特許拒絶査定不服審判
2022-019932
二軸配向ポリプロピレンフィルム
- 審判番号
- 2022-019932
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-184988外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月08日
- 審決日
- 2024年10月17日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東洋紡株式会社
- 分類
- P18 .121-Z (C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第126条第7項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-184988「二軸配向ポリプロピレンフィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月13日出願公開、特開2018-141122〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年9月26日(優先権主張平成29年2月28日)に出願された特願2017-184988号に係る特許出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成31年 2月15日 : 手続補正書の提出
令和 3年 9月17日付け : 拒絶理由通知
3年11月17日 : 意見書及び手続補正書の提出
4年 3月18日付け : 拒絶理由通知
4年 5月20日 : 意見書及び手続補正書の提出
4年 9月30日付け : 拒絶査定
4年12月 8日 : 本件審判請求及び手続補正書の提出(以下、この手続補正書によりなされた手続補正を「本件補正」という。)
第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正による補正の内容について
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
フィルムを構成する、共重合成分を含まない完全ホモポリプロピレン樹脂及び/又はエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを共重合したポリプロピレン樹脂からなるポリプロピレン樹脂が下記1)~4)の条件を満たすこと、及び、
フィルムの面配向係数の下限が0.0125であること、
フィルムの横方向の引張弾性率が5.0GPa以上であること、
フィルムの縦方向および横方向の150℃での熱収縮率が8%以下であることを特徴とする二軸配向延伸ポリプロピレンフィルム。
1)メソペンタッド分率の下限が96%です。
2)プロピレン以外の共重合モノマー量の上限が0.1mol%である。
3)質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3.0以上、5.4以下である。
4)230℃、2.16kgfで測定されるメルトフローレート(MFR)が6.5g/10min以上、9.0g/10min以下である。」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年5月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
フィルムを構成する、共重合成分を含まない完全ホモポリプロピレン樹脂及び/又はエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを共重合したポリプロピレン樹脂からなるポリプロピレン樹脂が下記1)~4)の条件を満たすこと、及び、フィルムの面配向係数の下限が0.0125であること、フィルムの横方向の引張弾性率が5.0GPa以上であることを特徴とする二軸配向延伸ポリプロピレンフィルム。
1)メソペンタッド分率の下限が96%です。
2)プロピレン以外の共重合モノマー量の上限が0.1mol%である。
3)質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3.0以上、5.4以下である。
4)230℃、2.16kgfで測定されるメルトフローレート(MFR)が6.5g/10min以上、9.0g/10min以下である。」
2 補正の適否
本件補正による請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である二軸配向延伸ポリプロピレンフィルムの物性に関して、さらに、フィルムの縦方向および横方向の150℃での熱収縮率が8%以下であることを特定する補正であって、審判請求人が審判請求書で主張するとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、この補正は、本願当初明細書の特許請求の範囲の請求項3、段落【0043】~【0045】に基づくものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてするものであって、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
また、本件補正後の請求項1に関する補正は、特別な技術的特徴を変更(シフト補正)しようとするものではなく、同条4項の規定に適合している。
そして、上記特許請求の範囲の減縮を目的とする補正の場合には、特許法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か)について検討を要するところ、以下、検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2) 引用文献の記載事項と引用発明
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2015/012324号(平成27年1月29日公開。以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、下線については当審において付与したものである。
・「請求の範囲
[請求項1] 以下の要件(a)~(c)を満たすプロピレン系重合体を用いた延伸フィルムであり、かつ、以下の要件(d)及び(e)を満たすことを特徴とする延伸ポリプロピレンフィルム。
(a)メソペンタッド分率が96%以上である。
(b)プロピレン以外のコモノマーの含有量が0.5モル%以下である。
(c)メルトフローレート(MFR)が0.5g/10分以上、20g/10分以下である。
(d)広角X線散乱法により測定されるポリプロピレンのα型結晶の110面の散乱強度を方位角に対してプロットした時の最大ピークの半値幅が30度以下である。
(e)示差走査熱量計を用いて昇温速度20℃/分で測定された融解吸熱ピーク面積(全融解熱)が115J/g以上であり、かつ、150℃以下の面積(150℃融解熱)の全融解熱に対する比(150℃融解熱/全融解熱)が0.12以下である。
・・・
[請求項4] 150℃におけるTD方向の熱収縮率及び150℃におけるMD方向の熱収縮率が共に10%以下である請求項1~3のいずれかに記載の延伸ポリプロピレンフィルム。」
・「[0010] 本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、150℃でポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに匹敵する低収縮率を有し、高剛性である延伸ポリプロピレンフィルムを提供することにある。」
・「[0018](ポリプロピレン樹脂)
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂は特に制約はなく、例えば、プロピレン単独重合体や、エチレンおよび/または炭素数4以上のα―オレフィンとの共重合体を用いることができる。
フィルムを構成するポリプロピレン樹脂としては、実質的にコモノマーを含まないプロピレン単独重合体が好ましく、コモノマーを含む場合であっても、コモノマー量は0.5モル%以下である。コモノマー量の上限は、好ましくは0.3モル%であり、さらに好ましくは0.1モル%である。・・・
[0019](ポリプロピレン樹脂の立体規則性)
フィルムを構成するポリプロピレン樹脂の立体規則性の指標である13C-NMRで測定されるメソペンタッド分率の下限は96%である。メソペンタッド分率の下限は、好ましくは96.5%であり、より好ましくは97%である。」
・「[0022](ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート)
ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kgf)の下限は0.5g/10分である。MFRの下限は、好ましくは1.0g/10分であり、より好ましくは1.3g/10分であり、さらに好ましくは1.5g/10分であり、さらに好ましくは2.0g/10分であり、特に好ましくは4.0g/10分であり、好ましくは6.0g/10分である。上記範囲であると機械的負荷が小さく、押出や延伸が容易となることがある。MFRの上限は20g/10分であり、好ましくは17g/10分であり、より好ましくは16g/10分であり、さらに好ましくは15g/10分である。上記範囲であると延伸が容易となったり、厚み斑が小さくなったり、延伸温度や熱固定温度が上げられやすく熱収縮率がより低くなることがある。」
・「[0026] 本発明に用いるポリプロピレン樹脂は、一般的に分子量分布の広さの指標である質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の下限が、好ましくは4であり、より好ましくは4.5であり、さらに好ましくは5であり、特に好ましくは5.5であり、最も好ましくは6である。Mw/Mnの上限は、好ましくは30であり、より好ましくは25であり、さらに好ましくは22であり、特に好ましくは21であり、最も好ましくは20である。Mw/Mnが上記範囲であると、現実的な製造が容易である。
なお、ポリプロピレンの分子量分布は、異なる分子量の成分を多段階に一連のプラントで重合したり、異なる分子量の成分をオフラインで混錬機にてブレンドしたり、異なる性能をもつ触媒をブレンドして重合したり、所望の分子量分布を実現できる触媒を用いたりすることで調整することが可能である。」
・「[0038](フィルム物性)
本発明の延伸ポリプロピレンフィルムは、以下のような物性を示す。なお、以下の各物性は、例えば実施例で後述する方法で測定、評価することができる。
(熱収縮率)
本発明の延伸ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を主体として構成された延伸フィルムであって、150℃でのMD方向およびTD方向の熱収縮率が10%以下であることが好ましい。ここで、MD方向とは、フィルムの流れ方向(長さ方向または長手方向と言うこともある)であり、TD方向とは、フィルムの流れ方向に垂直な方向(横方向または幅方向と言うこともある)である。従来の延伸ポリプロピレンフィルムでは、MD方向およびTD方向の150℃熱収縮率は15%以上であり、120℃熱収縮率は3%程度である。熱収縮率を10%以下とすることで、耐熱性の優れたフィルムを得ることができる。
[0039] 本発明の延伸ポリプロプレンフィルムのMD方向およびTD方向の150℃熱収縮率の下限は、好ましくは0.2%であり、より好ましくは0.3%であり、さらに好ましくは0.5%であり、特に好ましくは0.7%であり、最も好ましくは1.0%である。150℃熱収縮率が上記範囲であると、コスト面などで現実的な製造が容易となったり、厚みムラが小さくなったりすることがある。MD方向およびTD方向の150℃熱収縮率の上限は、好ましくは10%であり、より好ましくは9%であり、さらに好ましくは8%であり、特に好ましくは7%であり、最も好ましくは5%である。150℃熱収縮率が上記範囲であると、150℃程度の高温に晒される可能性のある用途や加工で使用がより容易になる。なお、150℃熱収縮率は1.5%程度までなら、例えば、低分子量成分を多くする、延伸条件や熱固定条件を調整することで可能であるが、1.5%以下に下げるには、オフラインでアニール処理を施すなどすることが好ましい。」
・「[0042](ヤング率)
・・・
[0043] 本発明の延伸ポリプロピレンフィルムが二軸延伸フィルムである場合、TD方向のヤング率(23℃)の下限は、好ましくは3.8GPaであり、より好ましくは4GPaであり、さらに好ましくは4.1GPaであり、特に好ましくは4.2GPaである。TD方向のヤング率の上限は、好ましくは8GPaであり、より好ましくは7.5GPaであり、さらに好ましくは7GPaであり、特に好ましくは6.5GPaである。TD方向のヤング率が上記範囲であると、現実的な製造が容易であったり、MD-TDバランスが良化することがある。なお、ヤング率は、例えば延伸倍率を高くすることで高めることができ、また、MD-TD延伸の場合はMD延伸倍率を低めに設定し、TD延伸倍率を高く設定することなどで、TD方向のヤング率を大きくすることができる。」
・「[0047](面配向係数)
本発明の延伸ポリプロプレンフィルムの面配向係数の下限は、好ましくは0.0125であり、より好ましくは0.0126であり、さらに好ましくは0.0127であり、特に好ましくは0.0128である。面配向係数の上限は、現実的な値として、好ましくは0.0155であり、より好ましくは0.0150であり、さらに好ましくは0.0148であり、特に好ましくは0.0145である。面配向係数は、延伸倍率の調整により範囲内とすることができる。面配向係数がこの範囲であると、フィルムの厚みムラも良好である。」
・「[0080](実施例1)
ポリプロピレン樹脂として、Mw/Mn=7.7、Mz+1/Mn=140、MFR=5.0g/10分、メソペンタッド分率[mmmm]=97.3%であるプロピレン単独重合体(日本ポリプロ(株)製「ノバテック(登録商標)PP SA4L」:共重合モノマー量は0モル%;以下「PP-1」と略する)を用いた。
このポリプロピレン樹脂を、60mm押出機を用いて、250℃でTダイよりシート状に押出し、30℃の冷却ロールで冷却固化した後、135℃で長さ方向(MD方向)に4.5倍に縦延伸し、次いで両端をクリップで挟み、熱風オーブン中に導いて、170℃で予熱後、160℃で横方向(TD方向)に8.2倍に横延伸し、次いで6.7%のリラックスを掛けながら168℃で熱処理した。その後、フィルムの片面にコロナ処理を行い、ワインダーで巻き取って、本発明の延伸ポリプロピレンフィルムとした。
得られたフィルムの厚みは20μmであった。表1にフィルムを構成するポリプロピレンの構造を、表2に製膜条件をそれぞれ示す。得られたフィルムの物性は、表3に示すとおりであり、熱収縮率は低く、ヤング率は高かった。また、このフィルムの示差走査熱量測定(DSC)で得られたチャートを図2に示す。
・・・
[0085](実施例6)
ポリプロピレン樹脂として、Mw/Mn=4.0、Mz+1/Mn=23、MFR=6.0g/10分、[mmmm]=98.7%であるプロピレン単独重合体(共重合モノマー量は0モル%;以下「PP-4」と略する)を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
得られたフィルムの厚みは20μmであった。表1にフィルムを構成するポリプロピレンの構造を、表2に製膜条件をそれぞれ示す。得られたフィルムの物性は、表3に示すとおりであった。」
・「[0090]
[表1]
[図:0001417951000001.jpg]
」
・「[0092]
[表3]
[図:0001417951000002.jpg]
」
・「産業上の利用可能性
[0093] 本発明のポリプロピレンフィルムは、包装用途、工業用途などに広く使用することができるが、特に高剛性であるため薄肉化が可能であり、コストダウン、軽量化を図ることができる。また、本発明のポリプロピレンフィルムは、耐熱性が高いため、コートや印刷時に高温での処理が可能となり、生産の効率化や従来用いられにくかったコート剤やインキ、ラミネート接着剤などを用いることができる。さらには、本発明のポリプロピレンフィルムは、コンデンサーやモーターなどの絶縁フィルム、太陽電池のバックシート、無機酸化物のバリアフィルム、ITOなどの透明導電フィルムのベースフィルムにも適する。」
イ 引用文献1に記載された発明
上記アの記載を参酌しつつ、特許請求の範囲に記載されている発明の実施例である実施例6(請求の範囲、[0080]、[0085]、[表1]、[表3])に着目すると、引用文献1には、実施例6として記載されている延伸ポリプロピレンフィルムとして、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「ポリプロピレン樹脂として、Mw/Mn=4.0、Mz+1/Mn=23、メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kgf)=6.0g/10分、メソペンタッド分率[mmmm]=98.7%であるプロピレン単独重合体(共重合モノマー量は0モル%)を60mm押出機を用いて、250℃でTダイよりシート状に押出し、30℃の冷却ロールで冷却固化した後、135℃で長さ方向(MD方向)に4.5倍に縦延伸し、次いで両端をクリップで挟み、熱風オーブン中に導いて、170℃で予熱後、160℃で横方向(TD方向)に8.2倍に横延伸し、次いで6.7%のリラックスを掛けながら168℃で熱処理し、その後、フィルムの片面にコロナ処理を行い、ワインダーで巻き取って得られた延伸ポリプロピレンフィルムであって、当該延伸フィルムの150℃におけるTD方向の熱収縮率は9.0%、MD方向の熱収縮率が5.2%であり、面配向係数が0.014であり、フィルムのTD方向のヤング率が5.0GPaである、延伸ポリプロピレンフィルム。」
(3) 本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「ポリプロピレン樹脂」である「プロピレン単独重合体(共重合モノマー量は0モル%)」は、本件補正発明の「共重合成分を含まない完全ホモポリプロピレン樹脂」に相当する。
また、引用発明の当該「ポリプロピレン樹脂」は、本件補正発明における「1)メソペンタッド分率の下限が96%です。2)プロピレン以外の共重合モノマー量の上限が0.1mol%である。3)質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3.0以上、5.4以下である。」という条件を満たしている。
イ 引用発明の「延伸ポリプロピレンフィルム」は、縦方向と横方向に延伸されているから、本件補正発明の「二軸配向延伸ポリプロピレンフィルム」に相当するとともに、「面配向係数が0.014」であるから、本件補正発明の「フィルムの面配向係数の下限が0.0125であること」という条件を満たす。
また、引用発明の「フィルムのTD方向のヤング率」は、本件補正発明における「フィルムの横方向の引張弾性率」に相当するところ、その値は「5.0GPa」であるから、本件補正発明における「フィルムの横方向の引張弾性率が5.0GPa以上であること」という条件を満たす。
さらに、引用発明の「MD方向」はフィルムの縦方向を意味するところ、「延伸フィルムの150℃における」熱収縮率は、「MD方向」で5.2%であるから、本件補正発明における「フィルム」の熱収縮率に関し、縦方向に限り「150℃での熱収縮率が8%以下であること」という条件を満たす。
ウ そうすると、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
「フィルムを構成する、共重合成分を含まない完全ホモポリプロピレン樹脂及び/又はエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを共重合したポリプロピレン樹脂からなるポリプロピレン樹脂が下記1)~3)の条件を満たすこと、及び、
フィルムの面配向係数の下限が0.0125であること、
フィルムの横方向の引張弾性率が5.0GPa以上であること、
フィルムの縦方向の150℃での熱収縮率が8%以下である二軸配向延伸ポリプロピレンフィルム。
1)メソペンタッド分率の下限が96%です。
2)プロピレン以外の共重合モノマー量の上限が0.1mol%である。
3)質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3.0以上、5.4以下である。」
<相違点1>
フィルムを構成するポリプロピレン樹脂の物性である230℃、2.16kgfで測定されるメルトフローレート(MFR)に関し、本件補正発明は、「6.5g/10min以上、9.0g/10min以下である」と特定するのに対し、引用発明は、「6.0g/10分」である点。
<相違点2>
二軸配向延伸ポリプロピレンフィルムの物性であるフィルムの横方向の150℃での熱収縮率に関し、本件補正発明は、「8%以下である」と特定するのに対し、引用発明は、「9.0%」である点。
(4) 判断
ア 相違点1について
上記(2)ア[0022]に記載がみられるように、メルトフローレートは、押出機の負荷や延伸の容易性等を考慮して当業者が適宜設定すべき事項であり、実際に利用する押出機のスクリュー形状やシリンダーの加熱状況、ダイの形状等に応じて、流動性改良剤の利用等に左右されるものである。そうすると、当該段落に記載されているとおり、メルトフローレートを0.5~20g/10min程度の範囲内で調整し、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が適宜なし得る事項である。そして、本件補正発明において、メルトフローレートを「6.5g/10min以上、9.0g/10min以下」とすることによって、臨界的な意義や当業者の予想を超える顕著な効果を奏しているともいえない。
イ 相違点2について
引用文献1の段落[0038]~[0039]には、フィルムの縦方向と横方向の熱収縮率を下げることで耐熱性に優れたフィルムを得ることができる一方、コスト面や厚みムラの面から下限を設けることが記載されている。その上で、縦方向と横方向の熱収縮率の上限として、5~10%が良いことが記載されている。そうすると、当業者であれば、耐熱性、コスト、厚みムラ等の観点から縦方向と横方向の熱収縮率の上限を5~10%程度で調整し、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到するものである。そして、本件補正発明において、特に「8%以下」とすることによる臨界的な意義や当業者の予想を超える顕著な効果も見いだせない。
ウ 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、引用文献1にはパラメータすべてが本願請求項1に記載の数値範囲内であるものを開示しておらず、これらを本願請求項1に記載の数値範囲であるものとする動機付けもない旨主張している。
しかし、上記イのとおり、本件補正発明と引用発明との相違点に係るパラメータを調整することに関し、引用文献1にはその動機付けとなる記載がみられる。加えて、本件補正発明は、包装用途はじめ、コンデンサー等種々の利用に道を開くものと主張しているが、主張する用途は、そもそも引用文献1の段落[0093]に記載されている。
エ 以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年12月8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~5に係る発明は、令和4年5月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由の概要
本願発明に関する原査定の拒絶の理由は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができない、というものである。
引用文献1:国際公開第2015/012324号
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の2で検討した本件補正発明から、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「二軸配向延伸ポリプロピレンフィルム」に関し、「フィルムの縦方向および横方向の150℃での熱収縮率が8%以下である」という事項を削除したものである。
そして、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに当該事項を付加した本件補正発明が上記第2の2で検討したとおり引用文献1に記載された発明に基いてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も引用文献1に記載された発明に基いてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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