特許異議申立
2022-700140
車両用内装部品及び車両用内装部品の製造方法
- 審判番号
- 2022-700140
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-563723
- 登録番号
- 6920470
- 請求日
- 2022年02月18日
- 審決日
- 2023年06月12日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】河西工業株式会社
- 【権利者代理人】中村 信雄
- 【権利者代理人】益頭 正一
- 【異議申立人】藤本 博基
- 審判長/審判官
- 審判長 藤井 昇
- 審判官 一ノ瀬 覚
- 審判官 中村 則夫
- 分類
- P1651.113-YAA(B60R) / P1651.121-YAA(B60R) / P1651.537-YAA(B60R)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6920470号発明「車両用内装部品及び車両用内装部品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6920470号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2、3〕について訂正することを認める。
特許第6920470号の請求項2、3に係る特許を維持する。
特許第6920470号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6920470号の請求項1~5に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)1月5日を国際出願日とする出願であって、令和3年7月28日にその特許権の設定登録がされ、同年8月18日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 2月18日 :特許異議申立人藤本博基(以下「申立人」という。)による請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 5月12日付け:取消理由通知書
同年 7月13日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 8月17日付け:訂正請求があった旨の通知
同年 9月21日 :申立人による意見書の提出
同年11月29日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和5年 2月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 2月16日付け:訂正請求があった旨の通知
同年 3月23日 :申立人による意見書の提出
なお、特許法第120条の5第7項の規定により、令和4年7月13日にした訂正の請求は取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年2月1日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「 車体パネルの車両室内側を覆う車両用内装部品において、
樹脂発泡体から構成されたシート状の芯材を有し、
前記車両用内装部品は、それぞれ異なる機能を備える複数の機能部が前記車両用内装部品の面内に設定されており、
前記芯材は、前記複数の機能部に応じて、前記樹脂発泡体の特性についての面内分布が異なって構成され、
前記複数の機能部は、
成形性を備えるデザイン部と、
剛性を備える剛性部と、
吸音性を備える吸音部と、を含む」
と記載されているのを
「 ルーフパネルの車両室内側を覆う車両用内装部品において、
樹脂発泡体から構成されたシート状の芯材を有し、
前記車両用内装部品は、それぞれ異なる機能を備える複数の機能部が前記車両用内装部品の面内に設定され、且つ、前記ルーフパネルに形成された開口部を開放及び閉止するサンルーフユニットに対応したサンルーフ用開口部、及び、ルームランプを前記ルーフパネルに組み付けるためのルームランプ用開口部が設けられ、
前記芯材は、前記複数の機能部に応じて、前記樹脂発泡体の特性についての面内分布が異なって構成され、
前記複数の機能部は、
車両前方の中央の部位に設定され、前記サンルーフ用開口部と前記ルームランプ用開口部とに挟まれる箇所を含む成形性を備えるデザイン部と、
車両左右両側の部位に設定され、剛性を備える剛性部と、
車両後方の中央の部位に設定され、吸音性を備える吸音部と、を含み、
前記デザイン部と前記吸音部とは、前記サンルーフ用開口部によって分断されている」
に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。)。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2について、以下に示すア~カの限定をするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ア 「車体パネル」を、「ルーフパネル」に限定。
イ 「車両用内装部品」について、「前記ルーフパネルに形成された開口部を開放及び閉止するサンルーフユニットに対応したサンルーフ用開口部、及び、ルームランプを前記ルーフパネルに組み付けるためのルームランプ用開口部が設けられ」ることを限定。
ウ 「デザイン部」について、「車両前方の中央の部位に設定され、前記サンルーフ用開口部と前記ルームランプ用開口部とに挟まれる箇所を含む」ことを限定。
エ 「剛性部」について、「車両左右両側の部位に設定され」ることを限定。
オ 「吸音部」について、「車両後方の中央の部位に設定され」ることを限定。
カ 「デザイン部」と「吸音部」について、「前記デザイン部と前記吸音部とは、前記サンルーフ用開口部によって分断されている」ことを限定。
そして、上記ア~カは、以下に示すとおり、願書に添付された明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の記載からみて、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない(下線は、当審で付与した。)。
・アについて
本件特許明細書等の段落【0014】の「以下、本実施形態に係る車両用内装部品をヘッドライニング10に適用して説明する。ここで、図1は、本実施形態に係るヘッドライニング10を模式的に示す平面図であり、図2は、ルーフ部1の要部を模式的に示す断面図である。」、同【0015】の「車両のルーフ部1は、車体パネルとしてのルーフパネル2を備えており、このルーフパネル2の車両室内側には、ヘッドライニング10が装着されている。ヘッドライニング10は、ルーフパネル2に近接した状態で配置され、当該ルーフパネル2を覆っている。」との記載からみて、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
・イについて
本件特許明細書等の段落【0016】の「ヘッドライニング10の中央位置には、ルーフパネル2に形成された開口部を開放及び閉止するサンルーフユニット(図示せず)に対応したサンルーフ用開口部10aが設けられている。また、ヘッドライニング10の前方位置には、サンバイザー(図示せず)をルーフパネル2に組み付けるためのサンバイザー用開口部10b及びサンバイザーを格納するための造形を備えた格納部10cが、運転席と助手席とに対応してそれぞれ設けられている。また、ヘッドライニング10の前方位置の中央(左右の格納部10cの間)には、ルームランプ(図示せず)をルーフパネル2に組み付けるためのルームランプ用開口部10dが設けられている。」との記載からみて、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
・ウについて
本件特許明細書等の段落【0019】の「デザイン部11は、ヘッドライニング10において成形性を担保する機能部である。サンバイザーの格納部10c及びルームランプ用開口部10dといった部位では、これらを成形するための成形性が要求される。デザイン部11は、成形性が要求される部位、具体的には、ヘッドライニング10の前方中央の部位に設定されている。」、同【0022】の「芯材20は、このようなヘッドライニング10が備える複数の機能部、本実施形態では、デザイン部11、剛性部12及び吸音部13に応じて、ウレタン発泡体の特性についての面内分布が異なるように構成されている。図4に示すように、デザイン部11に対応する芯材20の部位21では、ウレタン発泡体の特性として、引張伸び率が20%以上に設定されている。」との記載、及び、以下に示す【図1】、【図4】の記載からみて、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
[図:0001401600000001.jpg]
・エについて
本件特許明細書等の段落【0020】の「剛性部12は、剛性が要求される部位、具体的には、ヘッドライニング10の左右両側の部位にそれぞれ設定されている。」との記載からみて、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
・オについて
本件特許明細書等の段落【0021】の「吸音部13は、吸音性が要求される部位、具体的には、車両室内の主要な空間に対応するヘッドライニング10の後方中央の部位に設定されている。」との記載からみて、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
・カについて
本件特許明細書等の段落【0022】の「図4に示すように、デザイン部11に対応する芯材20の部位21では、・・・また、剛性部12に対応する芯材20の部位22では、・・・さらに、吸音部13に対応する芯材20の部位23では」との記載、及び、【図4】の部位21~23の境界を示す破線の記載からみて、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)一群の請求項について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に対して請求されたものであり、訂正事項2は、訂正前に引用関係を有する請求項2、3に対して請求されたものである。
よって、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求されている。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正による訂正事項1、2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2、3〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件の請求項2、3に係る発明(以下「本件発明2」、「本件発明3」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項2】
ルーフパネルの車両室内側を覆う車両用内装部品において、
樹脂発泡体から構成されたシート状の芯材を有し、
前記車両用内装部品は、それぞれ異なる機能を備える複数の機能部が前記車両用内装部品の面内に設定され、且つ、前記ルーフパネルに形成された開口部を開放及び閉止するサンルーフユニットに対応したサンルーフ用開口部、及び、ルームランプを前記ルーフパネルに組み付けるためのルームランプ用開口部が設けられ、
前記芯材は、前記複数の機能部に応じて、前記樹脂発泡体の特性についての面内分布が異なって構成され、
前記複数の機能部は、
車両前方の中央の部位に設定され、前記サンルーフ用開口部と前記ルームランプ用開口部とに挟まれる箇所を含む成形性を備えるデザイン部と、
車両左右両側の部位に設定され、剛性を備える剛性部と、
車両後方の中央の部位に設定され、吸音性を備える吸音部と、を含み、
前記デザイン部と前記吸音部とは、前記サンルーフ用開口部によって分断されている
車両用内装部品。
【請求項3】
前記樹脂発泡体は、ウレタン発泡体であり、
前記デザイン部は、前記ウレタン発泡体の特性として、引張伸び率が20%以上であり、
前記剛性部は、前記ウレタン発泡体の特性として、20%圧縮応力が0.13MPa以上であり、
前記吸音部は、前記ウレタン発泡体の特性として、通気度が3cc/cm2/sec以上である
請求項2記載の車両用内装部品。」
第4 取消理由(決定の予告)の概要
訂正前の請求項1~3に係る特許に対して、当審が令和4年11月29日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(進歩性)本件の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
・請求項及び引用文献等
請求項2:引用文献1、4
請求項3:引用文献1、3、4
・引用文献等一覧
引用文献1:特開2016-159706号公報
引用文献3:特開平4-211416号公報
引用文献4:特開2017-190108号公報(周知技術を示す文献)
(それぞれ、申立人が提出した甲第2、11、13号証である。)
第5 当審の判断
1 引用文献の記載事項等
(1)引用文献1
ア 記載事項
引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同様。)。
・「【請求項1】
硬質ポリウレタンフォームの基材に、補強材および表皮材を積層配置した車両内装部材において、
前記基材は、発泡固化した第1の硬質ポリウレタンフォームに第2の硬質ポリウレタンフォームの原料樹脂を接触させた状態で発泡固化させて構成され、
前記第1の硬質ポリウレタンフォームのセル中に、第2の硬質ポリウレタンフォームの原料樹脂が浸透固化して、第1および第2の硬質ポリウレタンフォームの境界領域に帯状の固化含浸層が形成されている
ことを特徴とする車両内装部材。
【請求項2】
前記第2の硬質ポリウレタンフォームにおける前記固化含浸層へ遷移する部位には、該第2の硬質ポリウレタンフォームよりも発泡倍率が低い高密度層が形成されている請求項1記載の車両内装部材。」
・「【0020】
次に、本発明に係る車両内装部材およびその製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して説明する。なお、実施例では、車両内装部材として、車室の天井に取り付けられる成形天井について説明する。また、実施例では、成形天井の方向は、該成形天井を車室の天井に取り付けた状態を基準として示すこととする。
【実施例】
【0021】
図1および図2に示すように、成形天井10は、車室天井に応じた形状に形成され、車両の前後方向に長く延在する略矩形状の板体である。前記成形天井10は、硬質ポリウレタンフォームからなる前記基材12と、該基材12の裏面(車体天井を指向する面)に設けたガラスマット(補強材)14と、該基材12の表面(車室を指向する面)に設けたガラスマット(補強材)16と、前記ガラスマット14の裏面に設けた裏面材(表皮材)18と、前記ガラスマット16の表面に設けた表面材(表皮材)20とを上下の厚み方向に積層配置した積層板として構成されている。なお、前記基材12、ガラスマット14,16、裏面材18および表面材20の夫々は、バインダーにより接着されている。
【0022】
(基材12について)
図1、図2および図6に示すように、前記成形天井10の中間材となる基材12は、車両の前後方向に長尺な板材であって、発泡固化した第1の硬質ポリウレタンフォーム22に第2の硬質ポリウレタンフォーム24の原料樹脂24A(図3(b)参照)を接触させて発泡固化したものである。そして実施例の基材12は、図1から判明する如く、該基材12の長手方向に延在する両端縁(以下、長手端縁と云う)12a,12aに夫々位置する前記第1の硬質ポリウレタンフォーム22,22と、該基材12の短手方向の中央部に位置する前記第2の硬質ポリウレタンフォーム24とから基本的に構成されている。すなわち、前記第1の硬質ポリウレタンフォーム22および第2の硬質ポリウレタンフォーム24は、互いに隣接して位置し、両ポリウレタンフォーム22,24の境界領域に後述する固化含浸層30が付与されている。なお、第1の硬質ポリウレタンフォーム22および第2の硬質ポリウレタンフォーム24のセルは、完全な独立気泡ではなく、一部の気泡が連通して吸音性等の特性が付与されているものが好適である。
【0023】
(第1の硬質ポリウレタンフォーム22について)
図1、図2および図6に示すように、前記第1の硬質ポリウレタンフォーム22は、連続気泡構造のセルを有し、前記基材12の長手端縁12aから所要の範囲(実施例では20cm~30cm)で、該基材12の前端から後端に亘って形成されている。第1の硬質ポリウレタンフォーム22の密度は、特に限定されないが、軽量化の観点からは、40kg/m3以下にするのが好ましく、実施例では30kg/m3~40kg/m3の密度範囲に設定されている。なお、密度は、図6に示す必要な厚みとした基材12から、第1の硬質ポリウレタンフォーム22の一部を切り出し、この切り出した第1の硬質ポリウレタンフォーム22の重量を測定し、この重量を切り出した第1の硬質ポリウレタンフォーム22の体積で割ることで算出した。以下、第2の硬質ポリウレタンフォーム24、固化含浸層30および高密度層28の密度についても同様に算出した。また、第1の硬質ポリウレタンフォーム22は、厚さを5mmとして測定した通気量(JIS K 6400-7)が、1cm3/cm2・S以上であるのが製造上好ましい。
【0024】
(第2の硬質ポリウレタンフォーム24について)
図1、図2および図6に示すように、前記第2の硬質ポリウレタンフォーム24は、前記2つの第1の硬質ポリウレタンフォーム22の間に、前記該基材12の前端から後端に亘って延在する。この第2の硬質ポリウレタンフォーム24は、該第2の硬質ポリウレタンフォーム24の原料樹脂24Aを、既に発泡固化した前記第1の硬質ポリウレタンフォーム22に接触させた状態で発泡固化して形成される。また、第2の硬質ポリウレタンフォーム24における後述する高密度層28を除いた部位(以下、一般部26と云う)の密度は、15kg/m3~25kg/m3範囲に設定するのが好ましく、この密度範囲とすることで、成形天井10に要求される各種の性能を良好に発揮させることができる。なお、一般部26の密度を15kg/m3以上とすることで、座屈が発生し難く成形天井10に必要な剛性を十分に確保することができる。
・・・
【0026】
(高密度層28について)
図1、図2および図6に示すように、前記第2の硬質ポリウレタンフォーム24における前記固化含浸層30へ遷移する部位には、発泡倍率の低い前記高密度層28が前端から後端に亘って帯状に形成されている。すなわち、第2の硬質ポリウレタンフォーム24は、基材12の長手方向に延在する両端縁に前記高密度層28が設けられ、該高密度層28の硬度が、この高密度層28に挟まれた前記一般部26の硬度より高くなっている。すなわち、高密度層28の密度は、少なくとも第2の硬質ポリウレタンフォーム24の一般部26の密度より高くなっている。なお、実施例の高密度層28は、その密度範囲が20kg/m3~50kg/m3に設定されている。高密度層28は、前記固化含浸層30に連なって、該固化含浸層30に沿って基材12の長手方向に帯状に延在しており、固化含浸層30と共に基材12の剛性を高める相乗効果が得られる。」
・「【0033】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る成形天井10の作用について説明する。成形天井10の基材12に、第1の硬質ポリウレタンフォーム22のセル中に第2の硬質ポリウレタンフォーム24の原料樹脂24Aが浸透固化した固化含浸層30を帯状に形成したので、該固化含浸層30により成形天井10の剛性を高めることができる。このため、成形天井10は、剛性低下を伴うような軽量化を実施しても、面積の大きな成形天井に要求される剛性を確保することができる。すなわち、成形天井10は、軽量化を図ると共に剛性の確保も併せて達成し得るので、作業者が持ち上げたりする際に基材12に変形や折れが発生し難く、取り扱い性に優れている。また、成形天井10の基材12に、固化含浸層30と隣接して帯状の高密度層28を形成したので、該高密度層28によっても成形天井10の剛性を高めることができる。」
・【図1】は次のとおりである。
[図:0001401600000002.jpg]
イ 認定事項
(ア)【図1】から、第2の硬質ポリウレタンフォーム24の高密度層28を除いた一般部26の車両前方中央の部位に凹所を有することが認定できる。
(イ)【図1】から、一般部26は、車両の左右中央の部位に設定されていること、高密度層28は、車両左右両側の部位に設定されていること、第1の硬質ポリウレタンフォーム22は、車両左右両側の最外部位に設定されていることが認定できる。
ウ 引用文献1に記載された発明
上記ア、イより、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。
「硬質ポリウレタンフォームの基材12に、補強材16および表皮材18、20を積層配置した、車室の天井に取り付けられる成形天井10である車両内装部材において、
前記基材12は、板材であって、発泡固化した第1の硬質ポリウレタンフォーム22に第2の硬質ポリウレタンフォーム24の原料樹脂24Aを接触させた状態で発泡固化させて構成され、
前記第1の硬質ポリウレタンフォーム22のセル中に、第2の硬質ポリウレタンフォーム24の原料樹脂24Aが浸透固化して、第1および第2の硬質ポリウレタンフォーム22、24の境界領域に帯状の固化含浸層30が形成され、
前記第2の硬質ポリウレタンフォーム24における前記固化含浸層30へ遷移する部位には、該第2の硬質ポリウレタンフォーム24よりも発泡倍率が低い高密度層28が形成されている、車両内装部材であって、
固化含浸層30により成形天井10の剛性を高め、軽量化を図ると共に剛性の確保も併せて達成し得るので、作業者が持ち上げたりする際に基材12に変形や折れが発生し難く、取り扱い性に優れ、
成形天井10の基材12に、固化含浸層30と隣接して帯状の高密度層28を形成したので、該高密度層28によっても成形天井10の剛性を高めることができ、
第1の硬質ポリウレタンフォーム22および第2の硬質ポリウレタンフォーム24のセルは、一部の気泡が連通して吸音性等の特性が付与されているものであり、
第1の硬質ポリウレタンフォーム22の密度は、30kg/m3~40kg/m3の密度範囲に設定され、
第1の硬質ポリウレタンフォーム22は、厚さを5mmとして測定した通気量(JIS K 6400-7)が、1cm3/cm2・S以上であり、
第2の硬質ポリウレタンフォーム24の高密度層28を除いた一般部26の密度は、15kg/m3~25kg/m3範囲に設定され、
高密度層28は、その密度範囲が20kg/m3~50kg/m3に設定され、
一般部26は、車両の左右中央の部位に設定され、一般部26の車両前方中央に凹所を有し、
高密度層28は、車両左右両側の部位に設定され、
第1の硬質ポリウレタンフォーム22は、車両左右両側の最外部位に設定されている、
成形天井10である車両内装部材。」
(2)引用文献3
ア 記載事項
引用文献3には、次の事項が記載されている。
・「【請求項2】
(a)(1)請求項1に記載の方法により製造された連続気泡の常温成形しうるポリウレタンフォームを接着剤が施されている2枚のガラスマットの間に挟み込み、
(2)2枚のガラスマットの一方をフィルムで覆い、
(3)2枚のガラスマットの他方を繊維布地で覆うことにより5層集成体を形成し、
(b)この5層集成体を加熱金型内に入れ、
(c)金型を閉鎖すると共に内部の5層集成体を接着剤を硬化させるのに充分な時間にわたって保持し、(d)成形物品を金型から取出す
ことを特徴とする成形部品の製造方法。
【請求項3】成形物品が自動車用ヘッドライナである請求項2に記載の方法。」
・「【0020】
【実施例】実施例1
・・・
【0022】得られたフォームは次の性質を有した:
連続気泡(ASTM-D1940-42Tにしたがって測定)90容量%
圧縮試験(DIN53421)
0.19MPa(発泡方向に対して平行)
・・・
引張試験(DIN53430)
破断時(伸び率) 24%
・・・」
・「【0025】実施例2
・・・
得られたフォームの性質は次の通りであった:
密度(DIN 53420)約28kg/m3
連続気泡(ASTM-D 1940-42T)約92容量%
圧縮試験(DIN 53421)
0.18MPa(発泡方向に対して平行)
・・・
引張試験(DIN 53430)
破断時伸び率 25%
・・・」
・「【0027】実施例3
・・・
得られたフォームの性質は次の通りであった:
密度(DIN 53420)約28kg/m3
連続気泡(ASTM-D 1940-42T)約88容量%
圧縮試験(DIN 53423)
0.20MPa(発泡方向に対して平行)
・・・
引張試験(DIN 53430)
破断時伸び率 20.2%
・・・」
(3)引用文献4
引用文献4には、次の事項が記載されている。
・「【0020】
上記天井材本体2の車幅方向両側部分は、車幅方向両端に近づくにつれて次第に下方に位置するよう傾斜しており、上記天井材本体2の上記サンルーフ10aに対応する位置には、平面視で略矩形状をなすとともに車幅方向に長く延びるサンルーフ用開口部2aが形成されている。
【0021】
また、上記天井材本体2における上記サンルーフ用開口部2aの車両前側中央部分には、平面視で矩形状をなす前側ランプユニット用開口部2bが形成されている。
・・・
【0023】
上記天井材本体2は、図3に示すように、硬質発泡ウレタンからなるウレタン層3と、該ウレタン層3の車室内側に積層されたガラス繊維からなる第1補強層4と、上記ウレタン層3の車室外側に積層されたガラス繊維からなる第2補強層5と、上記第1補強層4の車室内側に貼り付けられた不織布からなる表皮層6と、上記第2補強層5の車室外側に貼り付けられた不織布からなる裏面層7とを備えている。」
・【図2】は次のとおりである。
[図:0001401600000003.jpg]
2 対比・判断
(1)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と引用発明1とを対比する。
(ア)後者の「車室の天井」は前者の「ルーフパネル」に相当し、以下同様に、「車両内装部材」は「車両用内装部品」に、「基材12」は「芯材」に、「硬質ポリウレタンフォーム」と「第1の硬質ポリウレタンフォーム22」、「第2の硬質ポリウレタンフォーム24の高密度層28を除いた一般部26」及び第2の硬質ポリウレタンフォーム24の「高密度層28」は「樹脂発泡体」に、それぞれ相当する。
そして、上記の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
(イ)後者の「硬質ポリウレタンフォームの基材12に、補強材16および表皮材18、20を積層配置した、車室の天井に取り付けられる成形天井10である車両内装部材」は、前者の「ルーフパネルの車両室内側を覆う車両用内装部品」に相当する。
(ウ)後者の「板材であ」る「硬質ポリウレタンフォームの基材12」は、前者の「樹脂発泡体から構成されたシート状の芯材」に相当する。
(エ)後者の
「前記基材12は、板材であって、発泡固化した第1の硬質ポリウレタンフォーム22に第2の硬質ポリウレタンフォーム24の原料樹脂24Aを接触させた状態で発泡固化させて構成され、
前記第1の硬質ポリウレタンフォーム22のセル中に、第2の硬質ポリウレタンフォーム24の原料樹脂24Aが浸透固化して、第1および第2の硬質ポリウレタンフォーム22、24の境界領域に帯状の固化含浸層30が形成され、
前記第2の硬質ポリウレタンフォーム24における前記固化含浸層30へ遷移する部位には、該第2の硬質ポリウレタンフォーム24よりも発泡倍率が低い高密度層28が形成されている、車両内装部材であって、
固化含浸層30により成形天井10の剛性を高め、軽量化を図ると共に剛性の確保も併せて達成し得るので、作業者が持ち上げたりする際に基材12に変形や折れが発生し難く、取り扱い性に優れ、
成形天井10の基材12に、固化含浸層30と隣接して帯状の高密度層28を形成したので、該高密度層28によっても成形天井10の剛性を高めることができ、
第1の硬質ポリウレタンフォーム22および第2の硬質ポリウレタンフォーム24のセルは、一部の気泡が連通して吸音性等の特性が付与されているものであり、
第1の硬質ポリウレタンフォーム22の密度は、30kg/m3~40kg/m3の密度範囲に設定され、
第1の硬質ポリウレタンフォーム22は、厚さを5mmとして測定した通気量(JIS K 6400-7)が、1cm3/cm2・S以上であり、
第2の硬質ポリウレタンフォーム24の高密度層28を除いた一般部26の密度は、15kg/m3~25kg/m3範囲に設定され、
高密度層28は、その密度範囲が20kg/m3~50kg/m3に設定され」
ているという事項について以下検討する。
a まず、第2の硬質ポリウレタンフォーム24の「高密度層28」は、「密度範囲が20kg/m3~50kg/m3に設定され」、「成形天井10の剛性を高めることができ」るものであり、「第1の硬質ポリウレタンフォーム22」は、「密度は、30kg/m3~40kg/m3の密度範囲に設定され」、「吸音性等の特性が付与されているものであ」り、「第2の硬質ポリウレタンフォーム24の高密度層28を除いた一般部26」は、「密度は、15kg/m3~25kg/m3範囲に設定され」、「吸音性等の特性が付与されているものであ」るところ、密度によりポリウレタンフォームの剛性等の特性が変化することが技術常識であることも踏まえると、それぞれ異なる機能を備える機能部といえ、それらは、「成形天井10」の面内に配置されているといえるものであるから、「成形天井10」の面内に設定されているといえるものである。
b また、第2の硬質ポリウレタンフォーム24の「高密度層28」と「第1の硬質ポリウレタンフォーム22」と「第2の硬質ポリウレタンフォーム24の高密度層28を除いた一般部26」は、「基材12」の面内に配置されているものであるから、「基材12」は、第2の硬質ポリウレタンフォーム24の「高密度層28」と「第1の硬質ポリウレタンフォーム22」と「第2の硬質ポリウレタンフォーム24の高密度層28を除いた一般部26」に応じて、ポリウレタンフォームの特性についての面内分布が異なって構成されているといえるものである。
c そうすると、後者の上記事項は、前者の
「前記車両用内装部品は、それぞれ異なる機能を備える複数の機能部が前記車両用内装部品の面内に設定され、」
「前記芯材は、前記複数の機能部に応じて、前記樹脂発泡体の特性についての面内分布が異なって構成され」
ていることに相当する。
(オ)後者の「高密度層28」は、「成形天井10の剛性を高めることができ」るものであり、また、後者の「第1の硬質ポリウレタンフォーム22」は、「第2の硬質ポリウレタンフォーム24の高密度層28を除いた一般部26」より密度が高いものであるから、相対的に剛性が高いものといえる。
そうすると、後者の「車両左右両側の部位に設定され」た「高密度層28」と、「車両左右両側の最外部位に設定され」た「第1の硬質ポリウレタンフォーム22」は、前者の「車両左右両側の部位に設定され」た「剛性を備える剛性部」に相当する。
(カ)後者の「第2の硬質ポリウレタンフォーム24」は、「吸音性等の特性が付与されているもの」であるから、後者の「車両の左右中央の部位に設定され」た「一般部26」と、前者の「車両後方の中央の部位に設定され吸音性を備える吸音部」とは、「車両の中央の部位に設定され吸音性を備える吸音部」である点で共通する。
(キ)以上より、本件発明2と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりであるものと認める。
〔一致点1〕
「ルーフパネルの車両室内側を覆う車両用内装部品において、
樹脂発泡体から構成されたシート状の芯材を有し、
前記車両用内装部品は、それぞれ異なる機能を備える複数の機能部が前記車両用内装部品の面内に設定され、
前記芯材は、前記複数の機能部に応じて、前記樹脂発泡体の特性についての面内分布が異なって構成され、
前記複数の機能部は、
車両左右両側の部位に設定され、剛性を備える剛性部と、
車両の中央の部位に設定され、吸音性を備える吸音部と、を含む
車両用内装部品。」
〔相違点1〕
車両用内装部品について、本件発明2は、「前記ルーフパネルに形成された開口部を開放及び閉止するサンルーフユニットに対応したサンルーフ用開口部、及び、ルームランプを前記ルーフパネルに組み付けるためのルームランプ用開口部が設けられ」、「車両前方の中央の部位に設定され、前記サンルーフ用開口部と前記ルームランプ用開口部とに挟まれる箇所を含む成形性を備えるデザイン部」を含み、吸音部が「車両後方の」中央の部位に設定され、「前記デザイン部と前記吸音部とは、前記サンルーフ用開口部によって分断されている」のに対し、引用発明1は、そのような事項を有していない点。
イ 判断
ルーフパネルの車両室内側を覆う車両用内装部品において、ルーフパネルに形成された開口部を開放及び閉止するサンルーフユニットに対応したサンルーフ用開口部、及び、ルームランプをルーフパネルに組み付けるためのルームランプ用開口部が設けられたものは、一例として、引用文献4(上記1(3)参照。)に示すように、本願出願前の周知技術である。
しかしながら、当該周知技術には、少なくとも、デザイン部と吸音部とをサンルーフ用開口部によって分断するという技術事項は開示されておらず、これを引用発明1に適用したとしても、上記相違点1に係る「車両前方の中央の部位に設定され、前記サンルーフ用開口部と前記ルームランプ用開口部とに挟まれる箇所を含む成形性を備えるデザイン部」を含み、吸音部が「車両後方の」中央の部位に設定され、「前記デザイン部と前記吸音部とは、前記サンルーフ用開口部によって分断されている」という本件発明2の事項を有するものには至らない。
なお、引用文献3(上記1(2)参照。)を検討しても、上記技術事項については、記載も示唆もなく、また、ほかに上記技術事項を開示する証拠もない。
したがって、引用発明1において、上記相違点1に係る本件発明2の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たことではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和5年3月23日付けの意見書の3(2)(2-1)において、引用発明1に周知技術を適用するにあたり、引用発明1のデザイン部を除いた「一般部26」(吸音部)を車両後方の中央の部位の位置とすれば、自ずと「前記デザイン部と前記吸音部とは、前記サンルーフ用開口部によって分断されている」という構成を充足する旨主張する。
しかしながら、分断する構成とするには、車両横方向でみて、剛性部の幅が、車両内装部材の側方の縁から当該開口部までの幅と少なくとも同等としなければならないので、引用発明1にサンルーフ用開口部を設けたとしても、自ずと上記構成を充足するということはできない、そして、引用発明1に周知技術を適用し、引用発明1の「一般部26」を車両前後方向で異なる特性を持つデザイン部と吸音部とした上で、さらに、上記分断に係る構成を得るように変更することまでは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明2は、引用発明1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明3について
本件発明3は、本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに限定をするものであるから、上記(1)と同様の理由により、引用発明1、引用文献3に記載された事項及び引用文献4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由
申立人は、以下の申立理由を主張する。
・申立理由1:(新規性)本件の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
・申立理由2:(進歩性)本件の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
・申立理由3:(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものである。
記
・申立理由及び証拠
申立理由1:請求項2に対して、甲第2号証
申立理由2:請求項3に対して、甲第2、11、12号証
申立理由3:請求項2、3に対して
・証拠一覧
甲第2号証 :上記引用文献1
甲第11号証:上記引用文献3
甲第12号証:硬質ポリウレタンフォーム トーヨーソフラン-R、日本ソフラン化工株式会社、1979年10月改訂、8~10ページ
2 当審の判断
(1)申立理由1、2について
上記第5の2(1)ア(キ)で示したように、本件発明2と引用発明1(甲第2号証に記載された発明)との間には相違点1が存在するから、本件発明2は引用発明1に対して新規性を有するので、申立理由1は成り立たない。
また、上記第5の2(2)で示したように、本件発明3は引用発明1(甲第2号証に記載された発明)に対して進歩性を有するので、申立理由2も成り立たない。
(2)申立理由3について
ア 請求項2に対して
申立人は、請求項2に記載される「成形性」、「剛性」、「吸音性」がどの程度の成形性、剛性、吸音性を有しているのか不明であるから、本件発明2は明確でない旨主張する。
しかしながら、請求項2には、「異なる機能を備える複数の機能部」が、それぞれ「成形性」、「剛性」、「吸音性」という特性を備える「デザイン部」、「剛性部」、「吸音部」であることが特定されており、それら各部がそれぞれの特性を備えているものであることは明確に特定されるので、具体的な数値による特定等がなくとも、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
イ 請求項3に対して
申立人は、請求項3に記載される「引っ張り伸び率」、「20%圧縮応力」、「通気度」の数値範囲が、その下限値のみ特定されており、発明の範囲が不明確である旨主張する。
しかしながら、請求項3において、それらの数値範囲の下限値が特定されることで、少なくとも技術範囲は限定されており、上限値が特定されていないことが、直ちに請求項3に係る発明の範囲を不明確にするとは認められない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、申立理由3は成り立たない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2及び3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2及び3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項1に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700140