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特許異議申立

2022-700246

生地シート整形装置

審判番号
2022-700246
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-106769
登録番号
6948495
請求日
2022年03月24日
審決日
2022年06月23日
公報発行日
2022年07月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社コバード
  • 【権利者代理人】弁理士法人大手門国際特許事務所
  • 【権利者代理人】川崎 好昭
  • 【異議申立人】レオン自動機 株式会社
審判長/審判官
  • 審判長 松下 聡
  • 審判官 マキロイ 寛済
  • 審判官 西村 泰英
分類
P1651.113-Y (A21C) / P1651.121-Y (A21C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6948495号発明「生地シート整形装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6948495号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6948495号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、令和元年6月7日に出願され、令和3年9月24日にその特許権の設定登録がされ、令和3年10月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年3月24日に特許異議申立人 レオン自動機株式会社(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 生地を搬送する搬送部と、生地を圧延してシート状に整形する圧延部と、圧延された生地シートの形状を認識する認識部と、認識された前記生地シートの形状データに基づいて前記圧延部の圧延量を調整する調整部とを備え、前記認識部は、圧延された前記生地シートの形状を上方から撮影する撮影部を備えており、前記調整部は、前記撮影部により撮影された前記生地シートの形状に関する画像データに基づいて前記形状データを1枚ずつ蓄積し前記形状データの推移を分析して前記圧延部の圧延量を調整する生地シート整形装置。 【請求項2】 前記調整部は、前記形状データにより算出された圧延方向の長さに基づいて前記圧延量を調整する請求項1に記載の生地シート整形装置。 【請求項3】 前記圧延部は、前記生地を圧延する一対の転圧ローラを備えており、前記調整部は、前記圧延量として前記転圧ローラ間の間隔を調整する請求項1又は2に記載の生地シート整形装置。 【請求項4】 前記調整部は、前記圧延量及び当該圧延量で調整した後の次の前記生地シートの形状データに基づいて次の前記圧延量を調整する請求項1から3のいずれかに記載の生地シート整形装置。」 第3 特許異議申立ての概要 特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証(以下それぞれ「甲1」、「甲2」という。)を提出し、概略次の異議理由1ないし3を主張している。 甲1:特開2007-319128号公報 甲2:特開昭61-181329号公報 1.異議理由1(特許法第29条第2項) 本件特許発明1ないし4は、甲1発明、甲2に記載された事項及び周知技術に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである(以下「異議理由1」という。)。 2.異議理由2(特許法第29条第1項第3号) 本件特許発明1及び2は、それぞれ甲2に記載された発明であるから、本件特許発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであって、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである(以下「異議理由2」という。)。 3.異議理由3(特許法第29条第2項) 本件特許発明3及び4は、甲2発明、甲1に記載された事項及び周知技術に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明3及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである(以下「異議理由3」という。)。 なお、上記異議理由3について、特許異議申立書の第2頁「3 申立ての理由」(1)では、本件特許発明2及び4が対象となっているが、それ以後の記述においては、一貫して本件特許発明3及び4が対象となっており、特許異議申立書の内容からしても本件特許発明3及び4を対象としていることが明らかであるといえることから、上述のとおり認定した。 第4 当審の判断 1.甲1及び甲2の記載等 (1)甲1 ア 甲1の記載 甲1には、「ロール状パン生地成形装置」に関して、以下の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。 「【0018】 図1は、食パン焼成の前処理として行われるパン生地成形のためのパン生地成形装置10の概略平面図、図2は図1のII-II線に沿ってみたパン生地成形装置10の概略側面図を示している。 【0019】 このパン生地成形装置10は、パン生地をベルトコンベアによってパン焼成炉(図示せず)に向けて搬送しながら、成形を行うものであり、球形にされたパン生地Aを薄い円形のシート状のパン生地Bにするシーティング装置12と、シート状のパン生地Bを受け容れてロール状に成形する本発明に係るロール状パン生地成形装置14と、ロール状にされたパン生地をM型に折り畳んで食型16(図示の例では、M型にしたパン生地を3個横並びにして詰める食型が4個一体にしたもの)につめるM型成形装置18とを備える。 【0020】 シーティング装置12は、(図示しない)生地分割機により所定量に分割され、(これも図示しない)生地丸め機によって球形状にされ、中間発酵されたパン生地Aを受けいれて搬送する水平のベルトコンベア20と、該ベルトコンベアの下流側で下方位置にある水平のベルトコンベア22と、ベルトコンベア20からベルトコンベア22へ斜めに傾斜している傾斜搬送路24と、該傾斜搬送路の上下に設定された圧延ローラ対(図示せず)とを有し、ベルトコンベア22はローラ対の間を通されてほぼ円形のシート状にされたパン生地Bを、ロール状パン生地成形装置14に供給する。 【0021】 ロール状パン生地成形装置14は、ベルトコンベア22の終端から放出されたパン生地Bを受取り、同パン生地をベルトコンベア22とはほぼ直角をなす方向に搬送する水平の第1ベルトコンベア26と、該第1ベルトコンベアの下流側に配置された第2ベルトコンベア28と、該第2ベルトコンベアの下流側に配置された第3ベルトコンベア30とを有する。 【0022】 第1ベルトコンベア26の上方位置には、シーティング装置12の延長線上に延びる水平プレート32が当該第1ベルトコンベア26の幅方向を横断するように設けられ、シート状のパン生地Bを受け入れるようになっており、該パン生地Bは、斜めに設定された停止部材34により第1ベルトコンベア26の幅方向のほぼ中央位置で停止されるようになっている。水平プレート32は、図1で見て、パン生地Bの左側半部を載せ、右側半部が第1ベルトコンベア26に載るようになっており、それにより、当該パン生地B全体が右方向に搬送されるようになっている。水平プレート32より右側位置には、第1ベルトコンベア26によって搬送されるパン生地Bの当該第1ベルトコンベア上での幅方向位置を検知するための位置検知手段36(図2)が設けられている。位置検知手段としては、種々の位置検知手段を用いることができるが、図示の例では、CCDカメラを用いたものが示されており、このCCDカメラにより二次元画像を撮像して、その画像データから当該パン生地Bの幅方向位置を検知するようにしている。この場合には、パン生地Bが所要の大きさになっているか否か、また、パン生地Bが適正な円形若しくは楕円形にされているか否かを検知して、それに基づき、シーティング装置の圧延ローラ対のローラ間隔やスピードを調整して、適正な大きさ、適正な形状のパン生地が供給されるようにすることも可能となる。これはシーティング装置において、連続して供給されてくるパン生地Aが詰まり、前後するパン生地が重なった状態で該シーティング装置から排出されたり、また、所要の円形や楕円形に成形されなかたりする場合があるからである。パン生地Bが適正形状となっているか否かを判定する技術としては、例えば、特願2006-66563号に開示されたものがある。」 「図1 [図:0001386200000001.jpg] 」 「図2 [図:0001386200000002.jpg] 」 イ 甲1の記載から分かること 段落【0022】の「第1ベルトコンベア26によって搬送されるパン生地Bの当該第1ベルトコンベア上での幅方向位置を検知するための位置検知手段36(図2)が設けられている。位置検知手段としては、種々の位置検知手段を用いることができるが、図示の例では、CCDカメラを用いたものが示されており、このCCDカメラにより二次元画像を撮像して、その画像データから当該パン生地Bの幅方向位置を検知するようにしている。この場合には、パン生地Bが所要の大きさになっているか否か、また、パン生地Bが適正な円形若しくは楕円形にされているか否かを検知して、それに基づき、シーティング装置の圧延ローラ対のローラ間隔やスピードを調整して、適正な大きさ、適正な形状のパン生地が供給されるようにすることも可能となる。」との記載から、位置検知手段36の態様として、CCDカメラの採用により、パン生地Bの形状を画像データとして検知する態様を備えていることが分かる。また、検知されたパン生地Bの形状に関する画像データに基づいて圧延ローラ対のローラ間隔を調整するのであるから、そのための画像データ処理部、該処理部の処理結果を受け取り製造装置のローラ間隔等の調整を行う調整部が存在することは、段落【0022】末尾に記載の特願2006-66563号(特開2007-240457号公報)にも記載があるように、自明である。 ウ 甲1に記載された発明 上記ア及びイを総合すると、甲1には、下記の発明(以下、「甲1発明」という。)あるいは、以下の事項(以下、「甲1に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。 「パン生地A、Bを搬送するベルトコンベア20、傾斜搬送路24、ベルトコンベア22、及び第1ベルトコンベア26と、パン生地Aを圧延してシート状のパン生地Bに整形する圧延ローラ対と、圧延されたシート状のパン生地Bの形状を検知する位置検知手段36と、検知された前記シート状のパン生地Bの形状データに基づいて前記圧延ローラ対のローラ間隔を調整する調整部とを備え、前記位置検知手段36は、圧延された前記シート状のパン生地Bの形状を上方から撮影するCCDカメラを備えており、前記調整部は、前記CCDカメラにより撮影された前記シート状のパン生地Bの形状に関する画像データに基づいて前記圧延ローラ対のローラ間隔を調整するパン生地成形装置10。」 (2)甲2 ア 甲2の記載 甲2には、「生地成形安定装置」に関して、以下の記載がある。 「本発明は、クロスモルダーにおける生地成形安定装置、詳しくは自動制御手段を施したパン生地成形装置に関する。」(第1頁右欄第15-17行) 「本発明クロスモルダーにおける生地成形安定装置は、上記の目的を達成するため、次に述べるような構成要件から成る。 (1)分割したパン生地を搬送するための第1のベルトコンベヤ、前記第1コンベヤの終端において同コンベヤの搬送方向とほぼ直角方向に走る第2のベルトコンベヤ、前記第2コンベヤのベルト表面に一定間隔Yを置いて対向し、パン生地の搬送に連動して同表面に近接、隔離するプレス板P、その下流側において前記第2コンベヤを横切って、その巾の中央から左、右両側に向けて、それぞれ同数のコンベヤ上の物品の有無感知手段を設け、さらに、その下流側にパン生地成形機を連結して構成され、第2コンベヤ上で搬送されるパン生地により左、右の物品感知手段の作動数が異なるときは、その差により第1ベルトコンベヤの駆動スピードの遅速を制御すると共に、左右の物品感知手段の作動数の和から所定数を差引いた値の正負に応じて、前記プレス板とベルト表面との間の間隔を制御するようにしたことを特徴とするクロスモルダーにおける生地成形安定装置。 (2)感知手段の作動数の差および作動数の和から所定数を差引いた値は、任意の設定回数で計測し、そのバラツキの平均値を出力として採用し、第1コンベヤスビードはサーボモータまたはインバータにより速度制御し、プレス板位置は、パルスモータ等でプログラム制御を施すことより成る上記第(1)項記載のクロスモルダーにおける生地成形安定装置。」(第2頁右下欄第15行-第3頁右上欄第3行) 「複数回平均して平均値を採っているのは被計測対象物の不定形性が大きく、成る程度のバラツキを許容する必要があることと制御目的に対し必要以上の高感度を与えることは無用だからである。 さらに、上記左、右のセンサーの作動数の絶対値の和は、ロール状棒状生地の軸方向長さを表示するものであるから、同様に複数回計測値の平均値を出し、これを設定値と比較した値を採用して、モルダーのプレス板の隙間Y調整を行うようにし、パン生地の軸方向長さが設定値から許容範囲内に納まるようプレス板Pの位置を制御する。」(第3頁左下欄第19行-右下欄第10行) 「また、同センサーからの信号を利用してパン生地の軸方向長さを測定するのは、前記測定ラインを通過する生地によって作動する左、右センサー1の数の絶対値を加算することによって得られるから、たとえば生地の基準長を400mmと定めた場合(生地の軸方向長さは任意に設定可能である)、5ないし10回の計測値の平均が440mmで40mm長過ぎるのであれば、その信号を基準にしてパルスモータ等でモルダ一部のプレス板Pを上にあげ、その隙間を拡げて生地の長さが縮まるよう制御する。逆に、平均値が380mmとすると短か過ぎるので、プレス板を下げてやる。プレス板Pの上、下帯は、プログラムにより任意に設定することができるようにしてある。 (ハ)発明の効果 以上説明したとおり本発明クロスモルダーにおける生地成形安定装置によれば、計測ラインの一セットのセンサーからの情報を、単純加算または絶対値を加算して、これから生地の形のバラツキの平均値を得て、これによってコンベヤからパン生地成形機に送込まれる食パン生地のセンター出しおよび軸方向長さの制御を、すべて自動的に行うことができる。」(第4頁左上欄第18行-右上欄第20行) 「4.図面の簡単な説明 第1図は、従来使用されている食パン自動パンニング機および本発明クロスモルダーの平面概略図、第2図は、第1図におけるX?X線に沿う断面概略図、第3図は、本発明装置の制御回路のフローチャートを示すものである。 1・・・物品有無センサー 2・・・ロール状棒状パン生地 3・・・円板状パン生地 4・・・巻込み金網 5・・・球状パン生地 6・・・シーテイングローラ 7・・・巻込み金網によりロール状態となっているパン生地 A・・・Aベルトコンベヤ(第1ベルトコンベヤ) B・・・Bベルトコンベヤ(第2ベルトコンベヤ) C・・・センタリング機 D・・・パン生地成形機 P・・・プレス板 Y・・・プレス板とコンベヤベルトとの間隔」(第4頁左下欄第6行-右下欄第5行) 「 [図:0001386200000003.jpg] 」 「 [図:0001386200000004.jpg] 」 イ 甲2の記載から分かること 上述の第3頁左下欄第19行-右下欄第10行、第4頁左下欄第6行-右下欄第5行、及び第1図等の記載から、物品有無センサー1は、ロール状棒状パン生地2の長さを検出していることが分かる。 また、上述の第3頁左下欄第19行-右下欄第10行、第4頁左上欄第18行-右上欄第20行、第4頁左下欄第6行-右下欄第5行、第1図、及び第2図等の記載から、プレス板Pによって、ロール状態となっているパン生地7が軸方向に引き延ばされることが分かるから、当該プレス板Pはパン生地7を圧延する機能を有することが分かる。また、同記載から、制御回路がプレス板Pとコンベヤベルトとの間隔Yを調節することで、圧延量を調整していることが分かる。 ウ 甲2に記載された発明 上記ア及びイを総合すると、甲2には、下記の発明(以下、「甲2発明」という。)あるいは、以下の事項(以下、「甲2に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。 「パン生地を搬送するBベルトコンベヤと、ロール状態となっているパン生地7を圧延してロール状棒状パン生地2に整形するプレス板Pと、ロール状棒状パン生地2の長さを検出する物品有無センサー1と、認識された前記ロール状棒状パン生地2の長さに基づいて前記プレス板Pの圧延量を調整する制御回路とを備え、前記制御回路は、前記物品有無センサー1により検知された前記ロール状棒状パン生地2の長さに関する複数のデータの平均値を算出し前記プレス板Pの圧延量を調整する生地成形安定装置。」 2.異議理由1についての判断(甲1を主引例とした場合の検討) (1)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「パン生地A、B」は、本件特許発明1における「生地」に相当し、以下同様に、「ベルトコンベア20、傾斜搬送路24、ベルトコンベア22、及び第1ベルトコンベア26」は「搬送部」に、「圧延ローラ対」は「圧延部」に、「シート状のパン生地B」は「生地シート」に、「CCDカメラ」は「撮影部」に、「パン生地成形装置10」は「生地シート整形装置」に、それぞれ相当する。 そして、甲1発明における「圧延されたシート状のパン生地Bの形状を検知する位置検知手段36」と本件特許発明1における「生地シートの形状を認識する認識部」とは、「圧延された生地シートの形状を検知する検知部」という限りにおいて一致する。 そうすると、両者は、以下の一致点、相違点を有している。 [一致点] 「生地を搬送する搬送部と、生地を圧延してシート状に整形する圧延部と、圧延された生地シートの形状を検知する検知部と、検知された前記生地シートの形状データに基づいて前記圧延部を調整する調整部とを備え、前記検知部は、圧延された前記生地シートの形状を上方から撮影する撮影部を備えており、前記調整部は、前記撮影部により撮影された前記生地シートの形状に関する画像データに基づいて前記圧延部を調整する生地シート整形装置。」 [相違点1] 「圧延された生地シートの形状を検知する検知部」に関して、本件特許発明1においては、「圧延された生地シートの形状を認識する認識部」であるのに対し、甲1発明では、「圧延されたシート状のパン生地Bの形状を検知する位置検知手段36」であって、生地シートの形状を認識する処理までは行っていない点。 [相違点2] 本件特許発明1は、生地シートの形状に関する画像データに基づいて形状データを1枚ずつ蓄積し前記形状データの推移を分析して圧延部の圧延量を調整しているのに対し、甲1発明は、シート状のパン生地Bの形状に関する画像データに基づいて圧延ローラ対のローラ間隔を単に調整するというにとどまり、撮像データとローラ間隔調整との間の処理規則が明らかでない点。 以下、相違点について検討する。 事案に鑑み、まず相違点2から検討する。 [相違点2について] まず、甲2には、「ロール状棒状パン生地2の長さに関する複数のデータの平均値を算出」することが記載されているものの、当該処理規則は、本件特許発明1の「形状データの推移」を分析する処理規則とは実質的に異なる。 すなわち、本願の発明の詳細な説明から把握される発明の課題は、生地の物性の変化に対応して生地シートを整形することができる生地シート整形装置及び方法を提供することであると認められる(段落【0008】参照)。 そして、本願の明細書では、「形状データの推移」について、段落【0027】において、「そして、圧延部のパラメータに関する調整値と差分の推移との間の相関関係を分析し、生地の特性変化に対する最適な調整値を求めることが可能となる。こうした生地シートに関する形状データ及び分析データを蓄積していくことで、人工知能等の公知の推論プログラムを用いた調整処理を行うこともできる。その際には、生地の原料、周囲温度等の条件を加味することでより正確な調整処理を行えるようになる。」と記載されており、具体的には、段落【0035】において、「例えば、前回の間隔量による差分の減少分を算出することで調整結果を確認し、今回の差分について減少分に対する比率を算出して前回の間隔量に比率を掛けて次の間隔量を算出して調整する。」と記載されている。 一方で、甲2では、平均値を算出する目的について、第3頁左下欄第19行-右下欄第3行において「複数回平均して平均値を採っているのは被計測対象物の不定形性が大きく、成る程度のバラツキを許容する必要があることと制御目的に対し必要以上の高感度を与えることは無用だからである。」と記載されている。 そうすると、甲2に記載された事項において形状データの平均値を算出することと本件特許発明1において形状データの推移を分析することとでは、その目的が異なるものであって、かつ、平均値を算出したとしても、本件特許発明1のように1枚ずつ蓄積した形状データの変化量(減少量や増加量)を算出したことにはならないので、甲2には、「形状データの推移」を分析することについての記載があるとは認められない。また、提示された証拠からは、「形状データの推移」を分析することが当業者における周知技術であるともいえない。 なお、仮に甲2に記載された処理規則が本件特許発明1のものであったとしても、当業者が当該処理規則を甲1発明に組み合わせて、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることで、本件特許発明1を容易に想到し得たとは認められない。 すなわち、甲1発明においては、「生地を圧延してシート状に整形する圧延部」を調整している一方で、甲2に記載された事項においては「ロール状態となっているパン生地7を圧延してロール状棒状パン生地2に整形するプレス板P」を調整しているところ、甲2に記載された事項を、甲1発明に適用する際、「生地を圧延してシート状に整形する圧延部」ではなく、その後の工程である「ロール状パン生地整形装置14」の「転動プレート44」(図1等参照。)に適用することになる。 そうすると、甲1発明及び甲2に記載された事項は、生地の整形プロセスにおける異なる工程を対象とするものであるから、これらを組み合わせる動機付けを見いだすことはできない。 以上のことから、甲1発明に、甲2に記載された事項、及び周知技術を適用して、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。 したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、甲2に記載された事項、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件特許発明2ないし4について 本件特許の請求項2ないし4の記載は、請求項の記載を他の記載に置きかえることなく本件特許の請求項1を直接あるいは間接的に引用してされたものであるから、本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものである。 したがって、本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1と同様の理由により甲1発明、甲2に記載された事項、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3.異議理由2及び3についての判断(甲2を主引例とした場合の検討) (1)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明における「パン生地」は、本件特許発明1における「生地」に相当し、以下同様に、「Bベルトコンベヤ」は「搬送部」に、「プレス板P」は「圧延部」に、「制御回路」は「調整部」に、それぞれ相当する。 そして、甲2発明における「ロール状棒状パン生地2の長さを検出する物品有無センサー1」と本件特許発明1における「生地シートの形状を認識する認識部」とは、「圧延された生地の形状を認識する認識部」という限りにおいて一致する。 そうすると、両者は、以下の一致点、相違点を有している。 [一致点] 「生地を搬送する搬送部と、生地を圧延して整形する圧延部と、圧延された生地の形状を認識する認識部と、認識された前記生地の形状データに基づいて前記圧延部の圧延量を調整する調整部とを備え、前記調整部は、前記生地の形状に関するデータに基づいて前記圧延部の圧延量を調整する生地整形装置。」 [相違点3] 本件特許発明1の圧延部は、生地をシート状に整形するものであるのに対し、甲2発明のプレス板Pは、生地をロール状棒状に整形するものである点。 [相違点4] 「圧延された生地の形状を認識する認識部」に関して、本件特許発明1においては、「生地シートの形状を認識する認識部」であるのに対し、甲2発明の物品有無センサー1は、「ロール状棒状パン生地2の長さを検出する物品有無センサー1」である点。 [相違点5] 本件特許発明1の調整部は、認識された生地シートの形状データに基づいて圧延部の圧延量を調整するものであるのに対し、甲2発明の制御回路は、認識されたロール状棒状パン生地2の長さに基づいてプレス板Pの圧延量を調整するものである点。 [相違点6] 本件特許発明1の認識部は、生地の形状を上方から撮影する撮影部を備えているのに対し、甲2発明の物品有無センサー1は、そのような構成を備えているか不明である点。 [相違点7] 本件特許発明1の調整部は、生地シートの形状に関する画像データに基づいて形状データを1枚ずつ蓄積し前記形状データの推移を分析して圧延部の圧延量を調整するのに対し、甲2発明の制御回路は、物品有無センサー1により検知されたロール状棒状パン生地2の長さに関する複数の形状データの平均値を算出しプレス板Pの圧延量を調整する点。 以下、相違点について検討する。 事案に鑑み、まず相違点7から検討する。 [相違点7について] 上記「2.異議理由1についての判断(甲1を主引例とした場合の検討)」において言及したように、甲2には、「形状データの推移」を分析することについての記載はなく、また、甲2発明の「形状に関するデータを1つずつ蓄積し前記形状データの平均値を算出」することが、実質的に「形状データの推移」を分析していることに相当するとも認められない。そして、「形状データの推移」を分析することは、甲1に記載された事項においても開示や示唆がなく、当業者における周知技術であるとも認められない。また、同じく上記2.(1)[相違点2について]の箇所で言及したように、そもそも甲2発明と甲1に記載された事項は、生地の整形プロセスにおける異なる工程を対象とするものであって、「ロール状態となっているパン生地7を圧延してロール状棒状パン生地2に整形するプレス板P」の調整に関する甲2発明を、甲1に記載された事項における「生地を圧延してシート状に整形する圧延部」に適用する動機付けが見いだせない。 そうすると、甲2発明に、甲1に記載された事項、及び周知技術を適用して、上記相違点7に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。 したがって、上記相違点3ないし6について検討するまでもなく、上記相違点7は実質的な相違点であるから本件特許発明1は甲2発明ではなく、また、本件特許発明1は、甲2発明、甲1に記載された事項、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件特許発明2ないし4について 本件特許の請求項2ないし4の記載は、請求項の記載を他の記載に置きかえることなく本件特許の請求項1を直接あるいは間接的に引用してされたものであるから、本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものである。 したがって、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様の理由により甲2発明ではなく、また、本件特許発明3及び4は、甲2発明、甲1に記載された事項、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700246

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