2022-020808
表示装置、表示方法、プログラム、記録媒体、および構造物監視システム
- 審判番号
- 2022-020808
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-111703外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月22日
- 審決日
- 2023年10月18日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】セイコーエプソン株式会社
- 【請求人代理人】布施 行夫
- 【請求人代理人】大渕 美千栄
- 【請求人代理人】川▲崎▼ 通
- 【請求人代理人】松本 充史
- 分類
- P18 .121-Z (G01B) / P18 .575-Z (G01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
本願は、平成30年6月12日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
同年 5月26日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 9月16日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月27日 :原査定の謄本の送達)
第2 令和4年12月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年12月22日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和4年12月22日にされた特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)は、次の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、令和4年5月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】構造物の複数の部位に配置されている複数の物理量センサーから出力された出力信号に基づいて算出された前記構造物の複数の変位量の相対値に基づいて、前記構造物の前記複数の部位の変位を視覚的に認識可能な画像情報として表示部に表示する、表示装置。」
(2) 本件補正後
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。
「【請求項1】構造物の複数の部位に配置されている複数の物理量センサーから出力された出力信号に基づいて算出された前記構造物の複数の変位量の相対値に基づいて、前記構造物の前記複数の部位の変位を視覚的に認識可能な画像情報として表示部に表示し、前記構造物は橋梁であり、前記複数の物理量センサーは、前記橋梁の主桁もしくは横桁に配置されている、表示装置。」
2 本件補正の目的について
本件補正は、請求項1において、本件補正前の「構造物」を「橋梁」に限定するとともに、「複数の物理量センサー」の「配置」について「前記橋梁の主桁もしくは横桁に配置されている」ことを限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件について
本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否か、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2) 各引用文献の記載事項並びに引用発明及び技術常識の認定
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ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開2011-44130号公報(以下「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付した。以下同様である。)
「【技術分野】【0001】本発明は、現実画像に仮想画像を重ね合わせて表示する画像処理システムとその画像処理方法に関する。【背景技術】続きを表示(全19行)【0002】従来、橋梁部材等の建築物の点検・調査において、ひずみゲージや変位計等のセンサより得られるデータを解析しグラフ化して表示してきた。しかしこれらのデータではどの場所にどのようなひずみがあるのかを視覚的に把握し難いという問題を有する。【0003】そこで、データを有効に表示するための可視化ソフト(例えば、AVS, Visualizer, Paraview)が提案されている。これによれば補完機能が充実しており、画像化、ベクトル表示に優れている。しかし、可視化のベースとなるモデルの作成が必要であるため、時間がかかる。また当該表示方法においても、モデルの精度をあげなければそれぞれの表示がどこのデータなのかは明確には分からないという問題を有していた。【0004】これらとは別の可視化技術として、情報通信の分野において拡張現実感(AR:Augumented Reality)技術が利用されている。これらの技術を利用することにより、現実空間の画像に、CG等の仮想空間の画像を重ね合わせて表示し、実際には見えないものや補足的な情報などを、状況に対応させてユーザに表示することができる(例えば、特許文献1、非特許文献1、2)。…(中略)…【0007】本発明は、ひずみや応力といったセンサの処理結果を視覚的に把握できるような、新規データ表示する画像処理システム及び画像処理方法を提供することを目的とする。【0008】工学的な分野において、客観性を示すため、センサ等で取得した物理量およびそれを誘起した外力を書類で残す(示す) 必要がある。アニメーションは報告書として書類に残すのには適当な形式ではない。工学的な意味のある情報を、紙面に残す手段が必要とされている。そこで、本発明は、センサ等により取得した物理量等のセンサ情報を簡単に紙面に残す手段を提供する。【0009】従来のAR技術を単に利用して、これらのひずみや応力といった物理量を測定するシステムで、動的に(アニメーションで)観察したとしても感覚的に変動を把握できるものの、これらの挙動の変化を詳細に分析することは困難であった。実際、土木建築物等の強度を測定する用途に用いられることが想定されるが、補強手段の検討には、橋梁に架かる外力(たとえば、特に車両の通過に伴なう力、他に風力、温度応力、地震力など)に応じて発生するひずみや応力や加速度などを詳細に分析する必要がある。そのような場合には、現実画像(走行している車両の位置)と仮想画像(物理量など)の厳密な時間同期された合成画像が必要となる。【0010】そこで、本発明は、センサなどからの解析結果を現実画像に重ね合わせて表示する画像処理システム及び画像処理方法において、センサ情報を静止画像表示して解析可能にし、更に、センサの情報と現実画像との同期が取れており、現実空間において発生した現象に基づき、センサ情報がいかに変化するかを解析できる画像処理システム及び画像処理方法を提供することを目的とする。」
「【0031】第一の実施形態図1は、本最良形態に係る画像処理システムの機能構成を示すブロック図である。図1に示すように本最良形態に係るシステムは、マーカMが配置された現実空間Rの画像を撮影するカメラ110と、現実空間のマーカMの周辺に配置されたセンサ120と、前記センサからの情報を取得可能なデータロガー130と、画像処理システム140と、表示装置160と、入力装置170とを有する。尚、ここで現実空間とは、画面に映っている空間に限定されず、実際の空間を意味する。…(中略)…続きを表示(全41行)【0034】センサ120は、公知の各種センサを用いることができ、特に限定されないが、例えば、ひずみゲージ、ロードセル、変位計、温度センサ、湿度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、距離センサ、磁気センサ、光位置センサ、光波距離計等が挙げられる。また、センサ120の数は、一つに限定されず、複数個であってもよい。これらのセンサ120は、データロガー130と接続されており、センサによる測定結果を処理して、センサ情報の取得時刻と共に、画像処理システムへと当該処理結果が供給される。また、これらのセンサの中でも、ひずみゲージを3つ積層した3軸のひずみゲージなどを用いることにより、主ひずみ、主応力などのベクトル量を算出することが可能となり、これらのベクトルの絶対値及び方向を従来の方法と比較してよりわかり易く表示することができる。【0035】表示装置160は、公知の表示装置を使用することができ、特に限定されないが、例えば、コンピュータ用のディスプレイや、ユーザの頭部に装着するヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使用することが可能である。これらの中でも、後々に解析結果を表示するためにはコンピュータ用のディスプレイを用いることが好適である。また、入力装置170は、特に限定されないが、例えば、マウス、キーボードを使用することができる。【0036】続いて、画像処理システム140について説明する。【0037】画像入力部142は、カメラ110から送出される各フレームの撮影画像を受信すると、これを撮影画像の取得時刻(例えば、フレーム画像の取得開始時刻など)、又は、フレームの取得開始時間から次のフレーム取得時間までのフレーム取得時間範囲と共に画像記憶部143及びマーカ検出部144に送出する。これらの撮影画像の取得時刻又は取得時間範囲はカメラなどの撮影手段から送られるものを使用してもよいし、画像処理システムにおいて計算してもよい。【0038】マーカ検出部144は、画像入力部142から撮影画像を受けると、当該撮像画中に映っているマーカを検出し、画像座標を計算する。なお、画像座標及び後述するマーカの姿勢を求める方法については公知文献(例えば、加藤博一ら著、マーカー追跡に基づく拡張現実感システムとそのキャリブレーション、TVRSJVol.4No.41999年)に記載の通り、周知である。【0039】配置情報生成部145は、マーカ検出部144からの画像座標情報と、配置情報記憶部141に記憶されているマーカMの形態情報とに基づき、マーカの配置情報(位置・姿勢情報)を計算する。【0040】配置情報記憶部141は、前述したマーカMの形態情報の他、配置情報生成部145が生成した配置情報を格納する。【0041】撮影手段位置姿勢推定部146は、マーカ検出部144が求めたマーカの配置情報から、現フレームにおけるカメラ110の位置姿勢を求める(推定する)。直前のフレームについて推定したカメラ110の撮像面上に投影した位置(画像座標)と、マーカ検出部144が求めた画像座標との誤差が最小になるように、カメラ110の位置姿勢を、非線形最適化の繰り返しによって算出する。ここで求まる位置姿勢は、現フレームにおけるカメラ110の位置姿勢である。【0042】画像記憶部143は、画像入力部142を介してカメラ110から受けた撮影画像を当該画像の各フレームの取得時間範囲と共に一時的に記憶する。【0043】操作入力部147は、操作入力装置170から送出された指示信号を、撮影手段位置姿勢推定部146や配置情報編集部148に送出する。【0044】配置情報編集部148は、マーカとセンサの相対的な位置情報を編集するための機能を備える。ここで、マーカとセンサの相対的な位置情報とは、例えば、マーカの一点を基準点として、当該基準点を原点とするマーカ座標上において、センサが位置する座標の情報を指す。【0045】センサ情報入力部151は、データロガー130から送出されたセンサから得られたデータ及びデータ取得時刻をセンサ情報処理部152に送出する。【0046】センサ情報処理部152は、当該データを解析し、解析結果を計算により求める。センサ情報処理部152で算出された解析結果は、センサ情報画像生成部154に送出される。【0047】センサ情報記憶部153は、センサ情報処理部152が求めた解析結果及び対応するデータ取得時刻を一時的に記憶する。【0048】センサ情報画像生成部154は、操作者により指定された形式で、上記のセンサ情報処理部152により求められた解析結果を反映したセンサ情報画像を生成する。ここで、指定可能な形式は、画像情報記憶部155に格納されており、例えば、情報処理により得られる結果を色で示すための画像や、結果のスカラ値反映する大きさの異なる円形画像や、得られた結果がベクトル値である場合には大きさと方向を反映するための矢印画像や、数値表示画像や、グラフ表示画像や、その他3Dの表示画像が挙げられる。【0049】合成部149は、画像記憶部143から取得した撮影画像上に、センサの位置に反映した場所にセンサ情報の処理結果を反映する画像を示す合成画像を生成する。具体的には、合成部149は、撮影手段位置姿勢推定部146からの撮影手段位置姿勢情報及びマーカとセンサの相対的な位置情報を踏まえて、センサ情報画像生成部154が生成したセンサ情報画像が撮影画像におけるセンサ位置に対応する箇所に配された仮想画像を生成する。画像記憶部143から取得した撮影画像と当該仮想画像とを、同期して合成する。【0050】本発明に係る画像処理システムにおいては、単にリアルタイムにセンサ測定情報と画像情報を重ね合わせて表示するのみならず、センサ情報や撮影画像等を記録して、後から当該センサ情報を反映した仮想画像と撮影画像と重ね合わせた静止画像を表示させられるように構成する。また、静止画像をJPGやBMPの形式の画像ファイルとして出力できるように構成してもよい。…(中略)…【0059】ここで、カメラ110により撮影される現実画像と、本発明に係る撮影画像の様子を図4に示す。このように、現実画像上に存在するセンサの近傍に、センサにより得られた測定結果を反映した画像を示す。」
[図:0001405557000001.jpg]
「【図1】」
「【図4】[図:0001405557000002.jpg][図:0001405557000003.jpg]」
(イ) 引用発明の認定
a 引用文献1の段落【0031】から【0085】の第一実施形態の記述においては、センサ情報の解析結果の表示がどのような用途に用いられるか記載はないものの、引用文献1の段落【0002】においては、従来の技術の説明として、「橋梁部材等の建築物の点検・調査」が挙げられているから、当然にこのような用途のものが把握される。
b 前記(ア)の引用文献1の記載事項及び前記aの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「現実画像に仮想画像を重ね合わせて表示する画像処理システムであって、(【0001】)橋梁部材等の建築物の点検・調査において用いられるものであり、(前記aの認定事項)マーカMが配置された現実空間Rの画像を撮影するカメラ110と、現実空間のマーカMの周辺に配置されたセンサ120と、前記センサからの情報を取得可能なデータロガー130と、画像処理システム140と、表示装置160と、入力装置170とを有し、(【0031】)センサ120は複数個の変位計であり、(【0034】)画像処理システム140のセンサ情報入力部151は、データロガー130から送出されたセンサから得られたデータ及びデータ取得時刻をセンサ情報処理部152に送出し、(【0036】、【0045】)センサ情報処理部152は、当該データを解析し、解析結果を計算により求めてセンサ情報画像生成部154に送出し、(【0046】)センサ情報画像生成部154は、操作者により指定された形式で、センサ情報処理部152により求められた解析結果を反映したセンサ情報画像を生成するものであり、指定可能な形式は、画像情報記憶部155に格納されており、情報処理により得られる結果のスカラ値を反映する大きさの異なる円形画像や、得られた結果がベクトル値である場合には大きさと方向を反映するための矢印画像であり、(【0048】)センサ情報画像生成部154が生成したセンサ情報画像が撮影画像におけるセンサ位置に対応する箇所に配された仮想画像を生成し、センサ測定情報と画像情報を重ね合わせて表示する(【0049】、【0050】)画像処理システム。」
イ 引用文献2の記載事項及び技術常識1の認定
(ア) 引用文献2の記載事項
当審において新たに引用する、本願出願前の平成28年に発行された「関屋英彦ほか「橋梁の加速度記録を用いた変位応答算出法の提案」土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.72,No.1,61-74ページ,2016」(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、引用文中の参照文献番号の記載は省略している。)
「1.はじめに鋼橋における疲労損傷は発見が困難である上,脆性破壊を起こす危険性があり,適切な点検および補修が必要である.疲労き裂が脆性破壊に移行する限界き裂長に至る前に発見し,対策を講じるためには,外力に対する橋梁全体や部材ごとの変位挙動を把握し,損傷原因となる局部的な応力を引き起こす部材の変位を特定することが重要となる.特に活荷重により生じる変位応答が疲労損傷の支配的要因となっており,この変位応答を把握することが必要である.外力に対する応答を計測する手法として,MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)加速度センサを利用した方法が提案されている.MEMS加速度センサは塗膜の上からマグネット等での設置が可能なため,設置が非常に容易であり,かつ小型で安価なことから構造物のヘルスモニタリングへの活用が期待されている.ワイヤレス機能を付加することにより,一度設置した加速度センサを取り外し,別の場所にも設置することも可能である.さらに,レーザー変位計等の既存の変位計測方法と異なり,不動点が不必要なため,施工性の向上が期待される.…後略…」
「4.実橋梁における実証実験以上の検討により,提案する自由振動仮定法を用いることによって,加速度センサの測定誤差に起因する変位の誤差を軽減し,精度良く橋梁の変位応答を把握出来る可能性を示した.本章では,実橋梁において9種類の加速度センサを用いて測定した加速度記録に対して,自由振動仮定法および初期速度推定法を用いることによって,それぞれの手法の評価および有効性を検討する.(1)試験橋梁および加速度センサの設置について首都高速道路湾岸線において,9種類の加速度センサおよび接触式変位計を用いて活荷重に対する変位応答の計測を行った.図-11に試験橋梁の平面図および正面図と,計測機器設置位置を示す.試験橋梁は下り線4車線となっており,支間長34.55m,総幅員18.3mの鋼単純合成6主I桁橋である.支間中央に荷重分配横桁が配置され,支点上に端対傾構が配置されており,その間を三分割するように中間対傾構が配置されている.試験橋梁における路面プロファイルの計測は行っていないが,走行性に影響を与えるような路面の補修跡等はなかった.変位算出用の加速度センサおよび接触式変位計の設置状況を図-12に示す.加速度センサの設置に関しては,9種類の加速度センサをL字型の鋼製治具に設置し,その治具をG3桁中央部下フランジに固定した.この際,加速度センサによってはz方向とx,y方向で感度が異なることに注意し,加速度センサのx,y方向のどちらかが重力方向となるように設置した.また,加速度センサで計測した加速度記録から算出した変位応答の検証を行うため,下フランジに接触式変位計を設置し,鉛直変位の計測を行った.接触式変位計のサンプリングは100Hzとした.車両の進入および退出検知用の加速度センサは主桁端部垂直スティフナ上部にマグネット治具を用いて取り付けた.加速度センサ設置状況(退出検知用)を図-13に示す.サンプリングは500Hzとした.計測は交通規制等を行わず,一般車両が走行する供用下にて行った.なお,本研究では車両検知用の加速度センサおよび接触式変位計による計測記録から第二車線を車両一台が単独走行したと考えられるデータを使用した.」
「[図:0001405557000004.jpg]」
「[図:0001405557000005.jpg]」
「[図:0001405557000006.jpg]」
前記図-11と「車両の進入および退出検知用の加速度センサは主桁端部垂直スティフナ上部にマグネット治具を用いて取り付けた.」の記載から、「車両の進入および退出検知用の加速度センサ」がG3桁に取り付けられており、またそのG3桁が橋梁の主桁であることが分かる。さらに、前記「変位算出用の加速度センサおよび接触式変位計の設置状況を図-12に示す.加速度センサの設置に関しては,9種類の加速度センサをL字型の鋼製治具に設置し,その治具をG3桁中央部下フランジに固定した.」の記載から、「変位算出用の加速度センサ」も主桁であるG3桁に設置されていることが明らかである。
(イ) 技術常識1の認定
前記(ア)に摘記した引用文献2の記載に例示されているように、次の事項は、本願出願前に技術常識(以下「技術常識1」という。)であったと認められる。
[技術常識1]
「主桁に加速度センサを設置して、橋梁の点検のための変位応答を計測すること。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 「表示装置」の発明である本件補正発明と「センサ測定情報と画像情報を重ね合わせて表示する画像処理システム」の発明である引用発明は、表示装置の発明である点において一致する。
(イ)a 引用発明の「橋梁部材等の建築物」という語句からは「橋梁」が当然に認識されるところ、これは、本件補正発明の「橋梁」である「構造物」に相当する。
b(a) 引用発明の「複数個の変位計等であ[る]」「センサ120」は、本件補正発明の「複数の物理量センサー」に相当する。
(b) また、引用発明の「複数個の変位計等であ[る]」「センサ120」が、その「点検・調査」の対象である「橋梁部材等の建築物」の複数の部位に配置されることは明らかである。
(c) 前記(a)(b)及び前記aを踏まえると、引用発明の「センサ120」は、本件補正発明の「構造物の複数の部位に配置されている複数の物理量センサー」に相当するといえる。
c(a) 引用発明の「センサ120」は「複数個の変位計であ[る]」から、そこから得られるデータが「橋梁部材等の建築物」の変位量を含むことは当然である。
(b) 前記(a)を踏まえると、引用発明の「センサ情報処理部152」が「センサから得られたデータ」を「解析し、」「計算により求めてセンサ情報画像生成部154に送出」する「解析結果」が「橋梁部材等の建築物」の変位量を含むことも明らかである。
(c) 前記(a)及び(b)並びに前記b(c)を踏まえると、引用発明の「センサ情報処理部152」が「センサ情報画像生成部154に送出」する「解析結果」は、本件補正発明の「構造物の複数の部位に配置されている複数の物理量センサーから出力された出力信号に基づいて算出された前記構造物の複数の変位量」に相当する。
d 前記cを踏まえると、引用発明において「センサ情報画像生成部154」が「センサ情報処理部152により求められた解析結果を反映したセンサ情報画像を生成」し、「情報処理により得られる結果のスカラ値を反映する大きさの異なる円形画像や、得られた結果がベクトル値である場合には大きさと方向を反映するための矢印画像」を「表示する」ことは、本件補正発明において「前記構造物の前記複数の部位の変位を視覚的に認識可能な画像情報として表示部に表示」することに相当する。
e 以上をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。
「構造物の複数の部位に配置されている複数の物理量センサーから出力された出力信号に基づいて算出された前記構造物の複数の変位量に基づいて、前記構造物の前記複数の部位の変位を視覚的に認識可能な画像情報として表示部に表示する」点
(ウ) 前記(イ)aを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記構造物は橋梁であ[る]」点において一致する。
(エ) 本件補正発明は「前記複数の物理量センサーは、前記橋梁の主桁もしくは横桁に配置されている」ところ、前記(イ)のa及びb(c)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は「前記複数の物理量センサーは、前記橋梁に配置されている」点において共通する。
イ 一致点及び相違点の認定
前記アの対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違する。
(ア) 一致点
「構造物の複数の部位に配置されている複数の物理量センサーから出力された出力信号に基づいて算出された前記構造物の複数の変位量に基づいて、前記構造物の前記複数の部位の変位を視覚的に認識可能な画像情報として表示部に表示し、前記構造物は橋梁であり、前記複数の物理量センサーは、前記橋梁に配置されている、表示装置」である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
構造物の複数の部位に配置されている複数の物理量センサーから出力された出力信号に基づいて算出された前記構造物の複数の変位量に基づいて、表示部に表示される、前記構造物の前記複数の部位の変位を視覚的に認識可能な画像情報が、
本件補正発明においては「前記構造物の複数の変位量の相対値」に基づいて表示されるのに対して、
引用発明においては、前記構造物の複数の変位量に基づいて表示される点において一応相違する。
b 相違点2
前記複数の物理量センサーの前記橋梁における配置位置が、
本件補正発明においては、「前記橋梁の主桁もしくは横桁」であるのに対して、
引用発明においては、「橋梁」のどの位置であるのか不明である点。
(4) 判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明において、「結果のスカラ値を反映する大きさの異なる円形画像や、得られた結果がベクトル値である場合には大きさと方向を反映するための矢印画像」を表示するに際して、当該画像の大きさを定めることが必要であるところ、そのためには、何からの基準の値に基づいて定めなければならず、そうすると、必定、各画像の大きさは、「前記構造物の複数の変位量」の相対値を反映することになる。
したがって、引用発明において、「前記構造物の複数の変位量の相対値」ということが明示的に特定されていなくとも、構造物の複数の部位に配置されている複数の物理量センサーから出力された出力信号に基づいて算出された前記構造物の複数の変位量に基づいて、前記構造物の前記複数の部位の変位を視覚的に認識可能な画像情報を表示部に表示するに際して、「前記構造物の複数の変位量の相対値」に基づいたものとすることは、当業者にとっては、極めて自明のことにすぎない。
また、「前記構造物の複数の変位量の相対値に基づく」ことが、いずれかのセンサの変位量を基準とすることの意味だとしても、一般にどれかの値を基準として(1として)、それに対する相対値を表示することは、広く一般的に行われていることにすぎないから、かかる相違点をもって想到の困難性を見いだすことはできない。
したがって、前記相違点1は、実質的な相違点ではない。
イ 相違点2について
引用発明においては、どの橋梁部材に物理量センサーが配置されているかは具体的には特定されていないから、物理量センサーを前記橋梁の主桁又は横桁に配置する点において、本件補正発明は、確かに引用発明と一応相違する。
しかしながら、橋桁は橋脚と並ぶ橋梁の主要構造部位であり、前記(2)イ(イ)において示したとおり、「主桁に加速度センサを設置して、橋梁の点検のための変位応答を計測すること」は、技術常識であるから、物理量センサーが配置場所の具体的な記述がないとしても、橋梁の変位を検出しようとする場合に、主桁は、その検出対象候補として当然に想定されるものである。
したがって、前記複数の物理量センサーの前記橋梁における配置位置を「主桁もしくは横桁」に限定することは、単なる限定にすぎず、実質的な相違点とはいえない。
ウ 総合評価
前記ア及びイにおいて検討したとおり、相違点1は、極めて自明のものであり、また、相違点2も実質的な相違点でなく、少なくとも引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、相違点1及び相違点2は、いずれも格別のものではない。
そして、相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果としては、当業者にとって予測困難であり、かつ、格別顕著なものを認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
エ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張内容
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審判請求書において、請求人は、次のa及びbの点を主張している。
a 請求人の主張1
補正後の請求項1に係る発明の「構造物の複数の部位に配置されている複数の物理量センサーから出力された出力信号に基づいて算出された前記構造物の複数の変位量の相対値に基づいて、前記構造物の前記複数の部位の変位を視覚的に認識可能な画像情報として表示部に表示する」との構成は、引用文献1に記載も示唆もされていないので、引用文献1に記載の発明に基づいて当該構成を導くことはできない。
さらに、補正後の請求項1に係る発明は、当該構成により、「物理量センサーから算出された変位量の相対値によって、物理量センサーの配置されている構造物のそれぞれの部位の変位量が示されることから、管理者(ユーザー)は、構造物の異なる部位に係る変位の大きさの比較を容易に認識することができる。」(本願明細書の0154段落)という格別な技術的効果を奏するのであるから、当業者が適宜設定し得る設計事項とは認められない。
b 請求人の主張2
引用文献1の図4の画像は、橋梁に関する画像ではないことは明らかであり、また、引用文献2の0094段落には「一台のカメラで映し出せない部分の画像を取得して、拡張現実感画像と並べて表示することにより、例えば、橋梁の上を車が通過する際に橋脚にどのような応力が加わるのかを視覚的に解り易く表示することが可能となる。」と記載され、図12では、複数のセンサ120は、橋梁の主桁もしくは横桁ではなく、橋脚に配置されている。
これに対して、請求項1に係る発明は、複数の物理量センサーが配置されている橋梁の主桁もしくは横桁の複数の部位の変位を視覚的に認識可能な画像情報として表示部に表示することができる。
(イ) 請求人の主張についての検討
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a 請求人の主張1について
変位量の「相対値」に基づく表示を行うことが極めて自明のことであることは、前記アにおいて説示したとおりである。そして、請求人の主張する格別な技術的効果は、自明のことにすぎない。
したがって、請求人の前記主張1は、採用することができない。
b 請求人の主張2について
センサを橋梁の主桁もしくは横桁に配置することが実質的な相違点でなく、少なくとも当業者が容易になし得たものであることは、前記イにおいて説示したとおりである。
したがって、請求人の前記主張2は、採用することができない。
(5) 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2において説示したとおり却下されたので、本願の請求項1~14に係る発明は、令和4年5月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に係る拒絶の理由の概略は、次のとおりである。
本願発明は、下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2011-44130号公報
3 引用文献に記載された事項等
前記引用文献1には、前記第2の3(2)ア(イ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
4 対比・判断
(1)ア 本願発明は、本件補正発明の請求項1において、本件補正前の「構造物」を「橋梁」とする限定、及び「複数の物理量センサー」の「配置」について「前記橋梁の主桁もしくは横桁に配置されている」とする限定を省いたものである(前記第2の2参照)。
イ そうすると、本願発明と引用発明の相違点は、前記相違点1となる。
(2) 前記相違点1が当業者にとって極めて自明であることは、前記第2の3(4)アに示すとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-020808