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商標取消審判

2022-300207

ハイモル、ヒモル、モル

審判番号
2022-300207
法域
商標
審判種別
取消審判(商標取消の審決)
出願番号
商願1972-158585
登録番号
1165555
請求日
2022年03月07日
審決日
2024年06月21日
公報発行日
2024年11月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】カルデリス・フランス
  • 【請求人代理人】弁理士法人川口國際特許事務所
  • 【被請求人】株式会社レゾナック建材
  • 【被請求人代理人】村田 幸雄
  • 【被請求人代理人】鈴木 喜三郎
  • 【被請求人代理人】落志 雅美
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 雅也
  • 審判官 馬場 秀敏
  • 審判官 富澤 哲生
分類
T132 .1 -Y (Y19)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法50条
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第1項、商標法第50条、商標法第2条第3項、商標法第2条第3項第1号、商標法第2条第3項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第1165555号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第1165555号商標(以下「本件商標」という。)は、「ハイモル」の片仮名と「HIMOL」の欧文字を2段に表してなり、昭和47年11月15日に登録出願、同50年10月20日に第7類「建築又は構築専用材料、セメント、木材、石材、ガラス」を指定商品として設定登録され、平成17年9月7日に、指定商品を、第6類、第9類、第11類、第19類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする書換登録がなされ、その後、平成27年8月10日に存続期間の更新申請がされ、その指定商品を第19類「陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,建造物組立てセット(金属製のものを除く。),土砂崩壊防止用植生板,窓口風防通話板,区画表示帯,セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス」とする更新登録が、同月25日になされたものである。 そして、本件審判の請求の登録は、令和4年3月23日になされたものであり、この登録前3年以内の期間(平成31年(2019年)3月23日~令和4年(2022年)3月22日)を以下「要証期間」という。 なお、要証期間を含む令和5年1月30日前における本件商標の権利者(以下「商標権者」という。)の名称は、昭和電工建材株式会社(以下「昭和電工建材社」という。)である。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の指定商品中、第19類「陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,建造物組立てセット(金属製のものを除く。),セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス」(以下「本件審判請求に係る指定商品」という。)についての商標登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書にて、本件商標は、本件審判請求に係る指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである旨主張した。 なお、請求人は、被請求人が提出した、令和4年6月17日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)、及び令和5年4月10日付け審尋に対する同年6月3日付け回答書(以下「回答書」という。)に対して、何ら弁駁していない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁書及び回答書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第39号証を提出した。 なお、以下、乙各号証の表記に当たっては、乙第1号証を「乙1」のように省略して表示する場合がある。 1 答弁の理由 (1)昭和電工建材社について 昭和電工建材社は、同者のホームページの会社概要記事(乙1)に記載のとおり、1977年12月1日に設立以来、左官材・防水材・防食材事業(建設資材)、管工機材事業(管材設備)を主な事業とし、神奈川県横浜市を本社所在地とし、建設資材・管材設備の開発・製造及び販売をしているものである。 (2)昭和電工建材社による本件商標の使用について ア 1973年に昭和電工建材社の前身である昭和電工株式会社建材事業部がプレミックスモルタルを世界で初めて開発、製造し、本件商標「ハイモル」を使用して販売開始し、同時期に本件商標「ハイモル」を使用して「ハイモル エマルジョン」の製造、販売を開始した(乙1)。 イ 本件商標を使用した製品は、1973年に販売開始して以来、日本全国で広く建築現場において使用されており、海外での使用実績もあり、昭和電工建材社は発売当初から変わらず継続して本件商標を付して製造販売をしている。 現在、本件商標は、「ハイモル」シリーズとして多数の製品に使用されている。「ハイモル」シリーズの主要な製品である建築用下地調整塗材は、建築用仕上塗材、塗料、セラミックタイルなどによる内外装仕上げ工事の下地調整のために使用されるものであり、セメント及びその製品に含まれる。 下地調整塗材は、主材と混和液で構成され、主材は、セメント、骨材、無機質粉体、混和材などを原料として調整・調合した粉状のものであり、混和剤は、セメント混和用ポリマーディスパージョンを主成分とし、これに少量の増粘剤、消泡剤などの添加剤を混合したものが用いられる。 セメント系の下地調整塗材は、結合材としてセメント及びこれにセメント混和用ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂を混合したものを使用したものである。合成樹脂エマルジョン系下地調整塗材は、結合材として合成樹脂エマルジョンを使用したものである。 「ハイモル」シリーズは、建築用下地調整塗材、コンクリートモルタル下地ヘ塗布して用いられるエチレン酢酸ビニル系エマルジョン、コンクリート内外部の補修材、床面の補修材について展開しており、いずれの製品についても本件商標を外袋に大きく明確に表記して販売されている。 ウ 本件商標を使用している事実及び取引事実について、乙第2号証ないし乙第28号証により立証する。 (ア)昭和電工建材社のホームページによる左官工事材ラインナップは、エチレン酢酸ビニル系モルタル接着増強剤・吸水調整材として、「ハイモル エマルジョン EV-300」(乙3:2020年7月発行)及び「ハイモル エマルジョン M(地区限定)(乙4:2020年2月発行)が、下地調整塗材ハイモルスーパーシリーズとして、「ハイモル スーパー#10-I」(乙5:2021年6月発行)、「ハイモル スーパー#10-K」(乙6:2021年6月発行)、「ハイモル スーパー#20-I」(乙7:2022年1月発行)、「ハイモル スーパー20-K」(乙8:2022年1月発行)、「ハイモル スーパー#30-I」(乙9:2021年11月発行)、「ハイモル スーパー#30-K」(乙10:2021年11月発行)、「ハイモル スーパー#40」(乙11:2019年12月発行)、「ハイモル スーパー#150-I」(乙12:2021年11月発行)、「ハイモル スーパー#150-K」(乙13:2021年11月発行)、「ハイモル スーパー#300」(乙14:2019年12月発行)及び「ハイモル ネオ」(乙15:2021年11月発行)が、ダウンロード可能なカタログとともに開示されている(乙2)。 また、下地調整塗材として「ハイモル 補修用」(乙16:2020年4月発行)、下地調整塗材JIS認証製品ハイモルマックスシリーズとして、「ハイモル マックス#5」(乙17:2019年9月発行)、「ハイモル マックス#10」(乙18:2019年9月発行)、「ハイモル マックス#20」(乙19:2021年11月発行)、「ハイモル マックス#30」(乙20:2021年11月発行)、「ハイモル マックス#40」(乙21:2020年4月発行)、「ハイモル マックス#300」(乙22:2019年12月発行)及び「ハイモル マックスネオ」(乙23:2021年11月発行)が、軽量モルタルとして、「ハイモル 汎用」(乙24:2018年3月発行)がダウンロード可能なカタログとともに開示されている(乙2)。 その他、輸出用のカタログ「HIMOL Emulsion」(乙25:2020年3月)も配布されている。 (イ)上記(ア)のカタログは、それぞれ、製品の説明とともに本件商標が使用されており、裏面に印刷されているとおり、2019年9月ないし2022年1月に発行されたものであり、要証期間に、本件商標を付した製品のカタログが発行され、それぞれ製造・販売されていたことが立証される。 エ 乙第26号証は、本件商標を使用した製品の写真であり、下地調整塗材「ハイモル スーパー#10-1」、セメント系下地調整塗材「ハイモル スーパー#20-1」及びセメント系下地調整塗材「ハイモル スーパー#30-1」の袋に本件商標が印字されている。 オ 乙第27号証及び乙第28号証は、乙第26号証の各製品の外袋の製作を製袋会社に依頼し、出荷(納品)された際に、商標権者が受領したことを証明する出荷案内書である。 乙第27号証は、2020年10月1日に「ハイモル補修用」の袋5,000袋、「ハイモル スーパー#10」の袋3,046袋、「ハイモル スーパー#20」の袋5,000袋、「ハイモル スーパー#30」の袋2,265袋が、山陰製袋工業株式会社(以下「山陰製袋工業社」という。)から出荷され、昭和電工建材社の石岡製造所で受領した際の出荷案内書であり、要証期間に、本件商標を付した外袋が製作された事実が立証される。 乙第28号証は、2021年10月15日に「ハイモル補修用」の袋5,000袋、「ハイモル スーパー#10」の袋3,000袋、「ハイモル スーパー#20」の袋5,000袋、「ハイモル スーパー#30」の袋2,000袋が、山陰製袋工業社から出荷され、昭和電工建材社の石岡製造所で受領した際の出荷案内書であり、要証期間に、本件商標を付した外袋が製作された事実が立証される。 これにより、商標権者である昭和電工建材社が、本件商標を表示した袋に「セメント及びその製品」を詰め、製造・販売した事実及び取引事実が立証される。 以上のように、本件商標は、商標権者により、本件審判請求に係る指定商品中の「セメント及びその製品」について、本件審判の予告登録日前3年以内に使用されているから、商標法第50条第1項の規定に該当しないものである。 2 回答書による主張 (1)「「ハイモル」シリーズ」の「下地調整塗材」が、本件審判請求に係る指定商品中の「セメント及びその製品」の範ちゅうに属することについて ア JIS A6916 「建築用下地調整塗材」について 「「ハイモル」シリーズ」の「下地調整塗材」は、建築用仕上塗材、塗料、セラミックタイルなどによる内外装仕上げ工事の下地調整のために使用されるものであり、「日本産業規格JIS A6916 建築用下地調整塗材」の規格に適合していることが認証されているものである(乙29)。 日本産業規格「JIS A6916 建築用下地調整塗材」(乙30、一般財団法人日本規格協会 令和3年2月22日発行)は、適用範囲を、「建築用仕上塗材、塗料、セラミックタイルなどによる内外装仕上げ工事の下地調整のために使用する下地調整塗材」として規定されているもので、その主材は、「セメント、骨材、無機質粉体、混和剤などを原料として調整・調合した粉状のもの。」である。 また、「下地調整塗材の種類及び呼び名」は、種類として「セメント系下地調整塗材」、「合成樹脂エマルション系下地調整塗材」及び「セメント系下地調整厚塗材」が規定され、「セメント系下地調整塗材」の1種と2種が、それぞれ「下地調整塗材C-1」と「下地調整素材C-2」、「セメント系下地調整厚塗材」の1種と2種が、それぞれ「下地調整塗材CM-1」「下地調整塗材CM-2」の呼び名に規定されている。 そして、「セメント系下地調整塗材」と「セメント系下地調整厚塗材」は、結合材としてセメント及びこれにセメント混和用ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂を混合したものを使用したもの」との注釈が記載されている。 原料は、結合材として、「セメントは、ポルトランドセメント、白色セメント(ホワイトセメント)、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント、及び超速硬セメントとする。」と規定されている。 このことから、JIS規格において、「建築用下地調整塗材」は、セメントを必須成分とするものであることが明確に示されており、「建築用下地調整塗材」が「セメント及びその製品」に含まれるものであることの客観的な証拠になる。 イ 「セメント及びその製品」について 特許庁商標課編の「商品及び役務の区分解説」によれば、第19類「セメント及びその製品」については、「この概念には、1(審決注:本段落において「数字」は丸囲みの数字。以下同じ。)狭義の”セメント”(粉末状)、2セメントの基礎製品(管、柱等)、3セメント製の建築用又は構築用の専用材料が含まれる。」、「また、単なる”セメント”のみではなく、”セメントモルタル製”等、それがセメントを主体としたものであればこの概念に含まれる。」とある。 これに照らしてみると、JISで規格される「建築用下地調整塗材」は、セメントを主体(主材)とする製品であり、かつ建築用として用いられる専用材料であることから、「セメント及びその製品」の概念に含まれるものである。 ウ JIS適合製品である「ハイモル」シリーズについて 上記のとおり、昭和電工建材社が製造、販売している「セメント系下地調整塗材」及び「セメント系下地調整厚塗材」は、「JIS A6916 建築用下地調整塗材」の認証(乙29)を受けている。 認証を受けた製品の種類は、乙第29号証の2葉目の「表-建築用仕上げ塗材の種類」に記載されている「セメント系下地調整塗材1種」及び「セメント系下地調整厚塗材2種」で確認することができる。 このことから、昭和電工建材社が製造販売している製品が、「セメント系下地調整塗材」及び「セメント系下地調整厚塗材」であることが客観的に証明される。 そして、昭和電工建材社は、そのJISの認証を受けた適合製品である「セメント系下地調整塗材」の包装に、「ハイモル」を付して販売をしている。 例えば、商標「ハイモル」を付して販売している「セメント系下地調整塗材」の包装用袋(乙31)の外装には、「JIS認証番号GB0310015(認証書(乙29)参照)」と「JISマーク」、商品の種類を示す「セメント系下地調整塗材」、JIS規格上の呼び名である「C-1」が明記されている。 そして、その成分は、主材としてポルトランドセメントが50ないし60%含有されて構成されていることが、安全データシート(SDS)の「3.組成及び成分情報」に示されている(乙32)。 同様に、商標「ハイモル」を付して販売している「セメント系下地調整塗材」の包装用袋(乙33)の外装には、「JIS認証番号GB0310015(認証書(乙29)参照)」と「JISマーク」、商品の種類を示す「セメント系下地調整塗材」及びJIS規格上の呼び名である「CM-2」が明記されている。 そして、その成分は、主材としてポルトランドセメントが45ないし55%含有されて構成されていることが、安全データシート(SDS)の「3.組成及び成分「青報」に示されている(乙34)。 なお、「安全データシート(SDS)」は、「化学物質および化学物質を含む混合物を譲渡または提供する際に、その化学物質の物理化学的性質や危険性・有害性及び取扱いに関する情報を化学物質等を譲渡または提供する相手方に提供するための文書」であり、「労働現場における化学物質の有害性等の情報を確実に伝達し、この情報を基に労働現場において化学物質を適切に管理することが必要であるとの認識から、平成12年4月から労働安全衛生法において、SDSの提供が義務化」(厚生労働省HPより抜粋)されているもので、乙第32号証及び乙第34号証は、法規制に基づいて作成・配布しているものである。 このように、昭和電工建材社が製造販売している「ハイモル」シリーズの「下地調整塗材」の構成材料の主成分がセメントであることは客観的に示されており、同社が製造販売している「下地調整塗材」が、本件審判請求に係る指定商品中の「セメント及びセメント製品」の範ちゅうに属することの客観的な根拠になり得ることは明らかである。 エ 審査基準による「建築用下地調整塗材」の類似群コードについて 「建築用下地調整塗材」を指定商品に含む登録商標として、以下のような商標登録がある。 (ア)商標登録第5699448号「ミラクカチオンフィラー」、第19類「建築用下地調整塗材」(乙35) この商標登録の公報によれば、参考情報として付与された類似群コードは、「07A02、07A03、07B01」である。「07B01」は「セメント及びその製品」であり、「建築用下地調整塗材」が「セメント及びその製品」の範ちゅうであるということが示されており、当該審査基準は客観的な根拠になり得る。 (イ)商標登録第6122967号「SILICONE COVER\シリコンカバー」、第19類「建築用又は構築用パテ,建築用シーリング材,建築用下地調整塗材」(乙36) この商標登録の公報によれば、第19類に参考情報として付与された類似群コードは、「07A02、07A03、07B01」である。「建築用又は構築用パテ,建築用シーリング材」の類似群コードは「07A03」であるので、「建築用下地調整塗材」には、少なくとも「07A02」と「07B01」が付与されているものと考えられる。 これらの例からも、「建築用下地調整塗材」は「セメント及びその製品」(類似群コード07B01)の範ちゅうであるということが示されており、当該審査基準は客観的な根拠になる。 オ 以上のことから、商標権者である昭和電工建材社が製造販売している「ハイモル」シリーズの「下地調整塗材」が、本件審判請求に係る指定商品中の「セメント及びその製品」の範ちゅうに属することの客観的な根拠が明確になった。 (2)商標権者である昭和電工建材社の使用商標が、本件商標と社会通念上同一であることについて 商標法50条1項においては、使用の対象となる商標について、「登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。以下この条において同じ。)」と規定されており、「登録商標と社会通念上同一と認められる商標」も含むものとされている。 ア 称呼について 本件商標は、片仮名の「ハイモル」を上段に、欧文字の「HIMOL」を下段に配してなる商標である。 本件商標の上段の「ハイモル」の4文字の片仮名と下段の「HIMOL」の5文字の欧文字は、欧文字1文字の大きさが片仮名1文字の約9割程度のほぼ同程の大きさであり、上段と下段との間隔は近接し、それぞれの文字部分の左右の幅は同一であり、その両端の位置がそろっており、全体として上段及び下段の文字がまとまりよく配置されている。 また、「HIMOL」の欧文字から「ハイモル」の称呼が自然に生じることからすると、「ハイモル」の片仮名は「HIMOL」の欧文字の表音を示したものとして、両者は一体的に把握され、本件商標全体から「ハイモル」の称呼が生じるものであり、被請求人が先に提出した各証拠には、「ハイモル」の文字を含む使用商標が多数存在し、そこから「ハイモル」の称呼が生じることは明らかである。 そうすると、本件商標と被請求人が提出した各証拠に示す使用商標の称呼は同一であるといえる。 イ 観念について 本件商標の上段の「ハイモル」の片仮名は下段の「HIMOL」の欧文字の表音を示したものとして両者は一体的に把握されるものであり、本件商標に接した取引者、需要者においては、欧文字の「HIMOL」について、片仮名の「ハイモル」の「ハイ」の語に相応する「HI」の語と、片仮名文字の「ハイモル」の「モル」の語に相応する「MOL」の語とが結合したものであることを自然に認識できるものである。 そして、本件商標の片仮名「ハイモル」は、それ自体が辞書等に登載された既成の用語として特定の観念を有するものではなく、欧文字「HIMOL」も同様に我が国において特定の意味合いを持って知られた語ではなく特定の観念を有さず、片仮名と欧文字の観念は異なるものではない。 このように、本件商標は、2段併記の構成で上段と下段の観念が相違するものではない。 そして、被請求人が提出した各証拠に示す使用商標は、本件商標の上段と同じ「ハイモル」の片仮名であることは明らかである。 したがって、使用商標は本件商標における観念が相違しない上段と下段のうち、上段の使用に該当するといえるものであり、本件商標と社会通念上同一の商標の使用であるといえる。 ウ また、乙第37号証の事例一覧に示すように、片仮名と欧文字の2段併記の登録商標について、片仮名又は欧文字のいずれかの使用は、社会通念上同一と認められる商標の使用に該当すると多数判断されている。 これらの判断理由を検討しても、本件商標と昭和電工建材社の使用商標とが社会通念上同一であると結論づけることに疑義を生じるほどに、これら事例と大きく相違する特別な事情はない。 エ 以上のことから、本件商標は、欧文字「HIMOL」の語が「ハイモル」と称呼されるものであり全体として「ハイモル」の称呼のみ生じ、片仮名「ハイモル」及び欧文字「HIMOL」の各語は特定の意味合いを持って知られた語ではなく特定の観念を有さず、欧文字と片仮名の文字の表示を相互に変更するものであるところ、被請求人が提出した各証拠に示す使用商標は、本件商標の上段の片仮名と同一文字からなるものであり、使用商標と本件商標は、同一の称呼を生じ、いずれも特定の観念を有しないものであるから、社会通念上同一と認められる商標である。 (3)商標権者である昭和電工建材社の使用商標を使用する行為が商標法第2条第3項各号のうちのいずれに該当するかについて ア カタログについて 被請求人が答弁書において、本件商標を使用している事実及び取引事実について立証するために提示した乙第2号証ないし乙第25号証は、昭和電工建材社のホームページに左官工事材ラインナップとしての製品をダウンロード可能としたカタログであり、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「ハイモル」又は「HIMOL」を表示して、これを頒布及び電磁的方法により提供したものである。 したがって、商標法第2条第3項第8号所定の「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当するものである。 イ 各製品の外袋について 乙第26号証は、本件商標を使用した各製品の写真であり、乙第27号証及び乙第28号証には、乙第26号証の各製品の外袋の製作を製袋会社に依頼し、出荷(納品)された際に商標権者が受領したことを証明する出荷案内書である。 すなわち、乙第26号証は、商標権者である昭和電工建材社が、本件商標の指定商品である「セメント及びその製品」の範ちゅうに属する「(セメント系)下地調整塗材」を現実に包装(袋詰め)し、その包装したものに本件商標を付していることを証明するものであり、乙第27号証及び乙第28号証は、昭和電工建材社が「下地調整塗材」を包装するための外袋を、本件審判請求の登録前3年以内に製袋会社に依頼し製作しているものであることを証明するものである。 よって、商標権者である昭和電工建材社が、乙26号証ないし乙28号証に立証される本件商標の指定商品である「セメント及びその製品」の範ちゅうに属する「(セメント系)下地調整塗材」を包装(袋詰め)し、当該包装に本件商標を付する行為は、商標法第2条第3項第1号所定の「商品又は商品の包装に標章を付する行為」に該当するものである。 なお、追加証拠として、昭和電工建材社が製造販売している各製品の取引書類である請求明細書の写し(乙38、乙39)を提出する。 乙第38号証は、2020年1月20日に発行された請求明細書であり、品目の欄に示すように「ハイモルマックス・ネオ」、「ハイモルマックス#10」等が出荷されたことが記されている。 また、乙第39号証は、2021年12月20日に発行された請求明細書であり、品目の欄に示すように「ハイモルマックス#10」、「ハイモルマックス#20」等が出荷されたことが記されている。 これにより、商標権者である昭和電工建材社が、商標「ハイモル」を付した商品を出荷し販売(譲渡)したことは明白であり、このことは、商標権者の本件商標を使用する行為が、商標法第2条第3項第2号所定の「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為」に該当するということを立証するものである。 第4 当審の判断 1 事実認定 (1)被請求人の提出した乙各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 ア 乙第1号証について 乙第1号証は、昭和電工建材社のウェブサイトの会社概要であり、その1葉目の「会社概要」の項には、「会社設立 1977年12月1日」、「事業内容」として「左官材・防水材・防食材事業(建設資材)/●プレミックスモルタル(ハイモル)、エマルジョン」等の記載があり、「沿革」の項には「1973/昭和電工(株)建材事業/「ハイモル」(プレミックスモルタル)を世界で初めて開発し、製造、販売開始「ハイモルエマルジョン」を製造、販売開始」「1977/昭和電工建材(株)/昭和電工(株)の出資により会社設立」「1994/昭和電工の建材事業と・・・昭和電工建材が統合」等の記載がある。 また、乙第1号証の2葉目には「会社案内/昭和電工建材の4つの事業」として「左官材/コンクリート面の下地調整塗材「ハイモルマックス」「ハイモルスーパー・・・などの湿式建材事業を展開しています。」の記載がある。 イ 乙第2号証について 乙第2号証は、昭和電工建材社のウェブサイトにおける「左官工事材ラインナップ」であり、同ラインナップの「商品名」の欄には、「ハイモル○Rスーパー#10-I」(審決注:「○R」は「○」の中に「R」を表示した記号を表す。以下同じ。)「ハイモル○Rスーパー#10-K」「ハイモル○Rスーパー#20-I」「ハイモル○Rスーパー#20-K」「ハイモル○Rスーパー#30-I」「ハイモル○Rスーパー#30-K」「ハイモル○Rスーパー#40」「ハイモル○Rスーパー#150-I」「ハイモル○Rスーパー#150-K」「ハイモル○Rスーパー#300」「ハイモル○Rネオ」の各商品の記載があり、いずれの商品の「備考」の欄にも「セメント系下地調整塗材」の記載がある。 また、上記各商品名の記載の後には、PDFファイルを表す表示が付されている。 ウ 乙第5号証ないし乙第15号証について 乙第5号証ないし乙第15号証は、上記イの各商品名のPDFファイルをダウンロードした商品カタログであり、いずれも、1葉目の上部に「セメント系下地調整塗材」の記載とともに「ハイモル○R」及び「スーパー#10-I」等の文字が2段に表示(乙5~乙14)、又は「ハイモル○Rネオ」の文字が表示(乙15)され、中程上部に「ハイモルエマルジョンを規定量混入することにより、ポリマーセメントモルタルとしてご使用いただけます。」の記載が、また、中程の表に「適用部位 内・外壁、内・外床、天端、天井」「適用下地 コンクリート、モルタル、PC版、ALCパネル」等の記載がある。 さらに、各商品カタログの2葉目の中程に、いずれも「性能」についての表があり、各商品の「試験項目」及び「試験結果」が「品質基準(JIS A 6916:2014)[セメント系下地調整厚塗材1種] C-1」又は「品質基準(JIS A 6916:2021)[セメント系下地調整厚塗材2種] CM-2」との比較において、当該各基準を満たしていることを示す数値等の記載がある。そして、各2葉目の下部に、各商品カタログの記載内容が2019年12月ないし2022年1月現在のものである旨の記載がある。 エ 乙第39号証について 乙第39号証は、被請求人が製造販売している製品の取引書類とされるものであり、「請求明細書」「2021年12月20日〆切」「販売部門/事務取扱部門 建設資材営業部」等の各記載の下、顧客に宛てて(審決注:顧客名はマスキングされている。)、「ご請求は、以下の通りです。」の記載があり、その下部には「出荷日又は納期 需要家/出荷先/2次店 受注NO/出荷NO/貴注文NO 品目 個数/販売数量 単価 消費税 ご請求額」等の欄を有する表があり、同表中に「出荷日又は納期 1129 品目 ハイモル ネオ 個数/販売数量 40」「出荷日又は納期 1129 品目 ハイモルスーパー20-I 個数/販売数量 10」の各記載がある(審決注:「単価」「消費税」「ご請求額」はマスキングされている。)。 オ 乙第29号証について 乙第29号証は、認証日が平成28年2月10日、再発行日が平成29年9月20日のJISマーク認証証であり、その1葉目には「認証書」の記載の下、認証番号とともに、昭和電工建材社の名称、代表取締役及び住所の記載があり、「工業標準化法第19条第1項の規定により日本工業規格の表示について下記のとおり認証します。」「1.鉱工業品の名称 建築用仕上塗材」「2.JIS規格番号、名称及びJISの種類又は等級 JIS A 6916 建築用下地調整塗材」等の記載があり、下部には「一般財団法人 日本建築総合試験所」の名称、住所及び理事長名の記載並びに各押印がある。 また、同号証の2葉目には、「認証鉱工業品の種類:下表のとおり」の記載の下、当該表中に「認証の区分 JIS A 6916建築用下地調整塗材」「製品の種類 セメント系下地調整塗材1種/セメント系下地調整厚塗材2種」の記載がある。 カ 乙第30号証について 乙第30号証は、「一般社団法人日本規格協会」が令和3年2月22日に発行した「建築用下地調整塗材/JIS A 6916」(抜粋)であり、その4葉目には、「日本産業規格 JIS A 6916/建築用下地調整塗材」の記載の下、「1 適用範囲」の項には「この規格は、建築用仕上塗材、塗料、セラミックタイルなどによる内外装仕上げ工事の下地調整のために使用する下地調整塗材について規定する。」の記載がある。 また、「3 用語及び定義」の項には「この規格で用いる主な用語及び定義は、次による。」として「3.1 主材 セメント、骨材、無機質粉体、混和剤などを原料として調整調合した粉状のもの」の記載がある。 さらに、5葉目には、「4 種類及び呼び名」の項の表1に、「種類/セメント系下地調整塗材 1種 呼び名/セメント系下地調整塗材 C-1」「種類/セメント系下地調整厚塗材 2種 呼び名/下地調整厚塗材 CM-2」等の記載がある。 加えて、6葉目には、「6.1 原料及び製造原料」の項に、「6.1.1 結合材 a) セメント セメントは、ポルトランドセメント、白色セメント(ホワイトセメント),高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント、及び超速硬セメントとする。・・・」の記載がある。 (2)上記(1)アないしカによれば、次の事実を認めることができる。 ア 昭和電工建材社(1977年会社設立)は、「左官材・防水材・防食材事業(建設資材)」を事業内容とし、コンクリート面の下地調整塗材「ハイモルマックス」「ハイモルスーパー」などの湿式建材事業を行い、「ハイモル」「ハイモルエマルジョン」等の商品を製造、販売していた(乙1)。そして、同社のウェブサイトにおいて「左官工事材ラインナップ」として、「セメント系下地調整塗材」である「ハイモル○Rスーパー#10-I」「ハイモル○Rスーパー#10-K」「ハイモル○Rスーパー#20-I」「ハイモル○Rスーパー#20-K」「ハイモル○Rスーパー#30-I」「ハイモル○Rスーパー#30-K」「ハイモル○Rスーパー#40」「ハイモル○Rスーパー#150-I」「ハイモル○Rスーパー#150-K」「ハイモル○Rスーパー#300」「ハイモル○Rネオ」の各商品を掲載し(以下これらの商品をまとめて「使用商品」という。)、当該ウェブサイトから使用商品のカタログをPFDファイルでダウンロードできるようにしていた(乙2)。 イ 使用商品のカタログには、いずれも「ハイモル○R」及び「スーパー#10-I」等の文字が2段に分かれて表示、又は「ハイモル○Rネオ」の文字が表示されているところ、上段又は語頭部の「ハイモル○R」の文字が共通し、当該文字は下地調整塗材のラインナップに共通するシリーズ名として独立して看取し得るものである(以下「ハイモル○R」の文字を「使用商標」という。)。 また、使用商品は、ポリマーセメントモルタルとして使用でき、適用部位が内・外壁、内・外床、天端、天井であり、適用下地がコンクリート、モルタル、PC版、ALCパネルとする「セメント系下地調整塗材」であって、JIS規格に係る「セメント系下地調整厚塗材1種 C-1」又は「セメント系下地調整厚塗材2種 CM-2」に該当する製品である。 さらに、カタログの記載内容は2019年12月ないし2022年1月現在のものである(乙5~乙15)。 ウ 出荷日又は納期を2021年11月29日とする商品(「ハイモル ネオ 個数 40」、「ハイモルスーパー20-I 個数 10」等)について、昭和電工建材社に係る販売部門から顧客に対し、2021年12月20日〆切で、料金が請求された(乙39)。 エ 使用商品は、JIS A 6916の規格に沿った、建築用下地調整塗材(「セメント系下地調整塗材1種 C-1」又は「セメント系下地調整厚塗材2種 CM-2」)であり、主材及び原料をセメント等とするものである(乙29、乙30)。 2 判断 上記1の事実認定によれば、次のとおり判断できる。 (1)使用商標について 本件商標は,上記第1のとおり、「ハイモル」の片仮名と「HIMOL」の欧文字を2段に表してなるところ、下段の「HIMOL」の文字の読みからなる上段の「ハイモル」の文字は、「ハイモル○R」の文字からなる使用商標とは、記号と看取される「○R」の部分を除き同一であり、両商標が異なる観念を生じるとはいえないから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標ということができる。 (2)使用商品について 使用商品は、建築用下地調整塗材(「セメント系下地調整塗材1種 C-1」又は「セメント系下地調整厚塗材2種 CM-2」)であり、主材及び原料をセメント等とするものであって、セメント主体とした建築用の専用材料といえるから、当該商品は、本件審判請求に係る指定商品中、第19類「セメント及びその製品」に該当するものといえる。 (3)使用者、使用行為、使用時期について 昭和電工建材社は、令和5年1月30日前における商標権者であり(上記第1参照)は、商標権者は、同人のウェブサイトにおいて、使用商標を表示した使用商品の商品カタログを掲載し、当該ウェブサイトから当該カタログをPFDファイルでダウンロードできるようにして提供していた。かかる行為は、商標法第2条第3項第8号にいう使用行為(商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為)に該当する。 また、使用商品のカタログの記載内容は、いずれも要証期間である2019年12月ないし2022年1月現在のものであること、同じく要証期間である2021年11月29日を出荷日又は納期をとする使用商品の販売について、同年12月20日〆切で、顧客に対し料金が請求されており、顧客が要証期間に当該カタログを閲覧していた可能性があることもあわせ考慮すれば、使用商標を表示した使用商品のカタログは要証期間において、商標権者のウェブサイトに存在し、提供されていたことが推認できる。 (4)小括 上記(1)ないし(3)からすれば、本件商標の商標権者は、要証期間に、日本国内において本件審判請求に係る指定商品(「セメント及びその製品」)の範ちゅうに属する商品に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して、商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為を行ったこと(商標法第2条第3項第8号に該当。)を認めることができる。 3 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の商標権者が、その審判の請求に係る指定商品について本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていたことを証明したといわなければならない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-300207

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