2022-019067
作業負荷装置マスキング
- 審判番号
- 2022-019067
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-211996外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年11月28日
- 審決日
- 2023年09月19日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
- 【請求人代理人】山本 修
- 【請求人代理人】宮前 徹
- 【請求人代理人】松尾 淳一
- 【請求人代理人】大房 直樹
- 分類
- P18 .121-Z (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
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本願は、令和2年12月22日(パリ条約による優先権主張2019年12月23日、欧州特許庁)の出願であって、令和3年12月17日付けで拒絶理由が通知され、令和4年3月18日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月21日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)されたのに対し、同年11月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後、審判請求書に対する手続補正書(方式)が令和5年1月10日に提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~15に係る発明は、令和4年3月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】実験室の作業負荷に基づいて、複数の分析装置(15)および前記複数の分析装置(15)に接続された制御装置(20)を有する実験室(10)における分析装置の使用を最適化する方法であって、前記方法が、a)前記制御装置(20)によって、現在の実験室の作業負荷を判定することと、b)前記制御装置(20)によって、前記現在の実験室の作業負荷が閾値基準を下回っており、前記複数の分析装置(15)に2つ以上の分析装置がある場合、前記複数の分析装置(15)から1つの分析装置を引いた作業負荷能力を計算することと、c)前記制御装置(20)によって、前記現在の作業負荷が前記複数の分析装置(15)から1つの分析装置を引いたものによって満たされる場合、前記複数の分析装置(15)のうちの1つをマスキングすることと、d)前記制御装置(20)によって、前記複数の分析装置(15)に現在の作業負荷を続行させることと、e)前記現在の実験室の作業負荷が完了するまで、ステップa)からd)を繰り返すことを含む、方法。」
第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。
1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願(優先日)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1~4、6~15
・引用文献1
本願発明(請求項1に係る発明)については、要すれば、「依頼検体の数は分析装置の作業負荷であることが明らかであるから、依頼検体の数を判定して所望の基準との比較に応じて複数の分析装置の動作台数を制御することに想到し本願の請求項1に係る発明の構成となすことは、当業者には容易になし得たことである。」「したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1により、進歩性を有しない。」と指摘している。
・請求項5
・引用文献1、2
<引用文献等一覧>
1.特開平11-316236号公報
2.特表2015-517670号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献1について
1 記載事項
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本願の優先日前に頒布された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、下線は、下記2で記載する引用発明の認定に関与する部分として当審が付与したものである。
(引1ア)
「【0006】本発明の目的は、複数の分析装置を備えた分析システムを用いる際に、依頼検体数の増減に対応できるように運転状態の分析装置の数を変えることができる多検体分析システムを提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】本発明は、搬送ラインに沿って配置された分析装置にラック送出部からの検体ラックを該搬送ラインにより搬送し、該分析装置により多検体を分析処理する多検体分析システムにおいて、同じ検体種を扱う複数の分析装置に、同一種の特定分析項目のために使用される試薬を重複させて収納し、各分析装置の運転の起動及び停止を指示するための指示手段を備え、運転停止された分析装置を除く残りの分析装置に対して搬送ラインを介して検体ラックを搬送するように制御することを特徴とする。」
(引1イ)
「【0009】本発明の望ましい実施例では、指定分析装置の決定が、制御装置により自動的になされるか、又は操作者によって操作部から分析装置の使用優先順位を指示することによりなされる。」
「【0014】制御装置は、全体制御用コンピュータ40と、各分析装置に対応して設けられた分析装置側コンピュータ6A~6Gと、フロッピーディスクメモリ41を有する。分析装置側コンピュータ6A~6Gは各分析装置の光度計からの出力信号の処理を分担し、それらに接続された全体制御用コンピュータ40は各分析部の動作,ラック搬送系の動作及びシステム内の必要部分の動作制御をすると共に、各種情報処理に必要な演算及び制御を実行する。コンピュータ間の役割分担はこのようなものに限られず、構成上の必要性に応じて種々の態様に変更でき、あるいは全体制御用コンピュータ40のみを用いて分析装置側コンピュータを不要にすることも可能である。全体制御用コンピュータ40には、記憶部45が具備され、データ入力用の操作部42,情報を画面表示するためのCRT43及び測定結果を出力できるプリンタ44が接続されている。」
(引1ウ)
「【0026】各分析装置3A~3Gの試薬供給部に試薬ボトルが収納されるのに伴って各試薬ボトルの試薬識別情報が分析装置番号と対応づけられて全体制御用コンピュータ40に登録される。この場合、同じ検体種を扱う同じグループの複数の分析装置に同一種の分析項目用の試薬が収納される。例えば、血清検体の場合には3A,3B,3Cの分析装置が同じグループとして扱われるが、その内、分析装置3Aの試薬供給部32には、例えば検体依頼数の多い肝機能検査項目であるGOT,GPT及び緊急検査項目であるカルシウム,UA,BUNのための試薬ボトルが収納され、分析装置3Bの試薬供給部26には、例えば肝機能検査項目であるGOT,GPT及び検査依頼数の少ない他の分析項目のための試薬ボトルが収納され、分析装置3Cの試薬供給部27には、例えば緊急検査項目であるカルシウム,UA,BUN及び検査依頼数の少ない他の分析項目のための試薬ボトルが収納される。従って、肝機能検査項目は2台の分析装置3A及び3Bによって分析処理可能になり、緊急検査項目は2台の分析装置3A及び3Cによって分析処理可能になる。何台の分析装置にどのような分析項目用の試薬を重複させて収納するかは、それぞれの施設の検査室の実情に応じて操作者により決定される。」
「【0030】さらに、検体識別情報の読取りに伴って検体番号及び分析項目の登録状況が照合され、検体ラック1上の各検体のために測定指示されている分析項目が判定され、各検体の各分析項目が分析装置3A,3B及び3Cの内のいずれかによって分析処理すべきかが、全体制御用コンピュータ40によって判断される。この場合、全体制御用コンピュータ40は、各分析装置に対して既に分析処理が指示されている分析項目数及びそれらの検体の分注終了までにどの程度の時間を要するかを監視している。特に、複数の分析装置による分析処理が可能な特定の分析項目に関しては、いずれの分析装置によって該分析項目を分析処理させるのが効率的であるかが判断される。例えば、特定分析項目であるGOT及びGPTに関し、その時点で処理待ち検体数が最も少ない分析装置は3Aと3Bのいずれであるかが判断され、待ち時間の少ない方が指定分析装置とされる。このような複数の分析装置同士の多忙度の程度に応じて特定分析項目を分析処理すべき分析装置を自動的に指定する方法以外に、操作者が予め操作部42から各分析項目の処理に使用すべき分析装置の優先順位を入力しておく指定方法も可能である。」
(引1エ)
「【0036】図1の実施例装置では、各分析装置3A~3Gに対し、それぞれの運転の起動及び停止を操作部42のキイ操作によって指示することができ、このような操作部からの指示情報に基づいて全体制御用コンピュータ40は、運転停止された分析装置を除く残りの分析装置だけにラック送出部17からの検体ラック1を主搬送ライン20を介して搬送せしめる。特に、夜間のように、依頼検体数が少なく緊急を要する検体の検査業務が主となる時間帯の場合には、例えば、血清検体用の分析装置3C(すなわち、ピペッタ方式の分析装置)と尿検体用の分析装置3Gだけを運転状態にし、残りの分析装置を停止せしめるように運用できる。依頼検体数が増大する時間帯には、停止していた複数の分析装置が再稼働される。また、図1の実施例装置では、いずれかの分析装置に異常事態が発生して当該分析装置による分析処理が不能になった場合に、同じ分析処理を別の分析装置によって肩代わりするように制御装置が別の分析装置への検体ラックの搬送と別の分析装置による分析処理を指示する。例えば、2台の分析装置3Bと3Cに複数の分析項目用の試薬を重複してセットしておくことにより、複数の分析項目に対する分析操作を中断せずに分析処理することができる。」
「【0038】【発明の効果】本発明によれば、複数の分析装置を搬送ラインに沿って配置した多検体分析システムを用いる際に、依頼検体数が増大又は減少する時間帯に応じてシステム内で運転状態にする分析装置の数を変えることができる。」
(引1オ)図1には、以下の図面が記載されている。
「 【図1】[図:0001407351000001.jpg]」
2 引用発明について
(1)記載事項の整理
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ア 上記(引1イ)の【0014】における「全体制御用コンピュータ40と、各分析装置に対応して設けられた分析装置側コンピュータ6A~6Gと、フロッピーディスクメモリ41を有する。分析装置側コンピュータ6A~6Gは各分析装置の光度計からの出力信号の処理を分担し、それらに接続された全体制御用コンピュータ40は各分析部の動作,ラック搬送系の動作及びシステム内の必要部分の動作制御をする」及び「全体制御用コンピュータ40のみを用いて分析装置側コンピュータを不要にすることも可能である」との記載によれば、各分析装置に接続された全体制御用コンピュータ40があり、そして、(引1ウ)の【0026】に「何台の分析装置にどのような分析項目用の試薬を重複させて収納するかは、それぞれの施設の検査室の実情に応じて操作者により決定される。」と記載されていることから、分析装置及び全体制御用コンピュータ40は検査室にあるといえる。
イ 上記アを踏まえると、引用文献1(特に下線部参照)には、次の発明が記載されていると認められる。なお、分析装置の符号以外の符号は略して記載する。
「搬送ラインに沿って配置された分析装置にラック送出部からの検体ラックを該搬送ラインにより搬送し、該分析装置により多検体を分析処理する多検体分析システムにおいて、同じ検体種を扱う複数の分析装置に、同一種の特定分析項目のために使用される試薬を重複させて収納し、各分析装置の運転の起動及び停止を指示するための指示手段を備え、運転停止された分析装置を除く残りの分析装置に対して搬送ラインを介して検体ラックを搬送するように制御する複数の分析装置を備えた分析システムを用いる際に、依頼検体数の増減に対応できるように運転状態の分析装置の数を変える方法であって、検査室に複数の分析装置及び各分析装置に接続された全体制御用コンピュータがあり、各検体の各分析項目が分析装置3A,3B及び3Cの内のいずれかによって分析処理すべきかが、全体制御用コンピュータによって判断され、特に、複数の分析装置による分析処理が可能な特定の分析項目に関しては、いずれの分析装置によって該分析項目を分析処理させるのが効率的であるかが判断され、血清検体の場合には3A,3B,3Cの分析装置が同じグループとして扱われ、緊急検査項目は2台の分析装置3A及び3Cによって分析処理可能であり、全体制御用コンピュータは、運転停止された分析装置を除く残りの分析装置だけにラック送出部からの検体ラックを主搬送ラインを介して搬送せしめ、夜間のように、依頼検体数が少なく緊急を要する検体の検査業務が主となる時間帯の場合には、血清検体用の分析装置3Cと尿検体用の分析装置3Gだけを運転状態にし、残りの分析装置を停止せしめるように運用でき、依頼検体数が増大する時間帯には、停止していた複数の分析装置が再稼働される、方法。」(以下「引用発明」という。)
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)本願発明の「実験室」について、本願明細書の【0014】に「実験室の複数の分析装置によって処理される生物学的試料に関連するデータを含み得る。データ管理ユニットは、LIS(検査情報システム)および/またはHIS(病院情報システム)に接続され得る。」と記載されており、実験室の複数の分析装置によって処理されるデータは「検査」情報でもあることから、本願発明の「実験室」は「検査室」ともいえるものである。そうすると、引用発明の「検査室」は、本願発明の「実験室(10)」に相当する。
また、引用発明の「分析装置」、「全体制御用コンピュータ」及び「依頼検体数」は、本願発明の「分析装置(15)」、「制御装置(20)」及び「作業負荷」に相当する。
(2)そして、引用発明の「依頼検体数の増減に対応できるように運転状態の分析装置の数を変える」ことは、本願発明の「作業負荷に基づいて」「分析装置の使用を最適化する」ことに相当することから、引用発明の「依頼検体数の増減に対応できるように」「複数の分析装置及び各分析装置に接続された全体制御用コンピュータがあ」る「検査室」における「運転状態の分析装置の数を変える方法」は、本願発明の「実験室の作業負荷に基づいて、複数の分析装置(15)および前記複数の分析装置(15)に接続された制御装置(20)を有する実験室(10)における分析装置の使用を最適化する方法」に相当する。
(3)ステップa)について
引用発明の「依頼検体数の増減に対応」するということは、現在の「依頼検体」の「数」を判定しているといえることから、引用発明の「全体制御用コンピュータによって」「依頼検体数の増減に対応」することは、本願発明の「制御装置(20)によって、現在の実験室の作業負荷を判定すること」に相当する。
(4)ステップb)について
本願発明の「複数の分析装置(15)」は、本願明細書の【0029】に「最初に図1を参照すると、図1は、複数の分析装置15を含む実験室10を示している。複数の分析装置15は、それらが一般に試料に対して同じタイプのテストを実行することができるという点で類似し得る。」と記載されているものである。
そこで、引用発明の「緊急検査項目は2台の分析装置3A及び3Cによって分析処理可能であり、」「全体制御用コンピュータによって」「夜間のように、依頼検体数が少なく緊急を要する検体の検査業務が主となる時間帯の場合には、血清検体用の分析装置3Cと尿検体用の分析装置3Gだけを運転状態にし、残りの分析装置を停止せしめるように運用でき、依頼検体数が増大する時間帯には、停止していた複数の分析装置が再稼働される」ことにおいて、試料に対して同じタイプのテストを実行することができるという観点から、緊急検査項目の分析処理可能な2台の分析装置3A及び3Cに着目すると、「依頼検体数が少な」い場合に、「分析装置3C」「だけを運転状態にし、残りの分析装置を停止せしめる」ことは、「緊急検査項目の」ある「依頼検体」に対して「分析装置3C」だけを「運転状態にし」、「分析装置3A」は「停止」させるということである。これは、「分析装置3A及び3Cによって分析処理可能」な「緊急検査項目の」ある「検体数」を閾値とすると、「依頼検体数」がその閾値を下回っているということである。そうすると、引用発明の上記記載は、緊急検査項目の分析処理可能な2台の分析装置3A及び3Cに着目すると、本願発明の「現在の実験室の作業負荷が閾値基準を下回っており、前記複数の分析装置(15)に2つ以上の分析装置がある場合」があるといえる。
(5)ステップc)について
まず、本願発明の「分析装置」「をマスキングする」とは、本願明細書の【0048】に「実験室の作業負荷が軽減されると、第2の分析装置によって実行される作業負荷の量も、第1の分析装置が実験室の作業負荷全体を単独で処理できるようになるまで低下する。その時点、図4のポイントAで、第2の分析装置はマスキングされる、つまり、第2の分析装置は分析する試料を受け入れなくなるか、または、言い換えると、電源オフになり、第1の分析装置が実験室の作業負荷全体を処理する。」(【0048】)と記載されていることであるから、引用発明の「分析装置を停止」させることと技術的に同じ意味である。
上記(4)で摘記した引用発明の「緊急検査項目は2台の分析装置3A及び3Cによって分析処理可能であり、」「全体制御用コンピュータによって」「夜間のように、依頼検体数が少なく緊急を要する検体の検査業務が主となる時間帯の場合には、血清検体用の分析装置3Cと尿検体用の分析装置3Gだけを運転状態にし、残りの分析装置を停止せしめるように運用でき、依頼検体数が増大する時間帯には、停止していた複数の分析装置が再稼働される」ことにおいて、同様に、緊急検査項目の分析処理可能な2台の分析装置3A及び3Cに着目すると、「分析装置3C」「だけを運転状態にし、残りの分析装置を停止せしめる」ことは、「緊急検査項目の」ある「依頼検体」に対して「分析装置3C」だけを「運転状態にし」、「分析装置3A」は「停止」させるということであるから、「緊急検査項目の」ある「依頼検体数」が「分析装置3C」で「分析処理可能」な数以下である(満たす)といえる。
そうすると、引用発明の「緊急検査項目は2台の分析装置3A及び3Cによって分析処理可能であり、」「全体制御用コンピュータによって」「夜間のように、依頼検体数が少なく緊急を要する検体の検査業務が主となる時間帯の場合には、血清検体用の分析装置3Cと尿検体用の分析装置3Gだけを運転状態にし、残りの分析装置を停止せしめるように運用でき」ることは、本願発明の「制御装置(20)によって、前記現在の作業負荷が前記複数の分析装置(15)から1つの分析装置を引いたものによって満たされる場合、前記複数の分析装置(15)のうちの1つをマスキングすること」に相当する。
(6)ステップd)について
本願発明の「複数の分析装置(15)に現在の作業負荷を続行させること」について、本願明細書には、【0004】に「複数の分析装置(15)に現在の作業負荷を続行させること」と同じ記載があるのみで、具体的な記載はないことから、その文意どおりに解すると、「複数の分析装置(15)」は、「マスキング」した「分析装置」を含むものと解されることから、引用発明の「全体制御用コンピュータによって」「依頼検体数が増大する時間帯には、停止していた複数の分析装置が再稼働される」ことが、本願発明の「制御装置(20)によって、前記複数の分析装置(15)に現在の作業負荷を続行させること」に相当するといえる。
また、仮に、「複数の分析装置(15)」が、「マスキング」した「分析装置」を除いたものと解したとしても、引用発明の「全体制御用コンピュータによって」「夜間のように、依頼検体数が少なく緊急を要する検体の検査業務が主となる時間帯の場合には、血清検体用の分析装置3Cと尿検体用の分析装置3Gだけを運転状態にし、残りの分析装置を停止せしめる」ことが、本願発明の「制御装置(20)によって、前記複数の分析装置(15)に現在の作業負荷を続行させること」に相当するといえる。
(7)ステップe)について
本願発明の「前記現在の実験室の作業負荷が完了するまで、ステップa)からd)を繰り返すこと」について、本願明細書には、【0034】に「この方法は、実験室ワークフローの処理を通して繰り返される。ただし、ステップ220で、単一の分析装置が現在の実験室の作業負荷の需要を満たすことができなくなったと判断された場合、他の分析装置のマスキングを解除する、つまり電源を入れ、現在の実験室の作業負荷の需要を満たすために動作に戻ることができる。方法は、実験室ワークフローの処理が完了するまで繰り返される。」、【0038】に「この方法は、実験室ワークフローの処理を通して繰り返される。ただし、ステップ320で、減少した数の分析装置が現在の実験室の作業負荷の需要を満たすことができなくなったと判断された場合、マスキングされた分析装置のマスキングを解除する、つまり電源を入れ、現在の実験室の作業負荷の需要を満たすために動作に戻ることができる。方法は、実験室ワークフローの処理が完了するまで繰り返される。」と記載され、そして、【0043】に「例えば、朝一番、すなわち、典型的な作業日の開始に、実験室の作業負荷が非常に高いことが分かっている場合、制御装置20は、複数の分析装置10内のすべての分析装置のマスキングを解除することがある。対照的に、実験室の作業負荷が夕方に次第に減少する傾向があることが分かっている場合、制御装置20は、この期間中に複数の分析装置15内の分析装置のいくつかをマスキングすることを計画することがある。」と記載されている。
そうすると、本願発明の「前記現在の実験室の作業負荷が完了するまで、ステップa)からd)を繰り返すこと」とは、その時々の作業負荷に合わせて分析装置のマスキング、及びその解除を繰り返すことであり、その結果として「現在の実験室の作業負荷が完了する」ということである。一方、引用発明においても、「全体制御用コンピュータによって」「夜間のように、依頼検体数が少なく緊急を要する検体の検査業務が主となる時間帯の場合には、血清検体用の分析装置3Cと尿検体用の分析装置3Gだけを運転状態にし、残りの分析装置を停止せしめるように運用でき、依頼検体数が増大する時間帯には、停止していた複数の分析装置が再稼働される」ようにするものであるから、上記(3)~(6)を踏まえると、本願発明の「ステップa)からd)を繰り返すこと」を行っているといえ、そして、その結果として依頼検体の分析が完了している、すなわち、本願発明の「現在の実験室の作業負荷が完了する」ことを行っているといえる。
(8)一致点・相違点について
以上のことから、本願発明と引用発明とは、
(一致点)
「実験室の作業負荷に基づいて、複数の分析装置(15)および前記複数の分析装置(15)に接続された制御装置(20)を有する実験室(10)における分析装置の使用を最適化する方法であって、前記方法が、a)前記制御装置(20)によって、現在の実験室の作業負荷を判定することと、b)前記現在の実験室の作業負荷が閾値基準を下回っており、前記複数の分析装置(15)に2つ以上の分析装置がある場合があり、c)前記制御装置(20)によって、前記現在の作業負荷が前記複数の分析装置(15)から1つの分析装置を引いたものによって満たされる場合、前記複数の分析装置(15)のうちの1つをマスキングすることと、d)前記制御装置(20)によって、前記複数の分析装置(15)に現在の作業負荷を続行させることと、e)前記現在の実験室の作業負荷が完了するまで、ステップa)からd)を繰り返すことを含む、方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
作業負荷が閾値基準を下回っており、複数の分析装置に2つ以上の分析装置がある場合において、本願発明では、「制御装置(20)によって」「複数の分析装置(15)から1つの分析装置を引いた作業負荷能力を計算すること」を行うが、引用発明では、全体制御用コンピュータがそのような計算を行うかどうか不明である点。
2 相違点の判断
引用発明の「緊急検査項目は2台の分析装置3A及び3Cによって分析処理可能であり、」「全体制御用コンピュータによって」「夜間のように、依頼検体数が少なく緊急を要する検体の検査業務が主となる時間帯の場合には、血清検体用の分析装置3Cと尿検体用の分析装置3Gだけを運転状態にし、残りの分析装置を停止せしめるように運用でき、依頼検体数が増大する時間帯には、停止していた複数の分析装置が再稼働される」ことは、緊急検査項目の分析処理可能な2台の分析装置3A及び3Cに着目すると、「夜間のように、依頼検体数が少な」い「時間帯」には「分析装置3C」「だけを運転状態にし、残りの分析装置を停止せしめ」「依頼検体数が増大する時間帯には、停止していた複数の分析装置が再稼働される」、すなわち「分析装置3C」だけを「運転状態にし」「分析装置3A」は「停止」させ、「依頼検体数が増大する時間帯には、停止していた」「分析装置3A」を「再稼働」させることであり、このような判断をするためには、「分析装置3C」「によって分析処理可能」な「検体数」を把握しておく必要があるところ、当該検体数は、「2台の分析装置3A及び3Cによって分析処理可能」な「検体数」から「分析装置3A」「によって分析処理可能」な「検体数」を引いた「検体数」であり、これは本願発明の「複数の分析装置(15)から1つの分析装置を引いた作業負荷能力」に相当するものである。
そうすると、引用発明において、「分析装置3C」「によって分析処理可能」な「検体数」を把握するために、「全体制御用コンピュータによって」「2台の分析装置3A及び3Cによって分析処理可能」な「検体数」から、「分析装置3A」「によって分析処理可能」な「検体数」を引いた「検体数」を求めること、すなわち本願発明の「複数の分析装置(15)から1つの分析装置を引いた作業負荷能力を計算すること」を行うことは当業者が容易になし得たことである。
3 効果について
本願明細書には、本願発明の「効果」との記載はないものの、本願明細書の【0002】の「しかし、例えば、単一のワークステーションがそれ自体で作業負荷全体を処理できる時点など、実験室の作業負荷が平均を下回ると、分析装置間の負荷分散は、1つの分析装置が仕事を処理できるときに2つの分析装置が使用されているという事実により、エネルギーや試薬などの点で無駄になる。この状況は、実験室の作業負荷平衡化が3つ以上の分析装置を有する実験室に適用された場合にも発生する。」、【0003】の「したがって、実験室の資源を節約するために、作業負荷が特定のしきい値を下回ったときに特定の分析装置をマスキングする必要がある。」との記載を参酌すると、作業負荷の点で不必要な分析装置をマスキングすることにより、エネルギー、試薬などの資源を節約できるという効果があるといえる。
しかしながら、引用発明は、上記(引1ア)の【0006】に「本発明の目的は、複数の分析装置を備えた分析システムを用いる際に、依頼検体数の増減に対応できるように運転状態の分析装置の数を変えることができる多検体分析システムを提供することにある。」と記載されていることを目的とするものであり、その効果として、上記(引1エ)の【0038】に「【発明の効果】本発明によれば、複数の分析装置を搬送ラインに沿って配置した多検体分析システムを用いる際に、依頼検体数が増大又は減少する時間帯に応じてシステム内で運転状態にする分析装置の数を変えることができる。」と記載されており、依頼検体数が減少する時に運転状態の分析装置を停止させることは、停止させた分析装置の分のエネルギー、試薬などの資源が節約できるものであるから、本願発明のエネルギー、試薬などの資源を節約できるという効果は、引用発明においても達成できるものであり、格別顕著なものではない。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、補正された審判請求書の請求の理由で、以下の主張をしている。なお、下線は当審において別途付与した。
「引用文献1の段落0036には、血清検体用の分析装置3A,3B,3Cのうち、夜間は分析装置3Cだけを運転状態にし、夜間以外は分析装置3Cだけでなく分析装置3A,3Bも稼働させることが開示されている。つまり、夜間か否かにより、運転する分析装置の数(ここでは血清検体用の分析装置のみに着目する)を変更している。ここで、引用文献1の段落0026の記載によれば、血清検体用に設けられている3つの分析装置3A,3B,3Cは、それぞれ別個の目的の検査を実施するように構成されていると解される。すなわち、分析装置3Aは、『肝機能検査項目であるGOT,GPT及び緊急検査項目であるカルシウム,UA,BUN』の分析のために使用され、分析装置3Bは、『肝機能検査項目であるGOT,GPT及びその他の項目』の分析のために使用され、分析装置3Cは、『緊急検査項目であるカルシウム,UA,BUN及びその他の項目』の分析のために使用される。このように、分析装置3A,3B,3Cには、それぞれ別個の検査目的が定められているのであり、夜間(緊急を要する検体の検査業務が主となる時間帯)に運転すべき分析装置として装置3Cが選ばれるのは、分析装置3Cが、『緊急検査項目であるカルシウム,UA,BUN』を検査対象とするようあらかじめ定められているからである。一方、分析装置3Bは、『緊急検査項目であるカルシウム,UA,BUN』を検査対象としていないので、夜間(緊急を要する検体の検査業務が主となる時間帯)に運転状態とされることは決してあり得ない。つまり、引用文献1の多検体分析システムにおいては、各分析装置にあらかじめ定められている検査目的(具体的には各分析装置の試薬供給部に収納されている試薬ボトルの種類)に従って、夜になれば分析装置3Cだけが稼働され、昼間は分析装置3C以外の装置も運転状態とされているにすぎない。したがって、引用文献1は、本願発明の上述した特徴、すなわち、現在の作業負荷と、分析装置の数を1つ減らした場合の作業負荷能力とを比較し、後者によって前者をこなすことができる場合(「前記現在の作業負荷が前記複数の分析装置(15)から1つの分析装置を引いたものによって満たされる場合」)には分析装置を1つ不使用とする(「マスキングする」)、という点を何ら開示および示唆するものではない。」
(2)請求人の主張に対する当審の判断
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ア 上記第4で摘記した引用文献1の記載を参照すると、その(引1ウ)の【0026】には「分析装置3Aの試薬供給部32には、例えば検体依頼数の多い肝機能検査項目であるGOT,GPT及び緊急検査項目であるカルシウム,UA,BUNのための試薬ボトルが収納され、分析装置3Bの試薬供給部26には、例えば肝機能検査項目であるGOT,GPT及び検査依頼数の少ない他の分析項目のための試薬ボトルが収納され、分析装置3Cの試薬供給部27には、例えば緊急検査項目であるカルシウム,UA,BUN及び検査依頼数の少ない他の分析項目のための試薬ボトルが収納される。従って、肝機能検査項目は2台の分析装置3A及び3Bによって分析処理可能になり、緊急検査項目は2台の分析装置3A及び3Cによって分析処理可能になる。何台の分析装置にどのような分析項目用の試薬を重複させて収納するかは、それぞれの施設の検査室の実情に応じて操作者により決定される。」と記載され、緊急検査項目であるカルシウム,UA,BUNについては2台の分析装置3A及び3Cによって分析処理可能であることが記載されている。そして、(引1ア)の【0006】には「依頼検体数の増減に対応できるように運転状態の分析装置の数を変えることができる」と記載されていることから、「緊急検査項目であるカルシウム,UA,BUN」に対する分析依頼をする検体数が多い場合には、分析装置3A及び3Cの2台とも運転状態にし、当該検体数が少ない場合には、分析装置3A及び3Cの2台のうち1台のみを運転状態にすることになる。
一方、(引1エ)の【0036】には「夜間のように、依頼検体数が少なく緊急を要する検体の検査業務が主となる時間帯の場合には、例えば、血清検体用の分析装置3C(すなわち、ピペッタ方式の分析装置)と尿検体用の分析装置3Gだけを運転状態にし、残りの分析装置を停止せしめるように運用できる。依頼検体数が増大する時間帯には、停止していた複数の分析装置が再稼働される。」と記載されているが、これは、緊急を要する検体の検査業務は、昼夜問わず、すぐに検査しなければならないところ、緊急を要しない検体についての検査をわざわざ夜間に行うことはないから、結果的に夜間では緊急を要する検体の検査業務が主となるということであり、緊急を要する依頼検体数の増減にかかわらず、分析装置Cのみを運転状態にするということを示したものではなく、夜間でも、緊急を要する依頼検体数は多ければ、緊急検査項目のある2台の分析装置3A及び3Cを運転状態にできるものである。逆に、昼間でも、緊急を要する依頼検体数は少なければ、分析装置3A及び3Cの2台のうち1台のみを運転状態にすることができるものである。
そうすると、請求人の引用文献1に対する「夜になれば分析装置3Cだけが稼働され、昼間は分析装置3C以外の装置も運転状態とされているにすぎない。」との主張は、引用文献1に記載されている技術内容を正しく理解しているものとはいえない。特に、(引1ア)の【0006】で摘記した「本発明の目的は、複数の分析装置を備えた分析システムを用いる際に、依頼検体数の増減に対応できるように運転状態の分析装置の数を変えることができる多検体分析システムを提供することにある。」を踏まえると、「各分析装置にあらかじめ定められている検査目的(具体的には各分析装置の試薬供給部に収納されている試薬ボトルの種類)に従って、夜になれば分析装置3Cだけが稼働され、昼間は分析装置3C以外の装置も運転状態とされているにすぎない。」ということにはならない。
イ また、上記第5の1(4)及び(5)で述べたように、引用発明において、緊急検査項目の分析処理可能な2台の分析装置3A及び3Cに着目すると、「分析装置3C」「だけを運転状態にし、残りの分析装置を停止せしめる」ことは、「緊急検査項目の」ある「依頼検体」に対して「分析装置3C」だけを「運転状態にし」、「分析装置3A」は「停止」させるということであるから、「緊急検査項目の」ある「依頼検体数」が「分析装置3C」で「分析処理可能」な数以下であるといえる。
そうすると、「緊急検査項目の」ある「依頼検体数」(現在の作業負荷)と、「分析装置3A」を減らした場合の「分析装置3C」で「分析処理可能」な数(分析装置の数を1つ減らした場合の作業負荷能力)とを比較し、「緊急検査項目の」ある「依頼検体数」が「分析装置3C」で「分析処理可能」な数以下である場合(後者によって前者をこなすことができる場合(「前記現在の作業負荷が前記複数の分析装置(15)から1つの分析装置を引いたものによって満たされる場合」))に、「分析装置3A」を「停止」させる(分析装置を1つ不使用とする(「マスキングする」))ことが示唆されているといえるのであるから、請求人の主張する「現在の作業負荷と、分析装置の数を1つ減らした場合の作業負荷能力とを比較し、後者によって前者をこなすことができる場合(「前記現在の作業負荷が前記複数の分析装置(15)から1つの分析装置を引いたものによって満たされる場合」)には分析装置を1つ不使用とする(「マスキングする」)、という点を何ら開示および示唆するものではない。」との主張は、当を得たものではない。
ウ 上記ア及びイで述べたとおり、請求人の主張は、いずれも当を得たものではないことから、請求人の主張によって、上記1及び2で記載した判断が変わることはない。
5 小括
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-019067