特許拒絶査定不服審判
2022-019354
アド・トラック
- 審判番号
- 2022-019354
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-140244
- 請求日
- 2022年11月30日
- 審決日
- 2024年09月24日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社エクスプロア
- 【請求人代理人】友野 英三
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 殿川 雅也
- 審判官 門 良成
- 分類
- P18 .121-WZ (G09F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-140244「アド・トラック」拒絶査定不服審判事件〔令和2年1月30日出願公開、特開2020-16776〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年7月26日に出願したものであって、令和4年4月11日付けで拒絶理由が通知され、同年6月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月22日付け(送達日:同年8月30日)で拒絶査定された。これに対し、同年11月30日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出された。
その後、当審において、令和5年9月26日付けで拒絶理由が通知され、令和5年12月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和6年4月16日付けで拒絶理由が通知され、令和6年6月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明について
本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和6年6月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
トラックの箱型荷台と、
前記トラックの前記箱型荷台の上に設置されて現実空間映像と重畳できる疑似立体映像を表示する機能を備えた疑似立体映像表示装置と
を備え、
前記疑似立体映像表示装置は、
前記トラックの前記箱型荷台の床面に設置される平面状映像表示部と、
前記平面状映像表示部の上方に前記平面状映像表示部と略45度をなして配置される透明板よりなるハーフミラーと、
前記ハーフミラーに平面状映像画面を反射させることにより空間中に疑似立体映像を表示させる映像表示機構と
を備え、
前記トラックの前記箱型荷台上の前記疑似立体映像表示装置の後方に存在し前記トラックの前面からは透けて見える舞台装置を含む前記現実空間映像と前記疑似立体映像とを組み合わせて得られる疑似立体映像が前記トラックの前記箱型荷台内部の空間であってかつ前記平面状映像表示部上の空間に存在するかのように前記トラックの前記箱型荷台の平面とほぼ同一平面の目線から観測する観客もしくは看者に観測させることで拡張現実的表現を持つ広告宣伝を行うことを可能とする
ことを特徴とするアド・トラック。」
第3 当審における拒絶の理由
当審が通知した拒絶理由のうちの理由1は、次のとおりである。
1.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、下記1ないし3の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開平2-55385号公報
引用文献2:FORUM 8,“Up&Coming 2015年 バックナンバー”, [online], 2016年4月7日, FORUM 8, [2023年9月4日検索], インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20160407164829/https://www.forum8.co.jp/topic/uandc2015.htm>
引用文献3:町田,“3Dコンテンツニュース 本物のホログラフィーを求めて”, [online], 2015年4月1日, FORUM 8, [2023年9月4日検索], インターネット<https://web.archive.org/web/20181111042744/https://www.forum8.co.jp/topic/3Dcontents109.htm>
第4 引用文献
1 引用文献1
(1)引用文献1記載事項
本願の出願前である平成2年2月23日に頒布された刊行物である特開平2-55385号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
ア 「産業上の利用分野
この発明は、一般的にいって、サウンド(音)と映像(ビジョン)とを共用して、広告、宣伝をしたり娯楽をたのしむ多目的なサウンド・ビジョン共用装置の改良にかんし、とくに、トラック型の自動車に載置して上記の用途に使用できる上記形式の装置の改良にかんするものである。」(第1頁右欄第17行ないし第2頁左上欄第3行)
イ 「さて、第1図において、1は大型トラックの全体を示した側面図であって、…5aはフロアデッキ、5bはそれに多数の蝶着点100で蝶着された側板で、水平になるまで横に倒すとフロアデッキ5aの横方向延長部となる。」(第3頁左上欄第1行ないし同頁同欄第7行)
ウ 「7は車台スペースを開閉可能にカバーするようにした横断面が大きな直角アングル状のカバー体でトラックの横断面方向において左右1対設けられ、油圧シリンダもしくはエアシリンダ(いずれも図示せず)で開閉し、たとえば第1図にあらわれているもの(トラックのうしろから見て左側部のdの)を、たとえば120°程度開放すると、第1図の手前側が開放され、うしろ側が閉じた舞台がシャーシー上に展開され、いろいろのショーを演ずることができる。
なお、トラックの後端部は通例のように、左右1対の大きな観音開きの扉で開閉自在になっているが、その図示は省略した。
6はトラックの先頭部2の、直背部のところにおいて、車台スペース上の前端部に設けられたサウンド・ビジョン視聴セクション(以下には単に「視聴セクション」と略称する)であり、その固定配置の外枠部材6aには、…テレビ受像機の正面ガラスに似た形の曲面ガラス6bが設けられ、…あたかも、いちじるしく大型のテレビを登載しているかのように見える。」(第3頁左上欄第18行ないし同頁左下欄第3行)
エ 「とくに第1図の10はテレビの映像ディスプレイ用のユニット体で…全体として該紙面に対して直角方向において水平の方向に、移動可能に配設されている。」(第3頁左下欄第13行ないし同欄第20行)
オ 「なお、固定配置の曲面ガラス6bは外見上、4基のテレビ受像機をカバーする大きさを持っているので、トラック全体が走行中も停止中も超大型テレビを装備しているように見えるので、それ自体ですこぶる宣伝効果があることが試運転の結果、判明している。」(第4頁左上欄第9行ないし同欄第14行)
カ 「第1図
[図:0001416988000001.jpg]
」
キ 「第2図
[図:0001416988000002.jpg]
」
上記アないしキを、次のとおり整理する。
ク 上記ア及びイに記載された「広告、宣伝、娯楽の用途に使用できるサウンド・ビジョン共用装置を載置したトラック型の自動車である大型トラック1」は、「広告、宣伝、娯楽に用いられる大型トラック1」といえる。
ケ 上記イ及びウに、「フロアデッキ5a及びサウンド・ビジョン視聴セクション6」を備えた大型トラック1が記載されている。
コ 上記イに、「水平になるまで横に倒すとフロアデッキ5aの延長部になる側板5b」が記載されている。
サ 上記ウに、トラックの「後端部に左右1対の大きな観音開きの扉」を設けることが記載されている。
シ 上記ウに、「車台スペースを開閉可能にカバーするようにした横断面が大きな直角アングル状のカバー体7がトラックの横断面方向において左右1対設けられており、カバー体7を120°程度開放すると、舞台がシャーシー上に展開されてショーを演ずる」ことが記載されている。
ス 上記ウないしオの記載から、引用文献1に「サウンド・ビジョン視聴セクション6は、4基のテレビ受像機からなるユニット体10と、これらをカバーする曲面レンズ6bを備えて構成され、もって、大型テレビを装備しているように見え、宣伝効果を奏する」ことが記載されている。
また、上記カの第1図及びキの第2図から次の事項が認定できる。
セ 上記エを踏まえれば、上記カの第1図及びキの第2図から、「サウンド・ビジョン視聴セクション6に映像ディスプレイ用のユニット体10が配設」されていることが看取できる。
ソ 上記ケ、コ、シを踏まえれば、上記カの第1図記載の大型トラック1では、「カバー体7を120°程度開放し、側板5bを水平になるまで横に倒すと、フロアデッキ5a上が舞台となってショーを演ずる」ことができることが認められる。
タ 上記ウを踏まえれば、上記カの第1図及びキの第2図から、「サウンド・ビジョン視聴セクション6が、そのトラック側面の一方側が外枠6a及び曲面ガラス6bであり、さらに天井及びトラック前面側が板状部材」であることが看取できる。
チ 上記コ、サ及びシを踏まえれば、上記カの第1図から、トラックの「フロアデッキ5aの上方に、カバー体7、扉、側板5bが設けられている車台スペース、及び、サウンド・ビジョン視聴セクション6が載置」されていることが看取できる。
(2)引用発明1
上記(1)クないしスの記載事項及び上記(1)セないしチの認定事項から、引用文献1に次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
フロアデッキ5a及びサウンド・ビジョン視聴セクション6と((1)ケ)、
後端部に左右1対の大きな観音開きの扉と((1)サ)、を備え、
サウンド・ビジョン視聴セクション6に映像ディスプレイ用のユニット体10が配設されており((1)セ)、
車台スペースを開閉可能にカバーするようにした横断面が大きな直角アングル状のカバー体7がトラックの横断面方向において左右1対設けられており、カバー体7を120°程度開放し、側板5bを水平になるまで横に倒すと、フロアデッキ5a上が舞台となってショーを演ずることができ((1)シ、ソ)、
サウンド・ビジョン視聴セクション6が、そのトラック側面の一方側が外枠6a及び曲面ガラス6bであり、さらに天井及びトラック前面側が板状部材であり((1)タ)、
フロアデッキ5aの上方に、カバー体7、扉、側板5bが設けられている車台スペース、及び、サウンド・ビジョン視聴セクション6が載置され((1)チ)、
サウンド・ビジョン視聴セクション6は、4基のテレビ受像機からなるユニット体10と、これらをカバーする曲面レンズ6bを備えて構成され、もって、大型テレビを装備しているように見え、宣伝効果を奏する((1)ス)、
広告、宣伝、娯楽に用いられる大型トラック1((1)ク)。
2 引用文献2
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった“Up&Coming 2015年 バックナンバー”, [online], 2016年4月7日, インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20160407164829/https://www.forum8.co.jp/topic/uandc2015.htm>(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)引用文献2は、URL中に含まれる「20160407164829」から判断できる「WayBackMachine」(https://web.archive.org)への保存日からみて、遅くとも2016年4月7日に公知になったものである。
(2)「■ Up&Coming No.109 '15 春の号 (2015.04.01)」に「●3Dコンテンツニュース・Vol.14 本物のホログラフィーを求めて」との記事が掲載されていることが示されている。
3 引用文献3
(1)引用文献3記載事項
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった“3Dコンテンツニュース 本物のホログラフィーを求めて”, [online], 2015年4月1日, インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20181111042744/https://www.forum8.co.jp/topic/3Dcontents109.htm>(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「さまよえるホログラフィー
『ホログラフィー』とはこのように、3次元像を記録する(写真のように光の強さだけでなく、光の方向までも記録する)ことができる技術の名称(写真でいうとフォトグラフィ)で、それを実現するためにレーザー光を使用した様々な手法が出てきたわけです。そしてこのようにして記録されたもの(写真でいうとフォトグラフ)を『ホログラム』といいます。・・・『単なる見た目(なんちゃって)ホログラフィー』にもかかわらず、・・・この『なんちゃってホログラフィー』の多くは、『ペッパーズ・ゴースト』と呼ばれる昔からある舞台演出の手法や単なる透過型フィルムをハーフミラーとして背後と合成しているものにすぎません。」
イ 「偽物?のホログラフィー
簡単にいうと透過するフィルムや幕、ガラスなどに映像を映し、背景と合成されて見せる技術です。
この原理は、舞台演出として1860年代に考案されたもので、考案者(特許取得)のJohn Pepperの名をとって、ペッパーズ・ゴースト(Pepper's ghost)と呼ばれ大流行したとのことです。
観客側から見て45度にガラスを置き、ちょうどガラスに映り込む舞台のそでなどに合成したい対象を置き、その対象に明かりを当てると写りこみ、明かりを消すといなくなるという効果を利用しています。 この時舞台への照明の明暗も調整すれば、観客からは幽霊が消えたり出たり、物を透過して移動するなどの効果が得られます。(参考:Wikipedia)」
ウ 「
[図:0001416988000003.jpg]
」
エ 「この舞台そでの幽霊が立つ位置を、舞台手前の床や天井に移し、しかも幽霊事態をディスプレイやプロジェクタに変えることで、最近ライブなどで多用されるようになった踊りと映像を一体化させるような演出が可能となります。」
オ 上記アから、ホログラフィーは3次元像を記録する技術であるが、「ペッパーズ・ゴースト」は、3次元像を記録する技術ではなく、「単なる見た目の3次元像表示技術」にすぎないことが認められる。
カ 上記イを踏まえれば、「フィルムや幕、ガラスなど」に映像を映して背景と合成するので、上記ウの「床型」図面から、平面状の映像表示器(ディスプレイ)が舞台の床に設置されて、映像表示器の上方に存在するガラス又は透明な反射フィルムをハーフミラーとして、舞台の背景又は実物と映像表示器に表示された映像が合成されることが看取できる。
キ 上記2(2)からみて、引用文献3は2015年4月1日に公知になったものと認められる。
(2)引用発明2
上記(1)アないしエの記載事項及び上記(1)オないしキの認定事項からみて、引用文献3には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
単なる見た目の3次元像表示技術に関し、舞台の床に設置された平面状の映像表示器の上方に、観客側から見て45度の角度をもって、ガラス又は透明な反射フィルムをハーフミラーとして置き、映像表示器に合成したい映像を表示して舞台の背景又は実物と合成することにより、ライブなどで多用されるようになった踊りと映像を一体化させるような演出を可能とする、装置。
第5 対比・判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明1を以下のとおり対比する。
ア 引用発明1の「大型トラック1」は、広告・宣伝に用いられる点で、後述する相違点を除き、本願発明の「アド・トラック」に相当する。
イ 引用発明1の「フロアデッキ5a」は、本願発明の「荷台」に相当し、その「上方にカバー体7、扉、側板5bが設けられている車台スペース、及び、サウンド・ビジョン視聴セクション6が載置され」ているから、引用発明1が、本願発明の「荷台」の「床面」を備えていることは、明らかである。
ウ 本願発明の「疑似立体映像表示装置」と引用発明1の「映像ディスプレイ用のユニット体10」とは、「映像表示装置」である点で共通する。すると、引用発明1の「ユニット体10」はサウンド・ビジョン視聴セクション6に配設されて、このサウンド・ビジョン視聴セクション6がフロアデッキ5aの上方に載置されているので、上記イを踏まえれば、本願発明の「アド・トラック」と引用発明1の「大型トラック1」は、「映像表示装置」が「荷台の床面に設置され」ている点で一致している。
エ 上記ウを踏まえると、本願発明の「疑似立体映像表示装置」と引用発明1の「映像ディスプレイ用のユニット体10」とは、「前記トラックの前記荷台の床面に設置された映像表示装置」である点で一致している。
オ 引用発明1の「映像ディスプレイ用のユニット体10」を備えて構成される「サウンド・ビジョン視聴セクション6」は、「大型テレビを装備しているように見え、宣伝効果を奏する」ものである。
また、引用発明1において、大型トラック1が広告、宣伝に用いられるものであって、この大型トラック1が備える「フロアデッキ5a」(荷台)も、その上が舞台となってショーを演ずることができるものなので、広告宣伝に利用されて宣伝効果を奏するものといえる。
そうすると、本願発明の「アド・トラック」と引用発明1の「大型トラック1」とは、トラックの荷台と映像表示装置を備えることで「広告宣伝を行うことを可能とした」点で一致する。
(2)したがって、本願発明と引用発明1を対比すると、両者は、
[一致点]
「トラックの荷台と、
前記トラックの前記荷台の床面に設置された映像表示装置と
を備えることで広告宣伝を行うことを可能としたアド・トラック。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本願発明は、「トラックの箱型荷台」を有するのに対し、引用発明1は、「荷台」である「フロアデッキ5aの上方に、カバー体7、扉、側板5bが設けられている車台スペース」と「トラック側面の一方側が外枠6a及び曲面ガラス6bで覆われており、さらに天井及びトラック前面側が板状部材で覆われ」た「サウンド・ビジョン視聴セクション6」が載置されているものの、これが「トラックの箱型荷台」であるか定かでない点。
[相違点2]
本願発明は、トラックの荷台の上に「現実空間映像と重畳できる疑似立体映像を表示する機能を備えた疑似立体映像表示装置」が設置されて「前記疑似立体映像表示装置は、 前記トラックの前記箱型荷台の床面に設置される平面状映像表示部と、 前記平面状映像表示部の上方に前記平面状映像表示部と略45度をなして配置される透明板よりなるハーフミラーと、 前記ハーフミラーに平面状映像画面を反射させることにより空間中に疑似立体映像を表示させる映像表示機構」(スペースは改行を示す。)を備えて、「前記トラックの前記箱型荷台上の前記疑似立体映像表示装置の後方に存在し前記トラックの前面からは透けて見える舞台装置を含む前記現実空間映像と前記疑似立体映像とを組み合わせて得られる疑似立体映像が前記トラックの前記箱型荷台内部の空間であってかつ前記平面状映像表示部上の空間に存在するかのように前記トラックの前記箱型荷台の平面とほぼ同一平面の目線から観測する観客もしくは看者に観測させることで拡張現実的表現を持つ広告宣伝を行う」ものであるのに対し、引用発明1は、大型トラックの荷台である「フロアデッキ5a」の上に「映像ディスプレイ用ユニット体10」が設置されて、「映像ディスプレイ用ユニット体10」を用いて広告宣伝を行うものにとどまる点。
2 判断
(1)相違点1について
引用発明1の「カバー体7、扉、側板5bが設けられている車台スペース」は、「車台スペース」が「カバー体7、扉、側板5b」で「囲まれて」いるとみることができるので、引用発明1の「フロアデッキ5a」及びその上方の「車台スペース」は、本願発明の「箱型荷台」といえるから、この点は実質的な相違点ではない。あるいは、仮に相違点とみた場合であっても、引用発明1の当該構成に基づいて「箱型荷台」とすることは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。
また、仮に引用発明1の「フロアデッキ5a」、「車台スペース」及び「サウンド・ビジョン視聴セクション6」全体を「荷台」とみた場合に、「トラック側面の一方側が外枠6a及び曲面ガラス6bであり、さらに天井及びトラック前面側が板状部材」である「サウンド・ビジョン視聴セクション6」のトラック側面の反対側が板状部材であるか定かでないが、トラックの荷台の側面全体を板状部材で囲うことは技術常識であるから、引用発明1の大型トラックの荷台の側面全体を板状部材で囲って「箱型荷台」にすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
(2)相違点2について
ア 引用発明2について検討する。
イ 本願明細書の「第2の疑似立体映像表示装置5も、看者等にハーフミラー52を通して後方に実在する舞台装置や人物を視認可能ならしめるため」(【0028】)との記載を踏まえると、本願発明の「現実空間映像」は、舞台の人物等の実物を視認することを含むから、引用発明2の「映像表示器」に表示された映像と合成される「舞台の背景又は実物」は、本願発明の「現実空間映像」に相当する。
ウ 引用発明2の「装置」が表示する「映像」は、「単なる見た目の3次元像表示技術」を用いて表示された映像、すなわち擬似的な立体映像であるから、「映像表示器」が表示する「映像」は「疑似立体映像」といえる。したがって、上記イを踏まえれば、引用発明2の「映像表示器」が表示する「映像」は、「舞台の背景又は実物」と合成(重畳)できる「疑似立体映像」にあたるので、本願発明の「現実空間映像と重畳できる疑似立体映像」に相当する。
エ 上記ウを踏まえれば、引用発明2の「装置」は、映像表示器に表示した映像と舞台の背景又は実物を合成して「疑似立体映像」を表示する装置であるから、本願発明の「疑似立体映像表示装置」にあたる。
オ 引用発明2の「装置」の「平面状の映像表示器」は舞台の床に設置されて、その上方に観客側から見て45度の角度をもって、ガラス又は透明な反射フィルムがハーフミラーとして置かれているから、この「ガラス又は透明な反射フィルム」は、本願発明の「前記平面状映像表示部の上方に前記平面状映像表示部と略45度をなして配置される透明板よりなるハーフミラー」に相当する。
カ 引用発明2の「床に設置された平面状の映像表示器の上方に、観客側から見て45度の角度をもって」置かれた「ガラス又は透明な反射フィルム」からなる機構は、「ガラス又は透明な反射フィルム」が「映像表示器」に表示した映像を反射して後方の「舞台の背景又は実物」と合成して「疑似立体映像」を表示するものであるので、本願発明の「前記ハーフミラーに平面状映像画面を反射させることにより空間中に疑似立体映像を表示させる映像表示機構」に相当する。
キ 引用発明2の「舞台の背景又は実物」は「装置」の後方に存在して観客から「ガラス又は透明な反射フィルム」を通して透けて、かつ、「映像表示器」が表示する映像と合成されて観客に見えることになるので、本願発明と引用発明2は、ともに、「前記疑似立体映像表示装置の後方に存在し」前記観客もしくは看者から「透けて見える舞台装置を含む前記現実空間映像と前記疑似立体映像とを組み合わせて得られる疑似立体映像」を「観測する観客もしくは看者に観測させることで拡張現実的表現」を実現するものである。
ク 上記カ、キを踏まえれば、引用発明2では、舞台の背景又は実物がガラス又は透明な反射フィルムを透過した映像と、映像表示器が表示する映像が平面状の画像表示器の上方に観客側から見て45度の角度をもって置かれたガラス又は透明な反射フィルムに反射された映像が、合成されて疑似立体映像が表示されるので、この疑似立体映像は、「平面状映像表示部上の空間に存在するかのように」観測されることになる。
ケ 引用発明2は、「映像表示器」が表示する「映像」と「舞台の背景又は実物」を「合成」して観客に見せる「装置」であるから、その目的からして、観客から「映像表示器」が直接見えないこと、及び、観客から「舞台の背景又は実物」が見えることが要求されることは、当然のことである。
したがって、引用発明2において、観客から「映像表示器」が直接見えないように、かつ、観客から「舞台の背景又は実物」が見えるように、観客が、床面と「ほぼ同一平面の目線から観測する」ことは、当業者が当然になすことである。
コ 引用発明2の「平面状の映像表示器」は、床に設置されているから、本願発明1の「床面に設置される平面状映像表示部」といえ、上記ケを踏まえれば、この「床面」の「平面」は、本願発明の「観客もしくは看者」が「観測」する「目線」と「ほぼ同一」の「平面」に対応する。
サ 引用発明1が「フロアデッキ5a」上に「映像ディスプレイ用のユニット体10」を備えて、舞台としての「フロアデッキ5a」及び「映像ディスプレイ用のユニット体10」が広告及び宣伝に用いられるものであり、広告及び宣伝において演出効果を高めることは当然考慮すべき課題であるところ、演出効果を高めるために従来からよく知られた技術である、引用発明2の「映像表示器に合成したい映像を表示して舞台の背景又は実物と合成する」機構を、引用発明1の「舞台」及び「映像ディスプレイ用のユニット体10」に対して採用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
シ そして、上記キないしコを踏まえれば、引用発明2の「装置」をトラックの荷台に設置すると、必然的に「前記トラックの」「荷台上の前記疑似立体映像表示装置の後方に存在し前記トラックの前面からは透けて見える舞台装置を含む前記現実空間映像と前記疑似立体映像とを組み合わせて得られる疑似立体映像」を、「前記トラックの」「荷台内部の空間」に「存在するかのように前記トラックの前記箱型荷台の平面とほぼ同一平面の目線から観測する観客もしくは看者に観測させる」ことになる。
ス 以上のことから、引用発明2は相違点2に係る構成を備えており、引用発明1及び引用発明2に基づいて、上記相違点2の構成を備えるようになすことは、当業者が容易に想到し得るものである。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、令和6年6月24日に意見書を提出して、「(C)拒絶理由(進歩性)の解消について(あ)補正後請求項1」において、概略次のとおり主張している。
イ 主張1
「補正後請求項1に係る『前記トラックの前記箱型荷台上の前記疑似立体映像表示装置の後方に存在し前記トラックの前面からは透けて見える舞台装置を含む前記現実空間映像と前記疑似立体映像とを組み合わせて得られる疑似立体映像が前記トラックの前記箱型荷台内部の空間であってかつ前記平面状映像表示部上の空間に存在するかのように前記トラックの前記箱型荷台の平面とほぼ同一平面の目線から観測する観客もしくは看者に観測させることで拡張現実的表現を持つ広告宣伝を行うことを可能とする』との技術思想は、明らかに、引用文献1~3には開示も示唆もされておりません。」
ウ 主張2
「補正後請求項1に係る発明では、上記構成を備えるがゆえに、アド・トラックの『空間中に広告宣伝用立体映像を出現させることができ、該疑似立体表示装置を通して背部の実景が見え』、『広告宣伝を行う演者との協同等を目に見える形で体現するため、高い広告宣伝効果が得られ』ることから、『アド・トラックを広告宣伝用の小舞台装置として活用し、大きな効果をあげることもできる』(原明細書の第0018、第0019段落)という本願独自の効果が奏されることとなります。この点を補足するに、上述した本願独自の構成は、単にトラックの荷台を舞台として用いるという思想と、疑似立体映像表示装置に係る技術思想とを組み合わせるというだけでは足りず、両者を組み合わせる動機付けが必要であるものと思料いたします。なぜなら、この点にこそ、本願発明者の見出した課題とその解決手段との必然的な組み合わせが生ずるものであり、かかる課題を解決したいとの起因がない限り上記構成を有する本願発明は生まれ得ないと考えられるからです。この点の動機付けに該当する事実や考え方は、いずれの上記引用文献にも開示も示唆もありません。したがって、この点からも、引例1~3に基づく進歩性は否定されるべきではないと思料いたします。」
エ 主張1について
上記(2)ク、シで説示したとおり、引用発明1に引用発明2を適用すれば、必然的に「前記現実空間映像と前記疑似立体映像とを組み合わせて得られる疑似立体映像が前記トラックの」「荷台内部の空間であってかつ前記平面状映像表示部上の空間に存在するかのように」「観客もしくは看者に観測させる」ことになるから、請求人による主張1は採用できない。
オ 主張2について
上記(2)サで説示したとおり、引用発明1は、「フロアデッキ5a」上に「映像ディスプレイ用のユニット体10」備えて、舞台としての「フロアデッキ5a」及び「映像ディスプレイ用のユニット体10」が広告及び宣伝に用いられるアド・トラックに関し、また、引用発明2は、舞台の演出効果を高める技術に関し、両発明は舞台に係る技術である点で共通する。しかも、引用発明2は、「ライブで多用されるようになった踊りと映像を一体化させるような演出を可能」するために用いられる、よく知られた技術であるので、広告及び宣伝に用いられるアド・トラックに係る発明である引用発明1に対して、その舞台における演出効果を高めるために引用発明2を適用する動機付けがある。
カ 次に、アド・トラックの空間中に広告宣伝用立体映像を出現させることができ、該疑似立体表示装置を通して背部の実景が見え、広告宣伝を行う演者との協同等を目に見える形で体現するため、高い広告宣伝効果が得られる、との本願発明の効果について検討すると、
(ア)アド・トラックの空間中で行われる広告宣伝の演出を高める効果は、引用発明1から予測し得る程度のものにすぎない。
(イ)疑似立体表示装置を通して背部の実景が見え、演者との協同等を目に見える形で体現できる効果は、引用発明2から予測し得る程度のものにすぎない。
から、請求人による主張2は採用できない。
キ 以上のとおりであるから、請求人の上記主張1及び主張2はいずれも採用できない。
3 小括
本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1及び引用文献3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-019354