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特許異議申立

2022-701026

反射防止フィルムおよびディスプレイ装置

審判番号
2022-701026
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-029397外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7055436
請求日
2022年10月18日
審決日
2022年12月23日
公報発行日
2023年01月27日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (G02B) / P1651.537-Y (G02B) / P1651.55 -Y (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7055436号発明「反射防止フィルムおよびディスプレイ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第7055436号の請求項1ないし20に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 18項目
理 由

第1 手続の経緯

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特許第7055436号の請求項1~20に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2020-29397号)は、2017年(平成29年)2月10日(先の出願に基づく優先権主張 2016年3月14日、2016年3月25日)を国際出願日とする出願である特願2018-518416号の一部を、令和2年2月25日に新たな特許出願としたものであって、令和4年4月8日にその特許権の設定登録がされ、令和4年4月18日に特許掲載公報が発行された。

本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和4年10月18日に、特許異議申立人 大久保 直樹(以下、「申立人」という。)から、請求項1~請求項20に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。

第2 本件特許発明

本件特許の請求項1~20に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明20」という。また、それらを総称して「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。

「【請求項1】
ハードコーティング層;および前記ハードコーティング層に形成された低屈折層;を含み、
前記ハードコーティング層は、光重合性化合物の(共)重合体を含むバインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散した0.5~10μmの直径を有する有機または無機微粒子;および表面に反応性作用基が置換されていない1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子;を含み、
前記低屈折層の表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)が3.5超過6未満であり、スウェディッシュ高さ(H)が20nm超過200nm未満であり、
続きを表示(全44行)
前記低屈折層は、光重合性化合物;光反応性作用基を含むフッ素系化合物;および反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane);間の架橋重合体を含むバインダー樹脂と前記バインダー樹脂に分散した無機微細粒子を含み、
前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物は、ケイ素またはケイ素化合物を含み、
380nm~780nm波長領域での透光度が94%以上である、反射防止フィルム。
【請求項2】
前記反射防止フィルムの表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)およびスウェディッシュ高さ(H)は、非接触表面形状測定器(3D Optical Profiler)を利用して測定した結果である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記反射防止フィルムの380nm~780nm波長領域での平均反射率が5%未満である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記反射防止フィルムの内部ヘイズが0超過10%未満である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記反射防止フィルムの外部ヘイズが0超過0.5%未満である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記ハードコーティング層は、前記光重合性化合物の(共)重合体100重量部対比前記有機または無機微粒子1~20重量部を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記ハードコーティング層は、前記有機または無機微粒子および無機ナノ粒子の総重量を基準にして前記1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子3~10重量%を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
前記ハードコーティング層は、50nm超過120nm以下の直径を有する無機ナノ粒子をさらに含む、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項9】前記ポリシルセスキオキサンに置換される反応性作用基は、アルコール、アミン、カルボン酸、エポキシド、イミド、(メタ)アクリレート、ニトリル、ノルボルネン、オレフィン、ポリエチレングリコール、チオールおよびビニル基からなる群より選択された1種以上の作用基を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項10】前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンは、炭素数1~30の直鎖または分枝鎖のアルキル基、炭素数6~30のシクロアルキル基および炭素数6~30のアリール基からなる群より選択された1種以上の非反応性作用基が1以上さらに置換される、請求項9に記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンは、反応性作用基が1つ以上置換され、ケージ(cage)構造を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサン(Polyhedral Oligomeric Silsesquioxane)を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項12】
前記ケージ(cage)構造を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサンのシリコンのうちの少なくとも1つ以上には反応性作用基が置換され、前記反応性作用基が置換されない残りのシリコンには非反応性作用基が置換される、請求項11に記載の反射防止フィルム。
【請求項13】
前記ポリシルセスキオキサンに置換された非作用性反応基対比反応性作用基のモル比(molar ratio)が0.20以上である、請求項12に記載の反射防止フィルム。
【請求項14】
前記光重合性化合物は、(メタ)アクリレートまたはビニル基を含む単量体またはオリゴマーを含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項15】
前記フッ素系化合物に含まれる光反応性作用基は、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、ビニル(Vinyl)基およびチオール(Thiol)基からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項16】
前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物は、1重量%~25重量%のフッ素含有量を有し、
i)一つ以上の光反応性作用基が置換され、少なくとも一つの炭素に1以上のフッ素が置換された脂肪族化合物または脂肪族環化合物;ii)1以上の光反応性作用基で置換され、少なくとも一つの水素がフッ素で置換され、一つ以上の炭素がケイ素で置換されたヘテロ(hetero)脂肪族化合物またはヘテロ(hetero)脂肪族環化合物;iii)一つ以上の光反応性作用基が置換され、少なくとも一つのシリコンに1以上のフッ素が置換されたポリジアルキルシロキサン系高分子;およびiv)1以上の光反応性作用基で置換され、少なくとも一つの水素がフッ素で置換されたポリエーテル化合物;からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項17】
前記無機微細粒子は、10~100nmの数平均粒径を有する中空シリカ粒子である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項18】前記低屈折層は、前記光重合性化合物100重量部に対して前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物1~75重量部、前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane)0.5~25重量部および前記無機微細粒子10~320重量部を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項19】
前記ハードコーティング層は5μm超過10μm未満の厚さを有し、
前記低屈折層は1nm~300nmの厚さを有する、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の反射防止フィルムを含む、ディスプレイ装置。」

第3 特許異議申立ての概要

1 証拠

申立人が提出した証拠は以下のとおりである。

(1)甲第1号証:特開2012-78538号公報

(2)甲第2号証:国際公開第2008/044398号

(3)甲第3号証:特開2010-254950号公報

(4)甲第4号証:特開2006-47504号公報

(5)甲第5号証:特表2014-511403号公報

なお、甲第1号証は主引用文献、甲第2号証は副引用文献、甲第3~5号証は周知技術を示す文献である(以下、「甲第1号証」~「甲第5号証」を、それぞれ、「甲1」~「甲5」という。)。

2 申立て理由の概要

申立人が主張する取消しの理由は、概略、以下のとおりである(特許異議申立書の第7~8頁)。

(1)特許法第29条第2項(同法第113条第2号)

本件特許の特許請求の範囲の請求項1~20に係る発明は、甲1~5に記載された発明及び周知の事項に基づいて、その発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)

本件特許の特許請求の範囲の請求項1~20に係る発明は発明の範囲が不明確であるため、それらの特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(3)特許法17条の2第3項(同法第113条第1号)

令和3年10月5日付提出の手続き補正書による請求項1の補正は、出願当初明細書等に記載した事項の範囲を超えるものである。したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~20に係る発明は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。

第4 申立理由1(進歩性)

1 甲1、甲2の記載及び甲1に記載された発明

(1)甲1の記載

先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲1には、以下の記載がある。

なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等において活用した箇所を示す。以下同様である。

ア 「【請求項1】
透明支持体上に、少なくとも一つのハードコート層を有する反射防止フィルムであって、
前記少なくとも一つのハードコート層には、重合開始剤と連鎖移動剤の存在下で、少なくとも、フルオロ脂肪族基を含有するモノマーを重合させて得られた、下記一般式(I)で表されるフルオロ脂肪族基含有ポリマーを含有し、
前記フルオロ脂肪族基含有ポリマーの、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法によりポリスチレン換算で求めた質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5以上1.8未満である、反射防止フィルム。
一般式(I): Z1-(X)a-(Y)100-a-Z2
一般式(I)において、Xはフルオロ脂肪族基を含有するモノマー単位を表し、Yはフルオロ脂肪族基を含有しないモノマー単位を表す。aはモノマー単位Xの組成比を表し、80以上の数を表す。100-aはモノマー単位Yの組成比を表す。Z1は連鎖移動剤の残基を表し、Z2は重合開始剤の残基を表す。
・・・
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載の反射防止フィルム、又は請求項7に記載の偏光板を具備した画像表示装置。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート層を有する反射防止フィルム、該反射防止フィルムの製造方法、該反射防止フィルムを具備する偏光板及び液晶表示装置に関する。
・・・
続きを表示(全13行)
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
また、特許文献1には、光学補償シートにおける光学異方性層を形成する際に、フッ素系レベリング剤を用いるとレベリング性が向上することが記載されている。該光学異方性層は、フッ素系レベリング剤と液晶化合物とを併用し、溶媒に溶解した組成物を用いて、支持体上に塗布を行うことで形成される。
しかしながら、例えば、液晶表示装置の反射防止フィルムに用いるハードコート層は、光学補償シートにおける光学異方性層より膜厚の厚い層を形成する必要がある。その場合、高濃度の組成物を用いた塗布を行わないと、ハードコート性、及び支持体との屈折率差起因で生じる干渉ムラなどの所望の性能が得られない場合がある。この高濃度の組成物とフッ素系レベリング剤を併用した場合、塗布時及び乾燥時に塗布膜に前述のような点欠陥が発生しやすくなってしまう。特許文献1では、組成物の濃度が低い場合には絶大な効果を発現するが、より高濃度の組成物を用いた場合の効果は不十分である。
また、高濃度の組成物を用いると、溶媒の量を少なくすることができ、乾燥負荷が少なく、生産性に優れるという観点でも優れている。
【0011】
本発明は、よりレベリング性に優れ、ハジキなどの欠陥耐性が強く、耐擦傷性など高い物理強度を有し、かつムラの視認性が小さいハードコート層を有する反射防止フィルムを提供することを目的とする。
更に、高濃度の組成物を用いてハードコート層を形成することで、乾燥負荷が小さく、生産性に優れ、かつ物理強度及びムラの観点で更に優れた反射防止フィルムを提供することを目的とする。
また、本発明は、ハードコート層を有する反射防止フィルムを用いた偏光板(適切な手段により反射防止処理がされている、偏光板用保護フィルム)、及び画像表示装置を提供することを目的とする。」
ウ 「【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、透明支持体上に、少なくとも一つのハードコート層を有する反射防止フィルムであって、
前記少なくとも一つのハードコート層には、少なくとも、フルオロ脂肪族基を含有するモノマーを重合開始剤と連鎖移動剤の存在下で重合させて得られた、下記一般式(I)で表されるフルオロ脂肪族基含有ポリマーを含有し、
前記フルオロ脂肪族基含有ポリマーの、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法によりポリスチレン換算で求めた質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5以上1.8未満である、反射防止フィルムに関する。
一般式(I): Z1-(X)a-(Y)100-a-Z2
一般式(I)において、Xはフルオロ脂肪族基を含有するモノマー単位を表し、Yはフルオロ脂肪族基を含有しないモノマー単位を表す。aはモノマー単位Xの組成比を表し、80以上の数を表す。100-aはモノマー単位Yの組成比を表す。Z1は連鎖移動剤の残基を表し、Z2は重合開始剤の残基を表す。
【0017】
本発明におけるハードコート層を有する反射防止フィルムは、表面保護フィルム等に用いられる。このようなフィルムでは、基材フィルム上への塗布により機能層を設け、反射防止、防眩性、光散乱性、表面硬度、光学補償性等の機能を付与する方法が一般に知られている。
これらの機能層は、光学特性の変化により、微小な膜厚の変化や、含有する粒子の密度変化により、点欠陥が目視で見えやすくなることが多い。また、これらのフィルムは、画像表示装置に用いられるため、直接目視の透過、反射で観察されるため、点欠陥に対して極めて厳しい品質が要求される。以上のような課題に対し、本発明の効果は見られる。特に、反射防止フィルム、防眩性フィルム、防眩性反射防止フィルム、光拡散フィルムに対しては、本発明の効果が大きい。」
エ 「【0095】
本発明におけるハードコート層を形成するための組成物は、前記フルオロ脂肪族基含有ポリマーを含有するが、その他の材料を含有してもよい。該その他の材料について詳細に説明する。
【0096】
<重合性基を持つモノマー>
本発明におけるハードコート層を形成するための組成物は、重合性基を持つモノマーを含有することが好ましい。重合性基を持つモノマーとしては、熱硬化性化合物及び電離放射線硬化性化合物の少なくともいずれかが好ましい。ハードコート層は重合性基を持つモノマーを硬化して形成されるバインダーを含むものであることが好ましい。
前記バインダーは、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、重合反応により形成されるものであるのが好ましい。すなわち、バインダー形成材料(重合性基を持つモノマー)として電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含むハードコート層形成用塗料を支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを、架橋反応又は重合反応させることによりハードコート層を形成するのが好ましい。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光(紫外線)、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。」
オ 「【0123】
次に、本発明の組成物において、重合性基を持つモノマー、重合開始剤、溶剤、及び前記フルオロアルキルポリマー以外に、組成物中に含んでもよい材料について説明する。
・・・
【0149】
続きを表示(全25行)
<無機微粒子>
本発明には硬度などの物理特性、反射率、散乱性などの光学特性などを向上させるため、各種無機粒子を用いることができる。
無機粒子としては、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも一つ金属の酸化物、具体例としては、ZrO2、TiO2、Al2O3、In2O3、ZnO、SnO2、Sb2O3、ITO等が挙げられる。その他BaSO4、CaCO3、タルク及びカオリンなどが含まれる。
【0150】
本発明に使用する無機粒子の粒径は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好ましく、質量平均径は1~200nmである。好ましくは5~150nmであり、更に好ましくは10~100nm、特に好ましくは10~80nmである。無機粒子を100nm以下に微細化することで透明性を損なわないフィルムを形成できる。無機粒子の粒子径は、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。
・・・
【0161】
<透光性粒子>
本発明の反射防止フィルムには、防眩性(表面散乱性)や内部散乱性を付与するため、各種の透光性粒子を用いることが出来る。
【0162】
透光性粒子は有機粒子であっても、無機粒子であってもよい。粒径にばらつきがないほど、散乱特性にばらつきが少なくなり、ヘイズ値の設計が容易となる。透光性粒子としては、プラスチックビーズが好適であり、特に透明度が高く、バインダーとの屈折率差が前述のような数値になるものが好ましい。
有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート粒子(屈折率1.49)、架橋ポリ(アクリル-スチレン)共重合体粒子(屈折率1.54)、メラミン樹脂粒子(屈折率1.57)、ポリカーボネート粒子(屈折率1.57)、ポリスチレン粒子(屈折率1.60)、架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61)、ポリ塩化ビニル粒子(屈折率1.60)、ベンゾグアナミン-メラミンホルムアルデヒド粒子(屈折率1.68)等が用いられる。
無機粒子としては、シリカ粒子(屈折率1.44)、アルミナ粒子(屈折率1.63)、ジルコニア粒子、チタニア粒子、また中空や細孔を有する無機粒子が挙げられる。
・・・
【0166】
上記のような透光性粒子の場合には、バインダー中で透光性粒子が沈降し易いので、沈降防止のためにシリカ等の無機フィラーを添加してもよい。なお、無機フィラーは添加量が増す程、透光性粒子の沈降防止に有効であるが、塗膜の透明性に悪影響を与える。従って、好ましくは、粒径0.5μm以下の無機フィラーを、バインダーに対して塗膜の透明性を損なわない程度に、0.1質量%未満程度含有させるとよい。
【0167】
透光性粒子の平均粒径は0.5~10μmが好ましく、より好ましくは5.0~10.0μmである。平均粒径が0.5μm未満であると、光の散乱角度分布が広角にまで広がるため、ディスプレイの文字ボケを引き起こしたりするため、好ましくない。一方、10μmを超えると、添加する層の膜厚を厚くする必要が生じ、カールやコスト上昇といった問題が生じる。
・・・
【0169】
前記透光性粒子は、添加層全固形分中に3~30質量%含有されるように配合される。より好ましくは5~20質量%である。3質量%未満であると、添加効果が不足し、30質量%を超えると、画像ボケや表面の白濁やギラツキ等の問題が生じる。」
カ 「【0176】
本発明にハードコート層を有する反射防止フィルムとして使用する場合の好ましい層構成の例を下記に示す。下記構成において基材フィルムは、フィルムで構成された支持体を指している。なお、下記の防眩層はハードコート層を兼ねている。また、中屈折率層や低屈折率層は導電性層、及び帯電防止層を兼ねていてもよい。
・透明支持体/ハードコート層/低屈折率層
・透明支持体/ハードコート層/導電性層/低屈折率層
続きを表示(全13行)
・透明支持体/ハードコート層/帯電防止層/低屈折率層
・透明支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・透明支持体/防眩性ハードコート層/低屈折率層
・透明支持体/防眩性ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・・・
【0184】
ハードコート層の膜厚は、フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハードコート層の厚さは通常0.5μm~50μm程度とし、好ましくは1μm~20μm、更に好ましくは2μm~10μm、最も好ましくは3μm~7μmである。
また、ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
更に、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。」
キ 「【0188】
本発明の光学積層体は、目的に応じて、表面ヘイズ及び内部ヘイズを自由に設定可能である。
・・・
【0190】
画像の鮮明性を維持する目的では、表面の凹凸形状を調整することに加えて、透過画像鮮明度を調整することが好ましい。クリアな反射防止フィルムの透過画像鮮明度は60%以上が好ましい。透過画像鮮明度は、一般にフィルムを透過して映す画像の呆け具合を示す指標であり、この値が大きい程、フィルムを通して見る画像が鮮明で良好であることを示す。透過画像鮮明度は好ましくは70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。」
ク 「【0193】
<低屈折率層>
本発明の反射防止フィルムは、前記ハードコート層上に直接又は他の層を介して反射防止層(低屈折率層など)を有することが好ましい。
低屈折率層をハードコート層上に直接設ける場合には、層厚200nm以下の薄膜層とすることが好ましい。更に、光学層厚で設計波長の約1/4の層厚で形成すればよい。但し、最も単純な構成である低屈折率層1層で反射防止を行う1層薄膜干渉型の場合は、反射率0.5%以下を満足し、かつ、ニュートラルな色味、高い耐擦傷性、耐薬品性、耐候性を有する実用的な低屈折率材料がないため、更に低反射化が必要な場合には、ハードコート層と低屈折率層との間に高屈折率層を形成する2層薄膜干渉型、又は、ハードコート層と低屈折率層の間に中屈折率層、高屈折率層を順次形成する3層薄膜干渉型など、多層の光学干渉によって反射を防止する多層薄膜干渉型反射防止フィルムとすればよい。
続きを表示(全45行)
この場合、低屈折率層は、屈折率が1.30~1.51であることが好ましい。1.30~1.46であることが好ましく、1.32~1.38が更に好ましい。上記範囲内とすることで反射率を抑え、膜強度を維持することができ、好ましい。低屈折率層の形成方法も化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、低屈折率層用組成物を用いてオールウェット塗布による方法を用いることが好ましい。
・・・
【0197】
上記低屈折率層は、バインダーと微粒子とを含有して形成されているのが好ましい。以下、各構成成分について説明する。
【0198】
[バインダー]
上記低屈折率層が含有するバインダー形成材料としては、含フッ素ビニルモノマーを他の共重合成分と共重合してなる含フッ素共重合体を好ましく用いることができる。
含フッ素ビニルモノマーとしてはフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(商品名、大阪有機化学製)やR-2020(商品名、ダイキン製)等)、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。これらの含フッ素ビニルモノマーの組成比を上げれば屈折率を下げることができるが、皮膜強度は低下する。本発明では含フッ素共重合体のフッ素含率が20~60質量%となるように含フッ素ビニルモノマーを導入することが好ましく、より好ましくは25~55質量%の場合であり、特に好ましくは30~50質量%の場合である。
【0199】
上記含フッ素ビニルモノマーと共重合させる他の共重合成分としては、架橋反応性付与のために下記(a)、(b)、(c)で示されるモノマーなどが好ましく挙げられる。
【0200】
(a):グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマー。
(b):カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)。
(c):分子内に上記(a)、(b)の官能基と反応する基とそれとは別に架橋性官能基を有するモノマー(例えばヒドロキシル基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で合成できるモノマー)。
【0201】
上記(c)のモノマーは、架橋性官能基が光重合性基であることが好ましい。ここに、光重合性基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、シンナモイル基、シンナミリデンアセチル基、ベンザルアセトフェノン基、スチリルピリジン基、α-フェニルマレイミド基、フェニルアジド基、スルフォニルアジド基、カルボニルアジド基、ジアゾ基、o-キノンジアジド基、フリルアクリロイル基、クマリン基、ピロン基、アントラセン基、ベンゾフェノン基、スチルベン基、ジチオカルバメート基、キサンテート基、1,2,3-チアジアゾール基、シクロプロペン基、アザジオキサビシクロ基などを挙げることができ、これらは1種のみでなく2種以上であってもよい。これらのうち、(メタ)アクリロイル基及びシンナモイル基が好ましく、特に好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
【0202】
光重合性基を含有する含フッ素共重合体を調製するための具体的な方法としては、下記の方法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
a.水酸基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、(メタ)アクリル酸クロリドを反応させてエステル化する方法、
b.水酸基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリル酸エステルを反応させてウレタン化する方法、
c.エポキシ基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、(メタ)アクリル酸を反応させてエステル化する方法、
d.カルボキシル基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、エポキシ基を含有する含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させてエステル化する方法。
・・・
【0207】
本発明の含フッ素共重合体には、防汚性を付与する目的で、ポリシロキサン構造が導入されていることが好ましい。ポリシロキサン構造の導入方法に制限はないが例えば特開平6-93100号、特開平11-189621号、同11-228631号、特開2000-313709号の各公報に記載のごとく、シリコーンマクロアゾ開始剤を用いてポリシロキサンブロック共重合成分を導入する方法、特開平2-251555号、同2-308806号の各公報に記載のごとくシリコーンマクロマーを用いてポリシロキサングラフト共重合成分を導入する方法が好ましい。特に好ましい化合物としては、特開平11-189621号の実施例1、2、及び3のポリマー、又は特開平2-251555号の共重合体A-2及びA-3を挙げることができる。これらのポリシロキサン成分は含フッ素共重合体中の0.5~10質量%であることが好ましく、特に好ましくは1~5質量%である。
・・・
【0209】
(重合性の不飽和結合を有する化合物)
上記バインダー形成材料としては、上記の含フッ素共重合体と、特開平10-25388号公報及び特開2000-17028号公報に記載のごとく、適宜重合性の不飽和結合を有する化合物とを併用してもよい。また、特開2002-145952号に記載のごとく含フッ素の多官能の重合性の不飽和結合を有する化合物との併用も好ましい。重合性の不飽和結合を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基を有する化合物が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。特に好ましくは下記の1分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を用いることができる。これら化合物は、特にポリマー本体に重合性不飽和基を有する化合物を用いた場合に耐擦傷性、あるいは薬品処理後の耐擦傷性改良に対する併用効果が大きく好ましい。
・・・
【0239】
(多孔質又は中空の微粒子)
低屈折率化を図るために、低屈折率層に多孔質又は中空構造の微粒子を使用することが特に好ましい。これら粒子の空隙率は、好ましくは10~80%、更に好ましくは20~60%、最も好ましくは30~60%である。中空微粒子の空隙率を上述の範囲にすることが、低屈折率化と粒子の耐久性維持の観点で好ましい。
【0240】
多孔質又は中空粒子がシリカの場合には、微粒子の屈折率は、1.10~1.40が好ましく、更に好ましくは1.15~1.35、最も好ましくは1.15~1.30である。ここでの屈折率は粒子全体として屈折率を表し、シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。
・・・
【0242】
多孔質又は中空シリカの塗設量は、1mg/m2~100mg/m2が好ましく、より好ましくは5mg/m2~80mg/m2、更に好ましくは10mg/m2~60mg/m2である。少なすぎると、低屈折率化の効果や耐擦傷性の改良効果が減り、多すぎると、低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化する。
多孔質又は中空シリカの平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、中空シリカの粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上100nm以下、更に好ましくは、40nm以上65nm以下である。
本発明においては、空孔含有微粒子はサイズ分布を有していてもよく、その変動係数は好ましくは60%~5%、更に好ましくは50%~10%である。また、平均粒子サイズの異なる2種又は3種以上の粒子を混合して用いることもできる。
シリカ微粒子の粒径が小さすぎると、空孔部の割合が減り屈折率の低下が見込めず、大きすぎると低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する。シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子が好ましい。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。」
ケ 「【0187】
一方、ハードコート層の表面散乱にて、防眩機能を付与する場合は、表面ヘイズが5%~15%であることが好ましく、5%~10%であることがより好ましい。
また、ハードコート層の内部散乱により液晶パネルの模様や色ムラ、輝度ムラ、ギラツキなどを見難くしたり、散乱により視野角を拡大する機能を付与する場合は、内部ヘイズ値(全ヘイズ値から表面ヘイズ値を引いた値)は10%~90%であることが好ましく、更に好ましくは15%~80%であり、最も好ましくは20%~70%である。
・・・
【0319】
<膜厚ムラ>
実施例で作製した反射防止フィルム101~117について、欠陥評価で用いた評価サンプルを用いて、拡散光源下で観察することにより、膜厚ムラを以下の基準で評価した。
○:非常に注意深く見ても、色ムラが全く見えない。
△:注意深く見ると僅かに色ムラが見える。
×:拡散光源下では明確に色ムラが見え、問題のレベル」
コ 「【0277】
本発明の反射防止フィルム又は偏光板は、各種表示装置の反射防止フィルムとして好適に利用できる。本発明の反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)、電界放出ディスプレイ(FED)、表面電界ディスプレイ(SED)のような様々な画像表示装置において、外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するために使用できる。」

(2)甲1に記載された発明

甲1の上記(1)ア、ウ~クに摘記した事項を参照すると、甲1には、請求項1に係る発明を実施するための形態として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「透明支持体上に、少なくとも一つのハードコート層を有する反射防止フィルムであって、
前記少なくとも一つのハードコート層には、重合開始剤と連鎖移動剤の存在下で、少なくとも、フルオロ脂肪族基を含有するモノマーを重合させて得られた、下記一般式(I)で表されるフルオロ脂肪族基含有ポリマーを含有し、
前記フルオロ脂肪族基含有ポリマーの、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法によりポリスチレン換算で求めた質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5以上1.8未満であり、
前記反射防止フィルムは、層構成が、透明支持体/ハードコート層/低屈折率層であり、
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前記ハードコート層は、重合性基として光重合性官能基を持つモノマーを硬化して形成されるバインダー、質量平均径が10~80nmである無機粒子、透光性粒子として平均粒径が5.0~10.0μmであるプラスチックビーズ、を含み、
前記低屈折率層は、バインダーと微粒子とを含有して形成されており、
前記低屈折率層の前記バインダー形成材料としては、フッ素ビニルモノマーを他の共重合成分としての架橋性官能基が光重合性基であるモノマーと共重合してなる含フッ素共重合体を含み、前記含フッ素共重合体にはポリシロキサン構造が導入されており、
前記低屈折率層の前記微粒子として、多孔質又は中空シリカを含む、
反射防止フィルム。
一般式(I): Z1-(X)a-(Y)100ーa-Z2
一般式(I)において、Xはフルオロ脂肪族基を含有するモノマー単位を表し、Yはフルオロ脂肪族基を含有しないモノマー単位を表す。aはモノマー単位Xの組成比を表し、80以上の数を表す。100-aはモノマー単位Yの組成比を表す。Z1は連鎖移動剤の残基を表し、Z2は重合開始剤の残基を表す。」

(3)甲2の記載

先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された文献である甲2には、以下の記載がある。

ア 「請求の範囲
[1] ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、表面およびポリエステルフィルムとハードコート層の界面に凹凸構造を有するハードコート層が積層され、
該ハードコート層表面の3次元表面粗さパラメータにおいて、
算術平均粗さSaが15nm以上、150nm未満であり、
かつ表面高さ分布のとがりSkuが1.5以上、5以下
であるハードコートフィルム。」

・・・

[11] 請求項1のハードコート層上に屈折率1.45以下の低屈折率層、もしくは屈折率1.55以上の高屈折率層を介して屈折率1.45以下の低屈折率層が形成されてなる反射防止フィルム。

イ 「技術分野
[0001] 本発明は、ハードコートフィルムおよびその製造方法、さらにはこのハードコートフィルムを用いた反射防止フィルムに関する。詳しくはディスプレイ用反射防止フィルムやタッチパネル用フィルムに適合するハードコートフィルムであって、耐擦傷性に優れ、干渉模様が少なく、かつ表層に反射防止加工をした時の反射光の着色ムラが極めて少ない特徴を有し、特にプラズマディスプレイテレビのフィルターに反射防止フィルムとして用いた場合に映り込み防止効果と透過画像鮮明度、画面のぎらつき低減を付与することができる特徴を有する。
背景技術
[0002] 二軸配向ポリエステルフィルムは、その機械特性、寸法安定性、耐熱性、透明性および電気絶縁性などの優れた特性を有することから、磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、各種写真用途、グラフィックアーツ、光学表示材料などの多くの用途に使用されている。しかしながら表面硬度は十分ではなく、他の固い物質との接触、摩擦、引っ掻きなどにより表面に損傷を受けやすいという欠点を有する。これを解決するために従来から各種のハードコート層を積層する方法が適用されている。
続きを表示(全11行)
・・・
[0005] 干渉模様の発生は、上記のような用途に用いた場合、ディスプレイの視認性を著しく阻害する。この現象を改善するために塗膜厚みの精度を向上させたり、ハードコート層の屈折率を高くして基材フィルムとの屈折率差を小さくする検討がなされている(特許文献1)。また基材フィルムの表面を熱プレス法により、エンボス加工して表面に凹凸を付与してその面にハードコート層を設ける方法(特許文献2)、基材フィルムを溶解する溶剤を用いたハードコート層形成塗料を用いて塗布時に基材を溶解もしくは膨潤させる方法(特許文献3)、形状賦型フィルムを転写させる方法(特許文献4)、ハードコート層に粒子を添加して凹凸構造を形成して光を散乱させる方法(特許文献5)などが提案されている。しかしながらハードコート層や接着層の屈折率を通常の二軸配向ポリエステルフィルムの面内屈折率である1.60~1.65程度に合わせるには限界があり、現在の技術では満足なものは得られておらず、干渉模様を完全に消去するには至っていない。またハードコート層の厚みを干渉模様が出ない程度まで均一に塗布するのは極めて困難である。
・・・
[0008] また賦型フィルムの凹凸構造をハードコート層に転写する方法は、賦型フィルムからの異物の混入が懸念されるとともに凹凸構造の傾斜角が大きくなり画面のぎらつきが発生しやすい。ハードコート層中に粒子を添加してハードコート層表面に凹凸構造を形成させる方法では、干渉模様や映り込み防止効果は発現するものの画面のぎらつきが増大して視認性を低下させてしまう問題がある。
・・・
発明が解決しようとする課題
[0009] 本発明のハードコートフィルムおよびそれを用いた反射防止フィルムは上記の問題を解消し、干渉模様や表面反射光の着色ムラが低減され、更にプラズマディスプレイテレビの前面フィルターに用いた場合、画像が鮮明で、画面のぎらつきが少なく、映り込み防止効果を付与することにある。」
ウ 「課題を解決するための手段
[0010] かかる目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、本発明は、以下の構成を有する。すなわち、
(1)ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、表面およびポリエステルフィルムとハードコート層の界面に凹凸構造を有するハードコート層が積層され、
該ハードコート層表面の3次元表面粗さパラメータにおいて、
算術平均粗さSaが15nm以上、150nm未満であり、
かつ表面高さ分布のとがりSkuが1.5以上、5以下
であるハードコートフィルム、
・・・
発明の効果
[0011] 本発明のハードコートフィルムおよび反射防止フィルムは、上記の構成とすることにより、干渉模様が低減され、かつ反射防止加工後の表面反射光の着色ムラが低減されるので、ディスプレイ用途などに適用した場合、視認性の優れたものとなり、更にプラズマディスプレイの前面フィルターに用いた場合には映り込み防止効果を有し視認性が優れ、かつ画像が鮮明で、画面のぎらつきを防止できるという特徴を有する。」

エ 「[0023] また本発明のハードコートフィルムは全光線透過率が90%以上好ましくは92%以上、更に好ましくは94%以上であるのが良い。全光線透過率が90%に満たない場合には反射防止フィルムとした時に画像の鮮明度が阻害される場合がある。」

オ 「[0024] 本発明のハードコートフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に表面に凹凸構造を有するハードコート層が積層され、該ハードコート表面の3次元表面粗さパラメータにおいて、算術平均粗さSaが15nm以上、150nm未満であり、かつ表面高さ分布のとがりSkuが1.5以上、5以下であることを特徴とするものである。
[0025] ここでハードコート表面の3次元表面粗さは、ハードコート表面を表面形状測定装置SP-500あるいはSP-700(東レエンジニアリング株式会社製、界面形状と表面形状を非破壊で同時に測定できる装置)にて、5倍対物レンズ、測定モードWSIで測定した時に得られるハードコード表面の3次元表面形状から求めるものである。また、本発明で規定するハードコート表面の3次元表面粗さパラメータの算術平均粗さSaと表面高さ分布のとがりSkuとは、SP-500あるいはSP-700により測定された3次元表面形状をナノスケール3D画像処理ソフトウェアSPIPTM(Image Metrology A/S社製)を用いて解析して得られる値である。
[0026] 具体的に説明すると算術平均粗さSaとは、二次元のRaを三次元に拡張したもので、表面形状曲面と平均面で囲まれた部分の体積を測定面積で割ったものであり、以下の式から求められる。表面をXY面,高さ方向をZ軸とし、測定された表面形状曲線において、k番目のxの値、l番目のyの値における高さをz(xk、yl)とすると、
[0027][数1]
続きを表示(全17行)
[図:0001393144000001.jpg]
[0028] である。またμとは以下の式から求められる平均面のことである。
[0029][数2]
[図:0001393144000002.jpg]
[0030] さらに、表面高さ分布のとがりSkuとは、表面形状曲面の鋭さの尺度で,表面高さ分布の広がりを特徴づけるもので、次式で定義される。
[0031][数3]
[図:0001393144000003.jpg]
[0032] また、Sqとは二次元のRq(RMS)を三次元に拡張したものであり、これは統計学で標準偏差σを表している。表面形状曲面と平均面との距離を二乗した曲面と,平均面によりはさまれる部分の体積を測定面積で割った後に平方根を求めた二乗平均平方根偏差であり、以下の式から求める。
[0033][数4]
[図:0001393144000004.jpg]
[0034] なお、Sku=3の時が正規分布であることを表し,この数値が小さくなるに従って表面高さ分布がなだらかな形状をしており,数値が大きくなるに従って突起がシャープであることを表す。
[0035] 本発明では、ハードコート層表面の3次元表面粗さパラメータの、算術平均粗さSaが15nm以上、150nm未満、好ましくはSaが20nm以上、100nm以下、更に好ましくは30nm以上、85nm以下であって、かつ表面高さ分布のとがりSkuが1.5以上、5以下、好ましくは1.5以上3以下、更に好ましくは1.5以上2.5以下である。Saが15nm未満ではハードコート層表面が平滑すぎるために、反射防止加工後の表面反射光に色むらが発生したり、蛍光灯などの外光の映り込みが増大し、外観不良や視認性が低下する。また、Saが150nm以上の場合は、ハードコート表面の反射光が散乱される事により、蛍光灯などの外光の映り込み低減効果は得られるが、白濁したり、透過像が大きく散乱されるために鮮明性が低下する。また画面のぎらつきが目立つようになる。
[0036] ここで、Skuは1未満となることは原理的にない。また、5より大きいと、鋭い突起がまばらに存在した表面となるため、反射防止加工後の反射光において目視可能な色ムラや画面のぎらつきが発生し、外観不良となる。Skuが1.5未満の場合は突起形状がなだらかになり、外光や蛍光灯の映り込みが大きくなる傾向となる。」

カ 「[0076] このようにして得られた表面形状は実質的に基材フィルムおよびハードコート層の凹凸構造が粒子に起因して形成されたものではないために、粒子による光散乱が無く、画面のぎらつきが殆ど無いものとすることができるのである。また界面が凸、その直上のハードコート層が凹の関係にある場合には、画像の鮮明性を損なわずに外光の映り込み、特に正面からの映り込みの低減効果が大きく、画面のぎらつきも無いものとすることができ、逆に界面が凸、その直上のハードコート層表面が凸の関係にある場合には、Saのアップ効果との相乗効果もあって、蛍光灯などの強い外光の映り込みの低減効果に優れたものとすることができると共に、十分なリラックスが行われることでその150℃30分の熱収縮率を0.8%以下に低下させることができるので、その後の反射防止加工工程などでの加熱による寸法安定性が向上するので特に好ましい。」

キ 「[0150][表1]

[図:0001393144000005.jpg]

2 本件特許発明1について

(1)対比

本件特許発明1と甲1発明を対比すると、以下のとおりである。

ア 甲1発明の「ハードコート層」、「低屈折率層」、「反射防止フィルム」は、それぞれ、本件特許発明1の「ハードコーティング層」、「低屈折層」、「反射防止フィルム」に相当する。

イ 甲1発明のハードコート層における、「重合性基として光重合性官能基を持つモノマーを硬化して形成されるバインダー」、「質量平均径が10~80nmである無機粒子」、「透光性粒子として平均粒径が5.0~10.0μmであるプラスチックビーズ」は、それぞれ、本件特許発明1のハードコーティング層における、「光重合性化合物の(共)重合体を含むバインダー樹脂」、「1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子」、「「前記バインダー樹脂に分散した0.5~10μmの直径を有する有機または無機微粒子」に相当する。

ウ 甲1発明の低屈折率層の「バインダー」は、該バインダー形成材料における「含フッ素共重合体」が、「他の共重合成分としての架橋性官能基が光重合性基であるモノマー」と「フッ素ビニルモノマー」とを共重合してなるものであるから、本件特許発明1の「バインダー樹脂」に相当し、「光重合性化合物;光反応性作用基を含むフッ素系化合物;間の架橋重合体を含むバインダー樹脂」である点で一致する。

エ 甲1発明のバインダー形成材料における「含フッ素共重合体」は、「ポリシロキサン構造が導入されて」いるものであるから、本件特許発明1の「前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物は、ケイ素またはケイ素化合物を含み」との特定事項を備える。

オ 甲1発明の低屈折率層の「多孔質又は中空シリカ」は、本件特許発明1の低屈折層の「前記バインダー樹脂に分散した無機微細粒子」に相当する。

(2)一致点

上記(1)を踏まえると、本件特許発明1と甲1発明は、次の点で一致する。

「ハードコーティング層;および前記ハードコーティング層に形成された低屈折層;を含み、
前記ハードコーティング層は、光重合性化合物の(共)重合体を含むバインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散した0.5~10μmの直径を有する有機または無機微粒子;および1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子;を含み、
前記低屈折層は、光重合性化合物;光反応性作用基を含むフッ素系化合物;間の架橋重合体を含むバインダー樹脂と前記バインダー樹脂に分散した無機微細粒子を含み、
前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物は、ケイ素またはケイ素化合物を含む、
反射防止フィルム。」

(3)相違点

他方、本件特許発明1と甲1発明は、以下の点で相違する。

ア 相違点1

「1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子」が、本件特許発明1は、「表面に反応性作用基が置換されていない」ものであるのに対して、甲1発明は、そのようなものに特定されていない点。

イ 相違点2

本件特許発明1では、「前記低屈折層の表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)が3.5超過6未満であり、スウェディッシュ高さ(H)が20nm超過200nm未満であ」るのに対して、甲1発明の低屈折率層はそのようなものに特定されていない点。

ウ 相違点3

本件特許発明1は、低屈折層のバインダー樹脂である架橋重合体が、「反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane)」をも含むものであるのに対して、甲1発明の低屈折率層のバインダーの形成材料は、そのような成分を含むものではない点。

エ 相違点4

本件特許発明1の反射防止フィルムは「380nm~780nm波長領域での透光度が94%以上である」のに対して、甲1発明の反射防止フィルムの同波長領域での透光度は不明である点。

(4)判断

事案に鑑み、相違点2に係る構成の容易想到性について検討する。

ア 本件特許発明1は、ハードコーティング層および前記ハードコーティング層に形成された低屈折層を含む反射防止フィルムにおいて、ハードコーティング層の一面に凹凸構造が形成されたフィルムは、反射防止効果が優れているが、イメージの鮮明性や解像度が低下する問題をもたらすという従来技術の有する課題に鑑み(【0020】)、フィルムの外部表面での反射防止効果とイメージの鮮明性を同時に実現できる最適の表面凹凸構造を導き出すべくなされたものであって、その表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)及およびスウェディッシュ高さ(H)の組み合わせを決定したことに技術的意義を有するものである(【0021】)。

これに対し、甲1発明は、本件特許発明1と同様、透明支持体上に、少なくとも一つのハードコート層を有する反射防止フィルムに係る発明であるものの、ハードコード層は一般的に厚い膜を形成しており、高い物理強度と高い面状均一性の両立が求められることから(甲1の【0004】)、よりレベリング性に優れ、欠陥耐性が強く、耐擦傷性などの物理強度を有し、かつムラの視認性が小さいハードコート層を有する反射防止フィルムを提供することを目的とするものである(【0011】)。そして、甲1の【0242】には、多孔質又は中空シリカの塗設量が少なすぎると、低屈折率化の効果や耐擦傷性の改良効果が減り、多すぎると、低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化する旨、低屈折率表面に微細な凹凸ができることが、むしろ望ましくないものとして説明されている。

確かに、甲2には、上記1(3)オ[0035]、[0036]に摘記したとおり、表面反射光の色むら、外光の映り込み、外観不良や視認性、鮮明性、目視可能な色ムラや画面のぎらつきといった観点から、「算術平均粗さSaが15nm以上、150nm未満」であり、かつ「表面高さ分布のとがりSkuが1.5以上、5以下である」ものとする技術が記載されている。しかしながら、甲2の[0035]に、「Saが15nm未満ではハードコート層表面が平滑すぎるために、反射防止加工後の表面反射光に色むらが発生したり、蛍光灯などの外光の映り込みが増大し、外観不良や視認性が低下する。また、Saが150nm以上の場合は、ハードコート表面の反射光が散乱される事により、蛍光灯などの外光の映り込み低減効果は得られるが、白濁したり、透過像が大きく散乱されるために鮮明性が低下する。また画面のぎらつきが目立つようになる。」と記載されるように、甲2に記載の技術は、あくまで、ハードコート層上に低屈折率層を備えた反射防止フィルムの表面構造に凹凸を形成しようとするものである。

そうすると、甲1発明と甲2に記載の技術は、反射防止フィルムの表面構造につき、前者は面状均一性を有するものとし、後者は凹凸構造を備えるものとする点で、技術思想を明らかに異にするものであるから、甲1発明に、甲2に記載の技術を採用する動機付けはないといえる。

イ 加えて、甲2に記載の技術は、アに示したとおり、「ハードコート層中に粒子を添加してハードコート層表面に凹凸構造を形成させる方法では、干渉模様や映り込み防止効果は発現するものの画面のぎらつきが増大して視認性を低下させてしまう問題がある」(上記1(3)イ[0008])という従来技術の有する課題を、「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、表面およびポリエステルフィルムとハードコート層の界面に凹凸構造を有するハードコート層が積層され」(上記1(3)ア[1])た構造とすることにより解決したものであるところ、当該凹凸構造を、「得られた表面形状は実質的に基材フィルムおよびハードコート層の凹凸構造が粒子に起因して形成されたものではない」(上記1(3)カ[0076])と記載されるとおり、粒子によらずに形成するものであることから、なおのこと、防眩性や内部散乱性を付与するためにハードコート層に透光性粒子を含むことを前提とする甲1発明において、粒子によらずに凹凸を形成する甲2の表面形状に関する事項を結びつけようとする動機付けはないといえる。

ウ 仮に、甲1発明の「反射防止フィルム」のハードコート層に代えて、甲2に記載される「算術平均粗さSaが15nm以上、150nm未満」であり、かつ「表面高さ分布のとがりSkuが1.5以上、5以下である」ハードコート層を採用したとしても、甲2に開示される凹凸形状はハードコート層の表面形状であるところ、その上に形成される低屈折率層は、所定の厚みを有するものであるから、その表面形状がハードコート層の有するSa及びSkuと同一の値となることは考えにくい。したがって、甲1発明に甲2の技術を適用したとしても、本件特許発明1の特定事項である低屈折層の表面凹凸形状の「粗さ尖度(Rku)」及び「スウェディシュ高さ(H)」の範囲を満たすものに直ちに至ることはない。

また、「表面高さ分布のとがりSku」の範囲についても、「1.5以上、5以下、好ましくは1.5以上3以下、更に好ましくは1.5以上2.5以下である」(上記1(3)オ[0035])と記載されているうえ、その実施例においてもSkuが3.5を超える例はない(上記1(3)キの表1)ことから、甲2の記載に接した当業者が、その技術的事項を甲1発明に適用した際に、本件特許発明1のように「粗さ尖度(Rku)が3.5超過6未満」としようとすることに容易に想到するとはいえない。

エ 以上のとおりであるから、甲1発明において、甲2に記載された事項に接した当業者が、相違点2に係る構成に容易に想到し得たということはできない。

以上の点は、甲3~甲5に記載の技術的事項を参照しても同様であるから、上記相違点2に係る構成は、甲1発明及び甲2~甲5に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たということはできない。

オ 効果について

本件特許発明1は、上記構成を採用することにより、「高解像度ディスプレイに適用の際、スパークリング現象が少なく視認性に優れ、ディスプレイ製作時に作業性に優れた反射防止フィルムと優れた外部ブラック視感および明暗比などの光特性および高い画面の鮮明度を提供するディスプレイ装置が提供され得る。」、「前記反射防止フィルムは、高解像度ディスプレイに適用されてパネル不良隠蔽力が高く、反射防止性能と視認性に優れた特性を提供することができる。特に、パネル内部の反射率の高いCOTパネルに適用して反射防止性能を発現することができる。」、という本件特許明細書【0145】及び【0146】に示される格別な効果を奏するものである。

(5)申立人の主張について

申立人は、「防眩性を付与したり、画像の鮮明性を良好にしたり、ギラツキを抑制したり、色ムラを抑制したりするため、甲1発明のハードコート層の表面形状を、算術平均粗さSaが15nm以上150nm未満、Skuが1.5以上5以下となるように調整することは、甲第2号証の上記記載を参酌して、当業者が適宜なし得ることである。」(特許異議申立書第44頁)と主張する。

しかし、上記(4)イのとおりであって、甲1発明において甲2の記載を参酌してハードコート層の表面形状を調整することは、当業者が適宜なし得ることとはいえない。

したがって、申立人の上記主張は採用できない。

(6)小括

したがって、相違点1,3,4について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、甲2に記載された技術的事項、申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

3 本件特許発明2~20について

本件特許の特許請求の範囲の請求項2~20は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明2~20は、本件特許発明1の特定事項を全て具備するものである。

そうしてみると、前記2(6)と同様に、本件特許発明2~20も、甲1に記載された発明、甲2に記載された技術的事項、申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

4 小結

以上によれば,申立理由2(進歩性)によって,本件特許発明1ないし20に係る特許を取り消すことはできない。

第5 申立理由2(明確性要件)

1 申立人の主張

申立人は、本件特許の請求項1に記載された「前記低屈折層の表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)が3.5超過6未満であり、スウェディッシュ高さ(H)が20nm超過200nm未満であ」ることを特定しているところ、本件明細書には、カットオフフィルターの値及び解像度の値が記載されていないため、本件特許発明1の「粗さ尖度(Rku)」及び「スウェディッシュ高さ(H)」は変動要因を有しており、本件明細書の記載からは、本件特許発明1の構成要件である、「粗さ尖度(Rku)」及び「スウェディッシュ高さ(H)」の範囲を確定させることができないから、本件特許発明1ないし20は発明の範囲が不明確であると主張する。

2 判断

明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである。

本件特許発明1は、ハードコーティング層;および前記ハードコーティング層に形成された低屈折層を含む反射防止フィルムに係る物の発明であって、このうち低屈折率層につき、「表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)が3.5超過6未満であり、スウェディッシュ高さ(H)が20nm超過200nm未満」であり、「光重合性化合物;光反応性作用基を含むフッ素系化合物;および反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane);間の架橋重合体を含むバインダー樹脂と前記バインダー樹脂に分散した無機微細粒子」を含むことを発明特定事項して含むものである。

そして、低屈折層の表面凹凸形状につき、発明の詳細な説明には、粗さ尖度(Rku)の定義が【0027】~【0031】に、スウェディッシュ高さの定義が【0034】~【0036】にそれぞれなされたうえで、具体的に、「3.反射防止フィルムの粗さ尖度(Rku)およびスウェディッシュ高さ(H)の測定表面凹凸の粗さ尖度およびスウェディッシュ高さは、白色光3次元光学干渉プロファイラー(3D optical profiler、モデル名:NewView7300、Zygo社製)装備を利用して測定する。この時、使用するレンズ倍率は10倍、0.5倍ズーム測定条件にして1.40×1.05mm2領域を測定した。」こと(【0162】)、「製造された反射防止フィルムをサンプルステージに平らな状態にのせて、opticalprofilerイメージを得た後、分析を進行した。分析以降、前記一般式1による粗さ尖度およびスウェディッシュ高さを計算した。」こと(【0163】)が説明されている。

そして、一般に、物品の表面形状の測定において、カットオフフィルターの値は任意に設定されるものではなく、適切な解像度による測定対象を決定し、測定対象の形状(粗さ等)に応じて、値が適切に測定できるようにカットオフフィルターの値を定めることは当業者の技術常識である。

してみると、本件明細書の発明の詳細な説明にカットオフフィルターの値が具体的に記載されていないにせよ、「粗さ尖度(Rku)」及び「スウェディッシュ高さ(H)」を測定する際のカットオフフィルターの値を含む測定方法は、発明の詳細な説明の記載、及び本件特許の出願当時の技術常識によって明らかである。

よって、本件特許発明1において特定される「粗さ尖度(Rku)」及び「スウェディッシュ高さ(H)」値が一義的に定まらないということはなく、上記発明特定事項の「前記低屈折層の表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)が3.5超過6未満であり、スウェディッシュ高さ(H)が20nm超過200nm未満であ」るとの範囲は、当業者にとって明確である。

以上によれば、本件特許発明に係る特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2項の「特許を受けようとする発明が明確であること。」との要件を充足する。

したがって,申立理由2(明確性要件違反)によって,本件特許発明1ないし20に係る特許を取り消すことはできない。

第6 申立理由3(新規事項追加)

1 申立人の主張

申立人は、令和3年10月5日付け提出の手続補正書でした補正により、請求項1に追加された事項である、「1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子」についての「表面に反応性作用基が置換されていない」との限定事項について、出願当初明細書等に記載した事項の範囲を超えるものであり、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明2~20は、特許法第17条の2第3項の要件を満たしていないと主張する。

2 判断

(1)当初明細書等に記載された事項

本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。

ア 「【請求項8】
前記ハードコーティング層は、前記有機または無機微粒子および無機ナノ粒子の総重量を基準にして1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子3~10重量%をさらに含む、請求項6に記載の反射防止フィルム。」
イ 「【0063】
一方、前記ハードコーティング層は、1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子をさらに含むことができる。前記無機ナノ粒子の表面には所定の作用基や化合物が結合される。前記無機ナノ粒子は、有機または無機微粒子の表面に存在するかあるいは単独で存在することがあり、ハードコーティング層の表面凹凸の形状をスムースに調整でき、コーティング層の機械的な特性も向上させることができる。前記無機ナノ粒子の具体的な種類としては、酸化ケイ素(シリカ)、アルミナ、チタニアなどを使用することができる。」
ウ 「【0077】
一方、前記低屈折層は、光重合性化合物;無機微細粒子;および反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane);光反応性作用基を含むフッ素系化合物;および光重合開始剤;を含む、低屈折層の製造のための光硬化性コーティング組成物から形成されることができる。・・・」
エ 「【0087】
一方、前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンは、上述した反応性作用基以外に炭素数1~30の直鎖または分枝鎖のアルキル基、炭素数6~30のシクロアルキル基および炭素数6~30のアリール基からなる群より選択された1種以上の非反応性作用基を1つ以上さらに含むことができる。このように前記ポリシルセスキオキサンに反応性作用基と非反応性作用基が表面に置換されることによって、前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンでシロキサン結合(-Si-O-)が分子内部に位置しながら外部に露出しないようになり、前記光硬化性コーティング組成物の光硬化時に形成される塗膜やバインダー樹脂の耐アルカリ性をより高めることができる・・・
・・・
【0090】
また、より好ましくは、前記作用基が1つ以上置換され、ケージ(cage)構造を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサンは、分子中にシリコン8~20個を含むことができる。」
オ 「【0096】
一方、前記一実施形態の光硬化性を有するコーティング組成物は、光反応性作用基を含むフッ素系化合物を含むことができる。前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物が含まれることによって、前記光硬化性を有するコーティング組成物から製造される低屈折層および反射防止フィルムは、より低い反射率および向上した透光率を有することができ、かつ耐アルカリ性および耐スクラッチ性をより高めることができる。
【0097】
前記フッ素系化合物には1つ以上の光反応性作用基を含みまたは置換することができ、前記光反応性作用基は光の照射によって、例えば可視光線または紫外線の照射によって重合反応に参加できる作用基を意味する。前記光反応性作用基は、光の照射によって重合反応に参加できる公知の多様な作用基を含むことができ、その具体的な例としては、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、ビニル(Vinyl)基またはチオール(Thiol)基が挙げられる。」

(2)補正についての当審の判断

上記(1)ア及びイのとおり、当初明細書等において、ハードコーティング層に含まれる「無機ナノ粒子」は付加的(任意)の成分であって、その無機ナノ粒子の表面に所定の「作用基」が結合されてもよいことが記載されていたと認められる。

また、当初明細書等において、他の構成要素に関する上記(1)ウ~オに摘記した事項によれば、「作用基」との用語は、「反応性作用基」と「非反応性作用基」とを含む上位概念として使用されている。

以上によれば、当初明細書等の記載に接した当業者であれば、「無機ナノ粒子」に関して、その表面に、反応性作用基が結合されている態様及び非反応性作用基が結合されている態様、並びに作用基が結合されていない態様があり得るものと把握できる。

してみると、「無機ナノ粒子」について、「表面に反応性作用基が置換されていない」との記載は、当初明細書等に記載されていたものと把握される複数の態様から一態様を除いたものに限定する補正であるといえるから、当初明細書等に記載されていた範囲内の事項であり、新たな技術的事項を導入するものではない。

すなわち、上記補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

3 小結

以上のとおりであるから、申立人が指摘する上記補正は、当初明細書等に記載された範囲内のものであり、新規事項を追加するものではないから、申立理由3には、理由がない。

第7 むすび

請求項1~20に係る特許は、いずれも、特許異議の申立ての理由及び証拠によって取り消すことはできない。また、他に請求項1~20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2022-701026

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