2022-020067
袋
- 審判番号
- 2022-020067
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-035600外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月09日
- 審決日
- 2025年03月06日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 9項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成30年2月28日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明について
本願の請求項1~5に係る発明は、令和6年5月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1の記載は次のとおりである。
以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。
「【請求項1】収容部を有する袋であって、前記袋の内面に位置し、単一の層からなるシーラントフィルムと、前記シーラントフィルムよりも外面側に位置する少なくとも1つのプラスチックフィルムと、を含む積層体と、一対の前記積層体の内面同士を接合するシール部と、を備え、続きを表示(全12行)流れ方向における前記シーラントフィルムの引張伸度(%)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、45000以上であり、前記シール部は、前記袋の外縁に位置する外縁シール部と、前記外縁シール部よりも前記収容部の中心点側に位置し、前記収容部の圧力の増加により剥離する蒸気抜きシール部と、を有し、100℃のときの前記シール部の、15mm幅におけるシール強度が15N以下であり、前記シール強度は、前記積層体から構成される試験片に、加熱温度121℃、加熱時間40分、圧力0.2MPaの処理を加えた後に測定され、前記シーラントフィルムは、第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂を含む層を備える未延伸フィルムであり、前記第1の熱可塑性樹脂は、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなり、前記第2の熱可塑性樹脂は、α-オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含み、前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、前記第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高い、袋。」
第3 令和6年3月8日付けの拒絶理由
令和6年3月8日付けの拒絶理由通知書に記載された拒絶の理由は、この出願の請求項1~6に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献6、7に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。
<引用文献等一覧>
1.特開2013-79085号公報
6.松浦洋一、「ポリマーブレンドによる無延伸フィルムの開発」、コンバーテック、加工技術研究会、2017年2月、第45巻、第2号、通巻527号、76~81ページ
7.寺西正芳、松浦洋一、「東レフィルム加工の高機能フィルム」、一般社団法人日本食品包装協会会報 第153号、日本食品包装協会、2017年1月
第4 当審の判断
1 引用文献の記載および引用発明
(1) 引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
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令和6年3月8日付けの拒絶理由通知書に記載の拒絶の理由において引用した引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審において付与した。「・・・」は、文の省略を意味する。以下同様とする。)。
(ア)「【特許請求の範囲】【請求項1】少なくとも非鉄系酸素吸収性樹脂層と、食品接触層と、を有するシーラントであって、前記シーラント同士を、食品接触層を内側にして熱接着したとき、23℃におけるシール強度が23~100N/15mmであり、かつ、90℃におけるシール強度が5~25N/15mmであることを特徴とするシーラント。続きを表示(全13行)【請求項2】前記食品接触層が、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と、プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)と、ブテン-1を15質量%以上含有するエチレン-ブテン-1共重合体と、を含有する樹脂組成物であって、前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)が、プロピレン単独重合体またはエチレン含量が2質量%以下のプロピレン-エチレン共重合体よりなるプロピレンブロック(I)65~85質量%と、エチレン含量が20~95質量%のエチレン-プロピレン共重合体ブロック(II)15~35質量%と含有し、前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)が、プロピレン単独重合体またはエチレン含量が2質量%以下のプロピレン-エチレン共重合体よりなるプロピレンブロック(III)85~95質量%と、エチレン含量が20~95質量%のエチレン-プロピレン共重合体ブロック(IV)5~15質量%とを含有する樹脂組成物からなる請求項1記載のシーラント。【請求項3】前記非鉄系酸素吸収性樹脂層が、共役ジエン重合体環化物からなる酸素吸収剤と基材樹脂とを含む樹脂組成物からなる請求項1または2記載のシーラント。・・・【請求項5】請求項1~3のうちいずれか一項記載のシーラントを用いたことを特徴とする積層体。【請求項6】前記積層体を用いたことを特徴とする電子レンジ用包装袋。」
(イ)「【技術分野】【0001】本発明は、シーラント、それを用いた積層体および電子レンジ用包装袋に関し、詳しくは、電子レンジ用包装袋に用いることで、その内容物の風味の劣化を抑制することができ、かつ、輸送時や保管時に加わる圧力や衝撃によって剥離することなく、電子レンジでの加熱時に内圧により容易に剥離するシーラント、それを用いた積層体および電子レンジ用包装袋に関する。」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】【0006】このように、従来から、電子レンジ用包装袋はその自立安定性、内容物の充填適性、取扱い時の安全性、製造効率等の観点から検討がなされてきた。しかしながら、近年、レトルト食品に対して、包装された内容物の風味を損なうことなく長期間保存したい等の要望が高まってきている。かかる要望を満足する電子レンジ用包装袋を得るためには、新たな技術の開発が必要である。【0007】そこで、本発明の目的は、電子レンジ用包装袋に用いることで、その内容物の風味の劣化を抑制することができ、かつ、輸送時や保管時に加わる圧力や衝撃によって剥離することなく、電子レンジでの加熱時に内圧により容易に剥離するシーラント、それを用いた積層体および電子レンジ用包装袋を提供することにある。」
(エ)「【0016】本発明においては、シーラント10に非鉄系の酸素吸収性樹脂層3を設けることが肝要である。シーラント10に非鉄系の酸素吸収性樹脂層3を設けたことで、シーラント10の酸素バリア性が向上する。そのため、本発明のシーラント10を電子レンジ用包装袋のシーラントとして用いた場合、内容物の酸化による風味の劣化を防止し、内容物の長期保存が可能となる。また、本発明においては、シーラント10同士を、食品接触層4を内側にして熱接着したとき、23℃におけるシール強度が23~100N/15mmであり、かつ、90℃におけるシール強度が5~25N/15mmであることも重要である。シーラント10の食品接触層4同士を熱接着したとき、23℃におけるシール強度が23N/15mm未満であると輸送や保管時に加わる圧力や衝撃によってシール部が剥離してしまうおそれがある。シール強度の上限については特に制限はないが、好適には23~100N/15mmである。また、90℃におけるシール強度は5~25N/15mmである。90℃におけるシール強度が25N/15mmを超えると、自動開封が速やかで確実に達成できないおそれがあり、破袋する場合もあるため好ましくない。好適には10~15N/15mmである。以下、本発明のシーラント10を構成する各層について詳細に説明する。【0017】まず、本発明のシーラント10の食品接触層4について説明する。本発明のシーラント10の食品接触層4を構成する樹脂としては、一般に電子レンジで加熱または加熱調理される食品用包材として使用され、シーラント10同士を、食品接触層4を内側にして熱接着した場合におけるシール強度が、23℃において23~100N/15mmであり、かつ、90℃において5~25N/15mmとなるような樹脂であれば、特に制限はなく、例えば、ポリオレフィン系樹脂を用いることができる。」
(オ)「【0026】しかしながら、これらの成分を必須の主成分とする樹脂組成物においてプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)含量の増加は柚子肌適性の低下につながるおそれがあり、プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)含量の増加はレトルト殺菌後のヒートシール強度の低下および耐寒衝撃性の低下につながるおそれがあり、エチレン-ブテン-1共重合体含量の増加はレトルト殺菌後のヒートシール強度の低下につながるおそれがある。そのため、本発明においては、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)の含量を25~50質量%、プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)の含量を25~70質量%、エチレン-ブテン-1共重合体の含量を5~30質量%の範囲内とすることが好ましい。この範囲外においては、ヒートシール適性・柚子肌適性・耐寒衝撃性のいずれかが劣ったヒートシール性フィルムとなる場合があり好ましくない。」
(カ)「【0062】本発明のシーラント10は、酸素吸収性樹脂層3と、食品接触層4と、を有し、シーラント同士を、食品接触層4を内側にして熱接着したとき、23℃におけるシール強度が23~100N/15mmであり、かつ、90℃におけるシール強度が5~25N/15mmであることのみが重要であり、それ以外に特に制限はない。図1に示す本発明のシーラントの一好適な実施の形態に係るポリオレフィン系樹脂層1としては、食品接触層4を構成するポリオレフィン系樹脂と同じポリオレフィン系樹脂組成物を用いてもよく、異なるポリオレフィン系樹脂組成物を用いてもよい。・・・【0064】本発明のシーラント10を構成する食品接触層4および酸素吸収性樹脂層3の厚みは、目的に応じて適宜決定すればよい。例えば、食品接触層4の厚みは5~60μmとすることができ、酸素吸収性樹脂層3の厚みは5~40μmとすることができる。図1に示すように、食品接触層4および酸素吸収性樹脂層3以外の層を設ける場合、例えば、図示するように、ポリオレフィン系樹脂層1を設ける場合は、その厚みを5~50μm程度とすることができ、接着性樹脂層2a、2bは3~15μmとすることができる。なお、シーラント10の層厚は好ましくは40~120μm程度、より好ましくは50~100μm程度である。」
(キ)「【0078】本発明の電子レンジ用包装袋100においては、コの字状シール部を、図3(b)に示すように、胴部シール部105と連結して設けることが好ましい。これにより、電子レンジで加熱すると、コの字状シール部109に圧力が集中してかかるため、コの字状シール部109の縁部からシール剥離して、未シール部110内に形成される切欠111等を通って、内容物より発生する蒸気を速やかに袋外に排出することができる。また、コの字状シール部109を形成する際、胴部シール部105とコの字状シール部109とを一体で生産性良くシール加工できるという利点も有している。」
(ク)「【0088】本発明においては、製造した上端部に開口部を有する袋状容器本体の開口部から内容物を充填し、次いで、その上端部に開口部をヒートシール等により密閉することによって、本発明にかかる電子レンジ用包装袋を構成する包装半製品を製造し、しかる後、包装半製品を、レトルト処理あるいはボイル処理等の加熱処理を施すことによって、本発明にかかる電子レンジ用包装袋を製造することができる。この場合において、レトルト処理あるいはボイル処理する方法としては、例えば、通常のレトルト釜を使用し、温度、95℃~135℃程度、好ましくは、120℃程度、圧力、1~4Kgf/cm2・G、好ましくは、2.1Kgf/cm2・G程度、時間、5分~120分間程度、好ましくは、30分間程度で加熱加圧処理する方法、あるいは、温度、90~100℃、好ましくは、90℃程度、時間、5分~20分間程度、好ましくは、10分間程度でボイル処理する方法等により行うことができる。また、本発明の電子レンジ用包装袋においては、レトルト処理あるいはボイル処理により、内容物を加熱殺菌あるいは加熱殺菌調理等を行うことができる。レトルト処理方法としては、あらかじめ高温に設定された熱水をレトルト釜内に流入させて加圧する熱水貯湯式や、熱水をスプレー式に噴射させることによって加圧する熱水スプレー式、蒸気を噴出することによって加圧する蒸気式等、各種の方法が可能である。」
(ケ)「【図3】[図:0001421664000001.jpg]」
イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、特に上記(ア)の請求項1、2、3、5を引用する請求項6、電子レンジ用包装袋の実施形態として示されている図3(上記(ケ))、厚みについての記載(上記(カ))、食品接触層の樹脂組成物の配合量についての記載(上記(オ))、コの字状シール部についての記載(上記(キ))を踏まえれば、以下の発明が記載されていると認める。
<引用発明>
「少なくとも非鉄系酸素吸収性樹脂層と、食品接触層と、を有するシーラントであって、前記シーラント同士を、食品接触層を内側にして熱接着したとき、23℃におけるシール強度が23~100N/15mmであり、かつ、90℃におけるシール強度が5~25N/15mmであり、前記食品接触層が、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と、プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)と、ブテン-1を15質量%以上含有するエチレン-ブテン-1共重合体と、を含有する樹脂組成物であって、前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)が、プロピレン単独重合体またはエチレン含量が2質量%以下のプロピレン-エチレン共重合体よりなるプロピレンブロック(I)65~85質量%と、エチレン含量が20~95質量%のエチレン-プロピレン共重合体ブロック(II)15~35質量%と含有し、前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)が、プロピレン単独重合体またはエチレン含量が2質量%以下のプロピレン-エチレン共重合体よりなるプロピレンブロック(III)85~95質量%と、エチレン含量が20~95質量%のエチレン-プロピレン共重合体ブロック(IV)5~15質量%とを含有し、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)の含量を25~50質量%、プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)の含量を25~70質量%、エチレン-ブテン-1共重合体の含量を5~30質量%の範囲内とする樹脂組成物からなり、その厚みは5~60μmであって、前記非鉄系酸素吸収性樹脂層が、共役ジエン重合体環化物からなる酸素吸収剤と基材樹脂とを含む樹脂組成物からなる、シーラントを用いた積層体を用いた電子レンジ用包装袋であって、電子レンジ用包装袋においては、コの字状シール部を、胴部シール部と連結して設け、これにより、電子レンジで加熱すると、コの字状シール部に圧力が集中してかかるため、コの字状シール部の縁部からシール剥離して、未シール部内に形成される切欠等を通って、内容物より発生する蒸気を速やかに袋外に排出することができる、電子レンジ用包装袋。」
(2) 引用文献6、7
ア 引用文献6の記載事項
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令和6年3月8日付けの拒絶理由通知書に記載の拒絶の理由において引用した引用文献6には、以下の記載がある。
「3.レトルト食品包装用フィルム(1)レトルト食品包装用CPPフィルムの種類・・・(3)ハイレトルト用CPPフィルム当社では、レトルト食品が市場に出始めた頃よりレトルト食品用にCPPフィルムの開発と改良を続けており、現在は表3にあるグレードを展開している。・・・[図:0001421664000002.jpg]・・・パウチの最内層で使用されるCPPフィルムは、シーラントであり、安定したシール強度であることが基本である(図2)。[図:0001421664000003.jpg]」(第77ページ左欄下から8行目~第78ページ左欄下から5行目)
「図3は、高温雰囲気下のヒートシール強度の低下を調べたデータである。最近増えている電子レンジ加熱で蒸気を抜くようなパウチを設計する場合、80~100℃雰囲気下のシール強度を参考に、袋の内圧の上昇に合わせてヒートシール部の抜けやすいタイプを選択することも可能である。[図:0001421664000004.jpg]」(第78ページ左欄下から1行目~右欄5行目)
「さらに、「ZK500」は相溶化材の技術を進化させ、その相溶化材を添加することを前提に、原料メーカーでブロックコポリマーも開発し、その組み合わせによってZK207を大幅に超える低温衝撃性の改良を実現した。低温衝撃性を改良したZK207でも、ガラス転移点の低い直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)の低温衝撃性には及ばなかったが、ZK500はL-LDPEをも超える低温落袋強度を実現することができた(図6)。このことにより、これまで使用するのが難しかった業務用の大型袋(缶詰代替)や、ラミネート構成の変更[CPPフィルムのゲージダウン(図7)、二軸延伸ナイロンフィルムのゲージダウン(図8)]も可能と考えている。」(第79ページ左欄4行目~15行目)
イ 引用文献7の記載事項
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令和6年3月8日付けの拒絶理由通知書に記載の拒絶の理由において引用した引用文献7には、以下の記載がある。
「2.レトルト食品包装用フィルムの技術(1)レトルト食品包装用CPPフィルムの種類・・・(3)ハイレトルト用CPPフィルム当社では、レトルト食品が市場に出始めた頃よりレトルト食品用にCPPフィルムの開発と改良を続けており、現在は表6にあるグレードを展開している。・・・[図:0001421664000005.jpg]ZK99Sは、ブロックコポリマーの特長を活かしたヒートシール強度の高いグレードで、海外にも広く展開している(図8)。図9は、高温雰囲気下のヒートシール強度の低下を調べたデーターで、電子レンジで蒸気を抜くようなパウチを設計する場合、内圧の上昇に合わせてヒートシール部の抜けやすさを選択することも可能である。」(第7ページ1行目~第8ページ下から4行目)
「[図:0001421664000006.jpg][図:0001421664000007.jpg]」(第9ページ)
「ZK500は更に相溶化材の技術を進化させ、その相溶化材を添加することを前提にしたブロックコポリマーを開発し、その組み合わせで、ZK207を大幅に超える低温衝撃性の改良を実現している。低温衝撃性を改良したブロックコポリマーでも直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)の低温衝撃性には及ばないレベルであったが、ZK500はL-LDPEを超える低温落袋強度を実現することが出来た(図12)。このことにより、これまで使用するのが難しかった業務用の大型袋(缶詰代替)や、ラミネート構成の変更(CPPフィルムのゲージダウン:図13、二軸延伸ナイロンフィルムのゲージダウン)も可能である(図14)。」(第10ページ3行目~下から1行目)
「[図:0001421664000008.jpg]」(第11ページ)
「(5)今後の展望樹脂ブレンドの技術を活かして低温での衝撃強度を大幅に改良したハイレトルト用ZK500やセミレトルト用9951を展開することにより、これまでCPPフィルムでは実用出来なかった大袋の用途での使用、破袋率の低減、ラミネート構成材見直し(ゲージダウン)などに活用頂けるものと考えている(図21)。」(第15ページ)
ウ 引用文献6及び7に記載された技術的事項
上記ア及びイの記載から、引用文献6及び7には、次の技術的事項(以下、「引用文献6及び7に記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「ハイレトルト用無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)、いわゆる「シーラントフィルム」として「ZK500」が、これまでのCPPフィルムでは実現できなかった大袋用途への展開や、破袋率の低減、ラミネート構成変更によるゲージダウンなどに活用できるものであって、当該「ZK500」の23℃におけるシール強度が51~52N/15mm程度で、90℃におけるシール強度が9~10N/15mm程度で、100℃におけるシール強度が7~8N/15mm程度であること(引用文献6の図3及び引用文献7の図9「高温雰囲気下のヒートシール強度の低下」参照)、及び、その厚みが50~70μmのものがあること(引用文献6の図7及び引用文献7の図13「落袋強度のCPP厚み依存性」参照)。」
2 本願発明について
(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「コの字状シール部を、胴部シール部と連結して設け、これにより、電子レンジで加熱すると、コの字状シール部に圧力が集中してかかるため、コの字状シール部の縁部からシール剥離して、未シール部内に形成される切欠等を通って、内容物より発生する蒸気を速やかに袋外に排出することができる」「電子レンジ用包装袋」は、引用文献1の図3の記載も合わせてみれば、本願発明の「シール部は、前記袋の外縁に位置する外縁シール部と、前記外縁シール部よりも前記収容部の中心点側に位置し、前記収容部の圧力の増加により剥離する蒸気抜きシール部と、を有」する「収容部を有する袋」に相当する。
引用発明の「非鉄系酸素吸収性樹脂」、「食品接触層」は、引用発明が「食品接触層を内側にして熱接着」するものであるから、それぞれ、本願発明の「シーラントフィルムよりも外面側に位置する少なくとも1つのプラスチックフィルム」、「シーラントフィルム」に相当し、引用発明の「シーラントを用いた積層体」が、本願発明の「積層体」に相当する。そして、引用発明の「シーラント同士を、食品接触層を内側にして熱接着」することは、本願発明の「一対の前記積層体の内面同士を接合するシール部と、を備え」ていることに相当する。
引用発明の食品接触層を構成する樹脂組成物における「プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)」と「プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)」が、本願発明の「第1の熱可塑性樹脂」である「プロピレン・エチレンブロック共重合体」に相当する。
引用発明の食品接触層を構成する樹脂組成物における「ブテン-1を15質量%以上含有するエチレン-ブテン-1共重合体」が、本願発明の「第2の熱可塑性樹脂」である「α-オレフィン共重合体」に相当する。そして、引用発明の「プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)の含量を25~50質量%、プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)の含量を25~70質量%、エチレン-ブテン-1共重合体の含量を5~30質量%の範囲内」は、その含量の数値範囲からして、本願発明の「前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、前記第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高い」ことに相当する。
そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「収容部を有する袋であって、前記袋の内面に位置し、単一の層からなるシーラントフィルムと、前記シーラントフィルムよりも外面側に位置する少なくとも1つのプラスチックフィルムと、を含む積層体と、一対の前記積層体の内面同士を接合するシール部と、を備え、前記シール部は、前記袋の外縁に位置する外縁シール部と、前記外縁シール部よりも前記収容部の中心点側に位置し、前記収容部の圧力の増加により剥離する蒸気抜きシール部と、を有し、前記シーラントフィルムは、第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂を含む層を備え、前記第1の熱可塑性樹脂は、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなり、前記第2の熱可塑性樹脂は、α-オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含み、前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、前記第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高い、袋。」
【相違点】
本願発明は、シーラントフィルムに関して、「流れ方向における前記シーラントフィルムの引張伸度(%)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、45000以上であり、」「未延伸フィルムである」と特定するとともに、「100℃のときの前記シール部の、15mm幅におけるシール強度が15N/15mm以下であり、前記シール強度は、前記積層体から構成される試験片に、加熱温度121℃、加熱時間40分、圧力0.2MPaの処理を加えた後に測定され」と特定するのに対し、引用発明は、シーラントフィルムの厚みや流れ方向における引張伸度(%)は不明であり、シール強度については、「23℃におけるシール強度が23~100N/15mmであり、かつ、90℃におけるシール強度が5~25N/15mmである」との特定である点。
(2) 判断
以下、相違点について検討する。
引用文献6及び7には、上記1(2)ウのとおり、ハイレトルト用無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)、いわゆる「シーラントフィルム」として「ZK500」が、これまでのCPPフィルムでは実現できなかった大袋用途への展開や、破袋率の低減、ラミネート構成変更によるゲージダウンなどに活用できることが記載されている。
また、引用文献6及び7には、「電子レンジで蒸気を抜くようなパウチ」に利用するシーラントフィルムについて記載されているのであるから、「電子レンジでの加熱時に内圧により容易に剥離するシーラント」を提供することを目的とする引用発明と、課題が共通するものである。
そうすると、引用発明のシーラント部分となる食品接触層を構成するシーラントフィルムとして、引用文献6及び7に記載の技術事項を適用しようとする動機がある。
ここで、包装袋において、破裂しないようにすることは自明な課題であり、また、一般的にフィルムの引張伸度や厚みを増加させれば衝撃への耐性が高まるという周知技術を踏まえれば、使用態様に応じた条件の範囲内においてシーラントフィルムの引張伸度や厚みを増加させようと検討することは当業者であれば当然に行うことであり、その際、シーラントフィルムの引張伸度や厚みについて、流れ方向におけるシーラントフィルムの引張伸度(%)とシーラントフィルムの厚み(μm)の積で規定すること、及び当該積の数値範囲を決定することは、当業者であれば適宜なし得たことである。そして、引用文献6及び7における、「ZK500」の破断伸度が920%、厚みが50μmであるところ、この数値の積が46000(=920×50)であることを踏まえれば、「流れ方向における前記シーラントフィルムの引張伸度(%)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、45000以上」とした本願発明の数値範囲は何ら特別なものとは認められない。
また、引用発明の「電子レンジでの加熱時に内圧により容易に剥離するシーラント」を提供するという目的を踏まえれば、「前記積層体から構成される試験片に、加熱温度121℃、加熱時間40分、圧力0.2MPaの処理を加えた後に測定され」たシール強度であって、「100℃のときの前記シール部の、15mm幅におけるシール強度」の数値範囲を決定することは、当業者であれば適宜なし得たことにすぎない。ここで、引用文献6及び7に記載の技術事項の「ZK500」は、本願明細書において実施例A4等で使用されているシーラントフィルムであることから、「前記積層体から構成される試験片に、加熱温度121℃、加熱時間40分、圧力0.2MPaの処理を加えた後に測定された」シール強度は、実施例A4(本願明細書の図12、図13参照)と同程度である蓋然性が高いといえ、さらに、引用文献6の図3及び引用文献7の図9において、100℃におけるシール強度が7~8N/15mm程度であることからみて、本願発明の、「前記積層体から構成される試験片に、加熱温度121℃、加熱時間40分、圧力0.2MPaの処理を加えた後に測定され」たもので「100℃のときの前記シール部の、15mm幅におけるシール強度が15N以下」という数値範囲が特別なものとは認められない。
以上のことから、相違点に係る本願発明の構成は、引用発明及び引用文献6及び7に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
(3) 審判請求人の主張の検討
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審判請求人は、当審からの拒絶理由に対する令和6年5月1日提出の意見書において、理由2(引用文献1に基づく進歩性)の拒絶理由に対して、概略、以下のア及びイの主張をする。
ア シール強度はシーラント層を構成するフィルムによってのみ決まるものではなく、シール温度によっても左右され、引用文献1のシーラント層に当該ZK500を採用しても、引用文献6に記載のシール温度を採用できるとは限らないから、シール強度が重複することだけをもって、ZK500を採用しようとする動機は生じない旨。
イ 引用文献1のシーラント層は、食品接触層だけでなく、非鉄系酸素吸収性樹脂層を有するものであり、引用文献1では、これら2層のシーラント層は、共押出しで作製されているものしか記載がないから、食品接触層のみをZK500に置き換えて、その上に非鉄系酸素吸収性樹脂層を形成することを当業者は容易に想到し得ない旨。
以下、上記主張について検討する。
<主張アについて>
上記2(2)で検討したとおり、引用文献6及び7には、「電子レンジで蒸気を抜くようなパウチ」に利用するシーラントフィルムについて記載され、「電子レンジでの加熱時に内圧により容易に剥離するシーラント」を提供することを目的とする引用発明と、課題が共通するものであるから、引用発明に、引用文献6及び7に記載の技術事項を適用しようとする動機がある。そして適用する際に、使用態様に応じた条件の範囲内において数値を適宜最適化することは当業者であれば当然に行うことである。したがって、請求人の主張は採用できない。
<主張イについて>
電子レンジ用包装袋用の積層体を製造するにあたって、共押出で製造することと、複数のシートを接着して製造することは共に当業者にとって周知の製造方法である。そして、引用文献1の段落【0065】には「本発明のシーラント10は共押出成形にて好適に製造することができる」と記載され、共押出は製造方法の例示として記載されているのであるから、引用発明におけるシーラントを製造するにあたって共押出が必須の方法とまでは認められない。よって、引用文献1に共押出による製造法しか記載がないからといって、当業者がそれしか想定できないとの主張は採用できない。
(4) 小括
よって、本願発明の上記相違点に係る構成は、引用発明及び引用文献6及び7に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、その効果について検討しても、引用文献1及び引用文献6及び7の記載から当業者が予測し得るものであって、格別のものがあるとは認められない。
3 本願発明についてのまとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献6及び7に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-020067