特許異議申立
2022-701149
X線検出装置
- 審判番号
- 2022-701149
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-048403
- 登録番号
- 7079966
- 請求日
- 2022年11月21日
- 審決日
- 2023年10月03日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社イシダ
- 【異議申立人】鈴野 幹夫
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 哲
- 審判官 渡戸 正義
- 審判官 上田 泰
- 分類
- P1651.121-YAA(G01N) / P1651.161-YAA(G01N) / P1651.537-YAA(G01N) / P1651.55 -YAA(G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第126条第6項、特許法第113条第2号、特許法第113条第4号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7079966号発明「X線検出装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7079966号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第7079966号の請求項1、4及び5に係る特許を維持する。
特許第7079966号の請求項2及び3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7079966号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成30年3月15日(優先権主張 平成29年3月17日)の出願であって、令和4年5月26日にその特許権の設定登録がされ、同年6月3日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年11月21日 :特許異議申立人 鈴野 幹夫(以下「申立人」
という。)による請求項1ないし5に係る特
許に対する特許異議の申立て
令和5年 2月14日付け:取消理由通知
同年 4月21日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
同年 5月10日付け:手続補正指令(方式)
同月29日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
同年 7月 4日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
(1)特許権者が令和5年4月21日にした訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、請求項1ないし5について訂正することを求めるものであり、その具体的内容は、以下の訂正事項1ないし5のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す(訂正事項に係る記載において以下同じ。)。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「被検査物にX線を照射するX線源と、被検査物の透過X線に含まれる少なくとも三種類以上のエネルギー帯のX線を検出して画素ごとのエネルギースペクトルを出力するマルチエナジーセンサと、前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中から異物検出に適する二種類のエネルギー帯を選び出し、選び出した二種類のエネルギー帯に対応する画像から、エネルギーサブトラクションによって異物を検出する画像処理部と、を備えたX線検査装置。」と記載されているのを、「被検査物にX線を照射するX線源と、被検査物の透過X線に含まれる少なくとも三種類以上のエネルギー帯のX線を検出して画素ごとのエネルギースペクトルを出力するマルチエナジーセンサと、検査を行う際、前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中から異物検出に適する二種類のエネルギー帯に対応する画像を選び出し、選び出した二種類のエネルギー帯に対応する画像から、エネルギーサブトラクションによって異物を検出する画像処理部を備え、前記画像処理部は、事前セットアップとして得られた画像に基づきエネルギーサブトラクションを実施した画像の被検査物のみの画素と異物の写っている画素からコントラストの差が最大となる前記二種類のエネルギー帯を決定する、X線検査装置。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項4、5も同様に訂正する。)
(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(訂正事項4)
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1又は2に記載のX線検査装置。」と記載されているのを、「請求項1に記載のX線検査装置。」に訂正する。
(訂正事項5)
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から4の何れかのX線検査装置」と記載されているのを、「請求項1又は4に記載のX線検査装置」に訂正する。
(2)訂正の単位について
訂正前の請求項1ないし5について、請求項2ないし5は訂正事項1の訂正対象である請求項1を直接的又は間接的に引用しているから、請求項1ないし5は一群の請求項である。
したがって、訂正事項1ないし5は、一群の請求項〔1-5〕に対して請求されている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項1は、「画像処理部と、を備えた」との記載を、「前記画像処理部は、事前セットアップとして得られた画像に基づきエネルギーサブトラクションを実施した画像の被検査物のみの画素と異物の写っている画素からコントラストの差が最大となる前記二種類のエネルギー帯を決定する、」との記載に訂正する(以下「訂正事項1A」という。)とともに、「前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中から異物検出に適する二種類のエネルギー帯を選び出し」との記載を、「検査を行う際、前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中から異物検出に適する二種類のエネルギー帯に対応する画像を選び出し」との記載に訂正する(以下「訂正事項1B」という。)ものである。
(イ)訂正事項1Aは、「画像処理部」が行うことについて、「事前セットアップとして得られた画像に基づきエネルギーサブトラクションを実施した画像の被検査物のみの画素と異物の写っている画素からコントラストの差が最大となる前記二種類のエネルギー帯を決定する」ことを追加して、「画像処理部」を限定するものである。
(ウ)訂正事項1Bは、「画像処理部」が「エネルギーサブトラクションによって異物を検出する」際の「選び出した二種類のエネルギー帯に対応する画像」について、「事前セットアップ」で「決定した」「二種類のエネルギー帯」「に対応する画像」を「検査を行う際」に「選び出し」たものに限定するものである。
(エ)ここで、訂正事項1Bにおいて、選び出す対象が「エネルギー帯」から「画像」に変更されているが、「エネルギー帯」を選び出すことは訂正事項1Aに「エネルギー帯を決定する」こととして追加されており、「エネルギー帯」を選び出すことが請求項1から削除されてはいない。
また、訂正事項1Aにおいて、「前記二種類のエネルギー帯を決定する」ことについて、「前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中から」「二種類のエネルギー帯を決定する」ことの直接的な記載はないが、「前記二種類のエネルギー帯」は、「前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中から異物検出に適する二種類のエネルギー帯に対応する画像を選び出し」における「二種類のエネルギー帯」を指しており、「前記二種類のエネルギー帯を決定する」ことは、「前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中から」決定することを間接的に特定しているといえる。
してみると、訂正事項1により削除される特定事項はない。
(オ)したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
(ア)訂正事項1のうち、訂正事項1Aは、本件特許についての出願(以下「本件特許出願」という。)の願書に添付した明細書(以下、同特許請求の範囲及び図面を含めて「本件特許明細書等」という。)の「【0014】例えば、事前のセットアップとして、鶏肉およびその内部またはその表面に検出したい骨のサンプルを取り付けて、鶏肉のマルチエナジー画像を取得し、その中からある2種のエネルギー帯のみを取り出した画像を生成する。これらのエネルギー帯をE1={ε|εi1<ε<εj1},E2={ε|εi2<ε<εj2}、E1の画像をP1、E2の画像をP2とする。また、ある画素(x,y)における、P1とP2の濃淡値をそれぞれp1(x,y),p2(x,y)とする。【0015】そして、エネルギーサブトラクションを実施した画像のコントラストをc(x,y)とすると、c(x,y)=|p1(x,y)-αp2(x,y)|,0≦α≦1で与えられ、これをコントラスト画像と呼ぶことにする。αは後に決定されるパラメータである。【0016】いまは事前のセットアップを行っている段階であるので、鶏肉のみの画素と、骨の取り付けられた画素は判明しており、それぞれの画素を(xA,yA),(xB,yB)として、サブトラクションの結果、鶏肉と骨のコントラストの差が最も大きくなるように、つまり、|c(xA,yA)-c(xB,yB)|の最大値を与えるように、パラメータ(εi1,εj1,εi2,εj2,α)を設定すればよい。【0017】その設定には、例えばパラメータ(εi1,εj1,εi2,εj2,α)をスイープして最大値を与えるものを選択すればよい。」、「【0029】(マルチエナジーセンサによる画像の生成)次に画像処理部400による処理を具体的に示す。・・・【0047】(適切な2枚の画像を選ぶ方法)次にエネルギーサブトラクションに適した2枚の画像を選ぶ方法を、具体的な例を用いて示す。【0048】事前セットアップとして、・・・【0050】図12のフローチャートに例示するように、パラメータεi1,εj1,εi2,εj2,αをスイープして|c(xA,yA)-c(xB,yB)|が最大となるパラメータを求める。」との記載に基づくものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
(イ)訂正事項1のうち、訂正事項1Bは、本件特許明細書等の「【0012】・・・マルチエナジーセンサでは、複数のエネルギー帯の画像を得ることができるので、撮像後に、適切なエネルギー帯の画像を選んで処理することができる。つまり、組成の異なる被検査物と異物では、それぞれのX線吸収率が異なるので、それぞれに特徴的なエネルギー帯を事前に求め、撮像後に、求めたエネルギー帯の画像を使ってエネルギーサブトラクションを行う事により、異物を検出するのである。」との記載に基づくものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
(ウ)したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア)訂正事項1Bは、その訂正後の記載のみを見ると、見かけ上、選び出す対象が「エネルギー帯」から「画像」に変更されているが、「エネルギー帯」を選び出すことが訂正事項1Aで特定されていることは、上記ア(エ)で説示したとおりである。
(イ)そして、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(ウ)したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2及び3について
訂正事項2及び3は、それぞれ特許請求の範囲の請求項2及び3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項2及び3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項4及び5について
訂正事項4は、請求項4において選択的に記載を引用する請求項を、請求項1又は2から請求項2を削除して請求項1のみとするものであり、訂正事項5は、請求項5において選択的に記載を引用する請求項を、請求項1から4の何れかから請求項2及び3を削除して請求項1又は4とするものであるから、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項4ないし5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
3 独立特許要件
本件においては、請求項1ないし5について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1ないし5について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
4 訂正の適否についてのまとめ
上記のとおり、訂正事項1ないし5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、請求項2及び3は削除された。そして、本件訂正後の請求項1、4及び5に係る発明(以下それぞれ請求項の番号に対応して「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、4及び5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
被検査物にX線を照射するX線源と、
被検査物の透過X線に含まれる少なくとも三種類以上のエネルギー帯のX線を検出して画素ごとのエネルギースペクトルを出力するマルチエナジーセンサと、
検査を行う際、前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中から異物検出に適する二種類のエネルギー帯に対応する画像を選び出し、
選び出した二種類のエネルギー帯に対応する画像から、エネルギーサブトラクションによって異物を検出する画像処理部を備え、
前記画像処理部は、事前セットアップとして得られた画像に基づきエネルギーサブトラクションを実施した画像の被検査物のみの画素と異物の写っている画素からコントラストの差が最大となる前記二種類のエネルギー帯を決定する、
X線検査装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記画像処理部は、キャリブレーションによって、すべてのエネルギー帯について均一な値が得られるように事前処理することを特徴とする請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れかのX線検査装置において、前記被検査物をX線の照射領域に搬入搬出する搬送部を備えたX線検査装置。
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし5に係る特許に対して、当審が令和5年2月14日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)(進歩性)請求項1ないし5に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記の甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許に係る出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2010-91483号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2004-8460号公報(以下「甲2」という。)
(2)(拡大先願)請求項1ないし5に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前の特許出願であって、その優先日後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許に係る出願の発明者がその優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許に係る出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである。
特許出願:特願2016-46977号(特開2017-161396号)
(以下「甲7出願」という。)
(甲第7号証:特開2017-161396号公報)
(3)(サポート要件)異物検出に適する二種類のエネルギー帯の選び出しを、「マルチエナジーセンサ」がX線検出時に分離して検出する「エネルギー帯」の中からのみの選び出しで行う請求項1ないし5に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、その特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 当審の判断
(1)特許法第29条第2項について
ア 刊行物の記載事項
(ア)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
a 甲1には、以下の記載がある(下線は当審で付加した。以下同じ。)。
(甲1-ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物のデュアルエネルギーX線画像を差分処理して混入異物の有無検出を行う、異物検出方法および異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品中の外来性異物や食肉中の残骨といった混入異物のX線検査を高コントラストな異成分画像を用い高感度に実施したい場合に有効な標準的方法として、ローエネルギーとハイエネルギーのデュアルエネルギーX線画像をローエネルギーとハイエネルギーの等価厚画像ペアに対数変換してから重み付き差分処理することにより異成分画像を分離するエネルギーサブトラクション(特許文献1参照)が知られている。
【0003】
食品や食肉といった被測定物を透過したローエネルギーX線とハイエネルギーX線の強度は、間接変換型X線検出器を複数用いたエネルギー別フォトインテグレーションX線光学系(特許文献2参照)によって、または、X線光子到着毎に当該光子エネルギーを弁別する直接変換型X線検出器を単数用いたエネルギー別フォトカウンティングX線光学系によって、ローエネルギーとハイエネルギーのX線画像ペアすなわちデュアルエネルギーX線画像に変換できる。
【0004】
前記エネルギー別フォトインテグレーションX線光学系の場合、当該X線光学系に依存して発生する前記デュアルエネルギーX線画像の相対位置ずれを無くすためイメージレジストレーション処理が必要になる。前記エネルギー別フォトカウンティングX線光学系の場合、当該相対位置ずれは発生しない。
【0005】
混入異物を異成分として高コントラストに検出できるようにエネルギー帯域を適切に設定しておくとともに、前記重み付き差分処理の重みパラメータの設定が最適であれば、相対位置ずれの無いデュアルエネルギーX線画像に前記エネルギーサブトラクションを適用することによって直ちに高コントラストな異成分画像が分離できて、混入異物の有無判定が当該異成分画像に対する簡単な閾値処理で実現できる。
【0006】
【特許文献1】特開平04-11473号公報
【特許文献2】特開2002-365368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記エネルギーサブトラクションは食品中の外来性異物や食肉中の残骨といった混入異物のX線検査を高コントラストな異成分画像を用いて高感度に実施したい場合に効果を発揮する方法ではあるが,デュアルエネルギーX線画像の撮像条件や食品や食肉といった被測定物に依存する前記重み付き差分処理の重みパラメータを最適に設定する作業が微妙で煩わしいという欠点の克服が課題であった。
【0008】
本発明の目的は、前記重みパラメータを自動設定することによって当該欠点を克服した異物検出方法および異物検出装置の提供にある。」
(甲1-イ)「【0025】
1.第1実施形態(図1~図2)
本実施形態の異物検出装置は図1に示すように、被測定物3を搬送する搬送手段1と、被測定物3にX線を照射するX線照射手段(X線源)2と、前記被測定物を透過したX線強度をローエネルギーとハイエネルギーのX線画像ペアに変換するX線検出手段4と、前記X線画像ペアをデュアルエネルギーX線画像として記憶する画像入力手段5と、前記デュアルエネルギーX線画像を差分処理して被測定物に混入している異物の有無を検出する画像処理手段6とを備え、必要に応じて画像表示手段7を備えている。
【0026】
搬送手段1は、例えばX線を良く透過するベルトコンベアで実現され、対向配置されたX線源2とX線検出手段4の間を通して被測定物3を搬送する。X線源2から照射されたX線は、被測定物3による吸収と前記ベルトコンベアによる僅かな吸収を受けてこれらを透過した後、X線検出手段4に到達する。
【0027】
X線検出手段4は、例えばX線光子到着毎に当該光子エネルギーを弁別する直接変換型X線ラインセンサで実現され、エネルギー別フォトカウンティングX線光学系を成すことによって、前記X線ラインセンサによる1ライン上のサンプリングピッチと略等しいサンプリングピッチで搬送方向にサンプリングすることによって被測定物3と前記ベルトコンベアを透過したX線強度をエネルギー帯域別の画像データとしてメモリー上に取り込み、ローエネルギーとハイエネルギーのX線画像ペアに変換する。
【0028】
なお図示しないが、X線検出手段4として前記直接変換型X線ラインセンサに替えてローエネルギー用とハイエネルギー用に2台の間接変換型X線ラインセンサを用いることで、エネルギー別フォトインテグレーションX線光学系を成しても良い。
【0029】
画像入力手段5は、被測定物3の前記X線画像ペアを相対位置ずれの無いデュアルエネルギーX線画像として記憶し、画像処理手段6に出力する。なお前記エネルギー別フォトインテグレーションX線光学系を成した場合は、メモリー上に取り込まれたX線画像ペアの相対位置ずれを無くすため、ここでイメージレジストレーション処理を行う。
【0030】
画像処理手段6は画像処理プログラム等が実装されたCPU等で、図2に示す本発明に係わる異物検出方法が実装されており、画像入力手段5から出力された相対位置ずれの無いデュアルエネルギーX線画像の入力を受けて(ステップS101)、等価厚画像生成手段61で対数変換を行うことによってローエネルギー等価厚画像とハイエネルギー等価厚画像の等価厚画像ペアを生成し(ステップS102)、必要に応じて画像ノイズ低減手段62で前記等価厚画像ペアにエッジ保存平滑化処理等を適用して画像ノイズを低減し(ステップS103)、分離行列計算手段63で当該等価厚画像ペアに独立成分分析を適用して分離行列を求め(ステップS104)、分離ベクトル判別手段641でローエネルギーのハイエネルギーからの差分に近い方の分離ベクトルを異成分の分離ベクトルとして判別し(ステップS105)、分離ベクトル正規化手段642で当該異成分の分離ベクトルをローエネルギーからスケーリングされたハイエネルギーが差し引かれる形に正規化し(ステップS106)、パラメータ設定手段643で前記正規化された分離ベクトルを前記差分処理の重みパラメータとして自動設定する(ステップS107)。すなわち手段641~643(ステップS105~S107)から構成されるパラメータ算出手段64によって前記分離行列の要素である2つの分離ベクトルに基いて前記差分処理の重みパラメータを求めて自動設定する。さらに、前記自動設定された重みパラメータを用いて異成分画像分離手段67で前記重みパラメータを用いた前記差分処理によって前記等価厚画像ペアから前記混入異物の成分画像を分離し(ステップS108)、異物検出手段68で前記混入異物の成分画像を閾値処理して異物検出する(ステップS109)ことによって混入異物の有無検出を行う。」
(甲1-ウ)「【0038】
2.第2実施形態(図3~図4)
本実施の形態は、第1実施形態の画像処理手段6において、自動設定された重みパラメータを記憶させるためのパラメータ記憶手段69と、前記記憶させた重みパラメータを参照させるためのパラメータ参照手段60と、を付加したものであり、その他の構成に関しては第1実施形態と同様である。それゆえ、パラメータ記憶手段69とパラメータ参照手段60について説明し、第1実施形態と同様の部分は図中に第1実施形態と同じ符号を付して第1実施形態の説明を援用することによって、再度の説明は省略する。
【0039】
パラメータ記憶手段69は、パラメータ算出手段64で自動設定した前記差分処理の重みパラメータを受けて異成分画像分離手段67に出力するとともに、図示しない運転モード信号がパラメータ記憶を示しているとき、前記パラメータを図示しない参照用メモリーに記憶する(ステップS202)。
【0040】
パラメータ参照手段60は、前記運転モード信号がパラメータ参照を示していないとき、等価厚画像生成手段61が出力した、画像ノイズ低減手段62が存在する場合はさらに画像ノイズ低減手段62を経由した、等価厚画像ペアを受けて分離行列算出手段63に出力する。そして前記運転モード信号がパラメータ参照を示しているとき、前述したステップS104からステップS202までの流れを切り替えて、記憶していた前記差分処理の重みパラメータを前記参照用メモリーから読み出して異成分画像分離手段67に直接出力する(ステップS201)。」
(甲1-エ)【図4】
「
[図:0001405799000001.jpg]
」
b 上記(甲1-ア)ないし(甲1-エ)の記載から、甲1には、
「搬送手段1と、被測定物3にX線を照射するX線照射手段(X線源)2と、X線検出手段4と、画像入力手段5と、画像処理手段6とを備えた異物検出装置であって、
搬送手段1は、X線を良く透過するベルトコンベアで実現され、対向配置されたX線源2とX線検出手段4の間を通して被測定物3を搬送し、
X線検出手段4は、X線光子到着毎に当該光子エネルギーを弁別する直接変換型X線ラインセンサで実現され、エネルギー別フォトカウンティングX線光学系を成すことによって、被測定物3とベルトコンベアを透過したX線強度をエネルギー帯域別の画像データとしてメモリー上に取り込み、ローエネルギーとハイエネルギーのX線画像ペアに変換し、
画像入力手段5は、被測定物3のX線画像ペアを相対位置ずれの無いデュアルエネルギーX線画像として記憶し、画像処理手段6に出力し、
画像処理手段6は、画像入力手段5から出力された相対位置ずれの無いデュアルエネルギーX線画像の入力を受けて等価厚画像生成手段61で対数変換を行うことによってローエネルギー等価厚画像とハイエネルギー等価厚画像の等価厚画像ペアを生成し、分離行列計算手段63で当該等価厚画像ペアに独立成分分析を適用して分離行列を求め、パラメータ設定手段643で正規化された分離ベクトルを差分処理の重みパラメータとして自動設定し、異成分画像分離手段67で重みパラメータを用いた差分処理によって等価厚画像ペアから混入異物の成分画像を分離し、異物検出手段68で混入異物の成分画像を閾値処理して異物検出し、
さらに、画像処理手段6は、自動設定された重みパラメータを記憶させるためのパラメータ記憶手段69と、記憶させた重みパラメータを参照させるためのパラメータ参照手段60とを有する、
異物検出装置。」
の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(イ)甲2の記載事項及び甲2に記載された技術事項
a 甲2には、以下の記載がある。
(甲2-ア)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、X線を照射して得られる測定出力からX線吸収特性の異なるいくつかの目的物のX線像を抽出して表示するX線撮影装置、すなわちX線エネルギー分析イメージング装置、特に冠状動脈造影など医療用検査に有効なX線エネルギー分析イメージング装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明のX線エネルギー分析イメージング装置は、X線に対してエネルギー分解能を有するピクセルが配列され空間分解能を有するX線検出器とX線発生装置と記憶装置と演算処理装置を備え、被写体にX線を照射して撮影を行い、X線検出器のピクセルごとの出力信号について所望のX線エネルギーにおける出力信号を選択してX線像化することを特徴とする。
本発明のイメージング装置によれば、一旦取得したX線潜像情報をX線エネルギーごとに分離して利用することができるため、全エネルギー成分に対するカウント数情報から特定エネルギーのX線に対するカウント数のみを抽出して画像化することにより、そのエネルギーのX線に対する吸収率が高いあるいは低い対象物が明瞭に浮き出してくる。
【0007】
また、X線の単色化はデータ処理で行うため、管球からの白色X線を使用する場合でも複雑で高価な分光装置を必要とせず、実用性の高い装置を得ることができる。
本発明のイメージング装置は、いわゆるレントゲン撮影装置として内蔵組織を選択表示するために利用することができる。また、物質に特有な高吸収X線を利用することにより、荷物や人体内に隠匿した麻薬、あるいは爆薬や象牙などの禁制品の有無を検査することができる。
【0008】
エネルギー分解能を有するX線検出素子は、たとえば素子にX線が入射するとX線のエネルギーに対応する電流を発生するものであってもよい。このような素子では、所定期間に観察される電流発生回数を電流の大きさに従って分類して積算することにより、透過X線のエネルギースペクトルを得ることができる。
上記のような特性を有する素子として、ゲルマニウムGe、ヨウ化セシウムCsI、またアモルファスa-Siシンチグラフィなどがある。さらに、テルル化カドミウムCdTeをショットキー電極として用いるCdTeダイオードは、高いバイアス電圧を印加できるため電荷収集時間を短縮することができ、また質量数が大きいためX線やガンマ線の吸収率が高いことなどから、高速応答性と高検出効率を有する優れた素子としてX線検出検出器に利用することができる。
【0009】
X線検出器の出力を増幅器で増幅し、電流値で分類して頻度をカウントする。各検出素子ごとのカウント結果はX線エネルギーごとの入射頻度を表し、スペクトル化したデジタル情報として蓄積することができる。デジタル化した情報は演算処理装置の高速処理を経て、指定したX線エネルギーにおける各素子ごとのX線検出量を算定し、ピクセル配置に対応して平面展開することにより指定X線エネルギーにおけるX線透過状態を濃淡画像として表示することができる。
【0010】
また、異なるX線エネルギー領域における出力信号の差分に基づいて画像化するようにしてもよい。
たとえばヨウ素造影剤を用いた冠状動脈造影では、ヨウ素のK吸収端の上と下の2個のエネルギーにおけるX線検出カウント数の差を算出すると、造影剤がない部分ではカウント数が余り変わらないので相殺されて値がゼロに近くなり、造影剤の存在する血管の部分は差が生じて値が大きくなる。したがって、K吸収端の上下におけるカウント数差に基づいて画像を生成すると、血管部分だけが表われた画像となり、診断に便利である。
通常の冠動脈造影でエネルギー差分を行おうとすると、異なる2波長の単色X線を照射する必要があるが、本発明の装置を用いると、白色X線を照射して得られた測定値から2つのエネルギーを選択して差分処理し画像を得るので、撮影は1度で済み、さらに同じときに形成されたX線像を用いるため鼓動に影響されずいつでも明瞭なX線像を生成することができる。
【0011】
なお、エネルギー基準出力信号について検出器のX線エネルギーごとの感度に基づいて補正するようにしてもよい。
検出器はエネルギー検出特性に偏りがある。このような検出器の偏りは観察対象についての画面情報を乱すので、予め調べた検出器特性に基づいて出力信号を補正することにより実際の状態をより正確に表すことが好ましい。」
(甲2-イ)「【0016】
X線発生器4からの白色X線を測定対象5に照射すると測定対象5を構成する部分ごとにエネルギー吸収率が異なるため、透過X線は強度がエネルギーごとに変成された状態になる。X線検出器1には、X線検出部11のX線検出素子が感度を有するX線エネルギー領域にわたり受光X線の透過状態が潜像として形成され、エネルギー成分を指定して抽出することにより、そのエネルギー成分について透過X線強度にしたがったX線像を得ることができる。したがって、1回のX線撮影により得られた情報からX線吸収条件が異なる骨の画像と臓器の画像を別々に取り出すことができる。また、麻薬が吸収するX線エネルギー領域を切り出して画像に合成することにより、胃の中に隠した麻薬袋を像として検出することなども可能である。
【0017】
検出信号を処理するため、図2に表示したように、X線検出器1には、X線検出部11に加えて、各X線検出素子ごとに設けたプリアンプ12とプリアンプの出力をさらに増幅する増幅器13と増幅器の出力をデジタル化するA/D変換器14とA/D変換器14の出力を大きさごとに分類してその検出回数を計数する弁別計数器15と、所定の期間受光したX線の弁別結果を積算して素子ごとのエネルギースペクトルを記憶する2次元メモリ16を備える。
このようにして、2次元メモリ16に蓄えられたピクセルごとのエネルギースペクトル情報は、画像処理装置2で処理して画像化される。
【0018】
画像処理装置2は、波形整形器21と3次元メモリ22とエネルギー選択器23と画像合成器24と画像メモリ25から構成される。
波形整形器21は、2次元メモリ16のエネルギースペクトル情報を取り込んで信号波形中のノイズやクロストーク成分を除去し、画像処理装置2内の3次元メモリ22にピクセルごとに準備されたスペクトラム記憶領域に格納する。
エネルギー選択器23は、3次元メモリ22からピクセルごとのスペクトラム情報を引き出し、分析目的に従って決定されるエネルギーγに基づいて、ピクセルごとに対象位置におけるX線強度を切り出す。」
(甲2-ウ)「【0020】
また、本実施例のX線エネルギー分析イメージング装置では、一旦取り込んだX線透過像の潜像を処理して、任意のエネルギーにおけるX線の透過像を生成するから、特に感度のよいエネルギー領域を選択して目的部位の像を鮮明化する場合や、アンジオグラフィーなどで異なる波長における画像を用いた演算により画像を形成する場合にも有効に使用することができる。」
(甲2-エ)「【0024】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明のX 線エネルギー分析イメージング装置を用いることにより、1回の撮影で得られる測定出力からX 線吸収特性の異なるいくつかの目的物のX 線像を抽出して鮮明に表示することができる。本発明の装置は、麻薬や火薬の検査などに用いることができ、特に冠状動脈造影など医療用検査に有効に活用することができる。」
(甲2-オ)
【図2】
「
[図:0001405799000002.jpg]
」
(甲2-カ)【図3】
「
[図:0001405799000003.jpg]
」
b 上記(甲2-ア)ないし(甲2-カ)の記載から、甲2には、
「X線に対してエネルギー分解能を有するピクセルが配列され空間分解能を有するX線検出器とX線発生装置と記憶装置と演算処理装置を備え、被写体にX線を照射して撮影を行い、X線検出器のピクセルごとの出力信号について所望のX線エネルギーにおける出力信号を選択してX線像化するX線エネルギー分析イメージング装置において、
エネルギー分解能を有するX線検出素子は、素子にX線が入射するとX線のエネルギーに対応する電流を発生するもので、所定期間に観察される電流発生回数を電流の大きさに従って分類して積算することにより、透過X線のエネルギースペクトルを得ることができ、
各検出素子ごとのカウント結果はX線エネルギーごとの入射頻度を表し、スペクトル化したデジタル情報として蓄積し、デジタル化した情報は演算処理装置の高速処理を経て、指定したX線エネルギーにおける各素子ごとのX線検出量を算定し、ピクセル配置に対応して平面展開することにより指定X線エネルギーにおけるX線透過状態を濃淡画像として表示することができ、
物質に特有な高吸収X線を利用することにより、荷物や人体内に隠匿した麻薬、あるいは爆薬や象牙などの禁制品の有無を検査することができ、
特に感度のよいエネルギー領域を選択して目的部位の像を鮮明化したり、
白色X線を照射して得られた測定値から2つのエネルギーを選択して差分処理し画像を得るなど、異なる波長における画像を用いた演算により画像を形成すること。」
という技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比する。
a(a)甲1発明の「被測定物3」及び「X線照射手段(X線源)2」は、それぞれ本件発明1の「被検査物」及び「X線源」に相当する。
(b)上記(a)の対比から、甲1発明の「被測定物3にX線を照射するX線照射手段(X線源)2」は、本件発明1の「被検査物にX線を照射するX線源」に相当する。
b(a)甲1発明の「被測定物3とベルトコンベアを透過したX線」は、本件発明1の「被検査物の透過X線」に相当する。
(b)甲1発明の「X線検出手段4」は、「X線光子到着毎に当該光子エネルギーを弁別する直接変換型X線ラインセンサで実現され」、「エネルギー別フォトカウンティングX線光学系を成」し、「X線強度をエネルギー帯域別の画像データとしてメモリー上に取り込」むことから、複数の「エネルギー帯域別」に「X線強度」を検出して画素ごとの「エネルギー帯域別」「X線強度」を出力するものといえる。
そうすると、甲1発明の「エネルギー帯域別」「X線強度」は、本件発明1の「エネルギースペクトル」に相当し、甲1発明の「X線検出手段4」は、本件発明1の「マルチエナジーセンサ」に相当する。
(c)上記(a)及び(b)の対比から、甲1発明の「X線光子到着毎に当該光子エネルギーを弁別する直接変換型X線ラインセンサで実現され、エネルギー別フォトカウンティングX線光学系を成すことによって、被測定物3とベルトコンベアを透過したX線強度をエネルギー帯域別の画像データとしてメモリー上に取り込み、ローエネルギーとハイエネルギーのX線画像ペアに変換」する「X線検出手段4」と、本件発明1の「被検査物の透過X線に含まれる少なくとも三種類以上のエネルギー帯のX線を検出して画素ごとのエネルギースペクトルを出力するマルチエナジーセンサ」とは、「被検査物の透過X線に含まれる複数のエネルギー帯のX線を検出して画素ごとのエネルギースペクトルを出力するマルチエナジーセンサ」である点で共通する。
c(a)甲1発明の「ローエネルギーとハイエネルギー」は、本件発明1の「二種類のエネルギー帯」に相当する。
また、甲1発明の「ローエネルギーとハイエネルギー」と、本件発明1の「異物検出に適する二種類のエネルギー帯」とは、「異物検出に用いる二種類のエネルギー帯」の点で共通する。
(b)甲1発明の「ローエネルギーとハイエネルギーのX線画像ペア」である「デュアルエネルギーX線画像」は、本件発明1の「二種類のエネルギー帯に対応する画像」に相当する。
(c)甲1発明の「デュアルエネルギーX線画像」「対数変換を行うことによって」「生成し」た「ローエネルギー等価厚画像とハイエネルギー等価厚画像の等価厚画像ペア」に対する「重みパラメータを用いた差分処理」は、本件発明1の「エネルギーサブトラクション」に相当する。
(d)甲1発明の「画像処理手段6」は、本件発明1の「画像処理部」に相当する。
(e)上記(a)ないし(d)の対比から、甲1発明の「ローエネルギーとハイエネルギーのX線画像ペア」である「デュアルエネルギーX線画像の入力を受けて」「ローエネルギー等価厚画像とハイエネルギー等価厚画像の等価厚画像ペアを生成し」、「重みパラメータを用いた差分処理によって等価厚画像ペアから混入異物の成分画像を分離し」、「混入異物の成分画像を閾値処理して異物検出」する「画像処理手段6」と、本件発明1の「検査を行う際、前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中から異物検出に適する二種類のエネルギー帯に対応する画像を選び出し、選び出した二種類のエネルギー帯に対応する画像から、エネルギーサブトラクションによって異物を検出する画像処理部」とは、「異物検出に用いる二種類のエネルギー帯に対応する画像から、エネルギーサブトラクションによって異物を検出する画像処理部」で共通する。
d 甲1発明の「異物検出装置」は、「X線」を検出して「被測定物3」を検査するものであるから、本件発明1の「X線検査装置」に相当する。
(イ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「被検査物にX線を照射するX線源と、
被検査物の透過X線に含まれる複数のエネルギー帯のX線を検出して画素ごとのエネルギースペクトルを出力するマルチエナジーセンサと、
異物検出に用いる二種類のエネルギー帯に対応する画像から、エネルギーサブトラクションによって異物を検出する画像処理部を備えた、
X線検査装置。」
の発明である点で一致し、次の3点において相違する。
(相違点1)
マルチエナジーセンサが検出するエネルギー帯について、本件発明1においては、「少なくとも三種類以上のエネルギー帯を検出する」のに対し、甲1発明においては、「X線検出手段4」が弁別する「エネルギー帯域」数は明らかではない点。
(相違点2)
異物検出に用いる二種類のエネルギー帯について、本件発明1においては、「画像処理部」が「事前セットアップとして得られた画像に基づきエネルギーサブトラクションを実施した画像の被検査物のみの画素と異物の写っている画素からコントラストの差が最大となる前記二種類のエネルギー帯を決定」した「異物検出に適する二種類のエネルギー帯」であるのに対し、甲1発明においては、「ローエネルギーとハイエネルギー」の「エネルギー帯域」が、どのようにして決定されたものであるのかが不明な点。
(相違点3)
「エネルギーサブトラクション」に係る「画像」について、本件発明1においては、「画像処理部」が「検査を行う際、前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中から異物検出に適する二種類のエネルギー帯に対応する画像を選び出」すのに対し、甲1発明においては、「デュアルエネルギーX線画像」が「画像入力手段5から出力され」て「画像処理手段6」に「入力」される点。
(ウ)事案に鑑み、最初に相違点2について検討する。
a 甲2技術事項は、「白色X線を照射して得られた測定値から2つのエネルギーを選択して差分処理し画像を得るなど、異なる波長における画像を用いた演算により画像を形成すること」を開示するが、差分処理の対象となる2つのエネルギーをどのようにして選択するのかについて、その方法を開示するものではない。
b 装置一般において、設定可能なパラメータの設定を事前セットアップにおいて実行することは、例を挙げるまでもなく従来周知である。
しかしながら、エネルギーサブトラクションによって異物を検出するX線検査装置において、事前セットアップとして得られた画像に基づきエネルギーサブトラクションを実施した画像の被検査物のみの画素と異物の写っている画素からコントラストの差が最大となる二種類のエネルギー帯を決定することにより、検査時のエネルギーサブトラクションに使用する二種類のエネルギー帯を選択することは、本件特許出願の優先日当時において周知であったとはいえない。
c したがって、甲1及び甲2に接した当業者といえども、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとはいえない。
(エ)以上のとおりであるから、上記相違点1及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件訂正により請求項2及び3は削除された。
エ 本件発明4及び5について
本件発明4及び5は、本件発明1に対し、更に特定事項を追加したものであるから、上記イで検討した本件発明1と同じ理由により、甲1発明及び甲2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
オ 小括
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1、4及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
よって、取消理由通知に記載した取消理由(1)により、本件特許の請求項1、4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
(2)特許法第29条の2について
ア 形式的要件について
(ア)甲7出願は、本件特許出願の優先日である平成29年3月17日より前の平成28年3月10日に出願され、本件特許出願の優先日後の平成29年9月14日に出願公開された。
(イ)本件特許出願の発明者は久保拓右であり、甲7出願の発明者は宮崎格であるから、両出願の発明者は同一でない。
(ウ)本件特許出願の出願時における出願人は株式会社イシダであり、甲7出願の出願人はアンリツインフィビス株式会社であるから、両出願の出願人は同一でない。
イ 甲7出願の記載事項及び甲7出願の発明
(ア)甲7出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。
(甲7-ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を用いて被検査物内の異物検出を行なう技術に関する。」
(甲7-イ)「【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した異物検出装置20の全体構成を示している。
【0022】
この異物検出装置20は、搬送装置21、X線発生部22、複数NのX線センサ311~31N、透過画像データ生成手段40および判定手段50を有している。
【0023】
搬送装置21は、被検査物Wを所定方向(図では紙面に直交する方向)に搬送するためのものであり、一般的には、コンベアのように被検査物Wを一定速度で水平に搬送するものが使用されるが、必ずしも動力源をもつ搬送装置を用いる必要はなく、被検査物の重さを利用して傾斜路を滑走させる方式や、上方から落下させる方式であってもよい。
【0024】
X線発生部22は、搬送装置21によって所定方向に搬送される被検査物Wが通過する通過路にX線を出射する。この実施形態では、搬送装置21によって搬送される被検査物Wの上方からその搬送路の幅方向に拡がるX線を出射するものとするが、X線の出射方向はこれに限らず、被検査物Wの側方から側面方向へ出射してもよい。
【0025】
X線発生部22は、X線源として、加熱したフィラメントから放出される電子を加速して陽極のターゲットに衝突させてX線を放出させる熱陰極X線管や、格子制御型熱陰極X線管が用いられ、その他にX線管を駆動するために必要な電源が含まれている。
【0026】
複数NのX線センサ311~31Nは、それぞれがX線を受けて電気信号に変換するものであり、X線発生部22から被検査物Wの通過路に出射されて被検査物Wを透過したX線を受ける位置で、被検査物Wの通過方向(紙面と直交する方向)と交差(この例では直交)する方向に隙間がほとんど無い状態で一列に並んでいる。
【0027】
なお、実際の装置としては、複数NのX線センサ311~31Nは、それぞれが一体的に連結された一本のラインセンサ30で構成され、搬送装置21の搬送路の下面側に配置されている。ここで、例えばX線センサの幅を1mm、X線センサ同士の隙間を幅に対して無視できる程小さいとし、被検査物Wを搬送する搬送路の幅を200mmとすれば、概略200個のX線センサを有するラインセンサを用いればよい。
【0028】
従来の異物検出装置で用いられるX線センサは、一般的に入射したX線により可視光を発生してこれをフォトセンサで受けて電気信号に変換するシンチレータ型フォトセンサであって可視光のエネルギーを積分した値が画像の濃淡を表すが、この異物検出装置20が用いるX線センサ311~31Nは、被検査物Wを透過したX線の光子が入力される毎に、その光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型(CdTeセンサ)であり、単位時間当りに出力するパルス数が透過画像の濃淡を表すことになる。
【0029】
透過画像データ生成手段40は、X線発生部22とX線センサ311~31Nの間を被検査物Wが通過している間にX線センサ311~31Nからそれぞれ出力される信号を所定期間(以下スキャン時間という)ずつ区切って所定の信号処理を行い、被検査物Wの通過方向とX線センサの並び方向とで決まる2次元の位置の情報と、その位置毎の信号処理結果からなる被検査物の透過画像データを生成する。なお、このスキャン時間は、被検査物に対する搬送方向の検出単位を決定するものであり、被検査物の長さを搬送速度で除算して得られる物品通過時間に対して十分短いものとする。
【0030】
前記したように、光子検出型のX線センサ311~31Nは、一つの光子の入力に対して、その光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を一つ出力するが、X線発生部22から出射されるX線の光子のエネルギーは一定でなくばらつきがあるため、それに応じて、図2に示すように、各X線センサから出力されるパルス信号P1、P2、P3、…の波高値H1、H2、H3、…にばらつきが生じる。
【0031】
言い換えれば、エネルギーの異なるX線が混在していることになり、スキャン時間内に一つのX線センサから出力されるパルス信号の波高値H1、H2、H3、…が、予め波高値の出力範囲全体を複数M(図2ではM=4)に区分けした領域R1~RMのいずれに入るかを判定し、スキャン時間内のパルス信号入力数を領域毎に累積すれば、X線透過エネルギーの範囲が異なる複数の透過画像データを生成することができる。」
(甲7-ウ)「【0045】
このようにして、波高値の領域にそれぞれ対応したエネルギー範囲毎の透過画像データが得られれば、判定手段50により、それら複数の透過画像データに対して従来から行なわれているサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なうことで、被検査物の異物の有無を判定することができる。
【0046】
なお、上記の波高値の領域の区分けの仕方は任意であり、一つの例としては、X線発生部22から出射されるX線の光子のエネルギーの最大値(X線管の場合、電子の加速電圧に依存する理論値)に対してX線センサが出力するパルス信号の波高値と、所定の基準値(例えば0)との間を複数に等分すればよい。また、領域数も2つ以上で任意であり、最初に多くの領域で透過画像データを生成しておき、その被検査物について異物の検出に最適な透過画像データの組合せを見つけ、その最適な透過画像データによるサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なってもよい。
【0047】
具体的には、例えば、初期の領域数を10として、それぞれの領域で透過画像データを生成しておき、エネルギーの大きい方から数えて1番目の領域を前述の領域R1に割当て、3番目の領域を前述の領域R2に割当て、……というように、初期の領域から最終的な領域に選択的に割り当てて、この割り当てられた領域の透過画像データを複数用いて、所定の画像処理を行なってもよい。また、エネルギーの大きい方から数えて1番目と2番目の領域の透過画像データを合成して、これを前述の領域R1の透過画像データとし、3番目と4番目の領域の透過画像データを合成して、これを前述の領域R2の透過画像データとし、……というように初期の複数の領域の透過画像データを合成して最終的な1つの領域の透過画像データとし、その合成された透過画像データを複数用いる、あるいは合成された透過画像データと、それを含まない初期の領域の透過画像データとを用いて所定の画像処理を行なってもよい。
【0048】
上記具体例では、初期の領域の数だけ透過画像データを生成しておき、異物の検出に最適な透過画像データの組合せに応じて、領域の割当てや透過画像データの合成を行なうようにしているが、被検査物に対して異物検出に最適な透過画像データの組合せが既知の場合には、割当てられる領域についての透過画像データのみを生成すればよく、また、複数の透過画像データを合成する代わりに、複数の領域の領域識別信号の累積数を加算して、一つの透過画像データを生成してもよい。これにより、透過画像データの記憶領域を節約することができる。」
(甲7-エ)【図1】
「
[図:0001405799000004.jpg]
」
(イ)上記(甲7-ウ)の段落【0046】の「波高値の領域の区分けの・・・領域数も2つ以上で任意であり、最初に多くの領域で透過画像データを生成しておき、その被検査物について異物の検出に最適な透過画像データの組合せを見つけ、その最適な透過画像データによるサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なってもよい。」との記載によれば、波高値の領域数は2つ以上で任意であるが、最適な透過画像データの組合せを見つけるためには、波高値の領域数は3つ以上必要であると解される。
(ウ)上記(イ)を踏まえると、上記(甲7-ア)ないし(甲7-エ)の記載から、甲7出願の当初明細書等には、
「搬送装置21、X線発生部22、複数NのX線センサ311~31N、透過画像データ生成手段40及び判定手段50を有している異物検出装置20であって、
搬送装置21は、被検査物Wを所定方向に搬送するためのものであり、
X線発生部22は、搬送装置21によって所定方向に搬送される被検査物Wが通過する通過路にX線を出射し、
複数NのX線センサ311~31Nは、それぞれがX線を受けて電気信号に変換するものであり、X線発生部22から被検査物Wの通過路に出射されて被検査物Wを透過したX線を受ける位置で、被検査物Wの通過方向と交差する方向に隙間がほとんど無い状態で一列に並んでおり、被検査物Wを透過したX線の光子が入力される毎に、その光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型(CdTeセンサ)であり、
透過画像データ生成手段40は、X線発生部22とX線センサ311~31Nの間を被検査物Wが通過している間にX線センサ311~31Nからそれぞれ出力される信号をスキャン時間ずつ区切って所定の信号処理を行い、被検査物Wの通過方向とX線センサの並び方向とで決まる2次元の位置の情報と、その位置毎の信号処理結果からなる被検査物の透過画像データを生成し、
透過画像データ生成手段40が行う所定の信号処理は、X線発生部22から出射されるX線はエネルギーの異なるX線が混在していることから、スキャン時間内に一つのX線センサから出力されるパルス信号の波高値H1、H2、H3、…が、予め波高値の出力範囲全体を複数Mに区分けした領域R1~RMのいずれに入るかを判定し、スキャン時間内のパルス信号入力数を領域毎に累積して、X線透過エネルギーの範囲が異なる複数の透過画像データを生成するものであり、
判定手段50は、波高値の領域にそれぞれ対応したエネルギー範囲毎の透過画像データに対して従来から行なわれているサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なうことで、被検査物の異物の有無を判定し、
波高値の領域の領域数は、3つ以上で任意であり、最初に多くの領域で透過画像データを生成しておき、その被検査物について異物の検出に最適な透過画像データの組合せを見つけ、その最適な透過画像データによるサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なう、
異物検出装置20。」
の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。
ウ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲7発明とを対比する。
a(a)甲7発明の「被検査物W」及び「X線発生部22」は、それぞれ本件発明1の「被検査物」及び「X線源」に相当する。
(b)上記(a)の対比から、甲7発明の「被検査物Wが通過する通過路にX線を出射」する「X線発生部22」は、本件発明1の「被検査物にX線を照射するX線源」に相当する。
b(a)甲7発明の「検査物Wを透過したX線」は、本件発明1の「被検査物の透過X線」に相当する。
(b)甲7発明の「波高値の領域」は、本件発明1の「エネルギー帯」に相当し、甲7発明の「3つ以上で任意であ」る「波高値の領域の領域数」は、本件発明1の「少なくとも三種類以上のエネルギー帯」に相当する。
(c)甲7発明の「スキャン時間」内に「X線センサ311~31Nからそれぞれ出力される信号」は、「透過画像データ」の画素に対応した信号である。
そうすると、甲7発明の「スキャン時間内に一つのX線センサから出力されるパルス信号の波高値H1、H2、H3、…が、予め波高値の出力範囲全体を複数Mに区分けした領域R1~RMのいずれに入るかを判定し、スキャン時間内のパルス信号入力数を領域毎に累積し」たデータは、本件発明1の「画素」の「エネルギースペクトル」に相当する。
(d) 甲7発明の「複数NのX線センサ311~31N」及び「透過画像データ生成手段40」は、合わせて本件発明1の「マルチエナジーセンサ」に相当する。
(e)上記(a)ないし(d)の対比から、甲7発明の「被検査物Wを透過したX線の光子が入力される毎に、その光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型(CdTeセンサ)であ」る「複数NのX線センサ311~31N」及び「スキャン時間内に一つのX線センサから出力されるパルス信号の波高値H1、H2、H3、…が、予め波高値の出力範囲全体を複数Mに区分けした領域R1~RMのいずれに入るかを判定し、スキャン時間内のパルス信号入力数を領域毎に累積」する「透過画像データ生成手段40」は、合わせて本件発明1の「被検査物の透過X線に含まれる少なくとも三種類以上のエネルギー帯のX線を検出して画素ごとのエネルギースペクトルを出力するマルチエナジーセンサ」に相当する。
c 甲7発明の「透過画像データ」は、「X線透過エネルギーの」「領域毎に」「生成するものであ」るから、甲7発明の「最初に多くの領域で透過画像データを生成しておき、その被検査物について異物の検出に最適な透過画像データの組合せを見つけ」ることと、本件発明1の「前記画像処理部は、事前セットアップとして得られた画像に基づきエネルギーサブトラクションを実施した画像の被検査物のみの画素と異物の写っている画素からコントラストの差が最大となる」「異物検出に適する二種類のエネルギー帯」「を決定する」こととは、「得られた画像に基づき異物検出に適する二種類のエネルギー帯を決定する」ことの点で共通する。
d(a)甲7発明の「サブトラクション処理」は、本件発明1の「エネルギーサブトラクション」に相当する。
(b)甲7発明の「判定手段50」は、「サブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なう」ものであるから、本件発明1の「画像処理部」に相当する。
(c)甲7発明の「その最適な透過画像データ」は、「最初に多くの領域で透過画像データを生成しておき、その被検査物について異物の検出に最適な」ものとして「見つけ」た「透過画像データの組合せ」であるから、上記(a)及び(b)を踏まえると、甲7発明の「その最適な透過画像データによるサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なう」「ことで、被検査物の異物の有無を判定」する「判定手段50」と、本件発明1の「検査を行う際、前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中から異物検出に適する二種類のエネルギー帯に対応する画像を選び出し、選び出した二種類のエネルギー帯に対応する画像から、エネルギーサブトラクションによって異物を検出する画像処理部」とは、「前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中の異物検出に適する二種類のエネルギー帯に対応する画像から、エネルギーサブトラクションによって異物を検出する画像処理部」の点で共通する。
e 甲7発明の「異物検出装置20」は、「X線」を検出して「被検査物W」を検査するものであるから、本件発明1の「X線検査装置」に相当する。
(イ)そうすると、本件発明1と甲7発明とは、
「被検査物にX線を照射するX線源と、
被検査物の透過X線に含まれる少なくとも三種類以上のエネルギー帯のX線を検出して画素ごとのエネルギースペクトルを出力するマルチエナジーセンサと、
前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中の異物検出に適する二種類のエネルギー帯に対応する画像から、エネルギーサブトラクションによって異物を検出する画像処理部を備え、
得られた画像に基づき異物検出に適する二種類のエネルギー帯を決定する、
X線検査装置。」
の発明である点で一致し、次の2点において相違する。
(相違点4)
得られた画像に基づき異物検出に適する二種類のエネルギー帯を決定することについて、本件発明1においては、「前記画像処理部」が「事前セットアップとして得られた画像に基づきエネルギーサブトラクションを実施した画像の被検査物のみの画素と異物の写っている画素からコントラストの差が最大となる前記二種類のエネルギー帯を決定する」のに対し、甲7発明においては、「判定手段50」が行うのか、「事前セットアップとして」行うのかが、いずれも明らかではなく、その具体的方法が不明な点。
(相違点5)
「エネルギーサブトラクション」に係る「画像」について、本件発明1においては、「画像処理部」が「検査を行う際、前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中から異物検出に適する二種類のエネルギー帯に対応する画像を選び出」すのに対し、甲7発明においては、「その被検査物について異物の検出に最適な」ものとして「見つけ」た「透過画像データの組合せ」を用いる点。
(ウ)相違点4について検討する。
a 上記(甲7-ウ)の【0048】には、「被検査物に対して異物検出に最適な透過画像データの組合せが既知の場合には、割当てられる領域についての透過画像データのみを生成すればよく」と記載されているが、「被検査物に対して異物検出に最適な透過画像データの組合せ」をどのようにして知り得たのかについては、記載がない。
b また、エネルギーサブトラクションによって異物を検出するX線検査装置において、事前セットアップとして得られた画像に基づきエネルギーサブトラクションを実施した画像の被検査物のみの画素と異物の写っている画素からコントラストの差が最大となる二種類のエネルギー帯を決定することにより、検査時のエネルギーサブトラクションに使用する二種類のエネルギー帯を選択することが、甲7出願の出願時における技術常識であったとはいえない。
c そうすると、相違点4は、課題解決のための具体化手段における微差とはいえない。
(エ)以上のとおりであるから、相違点5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲7発明と実質同一であるとはいえない。
ウ 本件訂正により請求項2及び3は削除された。
エ 本件発明4及び5について
本件発明4及び5は、本件発明1に対し、更に特定事項を追加したものであるから、上記イで検討した本件発明1と同じ理由により、甲7発明と実質同一であるとはいえない。
オ 小括
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1、4及び5に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。
よって、取消理由通知に記載した取消理由(2)により、本件特許の請求項1、4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
(3)特許法第36条第6項第1号について
ア 請求項1の「被検査物の透過X線に含まれる少なくとも三種類以上のエネルギー帯のX線を検出して画素ごとのエネルギースペクトルを出力するマルチエナジーセンサ」という記載は、「マルチエナジーセンサ」が検出可能なエネルギー範囲は、「被検査物の透過X線に含まれる」エネルギー帯のうち「少なくとも三種類以上のエネルギ一帯」を包含していることを特定していると認められるが、「被検査物の透過X線に含まれる少なくとも三種類以上のエネルギ一帯のX線」の各エネルギー帯域と、「マルチエナジーセンサ」が分離して検出可能なエネルギー帯域との関係を示す記載はなく、両エネルギー帯域が一致していることを特定しているとは認められない。
また、請求項1には、「異物検出に適する二種類のエネルギー帯」として「決定する」「二種類のエネルギー帯」のそれぞれが、「マルチエナジーセンサ」が「出力する」「エネルギースペクトル」の各帯域と一致することを特定する記載はない。
そうすると、本件発明1は、異物検出に適する二種類のエネルギー帯の選び出しを、「マルチエナジーセンサ」がX線検出時に分離して検出する「エネルギー帯」の中からのみの選び出しで行うものとはいえない。
イ 請求項1の記載を直接的又は間接的に引用して特定される本件発明4及び5についても、本件発明1と同じことがいえる。
また、本件訂正により、請求項2及び3は削除された。
ウ したがって、本件発明1、4及び5は、発明の詳細な説明に記載したものである。
エ 申立人は、令和5年7月4日提出の意見書(以下「申立人意見書」という。)において、本件訂正後においても請求項においてマルチエナジー画像を生成することは特定されておらず、請求項の記載と発明の詳細な説明の記載とが一致しない旨主張する(申立人意見書第1~2頁「(2)サポート要件(取消理由3)について」)。
しかしながら、上記アで述べたように、本件発明1は、異物検出に適する二種類のエネルギー帯の選び出しを、「マルチエナジーセンサ」がX線検出時に分離して検出する「エネルギー帯」の中からのみの選び出しで行うものとはいえないから、申立人がいうマルチエナジー画像を生成するものを包含している。
したがって、申立人の上記主張は採用することができない。
オ 小括
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1、4及び5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
よって、取消理由通知に記載した取消理由(3)により、本件特許の請求項1、4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
3 まとめ
以上とのとおり、取消理由通知に記載した取消理由(1)ないし(3)により、本件特許の請求項1、4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、本件訂正により請求項2及び3は削除されたため、請求項2及び3に対する取消理由は、対象とする請求項が存在しないものとなった。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第29条第2項について
(1)申立人の特許異議申立理由
申立人は、甲1及び甲2に加え、甲第3号証ないし甲第6号証を提示し、請求項1に係る発明は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第5号証記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2ないし5に係る発明は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第6号証記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
また、申立人は、令和5年7月4日提出の意見書に参考資料1及び2を添付し、特許異議申立書における主張を補強している。
甲第3号証:特開2000-69369号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:特開2014-230589号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特開2004-325183号公報(以下「甲5」という。)
甲第6号証:特表2016-521580号公報(以下「甲6」という。)
参考資料1:特許第3839658号公報(以下「参1」という。)
参考資料2:特開2010-217119号公報(以下「参2」という。)
(2)甲3ないし甲6並びに参1及び参2の記載事項
ア 甲3について
甲3には、【0005】、【0014】、【0016】、【0050】及び【0052】の記載から、「ノイズレベル、比較的低いエネルギーレベル、比較的高いエネルギーレベル、中程度のエネルギーレベルの4つのエネルギーレベルについて計数を行い、比較的低いエネルギーレベルの放射線画像信号と、比較的高いエネルギーレベルの放射線画像信号の間でエネルギーサブトラクション処理を行うこと」(以下「甲3技術事項」という。)が記載されていると認められる。
イ 甲4について
甲4には、【0049】、【0058】、【0070】、【0082】、【0086】、【0117】及び【0124】の記載から、「造影剤のK吸収端におけるエネルギEkを境界とするi番目とi+1番目のエネルギ帯域のX線光子の計数結果を画像化することに加え、それらの前後のエネルギ帯域におけるエネルギを有するX線光子の計数結果も画像化すること、及び、i番目のエネルギ帯域におけるX線光子の各画素における計数結果を示す計数信号と、i+1番目のエネルギ帯域におけるX線光子の各画素における計数結果を示す計数信号との差分処理によって差分画像データを生成すること」(以下「甲4技術事項」という。)が記載されていると認められる。
ウ 甲5について
甲5には、【0047】、【0049】、【0052】、【0056】、【0078】及び【0080】ないし【0082】の記載から、「ヨード系造影剤のK吸収端エネルギ位置(33.17keV)及びこれを挟んだエネルギ準位の上下2つの位置に3つのエネルギ弁別用の基準値TH1~TH3を設定し、これにより33.17keVの前後にエネルギ領域1、2を設定し、このエネルギ領域1、2のカウントデータを選択的に収集し、その2種類のカウントデータを互いにサブトラクションすること」(以下「甲5技術事項」という。)が記載されていると認められる。
エ 甲6について
甲6には、【0019】ないし【0029】、【0060】ないし【0062】、【0073】及び【0093】の記載から、「エネルギー分解X線画像を生成する際に、高エネルギーX線光子よりも低エネルギーX線光子のほうが吸収されやすいことによるビームハードニング効果を考慮するために、X線強度値を獲得する際にエネルギー閾値をエネルギー分解X線画像の画素全てに関して同一に設定せず、予備獲得ステップで比較的低いX線線量を使用してスカウト画像を取得し、その強度値を使用して局所的な物体の特徴及び特性を決定し、次いで、これらの局所的な物体の特徴に対する閾値を空間的に設定し、その後、メイン獲得ステップにおいて予備獲得ステップよりも高い線量のX線ビームを使用し、予備獲得ステップで設定された2つ以上の閾値を使用して、X線光子を3つ以上の異なるスペクトル部分に区別してエネルギー分解画像を取得すること、及び、このようにして最適化された閾値は、エネルギーサブトラクションに関しても重要となり得ること」(以下「甲6技術事項」という。)が記載されていると認められる。
オ 参1について
参1には、【特許請求の範囲】、【0013】ないし【0016】及び【0055】の記載から、「物品中の異物混入の判定を行うX線検査装置において、通常運転の前に、予め異物を混入したテスト用の物品をコンベアによって往復移動させながら複数回のX線画像の作成を行い、制御コンピュータにより、X線画像において異物部分と非異物部分とでコントラストの差が1番大きくなるような画像処理パラメータを、各回のX線画像に対して画像処理パラメータを少しずつ変化させながら自動的にサーチすること」(以下「参1技術事項」という。)が記載されていると認められる。
カ 参2について
参2には、【0002】及び【0037】の記載から、「商品への異物混入を検査するX線検査装置において、通常運転の前に、予め検査対象となる物品をコンベアによって搬送させて、画像処理パラメータを自動的に設定すること」(以下「参2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
(3)当審の判断
ア 本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、上記第4の2(1)イ(イ)で示したとおりである。
イ 甲3技術事項ないし甲5技術事項は、エネルギーサブトラクションに関するものであるが、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項である二種類のエネルギー帯の決定手法を開示するものではない。
甲6技術事項は、X線強度値を獲得する際にエネルギー閾値をエネルギー分解X線画像の画素全てに関して同一に設定せず、スカウト画像の強度値を使用して局所的な物体の特徴及び特性を決定し、これらの局所的な物体の特徴に対する閾値を空間的に設定することを開示するが、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項である二種類のエネルギー帯の決定手法を開示するものではない。
参1技術事項は、物品中の異物混入の判定を行うX線検査装置において、通常運転の前に、予め異物を混入したテスト用の物品をコンベアによって往復移動させながら複数回のX線画像の作成を行い、制御コンピュータにより、X線画像において異物部分と非異物部分とでコントラストの差が1番大きくなるような画像処理パラメータを、各回のX線画像に対して画像処理パラメータを少しずつ変化させながら自動的にサーチすることを開示するが、エネルギーサブトラクションにより異物を検出するものではなく、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項である二種類のエネルギー帯の決定手法を開示するものではない。
参2技術事項は、商品への異物混入を検査するX線検査装置において、通常運転の前に、予め検査対象となる物品をコンベアによって搬送させて、画像処理パラメータを自動的に設定することを開示するが、エネルギーサブトラクションにより異物を検出するものではなく、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項である二種類のエネルギー帯の決定手法を開示するものではない。
ウ したがって、甲3技術事項ないし甲6技術事項、参1技術事項及び参2技術事項を考慮しても、当業者が上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとはいえない。
よって、上記相違点1及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲2技術事項ないし甲6技術事項、参1技術事項及び参2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明4及び5は、本件発明1に対し、更に特定事項を追加したものであるから、本件発明1と同じ理由により、甲1発明、甲2技術事項ないし甲6技術事項、参1技術事項及び参2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 小括
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1、4及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
よって、特許法第29条第2項の特許異議申立理由によっては、本件の請求項1、4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、本件訂正により請求項2及び3は削除されたから、請求項2及び3に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなった。
2 特許法第17条の2第3項について
(1)申立人の特許異議申立理由
ア 出願人は、令和4年2月27日にした(当審注:特許異議申立書第31頁下から2行に記載された「2月22に付」は誤記と認める。)手続補正において、諸求項1の「透過X線に含まれる複数のエネルギ一帯のX線を検出して」及び「前記複数のエネルギ一帯の中から異物検出に適する二種類のエネルギー帯を選び出し」との記載を、それぞれ「透過X線に含まれる少なくとも三種類以上のエネルギー帯のX線を検出して」及び「前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中から異物検出に適する二種類のエネルギー帯を選び出し」との記載に補正したが、当初明細書等には、(ア)「三種類以上」を示す記載はないこと、(イ)マルチエナジーセンサが出力する64種類のエネルギー帯から二種類のエネルギー帯を選び出すことは記載されていないことから、当該補正は、出願人が補正の根拠とする明細書の段落【0026】及び図面の【図10】を含め、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない旨主張する。
(2)当審の判断
ア 当初明細書等の請求項1には、「複数のエネルギ一帯の中から異物検出に適する二種類のエネルギー帯を選び出し」と記載されていることから、「複数のエネルギー帯」が、少なくとも三種類存在することは明らかである。
イ 請求項1の「被検査物の透過X線に含まれる少なくとも三種類以上のエネルギー帯のX線を検出して画素ごとのエネルギースペクトルを出力するマルチエナジーセンサ」という記載は、「マルチエナジーセンサ」が検出可能なエネルギー範囲は、「被検査物の透過X線に含まれる」エネルギー帯のうち「少なくとも三種類以上のエネルギ一帯」を包含していることを特定していると認められるが、「被検査物の透過X線に含まれる少なくとも三種類以上のエネルギ一帯のX線」の各エネルギー帯域と、「マルチエナジーセンサ」が分離して検出可能なエネルギー帯域との関係を示す記載はなく、両エネルギー帯域が一致していることを特定しているとは認められない。
そのため、請求項1は、マルチエナジーセンサが弁別して出力する複数種類のエネルギー帯から二種類のエネルギー帯を選び出すことを特定しているとはいえない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1、4及び5に係る特許は、特許法第17条の2第3項の規定に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものではない。
よって、特許法第17条の2第3項の特許異議申立理由によっては、本件の請求項1、4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、本件訂正により請求項2及び3は削除されたから、請求項2及び3に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなった。
3 意見書における申立人の主張について
(1)申立人は、申立人意見書において、本件訂正の訂正事項1に係る「前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中から異物検出に適する二種類のエネルギー帯に対応する画像を選び出し」との記載は、選び出される選択肢が「エネルギー帯」であるにもかかわらず、選び出す対象が「画像」であるから、不明瞭な記載である旨主張する(申立人意見書第1頁「(1)訂正について」)。
(2)上記主張について検討するに、申立人が主張するように、訂正事項1に係る上記記載は、見かけ上は不明瞭な部分を含んでいるといえる。
しかしながら、当該記載は、「検査を行う際」の「異物検出に適する二種類のエネルギー帯に対応する画像を選び出」すことに係る特定事項であること、及び「異物検出に適する二種類のエネルギー帯」は「事前セットアップとして得られた画像に基づき」「決定」されていることから、請求項1全体の記載から、訂正事項1に係る上記記載は、「前記少なくとも三種類以上のエネルギー帯の中から」「事前セットアップ」で「決定」されている「異物検出に適する二種類のエネルギー帯」「に対応する画像を選び出」すことを特定するものと解される。
そして、この解釈は、発明の詳細な説明の「【0048】事前セットアップとして、図9の管電圧100kVの設定にて、鶏肉に骨のサンプルを取り付けて撮像を行い、・・・【0050】図12のフローチャートに例示するように、パラメータεi1,εj1,εi2,εj2,αをスイープして|c(xA,yA)-c(xB,yB)|が最大となるパラメータを求める。・・・【0052】インラインで実際に検査を行う際には、被検査物600が撮像されるごとに、決定したパラメータを用いてコントラスト画像を生成し」との記載と整合する。
そうすると、本件発明1は明確でないとまではいえないから、申立人の上記主張は採用することができない。
4 まとめ
以上とのとおり、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由により、本件特許の請求項1、4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、本件訂正により請求項2及び3は削除されたため、請求項2及び3に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなった。
第6 むすび
以上のとおり、本件請求項1、4及び5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
さらに、他に本件請求項1、4及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2及び3に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項2及び3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701149