特許異議申立
2022-701059
床面の表面保護被膜形成方法
- 審判番号
- 2022-701059
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-547936
- 登録番号
- 7060609
- 請求日
- 2022年10月26日
- 審決日
- 2023年08月29日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】関西ペイント株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人栄光事務所
- 【異議申立人】松島 美智子
- 審判長/審判官
- 審判長 塩見 篤史
- 審判官 門前 浩一
- 審判官 亀ヶ谷 明久
- 分類
- P1651.121-Y (B05D) / P1651.06 -Y (B05D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7060609号発明「床面の表面保護被膜形成方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7060609号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7060609号の請求項1~9の特許についての出願は、平成30年(2018年)8月22日(優先権主張 平成29年10月10日(以下「本件優先日」という。))を国際出願日とするものであって、令和4年4月18日にその特許権の設定登録がなされ、同年同月26日にその特許掲載公報が発行され、その請求項1~9の発明に係る特許に対し、令和4年10月26日に特許異議申立人である松島美智子(以下、「申立人」ともいう。)によって、特許異議の申立てがなされたものである。
特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。
令和4年12月 7日 上申書の提出(申立人)
令和5年 1月18日付け 当審が申立人に審尋
同年 3月17日 回答書の提出(申立人)
第2 本件発明
特許第7060609号の請求項1~9の発明(以下、請求項の項番により「本件発明1」などといい、まとめて、「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
床面に、常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)を塗装し、該組成物による硬化塗膜層(I)を形成する工程、次いでハードコート層形成用コーティング剤(B)を塗布し、少なくとも1層のハードコート層(II)を形成する工程、を含む床面の表面保護被膜形成方法であって、
前記常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)が、
水酸基含有アクリル樹脂(a)を含む主剤と、ポリイソシアネート化合物(b)を含む硬化剤とを含有し、
前記硬化剤中に含まれるポリイソシアネート化合物(b)のイソシアネート基と主剤中に含まれる水酸基含有アクリル樹脂(a)の水酸基との比率(NCO/OH)が、0.7~2.0の範囲内であり、
前記ハードコート層形成用コーティング剤(B)が、
コロイダルシリカ並びに加水分解性シラン及び/又はその縮合物を含み、前記加水分解性シラン及び/又はその縮合物が、エポキシシランオリゴマー(c)、1~3官能性の加水分解性シランから選ばれる少なくとも1種の加水分解性シラン及び/又はその加水分解縮合物(f)、及び、4官能性の加水分解性シラン及び/又はその加水分解縮合物(g)から選ばれる少なくとも1種である、
ことを特徴とする床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項2】
前記ハードコート層形成用コーティング剤(B)が、エポキシシランオリゴマー(c)と、平均粒子径が1~100nmの範囲内のコロイダルシリカ(d)と、硬化触媒(e)と、を含む請求項1に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項3】
前記水酸基含有アクリル樹脂(a)のガラス転移温度が、20~90℃の範囲である請求項1又は2に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項4】
前記水酸基含有アクリル樹脂(a)の水酸基価が、15~200mgKOH/gの範囲内である請求項1~3のいずれか1項に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項5】
前記常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)が、充填剤及び/又はポリウレタン樹脂を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項6】
前記常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)の塗装時における固形分含有率が、15~70質量%である請求項1~5のいずれか1項に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項7】
前記ハードコート層形成用コーティング剤(B)が、シランカップリング剤をさらに含む請求項1~6のいずれか1項に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項8】
前記硬化塗膜層(I)のマルテンス硬度が30N/mm2以上、ハードコート層のマルテンス硬度が100~300N/mm2にある請求項1~7のいずれか1項に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項9】
前記床面が、塩化ビニル樹脂系である請求項1~8いずれか1項に記載の床面の表面保護被膜形成方法。」
第3 申立の理由及び証拠方法
申立人は、全請求項(請求項1~9)に係る発明の特許を取り消すべきであると主張し、その理由として、下記1の申立理由を主張し、また、下記2の証拠方法を提出している。
1 申立ての理由
申立理由1
本件特許の請求項1~9の発明は、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その優先日前日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1~9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 証拠方法
甲第1号証の1 「化学床用コーティングシステム施工仕様書(水性コート使用)」と題する文書(以下、「甲1-1」ともいう。)
甲第1号証の2 各頁の左上に「製品名:FCスイケイ 水性ベースコート 主剤 MSDS-No.125-03」、及び、「会社名:株式会社九州ハイテック」、各頁の右上に「作成:2015年4月30日」、及び、「更新:2016年6月17日」とある「製品安全データシート」と題する文書(以下、「甲1-2」ともいう。)
甲第1号証の3 各頁の左上に「製品名:FCスイケイ 水性ベースコート 硬化剤 MSDS-No.126-03」、及び、「会社名:株式会社九州ハイテック」、各頁の右上に「作成:2015年4月30日」、及び、「更新:2016年6月17日」とある「製品安全データシート」と題する文書(以下、「甲1-3」ともいう。)
甲第1号証の4 各頁の左上に「製品名:FCスイケイ 水性トップコート A液 MSDS-No.116-03」、及び、「会社名:株式会社九州ハイテック」、各頁の右上に「作成:2014年10月24日」、及び、「更新:2016年6月17日」とある「製品安全データシート」と題する文書(以下、「甲1-4」ともいう。)
甲第1号証の5 各頁の左上に「製品名:FCスイケイ 水性トップコート B液 MSDS-No.117-04」、及び、「会社名:株式会社九州ハイテック」、各頁の右上に「作成:2014年10月24日」、及び、「更新:2017年2月16日」とある「製品安全データシート」と題する文書(以下、「甲1-5」ともいう。)
甲第2号証 特開2005-200497号公報(以下、「甲2」ともいう。)
甲第3号証 特開2010-163584号公報(以下、「甲3」ともいう。)
第4 当審の判断
当審は、申立理由1は、採用できないと判断する。その理由は、以下のとおりである。
1 申立理由1の概要
申立理由1は、甲第1号証の1乃至5の記載をまとめると、以下の発明(以下、「甲1発明」ともいう。)が記載されており、本件発明は、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである、というものである。(特許異議申立書の、特に、8頁15行~9頁26行、及び、18頁1~末行)
「A アクリルウレタン樹脂を主成分とするベースコート剤を塗装しベースコートを形成する工程、次いでセラミック系の主成分有するトップコート剤を塗布してトップコートを形成する工程を含む床のコーティング方法であって、
B ベースコート剤はアクリル樹脂を含む主剤と変性ポリイソシアネートを含む硬化剤とを含有し、
C トップコート剤が、アモルファスシリカ及びオルガノシランを含む
D 床のコーティング方法。」
2 甲第1号証の1乃至5の採否について
申立理由1の証拠方法として提出された甲第1号証の1乃至5の採否(証拠力)について検討する。
(1) 甲1-1の成立の真正について
ア 甲1-1に記載されている事項
甲1-1には以下の事項が記載されている。
(ア)「
[図:0001401669000001.jpg]
」(表紙)
(イ)「
[図:0001401669000002.jpg]
」(1頁)
(ウ)「
[図:0001401669000003.jpg]
」(2頁)
(エ)「
[図:0001401669000004.jpg]
」(3頁)
(オ)「
[図:0001401669000005.jpg]
」(5頁)
(カ)「
[図:0001401669000006.jpg]
」(8頁)
(キ)「
[図:0001401669000007.jpg]
」(9頁)
(ク)「
[図:0001401669000008.jpg]
」(10頁)
(ケ)「
[図:0001401669000009.jpg]
」(11頁)
(コ)「
[図:0001401669000010.jpg]
」(11頁)
(サ)「
[図:0001401669000011.jpg]
」(13頁)
(シ)「
[図:0001401669000012.jpg]
」(上記(サ)の次の頁。15頁)
(ス)「
[図:0001401669000013.jpg]
」(31頁)
(セ)「
[図:0001401669000014.jpg]
」(32頁)
イ 検討
(ア) 以上によれば、甲1-1の表紙(上記アの(ア))に「株式会社九州ハイテック」とあり、2頁(上記アの(ウ))の「1-1はじめに」の項に「この度は、弊社「FCスイセイ水性コート」をお買い上げ頂きまして誠にありがとうございます。
本書は、「水性コート」を正しく使って頂くための基本的な施工マニュアルです。」と記載されていることから、甲1-1は、「FCスイケイ水性コート」を販売した際にその購入者が「FCスイケイ水性コート」を正しく使えるようにするための「基本的な施工マニュアル」として作成された文書であること、「FCスイケイ水性コート」を販売する度にその全ての購入者に対して提供することが想定されていた文書であること、及び、「株式会社九州ハイテック」が、「FCスイケイ水性コート」という名称の製品を製造販売している者であり、かつ、甲1-1の「基本的な施工マニュアル」を作成した者であることが理解できる。
なお、申立人は、令和4年12月7日提出の上申書において、「甲第1号証の1は、株式会社九州ハイテックが作成した化学床用コーティングシステム施工仕様書であって、製品購入時に顧客に配布されたものであり、配布されたものをそのままコピーして甲第1号証の1としたものであります。」と説明している。
(イ) 一般に、製品の製造元がその製品の購入者に対してその製品の取り扱いについて説明する文書(甲1-1を含む)は、その内容が正確であるだけでは足りず、購入者にとって不便なものとならないように、また、その製造元に対する信頼や評判を損ねるような記載が含まれないように注意を払って作成するものである。
また、誤字脱字は、作者の不注意を示すものであり、一見してわかるような不正確な記載は、その内容の正確性を損なわなかったとしても、その使い勝手を損ねるので購入者にとって不便なものとなる。したがって、甲1-1が、真実、「株式会社九州ハイテック」によって、「FCスイケイ水性コート」の「基本的な施工マニュアル」として作成された文書であるならば、誤字脱字や一見してわかるような不正確な記載がないように十分な校正がされたはずであり、その改訂をする際にも、改めて十分な校正がなされたはずであるといえる。
また、甲1-1の表紙(上記アの(ア))の右上の記載によれば、甲1-1は、2016年1月1日にその元となる文書が作成された後、2017年9月22日にこれを改定することによって作成されたものであるから、少なくとも二度の、誤字脱字や一見してわかるような不正確な記載がないように十分な校正をする機会があった文書であるといえる。
(ウ) しかし、甲1-1には下記a~cに示すとおり、そのような文書には通常ほぼ存在しない不正確な記載が多数存在するため、これを用いる者は、まず、甲1-1の全体を精読し、本来の意味を推測した上で、その内容を理解する必要があり、これを用いる者にとって非常に不便なものとなっており、書証として不自然なものとなっている。
また、甲1-1が、そもそも、単一の書証であって、その原本を忠実にコピーして作成したものではないことを窺わせる不備も存在している。
a 11頁が2つ存在(上記アの(ケ)、(コ))するとともに、14頁が欠落(上記アの(サ)、(シ))していて、頁番号が連続した一連の番号になっておらず、乱丁落丁が生じている。
正確な頁番号が付与されていないとその使用にあたって不便であることはいうまでもないし、このような初歩的な不備の存在は、改定された文書として不自然なものである。
また、通常40頁足らずの文書に乱丁落丁が生じることは考え難いので、甲1-1が単一の書証の原本を忠実にコピーして作成したものではない可能性もあるといえる。
b 1頁の目次(上記アの(イ))では、「4 施工のフローチャート」で始まる章が1つだけ存在し、その最初の頁が9頁である旨記載されているが、本文中には、「4 施工のフローチャート」で始まる章が9頁と10頁の2つ存在し、かつ、両者の内容が、一致していない(上記アの(キ)、(ク))。
そうすると、2つ存在する「4 施工のフローチャート」で始まる章の一方が正しい「4 施工のフローチャート」で始まる章で、他方は誤って存在するだけの本来存在しないはずの頁である、例えば、一方が2017年9月22日に改定される前の版であって、本来削除されているべきものが残っていたものであり、他方が当該改定後のものであるのか、それ以外の解釈をすべきなのか等が必ずしも明らかではないから、その利用にあたって購入者は、本来の意味内容を正確に理解するために、株式会社九州ハイテックに問い合わせをする必要が生じたり、別途検討する必要が生じるので、その使用にあたって不便であることが明らかである。
さらに、上述のとおり、一方が2017年9月22日に改定される前の版である可能性があり、この場合当該改定後の版には本来存在し得ない頁が含まれていることになるから、甲1-1がその原本を忠実にコピーして作成したものではない、例えば、当該改定前の版と改定後の版のコピーをつなぎ合わせて作成したものである可能性があるといえる。
c 1頁及び31頁の目次(上記アの(イ)、(ス))において示されている各章(項)が始まる頁の記載と実際にその章(項)の最初の頁が記載されている頁が一致していない場合が、以下のとおり、多数(18カ所)ある(なお、その数が多いので、対応する甲1-1の記載の摘記は、一部省略した。)。
以下で検討するように、正確な頁番号が付与されていないと目次が目次として機能しないから、その使用にあたって不便であることはいうまでもないから、この点でも甲1-1は書証として不自然である。
(a) 1頁の目次には「4 施工のフローチャート ・・・9ページ」(ドットの数は一部省略。以下、同様。)とあるが、9頁に加えて10頁にも「4 施工のフローチャート」という章がある(上記アの(イ)、(キ)、(ク))。
(b) 1頁の目次には「(1)初期施工 ・・・9ページ」とあるが、本文中に「(1)初期施工」という項が存在しない。なお、「4-1 初期施工 連続仕様」という項が9頁に、また、「4-1 初期施工 翌日仕様」という項が10頁にある(上記アの(イ)、(キ)、(ク))。
(c) 1頁の目次には「(2)定期メンテナンス ・・・10ページ」とあるが、本文中に「(2)定期メンテナンス」という項が存在しない。なお、「4-2 定期メンテナンス」という項が10頁ではなく11頁にある(上記アの(イ)、(ク)、(ケ))。
(d) 1頁の目次には「5 施工に必要なケミカル・関連商品 ・・・11ページ」とあるが、本文中に11頁が2つある。なお、最初の11頁には「4-2 定期メンテナンス」の項が記載されており、次の11頁には「5 施工に必要なケミカル・関連商品」の章が記載されている(上記アの(イ)、(ケ)、(コ))。
(e) 1頁の目次には「6 材料仕様と特性について・・・14ページ」とあるが、本文中に14頁が存在しない。なお、15頁に「6 材料仕様と特性について」の章が記載されている(上記アの(イ)、(サ)、(シ))。
(f) 1頁の目次には「7 施工仕様について・・・15ページ」とあるが、当該頁にはそのような記載はない(上記アの(シ))。なお、16頁から「7 施工仕様について」の章が始まっている。
(g) 1頁の目次には「8 コーティングの剥離について・・・26ページ」とあるが、当該頁にはそのような記載はない。なお、27頁から「8 コーティングの剥離について」の章が始まっている。
(h) 1頁の目次には「9 推奨モップ・タンクについて ・・・28ページ」とあるが、当該頁にはそのような記載はない。なお、29頁から「9 推奨モップ・タンクについて」の章が始まっている。
(i) 1頁の目次には「10 予想されるトラブルとその対策 ・・・30ページ」とあるが、当該頁にはそのような記載はない。なお、31頁から「10 予想されるトラブルとその対策」の章が始まっている(上記アの(イ)、(ス))。
(j) 31頁の目次には「10-1 白化現象について ・・・P31」とあるが、当該頁にはそのような記載はない。なお、32頁に「10-1 白化現象」という項が記載されている(上記アの(ス)、セ))。
(k) 31頁の目次には「10-2 クラックについて ・・・P32」とあるが、当該頁にはそのような記載はない。なお、33頁に「10-2 クラック」という項が記載されている。
(l) 31頁の目次には「10-3 乾燥不良について ・・・P33」とあるが、当該頁にはそのような記載はない。なお、34頁に「10-3 乾燥不良」という項が記載されている。
(m) 31頁の目次には「10-4 弾きについて ・・・P33」とあるが、当該頁にはそのような記載はない。なお、34頁に「10-4 弾き」という項が記載されている。
(n) 31頁の目次には「10-5 分解、ザラツキについて ・・・P34」とあるが、当該頁にはそのような記載はない。なお、35頁に「10-5 分解、ザラツキ」という項が記載されている。
(o) 31頁の目次には「10-6 艶引きについて ・・・P35」とあるが、当該頁にはそのような記載はない。なお、36頁に「10-6 艶引き」という項が記載されている。
(p) 31頁の目次には「10-7 タイルの反り、目地の開きについて ・・・P35」とあるが、当該頁にはそのような記載はない。なお、36頁に「10-7 タイルの反り、目地の開き」という項が記載されている。
(q) 31頁の目次には「10-8 光沢不良について ・・・P36」とあるが、当該頁にはそのような記載はない。なお、37頁に「10-8 光沢不良」という項が記載されている。
(r) 31頁の目次には「10-9 光沢復元不足について ・・・P36」とあるが、当該頁にはそのような記載はない。なお、37頁に「10-9 光沢復元不良」という項が記載されている。
(エ) 上記(イ)のとおり、甲1-1は、株式会社九州ハイテックが、その内容の正確性に加えて、購入者が使用する際の利便性を損なわないように注意して作成しているはずの文書であるが、上記(ウ)のとおり、甲1-1には、購入者が使用する際の利便性を損ねるような記載の不備が、不自然なほど多数存在している。
(オ)そうすると、甲1-1が、株式会社九州ハイテックによって作成されたもの、あるいはその忠実なコピーであることを強く疑わせる事情が存するといえる。
また、甲1-1には、甲1-1の作成を担当した者による署名又は押印などもない。
したがって、甲1-1は、株式会社九州ハイテックの意思に基づいて作成されたもの、すなわち、文書が真正に成立したものであるとは認められない。
(2)甲1-1の頒布日について
甲1-1の表紙頁の右上(上記(1)アの(ア))には、「作成:2016年1月1日
改定:2017年9月22日」と記載されているから、甲1-1の元となる文書が2016年1月1日に作成され、それを2017年9月22日に改定(改訂の誤記であると認める。)して作成されたのが甲1-1であると認められる。
また、上記(1)イ(ア)のとおり、甲1-1は、「FCスイケイ水性コート」の購入者が「FCスイケイ水性コート」を正しく使えるようにするための「基本的な施工マニュアル」であり、製品の販売時にその購入者に提供するために作成された文書であるから、当該製品が販売されなければ当然購入者への提供もされないものであるが、2017年9月22日は、甲1-1が作成された日であって、「FCスイケイ水性コート」の販売が開始された日ではないし、甲1-1にも、甲1-1が実際に「FCスイケイ水性コート」の販売にともなってその購入者に提供されたものであることを示す記載等はない。
また、仮に、2017年9月22日に「FCスイケイ水性コート」の販売が開始されていたとしても、甲1-1が、2017年9月22日以降かつ本件優先日以前のどの時点で販売された製品とともにその購入者に提供されたものなのかは不明である。
そうすると、甲1-1の頒布日は不明である。
(3) 甲1-2~1-5の頒布日について
ア 甲1-2~1-5に記載されている事項
甲1-2~1-5には、それぞれ、以下の事項が記載されている。
「
[図:0001401669000015.jpg]
」(甲1-2の1/9頁)
「
[図:0001401669000016.jpg]
」(甲1-3の1/11頁)
「
[図:0001401669000017.jpg]
」(甲1-4の1/8頁)
「
[図:0001401669000018.jpg]
」(甲1-5の1/9頁)
イ 検討
(ア) 甲1-2について
a 甲1-2は、製品安全データシートである。
また、製品安全データシートは、その提供が「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化学物質排出把握管理促進法、又は単に化管法)で義務づけられている文書であって、化管法で指定された化学物質又はそれを含有する製品を他の事業者に譲渡又は提供する際に、「化管法SDS(Safety Data Sheet : 安全データシート)制度」として、当該化学品の特性及び取扱いに関する情報を提供するためのものであるが、その提供が法令で義務づけられている範囲は、当該製品を譲渡又は提供する相手(他の事業者)に限られており、それ以外の者(不特定多数)に当該情報を公開することは義務づけられてはいない。また、当該譲渡又は提供(当該製品の販売)がなされなければ、誰にも提供されないままになることもあるものである。
b 甲1-2の1/9頁(上記ア)には、「作成:2015年4月30日
更新:2016年6月17日」、「製品安全データシート」、及び、「製品名 :FCスイケイ 水性ベースコート 主剤
会社名 :株式会社九州ハイテック」と記載されている。
これらの記載によると、甲1-2が、2015年4月30日にその元となる文書が作成された後、2016年6月17日にこれを更新することによって作成された製品安全データシートであることや、甲1-2は、「株式会社九州ハイテック」が「FCスイケイ 水性ベースコート 主剤」を販売した際に、その購入者に対して提供する目的で作成したものであること、及び、2016年6月17日以降に「FCスイケイ 水性ベースコート 主剤」が販売された場合には、甲1-2と同じ内容の製品安全データシートをその購入者に対して提供することが可能であったことが推察できる。
c しかし、仮に、2016年6月17日以降かつ本件優先日前に「FCスイケイ 水性ベースコート 主剤」の販売が開始されていたとしても、甲1-2が、いつ販売された製品にともなってその購入者に提供されたものであるのか、その日付は不明である。
d また、これらの記載は、2016年6月17日以降かつ本件優先日前に「FCスイケイ 水性ベースコート 主剤」が実際に販売されたことを示すものではないし、甲1-2と同じ内容の製品安全データシートがそのような販売にともなって提供されたものであることを示すものでもない。また、甲1-2と同じ内容の製品安全データシートが不特定多数に公開されたことを示すものでもない。
そうすると、甲1-2の頒布日は不明である。
(イ) 甲1-3~1-5について
甲1-3~1-5についても、甲1-2と同様の理由で、その頒布日は不明である。
(4)小括
上記(1)のとおり、甲1-1は、真正に成立した文書であるとは認められないものであるから、申立理由1の証拠方法として採用することができないものである。
また、上記(2)、(3)のとおり、甲1-1~1-5の頒布日は、いずれも不明であるから、申立理由1の証拠方法(特許法第29条第2項に関する証拠)として採用することができないものである。
3 甲1-1と、甲1-2~1-5の関連性について
ア 甲1-1には、「本書以外にも施工ビデオや製品安全データシート(MSDS)や施工チェックシートなどもご参照下さい。」(上記(1)ア(ウ))、「注意事項の事前確認
水性コートは製品別にMSDS(製品安全データシート)が備えられています。使用前に記載してある全ての安全注意事項を読み、理解した上で、取り扱いを行って下さい。」(上記(1)ア(エ))と記載されているが、通常、製品安全データシートは、事業者ごとかつ製品ごとに作成される文書であるから膨大な数(種類)が存在するところ、甲1-1~1-5のいずれにも、甲1-2~1-5が、上記甲1-1の記載に係る製品安全データシートとして、甲1-1とともにその購入者に対して提供されたものであるといえる記載も示唆もなく、他の証拠も示されていない。
そうすると、上記甲1-1の記載に係る製品安全データシートが、甲1-2~1-5であるとは必ずしもいえない。
イ 上記(2)のとおり、甲1-1の改定が2017年9月22日に行われていることから、甲1-1に係る「FCスイケイ水性コート」の販売は、2017年9月22日以降に予定されていたといえる。また、上記(3)イ(ア)bのとおり、甲1-2の更新が2016年6月17日に行われていることから、甲1-2に係る「FCスイケイ 水性コート 主剤」の販売は、2016年6月17日以降に予定されていたといえる。
そうすると、甲1-1と甲1-2は、それぞれ、その販売開始を予定していた日が異なる製品に関するものであるから、相互に関連のない製品に関する文書であるとは必ずしもいえない。
また、甲1-3~1-5についても、上記甲1-2の場合と同様の理由で、甲1-1とその販売開始を予定していた日が一致していないといえることから、甲1-1とは関連のない製品に関する文書である可能性がある。
ウ 甲1-1の15頁(上記(1)ア(シ))には、「6-1 コーティング剤の仕様」の項の「製品名」の欄に、「水性ベースコート」、「水性シールコート」、「水性トップコート Hタイプ」、「水性トップコート Sタイプ」と記載されているから、甲1-1に係る「FCスイケイ水性コート」は、これらの製品を含むものであり、したがって、これらの製品に関する製品安全データシートであれば、甲1-1とともにその購入者に提供されたと推察できる。
しかし、甲1-4の製品名は「FCスイケイ 水性トップコート A液」(上記(3)ア)というものであって、これらの製品のいずれとも一致しない。また、甲1-5の製品名も「FCスイケイ 水性トップコート B液」(上記(3)ア)というものであって、これらの製品のいずれとも一致しない。
そうすると、甲1-1と、甲1-4、及び、甲1-5の製品名が一致しないのであるから、両者は、関連のない製品に関する文書である可能性がある。
エ 以上から、甲1-2~1-5は、甲1-1に関連のある製品に関する文書であるとは認められない。
4 判断
申立理由1は、上記1のとおりのものであり、その前提として、甲1-1~1-5が、いずれも、申立理由1に関する証拠方法として採用できるものであることを要するものであるが、上記2のとおり、甲1-1~1-5は、いずれも、申立理由1に関する証拠方法として採用することができない。
また、甲1-1~1-5の記載をまとめると、甲1発明が記載されているといえるという主張は、甲1-1の記載について、甲1-2~1-5の記載内容を取り込むと、甲1-1には甲1発明が記載されているといえる、というものと推察できる。
しかし、上記3のとおり、甲1-1~1-5は、相互に関連のある製品に関する文書であると認められるようなものではないから、甲1-1の記載について、甲1-2~1-5の記載内容を取り込むことはできない。
そうすると、甲1-1~1-5に記載されている事項について検討するまでもなく、主張は採用できない。
したがって、申立理由1によって本件発明に係る特許を取り消すべきものであるとすることはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~9の特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~9の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701059