって、本件特許発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものである。 そして、上記アで検討のとおり、本件特許発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1の全ての特定事項を含む本件特許発明2ないし5も同様に、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 申立理由1-2についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、申立理由1-2は、その理由がない。 3 申立理由2(サポート要件)について (1) サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2) サポート要件の判断 本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「低エネルギーで油揚げ即席麺を製造することができ、省エネルギーを達成できるとともに、製造される油揚げ即席麺の食感を良好にできる方法を提供すること 」(【0009】)である。 そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明に係る油揚げ即席麺の製造方法は、小麦粉および澱粉、増粘多糖類を含む原料に水を加え、混練して麺生地を得て、生麺線を切り出す工程と、α化する工程を行うことなく前記生麺線を油で揚げる工程とを有する」(【0010】)こと、「本発明の油揚げ即席麺の製造方法は、生麺線を蒸したり茹でたりしてα化する工程を含まないので、低エネルギーで油揚げ即席麺製品を製造することができ、省エネルギーを達成でき、製造のためのランニングコストを抑えることができ、設備投資コストも低く抑えられる。また、主原料として小麦粉に加えて澱粉、ならびに副原料として増粘多糖類を添加することによって、なめらかで弾力のある食感を有する油揚げ即席麺を提供できる」(【0011】)こと、「主原料として澱粉を添加すると、油揚げ即席麺の湯戻りを早くでき、なめらかさや弾力に関する食感を改良できる」(【0014】)こと、「本発明に係る油揚げ即席麺の副原料としては、食塩、かん水、色素などの他に、増粘多糖類が用いられる」(【0017】)こと、「本発明に係る油揚げ即席麺は、蒸し工程のない製造方法で製造するので、主に弾力に関する食感を改良することが難しいが、澱粉ならびに増粘多糖類を添加することによって、食感を補うことができる」(【0021】)ことが記載され、具体的な実施例等を通じた評価(【0033】ないし【0105】)についても示されている。 これらの記載に接した当業者であれば、α化する工程を行うことなく生麺線を油で揚げる工程とを有する油揚げ即席麺の製造方法において、小麦粉および澱粉、増粘多糖類を含む原料に水を加え、混練して麺生地を得て、生麺線を切り出す工程を経るとの特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明は、上記発明の課題を解決できると認識できる全ての特定事項を有し、さらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できると認識できるものである。 したがって、本件特許発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。 (3) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、概略、本件特許発明では「澱粉」及び「増粘多糖類」の種類や配合量が特定されていないことをあげ、「澱粉」及び「増粘多糖類」の種類や配合量は麺の食感に大きく影響するものであるから、これらの点を特定しない本件特許発明は、発明の課題を解決できない部分を有する旨主張する。 しかしながら、α化する工程を行うことなく前記生麺線を油で揚げる工程とを有する油揚げ即席麺の製造方法において、小麦に加え、「澱粉」及び「増粘多糖類」を加えることで定性的な効果が得られ得るであろうことは、上記(2)の検討にもあるように、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載から当業者が十分認識できるものであるといえるから、特許異議申立人の当該主張は採用しない。 (4) 申立理由2についてのまとめ 上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由2は、その理由がない。 第5 結語 以上のとおりであるから、特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-701210

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決16件(東洋水産株式会社、金山 義信)
  • 2021-900256異議申立 / 2022-10-14 / 維持ムゲンピーマン、ムゲン
    同じ当事者: 東洋水産株式会社
  • 2016-700876異議申立 / 2017-03-31 / 維持カップ入り乾麺の製造方法
    同じ当事者: 東洋水産株式会社
  • 2025-300048取消審判 / 2025-05-07 / 請求成立(取消)オレノトンコツ、オレノ、オレ
    同じ当事者: 東洋水産株式会社
  • 2017-002740拒絶査定不服審判 / 2020-07-01 / 請求不成立
    同じ当事者: 東洋水産株式会社
  • 2017-002741拒絶査定不服審判 / 2020-07-01 / 請求不成立
    同じ当事者: 東洋水産株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,149件(121・A23L、537・A23L)
  • 2026-700149異議申立 / 2026-06-29 / 維持野菜含有調味料、及び野菜含有調味料の製造方法
    共通の審決分類: 121・A23L、537・A23L
  • 2025-700714異議申立 / 2026-05-25 / 請求成立(取消)
    共通の審決分類: 121・A23L、537・A23L
  • 2025-700215異議申立 / 2026-05-13 / 訂正認容EPAを含有する末梢の体温保持用の食品
    共通の審決分類: 121・A23L、537・A23L
  • 2025-700852異議申立 / 2026-05-13 / 訂正認容冷凍牡蠣集合体、冷凍牡蠣集合体の切断物、牡蠣フライ食品、および牡蠣フライ食品の製…
    共通の審決分類: 121・A23L、537・A23L
  • 2024-700938異議申立 / 2026-05-08 / 訂正認容果汁含有飲料
    共通の審決分類: 121・A23L、537・A23L

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存