商標取消審判
2022-301072
ダイキンコムテック、ダイキン、コムテック、コムテックコミュニケーションテクノロジー、コミュニケーションテクノロジー、コミュニケーション
- 審判番号
- 2022-301072
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2016-018559
- 登録番号
- 5872993
- 請求日
- 2022年12月09日
- 審決日
- 2024年05月21日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 コムテック
- 【請求人代理人】名古屋国際弁理士法人
- 【被請求人】ダイキン工業 株式会社
- 【被請求人代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 大山 健
- 審判官 渡邉 あおい
- 分類
- T131 .1 -Y (W09)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第1項、商標法第50条第2項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5872993号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5872993号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「COMTEC」の文字を中央に配し、その下に「communication technology」の文字を配置するとともに、その左上に、「DAIKIN」の文字及び2つの直角二等辺三角形からなる図形を配置してなり、平成28年2月22日に登録出願、第9類「電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、同年8月12日に設定登録されたものである。
なお、本件審判請求の登録日は、令和4年12月26日である。
また、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、令和元年(2019年)12月26日ないし令和4年(2022年)12月25日である(以下「要証期間」という。)。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品、第9類「電子応用機械器具及びその部品」(以下「取消請求商品」ということがある。)についての登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、取消請求商品について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)「登録商標」について
ア 「プロフィール画像」(乙1)
「プロフィール画像」は、「各種ネットサービスにおいてユーザーのプロフィールとして設定される画像。主にSNSで使われるアイコン画像など。」(甲2)として世の中に広く認識された上で使用されている。
つまり、「プロフィール画像」は、「ユーザー自身」を示すものであり、これを見る者も、「プロフィール画像」から「ユーザー」を認識するにすぎず、「商品」の識別標識として認識されるものではない。
そのため、「プロフィール画像」(乙1)は、(商標法第2条第3項第8号における)本件商標の「使用」の事実を示す根拠とはなり得ないことは明らかである。
また、仮に「プロフィール画像」が、一般に商標の使用事実を示す根拠事実となり得るとしても、乙第1号証における「プロフィール画像」は、本件商標と比較すれば、その構成要素が欠けていることによって外観上顕著に相違しているから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標に当たらないことは明らかである。
さらに、乙第1号証は「プロフィールページ」であり、取消請求商品(「電子応用機械器具及びその部品」)に対応する商品は何ら掲載されていない。
加えて、乙第1号証には、「@ComtecIMSさんはまだツイートしていません」と表示されているとおり、その存在を証明し得るとしても、実際に需要者等に向けて発信された事実がないことが明らかである。
イ 「プロフィール画像データ」(乙2)
被請求人は、「プロフィール画像」(乙1)のデータとして「プロフィール画像データ」(乙2)を提出している。
この該画像データが、「プロフィール画像」(乙1)のデータであること及び要証期間において存在していたことは何ら証明されていない。
また、仮に、被請求人の主張のとおり、「プロフィール画像」(乙1)のデータであるとしても、前述したとおり、「プロフィール画像」からは「ユーザー」を認識するにすぎず、「商品」の識別標識として認識するものではない。
ウ 「ロゴ」が部分的にしか視認できないことの主張について
被請求人ロゴが、仮に著名であるとしても、著名性を獲得しているのは、被請求人ロゴ「全体」であって、その一部が著名性を獲得しているのではない。
また、そもそも、プロフィール画像においては、「一部」ともいい得ず、このことは、被請求人が自認の上で「端」という表現を採用して説明していることからも明らかである。
つまりは、仮に被請求人の主張するとおり被請求人ロゴが著名性を獲得しているとしても、それをもって、被請求人ロゴと同視できるものではないだけではなく、該ロゴを想起すらできないものである。
エ 「COMTEC」末尾の「C」の文字が一部隠れていることの主張について
本件商標は、図形と文字が結合してなるものであり、いずれの要素が、主要部分であるか、付記的部分であるかという軽重のあるものではないことから、そのような構成からなる文字の一部が隠れていることについて、軽微な差異とは評価し得えず、本件商標とは別に付記されたプロフィール欄等からの文字列を考慮して初めて理解に至るということは、社会通念上同一性が認められないことを自認したに等しい。
オ 「ダイキン工業株式会社電子システム事業部IMSグループ」の文字が表示されているとの主張について
「プロフィール画像」からは「ユーザー」を認識するのであるから、「プロフィール画像」であると主張しておきながら、このことを無視して、分離され「る」ことを相当とする被請求人主張は自己矛盾している。
「プロフィール画像」として、全体として認識されるのであるから、この使用態様においては分離されないことが相当である。
(2)「使用」について
ア 乙第3号証について
被請求人は、このウェブサイトにおいて、本件商標と同一商標が表示されていて、このウェブサイトの内容を踏まえれば、被請求人は自身の電子システム事業部に関する情報を電磁的方法により提供していた旨主張する。
しかしながら、該ウェブサイトにおいては、赤字、かつ、太字であって特定部分を「見本」と赤字で記載し、かつ特定領域を赤枠線で囲う「サンプル表示」がされているのみであって、このサンプル表示に基づいて実際にその表示がされた事実には当たらないことは明らかである。
また、「電子システム事業部に関する情報」と被請求人が自身で明確に主張するとおり、被請求人が電磁的方法により提供していたとする情報は「事業部に関する情報」(コンピュータソフトウェアのバージョンアップサポート等に関するもの)であり、「商品」に関するものでもないことも明らかである。
してみれば、仮に要証期間において、該ウェブサイトにおける表示事実が存し、表示内において本件商標が存していたとしても、該ウェブサイトにおける表示をもって、「使用」と認定し得ず、また、「事業部に関する情報」しか掲載されていた事実はないのであるから、「商品に関する広告」にも当たらない。
よって、乙第3号証をもって使用の事実が認められないことは明らかである。
イ 乙第4号証ないし乙第6号証について
本件商標は、図形、文字列の結合商標であって、いずれの要素が、主要部分であるか、付記的部分であるかという軽重のあるものではないことから、本件商標全体としてではなく、その一部である「COMTEC」の文字列のみを使用していることが、本件商標を使用していることを示すものではないことは明らかである。
よって、いずれの証拠及びこれに伴う被請求人の主張はいずれも失当である。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
(1)商標権者である被請求人は、本件審判請求の予告登録日より前3年以内に、日本国内で、本件商標と社会通念上同一の商標を、取消請求商品について使用している。
これを証するため、乙第1号証ないし乙第6号証を提出し、以下において商標の使用の事実を証する。
(2)本件商標の使用事実
ア 被請求人(商標の使用者)について
乙第1号証及び乙第3号証ないし乙第6号証のウェブサイトにおいて、「ダイキン工業株式会社」の文字が示されており、各サイトのリンク先をたどれば、全てのウェブサイトが被請求人の管理下にあることは明らかである。
イ 被請求人の使用に係る商標及び商品について
(ア)乙第1号証について
被請求人のSNSアカウントのプロフィール写真において、本件商標の一部が表示されている(乙1)。このプロフィール画像に掲載されている商標は、本件商標と社会通念上同一というべきである。
当該プロフィール画像はSNSの仕様上、円形にトリミングされているものの、これをダウンロードした画像は本件商標が完全に含まれた画像である(乙2)。つまり、被請求人は乙第2号証を使用する意図でプロフィール画像を設定しているが、やむなく乙第1号証のとおり表示されているにすぎない。さらに、このような仕様上避けられないトリミングはSNSにおいて一般的に行われるものであり、この画像に接した需要者は、画像端部の不自然さから、トリミングがなされていると認識する。
プロフィール画像(乙1)と本件商標とでは、被請求人のロゴが部分的にしか視認できず、「COMTEC」末尾の「C」の文字が一部隠れており、かつ、「ダイキン工業株式会社電子システム事業部IMSグループ」の文字が表示されているという差異がある。
しかしながら、ロゴが部分的にしか視認できないとの差異については、被請求人のロゴは我が国において著名なロゴである。このため、乙第1号証で表示されている画像のように「N」の文字と三角形図形の右端のみが表示されている場合であっても、需要者は本件商標がトリミングされていると認識でき、また、プロフィール欄に「ダイキン工業株式会社」と明記されていることにより、その認識は容易になし得る。
「COMTEC」末尾の「C」の文字が一部隠れているとの差異については、そもそも差異が軽微である上に、プロフィール欄等に「COMTEC」との文字が表示されていることから、末尾の文字が「C」であると理解される。
「ダイキン工業株式会社電子システム事業部IMSグループ」の文字が表示されているとの差異については、書体及び文字の大きさの違いから、容易に本件商標と「ダイキン工業株式会社電子システム事業部IMSグループ」は分離して観察される。
以上より、乙第1号証において被請求人は本件商標と社会通念上同一の商標を付して、自己の電子システム事業部に関する情報を電磁的方法により提供しているといえる。また、当該アカウントが2011年2月に開設されたことは乙第1号証から明らかであることから、上記の行為は要証期間にも継続されていた。
(イ)乙第3号証について
乙第3号証は、被請求人の電子システム事業部のウェブサイトのインターネットアーカイブのプリントアウトであり、要証期間である2022年8月10日のものである。当該ウェブサイトは、顧客向けのユーザー登録の案内であり、本件商標と色彩のみが異なる商標が表示されている。
したがって、乙第3号証から、要証期間である2022年8月10日に被請求人は当該ウェブサイトにおいて、本件商標を付して、自己の電子システム事業部に関する情報を電磁的方法により提供していたといえる。
(ウ)被請求人の電子システム事業部と取扱商品について
被請求人の電子システム事業部では、主にソフトウェアとその関連機器を取り扱っている。乙第4号証は、その商品の一つに関するキャンペーンを紹介する広告を内容とするウェブサイトのプリントアウトであり、要証期間である2022年7月12日のものである。当該資料には「モーションキャプチャシステム」の記載とともに、キャンペーン特別価格の記載があり、システム一式の商品の中には「PC」が含まれている。「PC」は当然「電子計算機」を指す語であり、これは本件商標の指定商品「電子応用機械器具及びその部品」に含まれる。
してみれば、乙第4号証により、被請求人は、要証期間である2022年7月12日に当該ウェブサイトにおいて、「電子応用機械器具及びその部品」の広告を内容とする情報を電磁的方法により提供していたといえる。
また、被請求人の電子システム事業部のオンラインショップでは、その他に各種ソフトウェアが販売されている(乙5)。アプリケーションソフトウェアは本件商標の指定商品に含まれる。乙第5号証は、要証期間である2022年8月19日のものである。
したがって、乙第5号証により、要証期間である2022年8月19日にも、被請求人は当該ウェブサイトにおいて、「電子応用機械器具及びその部品」の広告を内容とする情報を電磁的方法により提供していたといえる。
さらに、乙第6号証に見られるように、「COMTEC」という文字列を各ウェブサイトのドメインや各窓口となるメールアドレスに現在も使用している。
第4 審尋に対する被請求人の回答、及び回答に対する請求人の意見
1 審尋に対する被請求人の回答
令和5年7月11日付けで合議体が通知した審尋に対し、被請求人は同年8月14日に回答書を提出し、要旨以下のように主張するとともに、証拠方法として、乙第7号証ないし乙第22号証を提出した。
(1)審尋への対応
被請求人は、乙第3号証を補足する証拠及び異なる使用態様を示す新たな証拠を提出し、本件商標を要証期間に日本国内で取消請求商品について使用していた事実を立証する。
ア ダイキン設備CAD製品(「FILDER Cube」)について
乙第3号証の第1頁の「対象製品」に記載のとおり、ダイキン設備CAD製品には「FILDER CeeD」、「FILDER CeeD 電気」、「FILDER Cube」及び「FILDER Cube 電気」が該当する。上記製品はいずれもCADソフトウェア(設計や製図を支援するソフトウェア)であるが、ここでは「FILDER Cube」について詳述する。
乙第7号証に記載のとおり、「FILDER Cube」とは空調設備、給排水衛生設備、電気設備及びプラント設備の設計を3次元上で行うことができるソフトウェアである。当該サイトの「ライセンスシェアリング」の項目には当該ソフトウェアがインストールして使用するものであり、かつ、オフラインで利用できる旨が明記されている。これらの記載から、当該ソフトウェアがインターネット回線を通じてプログラムを利用させるサービス(すなわち、第42類の「電子計算機用プログラムの提供」)ではなく、ダウンロードして使用される商品(すなわち、第9類「電子応用機械器具及びその部品」に属する「電子計算機用プログラム」に該当する商品。)であることは明らかである。
なお、これらのウェブサイトは要証期間においても現在と同一の内容で閲覧可能であった(乙8。Wayback Machineのプリントアウトで、令和4年5月19日にアーカイブされたもの。)。
イ ダイキン設備CAD製品(「FILDER Cube」)への商標の使用について
被請求人は、要証期間に「FILDER Cube」の広告又は取引書類を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供していたことを示す新たな証拠として、乙第9号証ないし乙第19号証を提出する。
(ア)YouTube動画の配信について
まず、被請求人は7年前(2016年)に「FILDER Cube」の使用方法を説明する動画を作成し、YouTubeを利用して当該動画を一般公開した。具体的には、2015年9月16日にYouTube内に「FILDER Cube」を紹介する専用チャンネルを開設し(乙9)、使用方法を説明する動画を7本掲載した。これら動画のうち同一画面構成を持つ5本(「建築設備CAD/FILDER Cube/ダクト図面の作図編集」など。)は、いずれも2016年頃(現在より7年前)にアップロードされたものであり、現在でもこれをそのまま視聴することができる。
さらに、被請求人は自社ホームページ内にも「FILDER Cube」の専用サイトを設置し、そこにYouTube専用チャンネルにアップロードした各動画のタイトル画面を表示し、リンクを張ることによっても各動画への誘導を図っている(乙7、乙10)。
乙第11号証は、YouTubeのウェブサイトにおいて「FILDER Cube」を検索した際の検索結果の画面をプリントアウトしたものである。
(イ)本件商標の使用について
乙第9号証ないし乙第11号証に見られるように、各動画のタイトル画面(サムネイル表示)において本件商標が表示されている。乙第12号証ないし乙第16号証はこれら各動画をクリックして視聴画面に遷移した際の画面をキャプチャーしたものであるが、画面の左上に商標が表示されている。
ここで、CAD製品は一般に操作に熟練を要するのであり、基本的操作方法を、動画を用いて解説することは一般的であるから、使用方法の説明動画は一種のマニュアルと同視できる。
(ウ)要証期間の商標使用について
これら動画は2016年頃にアップロードされ、現在でもこれをそのまま視聴することができるから、これら動画が要証期間においても閲覧可能であったことは明らかである。
乙第17号証は要証期間における各動画の視聴記録を示したものであり、各動画が要証期間において、最も少ないものでも1,202回、多いものであれば3,084回視聴されたことが確認できる。つまり、要証期間にこれらの動画を視聴した需要者が一定数以上存在したことは明らかである。
加えて、乙第8号証は被請求人が自社ホームページ内に設置した「FILDER Cube」の専用サイトをWayback Machineにおいて検索した結果のプリントアウトであり、この専用サイトは要証期間においても現在と全く同じコンテンツにて公開されていた。上記各YouTube動画のタイトル表示やリンクも、この専用サイト内下方の「ダイキン設備CADチャンネルYouTube」欄において、現在と同様に表示、リンク付けされていた。なお、当該専用サイトのインターネットアーカイブでは当該動画のサムネイル画像が確認できないが、これはWayback Machineの仕様の問題で表示されないにすぎない。
さらに、乙第18号証及び乙第19号証より、被請求人は要証期間に「FILDER Cube」を顧客に引き渡したことが分かる。乙第18号証は、株式会社エヌエス工業から被請求人宛てに発行された「FILDER Cube」製品の注文確認書であり、乙第19号証は、被請求人が発行した同取引に関する請求書である。乙第18号証では注文者が株式会社エヌエス工業であり、乙第19号証では請求先が三井住友ファイナンス&リース株式会社であり異なっているが、被請求人は注文者からの注文を受け、リース会社に「FILDER Cube」を引き渡し、リース会社が注文者に貸与するというリース契約に基づく取引だからである。なお、当該書類には「ネットワーク版」との記載はあるが、ID管理及び機能制限をクラウド化したものであって、取引された商品がダウンロードして使用するソフトウェアである点に変わりはない。
(2)まとめ
以上より、「FILDER Cube」(ダイキン設備CAD製品)がダウンロード可能なアプリケーションソフトウェアであり、本件商標の取消請求商品「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに含まれる商品であること、及び当該ソフトウェアの使用方法を説明するYouTube動画において本件商標が付されて公開されており、実際にこれら動画の視聴も相当数あったことが明らかになった。
2 被請求人回答に対する請求人意見
請求人は、令和5年12月28日に意見書を提出し、被請求人回答に対して、要旨以下のように主張するとともに、証拠方法として、甲第3号証ないし甲第5号証を提出した。
(1)ダイキン設備CAD製品について
ダイキン設備CAD製品は、第9類「電子計算機用プログラム」には当たるものではない。
「ライセンスシェアリング」について、被請求人ホームページ(甲3)に明記されているとおり、購入対象は「ソフトウェア」ではなく、(契約に基づいて定められた一定期間、ソフトウェアを利用することのできる)「ライセンス」である。
このことは、「購入ライセンス数を超えた利用分に、レンタル料金を課金する」との記載や、図中にて、「時間レンタル」と説明していることからも容易に理解できる(甲3)。
このような、いわゆるサブスクリプション契約(ソフトウェアを買い取り無期限に使用するのではなく、譲渡を伴うことなく一定の利用期間に対して使用料を支払ってソフトウェアを利用するという契約形態)に相応するのは「(指定)商品」ではなく、「(指定)役務」であり、特許庁において採用された過去の指定役務として摘示するのであれば、例えば、第42類「CAD等の電子計算機用プログラムの貸与」に当たる。
そのため、仮に、要証期間においても現在と同一内容で閲覧可能であったとしても、被請求人の主張は、取消請求商品についての主張及び立証ではないことから、失当である。
(2)商標の使用について
ア 乙第7号証、乙第9号証ないし乙第11号証
いずれも要証期間における事実を示すものではない。
ここで、乙第7号証及び乙第10号証に関し、仮に要証期間においても現在と同一内容で閲覧可能であったとしても、本件商標の一部のみが垣間見え得る態様でしか表示されていないのであるから、商標としての同一性を欠くものである(甲4)。
一方、乙第9号証及び乙第11号証に関し、仮に要証期間においても現在と同一内容で閲覧可能であったとしても、その動画を再生後は、一度も本件商標は画面に表示されることはないため、商標として認識し得る態様ではない(甲5)。
イ 乙第8号証
本件商標は記載されていない。
ウ 乙第12号証ないし乙第16号証
いずれも要証期間における事実を示すものではない。
視聴画面においては、一度も本件商標は画面に表示されることはなく、仮に要証期間においても現在と同一内容で閲覧可能であったとしても、商標として認識し得ない(甲5)。
エ 乙第17号証
いずれの動画も要証期間における事実を示すものではない。
仮に要証期間においても現在と同一内容で閲覧可能であったとしても、視聴画面においては、一度も本件商標は画面に表示されることはないことから、商標として認識し得ない。
オ 乙第18号証及び乙第19号証
いずれにも本件商標は記載されていない。
また、譲渡を伴うことなく一定の利用期間に対して使用料を支払って、ソフトウェアを利用するという実態であるところ、「商品」についての使用事実を立証するものではない。
カ 乙第20号証ないし乙第22号証
いずれにも本件商標は記載されていない。
3 上申書の提出
なお、被請求人は、令和6年4月5日付けで上申書を提出した。
第5 当審の判断
1 被請求人提出の乙各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(1)建設設備CAD「FILDER Cube」について
ア 建設設備CAD「FILDER Cube」のWebサイト(乙7、乙8)
乙第7号証は、建設設備CAD「FILDER Cube」のWebサイトの出力物であり、「建設設備CAD/FILDER Cube」のタイトル下に、その2葉目の「ライセンスシェアリング」の項には、「1ライセンスで複数人利用可能/ライセンスシェアリングは、CADソフトを支店や現場など複数台のパソコンにインストールしておくことで複数人で使えます。購入ライセンス数を超える同時使用が発生した場合は、自動で安価なレンタル料金を課金するシステムに切り替わり、同時使用が終わると自動で課金システムが解除されます。・・・オフラインでもご利用いただけます。(インターネットでのライセンス管理)」の記載がある。さらに、その4葉目には、「ダイキン設備CADチャンネルYouTube」との記載の下に、「FILDER Cube」の記載のある3つのサムネイル画像が表示されている。また、その6葉目には、「Copyright(C)2023 DAIKIN INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.」の記載がある。
また、乙第8号証は、建設設備CAD「FILDER Cube」のWebサイトの2022年5月19日時点のアーカイブの出力物であり、その1葉目には「ライセンスシェアリング」について乙第7号証と同様の記載があり、その3葉目には、乙第7号証と同様に「FILDER Cube」の記載のある3つのサムネイル画像が表示されている。
イ YouTubeのWebサイト(乙12~乙17)
乙第12号証は、YouTubeのWebサイトにおける、建設設備CAD「FILDER Cube」のサムネイル画像の出力物であり、このサムネイル画像には、左上に、別掲2のとおり、「COMTEC」の文字を中央に配し、その下に「communication technology」の文字を配置するとともに、その左上に、「DAIKIN」の文字及び2つの直角二等辺三角形からなる図形を配置してなる商標(以下「使用商標」という。)が表示され、その下に、「建設設備CAD/FILDER Cube」、「まずはこれ! 特徴をご紹介」、「PDF・紙図面 活用」、「ダイキン工業株式会社」などの記載がある。また、さらにその下には、「FILDER Cube daikin/チャンネル登録者数 99人」の記載がある。
また、乙第13号証ないし乙第16号証も、乙第12号証と同様に、YouTubeのWebサイトにおける、建設設備CAD「FILDER Cube」のサムネイル画像の出力物であるところ、それぞれのサムネイル画像の左上には、使用商標が表示されている。
さらに、乙第17号証は、チャンネルアナリティクスの出力物であり、2019年12月26日ないし2022年12月25日の期間において、FILDER Cube daikinのチャンネルの視聴回数が16,958回であることや、乙第12号証のサムネイル画像をクリックして視聴できる動画が、3,084回視聴されたことなどが看取できる。
ウ 「ユーザー登録のお願い」用紙(乙3)
乙第3号証は、「ダイキン設備CAD製品 ユーザー登録のお願い」と題するWebサイトの2022年8月10日時点のアーカイブの出力物であり、その1葉目には、「対象 ダイキン設備CAD ユーザー様」、「対象製品 FILDER CeeD、FILDER CeeD 電気、FILDER Cube、FILDER Cube 電気、」の記載がある。また、その2葉目には、「2011年6月以降に製品をご購入のお客様」の項の下に、「製品キット内に「ユーザー登録のお願い」用紙が入っています。」の記載とともに、その左上に使用商標が付された「ユーザー登録のお願い」用紙の画像が掲載されている。
エ 注文確認書(乙18)及び請求書(乙19)
乙第18号証は、2022年9月29日付けで、株式会社エヌエス工業が被請求人に宛てた「注文確認書」であり、「型式」「品名・仕様」「数量」などを項目とする一覧表に、「ダイキン建設設備CAD FILDERシリーズ」「型式 FILCUB-BEST-SYS」「品名・仕様 FILDER CUBE 総合 ネットワーク版」「数量 1」などの記載が確認でき、当該表の下部には「1.納入期日 2022年10月6日 (予定)」の記載がある。
また、乙第19号証は、2022年10月6日付けで、被請求人が三井住友ファイナンス&リース株式会社に宛てた「請求書(控)」であり、「品名」「数量」「備考」などを項目とする一覧表に、「ダイキン建設設備CAD FILDERシリーズ/FILDER Cube 総合 ネットワーク版」「数量 一式」「備考 株式会社エヌエス工業 様向け」などの記載が確認できる。
(2)上記(1)から以下の事実が認められる。
ア 被請求人は、要証期間である2022年5月頃、自社の建設設備CAD「FILDER Cube」(以下「使用商品」という。)のWebサイト(乙7、乙8)に、使用商標が付された使用商品(建設設備CAD「FILDER Cube」)の活用方法を紹介するYouTube動画のサムネイル画像を掲載していた。
イ 被請求人は、YouTubeのWebサイト(乙12~乙16)において、使用商標が付された使用商品の活用方法を紹介するYouTube動画のサムネイル画像を掲載し、これらのYouTube動画は、要証期間である2019年12月26日ないし2022年12月25日の期間において、複数回、視聴されていた。
ウ 株式会社エヌエス工業は、要証期間である、2022年9月頃、被請求人に、使用商品を注文し(乙18)、同年10月頃、被請求人は三井住友ファイナンス&リース株式会社を介して株式会社エヌエス工業に使用商品を納入した(乙19)。
そして、その納入の際には、製品キット内に、使用商標が付された「ユーザー登録のお願い」用紙(乙3)が入っていたことが推認できる。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標について
本件商標(別掲1)と、使用商標(別掲2)とは、いずれも、「COMTEC」の文字を中央に配し、その下に「communication technology」の文字を配置するとともに、その左上に、「DAIKIN」の文字及び2つの直角二等辺三角形からなる図形を配置してなるものであるから、使用商標は本件商標と同一又は社会通念上同一の商標である。
(2)使用商品について
使用商品(建設設備CAD「FILDER Cube」)は、ライセンスを購入した顧客のパソコンにインストールされて、オフラインでも利用できるダウンロード可能なソフトウェアであるから、取消請求商品(第9類「電子応用機械器具及びその部品」)の範ちゅうに属する商品である。
なお、請求人は、使用商品の「ライセンスシェアリング」について、購入対象は「ソフトウェア」ではなく、契約に基づいて定められた一定期間ソフトウェアを利用することのできる「ライセンス」であり、このような、いわゆるサブスクリプション契約(ソフトウェアを買い取り無期限に使用するのではなく、譲渡を伴うことなく一定の利用期間に対して使用料を支払ってソフトウェアを利用するという契約形態)に相応するのは第42類「CAD等の電子計算機用プログラムの貸与」である旨を主張するが、建設設備CAD「FILDER Cube」のWebサイト(乙7、乙8)の「ライセンスシェアリング」の項には、「1ライセンスで複数人利用可能/ライセンスシェアリングは、CADソフトを支店や現場など複数台のパソコンにインストールしておくことで複数人で使えます。購入ライセンス数を超える同時使用が発生した場合は、自動で安価なレンタル料金を課金するシステムに切り替わり、同時使用が終わると自動で課金システムが解除されます。・・・オフラインでもご利用いただけます。(インターネットでのライセンス管理)」の記載があるから、使用商品が、ライセンスを購入した顧客のパソコンにインストールされて、オフラインでも利用できるソフトウェアであることは明らかである。さらに、使用商品のライセンスシェアリングとは、購入ライセンス数を超える同時使用が発生した場合には、レンタル料金を課金するシステムであるとしても、少なくとも購入ライセンス数のソフトウェアについては、ダウンロード可能なソフトウェアとして取引されたといえるから、請求人の主張は採用できない。
(3)使用行為、使用時期、使用者について
被請求人である商標権者は、要証期間において、自社のWebサイト(乙7、乙8)及びYouTubeのWebサイト(乙12~乙16)に、使用商標が付された使用商品の活用方法を紹介するYouTube動画のサムネイル画像を掲載し、自社の使用商品を広告していたことから、商標法第2条第3項第8号にいう使用行為(商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為)を行ったと認められる。
さらに、要証期間である2022年9月ないし10月頃、被請求人である商標権者は、株式会社エヌエス工業からの注文を受けて(乙18)、使用商品を納品し(乙19)、その納品の際に、製品キット内に、取引書類として、使用商標が付された「ユーザー登録のお願い」用紙(乙3)を同封したことからも、商標法第2条第3項第8号にいう使用行為(商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為)を行ったと認めることができる。
なお、請求人は、使用商品のYouTube動画について、視聴画面においては、一度も本件商標は画面に表示されることはない旨を主張するが、上述のとおり、商標権者のWebサイト(乙7、乙8)及びYouTubeのWebサイト(乙12~乙16)に、使用商標が付された使用商品のYouTube動画のサムネイル画像は掲載されていたことは認められるから、上記請求人の主張は採用できない。
(4)小括
上記(1)ないし(3)からすれば、本件商標の商標権者は、要証期間に、日本国内において取消請求商品(「電子応用機械器具及びその部品」)の範ちゅうに属する商品に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して広告したこと及び本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付した取引書類を用いて取引したこと(商標法第2条第3項第8号に該当。)は認めることができる。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の商標権者が、その審判の請求に係る指定商品について本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていたことを証明したといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-301072