特許異議申立
2022-701173
加湿器
- 審判番号
- 2022-701173
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-137415
- 登録番号
- 7150790
- 請求日
- 2022年11月25日
- 審決日
- 2023年06月30日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社ヒノキヤグループ
- 【権利者代理人】南瀬 透
- 【権利者代理人】加藤 久
- 【権利者代理人】宇野 智也
- 【権利者代理人】遠坂 啓太
- 【異議申立人】三枝 季子
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 充
- 審判官 槙原 進
- 審判官 岩▲崎▼ 則昌
- 分類
- P1652.537-Y (F24F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7150790号発明「加湿器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7150790号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第7150790号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和2年8月17日(優先権主張令和元年9月6日)の出願であって、令和4年9月30日にその特許権の設定登録がされ、令和4年10月11日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許の請求項1に係る特許に対し、令和4年11月25日に特許異議申立人三枝 季子(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
2 本件特許の請求項1の記載
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明1」という。)は、本件特許の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
空気吹出口を有するケーシングと、
水蒸気発生機能を有する加湿手段と、
前記空気吹出口と前記加湿手段とを連通する通気経路と、
前記加湿手段に水分を供給する給水手段と、
前記給水手段に送水する送水ホースと、
建物内のトイレやキッチンへ常時、水を流す給水配管の途中に設けられた水栓コンセントと、
前記送水ホースの上流側開口部を着脱可能に接続する接続手段と、
前記給水手段から前記加湿手段への給水量を制御する制御手段と、を備え、
前記水栓コンセントが循環給水方式である加湿器。」
3 申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として甲第1号証~甲第3号証(以下、「甲1」などという。)を提出し、本件特許発明1は、発明として不明確であり、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである旨申立てする。
<証拠方法>
甲1;2022年7月22日に特許権者が提出した意見書
甲2;新村 出、「広辞苑 第七版 あ-そ」、株式会社岩波書店、2018年1月12日、p.1436
甲3;新村 出、「広辞苑 第七版 た-ん」、株式会社岩波書店、2018年1月12日、p.2565-2566
4 甲1~甲3について
(1)甲1の記載
ア 甲1の3頁12行~4頁24行(当審注;空行は行数として数えていない。以下、同様。)には次の記載がある。なお、下線は当審によるものである(以下、同様。)。
「(2)本願発明と引用文献4,5に記載された発明との対比
審査官殿は、本願発明と引用文献4,5に記載された発明とを対比して「循環水を取水部に提供することは、例えば引用文献4の段落0027-0048及び図1-3、又は、引用文献5の段落0009-0014及び図1-2にそれぞれ開示されるように従来周知の技術的事項であって、該技術的事項を引用文献1発明の給水に適用することは、当業者容易に想到し得たものである。また、住宅への給水配管先としてトイレやキッチンを含むことは、引用文献4の段落0030に記載されているように生活用水の用途として良く知られている。」と指摘されています。
しかしながら、引用文献4に記載された発明において、ループ状の循環流路2を流れる循環水は供給流路6を経由して取水部10(10A,10B)へ提供される構成であり、この発明において循環水が循環しているのは循環流路2のループの範囲内だけであるため、取水部10(10A,10B)の上流側の供給流路6内の水は常時、流れる状態に保たれていません。
このため、取水部10(10A,10B)の上流側の供給流路6内の水は取水部10(10A,10B)を開いて吐出させない限り、供給流路6内に残水として停滞したままの状態となり、残水に起因する供給配管6の腐食を防止することができません。
従って、例えば、取水部10(10A,10B)に、本発明における加湿器の送水ホースの上流側開口部を接続した場合、加湿器を使用しない期間は、取水部10(10A,10B)の上流側の供給流路6内の水は供給流路6内に残水として停滞したままの状態となるので、残水に起因する供給配管6の腐食を防止することができません。
また、本願発明における循環給水方式の水栓コンセントは、送水ホースの上流側開口部を着脱可能に接続することができ、且つ、当該水栓コンセントの上流側の配管(給水配管17,17)に常時、水が流れる状態に保つ機能を有する部材であるのに対し、
引用文献4には、送水ホースの上流側開口部を着脱可能に接続することができ、且つ、取水部10(10A,10B)の上流側の供給流路6に常時、水が流れる状態を保つ機能を有する部材が全く記載されておらず、それを示唆する記載もありません。
即ち、引用文献4には、本願発明の構成要件A「建物内のトイレやキッチンへ常時、水を流す給水配管の途中に設けられた水栓コンセント」が「循環給水方式である」ことに相当する技術的事項が記載されておらず、それを示唆する記載もありません。
次に、引用文献5に記載された発明においては、供給配管13,高架水槽14,給水配管16及び循環配管21などからなるループ状の配管内を流れる水は分岐バルブ19a、枝配管19を経由して取水部(末端バルブ20a、末端枝管20)へ提供される構成であり、この発明において水が循環しているのは、供給配管13,高架水槽14,給水配管16及び循環配管21などからなるループ状の配管の範囲内だけであり、取水部(末端バルブ20a、末端枝管20)の上流側の枝配管19内の水は常時、流れる状態に保たれていません。
このため、取水部(末端バルブ20a、末端枝管20)の上流側の枝配管19内の水は末端バルブ20aを開いて末端枝管20から吐出させない限り、枝配管19内に残水として停滞したままの状態となり、残水に起因する枝配管19の腐食を防止することができません。
従って、例えば、末端枝管20に、本発明に係る加湿器の送水ホースの上流側開口部を接続した場合、加湿器を使用しない期間は、末端枝管20の上流側の枝配管19内の水は枝配管19内に残水として停滞したままの状態となるので、残水に起因する枝配管19の腐食を防止することができません。
また、本願発明における循環給水方式の水栓コンセントは、送水ホースの上流側開口部を着脱可能に接続することができ、且つ、当該水栓コンセントの上流側の配管(給水配管17,17)に常時、水が流れる状態に保つことができる部材であるのに対し、
引用文献5には、送水ホースの上流側開口部を着脱可能に接続することができ、且つ、取水部(末端バルブ20a、末端枝管20)の上流側の枝配管19に常時、水が流れる状態を保つ機能を有する部材が全く記載されておらず、それを示唆する記載もありません。
即ち、引用文献5には、本願発明の構成要件A「建物内のトイレやキッチンへ常時、水を流す給水配管の途中に設けられた水栓コンセント」が「循環給水方式である」ことに相当する技術的事項が記載されておらず、それを示唆する記載もありません。
従って、本願発明は、引用文献1-5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではありません。」
イ 甲1の4頁32行~同頁41行には次の記載がある。
「(4)これに対し、本願発明は、引用文献1-14に記載されていない構成要件A「建物内のトイレやキッチンへ常時、水を流す給水配管の途中に設けられた水栓コンセント」が「循環給水方式である」ことを具備しており、
これにより、
建物内のトイレやキッチンへの給水配管には常時、水が流れているので、水栓コンセントを使用しない期間(加湿器を使用しない季節など)においても、給水配管内に水が残ることがなくなり、残水に起因する給水配管の腐食を防止することができる、という顕著な効果を得ることができます。
よって、本願発明は、引用文献1-14に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではありません。」
(2)甲2の記載
甲2の1436頁の第2段には次の記載がある。
「じょう-じ【常時】いつも。平生。ふだん。「-試合に出る」」
(3)甲3に記載
甲3の2565頁の最下段には次の記載がある。
「ふ-だん【不断】○1(当審注;○で囲われた数字である。以下、同様。)絶えないこと。絶え間の無いこと。「-の香をたく」「-の努力」○2(「普段」とも書く)平生。平常。「-はおとなしい人ですがね」「-の心がけ」「-思っていること」○3決断の鈍いこと。にえきらないこと。」
5 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書の2頁下から2行~4頁12行において、次の主張をする。
「2022年7月22日付け提出の手続補正書により、「常時、水を流す」という構成要件が加入された。
また、2022年7月22日付け提出の意見書(甲第1号証) には、「常時、水を流す」という構成要件が加入されたことに関連して、以下のように記載される。
・・・
当該意見書を参酌すると、「常時、水を流す」状態とは、給水配管の途中に設けられたトイレやキッチンの水栓を常に吐出させる等、常時(すなわち、24時間絶え間なく) 、流路に水が循環している状態を指しているものと考えられる(解釈1)。
しかしながら、「常時、水を流す」状態とは、「非常時の状態においては、水を流さない」との意味も解釈でき、換言すると、「非常時ではない状態(すなわち、常時) においては、水を流す状態とも解釈が可能と考える(解釈2)。
従って、「常時、水を流す」状態は、上述したように、2通りの解釈が可能であると考えることができるため、「常時、水を流す」状態を意味するところが不明確であることから、本件特許発明1は不明確であり、特許法第36条6項2号の要件を満たしていないものと考える。
また、甲第2号証( 広辞苑第七版の表表紙、1436頁及び奥付けの写し) によれば、「常時」との文言は、「いつも。平生。ふだん。」の意味を有する。
さらに、甲第3号証(広辞苑第七版の表表紙、2565頁・2566頁及び奥付けの写し) によれば、「ふだん」との文言は、「【不断】○1絶えないこと。絶え間のないこと。」とは別に、「○2(普段)平生。平常。「-はおとなしい人ですがね」「-の心がけ」「-思っていること」」との意味を有する。
そうすると、「○2 」の意味では、「○2」中に記載の例文の内容も含めて考慮すると、「普段」ではない状態、すなわち、「特別な場合」が存在することが言える。
上述した「常時」の意味を、本発明の「常時、水を流す」に当てはめると、
○1 常に、つまり、24時間( 絶え間なく) いつも流れている、
○2「普段」は流れているが、「特別な場合」は流れていない、
との2通りの意味が含まれると解釈される。
しかしながら、2022年7月22日付け提出の意見書(甲第1号証) の主張からは、「常時、水を流す」における「常時」の意味は、○1の意味として限定して解釈されなければならないと考える。
従って、本件特許発明1に記載の「常時、水を流す」は、2通りの解釈を含んでいることから、発明として不明確であり、特許法第36条6項2号の要件を満たしていないものと考える。」
6 当審の判断
上記5によれば、申立人は、本件特許の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない理由として、本件特許発明1の「常時、水を流す」との発明特定事項が、2通りの解釈を含んでいることから、本件特許発明1が発明として不明確であることを述べているので、「常時、水を流す」の解釈について以下検討する。
(1)本件特許発明1の「常時、水を流す」との発明特定事項については、本件特許の請求項1には、具体的な説明をする記載はないので、その解釈を検討するにあたり、本件特許の明細書及び図面の記載を参酌すると、関連する記載として、次の記載がある。
「【0034】
図1,図2に示すように、本実施形態においては、水栓コンセント14は循環給水方式を採用している。具体的には、建物H内のトイレやキッチン(図示せず)などへの給水配管17の途中に水栓コンセント14を設けることによって循環給水方式を形成している。給水配管17には常時、水が流れているので、水栓コンセント14を使用しない期間(加湿器100を使用しない季節など)においても給水配管17内に水が残らず、残水に起因する給水配管17の腐食を防止することができる。」
「【図1】
[図:0001400486000001.jpg]
【図2】
[図:0001400486000002.jpg]
」
(2)上記(1)の段落【0034】、図1及び図2の記載によれば、循環給水方式を採用した水栓コンセント14が途中に設けられた「給水配管17」には、「常時、水が流れている」ので、「水栓コンセント14を使用しない期間(加湿器100を使用しない季節など)においても給水配管17内に水が残らず、残水に起因する給水配管17の腐食を防止することができる」ことが説明されている。
この説明によれば、本件特許発明1の「常時、水を流す」とは、「水栓コンセントを使用しない期間(加湿器を使用しない季節など)においても給水配管内に水が残らず、残水に起因する給水配管の腐食を防止することができる」ように水を流すものであると解釈することができる。
したがって、本件特許発明1における「常時、水を流す」の意味は明確である。
(3)申立人は、上記5において、上記4(2)の甲2に記載されている「常時」との文言の意味、及び上記4(3)の甲3に記載されている「ふだん」との文言の意味から、本件特許発明1の「常時、水を流す」ことについて、「○1常に、つまり、24時間(絶え間なく)いつも流れている」ことと、「○2「普段」は流れているが、「特別な場合」は流れていない」こととの2通りの意味が含まれていると解釈されると主張する。
しかし、本件特許の明細書及び図面の記載を参酌して、本件特許発明1の「常時、水を流す」ことについて、上記(2)のとおり解釈することができるのであるから、甲2に記載されている「常時」との文言の意味、及び甲3に記載されている「ふだん」との文言の意味による解釈を論ずるまでもなく、本件特許発明1の「常時、水を流す」の意味は明確である。
(4)また、申立人は、上記5において、「2022年7月22日付け提出の意見書(甲第1号証) の主張からは、「常時、水を流す」における「常時」の意味は、○1の意味として限定して解釈されなければならないと考える。」と主張する。
しかし、上記4(1)ア及びイの記載(特に、イの記載)によれば、本件特許発明1は、「建物内のトイレやキッチンへ常時、水を流す給水配管の途中に設けられた水栓コンセント」が「循環給水方式である」ことを具備していることにより、「建物内のトイレやキッチンへの給水配管には常時、水が流れている」ので、「水栓コンセントを使用しない期間(加湿器を使用しない季節など)においても、給水配管内に水が残ることがなくなり、残水に起因する給水配管の腐食を防止することができる」と主張されており、当該主張は、上記(2)の本件特許発明1の「常時、水を流す」ことの解釈と何ら齟齬するものではなく、そのように解釈することを妨げるものでないから、「常時」の意味を○1の意味として限定して解釈されなければならないかを論ずるまでもなく、本件特許発明1の「常時、水を流す」の意味は明確である。
(5)そうすると、本件特許発明1は、「常時、水を流す」の意味は明確であり、発明として明確であるから、本件特許の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
よって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、特許法第113条第4号に該当しない。
7 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-701173