特許異議申立
2022-700951
燃焼制御システム、燃焼制御方法、情報処理装置、プログラムおよび記録媒体
- 審判番号
- 2022-700951
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-066639
- 登録番号
- 7044822
- 請求日
- 2022年09月29日
- 審決日
- 2023年05月12日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社タクマ
- 【権利者代理人】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
- 【異議申立人】成瀬 裕司
- 審判長/審判官
- 審判長 平城 俊雅
- 審判官 間中 耕治
- 審判官 西村 泰英
- 分類
- P1651.536-YAA(F23N) / P1651.537-YAA(F23N) / P1651.121-YAA(F23N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7044822号発明「燃焼制御システム、燃焼制御方法、情報処理装置、プログラムおよび記録媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7044822号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、〔7-13〕について訂正することを認める。
特許第7044822号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7044822号の請求項1~13に係る特許についての出願は、令和2年4月2日(優先権主張 令和元年9月9日)の出願であって、令和4年3月22日にその特許権の設定登録がされ、同年3月30日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年9月29日 :特許異議申立人成瀬裕司(以下、「申立人」という。)による請求項1~13に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年11月30日付け:取消理由通知
令和5年1月27日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求(以下、この訂正請求を「本件訂正請求」といい、この訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)
なお、申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、申立人からの応答はなかった。
第2 本件訂正の適否
1.本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)一群の請求項1~6について
ア 訂正事項1
請求項1の
「少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する異常予測プログラム、および/または、少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラム」
とあるのを
「少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する燃焼異常予測プログラム、および、少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラム」
に訂正する。
請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項3~6も同様に訂正する。
イ 訂正事項2
請求項1の
「前記燃焼異常予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測する、および/または、異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する異常予測部と」
とあるのを
「前記燃焼異常予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測する、および、異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する異常予測部と」
に訂正する。
請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項3~6も同様に訂正する。
ウ 訂正事項3
請求項1の
「前記燃焼異常予測装置の異常予測部によって、予測された燃焼炉に関する状態量が異常か否かの予測結果、および/または、予測された異常を回避するための手段に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する燃焼制御部と」
とあるのを
「前記燃焼異常予測装置の異常予測部によって、予測された燃焼炉に関する状態量が異常か否かの予測結果、および、予測された異常を回避するための手段に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する燃焼制御部と」
に訂正する。
請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項3~6も同様に訂正する。
エ 訂正事項4
請求項1の
「異常予測および/または異常を回避するための手段をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードと、
異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モードと、
異常を回避するための手段の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モードとの内1つ以上の運転モードを有し、
いずれかの運転モードが選択可能に構成されており、」
とあるのを
「異常予測および異常を回避するための手段をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードと、異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モードと、異常を回避するための手段の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モードとの内からいずれかの運転モードが選択可能に構成されており」
に訂正する
請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項3~6も同様に訂正する。
オ 訂正事項5
請求項2の
「少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する異常予測プログラム、および/または、少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラム」
とあるのを
「少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する燃焼異常予測プログラム、および、少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラム」
に訂正する。
請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3~6も同様に訂正する。
カ 訂正事項6
請求項2の
「前記燃焼異常予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測する、および/または、異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する異常予測部と」
とあるのを
「前記燃焼異常予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測する、および、異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する異常予測部と」
に訂正する。
請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3~6も同様に訂正する。
キ 訂正事項7
請求項2の
「前記燃焼異常予測装置の異常予測部によって、予測された燃焼炉に関する状態量が異常か否かの予測結果および/または、予測された異常を回避するための手段に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する燃焼制御部と」
とあるのを
「前記燃焼異常予測装置の異常予測部によって、予測された燃焼炉に関する状態量が異常か否かの予測結果および予測された異常を回避するための手段に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する燃焼制御部と」
に訂正する。
請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3~6も同様に訂正する。
ク 訂正事項8
請求項2の
「異常予測および/または異常を回避するための手段をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードと、
異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モードと、
異常を回避するための手段の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モードとの内1つ以上の運転モードを有し、
いずれかの運転モードが選択可能に構成されており、」
とあるのを
「異常予測および異常を回避するための手段をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードと、異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モードと、異常を回避するための手段の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モードとの内からいずれかの運転モードが選択可能に構成されており」
に訂正する
請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3~6も同様に訂正する。
ケ 一群の請求項について
訂正事項1~4に係る訂正前の請求項1、3~6について、請求項3~6は、それぞれ直接的又は間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正事項1~4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1、3~6に対応する訂正後の請求項〔1、3-6〕は、一群の請求項である。
訂正事項5~8に係る訂正前の請求項2~6について、請求項3~6は、それぞれ直接的又は間接的に請求項2を引用しているものであって、訂正事項5~8によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項2~6に対応する訂正後の請求項〔2-6〕は、一群の請求項である。
そして、上記2つの一群の請求項は、請求項3~6が共通するから、2つの一群の請求項を組み合わせた訂正後の請求項〔1-6〕は、一群の請求項である。
(2)一群の請求項7~13について
ア 訂正事項9
請求項7の
「少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する異常予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測する、および/または、
少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する、異常予測ステップと、」
とあるのを
「少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する燃焼異常予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測する、および、少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する、異常予測ステップと、」
に訂正する。
請求項7を直接的又は間接的に引用する請求項8~13も同様に訂正する。
イ 訂正事項10
請求項7の
「異常予測および/または異常を回避するための手段をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードと、異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モードと、異常を回避するための手段の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モードとの内1つ以上の運転モードを有し、いずれかの運転モードが選択可能に構成されており、選択された運転モードに従って、燃焼炉の燃焼を制御するステップ」
とあるのを
「異常予測および異常を回避するための手段をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードと、異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モードと、異常を回避するための手段の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モードとの内からいずれかの運転モードが選択可能に構成されており、選択された運転モードに従って、燃焼炉の燃焼を制御するステップ」
に訂正する。
請求項7を直接的又は間接的に引用する請求項8~13も同様に訂正する。
ウ 一群の請求項について
訂正事項9~10に係る訂正前の請求項7~13について、請求項8~13は、それぞれ直接的又は間接的に請求項7を引用しているものであって、訂正事項9~10によって記載が訂正される請求項7に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項7~13に対応する訂正後の請求項〔7-13〕は、一群の請求項である。
2.訂正の適否についての判断
(1)一群の請求項1~6について
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、請求項1中における「燃焼異常を予測する異常予測プログラム」と「燃焼異常予測プログラム」とについて表記の整合をとるとともに、「および/または」を「および」のみとして選択肢を3種類から1種類に限定するものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
「燃焼異常を予測する異常予測プログラム」が「燃焼異常予測プログラム」であることは、願書に添付した特許請求の範囲の【請求項1】から明らかであるとともに、明細書の段落【0027】~【0029】、【0031】~【0033】、【0035】、【0037】にも記載されているから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項を追加するものではない。
また、「および/または」を「および」のみとすることは、選択肢を3種類から1種類に限定するものであるから、やはり新規事項を追加するものではないことが明らかである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
「燃焼異常を予測する異常予測プログラム」を「燃焼異常予測プログラム」とすることは、上記のとおり、両者の技術的意味が同じであることから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
また、「および/または」を「および」のみとすることは、特許請求の範囲の記載を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
イ 訂正事項2
訂正事項2は、請求項1中における「および/または」を「および」のみとして選択肢を3種類から1種類に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「および/または」を「および」のみとすることは、選択肢を3種類から1種類に限定するものであるから、新規事項を追加するものではないこと、特許請求の範囲の記載を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
ウ 訂正事項3
訂正事項3は、請求項1中における「および/または」を「および」のみとして選択肢を3種類から1種類に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「および/または」を「および」のみとすることは、選択肢を3種類から1種類に限定するものであるから、新規事項を追加するものではないこと、特許請求の範囲の記載を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
エ 訂正事項4
(ア)訂正の目的
訂正事項4は、請求項1中における「および/または」を「および」のみとして選択肢を3種類から1種類に限定するとともに、3つの運転モードに関して「1つ以上の運転モードを有し」と選択的事項とした上で「いずれかの運転モードが選択可能に構成され」ることを、3つの運転モードの「内からいずれかの運転モードが選択可能に構成され」ることに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
「および/または」を「および」のみとすること、3つの運転モードについて選択的事項であったものと3つの運転モードの「内からいずれかの運転モードが選択可能に構成され」ることに限定することは、いずれも選択的事項を1つに限定するものであるから、新規事項を追加するものではないことが明らかである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
「および/または」を「および」のみとすること、3つの運転モードについて選択的事項であったものと3つの運転モードの「内からいずれかの運転モードが選択可能に構成され」ることに限定することは、いずれも選択的事項を1つに限定するものであるから、特許請求の範囲の記載を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
オ 訂正事項5
(ア)訂正の目的
訂正事項5は、請求項2中における「燃焼異常を予測する異常予測プログラム」と「燃焼異常予測プログラム」とについて表記の整合をとるとともに、「および/または」を「および」のみとして選択肢を3種類から1種類に限定するものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
「燃焼異常を予測する異常予測プログラム」が「燃焼異常予測プログラム」であることは、願書に添付した特許請求の範囲の【請求項1】から明らかであるとともに、明細書の段落【0027】~【0029】、【0031】~【0033】、【0035】、【0037】にも記載されているから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項を追加するものではない。
また、「および/または」を「および」のみとすることは、選択肢を3種類から1種類に限定するものであるから、やはり新規事項を追加するものではないことが明らかである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
「燃焼異常を予測する異常予測プログラム」を「燃焼異常予測プログラム」とすることは、上記のとおり、両者の技術的意味が同じであることから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
また「および/または」を「および」のみとすることは、特許請求の範囲の記載を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
カ 訂正事項6
訂正事項6は、請求項2中における「および/または」を「および」のみとして選択肢を3種類から1種類に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「および/または」を「および」のみとすることは、選択肢を3種類から1種類に限定するものであるから、新規事項を追加するものではないこと、特許請求の範囲の記載を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
キ 訂正事項7
訂正事項7は、請求項2中における「および/または」を「および」のみとして選択肢を3種類から1種類に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「および/または」を「および」のみとすることは、選択肢を3種類から1種類に限定するものであるから、新規事項を追加するものではないこと、特許請求の範囲の記載を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
ク 訂正事項8
(ア)訂正の目的
訂正事項8は、請求項2中における「および/または」を「および」のみとして選択肢を3種類から1種類に限定するとともに、3つの運転モードに関して「1つ以上の運転モードを有し」と選択的事項とした上で「いずれかの運転モードが選択可能に構成され」ることを、3つの運転モードの「内からいずれかの運転モードが選択可能に構成され」ることに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
「および/または」を「および」のみとすること、3つの運転モードについて選択的事項であったものと3つの運転モードの「内からいずれかの運転モードが選択可能に構成され」ることに限定することは、いずれも選択的事項を1つに限定するものであるから、新規事項を追加するものではないことが明らかである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
「および/または」を「および」のみとすること、3つの運転モードについて選択的事項であったものと3つの運転モードの「内からいずれかの運転モードが選択可能に構成され」ることに限定することは、いずれも選択的事項を1つに限定するものであるから、特許請求の範囲の記載を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
(2)一群の請求項7~13について
ア 訂正事項9
(ア)訂正の目的
訂正事項9は、請求項7中における「燃焼異常を予測する異常予測プログラム」と「燃焼異常予測プログラム」とについて表記の整合をとるとともに、「および/または」を「および」のみとして選択肢を3種類から1種類に限定するものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
「燃焼異常を予測する異常予測プログラム」が「燃焼異常予測プログラム」であることは、願書に添付した特許請求の範囲の【請求項1】から明らかであるとともに、明細書の段落【0027】~【0029】、【0031】~【0033】、【0035】、【0037】にも記載されているから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項を追加するものではない。
また、「および/または」を「および」のみとすることは、選択肢を3種類から1種類に限定するものであるから、やはり新規事項を追加するものではないことが明らかである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
「燃焼異常を予測する異常予測プログラム」を「燃焼異常予測プログラム」とすることは、上記のとおり、両者の技術的意味が同じであることから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
また「および/または」を「および」のみとすることは、特許請求の範囲の記載を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
イ 訂正事項10
(ア)訂正の目的
訂正事項10は、請求項7中における「および/または」を「および」のみとして選択肢を3種類から1種類に限定するとともに、3つの運転モードに関して「1つ以上の運転モードを有し」と選択的事項とした上で「いずれかの運転モードが選択可能に構成され」ることを、3つの運転モードの「内からいずれかの運転モードが選択可能に構成され」ることに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
「および/または」を「および」のみとすること、3つの運転モードについて選択的事項であったものと3つの運転モードの「内からいずれかの運転モードが選択可能に構成され」ることに限定することは、いずれも選択的事項を1つに限定するものであるから、新規事項を追加するものではないことが明らかである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
「および/または」を「および」のみとすること、3つの運転モードについて選択的事項であったものと3つの運転モードの「内からいずれかの運転モードが選択可能に構成され」ることに限定することは、いずれも選択的事項を1つに限定するものであるから、特許請求の範囲の記載を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
3.本件訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1~10は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第3号に掲げられた事項を目的とするものであり、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、〔7-13〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~13に係る発明(以下、各々「本件発明1」~「本件発明13」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する燃焼異常予測プログラム、および、少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラム、を記憶する第一記憶部と、
前記燃焼異常予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測する、および、異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する異常予測部と、
前記異常予測部で予測された結果を出力する予測結果出力部と、を有する、燃焼異常予測装置と、
前記燃焼異常予測装置の異常予測部によって、予測された燃焼炉に関する状態量が異常か否かの予測結果、および、予測された異常を回避するための手段に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する燃焼制御部と、を有し、
異常予測および異常を回避するための手段をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードと、異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モードと、異常を回避するための手段の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モードとの内からいずれかの運転モードが選択可能に構成されており、選択された運転モードに従って、前記燃焼制御部が燃焼炉の燃焼を制御する、燃焼制御システム。
【請求項2】
少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する燃焼異常予測プログラム、および、少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラム、を記憶する第一記憶部と、
前記燃焼異常予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測する、および、異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する異常予測部と、
前記異常予測部で予測された結果を出力する予測結果出力部と、を有する、燃焼異常予測装置と、
前記燃焼異常予測装置から送られた各種データを受信する受信部と、各種データを記憶する記憶部と、
前記燃焼異常予測装置の異常予測部によって、予測された燃焼炉に関する状態量が異常か否かの予測結果および予測された異常を回避するための手段に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する燃焼制御部と、を有し、
異常予測および異常を回避するための手段をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードと、異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モードと、異常を回避するための手段の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モードとの内からいずれかの運転モードが選択可能に構成されており、選択された運転モードに従って、前記燃焼制御部が燃焼炉の燃焼を制御する、燃焼制御システム。
【請求項3】
前記燃焼異常予測装置は、
過去の所定期間を前記学習データと、前記過去の所定期間の前記教師データとを用いて異常回避手段予測プログラムを所定の頻度で再学習する再学習部と、
前記再学習部で再学習された新たな異常回避手段予測プログラムを記憶する第二記憶部と、をさらに有し、
前記異常予測部は、再学習されるたびに生成された新たな異常回避手段予測プログラムを用いて予測する、請求項1または2に記載の燃焼制御システム。
【請求項4】
オペレータの操作入力を受け付けるユーザインターフェースを有し、
前記ユーザインターフェースは、オペレータにより判定された異常判定の入力を受け付ける異常判定入力部を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の燃焼制御システム。
【請求項5】
前記ユーザインターフェースは、オペレータによる介入操作の入力を受け付ける介入操作入力部を有する、請求項4に記載の燃焼制御システム。
【請求項6】
前記ユーザインターフェースは、操作ログの表示に対応して、オペレータの判定理由を入力する判定理由入力部を有する、請求項4または5に記載の燃焼制御システム。
【請求項7】
情報処理装置により実施される燃焼制御方法であって、
少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する燃焼異常予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測する、および、少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する、異常予測ステップと、
前記異常予測ステップで予測された結果を出力する出力ステップと、
異常予測および異常を回避するための手段をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードと、異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モードと、異常を回避するための手段の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モードとの内からいずれかの運転モードが選択可能に構成されており、選択された運転モードに従って、燃焼炉の燃焼を制御するステップを含む、燃焼制御方法。
【請求項8】
過去の所定期間を前記学習データと、前記過去の所定期間の前記教師データとを用いて異常回避手段予測プログラムを所定の頻度で再学習する再学習ステップを含み、
前記異常予測ステップは、再学習されるたびに生成された新たな異常回避手段予測プログラムを用いて予測する、請求項7に記載の燃焼制御方法。
【請求項9】
前記異常回避手段予測プログラムの予測結果と、オペレータの判断結果とを比較しいずれか一方を選択して教師データを生成する、または
オペレータにより判定される異常判定がない場合に、前記異常回避手段予測プログラムの予測結果をそのまま教師データとして使用する、教師データ生成ステップを含む、請求項7または8に記載の燃焼制御方法。
【請求項10】
前記異常回避手段予測プログラムの予測結果と、オペレータにより判定された異常判定またはオペレータの介入操作とを比較し、前記予測結果の精度を算出する精度算出ステップを含む、請求項7から9のいずれか1項に記載の燃焼制御方法。
【請求項11】
少なくとも1つのプロセッサーと、
前記プロセッサーで実行可能な命令を記憶するためのメモリと、を含み、
前記プロセッサーは、実行可能な命令を実行することにより、請求項7から10のいずれか1項の燃焼制御方法を実現する、情報処理装置。
【請求項12】
燃焼制御プログラムであって、
少なくとも1つのプロセッサーにより、請求項7から10のいずれか1項の燃焼制御方法を実現するプログラム。
【請求項13】
コンピュータ命令が記憶されているコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記コンピュータ命令がプロセッサーにより実行されることで、請求項7から10のいずれか1項の燃焼制御方法のステップを実現するコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
第4 取消理由の概要
当審が令和4年11月30日付けで特許権者に通知した取消理由通知の概要は、次のとおりである。
○理由1(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものである。
○理由2(実施可能要件)
本件特許は、明細書の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許法第36条第4項の規定に違反してされたものである。
記
○理由1(明確性)
(1)運転モードについて
請求項1~13に係る発明は、「支援運転モード」、「完全自動運転モード」又は「部分運転モード」の3つの運転モードのうち、いずれか1つの運転モードだけを有していればよいと解される一方で、「いずれかの運転モードが選択可能に構成されて」いることを要するものであるが、運転モードが「1つ」しかない場合に、「いずれかの運転モードが選択可能に構成」することは、技術的にできないことが明らかである。
(2)異常予測プログラムについて
請求項1~13に係る発明は、「異常予測プログラム」が予測するのは、「燃焼炉に関する状態量が異常か否か」のみであるが、「燃焼炉に関する状態量が異常」である場合、燃焼制御部による通常の制御ではなく、オペレータによる介入が必要であることを勘案すると、「異常を回避するための手段」を予測することなく、「燃焼炉に関する状態量が異常」であることの情報のみで、「異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モード」又は「異常を回避するための手段の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モード」に従って「燃焼制御部が燃焼炉の燃焼を制御」するのか、明細書の発明の詳細な説明を参酌しても不明である。
(3)方法の発明について
請求項7~13に係る発明は、「方法」の発明であるが、「支援運転モード」、「完全自動運転モード」又は「部分運転モード」を有し、「いずれかの運転モードが選択可能に構成」とは、「燃焼炉の燃焼を制御するステップ」に対して、どのような事項を特定しようとするものなのか、特許請求の範囲の記載では明確でなく、明細書の発明の詳細な説明を参酌してもその技術的意味が不明確である。
○理由2(実施可能要件)
発明の詳細な説明には、「異常を回避するための手段」を予測することなく、「燃焼炉に関する状態量が異常」であることの情報のみで、「異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モード」又は「異常を回避するための手段の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モード」に従って「燃焼制御部が燃焼炉の燃焼を制御」するのか、具体的な制御の実行内容が記載されていないから、請求項1~13に係る発明について、燃焼炉の燃焼制御の実行に係る具体的内容が明確かつ十分に記載されていない。
第5 当審の判断
1.理由1(明確性)について
(1)運転モードについて
上記第2で論じたとおり、本件訂正により、本件発明1~13は、「支援運転モード」、「完全自動運転モード」及び「部分運転モード」の3つの運転モード「の内からいずれかの運転モードが選択可能に構成され」ることとなったから、運転モードが選択可能に構成されることは、明確である。
(2)燃焼異常予測プログラム及び異常回避手段予測プログラムについて
上記第2で論じたとおり、本件訂正により、本件発明1~13は、「燃焼異常を予測する燃焼異常予測プログラム」、「および」、「燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラム」の両方を備えるものとなったから、予測された異常回避手段に従って「燃焼制御部が燃焼炉の燃焼を制御」するので、明確である。
(3)方法の発明について
本件発明7~13は、「支援運転モード」、「完全自動運転モード」及び「部分運転モード」の3つの運転モードを備えるものである。
そして、当該3つの運転モードに関して、願書に添付した明細書には、「・・・ 燃焼制御システム40は、燃焼に係る所定の目標出力値が設定されており、この目標出力値になるように自動運転されており、目標出力値から大きく外れそうになるとオペレータが手動介入できるようになっている。」(【0026】)こと、「ここで、オペレータは、異常回避手段の内、一部の手段を選択して介入操作をしてもよく、各手段を0%から100%の重み付けをして介入操作してもよく、異常回避手段のいずれも介入操作に使用しなくともよい。」(【0035】)と記載されているから、自動運転開始前にいずれかの運転モードに設定をしておき、自動運転において異常予測および異常運転回避手段予測の出力に対応してオペレータが「介入する」か「介入しない」ことを選択することができ、選択された運転モードに応じて燃焼炉の燃焼が制御されるものであるから、3つの運転モード「の内からいずれかの運転モードが選択可能に構成され」ることと「燃焼炉の燃焼を制御するステップ」との関係は、明確である。
2.理由2(実施可能要件)について
上記第2で論じたとおり、本件訂正により、本件発明1~13は、「燃焼異常を予測する燃焼異常予測プログラム」、「および」、「燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラム」の両方を備えるものとなったから、予測された異常回避手段に従って「燃焼制御部が燃焼炉の燃焼を制御」するものである。
そして、発明の詳細な説明には、「燃焼炉に関する状態量が異常」であること、および「異常を回避するための手段」を予測した上で、「異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モード」又は「異常を回避するための手段の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モード」に従って「燃焼制御部が燃焼炉の燃焼を制御」することが記載されているから、発明の詳細な説明は、本件発明1~13を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されている。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、証拠として甲第1号証を提出して、本件発明1~8、11~13は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない発明であり、本件発明1~13は、甲1に記載された発明、又は甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができた発明であり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であると主張する。
甲第1号証:特開2018-180649号公報
1.甲第1号証に記載された事項及び甲1発明
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審が付したものである。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、設備の状態に基づいて制御内容を選択する情報処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラントおよびごみ焼却施設等の設備における通常時の運転は、そのほとんどが自動化されている。一方、異常時または異常の前兆時には、オペレータが手動にて操作(手動介入)を行う。」
(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プラントおよびごみ焼却施設等の設備の運転において、手動介入が行われる場合とは、(i)何らかの異常を知らせる警報が発報した場合、または(ii)設備の運転状況を監視する種々のセンサの測定値等に基づいてオペレータが操作を要する(異常の前兆である)と判断した場合、等であり得る。設備を構成する各部への負荷、運転の効率、および安全性等の観点から、警報が発報する前、すなわち異常の前兆段階にて手動介入を行うことが要望される。
・・・
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、設備の運転状態が異常の前兆状態であることを捉え、適切な制御内容を選択することができる情報処理装置等を実現することにある。」
(3)「【0038】
<運転支援システム1>
図2は、本実施の形態における情報処理装置200Aを含む運転支援システム1の概要を示すブロック図である。運転支援システム1は、ごみ焼却施設(プロセス制御を行う設備)10と管理センター20とを備え、これらが通信ネットワーク30を介して通信可能に接続されている。
・・・
【0040】
(ごみ焼却施設10)
ごみ焼却施設10は、ごみを焼却する焼却炉11、およびそれを制御する中央制御室12を備えている。
【0041】
焼却炉11は、例えば、前後動する、火格子によって構成されたストーカを備えるストーカ炉であり、多数のセンサ13および多数の制御対象部14を含んでいる。各センサ13および各制御対象部14はそれぞれシステムバス15に接続されている。センサ13および制御対象部14については、様々な種類があることから、説明の便宜上、詳細な説明は省略する。
【0042】
中央制御室12は、運転制御装置120を備え、該運転制御装置120を必要に応じて操作するオペレータ121が待機している。
【0043】
運転制御装置120は、システムバス15を通じて、複数のセンサ13からの情報を受信し、複数の制御対象部14をそれぞれ制御する。運転制御装置120は、焼却炉11が通常の運転状態である場合、焼却炉11の自動運転を行う。運転制御装置120は、多数のモニタおよびコンソールを備え、オペレータ121は、それらのモニタの表示に基づいて運転状態を監視し、異常状態または異常の前兆状態であると判断した場合に、手動操作を行う。」
(4)「【0046】
(管理センター20)
管理センター20は、情報処理装置200Aを備え、該情報処理装置200Aを操作するオペレータ21が待機している。
【0047】
情報処理装置200Aは、制御部210、記録処理部220、および記憶部230を備えている。これらの各部について、詳しくは後述する。情報処理装置200Aは、通信ネットワーク30を介して、運転制御装置120からプロセスデータを受信する。このプロセスデータとは、運転制御装置120がシステムバス15を通じて各センサ13から受信した、焼却炉11の運転状態に関する各種の時系列データである。つまり、プロセスデータは、焼却炉11の状態を示す時系列データであり、センサ13の数に対応して複数のプロセスデータが存在する。」
(5)「【0060】
{本発明の一態様における運転支援}
ここで、ごみ焼却施設10における過去の運転の結果として、以下のような介入ログ(手動操作履歴データ)が数多く存在する。すなわち、オペレータ121が手動制御を行った時点より少し前から該時点までの焼却炉11の各種のプロセスデータ、その手動制御の内容、および手動制御してから少し後までの焼却炉11の各種のプロセスデータの一連の組合せを「介入ログ」とすると、多数の該介入ログが蓄積され、保存されている。この「各種のプロセスデータ」は、様々な制御対象部14およびセンサ13から得られる時系列データを含む。
【0061】
上記のような蓄積された過去の多数の介入ログ(数値情報)を、そのままデータベースに記録して利用することは困難である。これは、データベースの情報量が莫大なものとなってしまうとともに、そのようなプロセスデータの束を参照して適切な情報を抽出するための処理時間が長くなりすぎることから、現実的では無いためである。また、数値データは、参照することが本質的に難しい。これは、プロセスデータには数値の変動がある、および、数値の絶対値よりも時系列の変化の傾向が重要な場合がある、等のためである。
【0062】
そこで、本実施の形態における情報処理装置200Aが行う運転支援は、概略的には以下のようなものである。すなわち、情報処理装置200Aは、上記のような蓄積された過去の多数の介入ログのそれぞれについて、焼却炉11の運転状態(各種のプロセスデータ)を概念化して言語化情報(言語化データ)とするとともに、該言語化情報と制御内容とを対応付けてデータベースに記録する。ここで、プロセスデータは時系列データであることから、その言語化においては時間的な変化の傾向を反映させることが好ましい。なお、上記介入ログを概念化する方法は言語化に限定されない。
【0063】
例えば言語化のように概念化をすることによって、データベースに記録した情報を実際的に参照することが可能なものとすることができる。このような言語化は、設備の運転におけるオペレータの感覚を反映して運転状態を表現するように行うことができる。言語の持つ曖昧さを活用して設備の運転状態を表現することができる。また、言語化することによって、データベースに格納されるデータ量を節約することができる。また、後々、データベースの修正を行う場合に、修正を比較的容易にすることができる。
【0064】
そして、現在の焼却炉11の運転状態(各種のプロセスデータ)を同様に概念化して言語化情報とし、その言語化情報に該当する過去の言語化した介入ログを参照し、焼却炉11に対して行うべき制御内容の候補を特定する。これにより、情報処理装置200Aは、過去にオペレータ121が経験および勘に基づいて行った判断および操作(過去の手動介入操作)の情報を利用して、現在の焼却炉11の運転状態について適切な制御内容を選択することができる。」
(6)【0067】
<情報処理装置200A>
以上に概要を説明した、本発明の一態様における運転支援システム1が含む情報処理装置200Aについて、図1を参照して、以下に詳細を説明する。図1は、本実施の形態における情報処理装置200Aの要部構成を示すブロック図である。
【0068】
図1に示すように、情報処理装置200Aは、制御部210、記録処理部220、記憶部(データベース)230、表示部240、および入力部250を備えている。また、情報処理装置200Aは、上述したように運転制御装置120と通信可能に接続されている。
【0069】
この運転制御装置120は、運転制御部120a、表示部120b、入力部120c、およびデータ記憶部120dを備えている。運転制御部120aは、上述したシステムバス15と接続して、焼却炉11の自動運転を行う。表示部120bは、各種センサ13の計測値等を表示する複数のモニタである。入力部120cは、オペレータ121(図2参照)の手動操作等の入力を受け付ける。データ記憶部120dは、焼却炉11から受信した各種のデータおよびオペレータ121の手動操作の内容等を記憶する。運転制御装置120は、焼却炉11から受信した各種のプロセスデータ、およびオペレータ121が手動介入した旨の手動介入情報を、情報処理装置200Aへ送信する。
【0070】
情報処理装置200Aの制御部210は、言語化処理部(概念化処理部)211および制御候補特定部212を備えている。また、制御候補特定部212は、判定部212aおよび評価部212bを備えている。そして、記憶部230は、言語化規則データ231、履歴言語化データベース232、およびプロセスデータ記憶部233を備えている。履歴言語化データベース232には、言語化状態情報232aと、制御情報232bと、評価情報232cとが対応付けられて記憶されている。これらの各部の詳細な説明は、情報処理装置200Aの動作の説明と合わせて後述するが、以下に概略的に説明する。
【0071】
上記制御部210は、情報処理装置200Aの各部材を統括的に制御する。制御部210は、運転制御装置120から送信された各種のプロセスデータ(状態情報)を受信する。受信した各種のプロセスデータに基づいて、言語化処理部211は、言語化規則データ231を用いて、焼却炉11の運転状態を言語化(概念化)し、現在の運転状態に関する言語化状態情報(概念化情報、言語化データ)を生成する。
【0072】
そして、制御候補特定部212の判定部212aは、言語化処理部211が生成した現在の運転状態に関する言語化状態情報を用いて、先ず、焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であるか否かを判定する。本実施の形態では、判定部212aは、ニューラルネットワーク処理を行うことにより焼却炉11の運転状態を判定する、ニューラルネットワーク処理部となっている。このニューラルネットワーク処理については後述する。
【0073】
判定部212aによって焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であると判定された場合、制御候補特定部212は、その判定に用いた言語化状態情報に基づいて履歴言語化データベース232を参照して、適切な制御内容の候補を特定する。具体的には、その判定に用いた現在の運転状態に関する言語化状態情報と一致または類似する焼却炉11の運転状態を、履歴言語化データベース232の言語化状態情報232aの中から検索する。そして、該当する言語化状態情報に対応付けられている制御内容を制御候補として特定する。
【0074】
制御候補特定部212が特定した制御内容の候補は、表示部240に表示される。換言すれば、焼却炉11の運転状況に基づいて、行うべき制御内容の候補が、オペレータ21(図2参照)に提案される。オペレータ21は、表示部240に表示された候補の中から、入力部250を用いて、適切な制御内容を選択する。
【0075】
制御部210は、オペレータ21が選択した制御内容に基づいて、運転制御装置120に介入制御指示を送信する。運転制御装置120は、受信した介入制御指示に基づいて、焼却炉11に対して介入制御を行う。」
(7)「【0111】
(判定部212a)
次に、図6および図7を参照して、ごみ焼却施設10の現時点の運転において、運転状態が正常であるか否かを判定する判定部212aが行う動作について説明する。図6の(a)は、プロセスデータにおける正常データおよび前兆データを説明するための図である。図6の(b)は、上記前兆データ部分を言語化した結果、および各言葉のメンバシップ値を示す表である。図7は、ニューラルネットワーク処理について説明するための図である。
【0112】
図6の(a)に示すプロセスデータにおいて、領域A11は正常データであり、領域A12は異常の前兆状態を示す前兆データである。この前兆データ部分について、クラスタの変化の傾向(トレンド)を言語化したものの一例を図6の(b)に示している。
【0113】
ここでは、図6の(b)に示すように、全体的傾向、局所的特徴の期間、局所的特徴の値、後期の位置、各期間の振動といった5個のカテゴリにて、言語化を行う規則としている。さらに、各カテゴリにおいて用いる表現として、以下のように規定する。全体的傾向は、11種類(大きく増加、下に凸、等)。局所的特徴の期間は、3種類(前期、中期、後期)。局所的特徴の値は、7種類(中ぐらい増加、少し減少、等)。後期の位置は、4種類(ほぼゼロ、低い、中ぐらい、高い)。各期間の振動は、前期、中期、後期のそれぞれについて16種類(標準偏差の表現4種類と振動回数の表現4種類の組み合わせ)。すなわち、言葉の種類の総数としては、11+3+7+4+16×3=73種類であるとする。
【0114】
図7に示すように、判定部212aは、ニューラルネットワーク処理を行って、焼却炉11の運転状態を判定することができる。このようなニューラルネットワーク処理としては、既知の技術を用いることができ、詳細な説明は省略する。概略的に説明すれば、入力層に、上記73種類の言葉のメンバシップ値を入力する。そして、ニューラルネットワーク処理が実行され、出力値が得られる。この出力値を用いて、運転状態が正常であるか否かを判定することができる。
【0115】
このような処理を行うニューラルネットワークは、予め機械学習をさせることにより構築することができる。例えば、出力値が(1,0)の場合を前兆データとし、(0,1)の場合を正常データとして教師有り学習を行い、構築することができる。図7では、結果としての出力値が(0.548,0.452)であることから、この場合、前兆データであると判定する。正常データおよび前兆データを多数用意して、教師有り学習を行うことにより、ニューラルネットワークによる判定の精度が向上する。」
(8)「【0146】
(変形例1)
本発明の他の一態様では、情報処理装置は、制御候補特定部212が特定した制御内容に基づいて、オペレータに提示することなく、そのまま焼却炉11の制御を行う制御装置となっていてもよい。これにより、ごみ焼却施設10の運転の更なる自動化を図ることができる。」
(9)「【0187】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置200Aおよび情報処理装置200Bの制御ブロック(特に制御部210)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。」
(10)「【図1】
[図:0001400476000001.jpg]
」
(11)「【図2】
[図:0001400476000002.jpg]
」
(12)「【図6】
[図:0001400476000003.jpg]
」
(13)「【図7】
[図:0001400476000004.jpg]
」
(14)段落【0047】には、「このプロセスデータとは、運転制御装置120がシステムバス15を通じて各センサ13から受信した、焼却炉11の運転状態に関する各種の時系列データである。つまり、プロセスデータは、焼却炉11の状態を示す時系列データであり、センサ13の数に対応して複数のプロセスデータが存在する。」と記載されている。
また、上記プロセスデータについて、段落【0060】には、「オペレータ121が手動制御を行った時点より少し前から該時点までの焼却炉11の各種のプロセスデータ、その手動制御の内容、および手動制御してから少し後までの焼却炉11の各種のプロセスデータの一連の組合せを「介入ログ」とすると、多数の該介入ログが蓄積され、保存されている。」と記載され、「介入ログ」について、段落【0062】には、「情報処理装置200Aは、上記のような蓄積された過去の多数の介入ログのそれぞれについて、焼却炉11の運転状態(各種のプロセスデータ)を概念化して言語化情報(言語化データ)とするとともに、該言語化情報と制御内容とを対応付けてデータベースに記録する。」と記載されている。
ここで、上記段落【0047】、【0060】、【0062】の用語を踏まえて、技術常識を踏まえつつ段落【0114】、【0115】の記載及び【図7】を検討すると、【図7】ニューラルネットワークの入力層に入力される言葉のメンバシップ値とは、焼却炉11のプロセスデータを概念化して言語化情報であって、機械学習に用いられる出力値である前兆データ(1,0)及び正常データ(0,1)とは、焼却炉11のプロセスデータに関連付けられたオペレータ121が手動制御を行った介入ログであるといえる。
してみると、甲第1号証には、焼却炉11に関するプロセスデータを言語化した言語化情報と、オペレータ121が手動制御を行った介入ログとを用いて機械学習されたニューラルネットワークからなる判定部212aで燃焼炉11の運転状態を判定しているものが記載されているといえる。
(15)段落【0187】には、「情報処理装置200Aおよび情報処理装置200Bの制御ブロック(特に制御部210)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。」と記載されているから、制御部210の言語化処理部211,制御候補特定部212及び判定部212aは、それぞれ言語化処理部プログラム、制御候補特定部プログラム、判定部プログラムとしてソフトウェアにより実現されて、記憶部230に記憶されているものと認められる。
以上から、甲第1号証には、以下の2つの発明(以下、「甲1発明」、「甲1方法発明」という。)が記載されている。
<甲1発明>
「焼却炉11に関するプロセスデータを言語化した言語化情報とオペレータ121が手動制御を行った介入ログとを用いて機械学習されたニューラルネットワークからなる燃焼炉11の運転状態が異常の前兆状態であるか否かを判定する判定部プログラムと、判定部プログラムによって焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であると判定された場合、適切な制御内容の候補を特定する制御候補特定部プログラムが記憶された記憶部230と、
言語化処理部プログラムによって、運転制御装置120から送信された各種のプロセスデータに基づいて焼却炉11の運転状態を言語化し、現在の運転状態に関する言語化状態情報を生成し、判定部プログラムによって、言語化処理部プログラムが生成した現在の運転状態に関する言語化状態情報を用いて、焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であるか否かをニューラルネットワーク処理を行うことにより判定し、制御候補特定部プログラムによって、焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であると判定された場合にその判定に用いた言語化状態情報に基づいて、履歴言語化データベース232を参照して適切な制御内容の候補を特定する、制御部210と、
制御候補特定部プログラムが特定した制御内容の候補を表示する表示部240と、を有する情報処理装置200Aと、
表示部240に表示された制御内容の候補の中から、オペレータ21が選択した制御内容に基づく介入制御指示に基づいて、焼却炉11に対して介入制御を行う運転制御装置120と、を有し、
制御候補特定部プログラムが特定した制御内容に基づいて、オペレータに提示することなく、そのまま焼却炉11の制御を行い、
表示部240に表示された候補の中から、オペレータ21が適切な制御内容を選択し、オペレータ21が選択した制御内容に基づいて介入制御指示を送信し、介入制御指示に基づいて焼却炉11に対して介入制御を行う、運転支援システム。」
<甲1方法発明>
「情報処理装置200Aによって実施される燃焼制御方法であって、
焼却炉11に関するプロセスデータを言語化した言語化情報とオペレータ121が手動制御を行った介入ログとを用いて機械学習されたニューラルネットワークからなる燃焼炉11の運転状態が異常の前兆状態であるか否かを判定する判定部プログラムを用いて、言語化処理部プログラムによって、運転制御装置120から送信された各種のプロセスデータに基づいて焼却炉11の運転状態を言語化し、現在の運転状態に関する言語化状態情報を生成し、判定部プログラムによって、言語化処理部プログラムが生成した現在の運転状態に関する言語化状態情報を用いて、焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であるか否かをニューラルネットワーク処理を行うことにより判定する、および、判定部プログラムによって焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であると判定された場合、適切な制御内容の候補を特定する制御候補特定部プログラムを用いて、焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であると判定された場合にその判定に用いた言語化状態情報に基づいて、履歴言語化データベース232を参照して適切な制御内容の候補を特定する、ステップと、
制御候補特定部プログラムが特定した制御内容の候補を表示するステップと、
制御候補特定部プログラムが特定した制御内容に基づいて、オペレータに提示することなく、そのまま焼却炉11の制御を行い、
表示された候補の中から、オペレータ21が適切な制御内容を選択し、オペレータ21が選択した制御内容に基づいて介入制御指示を送信し、介入制御指示に基づいて焼却炉11に対して介入制御を行う、燃焼制御方法。」
2.対比、判断
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「燃焼炉11」、「プロセスデータ」、「オペレータ121」、「機械学習」、「記憶部230」は、本件発明1の「燃焼炉」、「状態量」、「オペレータ」、「知的情報処理技術」、「第一記憶部」に相当する。
甲1発明の「オペレータ121が手動制御を行った介入ログ」は、オペレータ121による手動制御が、燃焼炉11の異常時に行われるものであり、ニューラルネットワークの教師信号に用いられるのであるから、本件発明1の「オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データ」に相当する。
甲1発明の「燃焼炉11に関するプロセスデータを言語化した言語化情報」は、ニューラルネットワークの入力層に入力され、ニューラルネットワークの機械学習に用いられるのであるから、「燃焼炉に関する状態量に関係する学習データ」の限りにおいて、本件特許1の「燃焼炉に関する状態量を含む学習データ」に一致する。
してみると、甲1発明の「焼却炉11に関するプロセスデータを言語化した言語化情報と、オペレータ121が手動制御を行った介入ログとを用いて機械学習されたニューラルネットワークからなる燃焼炉11の運転状態が異常の前兆状態であるか否かを判定する判定部プログラム」と、本件発明1の「少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する燃焼異常予測プログラム」とは、「燃焼炉に関する状態量に関係する学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する燃焼異常予測プログラム」の限りにおいて一致する。
甲1発明の「判定部プログラムによって焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であると判定された場合、適切な制御内容の候補を特定する制御候補特定部プログラム」は、判定プログラムが上記のとおりであって、「適切な制御内容の候補を特定する」ことが「燃焼炉11の運転状態の異常」を回避するための制御内容の候補を特定することであることから、本件発明1の「少なくとも燃焼炉に関する状態量を含む学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラム」と、「燃焼炉に関する状態量に関係する学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラム」の限りにおいて一致する。
甲1発明の「言語化処理部プログラムによって、運転制御装置120から送信された各種のプロセスデータに基づいて焼却炉11の運転状態を言語化し、現在の運転状態に関する言語化状態情報を生成し、判定部プログラムによって、言語化処理部プログラムが生成した現在の運転状態に関する言語化状態情報を用いて、焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であるか否かをニューラルネットワーク処理を行うことにより判定し、制御候補特定部プログラムによって、焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であると判定された場合にその判定に用いた言語化状態情報に基づいて、履歴言語化データベース232を参照して適切な制御内容の候補を特定する、制御部210」と、本件発明1の「前記燃焼異常プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測する、および、異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する異常予測部」とは、「前記燃焼異常プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量に関するデータが異常か否かを予測する、および、異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量に関するデータが異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する異常予測部」の限りにおいて一致する。
甲1発明の「制御候補特定部プログラムが特定した制御内容の候補を表示する表示部240」は、本件発明1の「異常予測部で予測された結果を出力する予測結果出力部」に相当する。
甲1発明の「情報処理装置200A」は、本件発明1の「燃焼異常予測装置」に相当する。
甲1発明の「制御部210が送信した介入制御指示に基づいて、焼却炉11に対して介入制御を行う運転制御装置120」は、「制御部210が送信した介入制御指示」が「焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であると判定された場合にその判定に用いた言語化状態情報に基づいて、履歴言語化データベース232を参照して適切な制御内容の候補を特定」した結果からオペレータ21が選択した制御内容を介入指示するものであるから、本件発明1の「前記燃焼異常予測装置の異常予測部によって、予測された燃焼炉に関する状態量が異常か否かの予測結果、および、予測された異常を回避するための手段に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する燃焼制御部」と、「前記燃焼異常予測装置の異常予測部によって、予測された燃焼炉に関する状態量に関するデータが異常か否かの予測結果、および、予測された異常を回避するための手段に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する燃焼制御部」の限りにおいて一致する。
甲1発明の「制御候補特定部プログラムが特定した制御内容に基づいて、オペレータに提示することなく、そのまま焼却炉11の制御を行」うことは、本件発明1の「異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モード」に相当する。
甲1発明の「オペレータ21は、表示部240に表示された候補の中から、入力部250を用いて適切な制御内容を選択し、オペレータ21が選択した制御内容に基づいて、運転制御装置120に介入制御指示を送信し、受信した介入制御指示に基づいて、焼却炉11に対して介入制御を行う」ことは、本件発明1の「異常予測および異常を回避するための手段をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モード」に相当する。
そして、甲1発明の「制御候補特定部プログラムが特定した制御内容に基づいて、オペレータに提示することなく、そのまま焼却炉11の制御を行」うことと、「オペレータ21は、表示部240に表示された候補の中から、入力部250を用いて適切な制御内容を選択し、オペレータ21が選択した制御内容に基づいて、運転制御装置120に介入制御指示を送信し、受信した介入制御指示に基づいて、焼却炉11に対して介入制御を行う」こととは、オペレータ21の選択によって、いずれかの制御が選択されて燃焼炉11の燃焼を制御するのであるから、本件発明1の「異常予測および異常を回避するための手段をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードと、異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モードと、異常を回避するための手段の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モードとの内からいずれかの運転モードが選択可能に構成されており、選択された運転モードに従って、前記燃焼制御部が燃焼炉の燃焼を制御する」ことと、「異常予測および異常を回避するための手段をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードと、異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モードとの内からいずれかの運転モードが選択可能に構成されており、選択された運転モードに従って、前記燃焼制御部が燃焼炉の燃焼を制御する」ことの限りにおいて一致する。
甲1発明の「運転支援システム」は、本件発明1の「燃焼制御システム」に相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
(一致点)
「少なくとも燃焼炉に関する状態量に関係する学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する燃焼異常予測プログラム、および、燃焼炉に関する状態量に関係する学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラム、を記憶する第一記憶部と、
前記燃焼異常予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量に関するデータが異常か否かを予測する、および、異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量に関するデータが異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する異常予測部と、
前記異常予測部で予測された結果を出力する予測結果出力部と、を有する燃焼異常予測装置と、
前記燃焼異常予測装置の異常予測部によって、予測された燃焼炉に関する状態量に関するデータが異常か否かの予測結果、および、予測された異常を回避するための手段に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する燃焼制御部と、を有し、
異常予測および異常を回避するための手段をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードと、異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モードとの内からいずれかの運転モードが選択可能に構成されており、選択された運転モードに従って、前記燃焼制御部が燃焼炉の燃焼を制御する、燃焼制御システム。」
(相違点1)
「燃焼炉に関する状態量に関係する学習データ」に関し、本件発明1では「燃焼炉に関する状態量を含む学習データ」であるのに対して、甲1発明では「燃焼炉に関するプロセスデータを言語化した言語化情報」である点。
(相違点2)
「前記燃焼炉に関する状態量に関するデータが異常か否かを予測」することに関して、本件発明1では、「前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測」し、「異常を回避するための手段を予測」するのに対して、甲1発明では、「言語化処理部プログラムによって、運転制御装置120から送信された各種のプロセスデータに基づいて焼却炉11の運転状態を言語化し、現在の運転状態に関する言語化状態情報を生成し、判定部プログラムによって、言語化処理部プログラムが生成した現在の運転状態に関する言語化状態情報を用いて、焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であるか否かをニューラルネットワーク処理を行うことにより判定し、制御候補特定部プログラムによって、焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であると判定された場合にその判定に用いた言語化状態情報に基づいて、履歴言語化データベース232を参照して適切な制御内容の候補を特定」する点。
(相違点3)
燃焼炉の燃焼の制御に関し、本件発明1では、「予測された燃焼炉に関する状態量が異常か否かの予測結果、および、予測された異常を回避するための手段に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する」のに対して、甲1発明では、「燃焼炉11の運転状態が異常の前兆状態であると判定された場合にその判定に用いた言語化状態情報に基づいて、履歴言語化データベース232を参照して適切な制御内容から候補を特定」した結果から「オペレータ21が選択した制御内容に基づいて介入制御指示」される点。
(相違点4)
運転モードに関して、本件発明1では、「異常を回避するための手段の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モード」を備えるのに対して、甲1発明では、部分運転モードを備えない点。
上記相違点1、2について検討する。甲第1号証には、上記1.(5)に摘記したように、「上記のような蓄積された過去の多数の介入ログ(数値情報)を、そのままデータベースに記録して利用することは困難である。これは、データベースの情報量が莫大なものとなってしまうとともに、そのようなプロセスデータの束を参照して適切な情報を抽出するための処理時間が長くなりすぎる」ことから、「情報処理装置200Aは、上記のような蓄積された過去の多数の介入ログのそれぞれについて、焼却炉11の運転状態(各種のプロセスデータ)を概念化して言語化情報(言語化データ)とする」ことにより、「現在の焼却炉11の運転状態(各種のプロセスデータ)を同様に概念化して言語化情報とし、その言語化情報に該当する過去の言語化した介入ログを参照し、焼却炉11に対して行うべき制御内容の候補を特定する。」ようにしたものが記載されている。
してみると、甲1発明において、「燃焼炉に関するプロセスデータを言語化した言語化情報」を、単なる数値情報である「燃焼炉に関する状態量」にすること、および、異常予測部の予測に関して「言語化処理部プログラムによって、運転制御装置120から送信された各種のプロセスデータに基づいて焼却炉11の運転状態を言語化し、現在の運転状態に関する言語化状態情報を生成」することなく、単なる数値情報である「燃焼炉に関する状態量」自体から、燃焼異常を予測することは、甲第1号証がその適用を排斥しており、採用されることがあり得ない事項であって、甲1発明を本件発明1のごとく構成することに阻害要因があるといわざるを得ない。
よって、その余について論じるまでもなく、本件発明1は、甲1発明でないことが明らかであるとともに、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)本件発明2について
本件発明2と甲1発明とを対比すると、本件発明1と同様に、少なくとも上記相違点1、2で相違する。
してみると、本件発明1と同様の理由から、本件発明2は、甲1発明でないことが明らかであるとともに、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明3~6について
本件発明3~6は、本件発明1又は2の構成の全てを備える発明であるから、本件発明1、2と同様の理由から、甲1発明でないことが明らかであるとともに、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)本件発明7について
上記(1)を参照しつつ本件発明7と甲1方法発明とを対比すると、次の一致点2で一致し、相違点で相違する。
(一致点2)
「情報処理装置により実施される燃焼制御方法であって、
少なくとも燃焼炉に関する状態量に関係する学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測する燃焼異常予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量に関するデータが異常か否かを予測する、および、燃焼炉に関する状態量に関係する学習データと、オペレータが異常と判断したときのオペレータの操作記録を含む手動介入データを含む教師データとを用いて知的情報処理技術によって生成される燃焼異常を予測し、異常を回避するための手段を予測する異常回避手段予測プログラムを用いて、前記燃焼炉に関する状態量に関するデータが異常か否かを予測し、および異常を回避するための手段を予測する、異常予測ステップと、
前記異常予測ステップで予測された結果を出力する出力ステップと、
異常予測および異常を回避するための手段をオペレータに示し、オペレータがその手段を実行するか否かを判断する支援運転モードと、異常を回避するための手段を自動的に実行する完全自動運転モードとの内からいずれかの運転モードが選択可能に構成されており、選択された運転モードに従って、燃焼炉の燃焼を制御するステップを含む、燃焼制御方法。」
(相違点5)
「燃焼炉に関する状態量に関係する学習データ」に関し、本件発明7では「燃焼炉に関する状態量を含む学習データ」であるのに対して、甲1方法発明では「燃焼炉に関するプロセスデータを言語化した言語化情報」である点。
(相違点6)
「前記燃焼炉に関する状態量に関するデータが異常か否かを予測」することに関して、本件発明7では、「前記燃焼炉に関する状態量が異常か否かを予測」し、「異常を回避するための手段を予測」するのに対して、甲1方法発明では、「言語化処理部プログラムによって、運転制御装置120から送信された各種のプロセスデータに基づいて焼却炉11の運転状態を言語化し、現在の運転状態に関する言語化状態情報を生成し、判定部プログラムによって、言語化処理部プログラムが生成した現在の運転状態に関する言語化状態情報を用いて、焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であるか否かをニューラルネットワーク処理を行うことにより判定する」こと、および、「判制御候補特定部プログラムを用いて、焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であると判定された場合にその判定に用いた言語化状態情報に基づいて、履歴言語化データベース232を参照して適切な制御内容の候補を特定」する点。
(相違点7)
運転モードに関して、本件発明7では、「異常を回避するための手段の内、一部の手段を実行するあるいは0%から100%の重み付けを設定して実行する部分運転モード」を備えるのに対して、甲1方法発明では、部分運転モードを備えない点。
上記相違点5、6について検討すると、本件発明1と同様の理由から、甲1方法発明において、「燃焼炉に関するプロセスデータを言語化した言語化情報」を、単なる数値情報である「燃焼炉に関する状態量」にすること、および、異常予測部の予測に関して「言語化処理部プログラムによって、運転制御装置120から送信された各種のプロセスデータに基づいて焼却炉11の運転状態を言語化し、現在の運転状態に関する言語化状態情報を生成」することなく、単なる数値情報である「燃焼炉に関する状態量」自体から、燃焼異常を予測することは、甲第1号証がその適用を排斥しており、採用されることがあり得ない事項であって、甲1方法発明を本件発明7のごとく構成することに阻害要因があるといわざるを得ない。
よって、その余について論じるまでもなく、本件発明7は、甲1方法発明でないことが明らかであるとともに、甲1方法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(5)本件発明8~13について
本件発明8~13は、本件発明7の構成の全てを備える発明であるから、本件発明7と同様の理由から、甲1方法発明でないことが明らかであるとともに、ニューラルネットワーク等の学習を行う知的情報処理技術において自己学習を行うという周知技術を考慮しても甲1方法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(6)小括
したがって、本件発明1~13は、甲1発明又は甲1方法発明ではなく、甲1発明、又は甲1方法発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、申立人の主張は、採用することができない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正後の請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正後の請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700951