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特許異議申立

2022-701158

動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラム

審判番号
2022-701158
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-138096外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7073961
請求日
2022年11月24日
審決日
2023年01月31日
公報発行日
2023年03月31日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.16 -Y (A61B) / P1652.4 -Y (A61B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第39条第1項、特許法第29条の2、特許法第41条第3項、特許法第41条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7073961号発明「動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7073961号の請求項1ないし6、10ないし13に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許7073961号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし13に係る特許についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成30年7月24日に出願され、令和4年5月16日にその特許権の設定登録がされ、令和4年5月24日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和4年11月24日付けで特許異議申立人であるラドウィスプ プライベート リミテッド(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし6、請求項10ないし13)がされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項1ないし13に係る発明を、項番順に「本件発明1」等という。)。 「【請求項1】 心拍を有する生体を時系列的に連続して撮影することで取得される複数の連続するフレーム画像で構成されるX線動態画像を取得する画像取得部と、 前記画像取得部によって取得された前記X線動態画像の画素値を対数変換して対数変換画像を作成する対数変換処理部と、 前記X線動態画像又は前記対数変換画像のうち少なくとも一方について、心拍位相に基づき一のフレーム画像を基準フレーム画像として設定する解析対象設定部と、 該基準フレーム画像としての前記X線動態画像と他のフレーム画像である比較フレーム画像としての前記X線動態画像との差分又は比をとり、あるいは前記基準フレーム画像としての前記対数変換画像と前記比較フレーム画像としての前記対数変換画像との差分又は比をとり、これに基づいて血流解析画像を生成する血流解析部と、 を備え、 前記解析対象設定部は、肺野の心臓近傍領域の濃度変化又は血管の位置変化に基づいて前記基準フレーム画像を設定することを特徴とする動態画像解析装置。 【請求項2】 心拍を有する生体を時系列的に連続して撮影することで取得される複数の連続するフレーム画像で構成されるX線動態画像を取得する画像取得部と、 前記画像取得部によって取得された前記X線動態画像の画素値を対数変換して対数変換画像を作成する対数変換処理部と、 前記X線動態画像又は前記対数変換画像のうち少なくとも一方について、心拍位相に基づき一のフレーム画像を基準フレーム画像として設定する解析対象設定部と、 該基準フレーム画像としての前記X線動態画像と他のフレーム画像である比較フレーム画像としての前記X線動態画像との差分又は比をとり、あるいは前記基準フレーム画像としての前記対数変換画像と前記比較フレーム画像としての前記対数変換画像との差分又は比をとり、これに基づいて血流解析画像を生成する血流解析部と、 を備え、 前記解析対象設定部は、前記フレーム画像から血流アーチファクトとなる動きを検出し、前記複数のフレーム画像のうち、前記血流アーチファクトとなる動きを含まないフレーム画像が連続している範囲内から、前記基準フレーム画像及び前記比較フレーム画像を選定することを特徴とする動態画像解析装置。 【請求項3】 前記解析対象設定部は、心臓の心室拡張末期に対応するフレーム画像を前記基準フレーム画像として設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の動態画像解析装置。 【請求項4】 前記血流解析部は、前記基準フレーム画像と前記比較フレーム画像との差分又は比をとる際に、各々の画素値を、7mm以上のブロックサイズにおける代表値とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。 【請求項5】 前記血流解析部は、前記基準フレーム画像と前記比較フレーム画像との差分又は比をとる際に、各々の画素値について時間方向に周波数成分を限定するフィルター処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。 【請求項6】 前記解析対象設定部は、周期的な前記心拍である心拍動の発生後であって心臓の心室収縮期に対応するフレーム画像を前記基準フレーム画像として設定することを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。 【請求項7】 前記血流解析部が、前記基準フレーム画像と前記比較フレーム画像との差分又は比をとることで得た前記血流解析画像を機能画像として表示する表示部と、 前記表示部の表示を制御する表示制御部と、 をさらに備え、 前記表示制御部は、前記機能画像の画素値が、正の場合と負の場合とで色相を変えて表示させるように、前記表示部の表示を制御するとともに、前記画素値の絶対値を色相以外のパラメーターと対応付けて、前記表示部の表示に反映させるように制御することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。 【請求項8】 前記色相以外のパラメーターは、彩度、明度、又は彩度及び明度の合成の少なくともいずれかを含んでいることを特徴とする請求項7に記載の動態画像解析装置。 【請求項9】 前記表示制御部は、前記機能画像について、診断対象外の領域を表示しないように前記表示部の表示を制御することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の動態画像解析装置。 【請求項10】 心拍を有する生体を時系列的に連続して撮影することで取得される複数の連続するフレーム画像で構成されるX線動態画像を取得する画像取得工程と、 前記画像取得工程において取得された前記X線動態画像の画素値を対数変換して対数変換画像を作成する対数変換処理工程と、 前記X線動態画像又は前記対数変換画像のうち少なくとも一方について、心拍位相に基づき一のフレーム画像を基準フレーム画像として設定する解析対象設定工程と、 該基準フレーム画像としての前記X線動態画像と他のフレーム画像である比較フレーム画像としての前記X線動態画像との差分又は比をとり、あるいは前記基準フレーム画像としての前記対数変換画像と前記比較フレーム画像としての前記対数変換画像との差分又は比をとり、これに基づいて血流解析画像を生成する血流解析工程と、 を含み、 前記解析対象設定工程では、肺野の心臓近傍領域の濃度変化又は血管の位置変化に基づいて前記基準フレーム画像を設定することを特徴とする動態画像解析方法。 【請求項11】 心拍を有する生体を時系列的に連続して撮影することで取得される複数の連続するフレーム画像で構成されるX線動態画像を取得する画像取得工程と、 前記画像取得工程において取得された前記X線動態画像の画素値を対数変換して対数変換画像を作成する対数変換処理工程と、 前記X線動態画像又は前記対数変換画像のうち少なくとも一方について、心拍位相に基づき一のフレーム画像を基準フレーム画像として設定する解析対象設定工程と、 該基準フレーム画像としての前記X線動態画像と他のフレーム画像である比較フレーム画像としての前記X線動態画像との差分又は比をとり、あるいは前記基準フレーム画像としての前記対数変換画像と前記比較フレーム画像としての前記対数変換画像との差分又は比をとり、これに基づいて血流解析画像を生成する血流解析工程と、 を含み、 前記解析対象設定工程では、前記フレーム画像から血流アーチファクトとなる動きを検出し、前記複数のフレーム画像のうち、前記血流アーチファクトとなる動きを含まないフレーム画像が連続している範囲内から、前記基準フレーム画像及び前記比較フレーム画像を選定することを特徴とする動態画像解析方法。 【請求項12】 動態画像解析装置のコンピューターに、 心拍を有する生体を時系列的に連続して撮影することで取得される複数の連続するフレーム画像で構成されるX線動態画像を取得する画像取得機能と、 前記画像取得機能によって取得された前記X線動態画像の画素値を対数変換して対数変換画像を作成する対数変換処理機能と、 前記X線動態画像又は前記対数変換画像のうち少なくとも一方について、心拍位相に基づき一のフレーム画像を基準フレーム画像として設定する解析対象設定機能と、 該基準フレーム画像としての前記X線動態画像と他のフレーム画像である比較フレーム画像としての前記X線動態画像との差分又は比をとり、あるいは前記基準フレーム画像としての前記対数変換画像と前記比較フレーム画像としての前記対数変換画像との差分又は比をとり、これに基づいて血流解析画像を生成する血流解析機能と、 を実現させ、 前記解析対象設定機能は、肺野の心臓近傍領域の濃度変化又は血管の位置変化に基づいて前記基準フレーム画像を設定することを特徴とするコンピューター読み取り可能なプログラム。 【請求項13】 動態画像解析装置のコンピューターに、 心拍を有する生体を時系列的に連続して撮影することで取得される複数の連続するフレーム画像で構成されるX線動態画像を取得する画像取得機能と、 前記画像取得機能によって取得された前記X線動態画像の画素値を対数変換して対数変換画像を作成する対数変換処理機能と、 前記X線動態画像又は前記対数変換画像のうち少なくとも一方について、心拍位相に基づき一のフレーム画像を基準フレーム画像として設定する解析対象設定機能と、 該基準フレーム画像としての前記X線動態画像と他のフレーム画像である比較フレーム画像としての前記X線動態画像との差分又は比をとり、あるいは前記基準フレーム画像としての前記対数変換画像と前記比較フレーム画像としての前記対数変換画像との差分又は比をとり、これに基づいて血流解析画像を生成する血流解析機能と、 を実現させ、 前記解析対象設定機能は、前記フレーム画像から血流アーチファクトとなる動きを検出し、前記複数のフレーム画像のうち、前記血流アーチファクトとなる動きを含まないフレーム画像が連続している範囲内から、前記基準フレーム画像及び前記比較フレーム画像を選定することを特徴とするコンピューター読み取り可能なプログラム。」 第3 特許異議申立理由の概要 申立人は、証拠として、下記1の各甲号証を提出し、取消理由1として、本件発明1ないし6、10ないし13に係る特許は、下記2に示す理由により取り消すべきものである旨、及び、取消理由2として、本件発明1ないし4、10ないし13に係る特許は、下記3に示す理由により取り消すべきものである旨主張している。 1 証拠 甲第1号証の1:国際公開WO2019/135412号公報 甲第1号証の2:特願2018-855号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(特願2018-855号は、平成30年1月5日の出願であって、甲第1号証の1に係る国際特許出願の優先権の主張の基礎とされた出願である。) 甲第1号証の3:特願2018-43511号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(特願2018-43511号は、平成30年3月9日の出願であって、甲第1号証の1に係る国際特許出願の優先権の主張の基礎とされた出願である。) 甲第2号証:特許第7169514号公報(甲第1号証の1に係る国際特許出願の国内移行出願である特願2019-563986号の一部を、令和4年4月13日に新たな特許出願(分割出願)とした特願2022-66013号に係る特許である。) 2 取消理由1(拡大先願) 本件発明1ないし6、10ないし13は、本件出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許法第41条第3項の規定により出願公開がされたものとみなされた甲第1号証の2および甲第1号証の3に記載された発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件発明1ないし6、10ないし13に係る特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。 3 取消理由2(先願) 本件発明1ないし4、10ないし13は、同発明に係る本件出願の出願日前の優先日を有する甲第2号証に係る出願の請求項1ないし4に係る発明と同一であるから、本件発明1ないし4、10ないし13に係る特許は特許法第39条第1項の規定に違反してされたものである。 第4 当審の判断 1 取消理由1(拡大先願(特許法第29条の2))について (1)甲第1号証の2および甲第1号証の3の記載について 甲第1号証の2に係る特許出願である特願2018-855号は、本件出願前の平成30年1月5日(以下「甲1-2出願日」という。)の出願であり、また、甲第1号証の3に係る特許出願である特願2018-43511号は、本件出願前の平成30年3月9日(以下「甲1-3出願日」という。)の出願であって、該各出願を優先権の主張の基礎として、日本国を指定国に含む国際特許出願(PCT/JP2019/000102)がなされ、当該国際特許出願は、本件出願後の平成31年1月7日に出願公開(甲第1号証の1:国際公開WO2019/135412号公報)されている。 そして、甲第1号証の2および甲第1号証の3には下記アの事項が記載されており、該記載事項は甲第1号証の1にも記載されている。 ア 甲第1号証の2および甲第1号証の3(並びに甲第1号証の1)には共通して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。 (ア)「[0001] 本発明は、人体の画像を解析し、解析結果を表示する技術に関する。」 (イ)「[0019] (11)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、人体の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、前記画像を格納するデータベースから複数のフレーム画像を取得する処理と、前記各フレーム画像の特定領域の画素に基づいて、呼気または吸気の全部または一部を含む呼吸要素の少なくとも一つの周波数を特定する処理と、前記特定した呼吸要素の少なくとも一つの周波数に基づいて、肺野および横隔膜を検出する処理と、前記検出した肺野を複数のブロック領域に分割し、前記各フレーム画像におけるブロック領域の画素の変化率を算出する処理と、前記ブロック領域の画素の変化率と、呼吸と連動する動的部位の変化率との比の値である同調率を用いて、前記同調率が予め定められた一定の範囲内にあるブロック領域のみを抽出する処理と、前記抽出したブロック領域のみを含む各画像をディスプレイに表示する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。」 (ウ)「[0048] まず、本発明の基本的な概念について説明する。本発明では、人体における呼吸や血管、肺野の面積及び体積、その他の生体運動において、一定の周期で反復するように捉えられる動きに対し、全体若しくはある部分的な範囲について、時間軸における一定の反復若しくは一定の運き(ルーチーン)を、波として捉え、計測する。波の計測結果については、(ア)波の形態自体、若しくは、(イ)波の間隔(周波数:Hz)を用いる。・・・ [0049] 同時期に同じようにリンクされる波が存在し得る。例えば、呼吸であれば、以下の近似を概念することができる。(ある大雑把な範囲の「density」変化の平均)≒(胸郭の変化)≒(横隔膜の動き)≒(肺機能検査)≒(胸腹呼吸センサ)」 (エ)「[0055] ここで、ベースデータを作る際、単一若しくは複数のモダリティから得られる特徴量(例えば、ある一定範囲の「density」、「volumetry」より構成される変化量、胸郭の動き、横隔膜の動き、「spirometry」、胸腹呼吸センサの2つ以上)、または、同じ呼吸周回などの複数回の波形測定により、お互いの成分抽出を補足し合い、精度を高めていく。これにより、アーティファクトの軽減、ライン(line)などのある一定の予想をもとに精度を高めることが可能となる。ここで、「density」とは、「密度」と訳されるが、画像においては、特定の領域における画素の「吸収値」を意味する。例えば、CTでは、空気は「-1000」、骨は「1000」、水は「0」として用いられている。・・・ [0057] 本明細書では、「density」と「intensity」とを区別して用いる。「density」は、上述したように、吸収値を意味し、XPやXP動画の元画において、空気の透過性が高く、透過性の高い部分を白であることを数値にし、空気を「-1000」、水を「0」、骨を「1000」として表示するものとする。一方、「intensity」は、「density」から相対的に変化したもの、例えば、normalizedして濃度の幅、信号の程度に“変換”して表示したものとする。すなわち、「intensity」は、画像において、明暗や強調度などの相対的な値である。XP画像の吸収値を直接扱っている間は、「density」または「densityの変化(Δdensity)」として表す。そして、これを画像表現上の都合で、上記のような変換を行なって、「intensity」として表す。例えば、0から255の256階調にカラー表示する場合は、「intensity」となる。このような用語の区別は、XPやCTの場合にあてはまる。」 (オ)「[0060] [同調一致率について] 本明細書では、画像変化の傾向を、同調一致率として説明する。例えば、肺野を検出し、複数のブロック領域に分割し、各フレーム画像におけるブロック領域の「平均density(画素値x)」を算出する。そして、「平均density(画素値x)」の最小値から最大値の変化幅(0%~100%)に対する各フレーム画像におけるブロック領域の平均画素値の割合(x’)を算出する。一方、横隔膜の最小位置から最大位置の変化幅(0%~100%)に対する各フレーム画像の横隔膜の変化(y)の割合(y’)との比の値(x’/y’)を用いて、比の値(x’/y’)が予め定められた一定の範囲内にあるブロック領域のみを抽出する。 [0061] ここで、y’=x’若しくはy=ax(aは横隔膜の振幅の数値や「density」の数値の係数)となる場合は、完全一致である。しかし、完全一致の場合のみが有意義な値であるわけではなく、ある一定の幅を持った値を抽出すべきである。そこで、本発明の一態様では、対数(log)を用いて、一定の幅を以下のように定める。すなわち、y=xの割合(%)で計算すると、同調の完全一致は「log y’/x’=0」である。さらに、同調一致率の範囲が狭いもの(数式的に狭い)範囲を抽出する場合は、例えば、0に近い範囲で「log y’/x’=-0.05~+0.05」と定め、同調一致率の範囲が広いもの(数式的に広い)範囲のものであれば例えば0に近い範囲で「log y’/x’=-0.5~+0.5」と定める。・・・この範囲が狭いものであればあるほど、また、その範囲内で一致する数値が高いほど、一致率が高いといえる。 [0062] 画素のピクセルごとにこの比の値を求めて個数をカウントすると、健康な人の場合は、完全一致の場合をピークとした正規分布が得られる。これに対し、疾患を有する人の場合は、この比の値の分布が崩れることとなる。なお、上記のように、対数を用いて幅を定める手法は、あくまでも一例であり、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、(ある大雑把な範囲の「density」の変化)≒(胸郭の変化)≒(横隔膜の動き)≒(肺機能検査)≒(胸腹呼吸センサの動き)≒(肺野の面積及び体積)として、“画像抽出”を行なうものであり、対数を用いる手法以外の手法も適用可能である。このような手法により、同調性画像を表示することが可能となる。 [0063] 血管の場合は、一連の心臓の収縮(y)に呼応して生じる一連の「density」の変化(x(肺門部における一波形)において、そのままの形でわずかな時間の遅れ(位相の変化)が存在するため、y=a’(x-t)と表される(すなわち、Y≒X)。完全一致の場合は、t=0であるため、y=x、またはy=a’xである。横隔膜の場合と同様に、同調一致率の範囲が狭いもの(数式的に狭い)範囲を抽出する場合は、例えば、0に近い範囲で「log y’/x’=-0.05~+0.05」と定め、同調一致率の範囲が広いもの(数式的に広い)範囲のであれば例えば0に近い範囲で「log y’/x’=-0.5~+0.5」と定める。この範囲が狭いものであればあるほど、また、その範囲内で一致する数値が高いほど、一致率が高いといえる。 [0064] その他の血管の場合は、上記の「心臓に呼応する部分」が除外され、肺門からプロットした中枢側の「density」を用いる。末梢の血管の場合も同様に取り扱うことができる。 [0065] さらに、循環器についても本発明を適用することができ、例えば、心臓の「density」の変化が、肺門部~末梢肺野への血流の「density」の変化に直接関連し、一連の心臓の「density」の変化や肺門部の「density」の変化は、一種の変換を受けてそのまま伝播される。それは、心臓の「density」の変化と肺門部の「density」の変化の関係より若干の位相の差を得て生じると考えられる。・・・」 (カ)「[0071] 以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1Aは、本実施形態に係る診断支援システムの概略構成を示す図である。この診断支援システムは、コンピュータに診断支援プログラムを実行させることにより特定の機能を発揮する。基本モジュール1は、呼吸機能解析部3、肺血流解析部5、その他の血流解析部7、フーリエ解析部9、波形解析部10および視覚化・数値化部11から構成されている。基本モジュール1は、入力インタフェース13を介してデータベース15から画像データを取得する。データベース15には、例えば、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)による画像が格納されている。基本モジュール1から出力された画像信号は、出力インタフェース17を介してディスプレイ19に表示される。次に、本実施形態に係る基本モジュールの機能について説明する。 [0072] [呼吸要素の周期解析] 本実施形態では、以下の指標に基づいて呼吸要素の周期を解析する。「呼吸要素」とは、上述したように、呼気または吸気の全部または一部を含む概念である。すなわち、肺野内のある一定領域における「density」/「intensity」、横隔膜の動き、胸郭の動きの少なくとも一つを用いて呼吸要素の少なくとも一つの周波数を解析する。・・・また、X線(その他CT、MRIなどの複数種類のモダリティ)の透過性が高い部位で測定されるある一定のvolume 「density」/「intensity」で構成される範囲、スパイログラムなどの他の測定方法から得られるデータや外部入力情報を用いても良い。」 (キ)「[0086] [ブロック領域の作成] 肺野を複数のブロック領域に分ける手法について説明する。図1Bは、肺野を肺門から放射状に分割する手法を示す図である。肺は、肺尖側よりも横隔膜側の方が大きく動くため、横隔膜側に近いほど粗く分割した点をプロットするようにしても良い。なお、図1Bにおいて、縦方向の線(点線)を追加的に描画し、複数の矩形(正方形)のブロック領域に分けてもよい。これにより、肺の動作をより正確に表すことが可能となる。なお、「肺の縦方向に点をプロットし、肺を横断的に分ける手法」、「肺の横方向に点をプロットし、肺を縦断的に分ける手法」、「肺尖部における接線と横隔膜における接線を引き、その接線が交わる点を中心点として定め、その点を含む直線(例えば、鉛直線)からある一定の角度で引いた線分で肺を分割する手法」、「肺を肺尖(または肺門)から横隔膜端部を結ぶ直線と直交する複数の平面で切断する手法」などの手法で、肺野を分割することも可能である。・・・[0087] 肺野領域は、胸郭の動き、横隔膜の動き、肺野全体の血管の位置関係を同定し、肺輪郭の相対的位置を把握し、その動きに基づいて相対的に評価すべきものである。このため、本願発明では、肺輪郭を自動検出した後、肺輪郭によって特定される領域を複数のブロック領域に分割し、各ブロック領域に含まれる画像の変化の値(画素値)を平均化する。例えば、図10に示すように、ベジエ曲線上で対向する肺の辺縁上に点をプロットし、それらを接続した上で、その中間の点を通る曲線を用いることも可能である。その結果、図1Cに示されているように、肺の形態が時間の経過によって変化しても、注目する領域の経時的変化を追跡することが可能となる。一方、図1Dは、解析対象となる臓器(この場合は肺)の形態を考慮せずに、ブロック領域に分割した場合の経時的変化を示す図である。肺野領域とは、上述した通り、胸郭の動き、横隔膜の動き、肺野全体の血管の位置関係を同定し、肺輪郭の相対的位置を把握し、その動きに基づいて相対的に評価すべきものであるが、図1Dに示すように、肺野領域を特定することなくブロック領域に分割すると、肺の経時的変化により、注目領域が肺野領域から外れ、意味のない画像となってしまう。・・・」 (ク)「[0108] [視覚化・数値化] 上記のように解析した結果を、視覚化および数値化する。・・・ [0109]・・・standard uptakeとして、計測された肺野全域の「density」/「intensity」から平均値を1として相対的/対数的に値を表示することがある。また、血流の方向だけを採用するため、特定方向への変化を切り出すことがある。これにより、意味のある方法のデータだけを取り出すことが可能となる。肺野同定結果を用いて、解析範囲の変化に追従して疑似カラー化を行なう。すなわち、フェーズに合わせた特定の形(最小、最大、平均、中央値)に沿って、各個人(被写体)の解析結果を相対的な領域に当てはめる。」 (ケ)「[0143] [肺血流解析] 次に、肺血流解析について説明する。図7は、本実施形態に係る肺血流解析の概要を示すフローチャートである。基本モジュール1がデータベース15からDICOMの画像を抽出する(ステップT1)。ここでは、少なくとも、一心拍周期内に含まれる複数のフレーム画像を取得する。次に、取得した各フレーム画像に基づいて、血管拍周期を特定する(ステップT2)。なお、特定した血管拍周期やこの血管拍周期から特定される波形については、以下の各ステップで用いることが可能である。血管拍周期は、上述したように、例えば、心電図や脈拍計等の他のモダリティの計測結果、心臓・肺門・主要血管など、任意の部位の「density」/「intensity」の変化を用いて血管拍を解析する。なお、予め各臓器(ここでは肺血流)が有する周波数を特定しておき、その特定した周波数に対応する「density」/「intensity」を抽出しても良い。 [0144] 次に、図7において、上述した方法で呼吸要素の周期を特定し(ステップT3)、その呼吸要素の周期を用いて肺野を自動検出する(ステップT4)。肺の輪郭の自動検出では、フレーム画像毎に、ばらつきが生ずることもあるが、ステップT3において特定した呼吸要素の周期に基づいて、各フレーム画像を補間することによって、各フレーム画像における肺輪郭を特定する。また、図2E~図2Hで示したようなパターンマッチングを行なって、肺野を検出しても良い。なお、検出した肺野について、カットオフによるノイズ除去を行なっても良い。次に、検出した肺野を複数のブロック領域に分割する(ステップT5)。そして、各フレーム画像における各ブロック領域の変化を計算する(ステップT6)。ここでは、各ブロック領域内での変化の値を平均化し、1つのデータとして表現する。なお、各ブロック領域内での変化の値について、カットオフによるノイズ除去を行なっても良い。次に、各ブロック領域の「density」/「intensity」の値や、また、その変化量について、上記血管拍周期に基づいて、フーリエ解析または同調一致率の解析を実施する(ステップT7)。 [0145] 次に、フーリエ解析または同調一致率の解析により得られた結果について、ノイズ除去を行なう(ステップT8)。ここでは、上述したようなカットオフや、アーティファクト(artifact)の除去を行なうことができる。以上のステップT6からステップT8の動作を1回以上行ない、完了するかどうかを判断する(ステップT9)。・・・ [0146] ステップT9において、完了しない場合は、ステップT6に遷移し、完了する場合は、フーリエ解析または同調一致率の解析により得られた結果を、疑似カラー画像としてディスプレイに表示する(ステップT10)。なお、白黒画像を表示しても良い。これにより、データの確度を高めることが可能となる。また、ディスプレイに表示された画像を修正することで、所望の動画を得るようにしても良い。」 (コ)「[0155] 以上説明したように、本実施形態によれば、X線動画装置で人体の画像を評価することが可能となる。デジタルデータを取得できれば、現存施設装置で概ね良好に計算可能であり、導入費用が安価で済む。例えば、Flat panel detectorを用いたX線動画装置において、被写体の検査を簡便に済ませることが可能となる。また、肺血流については、肺血栓塞栓症のスクリーニングが可能となる。例えば、Flat panel detectorを用いたX線動画装置においては、CTを行なう前に本実施形態に係る診断支援プログラムを実行することによって、無駄な検査を除外することができる。また、検査が簡便であるため、緊急性の高い疾患を早期に発見し、優先的に対応することが可能となる。なお、現時点における撮影方法では、CT、MRIなどの他のmodalityでは、いくつかの課題があるが、これを解決できれば、各領域の細かい診断が可能となる。」 (サ)「図1A [図:0001395268000001.jpg] 」 (シ)「図7 [図:0001395268000002.jpg] 」 イ 上記アの事項から認定した事項 (ア)上記ア(オ)の段落[0063]の記載から認定した事項 a 上記ア(ウ)の段落[0048]における「まず、本発明の基本的な概念について説明する。本発明では、人体における呼吸や血管、肺野の面積及び体積、その他の生体運動において、一定の周期で反復するように捉えられる動きに対し、全体若しくはある部分的な範囲について、時間軸における一定の反復若しくは一定の運き(ルーチーン)を、波として捉え、計測する。」という記載を踏まえると、段落[0063]の記載からは、一定の周期で反復するように捉えられる心臓の動きに対し、肺門部における血管について、時間軸における一定の反復を、波として捉え、肺門部における血管の「density」を時間軸に沿って計測するものであることが理解できる。 b 段落[0063]における「一連の「density」の変化(x(肺門部における一波形)」は、上記ア(オ)の段落[0060]の「肺野を検出し、複数のブロック領域に分割し、各フレーム画像におけるブロック領域の「平均density(画像値x)」を算出する。」という記載、および、上記aを考え合わせると、各フレーム画像の肺門部における血管に対応するブロック領域の「平均density(画像値x)」を縦軸とし、その変化を、時間を横軸として捉えたものであることが理解できる。 c 段落[0063]における「一連の心臓の収縮(y)」は、 (a)段落[0060]における「各フレーム画像の横隔膜の変化(y)」と同じように、「(y)」という符号が付されているものであること、および、 (b)生体における部位の一定の周期で反復するように捉えられる動き、という点において、段落[0060]における「各フレーム画像の横隔膜の変化(y)」と同様のものであるといえること、 を考え合わせると、各フレーム画像の心臓の大きさの変化(y)を意味するものであることが理解できる。 d 以上を踏まえると、段落[0063]の記載からは、「平均density(画素値x)」の最小値から最大値の変化幅(0%~100%)に対する各フレーム画像の肺門部における血管に対応するブロック領域の平均画素値の割合(x’)を算出し、心臓の大きさの変化幅(0%~100%)に対する各フレーム画像の心臓の大きさの変化(y)の割合(y’)との比の値(x’/y’)を用いて、比の値(x’/y’)が予め定められた一定の範囲内にあるブロック領域のみを抽出しているものと認められる。 ウ 甲第1号証の2および甲第1号証の3に記載された発明 (ア)上記ア及びイから、甲第1号証の2および甲第1号証の3には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「コンピュータに人体の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムを実行させることにより特定の機能を発揮する診断支援システムであって、 診断支援システムは、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)による画像が格納されたデータベース15、入力インタフェース13、基本モジュール1、出力インタフェース17、ディスプレイ19、を備え、 基本モジュール1は、入力インタフェース13を介してデータベース15から画像データを取得し、基本モジュール1から出力された画像信号は、出力インタフェース17を介してディスプレイ19に表示され、 基本モジュール1は、呼吸機能解析部3、肺血流解析部5、その他の血流解析部7、フーリエ解析部9、波形解析部10および視覚化・数値化部11から構成されており、 肺血流解析では、基本モジュール1がデータベース15からDICOMの画像を抽出して、X線動画装置で撮影されたXP動画である、少なくとも、一心拍周期内に含まれる複数のフレーム画像を取得し(ステップT1)、取得した各フレーム画像に基づいて、血管拍周期を特定し(ステップT2)、呼吸要素の周期を特定し(ステップT3)、その呼吸要素の周期を用いて肺野を自動検出し(ステップT4)、検出した肺野を複数のブロック領域に分割し(ステップT5)、各フレーム画像におけるブロック領域の「平均density(画像値x)」を算出し(ステップT6)、「平均density(画素値x)」の最小値から最大値の変化幅(0%~100%)に対する各フレーム画像の肺門部における血管に対応するブロック領域の平均画素値の割合(x’)を算出し、心臓の大きさの変化幅(0%~100%)に対する各フレーム画像の心臓の大きさの変化(y)の割合(y’)との比の値(x’/y’)を用いて、比の値(x’/y’)が予め定められた一定の範囲内にあるブロック領域のみを抽出して、同調一致率の解析を実施し(ステップT7)、同調一致率の解析により得られた結果について、ノイズ除去を行ない(ステップT8)、以上のステップT6からステップT8の動作を1回以上行ない、完了するかどうかを判断し(ステップT9)、ステップT9において、完了しない場合は、ステップT6に遷移し、完了する場合は、同調一致率の解析により得られた結果を、疑似カラー画像としてディスプレイに表示し(ステップT10)、計測された肺野全域の「density」から対数的に値を表示することがある、 診断支援システム。」 (イ)上記アのとおり、甲1発明は甲第1号証の1に記載された発明でもあるから、当該発明については、特許法第41条第3項の規定により、甲第1号証の1に係る国際特許出願が上記国際公開された時に当該先の出願について出願公開又は実用新案掲載公報の発行がされたものとみなして、特許法第29条の2本文の規定が適用され、当該発明についての前記規定の適用については、甲第1号証の2・3の各出願は、特許法第41条第2項の規定により、上記甲1-2出願日及び甲1-3出願日にされたものとみなされる。 また、本件出願の発明者は甲第1号証の2・3の各出願の発明者と同一ではなく、かつ、本件出願時において、本件出願人は甲第1号証の2・3の出願人と同一でない。 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明との対比 (ア)甲1発明の「人体」は、本件発明1の「心拍を有する生体」に相当する。また、甲1発明の「X線動画装置で撮影されたXP動画である、少なくとも、一心拍周期内に含まれる複数のフレーム画像」は、「人体」および該「人体」に含まれる「肺野」を、少なくとも一心拍周期に対応する時間にX線動画撮影して得られる複数のフレームのX線画像であるといえるから、本件発明1の「心拍を有する生体を時系列的に連続して撮影することで取得される複数の連続するフレーム画像で構成されるX線動態画像」に相当する。そして、甲1発明は、「X線動画装置で撮影されたXP動画である、少なくとも、一心拍周期内に含まれる複数のフレーム画像を取得」するのであるから、甲1発明は、本件発明1の「心拍を有する生体を時系列的に連続して撮影することで取得される複数の連続するフレーム画像で構成されるX線動態画像を取得する画像取得部」に相当する構成を備えているものである。 (イ)甲1発明の「density」は、上記(1)ア(エ)の段落[0055]に記載されるように、「特定の領域における画素の「吸収値」を意味する」ものであるから、甲1発明の「計測された肺野全域の「density」」は、本件発明1の「前記画像取得部によって取得された前記X線動態画像の画素値」に相当する。そして、甲1発明1の「計測された肺野全域の「density」から対数的に値を表示すること」は、画像を構成する画素値である「計測された肺野全域の「density」」に対して対数をとった値を表示することであるといえるから、本件発明1の「前記画像取得部によって取得された前記X線動態画像の画素値を対数変換して対数変換画像を作成する」との構成を含んでいるものである。そうすると、甲1発明は、本件発明1の「前記画像取得部によって取得された前記X線動態画像の画素値を対数変換して対数変換画像を作成する対数変換処理部」に相当する構成を備えているものである。 (ウ)甲1発明の「同調一致率の解析により得られた結果を、疑似カラー画像としてディスプレイに表示」することは、「肺血流解析」として行う「同調一致率の解析」において、「各フレーム画像」から、「比の値(x’/y’)が予め定められた一定の範囲内にあるブロック領域のみを抽出」した結果に基づいて、「疑似カラー画像」を作成して表示することであるといえる。そうすると、甲1発明の「疑似カラー画像」は、「肺血流解析」の解析結果を示す画像であるといえるので、本件発明1の「血流解析画像」に相当する。してみると、甲1発明は、本件発明1と、「血流解析画像を生成する血流解析部」に相当する構成を備える点で共通する。 (エ)上記(ア)のとおり、甲1発明の「X線動画装置で撮影されたXP動画である、少なくとも、一心拍周期内に含まれる複数のフレーム画像」は、本件発明1の「心拍を有する生体を時系列的に連続して撮影することで取得される複数の連続するフレーム画像で構成されるX線動態画像」に相当する。そして、甲1発明の「コンピュータに人体の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムを実行させることにより特定の機能を発揮する診断支援システム」は、「X線動画装置で撮影されたXP動画である、少なくとも、一心拍周期内に含まれる複数のフレーム画像」を解析する装置であるといえるから、本件発明1の「動態画像解析装置」に相当する。 (オ)以上より、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「心拍を有する生体を時系列的に連続して撮影することで取得される複数の連続するフレーム画像で構成されるX線動態画像を取得する画像取得部と、 前記画像取得部によって取得された前記X線動態画像の画素値を対数変換して対数変換画像を作成する対数変換処理部と、 血流解析画像を生成する血流解析部と、 を備えた動態画像解析装置。」 <相違点> 血流解析画像が、 本件発明1は、「前記X線動態画像又は前記対数変換画像のうち少なくとも一方について、心拍位相に基づき一のフレーム画像を基準フレーム画像として設定する解析対象設定部」を備え、「前記解析対象設定部は、肺野の心臓近傍領域の濃度変化又は血管の位置変化に基づいて前記基準フレーム画像を設定する」ものであり、「該基準フレーム画像としての前記X線動態画像と他のフレーム画像である比較フレーム画像としての前記X線動態画像との差分又は比をとり、あるいは前記基準フレーム画像としての前記対数変換画像と前記比較フレーム画像としての前記対数変換画像との差分又は比をとり、これに基づいて」生成されたものであるのに対し、 甲1発明は、「取得した各フレーム画像に基づいて、血管拍周期を特定し(ステップT2)、呼吸要素の周期を特定し(ステップT3)、その呼吸要素の周期を用いて肺野を自動検出し(ステップT4)、検出した肺野を複数のブロック領域に分割し(ステップT5)、各フレーム画像におけるブロック領域の「平均density(画像値x)」を算出し(ステップT6)、「平均density(画素値x)」の最小値から最大値の変化幅(0%~100%)に対する各フレーム画像の肺門部における血管に対応するブロック領域の平均画素値の割合(x’)を算出し、心臓の大きさの変化幅(0%~100%)に対する各フレーム画像の心臓の大きさの変化(y)の割合(y’)との比の値(x’/y’)を用いて、比の値(x’/y’)が予め定められた一定の範囲内にあるブロック領域のみを抽出して、同調一致率の解析を実施し(ステップT7)、同調一致率の解析により得られた結果について、ノイズ除去を行ない(ステップT8)、」「同調一致率の解析により得られた結果を、疑似カラー画像」として得たものである点。 イ 相違点についての判断 本件発明1は、本件出願の明細書及び図面の記載、並びに「肺野の心臓近傍領域の濃度変化又は血管の位置変化」と「心拍位相」が相関するものであるという技術常識を考慮すると、「肺野の心臓近傍領域の濃度変化又は血管の位置変化」に基づく「心拍位相」に基づいて、「一のフレーム画像」を「基準フレーム画像」として設定するものであると解される。 他方、甲1発明は、各フレーム画像において、「平均density(画素値x)」の最小値から最大値の変化幅(0%~100%)を基準にしたときの、当該基準からみた各ブロック領域の「平均density(画像値x)」の相対的な大きさを算出しているものであると解されるから、各フレーム画像において、各ブロック領域の「平均density(画像値x)」の相対的な大きさを表すための基準として、「平均density(画素値x)」の最小値から最大値の変化幅(0%~100%)に基づく基準値を設定するものであるといえる。 そうすると、甲1発明の「「平均density(画素値x)」の最小値から最大値の変化幅(0%~100%)に対する各フレーム画像の肺門部における血管に対応するブロック領域の平均画素値の割合(x’)を算出」することをもって、「前記X線動態画像について、」「心拍位相に基づき一のフレーム画像を基準フレーム画像として設定」し、「該基準フレーム画像としての前記X線動態画像と他のフレーム画像である比較フレーム画像としての前記X線動態画像との」「比をと」る、という、上記相違点に係る本件発明1の構成に、相当するということはできない。 そして、甲第1号証の2および甲第1号証の3には、同調一致率を求めるための手法として、「平均density(画素値x)」の最小値から最大値の変化幅(0%~100%)に対する各フレーム画像のブロック領域の平均画素値の割合(x’)を算出すること以外の具体的な記載は見当たらず、肺門部における血流や血管の動態は心臓の拍動と相関しているものである、という技術常識を考慮したとしても、甲1発明において、同調一致率を求めるための手法を、各対象フレーム画像における各ブロック領域の「平均density(画像値x)」と、心拍位相に基づいて設定された一つのフレーム画像である基準フレーム画像との比をとるものに変更することが、同調性の画像化という課題を解決するための具体化手段における微差であるとはいえない。また、そうである以上、甲1発明において、同調一致率を求めるための手法を、各対象フレーム画像における各ブロック領域の「平均density(画像値x)」と、肺野の心臓近傍領域の濃度変化又は血管の位置変化に基づく心拍位相に基づいて設定された一つのフレーム画像である基準フレーム画像との比をとるものに変更することも、前記課題を解決するための具体化手段における微差であるとはいえない。 したがって、上記相違点は実質的な相違点であり、本件発明1は甲1発明と同一ではない。 (3)本件発明2ないし6について 本件発明2ないし6は、「前記X線動態画像について、」「心拍位相に基づき一のフレーム画像を基準フレーム画像として設定」し、「該基準フレーム画像としての前記X線動態画像と他のフレーム画像である比較フレーム画像としての前記X線動態画像との」「比をと」る、という、上記相違点に係る本件発明1の構成と同じ構成を含むものである。 よって、本件発明1に対して上記(2)に示した理由と同様の理由により、本件発明2ないし6は、甲1発明と同一ではない。 (4)本件発明10ないし13について ア 本件発明10は、「動態画像解析方法」の発明であるが、本件発明1の「動態画像解析装置」を方法の発明として特定したものであり、本件発明1とカテゴリーが相違するのみで実質的な相違はない。そうすると、本件発明10は、甲第1号証の2および甲第1号証の3から認定される方法の発明と対比すると、上記(2)ア(オ)の相違点における「前記X線動態画像について、」「心拍位相に基づき一のフレーム画像を基準フレーム画像として設定」し、「該基準フレーム画像としての前記X線動態画像と他のフレーム画像である比較フレーム画像としての前記X線動態画像との」「比をと」ることと同様の相違点を有することになる。 よって、本件発明1に対して上記(2)に示した理由と同様の理由により、本件発明10は、甲第1号証の2および甲第1号証の3から認定される方法の発明ではない。 イ 本件発明11は、「動態画像解析方法」の発明であり、本件発明1の「一のフレーム画像を基準フレーム画像として設定する」ことに係る構成と同様の構成を、その工程の一部に含むものである。そうすると、本件発明11は、甲第1号証の2および甲第1号証の3から認定される方法の発明と対比すると、上記(2)ア(オ)の相違点における「前記X線動態画像について、」「心拍位相に基づき一のフレーム画像を基準フレーム画像として設定」し、「該基準フレーム画像としての前記X線動態画像と他のフレーム画像である比較フレーム画像としての前記X線動態画像との」「比をと」ることと同様の相違点を有することになる。 よって、本件発明1に対して上記(2)に示した理由と同様の理由により、本件発明11は、甲第1号証の2および甲第1号証の3から認定される方法の発明ではない。 ウ 本件発明12は、「動態画像解析装置のコンピューターに、」各機能を実現させる「コンピューター読み取り可能なプログラム」の発明であるが、本件発明1の「動態画像解析装置」をプログラムの発明で特定したものであり、本件発明1とカテゴリーが相違するのみで実質的な相違はない。そうすると、本件発明12は、甲第1号証の2および甲第1号証の3から認定されるプログラムの発明と対比すると、上記(2)ア(オ)の相違点における「前記X線動態画像について、」「心拍位相に基づき一のフレーム画像を基準フレーム画像として設定」し、「該基準フレーム画像としての前記X線動態画像と他のフレーム画像である比較フレーム画像としての前記X線動態画像との」「比をと」ることと同様の相違点を有することになる。 よって、本件発明1に対して上記(2)に示した理由と同様の理由により、本件発明12は、甲第1号証の2および甲第1号証の3から認定されるプログラムの発明ではない。 エ 本件発明13は、「動態画像解析装置のコンピューターに、」各機能を実現させる「コンピューター読み取り可能なプログラム」の発明であり、本件発明1の「心拍位相に基づき一のフレーム画像を基準フレーム画像として設定する」ことに係る構成と同様の構成を、コンピューターに実現させる機能の一部に含むものである。そうすると、本件発明13は、甲第1号証の2および甲第1号証の3から認定されるプログラムの発明と対比すると、上記(2)ア(オ)の相違点における「前記X線動態画像について、」「一のフレーム画像を基準フレーム画像として設定」し、「該基準フレーム画像としての前記X線動態画像と他のフレーム画像である比較フレーム画像としての前記X線動態画像との」「比をと」ることと同様の相違点を有することになる。 よって、本件発明1に対して上記(2)に示した理由と同様の理由により、本件発明13は、甲第1号証の2および甲第1号証の3から認定されるプログラムの発明ではない。 (5)小括 以上、(2)~(4)のとおりであるから、本件発明1ないし6、及び10ないし13は、甲第1号証の2・3に記載された発明と同一ではないから、申立人の主張する取消理由1によっては、本件発明1ないし6、及び10ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由2(先願(特許法第39条第1項))について 甲第2号証に係る特許は、本件出願の出願日よりも前に出願された、甲第1号証の2に係る特願2018-855号、及び、甲第1号証の3に係る特願2018-43511号を優先権の主張の基礎として、本件出願の出願日よりも後に特許出願された甲第1号証の1に係る国際特許出願の国内移行出願である特願2019-563986号の一部を、新たな特許出願(いわゆる分割出願)とした特願2022-66013号に係る特許である。 そうすると、甲第2号証に係る出願の現実の出願日は、本件出願の出願日よりも後であるから、本件出願について特許法第39条第1項の規定を適用するためには、甲第2号証に係る出願が、特願2019-563986号(以下、「原出願」という。)の出願日に出願したものとみなされ、その上で、甲第2号証に係る出願の請求項に係る発明が、原出願の優先権の主張の基礎とされた特願2018-855号または特願2018-43511号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(甲第1号証の2または甲第1号証の3)に記載された発明であり、優先権の利益を享受できるものであるといえることが必要である。 そのため、甲第2号証に係る出願の分割要件の充足と、甲第2号証に係る出願の請求項に係る発明の優先権の利益の享受について、以下で検討する。 (1)甲第2号証に係る出願の分割要件について ア 甲第2号証に係る出願の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載 (ア)甲第2号証に係る出願の請求項1ないし4に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項1ないし4に係る発明を、項番順に「甲2発明1」等という。)。 「【請求項1】 人体の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、 複数のフレーム画像を取得する処理と、 前記各フレーム画像内の画素値を相対値または対数値として算出する処理と、 前記相対値若しくは対数値として算出されたいずれかのフレーム画像と前記相対値若しくは対数値として算出され任意の間隔で選択された他のフレーム画像との比を算出する処理と、 前記算出された比を可視化する処理と、 を備え、 肺野の濃度変化または血管の位置関係に基づいて、一つ以上のフレーム画像の肺野領域の画素値を算出することを特徴とする診断支援プログラム。 【請求項2】 人体の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、 複数のフレーム画像を取得する処理と、 前記各フレーム画像内の画素値を相対値または対数値として算出する処理と、 前記相対値若しくは対数値として算出されたいずれかのフレーム画像と前記相対値若しくは対数値として算出され任意の間隔で選択された他のフレーム画像との比を算出する処理と、 前記算出された比を可視化する処理と、 を備え、 アーティファクトを除外したフレーム画像の画素値を算出することを特徴とする診断支援プログラム。 【請求項3】 心室容量の波形に基づいて、臓器の動的な画像を表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の診断支援プログラム。 【請求項4】 肺野を複数のブロック領域に分割し、各フレーム画像におけるブロック領域の平均画素値を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の診断支援プログラム。」 (イ)甲第2号証に係る出願の明細書、図面に記載された内容は、それぞれ、原出願の願書に最初に添付した明細書、図面に記載された内容と同じである。 イ 分割要件について (ア)原出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「原出願当初明細書等」という。)には、次の記載がある。 a「[請求項11] 人体の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、 前記画像を格納するデータベースから複数のフレーム画像を取得する処理と、 前記各フレーム画像の特定領域の画素に基づいて、呼気または吸気の全部または一部を含む呼吸要素の少なくとも一つの周波数を特定する処理と、 前記特定した呼吸要素の少なくとも一つの周波数に基づいて、肺野および横隔膜を検出する処理と、 前記検出した肺野を複数のブロック領域に分割し、前記各フレーム画像におけるブロック領域の画素の変化率を算出する処理と、 前記ブロック領域の画素の変化率と、呼吸と連動する動的部位の変化率との比の値である同調率を用いて、前記同調率が予め定められた一定の範囲内にあるブロック領域のみを抽出する処理と、 前記抽出したブロック領域のみを含む各画像をディスプレイに表示する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする診断支援プログラム。」 b「[0019] (11)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、人体の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、前記画像を格納するデータベースから複数のフレーム画像を取得する処理と、前記各フレーム画像の特定領域の画素に基づいて、呼気または吸気の全部または一部を含む呼吸要素の少なくとも一つの周波数を特定する処理と、前記特定した呼吸要素の少なくとも一つの周波数に基づいて、肺野および横隔膜を検出する処理と、前記検出した肺野を複数のブロック領域に分割し、前記各フレーム画像におけるブロック領域の画素の変化率を算出する処理と、前記ブロック領域の画素の変化率と、呼吸と連動する動的部位の変化率との比の値である同調率を用いて、前記同調率が予め定められた一定の範囲内にあるブロック領域のみを抽出する処理と、前記抽出したブロック領域のみを含む各画像をディスプレイに表示する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。」 c「[0031] (23)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、連続する各画像について、インテンシティ(intensity)の差分を算出することで横隔膜を検出し、前記検出した横隔膜または呼吸と連動する動的部位の位置または形状を示す指標を表示することを特徴とする。」 d「[0050] 上記「(ア)波の形態自体」について、「波形同調性」という概念を用い、これに基づいて画像を表示する(Wave form tunable imaging)。また、上記「(イ)波の間隔(周波数:Hz)」について、「周波数同調性」という概念を用い、これに基づいて画像を表示する(Frequency tunable imaging)。 [0051] 例えば、心臓の場合、図13に示す「大動脈血流量の波形と心室容量の波形とを対比した一例」のように、大動脈血流量のピークと、心室容積のピークや波形は一致しない。しかし、図13中、時刻t1からt2、時刻t2からt3、時刻t3からt4…といったように等間隔の時間的幅を1サイクルと定めると、大動脈血流量の1サイクルおよび心室容量の1サイクルが何度も繰り返されることとなり、各波形は周波数が同調していると言える。この波形について着目すると、図13に示すような実測値から1サイクルを特定し、モデル波形を利用することによって、波の形(Wave form)を予想することができる。すなわち、「ベースデータとしての波形」の作り方として、実測しても良いし、周波数(サイクル)から生成しても良いし、モデル波形を利用しても良いし、個人間の波形を平均化して利用しても良い。心臓などの周波数を有する臓器のサイクル(周期)が分かれば、波の形(Wave form)が予想できるため、大動脈血流量や心室容量などの波形を把握し、この波形に基づいて、臓器の動的な画像を表示することが可能となる。」 e「[0057] 本明細書では、「density」と「intensity」とを区別して用いる。「density」は、上述したように、吸収値を意味し、XPやXP動画の元画において、空気の透過性が高く、透過性の高い部分を白であることを数値にし、空気を「?1000」、水を「0」、骨を「1000」として表示するものとする。一方、「intensity」は、「density」から相対的に変化したもの、例えば、normalizedして濃度の幅、信号の程度に“変換”して表示したものとする。すなわち、「intensity」は、画像において、明暗や強調度などの相対的な値である。・・・」 f「[0060] [同調一致率について] 本明細書では、画像変化の傾向を、同調一致率として説明する。例えば、肺野を検出し、複数のブロック領域に分割し、各フレーム画像におけるブロック領域の「平均density(画素値x)」を算出する。そして、「平均density(画素値x)」の最小値から最大値の変化幅(0%?100%)に対する各フレーム画像におけるブロック領域の平均画素値の割合(x’)を算出する。一方、横隔膜の最小位置から最大位置の変化幅(0%?100%)に対する各フレーム画像の横隔膜の変化(y)の割合(y’)との比の値(x’/y’)を用いて、比の値(x’/y’)が予め定められた一定の範囲内にあるブロック領域のみを抽出する。」 g「[0071] 以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1Aは、本実施形態に係る診断支援システムの概略構成を示す図である。この診断支援システムは、コンピュータに診断支援プログラムを実行させることにより特定の機能を発揮する。基本モジュール1は、呼吸機能解析部3、肺血流解析部5、その他の血流解析部7、フーリエ解析部9、波形解析部10および視覚化・数値化部11から構成されている。基本モジュール1は、入力インタフェース13を介してデータベース15から画像データを取得する。データベース15には、例えば、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)による画像が格納されている。基本モジュール1から出力された画像信号は、出力インタフェース17を介してディスプレイ19に表示される。次に、本実施形態に係る基本モジュールの機能について説明する。 ・・・ [0077] [肺野同定] データベース(DICOM)から画像を抽出し、上記の呼吸要素の周期解析結果を用いて、肺輪郭を自動検出する。この肺輪郭の自動検出については、従来から知られている技術を用いることができる。例えば、特開昭63?240832号公報、または特開平2?250180号公報に開示されている技術を用いることが可能である。次に、肺野を複数のブロック領域に分けて、各ブロック領域の変化を計算する。ここで、撮影速度に応じてブロック領域の大きさを定めても良い。撮影速度が遅い場合は、あるフレーム画像の次のフレーム画像で対応する部位が特定しにくくなるため、ブロック領域を大きくする。一方、撮影速度が速い場合は、単位時間当たりのフレーム画像数が多いため、ブロック領域が小さくても追従することが可能となる。また、呼吸要素の周期のうちどのタイミングを選ぶかに応じて、ブロック領域の大きさを計算しても良い。ここで、肺野領域のずれを補正することが必要になる場合がある。その際には、胸郭の動き、横隔膜の動き、肺野全体の血管の位置関係を同定し、また、肺輪郭の相対位置を把握し、その動きに基づいて相対的に評価する。なお、ブロック領域が小さすぎると、画像のちらつきが発生する場合がある。これを防止するため、ブロック領域は一定の大きさを有する必要がある。 ・・・ [0087] 肺野領域は、胸郭の動き、横隔膜の動き、肺野全体の血管の位置関係を同定し、肺輪郭の相対的位置を把握し、その動きに基づいて相対的に評価すべきものである。このため、本願発明では、肺輪郭を自動検出した後、肺輪郭によって特定される領域を複数のブロック領域に分割し、各ブロック領域に含まれる画像の変化の値(画素値)を平均化する。・・・ ・・・ [0089] 次に、アーティファクトを排除して画像データを補間する。すなわち、解析範囲内に骨などが含まれるとノイズとして表れてしまうため、ノイズカットフィルタを用いてノイズを除去することが望ましい。X線画像においては、通例では、空気を?1000とし、骨を1000としているため、透過性が高い部分は画素値が低く、黒く表示され、透過性の低い部分は、画素値が高く、白く表示される。例えば、画素値を256階調で表す場合、黒は0で白は255となる。肺野領域内で、血管や骨が存在しない位置の周辺は、X線が透過しやすいため、X線画像の画素値が低くなり、X線画像は黒くなる。一方、血管や骨が存在する位置は、X線が透過し難いため、X線画像の画素値が高くなり、X線画像は白くなる。その他CT、MRIにおいても同様のことが言える。ここで、上記の呼吸要素の周期解析の結果から、一呼吸あたりの波形に基づいて、同一位相の値を用いてデータを補間し、アーティファクトを排除することが可能となる。また、「座標が異なること」、「画素値が極端に変動すること」、「周波数やdensityが異常に高くなること」を検出した場合に、それらに対してカットオフを行ない、残りの得られた画像に対して、例えば、最小二乗法等を用いて連続的で滑らかな波の形を同定することによって、横隔膜のHz計算、肺野の調節に使用できるようにしても良い。また、画像を重ね合わせる場合、(1)前後で片方の画像を取得した取得比較画像をその座標のまま重ねる場合と、(2)前後片方の画像をbaseに取得した後、画像を相対的に拡張してその相対的位置情報をbaseに重ねる方法とがある。以上のような手法によって、肺野の形態を修正したり、ブロック領域の画像の変化を修正したりすることが可能となる。その際、再度、結果に対するアーティファクト(artifact)を除外し、新しいデータ抽出波形や最初のベースとなるデータ波形、その他のモダリティなどの波形、周囲、複数回の波形から抽出して、機能の抽出を行なう。その際、回数は一回でも複数回でも良い。 ・・・ [0109] 例えば、standard uptakeとして、計測された肺野全域の「density」/「intensity」から平均値を1として相対的/対数的に値を表示することがある。・・・」 ・・・ [0127] [横隔膜または呼吸と連動する動的部位の動きの検出] 連続撮影された画像において、横隔膜または呼吸と連動する動的部位の動きを検出することが可能である。連続撮影された画像において、任意の間隔で画像を選択し、画像間の差分を計算すると、特にコントラストの大きい領域について、差分が大きくなる。この差分を適切に可視化することによって、動きのあった領域を検出することができる。可視化の際には、閾値によるノイズ除去や、最小二乗法などを活用したカーブフィッティング等で差分の絶対値が大きいエリアの連続性を強調することもできる。 [0128] 肺野においては横隔膜や心臓が接するラインのコントラストが際立っており、図4Aに示すように、2枚の肺画像において差分を取り、一定の閾値を設定して差分を可視化すると、図4Bに示すように、横隔膜や心臓が接するラインを可視化することができる。」 (イ)甲2発明1ないし甲2発明4の構成が、原出願当初明細書等に記載されていたかについて a 甲2発明1 甲2発明1の「人体の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、複数のフレーム画像を取得する処理と、前記各フレーム画像内の画素値を相対値または対数値として算出する処理と、」「を備え、肺野の濃度変化または血管の位置関係に基づいて、一つ以上のフレーム画像の肺野領域の画素値を算出することを特徴とする診断支援プログラム。」との構成は、上記(ア)におけるaないしc、e、gの段落[0077],[0087],[0109]に記載されている事項である。 そして、甲2発明1の「前記相対値若しくは対数値として算出されたいずれかのフレーム画像と前記相対値若しくは対数値として算出され任意の間隔で選択された他のフレーム画像との比を算出する処理と、前記算出された比を可視化する処理」との構成に関し、上記(ア)におけるcおよびgの段落[0109],[0127],[0128]には、連続撮影された画像であって、相対値若しくは対数値として算出された画像において、任意の間隔で選択された複数の画像間の差分を算出し、その差分を可視化することが記載されているとみることができる。 ここで、段落[0127],[0128]の記載からみて、連続撮影された画像において、任意の間隔で選択された複数の画像の違いを算出することができれば、コントラストの大きい領域である、横隔膜または呼吸と連動する動的部位の動きのある領域を検出することができることは自明であるから、当該複数の画像の違いを具体的にどのように算出するかは、横隔膜または呼吸と連動する動的部位の動きのある領域を検出するために直接関係するものであるとはいえないこと、また、複数の数値の違いを算出する手法として当該複数の数値の比を算出する手法が技術常識であることを考え合わせると、連続撮影された画像において、任意の間隔で選択された複数の画像の違いを算出するために、当該複数の画像間の比を算出することは、原出願当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないといえる。 そうすると、甲2発明1の「前記相対値若しくは対数値として算出されたいずれかのフレーム画像と前記相対値若しくは対数値として算出され任意の間隔で選択された他のフレーム画像との比を算出する処理と、前記算出された比を可視化する処理」との構成は、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内であるといえる。 b 甲2発明2 甲2発明2の「人体の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、複数のフレーム画像を取得する処理と、前記各フレーム画像内の画素値を相対値または対数値として算出する処理と、」「を備え、アーティファクトを除外したフレーム画像の画素値を算出することを特徴とする診断支援プログラム。」との構成は、上記(ア)におけるaないしc、e、gの段落[0089],[0109]に記載されている事項である。 そして、甲2発明2の「前記相対値若しくは対数値として算出されたいずれかのフレーム画像と前記相対値若しくは対数値として算出され任意の間隔で選択された他のフレーム画像との比を算出する処理と、前記算出された比を可視化する処理」との構成に関し、上記(ア)におけるcおよびgの段落[0109],[0127],[0128]には、連続撮影された画像であって、相対値若しくは対数値として算出された画像において、任意の間隔で選択された複数の画像間の差分を算出し、その差分を可視化することが記載されているとみることができる。 ここで、段落[0127],[0128]の記載からみて、連続撮影された画像において、任意の間隔で選択された複数の画像の違いを算出することができれば、コントラストの大きい領域である、横隔膜または呼吸と連動する動的部位の動きのある領域を検出することができることは自明であるから、当該複数の画像の違いを具体的にどのように算出するかは、横隔膜または呼吸と連動する動的部位の動きのある領域を検出するために直接関係するものであるとはいえないこと、また、複数の数値の違いを算出する手法として当該複数の数値の比を算出する手法が技術常識であることを考え合わせると、連続撮影された画像において、任意の間隔で選択された複数の画像の違いを算出するために、当該複数の画像間の比を算出することは、原出願当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないといえる。 そうすると、甲2発明2の「前記相対値若しくは対数値として算出されたいずれかのフレーム画像と前記相対値若しくは対数値として算出され任意の間隔で選択された他のフレーム画像との比を算出する処理と、前記算出された比を可視化する処理」との構成は、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内であるといえる。 c 甲2発明3 甲2発明3は、甲2発明1または甲2発明2を引用する発明であり、甲2発明3で追加された「心室容量の波形に基づいて、臓器の動的な画像を表示する」との構成は、上記(ア)dに記載されている事項である。 よって、甲2発明3に記載された事項は、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内であるといえる。 d 甲2発明4 甲2発明4は、甲2発明1ないし3のいずれかを引用する発明であり、甲2発明4で追加された「肺野を複数のブロック領域に分割し、各フレーム画像におけるブロック領域の平均画素値を算出する」との構成は、上記(ア)におけるfおよびgの段落[0087]に記載されている事項である。 よって、甲2発明4に記載された事項は、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内であるといえる。 以上のことから、甲2発明1ないし4に記載された事項は、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内であるといえるから、甲第2号証に係る出願は、分割要件を満たすものである。 (2)甲2発明1ないし4の優先権の利益の享受について ア 甲第2号証に係る出願は、分割要件を満たすものであるから、甲2発明1ないし4が、原出願の優先権の主張の基礎とされた甲第1号証の2または甲第1号証の3に記載された発明であり、優先権の利益を享受できるものであるか、以下に検討する。 イ 甲2発明1について 甲2発明1の「前記相対値若しくは対数値として算出されたいずれかのフレーム画像と前記相対値若しくは対数値として算出され任意の間隔で選択された他のフレーム画像との比を算出する処理と、前記算出された比を可視化する処理」との構成は、上記(1)イ(イ)のとおり、上記(1)イ(ア)におけるcおよびgの段落[0109],[0127],[0128]に記載された事項の範囲内とみることができる。 しかしながら、上記(1)イ(ア)におけるcおよびgの段落[0127],[0128]に記載された事項は、甲第1号証の2および甲第1号証の3のいずれにも記載されていない事項である。 そうすると、甲2発明1は、甲第1号証の2および甲第1号証の3のいずれにも記載されていない事項を含むものであるから、甲第1号証の2または甲第1号証の3に記載された発明であるとはいえない。 ウ 甲2発明2ないし4について 甲2発明2ないし4は、甲2発明1の「前記相対値若しくは対数値として算出されたいずれかのフレーム画像と前記相対値若しくは対数値として算出され任意の間隔で選択された他のフレーム画像との比を算出する処理と、前記算出された比を可視化する処理」との構成と同じ構成を含むものであり、当該構成は、上記(1)イ(イ)のとおり、上記(1)イ(ア)におけるcおよびgの段落[0109],[0127],[0128]に記載された事項の範囲内とみることができる。 しかしながら、上記(1)イ(ア)におけるcおよびgの段落[0127],[0128]に記載された事項は、甲第1号証の2および甲第1号証の3のいずれにも記載されていない事項である。 よって、甲2発明2ないし4も、甲第1号証の2および甲第1号証の3のいずれにも記載されていない事項を含むものであるから、甲第1号証の2または甲第1号証の3に記載された発明であるとはいえない。 エ 以上のとおり、甲2発明1ないし4は、原出願の優先権の主張の基礎とされた甲第1号証の2または甲第1号証の3に記載された発明ではないから、優先権の利益を享受できるものであるとはいえない。 (3)上記(1)および(2)によれば、本件発明1ないし4、10ないし13に対し、甲2発明1ないし4に基づく特許法第39条第1項の規定の適用を判断するための基準日は、原出願の出願日である平成31年1月7日である。 そうすると、甲第2号証に係る出願は、本件出願より先になされている出願ではないから、取消理由2を採用することはできない。 (4)小括 上記(1)~(3)のとおりであるから、申立人の主張する取消理由2によっては、本件発明1ないし4、及び10ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、および提出された証拠によっては、本件発明1ないし6、10ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1ないし6、10ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701158

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