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特許異議申立

2022-700567

自然な皮膚明色化効果のための組成物

審判番号
2022-700567
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-212703
登録番号
6995472
請求日
2022年06月30日
審決日
2023年06月23日
公報発行日
2023年09月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ロレアル
  • 【権利者代理人】村山 靖彦
  • 【権利者代理人】実広 信哉
  • 【権利者代理人】堀江 健太郎
  • 【異議申立人】大薮 朋子
審判長/審判官
  • 審判長 木村 敏康
  • 審判官 井上 典之
  • 審判官 齊藤 真由美
分類
P1651.537-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6995472号発明「自然な皮膚明色化効果のための組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6995472号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕及び15について訂正することを認める。 特許第6995472号の請求項1~2及び5~15に係る特許を維持する。 特許第6995472号の請求項3及び4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6995472号(以下「本件特許」という。)の請求項1~15に係る発明の特許は、平成28年10月31日に特願2016-212703号として出願され、令和3年12月17日に特許権の設定登録がされ、令和4年1月14日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、令和4年6月30日に特許異議申立人である 大藪 朋子 (以下「申立人」という。)により本件特許の請求項1~15に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。 その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和4年11月 7日付け:取消理由通知 令和5年 2月 3日 :訂正請求書及び意見書の提出 同年 3月 6日付け:訂正請求があった旨の通知 なお、申立人は、令和5年3月6日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしていない。 第2 訂正請求について 1 訂正の内容 令和5年2月3日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は、「特許第6995472号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~15について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1~15からなるものである(下線は、訂正による記載の変更箇所を示す。)。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、 「皮膚等のケラチン物質のための組成物であって、 (a)粒径が5μm以下である少なくとも1種の板状フィラー、 (b)粒径が15μm以下である少なくとも1種の真珠光沢顔料、及び (c)少なくとも1種の中空又は多孔質粒子 を含み、 (a)板状フィラーの屈折率が2.0以下であり、 (b)真珠光沢顔料が、有色の反射光を有する、組成物。」 とあるのを、 「皮膚のための組成物であって、 (a)粒径が0.1μm以上5μm以下である少なくとも1種の板状フィラー、 (b)粒径が15μm以下である少なくとも1種の真珠光沢顔料、及び (c)少なくとも1種の中空又は多孔質粒子 を含み、 (a)板状フィラーが、窒化ホウ素のみからなり、 (a)板状フィラーの屈折率が1.6~1.8であり、 (b)真珠光沢顔料が、有色の反射光を有する、組成物。」 に訂正する。 (当審注:請求項1の記載を引用する請求項2及び5~14も同様に訂正するものと認める。) (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2において、 「(a)板状フィラーの粒径が0.1μm以上である、請求項1に記載の組成物。」 とあるのを、 「(a)板状フィラーの粒径が0.3μm以上である、請求項1に記載の組成物。」 に訂正する。 (当審注:請求項2の記載を引用する請求項5~14も同様に訂正するものと認める。) (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5において、 「(a)板状フィラーが、窒化ホウ素からなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。」 とあるのを、 「(a)板状フィラーが、約2μmの粒径及び1.74の屈折率を有する窒化ホウ素のみからなる、請求項1又は2に記載の組成物。」 に訂正する。 (当審注:請求項5の記載を引用する請求項6~14も同様に訂正するものと認める。) (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6において、 「請求項1から5のいずれか一項に記載の」 とあるのを、 「請求項1、2及び5のいずれか一項に記載の」 に訂正する。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7において、 「請求項1から6のいずれか一項に記載の」 とあるのを、 「請求項1、2、5及び6のいずれか一項に記載の」 に訂正する。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8において、 「請求項1から7のいずれか一項に記載の」 とあるのを、 「請求項1、2及び5から7のいずれか一項に記載の」 に訂正する。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9において、 「請求項1から8のいずれか一項に記載の」 とあるのを、 「請求項1、2及び5から8のいずれか一項に記載の」 に訂正する。 (10) 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10において、 「請求項1から9のいずれか一項に記載の」 とあるのを、 「請求項1、2及び5から9のいずれか一項に記載の」 に訂正する。 (11) 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11において、 「請求項1から10のいずれか一項に記載の」 とあるのを、 「請求項1、2及び5から10のいずれか一項に記載の」 に訂正する。 (12) 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項12において、 「請求項1から11のいずれか一項に記載の」 とあるのを、 「請求項1、2及び5から11のいずれか一項に記載の」 に訂正する。 (13) 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項13において、 「請求項1から12のいずれか一項に記載の」 とあるのを、 「請求項1、2及び5から12のいずれか一項に記載の」 に訂正する。 (14) 訂正事項14 特許請求の範囲の請求項14において、 「請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物を塗布する工程を含む、皮膚等のケラチン物質のための美容方法。」 とあるのを、 「請求項1、2及び5から13のいずれか一項に記載の組成物を塗布する工程を含む、皮膚のための美容方法。」 に訂正する。 (15) 訂正事項15 特許請求の範囲の請求項15において、 「ケラチン物質上の欠陥を十分に被覆する一方で、ケラチン物質に明るさ及び自然な仕上がりを与えるための、 ケラチン物質上での、 (a)粒径が5μm以下である少なくとも1種の板状フィラー、 (b)粒径が15μm以下である少なくとも1種の真珠光沢顔料、及び (c)少なくとも1種の中空又は多孔質粒子 の組合せの使用であって、 (a)板状フィラーが、屈折率が2.0以下であり、 (b)真珠光沢顔料が、有色の反射光を有する、使用。」 とあるのを、 「皮膚上の欠陥を十分に被覆する一方で、皮膚に明るさ及び自然な仕上がりを与えるための、 皮膚上での、 (a)粒径が0.1μm以上5μm以下である少なくとも1種の板状フィラー、 (b)粒径が15μm以下である少なくとも1種の真珠光沢顔料、及び (c)少なくとも1種の中空又は多孔質粒子 の組合せの使用であって、 (a)板状フィラーが、窒化ホウ素のみからなり、 (a)板状フィラーの屈折率が1.6~1.8であり、 (b)真珠光沢顔料が、有色の反射光を有する、使用。」 に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正事項1~14に係る訂正前の請求項1~14について、請求項2及び5~14は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正され、請求項5~14において直接的又は間接的に記載が引用される請求項3及び4は、訂正事項3及び4によって削除されるから、本件訂正のうち、訂正事項1~14による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項1~14についてされたものである。 3 訂正事項についての訂正要件の判断 (1) 訂正事項1について ア 訂正の目的の適否 (ア) 訂正事項1は、次の4つの訂正事項からなるものと認められる。 ・請求項1に記載の「皮膚等のケラチン物質のための組成物」を「皮膚のための組成物」とする訂正事項(以下「訂正事項1-1」という。)。 ・請求項1に記載の板状フィラーの粒径について、「5μm以下」とあるのを「0.1μm以上5μm以下」とする訂正事項(以下「訂正事項1-2」という。)。 ・請求項1に記載の板状フィラーについて、「窒化ホウ素のみ」からなるものとする訂正事項(以下「訂正事項1-3」という。)。 ・請求項1に記載の板状フィラーの屈折率について、「2.0以下」とあるのを「1.6~1.8」とする訂正事項(以下「訂正事項1-4」という。)。 (イ) 訂正事項1-1は、組成物の適用対象を、「皮膚等」の例示を伴う「ケラチン物質」から、該当するものが明瞭でない「等」という事項を削除して、「皮膚」のみに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (ウ) 訂正事項1-2は、板状フィラーの粒径を、「5μm以下」の範囲内で、下限値を規定して「0.1μm以上5μm以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (エ) 訂正事項1-3は、成分及び材質が特定されていない板状フィラーについて、「窒化ホウ素のみ」からなることを特定して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (オ) 訂正事項1-4は、板状フィラーの屈折率を、「2.0以下」の範囲内で、「1.6~1.8」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項1-1における「皮膚のための組成物」については、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)において、例えば、【0026】に「特に、本発明による上記の組成物は、皮膚にぎらぎらした外観及び不自然な仕上がりを与えることなく、皮膚の色の欠点、例えばしみ並びに/又は皮膚上の微小起伏、例えば毛穴及び小じわの可視性を低下させて、皮膚に明るさを与えることができる。」(下線は当審合議体が付した。以下、摘記箇所の下線について同じ。)と記載されている。 訂正事項1-2における板状フィラーの粒径の「0.1μm以上」との下限値については、本件明細書の【0009】に「(a)板状フィラーは、粒径が0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上となり得る。」と記載されている。 訂正事項1-3における板状フィラーが「窒化ホウ素のみ」からなることについては、本件明細書の【0041】に「(a)板状フィラーは、窒化ホウ素から本質的になることが更により好ましい。(a)板状フィラーは、窒化ホウ素のみからなることが最も好ましい。」と記載されている。 訂正事項1-4の板状フィラーの屈折率の範囲「1.6~1.8」については、本件明細書の【0008】に「(a)板状フィラーが、屈折率が2.0以下、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下であり、」と記載され、同【0010】に「(a)板状フィラーは、屈折率が1.2以上、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.6以上となり得る。」と記載されている。 そうすると、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項の導入をするものではない。 したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1による訂正は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 エ 訂正事項1についてのまとめ 上記ア~ウのとおり、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2) 訂正事項2について ア 訂正の目的の適否 訂正事項2による訂正は、請求項2に記載の板状フィラーの粒径を、「0.1μm以上」の範囲内であって、訂正事項1-2により限定された「0.1μm以上5μm以下」の範囲内において、下限値を「0.3μm以上」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項2における板状フィラーの粒径の「0.3μm以上」との下限値については、本件明細書の【0009】に「(a)板状フィラーは、粒径が0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上となり得る。」と記載されているから、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲の記載を総合することによって導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項の導入をするものではない。 したがって、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2による訂正は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 エ 訂正事項2についてのまとめ 上記ア~ウのとおり、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (3) 訂正事項3及び4について 訂正事項3及び4による訂正は、それぞれ請求項3及び4を削除するものにすぎないから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項の導入をするものでないことは明らかであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項3及び4による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (4) 訂正事項5について ア 訂正の目的の適否 訂正事項5による訂正は、請求項5において板状フィラーが「窒化ホウ素からなる」とされているのを、その粒径について、記載を引用する請求項1における「5μm以下」の範囲内であって、記載を引用する請求項2における「0.1μm以上」の範囲内であり、訂正事項1-2により限定された「0.1μm以上5μm以下」の範囲内である、「約2μmの粒径」に限定し、その屈折率について、記載を引用する請求項1における「2.0以下」の範囲内であって、記載を引用する請求項3における「1.2以上」の範囲内であり、訂正事項1-4により限定された「1.6~1.8」の範囲内である、「1.74の屈折率」に限定し、板状フィラーが「窒化ホウ素」以外の成分も含み得たのを、訂正事項1-3により限定された「窒化ホウ素のみ」からなるという事項と整合するように、「窒化ホウ素のみからなる」と限定するものである。 したがって、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項5における「約2μmの粒径及び1.74の屈折率を有する窒化ホウ素のみからなる」板状フィラーについては、本件明細書の【0238】~【0242】において、実施例1及び2の組成物が含有する「窒化ホウ素1」に関し、平均粒径が「約2μm」であり(【0241】)、屈折率が「1.74」である(【0242】)ことが記載されており、実施例1及び2の組成物は、他に板状フィラーに該当する成分を含有しないものと認められる。 そうすると、訂正事項5による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲の記載を総合することによって導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項の導入をするものではない。 したがって、訂正事項5による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項5による訂正は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 エ 訂正事項5についてのまとめ 上記ア~ウのとおり、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (5) 訂正事項6~13について 訂正事項6~13による訂正は、請求項6が請求項1~5のいずれか1項の記載を引用し、請求項7が請求項1~6のいずれか1項の記載を引用し、請求項8が請求項1~7のいずれか1項の記載を引用し、請求項9が請求項1~8のいずれか1項の記載を引用し、請求項10が請求項1~9のいずれか1項の記載を引用し、請求項11が請求項1~10のいずれか1項の記載を引用し、請求項12が請求項1~11のいずれか1項の記載を引用し、請求項13が請求項1~12のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、訂正事項3及び4によって請求項3及び4が削除されるのに伴い、請求項6~13において、それぞれ記載を引用する請求項から請求項3及び4を削除して、引用する請求項の数を減少させる訂正である。 そうすると、訂正事項6~13による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 よって、訂正事項6~13による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (6) 訂正事項14について ア 訂正の目的の適否 訂正事項14による訂正は、美容方法の適用対象を、「皮膚等」の例示を伴う「ケラチン物質」から、該当するものが明瞭でない「等」という事項を削除して、「皮膚」のみに限定するとともに、請求項14は請求項1~13のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、訂正事項3及び4によって請求項3及び4が削除されるのに伴い、記載を引用する請求項から請求項3及び4を削除して引用する請求項の数を減少させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同法同条同項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項14における「皮膚のための美容方法」については、本件明細書の【0229】~【0231】において、「本発明はまた、上記で説明した本発明による組成物を塗布する工程を含む、皮膚等のケラチン物質のための美容方法に関する。・・・。本発明による組成物を皮膚等のケラチン物質に塗布する工程は、従来の手段、例えばパフにより、又は手によっても行うことができる。」と記載されており、美容方法の適用対象が皮膚であることが明示されているといえる。また、単に記載を引用する請求項の数が減少することにより、何ら新たな技術的事項が導入されるものではない。 そうすると、訂正事項14による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項の導入をするものではない。 したがって、訂正事項14による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項14による訂正は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項14による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 エ 訂正事項14についてのまとめ 上記ア~ウのとおり、訂正事項14による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (7) 訂正事項15について ア 訂正の目的の適否 (ア) 訂正事項15は、次の4つの訂正事項からなるものと認められる。 ・請求項15に記載の3箇所の「ケラチン物質」を、いずれも「皮膚」とする訂正事項(以下「訂正事項15-1」という。)。 ・請求項15に記載の板状フィラーの粒径について、「5μm以下」とあるのを「0.1μm以上5μm以下」とする訂正事項(以下「訂正事項15-2」という。)。 ・請求項15に記載の板状フィラーについて、「窒化ホウ素のみ」からなるものとする訂正事項(以下「訂正事項15-3」という。)。 ・請求項15に記載の板状フィラーの屈折率について、「2.0以下」とあるのを「1.6~1.8」とする訂正事項(以下「訂正事項15-4」という。)。 (イ) 訂正事項15-1は、「組合せの使用」の対象を、「皮膚」の他には該当するものが明瞭でない「ケラチン物質」から、「皮膚」のみに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同法同条同項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (ウ) 訂正事項15-2は、板状フィラーの粒径を、「5μm以下」の範囲内で、下限値を規定して「0.1μm以上5μm以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (エ) 訂正事項15-3は、成分及び材質が特定されていない板状フィラーについて、「窒化ホウ素のみ」からなることを特定し限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (オ) 訂正事項15-4は、板状フィラーの屈折率を、「2.0以下」の範囲内で「1.6~1.8」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項15-1における「組合せの使用」の対象である「皮膚」については、本件明細書の【0235】において、「上記の使用は、皮膚の欠陥を十分に被覆する一方で、皮膚に明るさ及び自然な仕上がりを与えるために、ケラチン物質上で行われることが好ましい。」と記載されている。 訂正事項15-2における板状フィラーの粒径の「0.1μm以上」との下限値については、本件明細書の【0009】に「(a)板状フィラーは、粒径が0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上となり得る。」と記載されている。 訂正事項15-3における板状フィラーが「窒化ホウ素のみ」からなることについては、本件明細書の【0041】に「(a)板状フィラーは、窒化ホウ素から本質的になることが更により好ましい。(a)板状フィラーは、窒化ホウ素のみからなることが最も好ましい。」と記載されている。 訂正事項15-4の板状フィラーの屈折率の範囲「1.6~1.8」については、本件明細書の【0008】に「(a)板状フィラーが、屈折率が2.0以下、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下であり、」と記載され、同【0010】に「(a)板状フィラーは、屈折率が1.2以上、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.6以上となり得る。」と記載されている。 そうすると、訂正事項15による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項の導入をするものではない。 したがって、訂正事項15による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項15による訂正は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項15による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 エ 訂正事項15についてのまとめ 上記ア~ウのとおり、訂正事項15による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (8) 独立特許要件について 本件特許異議申立事件においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~15に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正事項1~15による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではあるが、訂正後の請求項1~2及び5~15に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。 4 訂正請求についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕及び15について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の本件特許に係る発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の請求項1~15(以下、請求項の番号順に、「本件訂正請求項1」等という。)の記載は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~15に記載された以下のとおりのものである(下線は、訂正による記載の変更箇所を示す。)。 本件訂正により請求項3及び4が削除されたところ、本件訂正請求項1~2及び5~15に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~2及び5~15に記載された以下の事項により特定されるとおりのものと認める(以下、請求項の番号順に「本件訂正発明1」等といい、これらを総称して「本件訂正発明」ということがある。)。 「【請求項1】 皮膚のための組成物であって、 (a)粒径が0.1μm以上5μm以下である少なくとも1種の板状フィラー、 (b)粒径が15μm以下である少なくとも1種の真珠光沢顔料、及び (c)少なくとも1種の中空又は多孔質粒子 を含み、 (a)板状フィラーが、窒化ホウ素のみからなり、 (a)板状フィラーの屈折率が1.6~1.8であり、 (b)真珠光沢顔料が、有色の反射光を有する、組成物。 【請求項2】 (a)板状フィラーの粒径が0.3μm以上である、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】 (a)板状フィラーが、約2μmの粒径及び1.74の屈折率を有する窒化ホウ素のみからなる、請求項1又は2に記載の組成物。 【請求項6】 (a)板状フィラーの量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%の範囲である、請求項1、2及び5のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項7】 (b)真珠光沢顔料が、青色の反射光を有する、請求項1、2、5及び6のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項8】 (b)真珠光沢顔料の粒径が1μm以上である、請求項1、2及び5から7のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項9】 (b)真珠光沢顔料が、マイカ並びに金属酸化物を含む、請求項1、2及び5から8のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項10】 (b)真珠光沢顔料の量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%の範囲である、請求項1、2及び5から9のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項11】 (c)中空又は多孔質粒子の粒径が15μm以下である、請求項1、2及び5から10のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項12】 (c)中空又は多孔質粒子が、マイカ、合成マイカ、タルク、セリサイト、窒化ホウ素、ガラス、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ヒドロキシアパタイト、シリカ、シリケート、ホウケイ酸カルシウムナトリウム、酸化亜鉛、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、トリケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化マグネシウム、オキシ塩化ビスマス、カオリン、ヒドロタルサイト、鉱物クレイ、合成クレイ、酸化鉄、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機材料を含む、請求項1、2及び5から11のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項13】 (c)中空又は多孔質粒子の量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%の範囲である、請求項1、2及び5から12のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項14】 請求項1、2及び5から13のいずれか一項に記載の組成物を塗布する工程を含む、皮膚のための美容方法。 【請求項15】 皮膚上の欠陥を十分に被覆する一方で、皮膚に明るさ及び自然な仕上がりを与えるための、 皮膚上での、 (a)粒径が0.1μm以上5μm以下である少なくとも1種の板状フィラー、 (b)粒径が15μm以下である少なくとも1種の真珠光沢顔料、及び (c)少なくとも1種の中空又は多孔質粒子 の組合せの使用であって、 (a)板状フィラーが、窒化ホウ素のみからなり、 (a)板状フィラーの屈折率が1.6~1.8であり、 (b)真珠光沢顔料が、有色の反射光を有する、使用。」 第4 当審において通知した取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~15に係る発明の特許について、当審において令和4年11月7日付けの取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。なお、ここでいう「請求項1」等の表記は、本件訂正前の本件特許の請求項1等を意味するものであり、「本件発明1」等の表記は、本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明等を意味するものである。 [取消理由1](明確性要件違反) 請求項1及び14に記載の「皮膚等のケラチン物質」なる事項、並びに、請求項15に記載の「ケラチン物質」なる事項は、本件明細書【0025】の「組成物をケラチン物質に塗布した後に、ケラチン物質上の欠陥、例えばしみ、毛穴、及び小じわを十分に被覆し、ケラチン物質に十分な明るさ及び自然な外観を与えることができる。」との記載を参照すると、「皮膚」以外に具体的に如何なるものまで包含するのか(「爪」や「毛髪」の場合には、組成物が「しみ」や「小じわ」の被覆などの点で改善に寄与するものと直ちに認めることができない。)、明確に把握することができず、この点については、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~13の記載も同様である。 したがって、本件発明1~15は明確でないから、請求項1~15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 [取消理由2](サポート要件違反) 請求項1~15の記載は、皮膚等のケラチン物質のための組成物又はケラチン物質上での使用における組合せが、(a)板状フィラーについて、粒径の下限値、屈折率の下限値、又は、構成する具体的な材料、のいずれかが特定されていないものを含んでいるため、本件明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆により、ケラチン物質にケラチン物質上の欠陥の十分な被覆性を与える一方でケラチン物質に明るさ及び自然な仕上がりを与える、という課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものでなく、また、その記載又は示唆がなくとも、当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らして当該課題を解決できると認識できる範囲のものでない。 したがって、本件発明1~15は発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1~15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 第5 取消理由についての当審の判断 当審合議体は、本件訂正請求項1~2及び5~15に係る特許は、上記取消理由通知書に記載した取消理由及び証拠によっては、取り消すことはできないものと判断する。その理由の詳細は以下のとおりである。また、取消理由2の判断においては、次の文献を参照する。 <引用文献等一覧> A:「板状硫酸バリウムHシリーズ メイク製品向け高滑り性バリウム」, 2010年4月1日,マツモト交商 <URL: https://matsumoto-trd.com/product/pdf/concept/k16.pdf> B:特表2015-522064号公報 C:特表2007-533627号公報 D:特開平11-152210号公報 (文献A~Dは、取消理由通知書において当審合議体が引用した技術常識を示す文献である。) 乙1:上原静香,「透明感のある美しい肌って?」,照明学会誌,2002年, 86巻,3号,197-198頁 乙2:山田純ほか4名,「化粧品開発のための皮膚の光学的性質に関する 研究」,日本機械学会論文集(B編),2005年,71巻,705号, 1436-1444頁 (乙1及び乙2は、特許権者が令和5年2月3日付け意見書に添付して提出した乙第1号証の1及び乙第2号証の1である。) 1 取消理由1(明確性要件違反)について 本件訂正請求項1~2及び5~15の記載によれば、本件訂正発明1~2及び5~13の組成物、及び、本件訂正発明14の美容方法は、「皮膚」のためのものであることが特定されており、本件訂正発明15の組合せの使用の適用対象も「皮膚」であることが特定されている。 本件明細書の【0024】には、「本発明は主に、皮膚等のケラチン物質のための組成物であって、・・・」と記載され、「ケラチン物質」が「皮膚等」という例示を伴って記載されており、同【0025】には、「本発明による上記の組成物は、組成物をケラチン物質に塗布した後に、ケラチン物質上の欠陥、例えばしみ、毛穴、及び小じわを十分に被覆し、ケラチン物質に十分な明るさ及び自然な外観を与えることができる。」という説明が記載されているところ、ここでいう「ケラチン物質」が「皮膚」である場合には、「本発明」の組成物又は組合せを皮膚に塗布することにより、しみ、毛穴、及び小じわを十分に被覆し、皮膚に十分な明るさ及び自然な外観を与える、ということを何ら矛盾なく明確に理解することができる。 したがって、「皮膚等のケラチン物質」又は「ケラチン物質」が「皮膚」に特定された本件訂正請求項1~2及び5~15の記載には、上記取消理由1として指摘した不備はない。 2 取消理由2(サポート要件違反)について (1) サポート要件の判断の前提 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定される要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2) 特許請求の範囲の記載 本件訂正請求項1~2及び5~15の記載は、上記第3に摘記したとおりのものであって、いずれも共通して、以下の点を特徴として含むものであると認められる。 ア 皮膚のための組成物又は皮膚上での組合せの使用に係る。 イ 当該組成物又は当該組合せが、 (ア) 粒径が0.1μm以上5μm以下であり、屈折率が1.6~1.8である、窒化 ホウ素のみからなる、(a)板状フィラーを含む。 (イ) 粒径が15μm以下であり、有色の反射光を有する、(b)真珠光沢顔料 を含む。 (ウ) (c)中空又は多孔質粒子を含む。 (3) 発明の詳細な説明の記載 ア 本件明細書の発明の詳細な説明には、本件訂正請求項1~2及び5~15に関連する事項として、特許請求の範囲の記載の実質的な繰り返しや、周知・慣用技術の説明及び任意付加的な事項を除いて、以下のイ~キの事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付したものである(以下、摘記箇所の下線について同じ。)。 イ 【0002】~【0006】には、発明の背景技術について、次の記載がある。 「【背景技術】 【0002】 皮膚の欠陥、例えばしみ、毛穴及び小じわは、メイクアップ化粧品により対処されている。・・・。皮膚の欠陥をスキンケア化粧品でも隠蔽するために、不自然な人工的な見た目を与えないが、十分なレベルの被覆性が望まれている。 【0003】 従来、皮膚の欠陥を化粧料で隠蔽するには、着色顔料、例えば二酸化チタン及び酸化鉄が皮膚を被覆するために用いられている。しかしながら、この着色顔料を用いる場合、皮膚は、くすんで又は不自然に見え、例えば人工的な着色跡を有する傾向がある。また、スキンケア化粧料には、かかる着色顔料を用いることができないか、又は限定された量でしか用いることができず、その理由は、これらは、スキンケア化粧料を強く着色するからである。・・・。 【0004】 真珠光沢顔料もまた、皮膚の欠陥を補正するために用いられる。しかしながら、これらは、その強い反射特性のために、ぎらぎらした外観を与える傾向があり、これもまた不自然である。したがって、皮膚を人工的に見せることなく、皮膚の欠陥を隠蔽し、皮膚を自然に明色化するための技術が必要である。」 ウ 【0007】には、発明が解決しようとする課題について、【0023】~【0028】には、発明を実施するための形態について、それぞれ次の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明の一目的は、ケラチン物質にケラチン物質上の欠陥の十分な被覆性を与える一方で、ケラチン物質に明るさ及び自然な仕上がりを与えることができる、皮膚等のケラチン物質のための組成物を提供することである。」 「【発明を実施するための形態】 【0023】 鋭意検討の結果、本発明者らは、ケラチン物質にケラチン物質上の欠陥の十分な被覆性を与える一方で、ケラチン物質に明るさ及び自然な仕上がりを与えることができる、皮膚等のケラチン物質のための組成物を提供することが可能であるということを発見した。 【0024】 ・・・、本発明は主に、皮膚等のケラチン物質のための組成物であって、 (a)粒径が10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である少なくとも1種の板状フィラー、 (b)粒径が15μm以下、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下である少なくとも1種の真珠光沢顔料、及び (c)少なくとも1種の中空又は多孔質粒子 を含み、 (a)板状フィラーが、屈折率が2.0以下、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下であり、 (b)真珠光沢顔料が、有色の反射光を有する、組成物に関する。 【0025】 本発明による上記の組成物は、組成物をケラチン物質に塗布した後に、ケラチン物質上の欠陥、例えばしみ、毛穴、及び小じわを十分に被覆し、ケラチン物質に十分な明るさ及び自然な外観を与えることができる。 【0026】 特に、本発明による上記の組成物は、皮膚にぎらぎらした外観及び不自然な仕上がりを与えることなく、皮膚の色の欠点、例えばしみ並びに/又は皮膚上の微小起伏、例えば毛穴及び小じわの可視性を低下させて、皮膚に明るさを与えることができる。 【0027】 例えば、本発明による組成物は、皮膚等のケラチン物質上に、不自然な仕上がりを引き起こし得る色(例えば白色)の跡を残さない。 【0028】 本発明による組成物は、着色顔料を用いる必要がないことから、強く着色されない可能性がある。よって、本発明による組成物は、スキンケア化粧料に好ましい。一方、本発明による組成物は、皮膚メイクアップ化粧料として用いることは好ましくない。したがって、一実施形態では、本発明による組成物は、スキンケア化粧用組成物となり得、皮膚メイクアップ化粧用組成物となり得ない。」 エ 【0031】~【0043】には、「(a)板状フィラー」の説明が記載されており、当該成分の技術的な意義等について、次の記載がある。 「【0031】 (板状フィラー) 本発明による組成物は、限定された粒径及び限定された屈折率を有する少なくとも1種の(a)板状フィラーを含む。・・・。 【0032】 (a)板状フィラーは、粒径が10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下であり、屈折率が2.0以下、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下である。 ・・・ 【0035】 (a)板状フィラーは、その特徴的な屈折率のために、適切な被覆レベルを与えることによって皮膚等のケラチン物質の自然な明色化に寄与し得る。屈折率が2.0を超える従来の白色顔料、例えば二酸化チタンの使用は、強すぎて不自然な外観を引き起こし得る明るさを与え得ることを留意すべきである。粒径が10μmを超える従来の板状フィラーの使用は、ケラチン物質を十分に被覆することができず、十分な明るさを与えることができないことも留意すべきである。 ・・・ 【0037】 (a)板状フィラーは、粒径が0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上であることが好ましいこともある。・・・。 【0038】 (a)板状フィラーは、屈折率が1.2以上、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.6以上であることが好ましいこともある。 ・・・ 【0041】 (a)板状フィラーは、窒化ホウ素から本質的になることが更により好ましい。(a)板状フィラーは、窒化ホウ素のみからなることが最も好ましい。 ・・・ 【0043】 (a)板状フィラーの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.01質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~3質量%の範囲となり得る。」 オ 【0044】~【0060】には、「(b)真珠光沢顔料」の説明が記載されており、当該成分の技術的な意義等について、次の記載がある。 「【0044】 (真珠光沢顔料) 本発明による組成物は、限定された粒径及び有色の反射光を有する少なくとも1種の(b)真珠光沢顔料を含む。・・・。 【0045】 (b)真珠光沢顔料は、粒径が15μm以下、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下であり、有色の反射光を有する。 【0046】 限定された粒径及び有色の反射光を有する(b)真珠光沢顔料は、有色の反射光をケラチン物質の元の色と混合することによって皮膚等のケラチン物質の色補正に寄与し、自然な外観に寄与し得る。粒径が15μmを超える従来の真珠光沢顔料の使用は、ケラチン物質を十分に被覆することができず、十分な明るさを与えることができないが、ぎらぎらした外観及び不自然な仕上がりを与えることを留意すべきである。 ・・・ 【0053】 (b)真珠光沢顔料は、マイカ並びに金属酸化物、好ましくは酸化チタン及び/又は酸化スズを含むことが好ましいこともある。 ・・・ 【0060】 (b)真珠光沢顔料の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.01質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~3質量%の範囲となり得る。」 カ 【0061】~【0080】には、「(c)中空又は多孔質粒子」の説明が記載されており、当該成分の技術的な意義等について、次の記載がある。 「【0061】 (中空又は多孔質粒子) 本発明による組成物は、少なくとも1種の(c)中空又は多孔質粒子を含む。 ・・・ 【0063】 (c)中空又は多孔質粒子は、ケラチン物質の色を均一にし、そのぼかし効果によってケラチン物質上の欠陥を見えにくくすることに寄与し得る。したがって、(c)中空又は多孔質粒子は、ケラチン物質の被覆性を向上させ、十分な明るさを与えることができる。 ・・・ 【0065】 (c)中空又は多孔質粒子は、粒径が15μm以下、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下であることが好ましいこともある。 ・・・ 【0074】 (c)中空又は多孔質粒子は、少なくとも1種の無機材料を含むことが好ましい。 ・・・ 【0076】 特に、シリカ及びホウケイ酸カルシウムナトリウムがより好ましい。 ・・・ 【0080】 (c)中空又は多孔質粒子の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.01質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~3質量%の範囲となり得る。」 キ そして、【0237】~【0257】には、「実施例」として、次の記載がある。 「【実施例】 【0237】 ・・・ 【0238】 (実施例1~2及び比較例1~6) [調製] 実施例1~2及び比較例1~6による組成物のそれぞれを、表1に示す成分を混合することによって調製した。成分の量の数値はすべて、活性原料の「質量%」に基づいている。 【0239】 【表1】 [図:0001401630000001.jpg] 【0240】 (反射光の色) 真珠光沢顔料1:青色 真珠光沢顔料2:青色 【0241】 (平均粒径) 窒化ホウ素1:約2μm 真珠光沢顔料1:約7μm 窒化ホウ素2:約11μm 真珠光沢顔料2:約20μm 【0242】 (屈折率) 窒化ホウ素1:1.74 窒化ホウ素2:1.74 二酸化チタン:約2.5 【0243】 [評価] 実施例1~2及び比較例1~6による組成物のそれぞれ0.2gを、6名の判定士の顔の半分に塗布して、塗布後の皮膚上の跡、明るさ、しみの隠蔽、毛穴及び起伏の隠蔽、並びに皮膚のてかりに関して、顔の塗布した半分と素肌との差を次の基準に基づいて評価した。 【0244】 弱い :ほとんど目立たない 中程度 :いくらか目立つ 強い :目立つ 非常に強い:明らか 【0245】 結果を表2に示す。 【0246】 【表2】 [図:0001401630000002.jpg] 【0247】 表1及び表2に示す実施例1~2と比較例1~6との比較から、(a)粒径が10μm以下であり、屈折率が2.0以下である板状フィラー、(b)粒径が15μm以下であり、有色の反射光を有する真珠光沢顔料、及び、(c)中空又は多孔質粒子の組合せは、皮膚にぎらぎらした外観及び不自然な仕上がりを与えることなく、皮膚の色の欠点、例えばしみ並びに/又は皮膚上の微小起伏、例えば毛穴及び小じわの可視性を低下させて、皮膚に明るさを与えることができるということが認められる。 【0248】 特に、実施例1と比較例1との比較から、(b)真珠光沢顔料を用いない場合、組成物は、皮膚の色の欠点及び/又は皮膚上の微小起伏の可視性を低下させること、並びに皮膚に十分な明るさを与えることが困難であるということが認められる。 【0249】 実施例1と比較例2との比較から、(a)板状フィラーを用いない場合、組成物は、皮膚の色の欠点及び/又は皮膚上の微小起伏の可視性を低下させること、並びに皮膚に十分な明るさを与えることが困難であるということも認められる。 【0250】 実施例1と比較例3との比較から、(a)板状フィラーの屈折率が2.0以下であることが重要であり、その理由は、比較例3における屈折率が約2.5である粒子(二酸化チタン)の使用は、強すぎる明るさ及び不自然な仕上がりを与えるからであるということも認められる。 【0251】 実施例1と比較例4との比較から、(b)真珠光沢顔料の粒径が15μm以下であることが重要であり、その理由は、比較例4における粒径が約20μmである粒子(真珠光沢顔料2)の使用は、皮膚の色の欠点及び/又は皮膚上の微小起伏の可視性を十分に低下させることができず、皮膚に十分な明るさを与えることができず、ぎらぎらした外観及び不自然な仕上がりを与えるからであるということも認められる。 【0252】 実施例1と比較例5との比較から、(a)板状フィラーの粒径が10μm以下であることが重要であり、その理由は、比較例5における粒径が約11μmである粒子(窒化ホウ素2)の使用は、皮膚の色の欠点及び/又は皮膚上の微小起伏の可視性を十分に低下させることができず、皮膚に十分な明るさを与えることができず、ぎらぎらした外観を与えるからであるということも認められる。 【0253】 実施例1と比較例6との比較から、(c)中空又は多孔質粒子を用いない場合、組成物は、皮膚の色の欠点及び/又は皮膚上の微小起伏の可視性を十分に低下させることができず、皮膚に十分な明るさを与えることができないということも認められる。 【0254】 実施例1と実施例2との比較から、中空粒子及び多孔質粒子はどちらも、「(c)中空又は多孔質粒子」成分として用いることができるということも認められる。 【0255】 (実施例3) [調製] 実施例3による組成物(実施例3)を、表3に示す成分を混合することによって調製した。成分の量の数値はすべて、活性原料の「質量%」に基づいている。 【0256】 【表3】 [図:0001401630000003.jpg] 【0257】 実施例3による組成物は、皮膚の色の欠点、例えばしみの可視性を低下させ、更に毛穴及び小じわを隠蔽する一方で、自然な仕上がり及び組成物の半透明な外見を与えることができた。」 (4) 特許請求の範囲の記載と課題の解決の対応関係 ア 本件訂正発明の課題 本件訂正発明1~2及び5~15が解決しようとする課題は、本件明細書の【0002】~【0007】の記載を含む発明の詳細な説明の全体の記載、並びに、本件訂正請求項1~2及び5~15の記載からみて、共通して、 「皮膚に、皮膚上の欠陥、例えば、しみ、毛穴及び小じわの、十分な被覆性を与える一方で、皮膚に明るさ及び自然な仕上がりを与えることができる、皮膚のための組成物の提供」 にあるものと認められる。 イ 課題の解決の具体的な記載について 本件明細書の発明の詳細な説明において、【0238】~【0254】で説明されている実施例1及び実施例2の組成物については、試験結果として、「塗布時の皮膚上の跡」が「弱い(ほとんど目立たない)」、「明るさ」が「強い(目立つ)」、「しみの隠蔽」が「強い(目立つ)」、「毛穴及び起伏の隠蔽」が「強い(目立つ)」、「皮膚のてかり」が「中程度(いくらか目立つ)」(実施例1)又は「弱い(ほとんど目立たない)」(実施例2)という評価が得られていることから(【0246】【表2】)、上記アで認定した本件訂正発明の課題が、実際に解決できたことが具体的な試験による評価の裏付けを伴って記載されているものと認められる。 上記実施例1及び実施例2の組成物は、以下の(ア)~(ウ)の成分を含むものである。 (ア) 平均粒径が約2μmであり屈折率が1.74である「窒化ホウ素1」 (イ) 平均粒径が約7μmであり反射光の色が青色である「真珠光沢顔料1 (二酸化チタン(及び)マイカ(及び)酸化スズ)」 (ウ) 「ホウケイ酸カルシウムナトリウム」(実施例1)又は「シリカ」 (実施例2) 上記(ア)の「窒化ホウ素1」は、上記(2)に示した本件訂正発明1~2及び5~15の特徴における「(a)板状フィラー」の条件を満たすものであり、上記(イ)の「真珠光沢顔料1」は、同「(b)真珠光沢顔料」の条件を満たすものであり、上記(ウ)の「ホウケイ酸カルシウムナトリウム」又は「シリカ」は、同「(c)中空又は多孔質粒子」の条件を満たすものである。 ウ 本件訂正請求項1について (ア) (a)板状フィラーの技術的な意義 上記(3)エに示したとおり、本件明細書の【0031】~【0043】には、(a)板状フィラーの技術的な意義等について記載されており、【0032】には、粒径が、好ましくは5μm以下であり、屈折率が、より好ましくは1.8以下であることが記載され、【0037】及び【0038】には、粒径が、0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上であり、屈折率が、より好ましくは1.6以上であることが記載され、【0041】には、窒化ホウ素のみからなることが最も好ましいことが記載されており、【0035】には、(a)板状フィラーは、その特徴的な屈折率のために、適切な被覆レベルを与えることによって皮膚等のケラチン物質の自然な明色化に寄与し得ることが記載されている。 (イ) 板状フィラーの屈折率等に関する本件特許の出願時の技術常識 化粧用組成物に配合される板状フィラーに関して、例えば、文献A~D、乙1及び乙2には、以下の事項が記載されており、これらの事項によれば、皮膚の欠陥を被覆し皮膚の自然な明色化が可能な板状フィラーは、その屈折率が皮膚の屈折率よりも僅かに高い非常に狭い数値範囲のものに限られ、当該効果には板状フィラーの粒径や構成材料も影響すること、及び、皮膚の屈折率は約1.5であることが、本件特許の出願時の技術常識であったと認められる。 A 文献Aの記載 ・「天然鉱物系材料(マイカ、セリサイト) 屈折率:1.58 屈折率1.58と低いため、肌の欠陥を隠蔽できない」 ・「板状硫酸バリウム 屈折率:1.64 素肌のよりも僅かに高い屈折率のため、肌の欠陥を綺麗にぼかす。」 ・「酸化チタン 屈折率:2.76 屈折率が高く、素肌感まで隠蔽し不自然な仕上がり。」 B 文献Bの記載 ・「【0349】 [特定の屈折率を有する板状フィラー] 本発明による化粧料組成物は、屈折率が1.6超2.2未満の、組成物の全質量に対して1質量%を超える量の少なくとも1種の板状フィラーを含む。 ・・・ 【0356】 好ましい実施形態において、板状フィラーは、1μm~10μm、特に1~6μmの粒径を有する窒化ホウ素である。」 ・「【0400】 (実施例1及び2並びに比較例1~5) 化粧ベースは、表2及び表3に示す成分を混合して調製した。別段言及しない限り、表2及び表3における値は、組成物の全質量に対する質量%として表される。 【0401】 【表2】 ・・・ [図:0001401630000004.jpg] ・・・ 【0408】 実施例1及び2による化粧料組成物のみが、皮膚の美白の良好なバランス、色の均質性及び安定性を示した。 【0409】 上記の結果は、複合顔料と屈折率1.6超2.2未満の板状フィラーの組合せをベースとする実施例1及び2による化粧料組成物が、改善された光学的美容的効果及び安定性をもたらすことができ、他の組合せではこのような改善された光学的美容的効果及び安定性をもたらすことができないことを実証している。」 C 文献Cの記載 ・「【0022】 単結晶の扁平板状粒子 本発明組成物は、塗布すると肌につやのある外観を与えるために、単結晶で扁平な板状固体粒子を用いる。扁平状の単結晶であることから、本粒子により高い反射率が得られる。扁平な板状結晶は、光反射率を介して、この自然なつやのある外観をもたらすことができる。この物質に対する理想的な特性は、約10ミクロンから約30ミクロンの直径;約0.1ミクロンから約5ミクロンの厚さ、好ましくは約0.1ミクロンから約0.5ミクロンの厚さ;平滑な表面;及び約1.8から約2.2の屈折率を有する、板状結晶の晶癖となろう。 【0023】 より小さい粒子が反射する光は、容易に明白となるには光が少なく、一方、より大きい粒子は、個々の物体として目立ち、それにより過剰な輝き又は反射がもたらされるので、この板状粒子の大きさは重要である。この板状結晶の反射(屈折率)は高すぎてはいけない。屈折率が高すぎると、自然な肌の色の透過性を阻害し、化粧を施したような光沢を作り出すこととなる。屈折率が低すぎると、粒子は皮膚又は生成被膜とほぼ同じ屈折率を有することとなり、その結果、反射が弱く、それにより、つやのある外観を損なう。」 ・「【0029】 板状粒子の屈折率 屈折率とは、基材がそれへの入射光線を屈曲させる能力の度合いであり、当業者にとって周知である。本明細書中での屈折率は、本発明組成物がつまり、光沢、反射、透過性、つや、輝きを達成するために設計される、光学的性質の度合いである。理想的には、屈折率は、約1.8 から約2.2である。典型的な適切な材料: オキシ塩化ビスマス、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及び窒化ホウ素がこの範囲に入るが、一方、これに対して、雲母(1.57)、ガラス(1.5から1.6)、二酸化チタン(2.5から2.7)及び酸化鉄(3.1)などの物質は適切な組成物屈折率の範囲外である。」 D 文献Dの記載 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、透明感があり、明るく自然な仕上がりが得られ、素肌の持つ肌色のくすみを改善することができ、しかもシミ・ソバカス等の色むらを見え難くする効果に優れた化粧料に関する。」 ・「【0030】本発明で用いられる成分(B)の無機粉体は、まず屈折率が1.6~1.8であることが必要である。屈折率が1.6未満のものでは、色むらを見え難くする効果が十分得られず、1.8を超えるものでは、透明性が悪くなる。・・・ ・・・ 【0032】このような無機粉体としては、板状構造を有する酸化アルミニウム、硫酸バリウム、窒化ホウ素が好ましく、特に板状構造を呈し、そのアスペクト比が5~100であり、かつその板状面の周囲長の2乗と板状面の正射影面の面積との比が20:1~150:1である板状硫酸バリウムが好ましい。・・・」 E 乙1の記載 ・198頁左欄下から6行~4行 「また肌あれしている人では角層水分量が減少しているため,肌表面の屈折率(約1.5)が高くなり,入射光がますます減少してしまいます.」 F 乙2の記載 ・1438頁右欄5~8行 「なお,皮膚の屈折率nについては,その値が皮膚の保水量などに応じて大きく変化することが知られている.ここでは,その平均値としてn=1.5を採用することにした.」 (ウ) 本件訂正請求項1の記載と課題の解決が認識できる範囲の関係 上記イで説示したように、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件訂正発明1における「(a)板状フィラー」に該当する、平均粒径が約2μmであり屈折率が1.74である「窒化ホウ素1」を含み、本件訂正発明1における「(b)真珠光沢顔料」に該当する、平均粒径が約7μmであり反射光の色が青色である「真珠光沢顔料1(二酸化チタン(及び)マイカ(及び)酸化スズ)」、及び本件訂正発明1における「(c)中空又は多孔質粒子」に該当する、「ホウケイ酸カルシウムナトリウム」又は「シリカ」を含む、実施例1及び実施例2の組成物について、上記アで認定した本件訂正発明の課題が実際に解決できたことが具体的な試験の結果により裏付けられて記載されている。 そして、本件訂正発明1における「(a)板状フィラー」は、粒径が0.1μm以上5μm以下として下限値も上限値も規定されており、屈折率が1.6~1.8の範囲に限定された窒化ホウ素のみからなるものであるところ、その屈折率の範囲「1.6~1.8」は、上記の実施例1及び実施例2の組成物における「窒化ホウ素1」の屈折率「1.74」を包含し、皮膚の屈折率(約1.5)よりも僅かに高い非常に狭い範囲のものであるから、皮膚の欠陥を被覆し皮膚の自然な明色化が可能であると認識でき(上記(イ)を参照)、本件訂正発明1において、上記条件を満たす「(a)板状フィラー」を用いれば、上記の「窒化ホウ素1」を用いた実施例1及び実施例2の組成物と同様に、上記の課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあるといえる。 (エ) 小括 したがって、本件訂正発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 エ 本件訂正請求項2及び5~6について 本件訂正請求項2及び5~6の記載によれば、本件訂正発明2及び5~6の組成物は、本件訂正発明1の組成物において、(a)板状フィラーについて次のように特定し限定したものである。 (ア) 粒径が0.3μm以上である(本件訂正発明2) (イ) 約2μmの粒径及び1.74の屈折率を有する窒化ホウ素のみからなる (本件訂正発明5) (ウ) 量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%の範囲である (本件訂正発明6) 本件明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例1及び実施例2の組成物は、上記(ア)及び(イ)の条件を満たす、平均粒径が約2μmで屈折率が1.74である「窒化ホウ素1」を、上記(ウ)の条件を満たす0.75質量%の量で含むものであり、上記イで説示したとおり、本件訂正発明の課題が実際に解決できたことが裏付けられている。 そして、上記ウのとおり、本件訂正発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、本件訂正発明1を更に特定して限定した本件訂正発明2及び5~6も、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 オ 本件訂正請求項7~14について 本件訂正請求項7~10の記載によれば、本件訂正発明7~10の組成物は、本件訂正発明1の組成物において、(b)真珠光沢顔料について、反射光の色(本件訂正発明7)、粒径の下限値(本件訂正発明8)、材料(本件訂正発明9)、量(本件訂正発明10)を特定し限定したものである。 本件請求項11~13の記載によれば、本件訂正発明11~13の組成物は、本件訂正発明1の組成物において、(c)中空又は多孔質粒子について、粒径(本件訂正発明11)、材料(本件訂正発明12)、量(本件訂正発明13)を特定し限定したものである。 本件訂正請求項14の記載によれば、本件訂正発明14の美容方法は、本件訂正発明1の組成物を塗布する工程を含むものである。 本件明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例1及び実施例2の組成物は、本件訂正発明7~9の条件を満たす、平均粒径が約7μmであり反射光の色が青色である「真珠光沢顔料1(二酸化チタン(及び)マイカ(及び)酸化スズ)」を、本件訂正発明10の条件を満たす0.75質量%の量で含み、また、本件請求項11~12の条件を満たす「ホウケイ酸カルシウムナトリウム」又は「シリカ」を、本件訂正発明13の条件を満たす1.00質量%の量で含むものであり、上記イで説示したとおり、本件訂正発明の課題が実際に解決できたことが裏付けられている。 そして、上記ウのとおり、本件訂正発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、本件訂正発明1を更に特定して限定した本件訂正発明7~13、及び、本件訂正発明1の組成物を塗布する工程を含む本件訂正発明14の美容方法も、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 カ 本件訂正請求項15について 本件訂正請求項15の記載によれば、本件訂正発明15において、皮膚上で使用される「組合せ」は、本件訂正発明1の組成物と同一の条件が規定された「(a)板状フィラー」、「(b)真珠光沢顔料」及び「(c)中空又は多孔質粒子」からなるものである。 そして、上記ウのとおり、本件訂正発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、本件訂正発明1の組成物に対応する組合せの皮膚上での使用に係る本件訂正発明15も、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 キ 取消理由2についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正発明1~2及び5~15は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 よって、本件訂正請求項1~2及び5~15の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、上記取消理由2として指摘した不備はない。 第6 特許異議の申立ての理由について 1 特許異議の申立ての理由の概要 申立人は特許異議申立書において、証拠方法として以下の<甲号証一覧>の甲1~甲10を提出し、以下に概要を示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)1並びに2<1>及び2<2>を主張している。なお、特許異議申立書の記載には、特許法の規定の引用が正確でない点が含まれているため、当審合議体が適切な表記に修正した。また、ここでいう「請求項1」等の表記は、本件訂正前の本件特許の請求項1等を意味するものであり、「本件発明1」等の表記は、本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明等を意味するものである。 [申立理由1](サポート要件違反) 本件特許の請求項1~4、6~15の記載は、ケラチン物質にケラチン物質上の欠陥の十分な被覆性を与える一方で、ケラチン物質に明るさ及び自然な仕上がりを与えることができる、皮膚等のケラチン物質のための組成物を提供する、という課題を解決するために必須の手段であると理解される、板状フィラーが粒径5μm以下の窒化ホウ素であることが反映されていない。 したがって、本件発明1~4、6~15は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1~4、6~15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 [申立理由2<1>](甲1を主引例とする進歩性違反) 本件特許の請求項1~15に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 [申立理由2<2>](甲2を主引例とする進歩性違反) 本件特許の請求項1~4、6~15に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~4、6~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 <甲号証一覧> 甲1:特開2012-167052号公報 甲2:国際公開第2014/012230号 甲3:国際公開第2016/149917号 甲4:特表2010-513368号公報 甲5:特開2016-124846号公報 甲6:特開2015-83615号公報 甲7:特開平9-12430号公報 甲8:安全データシート「Timiron(R) Silk Blue」,メルクパフォー マンスマテリアルズ合同会社,改訂日:2021年4月20日 (合議体注:(R)は〇囲いのR。以下同じ。) 甲9:化粧品原材料データベース:TIMIRON SILK BLUE|マツモト交商, 最終アクセス日:2022年2月16日 甲10:SOLESPHERETM H-51,AGC Chemicals Americas,最終アクセス日: 2022年2月16日 (甲1~甲10は、申立人が特許異議申立書に添付して提出した甲第1号証~甲第10号証である。) 2 取消理由通知において採用しなかった申立理由について 上記申立理由1は、上記第4に示した取消理由2に包含されるものであるところ、上記第5の2で説示したとおり、本件訂正請求項1~2及び5~15の記載には、上記取消理由2として指摘した不備はなく、同理由は、取消理由2において採用されているから、取消理由において採用しなかった申立理由に該当しない。 他方、上記申立理由2<1>及び2<2>は、取消理由通知において採用しなかった申立理由であるが、当審合議体は、本件訂正請求項1~2及び5~15に係る特許は、これらの理由によっても取り消すことはできないものと判断する。その理由の詳細は、以下のとおりである。 (1) 申立理由2<1>(甲1を主引例とする進歩性違反)について ア 甲1の記載事項の概要及び甲1に記載された発明 甲1には、(A)金属酸化物微粒子を内包するフレーク状ガラス、及び、(B)前記フレーク状ガラスの配向を改善する配向改善剤、を含有し、前記成分(B)が少なくとも窒化ホウ素を含む、化粧料、が記載されており(請求項1)、前記窒化ホウ素の平均粒径が、3~12μmである、化粧料、が記載されている(請求項2)。 また、甲1の【0008】には、「フレーク状ガラスに窒化ホウ素を併用することにより、肌に塗布した時のフレーク状ガラスの配向性が向上するため、肌への付着性が向上するとともに、フレーク状ガラスが有する光沢特性と光透過制御性とを十分に発揮させて、肌にツヤとぼかし効果とをバランスよく付与することができる。したがって、自然な仕上がりとカバー力とを両立できる化粧料が実現可能になる。」と記載されている。 そして、甲1の【0047】には、上記の成分(A)のフレーク状ガラスに該当する「複合酸化物内包フレーク状ガラス」の製造例が記載されており(製造例1)、同【0051】~【0052】には、実施例1~5及び比較例1~4として、表2に示す組成のパウダーファンデーションが記載されている。表2の実施例1~5の部分の記載は、次のとおりである。 「【表2】 [図:0001401630000005.jpg] 」 上記甲1の記載事項によれば、甲1には、実施例2のパウダーファンデーションとして、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 ≪甲1発明≫ 「以下の組成のパウダーファンデーション。 ・フッ素化合物処理金属酸化物内包フレーク状ガラス(II) (製造例1の複合酸化内包ガラスフレーク) 1.00質量% ・窒化ホウ素(I) (SHP-3(平均粒径5.3μm)) 5.00質量% ・フッ素化合物処理マイカ(平均粒径18μm) 10.00重量% ・シリコーン処理セリサイト(平均粒径10μm) (ジメチルポリシロキサンの2質量%処理) 20.00質量% ・フッ素化合物処理タルク(平均粒径7μm) 20.88質量% ・球状シリコーン樹脂 7.00質量% ・オルガノポリシロキサンエラストマー 4.50質量% ・フッ素化合物処理酸化チタン 11.00質量% ・シリコーン処理酸化亜鉛 6.00質量% ・フッ素化合物処理ベンガラ被覆雲母チタン (Flamenco Satin Violet(平均粒径6μm)) 3.00質量% ・フッ素化合物処理黄酸化鉄 2.60質量% ・フッ素化合物処理ベンガラ 0.58質量% ・フッ素化合物処理黒酸化鉄 0.24質量% ・パラオキシ安息香酸エチル 0.10質量% ・グリチルレチン酸ステアリル 0.10質量% ・ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 4.00質量% ・パラメトキシケイ皮酸2-エチルへキシル 4.00質量%」 イ 本件訂正発明1について (ア) 対比 本件訂正発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「パウダーファンデーション」は、本件訂正発明1の「皮膚のための組成物」に相当する。 甲1発明における「窒化ホウ素(I)(SHP-3(平均粒径5.3μm))」は、本件訂正発明1における「(a)板状フィラー」と、「窒化ホウ素」を含んだ「板状フィラー」である点で共通する。 甲1発明における「フッ素化合物処理ベンガラ被覆雲母チタン(Flamenco Satin Violet(平均粒径6μm))」は、甲5の【0043】に、「パール顔料の市販品の例」として、「紫色干渉色のもの」の一つに「FLAMENCO SATIN VIOLET(BASF社製)」が挙げられているのを参酌すると、本件訂正発明1における「(b)粒径が15μm以下である少なくとも1種の真珠光沢顔料」であり「有色の反射光を有する」ものに相当する。 本件訂正発明1の組成物は、成分(a)~(c)以外の成分を含むことを排除していないから、甲1発明のパウダーファンデーションが成分(a)~(c)に相当するもの以外の成分を含むことは、本件訂正発明1との相違点にならない。なお、甲1発明における「フッ素化合物処理マイカ(平均粒径18μm)」、「シリコーン処理セリサイト(平均粒径10μm)(ジメチルポリシロキサンの2質量%処理)」及び「フッ素化合物処理タルク(平均粒径7μm)」は、「板状フィラー」に該当するものであるか、「中空又は多孔質粒子」に該当するものであるか、いずれにも該当しないのか、特定することができない。 そうすると、本件訂正発明1と甲1発明の間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。 <一致点> 「皮膚のための組成物であって、 (a)少なくとも1種の板状フィラー、及び (b)粒径が15μm以下である少なくとも1種の真珠光沢顔料、 を含み、 (a)板状フィラーが、窒化ホウ素を含み、 (b)真珠光沢顔料が、有色の反射光を有する、組成物。」 <相違点1-1> (a)板状フィラーである窒化ホウ素の粒径が、本件訂正発明1においては「0.1μm以上5μm以下」であるのに対して、甲1発明においては「平均粒径5.3μm」である点。 <相違点1-2> (a)板状フィラーが、本件訂正発明1においては「窒化ホウ素のみ」からなるのに対して、甲1発明においては「窒化ホウ素以外」のものも含むのか否か明らかでない点。 <相違点1-3> (a)板状フィラーの屈折率が、本件訂正発明1においては「1.6~1.8」であるのに対して、甲1発明においては、その値が不明である点。 <相違点1-4> 本件訂正発明1が「(c)少なくとも1種の中空又は多孔質粒子」を含むものであるのに対して、甲1発明は「中空又は多孔質粒子」を含むものであるか否か明らかでない点。 (イ) 相違点についての判断 相違点1-1について検討する。 甲1の【0031】には、窒化ホウ素として、フレーク状ガラスの配向性を効果的に改善できるという観点からは、平均粒径が3~18μmのものが好ましく、自然な艶感を得るという観点からは、3~12μmであるとより好ましく、5~10μmであることがさらに好ましいことが記載され、このような市販品として、「SHP-3(平均粒径5.3μm)」が例示されているところ、この製品は甲1発明における「窒化ホウ素(I)(SHP-3(平均粒径5.3μm))」に対応するものである。 そうすると、甲1において窒化ホウ素として「さらに好ましい」とされる平均粒径である「5~10μm」の範囲に含まれる甲1発明における「窒化ホウ素(I)(SHP-3(平均粒径5.3μm))」を、上記の「さらに好ましい」とされる粒径範囲の下限値「5μm」以下である、「0.1μm以上5μm以下」の粒径のものに敢えて変更することは、当業者において動機付けられるとはいえない。 (ウ) 小括 上記(イ)のとおり、相違点1-1の構成である(a) 板状フィラーの粒径を「0.1μm以上5μm以下」とすることは、当業者において動機付けられるとはいえないから、相違点1-2~相違点1-4について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件訂正発明2及び5~6について 上記第5の2(4)エで説示したように、本件訂正発明2及び5~6の組成物は、本件訂正発明1の組成物において、(a)板状フィラーについて更に特定し限定したものである。 そして、上記イのとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、本件訂正発明1を更に特定して限定した本件訂正発明2及び5~6も、甲1に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 本件訂正発明7~14について 上記第5の2(4)オで説示したように、本件訂正発明7~10は、本件訂正発明1において、(b)真珠光沢顔料について更に特定し限定したものであり、本件訂正発明11~13は、本件訂正発明1において、(c)中空又は多孔質粒子について更に特定し限定したものであり、本件訂正発明14の美容方法は、本件訂正発明1の組成物を塗布する工程を含むものである。 そして、上記イのとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、本件訂正発明1を更に特定して限定した本件訂正発明7~13、及び、本件訂正発明1の組成物を塗布する工程を含む本件訂正発明14の美容方法も、甲1に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 本件訂正発明15について 上記第5の2(4)カで説示したように、本件訂正発明15において、皮膚上で使用される「組合せ」は、本件訂正発明1の組成物と同一の条件が規定された「(a)板状フィラー」、「(b)真珠光沢顔料」及び「(c)中空又は多孔質粒子」からなるものである。 そして、上記イのとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、本件訂正発明1の組成物に対応する組合せの皮膚上での使用に係る本件訂正発明15も、甲1に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 カ 申立理由2<1>についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正発明1~2及び5~15は、甲1に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2) 申立理由2<2>(甲2を主引例とする進歩性違反)について ア 甲2の記載事項の概要及び甲2に記載された発明 甲2には、クレーム1に、 「1.生理的に許容される媒体中に以下の成分を含む、ケラチン物質、特に顔の皮膚をケアする及び/又はメイクアップするための化粧品組成物: (a) 35μm未満、好ましくは2μm~35μm、より好ましくは11μm~17μmの粒子サイズを有する、少なくとも1つの散乱フィラー (b) 少なくとも1つの赤色又は桃色の真珠層、及び (c) 少なくとも1つの青色の真珠層。」 が記載されており、クレーム3に、「散乱フィラーが、窒化ホウ素、硫酸バリウム、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、並びに、酸化チタンと、タルク、マイカ、硫酸バリウム、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、及び、それらの混合物を含む基材とをベースとする複合粉末、からなる群から選択される」ことが記載され、クレーム15には、「少なくとも1種の追加のフィラーをさらに含む」ことが記載されている。 また、甲2には、「本発明は、特に光輝感及び健康的な色艶の効果を付与することを意図した、皮膚をケアする及び/又はメイクアップするための組成物に関する。」(1頁3~4行)、及び、「散乱フィラー、特にビスマス化合物は、真珠層と組み合わせると、非常に良好な光の反射及びメイクアップ効果を示し、本発明の目的に合致する」(2頁6~8行)との記載がある。 そして、甲2には、「実施例1:本発明の組み合わせによるO/Wエマルション」として、次の記載がある(22頁3行~24頁8行)。 「相 INCI名称 原料の重量% A 水 100まで適量 ・・・ B ステアリン酸 2 (・・・) ・・・ C マイカ(及び)二酸化チタン (BASF社のFlamenco(R) Summit Red R30D) 4 二酸化チタン(及び)マイカ (Merck社のTimiron(R) Silk Blue) 0.3 オキシ塩化ビスマス (Merck社のRonaflairTM ESQ) 2.7 タルク (Luzenac社のLuzenac(R) Pharma M) 0.5 シリカ (AGC SI-TECH社のSolesphere(R) H-51) 0.5 D 赤色4号 0.005 ・・・ E 香料 0.25 調製方法 A相を約75℃まで加熱して個々の成分を配合する; B相を調製し約75℃まで加熱する; A相とB相を混合し、混合物を均質なエマルションが得られるまでRayneriで攪拌する; 残りの相を上記エマルションに加えて混合物が冷えるまで攪拌する。 評価方法及び結果 実施例1の本発明の組成物をアジア人女性30人の皮膚に適用する。適用後の結果を、組成物の塗布直後に3人の専門家が評価する。」 上記甲2の記載事項によれば、甲2には、クレームの「化粧品組成物」の具体例である実施例1の「O/Wエマルション」に対応するものとして、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 ≪甲2発明≫ 「以下の成分を含むO/Wエマルションである、ケラチン物質、特に顔の皮膚をケアする及び/又はメイクアップするための化粧品組成物。 ・マイカ(及び)二酸化チタン (BASF社のFlamenco(R) Summit Red R30D) 4重量% ・二酸化チタン(及び)マイカ (Merck社のTimiron(R) Silk Blue) 0.3重量% ・オキシ塩化ビスマス (Merck社のRonaflairTM ESQ) 2.7重量% ・タルク (Luzenac社のLuzenac(R) Pharma M) 0.5重量% ・シリカ (AGC SI-TECH社のSolesphere(R) H-51) 0.5重量%」 イ 本件訂正発明1について (ア) 対比 本件訂正発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明の「O/Wエマルションである、ケラチン物質、特に顔の皮膚をケアする及び/又はメイクアップするための化粧品組成物」は、本件訂正発明1の「皮膚のための組成物」に相当する。 甲2において、クレーム3に、「錯乱フィラー」の選択肢として、「窒化ホウ素」とともに「オキシ塩化ビスマス」が記載され、5頁9~10行に、好ましい「オキシ塩化ビスマス」として「Merck社のRonaflairTM ESQ」を用いることが記載されている一方で、本件明細書の【0040】には、「(a)板状フィラー」の例として、「窒化ホウ素」とともに「オキシ塩化ビスマス」が記載されていることから、甲2発明における「オキシ塩化ビスマス(Merck社のRonaflairTM ESQ)」は、本件訂正発明1における「(a)板状フィラー」に相当するものといえる。 甲2の7頁12~13行に、好ましい赤色又は桃色の真珠層として、特に、BASF社からSummit Red 30D(Flamenco)の名称で販売されている赤色の真珠層を使用することが記載されているから、甲2発明における「マイカ(及び)二酸化チタン(BASF社のFlamenco(R) Summit Red R30D)」は、本件訂正発明1における「(b)粒径が15μm以下である少なくとも1種の真珠光沢顔料」であり「有色の反射光を有する」ものに相当する。 甲2の7頁17~18行に、好ましい青色の真珠層として、特に、MERCK社からSilk Blue(Timiron)の名称で販売されている青色の真珠層を使用することが記載されており、本件明細書の【0058】に、「(b)真珠光沢顔料」の例として、Merck社により販売されている「Timiron Silk Blue」が挙げられていることから、甲2発明における「二酸化チタン(及び)マイカ(Merck社のTimiron(R) Silk Blue)」は、本件訂正発明1における「(b)粒径が15μm以下である少なくとも1種の真珠光沢顔料」であり「有色の反射光を有する」ものに相当する。 甲2の19頁1~7行には、使用できる無機フィラーのうち、シリカベースのフィラーとして、旭硝子社により販売されている「Sunsphere H-51」が挙げられており、本件明細書の【0079】には、「(c)中空又は多孔質粒子」の例として、AGCエスアイテック株式会社より販売されている「Sunspheres H-51」が挙げられているから、甲2発明における「シリカ(AGC SI-TECH社のSolesphere(R) H-51)」は、本件訂正発明1における「(c)少なくとも1種の中空又は多孔質粒子」に相当するものといえる。 本件訂正発明1の組成物は、成分(a)~(c)以外の成分を含むことを排除していないから、甲2発明の化粧品組成物が成分(a)~(c)に相当するもの以外の成分を含むことは、本件訂正発明1との相違点にならない。なお、甲2発明における「タルク(Luzenac社のLuzenac(R) Pharma M)」は、「板状フィラー」に該当するものであるか、「中空又は多孔質粒子」に該当するものであるか、いずれにも該当しないのか、特定することができない。 そうすると、本件訂正発明1と甲2発明の間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。 <一致点> 「皮膚のための組成物であって、 (a)少なくとも1種の板状フィラー、 (b)少なくとも1種の真珠光沢顔料、及び (c)少なくとも1種の中空又は多孔質粒子 を含み、 (b)真珠光沢顔料が、有色の反射光を有する、組成物。」 <相違点2-1> (a)板状フィラーが、本件訂正発明1では、「窒化ホウ素のみ」からなるものであり、粒径が「0.1μm以上5μm以下」であり、屈折率が「1.6~1.8」であるのに対して、甲2発明では、「窒化ホウ素」を含まず、「オキシ塩化ビスマス」である「Merck社のRonaflairTM ESQ」を含み、粒径及び屈折率が不明である点。 <相違点2-2> (b)真珠光沢顔料の粒径が、本件訂正発明1においては「15μm以下」であるのに対して、甲2発明においては粒径が不明である点。 (イ) 相違点についての判断 相違点2-1について検討する。 甲2のクレーム4には、散乱フィラーが、好ましくはクラスタ結晶形態のオキシ塩化ビスマスであることが記載され、甲2の4頁24行~5頁3行にも、好ましい実施形態では、散乱フィラーはクラスタ結晶のオキシ塩化ビスマスであり、それが光を散乱させ、それにより、皮膚に対し、光輝感及び健康的な色艶の効果を、光沢ある外観なしにもたらすのに寄与することが記載されている。 また、甲2には、4頁13~15行に、「本発明」による組成物は、より好ましくは11μm~17μmの粒子サイズを有する、少なくとも1つの散乱フィラーを含むことが記載され、同頁17~18行に、散乱フィラーは、より好ましくは1.7~2.2の屈折率を有することが記載されている。 そうすると、甲2において「好ましい」とされる散乱フィラーであるクラスタ結晶のオキシ塩化ビスマスの具体的な製品である「オキシ塩化ビスマス(Merck社のRonaflairTM ESQ)」を含む甲2発明において、散乱フィラーを「窒化ホウ素のみ」からなるものに敢えて変更し、その粒径について、甲2で「より好ましい」とされる散乱フィラーの粒子サイズの範囲「11μm~17μm」の下限値「11μm」を大幅に下回る「0.1μm以上5μm以下」の粒径を有し、その屈折率について、甲2で「より好ましい」とされる散乱フィラーの屈折率の範囲「1.7~2.2」と僅かに重複するものの、「1.6~1.8」の範囲の屈折率を有する、特定の「窒化ホウ素」を選択して用いることは、当業者において動機付けられるとはいえない。 (ウ) 小括 上記(イ)の説示のとおり、相違点2-1の構成である、(a)板状フィラーを「窒化ホウ素のみ」からなり「粒径が0.1μm以上5μm以下」であり「屈折率が1.6~1.8」である特定のものとすることは、当業者において動機付けられるとはいえないから、相違点2-2について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件訂正発明2及び6について 上記第5の2(4)エで説示したように、本件訂正発明2及び6の組成物は、本件訂正発明1の組成物において、(a)板状フィラーについて更に特定し限定したものである。 そして、上記イのとおり、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、本件訂正発明1を更に特定して限定した本件訂正発明2及び6も、甲2に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 本件訂正発明7~14について 上記第5の2(4)オで説示したように、本件訂正発明7~10は、本件訂正発明1において、(b)真珠光沢顔料について更に特定し限定したものであり、本件訂正発明11~13は、本件訂正発明1において、(c)中空又は多孔質粒子について更に特定し限定したものであり、本件訂正発明14の美容方法は、本件訂正発明1の組成物を塗布する工程を含むものである。 そして、上記イのとおり、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、本件訂正発明1を更に特定して限定した本件訂正発明7~13、及び、本件訂正発明1の組成物を塗布する工程を含む本件訂正発明14の美容方法も、甲2に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 本件訂正発明15について 上記第5の2(4)カで説示したように、本件訂正発明15において、皮膚上で使用される「組合せ」は、本件訂正発明1の組成物と同一の条件が規定された「(a)板状フィラー」、「(b)真珠光沢顔料」及び「(c)中空又は多孔質粒子」からなるものである。 そして、上記イのとおり、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、本件訂正発明1の組成物に対応する組合せの皮膚上での使用に係る本件訂正発明15も、甲2に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 カ 申立理由2<2>についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正発明1~2及び6~15は、甲2に記載された発明及び本件特許の出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕及び15について訂正することを認める。 そして、取消理由通知書に記載した取消理由及び証拠、並びに、申立人による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~2及び5~15に係る特許を取り消すことはできない。 また、その他に本件特許の請求項1~2及び5~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件特許の請求項3及び4は、本件訂正により削除されたから、申立人による本件特許の請求項3及び4に係る特許に対する特許異議の申立てについては、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700567

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