特許異議申立
2022-700861
屋上防水施工方法
- 審判番号
- 2022-700861
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-201075
- 登録番号
- 7030943
- 請求日
- 2022年09月01日
- 審決日
- 2022年11月18日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】田島ルーフィング株式会社
- 【権利者代理人】青木 篤
- 【権利者代理人】三橋 真二
- 【権利者代理人】鶴田 準一
- 【権利者代理人】南山 知広
- 【権利者代理人】森本 有一
- 【異議申立人】西内 大生
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 西田 秀彦
- 審判官 前川 慎喜
- 分類
- P1651.121-Y (E04D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7030943号発明「屋上防水施工方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7030943号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7030943号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成28年5月13日に出願された特許出願2016-96933号の一部を令和2年12月3日に新たな特許出願としたものであって、令和4年2月25日にその特許権の設定登録がされ、令和4年3月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1に係る特許に対し、令和4年9月1日に特許異議申立人西内大生(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1の特許に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
建物屋上における既存防水層又は断熱層に、さらに新規の防水シートを被覆し新規防水層を形成する、屋上防水施工方法であって、
前記既存防水層又は断熱層の所定の施工部位を除去して下地を露出させる除去工程と、
前記露出した下地に、前記新規の防水シートを固定する固定手段を接着による固定方法によって設置する固定手段設置工程と、
前記固定手段周囲の前記既存防水層又は断熱層の除去箇所を埋め戻す工程と、
前記既存防水層又は断熱層に、前記新規の防水シートを被覆し、前記固定手段に前記新規の防水シートを固定する、新規防水シート設置工程と、
を具備することを特徴とする屋上防水施工方法。」
第3 特許異議申立理由の概要及び証拠
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立て理由を主張するとともに、証拠方法として以下2に示す各甲号証を提出している。
(1)本件特許発明1は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(2)本件特許発明1は、甲2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
2 証拠
甲第1号証:「建築改修工事監理指針 平成25年版(上巻)」、一般財 団法人建築保全センター、平成26年1月31日、表紙,目 次I~III,p.125~151,p.217~250,奥 付
甲第2号証:特開2012-31567号公報
甲第3号証:特開平11-222979号公報
第4 各甲号証の記載
1 甲第1号証
(1)甲第1号証の記載
本件特許出願前に頒布された甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は決定で付した。以下同様。)
ア 126頁
「3.1.1 適用範囲
(a)この章は,既存のアスファルト防水,改質アスファルトシート防水,合成高分子系ルーフィングシート防水,塗膜防水の各防水改修工事並びに既存のシーリングの改修及び既存の目地部にシーリング材を充填する改修工事を対象としている。」
イ 217頁
「3.5.1 適用範囲
(a)合成高分子系ルーフィングシート防水は,一般にシート防水と総称され,通常,厚さ1.0~2.0mmのルーフィングシートを用いて施工する防水工法である。
・・・
(2)「改修標仕」では,接着工法{種別:S-F1,SI-F1,S-F2,SI-F2}のほかに,ルーフィングシートを機械的に固定する工法{種別:S-M1,SI-M1,S-M2,SI-M2,S-M3}を規定している。
・・・
(4)それぞれの種別にはプラスチック系の発泡材を断熱材として併用する外断熱防水工法がある。
・・・
(b)作業の流れを図3.5.1に示す。」
ウ 218頁の「図3.5.1 合成高分子系ルーフィングシート防水工事の作業の流れ」(当審注:囲っている線は、申立人によるもの)
「
[図:0001392105000001.jpg]
」
上記イを踏まえると、上記図からは、以下の点が看取できる。
・合成高分子系ルーフィングシート防水工事は、「準備」、「施工調査」、「施工計画書の作成」、「施工図の作成」、「防水保護層の撤去」「防水層撤去」「ルーフドレン廻りの処理」(「立上り部防水層の撤去」「ルーフドレン廻りの処理」、又は、「防水層撤去」「ルーフドレン廻りの処理」)、「下地調整 清掃」、「合成高分子系ルーフィングシート防水」の工程を含み、
その後、「全面接着工法」及び「機械的固定法」のいずれかの工法を採用するものであって、「全面接着工法」では、「プライマー塗布」、「接着剤塗布」、「ルーフィングシートの張付け」、「ルーフィングシートの接合」の工程を含み、「全面接着工法」のうちのSI工法の場合は、「接着剤塗布」と「ルーフィングシートの張付け」の工程の間に「断熱材の敷設」、「接着剤塗布」の工程を含むものであり、
「機械的固定法」では、「絶縁用シートの敷設」の工程を含み、「機械的固定法」のうちSI工法の場合は、「防湿用フィルムの敷設」、「断熱材の敷設」、「絶縁用シートの敷設」の工程を含み(「絶縁用シートの敷設」は、(注)2の場合は行わない。)、その後、「○1(○の中に1を表す。以下同様。)固定金具あと付け施工法」、「○2固定金具の先付け施工法」又は「○3固定金具の接合部内施工法」のいずれかの工法を採用するものであって、
「○1固定金具あと付け施工法」の場合は、「ルーフィングシートの敷設」、「シートと固定金具の接合」、「固定金具の取付け」、「増張り用シートの張付け」の工程を含み、「○2固定金具の先付け施工法」の場合は、「固定金具の取付け」、「ルーフィングシートの敷設」、「シートと固定金具の接合」、「ルーフィングシートの接合」の工程を含み、「○3固定金具の接合部内施工法」の場合は、「ルーフィングシートの敷設」、「接合部内固定金具の取付け」、「ルーフィングシートの接合」の工程を含むものであり、
その後、「全面接着工法」及び「機械的固定法」のいずれの場合においても、「仕上げ塗装の塗布」、「養生」の工程を含む(「仕上げ塗装の塗布」は、(注3)の場合は省略できる。)点。
エ 223頁下から2行から224頁2行
「(6)固定金具
固定金具は機械的固定工法に使用され,厚さ0.4mm以上の防錆処理した鋼板、ステンレス鋼板及びこれらの片面又は両面に樹脂を積層加工したもので,円盤状とプレート状のものがある。」
オ 241~243頁
(ア)「
[図:0001392105000002.jpg]
」
a 上記○1(当審注:○の中に1であることを意味する。以下同様。)には、「所定の位置にルーフィングシートを敷設したのち,ルーフィングシート製造所の仕様により,固定金具を固定釘で取り付け,・・・」との記載がある。
b 固定金具あと付け工法について、上記図3.5.21(種別S-M2、S-M3の場合)から、ルーフィングシートが敷設され、その上面に円盤状固定金具の取り付けがされた点が看取でき、図3.5.22から、防湿用フィルム及び断熱材を重ね、又は、防湿用フィルム、断熱材及び絶縁用シートを重ね、その上面にルーフィングシートが敷設され、さらにその上面に円盤状固定金具の取り付けがされた点が看取できる。
c 上記a及びbより、固定金具あと付け工法は、ルーフィングシートが敷設され、その上面に円盤状固定金具を固定釘で取り付けること、又は、防湿用フィルム及び断熱材を重ね、又は、防湿用フィルム、断熱材及び絶縁用シートを重ね、その上面にルーフィングシートを敷設し、さらにその上面に円盤状固定金具を固定釘で取り付けることであるといえる。
(イ)「
[図:0001392105000003.jpg]
」
a 上記○2には、「・・・固定金具を固定釘で取り付けたのち,所定の位置に敷設したルーフィングシートと固定金具を溶剤溶着又は熱風若しくは電磁誘導加熱により熱風溶着する。」との記載がある。
b 固定金具の先付け工法について、上記図3.5.23(種別S-M2、S-M3の場合)から、円盤状固定金具の取り付けがされ、円盤状固定金具の上にルーフィングシートが敷設され、ルーフィングシートの固定金具への溶着がされた点が看取でき、図3.5.24(種別SI-M2の場合)から、防湿用フィルム、断熱材及び絶縁用シートを重ね、その上面に円盤状固定金具の取り付けがされ、円盤状固定金具の上にルーフィングシートが敷設され、ルーフィングシートの固定金具への溶着がされた点が看取できる。
c 上記a及びbより、固定金具の先付け工法は、円盤状固定金具を固定釘で取り付けたのち、円盤状固定金具の上にルーフィングシートが敷設され、ルーフィングシートの円盤状固定金具への溶着がされること、又は、防湿用フィルム、断熱材及び絶縁用シートを重ね、その上面に円盤状固定金具を固定釘で取り付けたのち、円盤状固定金具の上にルーフィングシートを敷設し、ルーフィングシートの円盤上固定金具への溶着がされることであるといえる。
カ 244~245頁
「
[図:0001392105000004.jpg]
」
上記図から、ルーフィングシートが、建物の天井の外面に適用される点が看取できる。
(2)甲第1号証に記載された発明及び技術事項
上記(1)によれば、甲第1号証には、次の発明及び事項(以下「甲1発明」及び「甲1技術事項」という。)が記載されていると認められる。なお、甲第1号証には、「固定金具のあと付け施工法」及び「固定金具のあと付け工法」の記載があり、また「固定金具の先付け施工法」及び「固定金具の先付け工法」の記載があるが、それぞれ、同じことと理解し、「固定金具のあと付け工法」、「固定金具の先付け工法」に統一して記載することとする。
(甲1発明)
「合成高分子系ルーフィングシート防水改修工事を対象としているルーフィングシートを用いて施工する防水工法であって、
ルーフィングシートが、建物の天井の外面に適用されものであり、
「準備」、「施工調査」、「施工計画書の作成」、「施工図の作成」、「防水保護層の撤去」「防水層撤去」「ルーフドレン廻りの処理」(「立上り部防水層の撤去」「ルーフドレン廻りの処理」、又は、「防水層撤去」「ルーフドレン廻りの処理」)、「下地調整 清掃」、「合成高分子系ルーフィングシート防水」の工程を含み、
その後、「全面接着工法」{種別:S-F1,SI-F1,S-F2,SI-F2}、「機械的固定法」{種別:S-M1,SI-M1,S-M2,SI-M2,S-M3}のいずれかを採用するものであって、
「全面接着工法」では、「プライマー塗布」、「接着剤塗布」、「ルーフィングシートの張付け」、「ルーフィングシートの接合」の工程を含み、「全面接着工法」のうちのSI工法は、「接着剤塗布」と「ルーフィングシートの張付け」の工程の間に「断熱材の敷設」、「接着剤塗布」の工程を含むものであり、
「機械的固定法」では、「絶縁用シートの敷設」の工程を含み、「機械的固定法」のうちSI工法は、「防湿用フィルムの敷設」、「断熱材の敷設」、「絶縁用シートの敷設」の工程を含み(場合により「絶縁用シートの敷設」は行わない。)、その後、「○1(○の中に1を表す。以下同様。)固定金具あと付け施工法」、「○2固定金具の先付け施工法」又は「○3固定金具の接合部内施工法」のいずれかの工法を採用するものであって、「○1固定金具あと付け施工法」の場合は、「ルーフィングシートの敷設」、「シートと固定金具の接合」、「固定金具の取付け」、「増張り用シートの張付け」の工程を含み、「○2固定金具の先付け施工法」の場合は、「固定金具の取付け」、「ルーフィングシートの敷設」、「シートと固定金具の接合」、「ルーフィングシートの接合」の工程を含み、「○3固定金具の接合部内施工法」の場合は、「ルーフィングシートの敷設」、「接合部内固定金具の取付け」、「ルーフィングシートの接合」の工程を含むものであり、
その後、「全面接着工法」及び「機械的固定法」のいずれの工法であっても、「仕上げ塗装の塗布」、「養生」の工程を含むものであって(場合により「仕上げ塗装の塗布」は省略できる。)、
「固定金具あと付け工法」は、ルーフィングシートが敷設され、その上面に円盤状固定金具を固定釘で取り付けること、又は、防湿用フィルム及び断熱材を重ね、又は、防湿用フィルム、断熱材及び絶縁用シートを重ね、その上面にルーフィングシートを敷設し、さらにその上面に円盤状固定金具を固定釘で取り付けることであり、
「固定金具の先付け工法」は、円盤状固定金具を固定釘で取り付けたのち、円盤状固定金具の上にルーフィングシートが敷設され、ルーフィングシートの円盤状固定金具への溶着がされること、又は、防湿用フィルム、断熱材及び絶縁用シートを重ね、その上面に円盤状固定金具を固定釘で取り付けたのち、円盤状固定金具の上にルーフィングシートを敷設し、ルーフィングシートの円盤上固定金具への溶着がされることであり、
防水工法。」
(甲1技術事項1)
「合成高分子系ルーフィングシート防水改修工事を対象としているルーフィングシートを用いて施工する防水工法において採用する「機械的固定法」では、「絶縁用シートの敷設」の工程を含み、「機械的固定法」のうちSI工法では、「防湿用フィルムの敷設」、「断熱材の敷設」、「絶縁用シートの敷設」の工程を含む(場合により「絶縁用シートの敷設」は行わない。)点。」
(甲1技術事項2)
「合成高分子系ルーフィングシート防水改修工事を対象としているルーフィングシートを用いて施工する防水工法において採用する「固定金具の先付け工法」は、円盤状固定金具を固定釘で取り付けたのち、円盤状固定金具の上にルーフィングシートが敷設され、ルーフィングシートの円盤状固定金具への溶着がされること、又は、防湿用フィルム、断熱材及び絶縁用シートが重なっていて、その上面に円盤状固定金具を固定釘で取り付けたのち、円盤状固定金具の上にルーフィングシートを敷設し、ルーフィングシートの円盤上固定金具への溶着がされるものである点。」
2 甲第2号証
(1)甲第2号証の記載
本件特許出願前に頒布された甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【請求項1】
建物屋上における既存防水層上に、複数の外装板材を敷設して、これら外装板材上に防水シートを被覆し、全体略平坦な新規防水層を形成する、屋上防水施工方法であって、
前記既存防水層の所定の施工部位を除去して下地を露出させる既存防水層除去工程と、
前記露出した下地に、前記既存防水層上に敷設されるそれぞれの外装板材を連結して締付け固定する締付固定手段を非機械的固定方法によって設置する締付固定手段設置工程と、
前記締付固定手段周囲の既存防水層の除去箇所に、防水層を埋め戻す工程と、
前記既存防水層上全体に、前記複数の外装板材を敷設する際、前記それぞれの外装板材を、前記締付固定手段により挟み込んで締付固定し、さらに前記外装板材上に防水シートを被覆する、新規防水層形成工程と、
を具備することを特徴とする屋上防水施工方法。
【請求項2】
前記非機械的固定方法は、接着による固定方法である、ことを特徴とする請求項1に記載の屋上防水施工方法。」
イ「【0001】
本発明は、屋上の露出防水層を改修する際に、既存の防水層をそのままに、新たに防水層を施工する屋上防水施工方法に関し、躯体を損傷することなく施工することができ、しかも、所望の強度が得られる、屋上防水施工方法に関するものである。」
ウ「【0034】
以上のようなデッキプレート1上の既存防水層2に対し、後述する施工方法によって施工された、新規防水層4が積層されている。
新規防水層4は、既存防水層2同様、決められた大きさの外装板材を一面上に敷設して構成された複数の外装板材41に防水シート42を被覆して構成されている。かかる新規防水層4における外装板材41は、既存防水層2に積層する際に、複数の外装板材41の継目箇所に、締付固定手段5を配置して、全体が略平坦な連続した新規防水層4の面となるように構成されている。なお、複数の外装板材41の継目箇所は、波型デッキの場合、デッキプレート1の山部12上とする必要がある。
【0035】
外装板材41としては、既存防水層2と同様の、硬質のポリウレタンフォームやポリスチレンフォームを素材とする断熱材を適用することができる。
また、外装板材41としては、耐火性、断熱性に優れ、強度も高い珪酸カルシウム板を適用することができる。珪酸カルシウム板は、近年、衝撃耐性、強度、施工性が高いとされた繊維補強セメント板(アスベスト等の繊維混入スラグセメント板)に代わり、内外装材として盛んに用いられるようになってきている。
【0036】
締付固定手段5は、実質的に下地側固定部材51と上部固定部材52とを具備し、締付調節手段によって、隣接する新規防水層4における外装板材41を挟みつけて、断熱材目地部の段差の抑制された、一面の連続した新規防水層4となるようにしている。
【0037】
下地側固定部材51は、接着固定基盤51aと接着固定基盤51aに立設した締付調節手段を構成する連結ロッド51bとからなる(図3参照)。接着固定基盤51aは、後述するが、デッキプレート1の山部12に接着によって固定するようにしている。接着固定基盤51aは、接着強度を得るために、山部12に近い底面面積を有している。
連結ロッド51bは、接着固定基盤51aに例えばスタッド溶接によって溶着されている。そして連結ロッド51bには、軸方向に沿って内側にめねじが螺刻されている。
【0038】
次に、上部固定部材52は、図4に示すように、下地側固定部材51の接着固定基盤51aより若干広い面積のトッププレート52aと、中心軸に沿って垂下する、締付調節手段を構成するボルト52bとを有している。ボルト52bには、締付調節手段を構成する連結ロッド51bに螺入して締付固定できるように先端側に外ねじが螺刻されている。
さらに、上部固定部材52のトッププレート52aには、下地側固定部材51の接着固定基盤51aに対向する底面に、ボルト52bを四方から取り囲む位置に仮固定用の爪部材52cを突設している。上部固定部材52のトッププレート52aを、締付調節手段を構成するボルト52bを介して連結ロッド51bに螺入して、隣接する新規防水層4における外装板材41を挟
みつけて、締め付けることで、爪部材52cを外装板材41に食い込ませ、新規断熱材同士の仮固定の効果と新規断熱材による結合面を略平坦な防水層とすることが可能である。
【0039】
次に、デッキプレート1上の既存防水層2に対し、新規防水層4を積層して防水処理を施す、屋上構造物の屋上防水施工方法について説明する。
先ず、締付固定手段5を、施工図を基に、既存防水層2を除去して下地、すなわち、デッキプレート1の山部12を露出させる既存防水層除去工程を行う(図5a参照)。この場合、デッキプレート1の山部12上の防水層2の断熱材21及び防水シート22を、適宜な工具によってくり抜くように除去し、デッキプレート1の山部12を、下地側固定部材51の接着固定基盤51aに比較して若干広い範囲で露出させる。これによって、締付固定手段5を設置すべき箇所が確保される。
【0040】
次に、かかる露出した下地に、下地側固定部材51を固定する締付固定手段設置工程を接着によって行う(図5b参照)。この場合、下地側固定部材51の接着固定基盤51aの底面に周知の接着剤を塗布し、適度な押圧力をかけて、接着固定基盤51aの底面を露出下地に押し付けて、所定時間維持し、所望の接着強度を得る。これによって、接着固定基盤51aの中心には、締付調節手段を構成する連結ロッド51bが鉛直方向に向って立設状態とすることができる。
【0041】
下地側固定部材51の接着固定基盤51aが露出下地に接着固定されたら、かかる接着固定基盤51a上に、断熱材21を埋め戻す工程を行う(図5c参照)。この場合、接着固定基盤51a中心の締付調節手段を構成する連結ロッド51bが、先端部を露出した状態で収容されるように、断熱材21が埋め戻される。
【0042】
そして、既存防水層2上全体に新規に複数の外装板材41を、下地側固定部材51に上部固定部材52を連結することにより挟み込んで(図5d参照)、さらに外装板材41上に防水シート42を被覆する、新規防水層形成工程を行う。
【0043】
その際、隣接する双方の外装板材41の端部を、下地側固定部材51の接着固定基盤51a中心の連結ロッド51b上に位置合わせ配置する。次いで、上部固定部材52のトッププレート52aを、隣接する新規防水層4における外装板材41の端部近傍の箇所の上に乗せて挟みつけることで、爪部材52cを外装板材41に食い込ませて、双方の断熱部材41を仮固定しておき、トッププレート52aの中心穴から、中心軸に沿ってボルト52bを挿通し、かかるボルト52bを、接着固定基盤51a中心の連結ロッド51bにねじ込んでいくことで、トッププレート52aを断熱部材41に向って下降させて、締め付け固定することができる。
【0044】
そして、トッププレート52a側のボルト52bをさらに、締付け調整することで、トッププレート52a上面を、双方の外装板材41の上面に合わせることができ、断熱材目地部の段差を解消することができる。
【0045】
このようにして保持された新規な外装板材41上に、防水シート42を覆うように被せることで、全体として、略平坦な新規防水層4を形成し、防水施工工程を完了することができる(図2参照)」
エ 図2
「
[図:0001392105000005.jpg]
」
(2)甲第2号証に記載された発明及び技術事項
上記(1)によれば、甲第2号証には、次の発明及び事項(以下「甲2発明」及び「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
「建物屋上における既存防水層上に、複数の外装板材を敷設して、これら外装板材上に防水シートを被覆し、全体略平坦な新規防水層を形成する、屋上防水施工方法であって、
前記既存防水層の所定の施工部位を除去して下地を露出させる既存防水層除去工程と、
前記露出した下地に、前記既存防水層上に敷設されるそれぞれの外装板材を連結して締付け固定する締付固定手段を非機械的固定方法によって設置する締付固定手段設置工程と、
前記締付固定手段周囲の既存防水層の除去箇所に、防水層を埋め戻す工程と、
前記既存防水層上全体に、前記複数の外装板材を敷設する際、前記それぞれの外装板材を、前記締付固定手段により挟み込んで締付固定し、さらに前記外装板材上に防水シートを被覆する、新規防水層形成工程と、を具備し、
締付固定手段は、実質的に下地側固定部材と上部固定部材とを具備し、
下地側固定部材は、接着固定基盤と接着固定基盤に立設した締付調節手段を構成する連結ロッドとからなり、連結ロッドは、接着固定基盤に溶着されており、
下地側固定部材の接着固定基盤の底面に周知の接着剤を塗布し、適度な押圧力をかけて、接着固定基盤の底面を露出下地に押し付けて、所定時間維持し、所望の接着強度を得て、これによって、接着固定基盤の中心には、締付調節手段を構成する連結ロッドが鉛直方向に向って立設状態とすることができる、
屋上防水施工方法。」
(甲2技術事項)
「建物屋上における既存防水層上に、複数の外装板材を敷設して、これら外装板材上に防水シートを被覆し、全体略平坦な新規防水層を形成する、屋上防水施工方法において、
前記既存防水層の所定の施工部位を除去して下地を露出させる既存防水層除去工程と、
前記露出した下地に、前記既存防水層上に敷設されるそれぞれの外装板材を連結して締付け固定する締付固定手段を非機械的固定方法によって設置する締付固定手段設置工程と、
前記締付固定手段周囲の既存防水層の除去箇所に、防水層を埋め戻す工程と、
を有している点。」
3 甲第3号証
(1)甲第3号証の記載
本件特許出願前に頒布された甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、金属板屋根の防水改修方法及びその構造に関するものである。」
イ「【0013】この発明において、上記補強片のビス止め後、屋根全面に断熱材を敷設し、その断熱材を介在して、防水シートを張設するようにすることもできる。このように断熱材を介在すれば、屋根の断熱効果が向上する。」
ウ「【0015】
【実施例】図1、図2に一実施例を示し、この実施例も従来と同様に、野地板1に上下方向のかわら棒2を横方向に固着し、そのかわら棒2間にトタンなどの金属板3を固着するとともに、その金属板3の側縁をかわら棒2に沿って立ち上げ、上ぶた3aをかわら棒2に被せて、金属板3側縁と上ぶた3a側縁をはぜ継ぎした金属板かわら棒ぶき屋根構造である。
【0016】そのかわら棒2に断面コ字状のステンレス製補強片4が跨ぐように嵌めてビス5により止められている。この補強片4の位置は、後述の防水シートPの固定位置に応じて適宜な所要位置に必要数を決定する。全ての補強片4をビス止め後、かわら棒2間全面に断熱材6aを補強片4上面と面一となるように敷設し、その上にさらに断熱材6bを敷設する。上側の断熱材6bは図3に示すように省くことができ、断熱材6a、6b相互間及び断熱材6aと金属板3との間には接着剤を介在するとよい。断熱材6a、6bにはポリスチレンなどを採用する。」
エ「【0020】図5に示す実施例は、断熱材6a、6bを設けずに、金属板3、上ぶた3a上に防水シートPを直接に張設したものであり、補強片4に導体片7を直接にビス止めし、その上に、電磁誘導加熱により防水シートPを固定する。
【0021】図6に示す実施例は、電磁誘導加熱接着に代えて、補強片4上に防水シートPを被せ、その上から固着片(導体片)7をビス8により防水シートPを貫通させて補強片4(かわら棒2)に固定して、防水シートPを張設したものである。このとき、固着片7の裏面には接着剤を介在することができ、固着片7には防水シート片9を被せて接着し、ビス貫通部の防水を行う。この固着方法でも断熱材6a、6bを介在し得ることは勿論である。」
オ 図面
(ア)図1
「
[図:0001392105000006.jpg]
」
上記図1から、金属板3と防水シートPとの間に断熱材6a、6bを介在させている点が看取できる。
(イ)図5
「
[図:0001392105000007.jpg]
」
(ウ)図6
「
[図:0001392105000008.jpg]
」
上記図5及び図6から、金属板3と防水シートPとの間に断熱材を介在させていない点が看取できる。
(2)甲第3号証に記載された技術事項
上記(1)から、甲第3号証には、次の事項(以下、「甲3技術事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲3技術事項1)
「金属板屋根の防水改修方法において、金属板3と防水シートPとの間に断熱材6a、6bを介在させる場合と、介在させない場合がある点。」
(甲3技術事項2)
「野地板1に上下方向のかわら棒2を横方向に固着し、そのかわら棒2間にトタンなどの金属板3を固着するとともに、その金属板3の側縁をかわら棒2に沿って立ち上げ、上ぶた3aをかわら棒2に被せて、金属板3側縁と上ぶた3a側縁をはぜ継ぎした金属板かわら棒ぶき屋根構造であって、そのかわら棒2に断面コ字状のステンレス製補強片4が跨ぐように嵌めてビス5により止められているものにおいて、
金属板3、上ぶた3a上に防水シートPを直接に張設したものであり、補強片4に導体片7を直接にビス止めし、その上に、電磁誘導加熱により防水シートPを固定した点。」
第5 当審の判断
1 甲第1号証を主引用例とした進歩性について
(1)対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「ルーフィングシート」は、「合成高分子系ルーフィングシート防水改修工事を対象としている」ことから、本件発明の「新規の防水シート」に相当する。
甲1発明は、「ルーフィングシート」を「建物の天井の外面に適用」した「防水工法」であるから、「屋上」の防水工法に係るものであるといえる。
また、甲1発明の「下地」が、「建物の天井の外面」、すなわち「屋上」であることは、明らかである。
そうすると、甲1発明の「下地」に「ルーフィングシート」を「敷設」することと、本件発明の「建物屋上における既存防水層又は断熱層」に「新規の防水シートを被覆」することとは、「建物屋上における」構造体に「新規の防水シートを被覆」する点で共通する。
甲1発明の「ルーフィングシート」が、建物の屋上において新規の防水層を形成することは明らかである。
そうすると、甲1発明の「ルーフィングシートを用いて施工する防水工法」は、本件発明の「新規の防水シートを被覆し新規防水層を形成する、屋上防水施工方法」及び「屋上防水施工方法」に相当する。
イ 甲1発明の、撤去される「防水保護層」及び「防水層」は、本件発明の「既存防水層」に相当する。
また、甲1発明は、「防水保護層の撤去」及び「防水層撤去」をするとともに、「下地調整 清掃」をするものであるから、下地を露出させていることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「防水保護層の撤去」及び「防水層撤去」をすることと、本件発明の「既存防水層又は断熱層の所定の施工部位を除去して下地を露出させる除去工程」とは、「既存防水層又は断熱層」を「除去して下地を露出させる除去工程」で共通する。
ウ 甲1発明の「下地」は、本件発明の「前記露出した下地」に相当する。
甲1発明において、「機械的固定法」(SI工法を採用しない場合)であって、(「○2固定金具の先付け施工法」を採用した場合をみると、
「下地調整 清掃」の工程の後に、「絶縁用シートの敷設」の工程があるとともに、「固定金具の取付け」、「ルーフィングシートの敷設」、「シートと固定金具の接合」の工程がある。詳細には、甲1発明において、「円盤状固定金具を固定釘で取り付けたのち、円盤状固定金具の上にルーフィングシートが敷設され、ルーフィングシートの円盤状固定金具への溶着がされる」ている(甲1発明の「固定金具の先付け工法」の前段)。
甲1発明の、「ルーフィングシート」は、「円盤状固定金具」に溶着しているので、「円盤状固定金具」は「ルーフィングシート」を固定しているものといえる。
よって、甲1発明の「円盤状固定金具」は、本件発明の「新規の防水シートを固定する固定手段」に相当する。
また、甲1発明の「絶縁用シート」は、「下地調整 清掃」の工程のあとに敷設されているのであるから、「絶縁用シート」が「下地」の上に敷設されているといえる。そして、そののちに、「円盤状固定金具を固定釘で取り付け」ているのであるから、「固定釘」が「絶縁用シート」を貫通して下地に到達していることは明らかであり、また、「円盤状固定金具」が「下地」に固定されていることも明らかである。
そうすると、甲1発明の、「下地調整 清掃」の工程のあとに「絶縁用シート」が敷設されていて、「円盤状固定金具を固定釘で取り付け」ていることと、本件発明の「下地」に、「前記新規の防水シートを固定する固定手段を接着による固定方法によって設置する固定手段設置工程」とは、「下地」に、「前記新規の防水シートを固定する固定手段」を「設置する固定手段設置工程」の点で共通する。
エ 上記アを踏まえると、甲1発明の「下地」に「ルーフィングシート」を「敷設」ことと、本件発明の「前記既存防水層又は断熱層に、前記新規の防水シートを被覆」することとは、「建物屋上における」構造体に「新規の防水シートを被覆」する点で共通する。
甲1発明は「ルーフィングシートの円盤状固定金具への溶着がされる」ものであるから、「ルーフィングシート」を「円盤状固定金具」に固定しているといえる。
そうすると、甲1発明の「ルーフィングシートの円盤状固定金具への溶着がされる」ことは、本件発明の「前記固定手段に前記新規の防水シートを固定する、新規防水シート設置工程」に相当する。
そうすると、本件発明と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「建物屋上における構造体に、新規の防水シートを被覆し新規防水層を形成する、屋上防水施工方法であって、
既存防水層又は断熱層を除去して下地を露出させる除去工程と、
前記露出した下地に、前記新規の防水シートを固定する固定手段を設置する固定手段設置工程と、
建物屋上における構造体に、前記新規の防水シートを被覆し、前記固定手段に前記新規の防水シートを固定する、新規防水シート設置工程と、
を具備する屋上防水施工方法。」
<相違点1>
「新規の防水シートを被覆」する「建物屋上における」構造体について、本件発明では、「既存防水層又は断熱層」であるのに対して、甲1発明では、「下地」である点。
<相違点2>
本件発明は、「前記既存防水層又は断熱層の所定の施工部位を除去して下地を露出させる除去工程」及び「前記固定手段周囲の前記既存防水層又は断熱層の除去箇所を埋め戻す工程」を有しているのに対して、甲1発明では 、「既存防水層」(「防水保護層」、「防水層」)を除去するものの、所定の施工部位を除去することは特定されておらず、固定手段周囲の既存防水層の除去箇所を埋め戻すことも特定されていない点。
<相違点3>
「固定手段設置工程」について、本件発明では、「露出した下地」に「新規の防水シートを固定する固定手段」を「接着による固定方法によって設置する固定手段設置工程」であるのに対して、甲1発明では、固定手段(円盤状固定金具)が接着によらない固定方法によって設置する固定手段設置工程である点。
(2)判断
事案に鑑みて、まず、相違点2について検討する。
甲2技術事項をみると、甲2技術事項の「既存防水層の所定の施工部位を除去して下地を露出させる既存防水層除去工程」及び「既存防水層の除去箇所に、防水層を埋め戻す工程」は、本件発明の「前記既存防水層又は断熱層の所定の施工部位を除去して下地を露出させる除去工程」及び「前記固定手段周囲の前記既存防水層又は断熱層の除去箇所を埋め戻す工程」に、それぞれ相当するといえる。
したがって、甲2技術事項は、相違点2に係る本件発明の構成を有しているといえる。
しかしながら、甲1発明の「円盤状固定金具」は、「下地」に対して上方から「固定釘」を打つことにより固定されるものであるから、当該固定に際して、「既存防水層又は断熱層」の特定の部位を撤去したり、撤去した特定の部位を埋め戻すということはしないから、甲1発明に、甲2技術事項の「所定の施工部位を除去して下地を露出させる除去工程」及びこれに続く「既存防水層の除去箇所に、防水層を埋め戻す工程」を適用する動機づけは存在しない。
よって、甲1発明に、甲2技術事項を適用することはできない。
したがって、甲1発明に、甲2技術事項を適用し、相違点2に係る本件発明の構成とすることはできない。
また、甲1技術事項1、甲1技術事項2、甲2発明、甲3技術事項1及び甲3技術事項2をみても、相違点2に係る本件発明の構成は記載も示唆もされていない。
よって、甲1発明に、甲2技術事項、及び申立人が提出したその余の証拠に記載された発明ないし技術事項に基いて、相違点1に係る本件発明の構成とすることはできない。
(3)申立人の主張
申立人は、甲第2号証に記載されている屋上防水施工方法は甲1発明と技術分野を一にし、屋上防水において躯体を損傷することなく施工することは自明な課題である点から両者の課題は共通するので、甲2技術事項を甲1発明へ適用する動機付けが存在し、また、本件発明により得られる作用効果も、甲1発明、甲2技術事項、従来周知の技術事項から予測し得る範囲内のものであり、格別な作用効果を奏するものとはいえない旨主張する。(申立書13頁13行-14頁6行)
しかしながら、上記(2)で説示したとおり、甲1発明に、甲2技術事項を適用する動機付けは存在しない。また、甲1発明に、甲2技術事項を適用できない以上、本件発明により得られる作用効果が、甲1発明、甲2記技術項等から予測し得る範囲内のものであるとはいえない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
(4)小括
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、甲1発明、甲2技術事項、及び申立人が提出したその余の証拠に記載された発明ないし技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 甲第2号証を主引用例とした進歩性について
(1)対比
本件発明と甲2発明とを対比する。
ア 甲2発明の「建物屋上における既存防水層」は、本件発明の「建物屋上における既存防水層又は断熱層」に相当する。
甲2発明の「防水シート」は、本件発明の「新規の防水シート」に相当する。
甲2発明の「防水シートを被覆」し、「新規防水層を形成する、屋上防水施工方法」は、本件発明の「新規の防水シートを被覆し新規防水層を形成する、屋上防水施工方法」に相当する。
イ 甲2発明の「前記既存防水層の所定の施工部位を除去して下地を露出させる既存防水層除去工程」は、本件発明の「前記既存防水層又は断熱層の所定の施工部位を除去して下地を露出させる除去工程」に相当する。
ウ 甲2発明の「前記既存防水層上に敷設されるそれぞれの外装板材を連結して締付け固定する締付固定手段」と、本件発明の「前記新規の防水シートを固定する固定手段」とは、「固定手段」で共通する。
甲2発明は、「締付固定手段」が具備する「下地側固定部材」について、「下地側固定部材の接着固定基盤の底面に周知の接着剤を塗布し、適度な押圧力をかけて、接着固定基盤の底面を露出下地に押し付けて」「所望の接着強度を得」ていることから、「締付固定手段」を露出した下地に、接着による固定方法によって設置しているといえる。
そうすると、甲2発明は、「締付固定手段」が具備する「下地側固定部材」について、「下地側固定部材の接着固定基盤の底面に周知の接着剤を塗布し、適度な押圧力をかけて、接着固定基盤の底面を露出下地に押し付けて」「所望の接着強度を得」ていることと、本件発明の「前記露出した下地に、前記新規の防水シートを固定する固定手段を接着による固定方法によって設置する固定手段設置工程」とは、「前記露出した下地」に、「固定手段を接着による固定方法によって設置する固定手段設置工程」である点で共通する。
エ 甲2発明の「前記締付固定手段周囲の既存防水層の除去箇所に、防水層を埋め戻す工程」は、本件発明の「前記固定手段周囲の前記既存防水層又は断熱層の除去箇所を埋め戻す工程」に相当する。
オ 甲2発明の「前記既存防水層上全体に、前記複数の外装板材を敷設する際、前記それぞれの外装板材を、前記締付固定手段により挟み込んで締付固定し、さらに前記外装板材上に防水シートを被覆する、新規防水層形成工程」と、本件発明の「前記既存防水層又は断熱層に、前記新規の防水シートを被覆し、前記固定手段に前記新規の防水シートを固定する、新規防水シート設置工程」とは、「前記新規の防水シートを被覆」する「新規防水シート設置工程」で共通する。
カ 甲2発明の「屋上防水施工方法」は、本件発明の「屋上防水施工方法」に相当する。
そうすると、本件発明と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「建物屋上における既存防水層又は断熱層に、さらに新規の防水シートを被覆し新規防水層を形成する、屋上防水施工方法であって、
前記既存防水層又は断熱層の所定の施工部位を除去して下地を露出させる除去工程と、
前記露出した下地に、固定手段を接着による固定方法によって設置する固定手段設置工程と、
前記固定手段周囲の前記既存防水層又は断熱層の除去箇所を埋め戻す工程と、
前記新規の防水シートを被覆する、新規防水シート設置工程と、
を具備する屋上防水施工方法。」
<相違点4>
「固定手段」について、本件発明では、「新規の防水シートを固定する」ものであるの対して、甲2発明では、「前記既存防水層上全体に、前記複数の外装板材を敷設する際、前記それぞれの外装板材」を、「挟み込んで締付固定」する「締付固定手段」である点。
<相違点5>
「新規防水シート設置工程」について、本件発明では、「前記既存防水層又は断熱層に、新規の防水シート被覆」しているのに対して、甲2発明では、「既存防水層上」に「外装板材を敷設」し、「前記外装板材上に防水シートを被覆」している点。
(2)判断
相違点4について検討する。
甲2発明は、「前記既存防水層上全体に、前記複数の外装板材を敷設する際に、それぞれの外装板材を、前記締付固定手段により挟み込んで締付固定し、さらに前記外装板材上に防水シートを被覆」しているものであるが、「締付固定手段」が、防水シートを固定するものではなく、また、甲第2号証には、「締付固定手段」が、被覆される「防水シート」を固定できる機能を有していることを示唆する記載はないから、甲2発明の、締付固定手段に、周知技術(甲1技術事項2及び甲3技術事項2)を適用する動機付けはない。
よって、甲2発明に、周知技術を適用することはできない。
したがって、甲2発明に周知技術を適用し、相違点4に係る本件発明の構成とすることはできない。
また、甲1発明、甲1技術事項1、甲2技術事項及び甲3技術事項1をみても、相違点4に係る本件発明の構成は記載も示唆もされていない。
よって、甲2発明に、甲2技術事項、及び申立人が提出したその余の証拠に記載された発明ないし事項に基いて、相違点4に係る本件発明の構成とすることはできない。
(3)申立人の主張
申立人は、相違点4(申立人がいう相違点3)について、甲1技術事項1及び甲3技術事項1(申立人がいう甲1記載事項B及び甲3記載事項B)が示すように、固定手段(甲1の固定金具、甲3の固着片7)への固定によって防水シートを固定することは周知の技術であり、防止シートを単に「被覆」するよりも「固定」する方が、防水シートのズレやめくれを抑制でき利点があるから、溶着又は押圧によって防水シートを固定する固定手段を採用する動機付けが存在する。従って、甲2発明において相違点4を解消して本件発明の構成に相当することは容易である旨主張する。(申立書15頁18-26行)
しかしながら、上記(2)で説示したとおり、甲第2号証には、「締め付け固定手段」が、被覆される「防水シート」を固定できる機能を有していることを示唆する記載、例えば、被覆する防水シートを固定することができるような個数や配置を有していること等の記載はないので、甲2発明の締付固定手段に周知技術を適用する動機付けはないというべきである。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。
(4)小括
よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明は、甲2発明、周知技術、及びに申立人が提出したその余の証拠に記載された発明ないし事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700861