2022-018669
直線移動を生成させるためのシステム
- 審判番号
- 2022-018669
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-560526外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年11月21日
- 審決日
- 2024年08月23日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ジェネルゴ エス.アール.エル.
- 【請求人代理人】関口 正夫
- 分類
- P18 .536-WZ (H02K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第2条第3項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 9項目
第1 手続の経緯
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この出願は、2020年(令和2年)4月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年4月5日 (IB)国際事務局)を国際出願日とする出願であって、令和4年3月18日付けで拒絶の理由が通知され、令和4年6月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和4年7月4日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和4年11月21日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされたものであり、その後、当審において、令和5年11月17日付けで拒絶の理由が通知され、令和6年5月20日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
この出願の各請求項に係る発明は、令和4年11月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1~11に係る発明(以下「本願発明1」~「本願発明11」という。)は、その請求項1~11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】直線移動を生成するリニアモータのためのシステムであって、主方向に沿って自由に移動する電磁荷電体(30、MM)と、少なくとも1つの静磁場発生器(50、Bob)と、少なくとも2つのバッファ要素(20、40;RM、RM;ML、ML;MA、MA;MF、MF)とを備え、前記主方向に沿った前記電磁荷電体(30、MM)の移動は、前記静磁場発生器(50、Bob)および前記バッファ要素(20、40;RM、RM;ML、ML;MA、MA;MF、MF)によって制御され、前記静磁場発生器(50、Bob)は、前記システム全体をある方向に移動させるように、主軸に対して所与の方向に不均衡な推力を得ることを可能にし、前記静磁場発生器(50、Bob)は、前記主方向に沿った2つの方向のうちの1つに前記システムの変位を生成するような電力プロファイルにより交流で電力供給され、前記システムは、以下の式:【数1】続きを表示(全26行)[図:0001418477000001.jpg]によって得ることができる周波数Ωを有するバイアスが供給される、直線移動を生成するためのシステム。【請求項2】前記電磁荷電体は、2つの端部(A、B)で閉じられた中空管(T)の内側を摺動する可動磁石(MM)であり、前記2つのバッファ要素は、弾性材料で作られ、前記中空管(T)の前記2つの端部(A、B)に配置された機械的バンパ(RM、RM)であり、前記静磁場発生器は、固定磁石(MF)としてさらに作用するコイル(Bob)である、請求項1に記載の直線移動を生成するためのシステム。【請求項3】前記電磁荷電体は、2つの端部(A、B)で閉じられた中空管(T)の内側を摺動する可動磁石(MM)であり、前記2つのバッファ要素は、前記中空管(T)の前記2つの端部(A、B)に配置されたバネ(M1、M1)であり、前記静磁場発生器は、固定磁石(MF)としてさらに作用するコイル(Bob)である、請求項1に記載の直線移動を生成するためのシステム。【請求項4】前記電磁荷電体は、2つの端部(A、B)で閉じられた中空管(T)の内側を摺動する可動磁石(MM)であり、前記2つのバッファ要素が、前記可動磁石(MM)を平衡位置に保持する前記中空管(T)の前記2つの端部(A、B)に配置されたばね(MA、MA)のシステムを備え、前記静磁場発生器は、固定磁石(MF)としてさらに作用するコイル(Bob)である、請求項1に記載の直線移動を生成するためのシステム。【請求項5】前記電磁荷電体は、2つの端部(A、B)で閉じられた中空管(T)の内側を摺動する可動磁石(MM)であり、前記2つのバッファ要素は、前記中空管(T)の前記2つの端部(A、B)に配置された2つの固定磁石(MF、MF)であり、前記2つの固定磁石(MF、MF)は、前記可動磁石(MM)を平衡位置に保持するように配置され、前記静磁場発生器は、固定磁石(MF)としてさらに作用するコイル(Bob)である、請求項1に記載の直線移動を生成するためのシステム。【請求項6】前記電磁荷電体は、中央ピン(PC)上を摺動する可動磁石(MM)であり、前記2つのバッファ要素は、前記中央ピン(PC)の2つの端部(A、B)に配置された2つの固定磁石(MF、MF)であり、前記2つの固定磁石(MF、MF)は、前記可動磁石(MM)を平衡位置に保持するように配置され、前記静磁場発生器は、固定磁石(MF)としてさらに作用するコイル(Bob)である、請求項1に記載の直線移動を生成するためのシステム。【請求項7】前記静磁場発生器(50、Bob)は、別個に電力供給される複数のコイル(Bob1、Bob2、…、BobN)を備え、前記コイルは、固定磁石(MF)としてさらに作用する、請求項1~6の1つまたは複数に記載の直線移動を生成するためのシステム。【請求項8】前記静磁場発生器(50、Bob)は、一緒に電力供給される複数のコイル(Bob1、Bob2、…、BobN)を備え、前記複数のコイルは、固定磁石(MF)としてさらに作用する、請求項1~7の1つまたは複数に記載の直線移動を生成するためのシステム。【請求項9】前記静磁場発生器(50、Bob)は、矩形波または正弦波または鋸歯状の電力プロファイルで電力供給される、請求項1~8の1つまたは複数に記載の直線移動を生成するためのシステム。【請求項10】反磁性カバー(CD)が存在し、平衡位置に戻るステップの間に、前記電磁荷電体(30、MM)の移動を減速する「磁気ブレーキ」として機能する、請求項1~9の1つまたは複数に記載の直線移動を生成するためのシステム。【請求項11】反磁性材料で作られた中央管(TC)が存在し、平衡位置に戻るステップの間に、前記電磁荷電体(30、MM)の移動を減速する「磁気ブレーキ」として機能する、請求項1~10の1つまたは複数に記載の直線移動を生成するためのシステム。」
第3 拒絶の理由
令和5年11月17日付けで当審が通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)は、概略、次のとおりである。
●理由(実施可能要件)
この出願は、発明の詳細な説明の記載について、次の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。すなわち、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)といえども、発明の詳細な説明の記載及びこの出願の出願時の技術常識に基づいて、本願発明1~11の「直線移動を生成するためのシステム」を、「直線移動を生成する」ことができるように、生産し、使用することができるとはいえないから、この出願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明1~11の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
第4 当審拒絶理由についての判断
1 実施可能要件の判断基準
特許法第36条第4項第1号には、発明の詳細な説明の記載について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであることと規定されているところ、物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
2 本願発明1~11について
ア 本願発明1~11は、いずれも「直線移動を生成するためのシステム」という物の発明であるから、実施可能要件を充足するためには、過度の試行錯誤を要することなく、本願発明1~11の「直線移動を生成するためのシステム」を生産し、使用して、「直線移動を生成する」ことができると当業者が理解できる程度に発明の詳細な説明が記載されていることを要する。
したがって、以下、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び優先日当時の技術常識に基づいて、「直線移動を生成する」ことができるかを検討する。
イ この点に関し、この出願の、令和6年5月20日に提出された手続補正書により補正された明細書の発明の詳細な説明には、次のように記載されている。なお、下線は当審で付与した。
(ア)「【発明の概要】【0011】本明細書で提案されるモータは、上記で概説した2つのマクロ原理のいずれにも基づいていない。【0012】実際、本明細書に記載されるリニアモータは、質量を放出せず、移動するために摩擦を使用せず、その代わりに、所望の方向にそれを押す力を生成する。【0013】さらに、摩擦モータとは異なり、自己走モータは、一定の加速度を発生し、したがって、摩擦がない場合(例えば、宇宙空間)には、理想的には、任意の速度に到達することができるので、到達可能な速度制限を有していない。」
(イ)「【0017】図1を参照すると、一般に、本発明によるモータまたは移動システムは、限られた空間体積内で移動する電磁荷電体からなり、この電磁荷電体は、前記空間体積内での移動中に、制御された方法で電磁的に加速および減速される。【0018】このような加速/減速は、質量が移動する体積上に力を発生させ、空間の体積を移動できるようにする。続きを表示(全44行)【0019】第一の実施形態の一例を図1に示す。【0020】図1では、本明細書で提案された解決策の基本的な要素、すなわち、3つの磁石20、30、40を内部に含み、そのうちの1つ(符号30)が可動であり、2つ(符号20、40)が固定されている管10、例えば中空円筒と、電磁石またはコイル50とを識別することが可能である。2つの固定磁石20,40は、その対向する2つの端部AとBとで、管10の内側に固定されている。第三の可動磁石30は、管10の中央部Cに、配置されている。コイル50は、その外側部分で管10に固着される。図示の例では、コイル50は、端部Bから始まり、管10の周りに巻かれており、管10の長さの約4分の1にわたって延びている。特に、コイル50は、管の外側に配置され、固定磁石20を収容するパイプ10の部分を取り囲んでいる。3つの磁石20,30,40は、互いに対向する逆極を示すように配置されている。特に、図1に示す平衡状態では、第一の固定磁石20は、その正極20bが管10の外側、すなわち管10の端部Bに向かい、その正極20aが管10の中央部Cに向くように配置される結果となる。第二の可動磁石30は、その負極30aが第一の固定磁石20の負極20aに対向するように、中央部Cにおいて管10の内側に配置される。最後に、第三の磁石40は、その正極40bが管10の内側を向き、すなわち、管10の中央部Cの方を向き、その負極40aが管10の外側を向き、すなわち、管10の端部Aの方を向くように配置される。このようにして、第三の固定磁石40は、その正極40bが第二の可動磁石30の正極30bに対向するように、管10の内側に配置される。【0021】図1に平衡状態を示す。特に、2つの固定磁石20、40は、互いに対向する同符号の極の反発力によって可動磁石30を定位置に保持する。したがって、同じ符号の極間の反発力は、磁石を相互に反発させる。特に、2つの負極20aと30aとは互いに反発し、正極30bと40bとは互いに反発する。したがって、可動磁石30は、2つの固定磁石20,40に対して発生する2つの反発力がバランスしているので、管10の中央部Cに静止したままである。図1の例では、コイル50に電力が供給されておらず、したがって、システムは、可動磁石30が中央部Cにおいて管10の中央に静止している平衡状態にある。当然ながら、本明細書に提供される説明は、磁石が極に対して逆の位置をとる二重の場合(dual case)にも適用される。したがって、固定磁石20は、管10の外側(端部B)に向く正極20aと、管10の中央部Cに向く負極20bとを有し、可動磁石30は、端部Bに向くその正極30bと、端部Aに向く負極30aとを有し、固定磁石40は、管10の中央部Cに向くその負極40aと、端部Aに向くその正極40bとを有している。また、この場合、同符号の磁石同士の反発力は、磁石同士を反発させる。【0022】ここで、図2~図5を参照して、システム動作をステップごとに説明する。【0023】図2は、初期の平衡状態を示す。上述したように、この状態では、可動磁石30は、管10の中央部Cにおいて、その平衡状態で静止している。このような可動磁石30は、2つの固定磁石20,40の向きによって同じ符号の極間に発生する反発力によって静止して保持される。【0024】したがって、時間t0に、平衡状態になる。【0025】図3を参照すると、コイル50が管10の端部Bに追加され、巻かれている。特に、コイル50は、管10の端部で固定磁石20に巻かれている。最初、このようなコイル50は給電されず、図3では、図2にも示されている平衡状態が残っている。換言すれば、可動磁石30は、2つの固定磁石20,40によって発生する反発力Fによって平衡状態に保持された中央位置にある。【0026】時間t1において、電磁場を生成するコイルの起動がある。【0027】図4では、コイル50は、例えば、矩形波、正弦波、または鋸歯状波パルスによって電力供給され、可動磁石30は、コイル50によって生成された増大した磁場によって、管10の端部に向かう方向に移動する。特に、可動磁石30は、2つの磁石20および30の同符号の極20aと30aとの間に作られた反発力FRによって押し出された固定磁石40に近づく。その結果、可動磁石30は、同符号の2つの極30bおよび40bに近づくことによって発生する反発力が可動磁石30を停止させている限り、固定磁石40に向かって(端部Aに向かう方向に)移動する。【0028】続いて、時間t2において、可動磁石30は、コイル50によって生成された電磁場と相互作用し、平衡状態の位置から固定磁石40により近い位置に移動する(実施形態は例に示されているが、コイル50に電力が供給される電力の反転を伴う二重の実施形態(dual embodiment)も考慮され得る)。【0029】より詳細には、コイル50に通電することにより、磁場の増大が発生し、これにより可動磁石30と固定磁石20との間の反発力が増大し、可動磁石30を固定磁石40に向かう方向に移動させるものである。可動磁石30は、可動磁石30の運動を反転する前に、最大アプローチの瞬間にシステム全体に伝達される動作エネルギーを獲得する。【0030】時間t3(図5参照)において、コイル50がスイッチオフされるか、極性が反転されるか、または強度が低下され、通常の平衡位置以外の位置にある中央磁石30は、それを平衡状態に戻す傾向がある力を受け、全部のシステム(管10、磁石20、30、40およびコイル50)は、反対方向に等しい反対の力を受ける。【0031】図6を参照すると、時間t4において、加速されている可動磁石30は、原理的に通常の平衡位置を超えて移動し、さらに固定磁石20の方向に近づく傾向があり、これは、平衡位置を超えて再び反発し、この状況に放置されれば、再び平衡位置に到達するまで、可動磁石30の一連のより小さな振動が発生するであろう。【0032】代わりに、コイル50は、可動磁石30を減速させ、時間t2の状況でそれを拒絶するように、正確な瞬間で再活性化される(図4参照)。【0033】時間t5において、システムを運動状態に保持するために、t2からt5までのステップが繰り返される。特に、管10、磁石20、30、40およびコイル50からなるシステムの変位は、図5および図6の矢印Sで示される方向に生じる。【0034】前進は、固定磁石40に対する可動磁石30の機械的推力の影響によって生じる。特に、磁石の摩耗を防ぐために、磁石間の衝撃を避け、2つの磁石を近づけすぎると、反発力で2つの磁石は離れる。【0035】簡単に言えば、このシステムは、コイル50のための電力として所与の周波数を有する一連のパルス(矩形波、正弦波、鋸歯状波)、すなわち、次いで下降するピークを有するインパルス性電力を提供することによって、一連の直線移動を生成する。特に、コイル50に電流を供給することによって、システム内に含まれる磁石の同じ電荷を有する極間の反発力により、システムの直線移動が得られる。このような直線移動は、真空中でも達成されるため、その運動は振動効果または摩擦によるものではない。【0036】したがって、本明細書に記載の解決策は、発生装置(例えば、電池)によってコイル50に通電することによって直線移動を得ることを可能にする。得られた移動は、コイル50に電力が供給される波形のパルスに依存する。【0037】コイル50の電力によって、システム全体をある方向に移動させるように、主軸に関して所与の方向に不均衡な推力を得ることが可能になる。したがって、コイル50に電力を供給するための異なるパルス振幅および周波数を選択することによって、システムの異なる応答を得ることができる。【0038】システムの電力供給は、直流ではなく、交流で行われ、モータの動きを生成するように、種々の範囲の周波数および種々の波形(例として、矩形波、鋸歯状波、正弦波などによって)で調整され、2つの軸に沿った種々のタイプの推力およびシステムの種々のタイプの加速度を生成することができる。」
(ウ)「【0108】ここで、電磁荷電体を用いたリニアモータを有することを可能にする公式と、このシステムの基礎となる理論について、電磁荷電体を含むシステムを主方向に沿って動作するように設定するために、述べる。【0109】リニアモータを正しく作動させるのに適した周波数を導出する式は、最も有望な周波数がフィボナッチ数列に関連していることを観測することによって得られた。続きを表示(全96行)【0110】2つの「固定」磁石のうちの1つ、すなわち、モータの端部に存在する符号20、40またはMFによって図に示される磁石の磁化状態を変化させ、固定磁石が移動する間にモータ自体の可動磁石30またはMMと相互作用する方法を変化させるという概念に要約できる理論から出発して、経験的プロセスに従った。【0111】したがって、解決策は、第一の固定磁石、例えば、20またはMF1の最大過磁化デルタを作り出すことであり、可動磁石30またはMMができるだけ近い場合には過磁化になり、可動磁石30またはMMができるだけ遠い場合、すなわち第二の固定磁石40またはMF2の近くにある場合には不足磁化になる。【0112】図中の符号50、Bob、Bob1によって示される一次コイルは、この場合、オフであるとき、単一のコイルモータの単純な場合(例えば図18を参照)、それは、以前増加または過磁化されていた固定磁石20またはMF1の「基線」磁場を部分的に打ち消す逆磁場を発生するという利点を有する。【0113】より一般的には、リニアモータに存在する磁場の総和は、可動磁石30またはMMが第一の固定磁石20またはMF1と相互作用するときに最大でなければならず、可動磁石30またはMMが第二の固定磁石40またはMF2と相互作用するときに最小またはゼロでなければならない。【0114】固定磁石MFが存在しない上述の実施形態の場合、コイル50は、電力が供給されると、電磁石となり、インパルス状に電力が供給されると、可動磁石MMを周期的に過磁化し、不足磁化する可変で不均一な場を生成する。コイル50は、モータ本体に固定されているので、真の「固定磁石」と考えることができる。【0115】他の実施形態では、メインコイル50またはBob1よりも少ない巻線を有する1つまたは複数のコイルBob2~BobNが建設的に追加されて、可動磁石30またはMMの平衡位置への戻り時間を遅くし、次いで、メインコイル50、BobまたはBob1が第一の固定磁石20またはMF1を再び過磁化する時間を与える。【0116】一次コイル50として、コイルBob1~BobNも、それらに電力が供給されると電磁石になり、インパルス状に電力が供給されると、可動磁石MMを周期的に過磁化し、不足磁化する一連の可変で不均一な場を生成する。コイルは、モータ本体に固定されているので、真の「固定磁石」MFと考えることができる。【0117】実験では、必要なパルスを与えて、最も単純なパルス波形、すなわち矩形波を最初に採用した。リニアモータの移動に適した周波数は、1~99%の間でデューティサイクルを可変する矩形波発生器を通して得られ、使用した周波数範囲は0.01Hz~1000Hz(精度0.01Hzで)の間に設定された。【0118】システムは、0~30ボルト/0~5アンペアの低インピーダンス電源によって給電された。【0119】0~30ボルト/0~5アンペアの低インピーダンス電源は、調整可能な電源と並列に、22,000pFの大容量のフラッシュ型電解コンデンサを配置することによって得られた。【0120】4.37Hz(50%のデューティサイクル)に等しいモータの幾何学的構成パラメータに依存しないように見える「基本的である」一般的に有効な周波数を経験的に求めて見つけた。それから、様々な高調波を探索し、それらを解析し始めた。【0121】基底周波数を整数で乗算または除算することによって、基底高調波が識別されると、解析されるべき中間数を求め、結果をチェックし、このように進めた。【0122】解析した種々の周波数の間に数値比があるように見え、一般的に有効である(すなわち、理論的にはモータ構成パラメータに独立しない)ことが分かった。【0123】解析した数値的関係は、周波数をHzで計算するための次の公式を導いた。【数1】[図:0001418477000002.jpg]【0124】Hzで示される任意の周波数Ωは、1と100との間の自然数である可変「N」に依存する関数「f(N)」を自然数「A」(好ましくは、1と5との間に限定されない)に乗算することによって得ることができる。【0125】「f(N)」は、選択された数「N」、すなわち、選択された数「N」が奇数か偶数かに応じて、二つの異なった関数「f1(N)とf2(N)」を含む。【0126】導出された関数である関数「f(N)」は、「N」の関数として示されるが、それらを区別し、標準的な数学的形式に従ってそれらの導出を理解可能かつ明白にするために、頂点に数を追加する。【0127】任意の整数である可変「k」は、関数「f(N)」を定義するために導入される。【0128】したがって、適用される2つの派生関数は、数値「N」が「2k+1」として正式に示された奇数である場合、「f1(N)」になり、関数「f2(N)」は、数値「N」が「2k」として正式に示された偶数である場合に使用される。【0129】ここでは、単純な一次数式である関数「f1(N)とf2(N)」を具体的に定義する。【0130】この関数は、選択された数「N」に2の平方根を乗算することによって得られ、その結果に、ヴィスワナス変数として知られる約1.13198824に等しい変数「Vc」に10-1を乗じた結果に等しい積の結果が加算される。【0131】関数「f1(N)」については、0.005に、1と「N」を2で除算して得られた最低整数との和を乗算した結果を加算する。【0132】関数「f2(N)」については、0.004に、1と「N」を2で除算した結果との和を乗算した結果を減算する。【0133】次いで、2つの関数「f1(N)とf2(N)」のそれぞれは、呼出し関数「g(n)」を定義し補正する第二の補正関数を含み、この呼び出し関数は、「f1(N)」と「f2(N)」のどちらであるかに応じて異なっている。【数2】[図:0001418477000003.jpg]【0134】補正関数「g(n)」は冗長性を避けるために挿入される。実際、「g1(n)とg2(n)」自身の定義から分かるように、この両方とも挿入される同じ関数「f(N)」に依存する。【0135】関数「g1(n)」および「g2(n)」は、0~30の整数である変数「n」にも依存する。【0136】したがって、関数「f(N)」に3つの変数「A」、「N」、「n」の様々な値を挿入し、「f(N)」の補正関数である関数「g(n)」を加算するか減算するかを決定することによって、線形で、かつ単純な方法で様々な数値を得ることができる。【0137】例えば、上記の式でA=2、N=3、およびn=3にすると、8.6Hzを得る。【0138】変数A=1、N=3、およびn=0を配置することによって、4.37Hzについても同様のことを行うことができる。【0139】本明細書に記載されるモータは、上記の式から導出されるHz単位の任意のΩ周波数を使用して、反復または不平衡(デューティサイクルが10~90%)の、可変DCパルス発生器によって電力供給される場合、それ自体で推力を生成することができる。【0140】これらのインパルスを適用すると、主に周波数に依存し、次いで、適用された波形に依存する、ゼロでない正味の推力が発生する。【0141】前述のように、矩形波、鋸歯状波または半波の正弦波、あるいは、それらがインパルス性でかつ指示された周波数である限り、時間に亘って振幅および形状が変化するパターンを使用することができる。【0142】電圧パラメータの変化量は、アンペア数パラメータの主に、また、より少ない程度ではあるが、主に、二次的に、モータを何らかの方法でバイアスさせ、その移動方向を調整することができる。【0143】簡単に言えば、前述の公式から得られたすべての周波数は、移動時に有効であるが、単一モータの特徴的な構成パラメータはその効率と方向応答を決定する。【0144】言い換えれば、得られた同じ周波数は、2つのモータを(1つ以上のパラメータに対して)、異なる方法で(1つを前進で、もう1つを後退で、または1つを高速前進で、もう一つを低速前進で)動かすことができる。【0145】ゼロでない推力、すなわちゼロとは異なる力の積分推力は、周波数を適用することによって前述の式から得られる。他の周波数を適用することにより、先に引用した文献に記載された解法のように、ゼロの力、したがって、単純な振動が生じる。【0146】実験レベルで、3種類のサイズのモータで種々の試験を行った。例えば、3つの異なる内径サイズが11、16、および21mmの透明メタクリレート製の長さ140mmの装置を使用し、端部に磁石を固定し、調整可能な支持体上に2成分エポキシ接着剤で接着し、プラスチックネジ(ピッチ1mm)を用いて、磁石間の相対距離を変化させる。磁石は、使用した直径より1mm小さかった。N52磁化のネオジム磁石を用いた。【0147】使用した磁石の長さは、管内での転倒または逆転を避けるために、その直径の1.5倍~2倍であった。装置は、コイルが摺動し、管の全長に沿って位置決めできるように、プラスチックネジによって調整可能な支持体上に置かれたコイルを用いて構成された。【0148】基本的には、上述の装置の支持体は、平らで滑らかな側面を低摩擦面として、Styrodur CとStyrodur 3035(建築用パネルに使用されるポリスチレンの一種)を掘って接着し、低摩擦指数のプラスチック支持体の上に配置した。【0149】様々な周波数およびコンフォメーションを使用し、コンフォメーションおよびモータにかかわらず、いくつかの数値が再帰的に現れることが注目された。そこで、基底周波数が存在し、この周波数は、より大きな、またはより少ない程度の動きを発生する可能性があると仮定し、多くの試みの後、4.37Hzの値が見出された。【0150】様々な倍数および約数を試験することによって、我々は、それらがすべて変位を生成したことに気付いた。【0151】次いで、いくつかの試験プロトタイプを、そのパラメータを同様に試験するために、より長い管(280mmまで)とより短い管(70mmまで)で構築した。【0152】最後に、様々なタイプの潤滑剤で試験を行い、その効果がより低い摩擦でより良く見ることができるかどうかを調べ、式に記載された周波数が、モータが一方向または別の方向へ移動することが分かった。他の周波数は、所定の位置で振動させる(oscilllate)ことによって、振動(vibrations)を発生させるだけである。また、他の波形と同じ周波数を使用することを試みたが、それらの周波数は機能するように見えた。【0153】好ましい周波数は、全て、100Hz未満の周波数に特に関心を持つ式から導出することができるが、これは、それらの周波数に対して最適化されたモータを得ることがより容易であるためである。」
ウ また、前記イの発明の詳細な説明の記載で参照する図1~図6には、次の事項が図示されている。
[図:0001418477000004.jpg]
[図:0001418477000005.jpg]
エ 以上によると、本願発明1~11の「直線移動を生成するためのシステム」が「直線移動を生成する」ことに関し、発明の詳細な説明には、段落【0012】(前記イ(ア)参照)に、質量を放出せず、摩擦を使用しないものであることが記載されている。
そして、具体的な「直線移動を生成するためのシステム」の構成、及びその動作について、第一の実施形態が記載されており、該第一の実施形態のシステムの構成は、段落【0020】(前記イ(イ)参照)によると、管10と、管10の対向する2つの端部における内側に固定された固定磁石20及び固定磁石40と、該固定磁石20及び固定磁石40と互いに対向する逆極を示すように管10の中央部に配置された可動磁石30と、固定磁石20を収容する管10の部分を取り囲んでいるコイル50を備えるものであると説明されている。続いて、このシステム動作が、段落【0022】~【0038】(前記イ(イ)参照)に、図2~図6を参照しつつ説明されている(なお、段落【0022】には、「図2~5を参照して」と記載されているが、段落【0031】等によると、図6も参照しているといえる。)。
この説明によると、該システム動作は、時間t0~t5のステップからなり、このうち時間t2~t5までのステップが繰り返されることが把握でき、各ステップは、
(ア)時間t0:平衡状態(段落【0023】~【0025】、図2、図3)
(イ)時間t1:電磁場を生成するコイル50の起動(段落【0026】、【0027】、図3あるいは図4)
(ウ)時間t2:可動磁石30が、コイル50によって生成された電磁場と相互作用し、平衡状態の位置から固定磁石40により近い位置に移動(段落【0028】、【0029】、図4)
(エ)時間t3:コイル50がスイッチオフされるか、極性が反転されるか、または強度が低下され、可動磁石30が平衡状態に戻す力を受け、システムが反対方向に力を受ける(段落【0030】、図5)
(オ)時間t4:可動磁石30が平衡状態を超えて移動し、固定磁石20の方向に近づき、再び平衡位置に到達するまで一連のより小さな振動が発生する(段落【0031】、図6)
(カ)時間t5:システムを運動状態に維持するために、t2~t5までのステップが繰り返される(段落【0033】)
と解される。
そして、これらのステップが実行されることにより、「特に、管10、磁石20、30、40およびコイル50からなるシステムの変位は、図5および図6の矢印Sで示される方向に生じ」(段落【0033】)、「一連の直線移動を生成する」(段落【0035】)と記載され、また「その運動は振動効果または摩擦によるものではない」(段落【0035】)とも記載されている。
オ このシステム動作によると、前記エ(イ)時間t1又は前記エ(ウ)時間t2において、コイル50が起動され、電磁場が生成されることにより、コイル50と可動磁石30との間に反発力が生じ、可動磁石30が図2~6における上方(以下、単に「上方」という。)に移動することが把握できるが、この時、このシステム動作が、前記したように摩擦を使用しない、あるいは摩擦によるものではないことを踏まえると、可動磁石30以外の管10、固定磁石20、40及びコイル50からなる装置(以下「コイル50側」という。)は、前記反発力により、図2~6における下方(以下、単に「下方」という。)に移動すると解される。
また、前記エ(エ)時間t3において、コイル50がスイッチオフされるか、極性が反転されるか、または強度が低下されることにより、可動磁石30が下方に移動することが把握できるが、この時、コイル50側は、可動磁石30との相互作用により、上方に移動すると解される。
したがって、時間t2~t5までのステップが繰り返されることにより、コイル50側は下方への移動と、上方への移動を繰り返すと解されるから、可動磁石30とコイル50側を含んだシステム全体についても、同様に、下方への移動と、上方への移動を繰り返すと解される。
すると、時間t0~t5のステップからなるシステム動作により、なぜ「特に、管10、磁石20、30、40およびコイル50からなるシステムの変位は、図5および図6の矢印Sで示される方向に生じ」、「一連の直線移動を生成する」といえるのか明らかでない。
カ この点に関し、発明の詳細な説明には、時間t0~t5のステップからなるシステム動作において、「代わりに、コイル50は、可動磁石30を減速させ、時間t2の状況でそれを拒絶するように、正確な瞬間で再活性化される(図4参照)。」(段落【0032】)、「簡単に言えば、このシステムは、コイル50のための電力として所与の周波数を有する一連のパルス(矩形波、正弦波、鋸歯状波)、すなわち、次いで下降するピークを有するインパルス性電力を提供することによって、一連の直線移動を生成する。」(段落【0035】)、「コイル50の電力によって、システム全体をある方向に移動させるように、主軸に関して所与の方向に不均衡な推力を得ることが可能になる。したがって、コイル50に電力を供給するための異なるパルス振幅および周波数を選択することによって、システムの異なる応答を得ることができる。」(段落【0037】)、「システムの電力の供給は、直流ではなく、交流で行われ、モータの動きを生成するように、種々の範囲の周波数および種々の波形(例として、矩形波、鋸歯状波、正弦波などによって)で調整され、2つの軸に沿った種々のタイプの推進力およびシステムの種々のタイプの加速度を生成することができる。」(段落【0038】)などといった記載があり、コイル50に電力を供給する瞬間(タイミング)を正確に設定すること、該電力の周波数、振幅を選択すること、該電力の周波数、波形を調整することなどが示唆されているものの、これらの記載は何ら具体的なものでなく、「正確な瞬間」、「所与の周波数」、「異なるパルス振幅および周波数」又は「種々の範囲の周波数および種々の波形」とは、どのような瞬間(タイミング)、周波数、振幅、波形であるのかが不明である。
したがって、時間t0~t5のステップからなるシステム動作において、仮に、コイル50に電力を供給する瞬間(タイミング)を正確に設定すること、該電力の周波数、振幅を選択すること、該電力の周波数、波形を調整することにより、「一連の直線移動を生成する」ことができるとしても、そのような瞬間(タイミング)、周波数、振幅、波形の設定には、相当の試行錯誤を要するものであり、その試行錯誤は、当業者に要求される以上のものといえる。
キ したがって、少なくとも発明の詳細な説明の第一の実施形態におけるシステム動作に関する記載(前記イ(イ)参照)をみただけでは、当業者といえども、本願発明1~11の「直線移動を生成するためのシステム」を生産し、使用して、「直線移動を生成する」ことができるとはいえない。
ク 次に、発明の詳細な説明には、前記イ(ウ)によると、周波数Ωを計算するための【数1】で示される公式を導き(段落【0123】)、該公式から得られたすべての周波数が、移動時に有効であり(段落【0143】)、該周波数により、モータが一方向または別の方向へ移動し、他の周波数では、振動を発生させるだけである(段落【0152】)旨が記載されているため、これらの記載により、当業者が、本願発明1~11の「直線移動を生成するためのシステム」を生産し、使用して、「直線移動を生成する」ことができるかを検討する。
ケ まず、【数1】で示される式、及び該【数1】で示される式で用いられる【数2】で示される式をみると、周波数Ωを算出するためには、「A」として、1~5の自然数のうちいずれか、「N」として、1~100の自然数のうちいずれか、「n」として、0~30の自然数あるいは整数(当審注:「n」について、【数2】によると「自然数」の集合に含まれると解され、段落【0135】によると「整数」であると解される。)のうちいずれかを選択する必要があり、これら選択の結果、算出される周波数Ωは、5通り×100通り×31通り=15,500通りの多岐にわたり、非常に多くの選択肢があるものである。
さらに、該周波数Ωの電力をシステムに与えた際、一方向または別の方向へ移動するか、単に振動が発生するかは、該周波数Ωのみならず、電力の振幅、波形等の影響を受ける他、システムが備える種々のパラメータ(例えば、可動磁石やシステム全体の質量、可動磁石と固定磁石との間の可動距離、可動磁石や固定磁石の磁力の強さ等)の影響を受けることは技術的に明らかであるが、発明の詳細な説明の記載をみても、電力の振幅、波形や、システムが備える種々のパラメータが特定のものに限定されているとは解されない。
すると、発明の詳細な説明の記載は、【数1】で示される式から算出される多岐にわたる周波数Ωの電力を供給すれば、この多岐にわたる、すべての周波数Ωにおいて、システムが備える種々のパラメータがどのようなものであっても、電力の振幅、波形がどのようなものであっても、システムが一方向または別の方向へ移動するものとして説明しているとも解されるが、システムが備える種々のパラメータによらず、また電力の振幅、波形によらず、システムを一方向または別の方向へ移動させる周波数Ωが存在すること、特に該周波数Ωが多岐にわたって存在することは、技術的にみて考えがたい。したがって、仮に、【数1】で示される式から算出される多岐にわたる周波数Ωの電力を供給し、この多岐にわたる、すべての周波数Ωにおいて、システムが一方向または別の方向へ移動するとすれば、何らかの特定の条件の場合に限られると解されるが、そのような条件は、発明の詳細な説明の記載をみても不明である。そして、この特定の条件を見つけだすことには、相当の試行錯誤を要するものであり、その試行錯誤は、当業者に要求される以上のものといえる。
コ また、仮に、【数1】で示される式から算出される周波数Ωについて、「A」として、1~5の自然数のうち特定の値、「N」として、1~100の自然数のうち特定の値、「n」として、0~30の自然数あるいは整数のうち特定の値を選択した場合に、システムが一方向または別の方向へ移動するとしても、一方向または別の方向へ移動するか、単に振動が発生するかに影響を与える電力の振幅、波形や、システムが備える種々のパラメータが任意の値をとった場合に、そのそれぞれにおいて、「A」、「N」、「n」の値をどのように選択するかは、発明の詳細な説明の記載をみても不明であるから、該選択には、相当の試行錯誤を要するものであり、その試行錯誤は、当業者に要求される以上のものといえる。
サ すると、発明の詳細な説明の前記イ(ウ)の記載をみた当業者といえども、本願発明1~11の「直線移動を生成するためのシステム」を生産し、使用して、「直線移動を生成する」ことができるとはいえない。
シ 以上によると、この出願の発明の詳細な説明には、「直線移動を生成するためのシステム」が、「直線移動を生成する」ことができる理由や、その理論的又は実験的な裏付けが記載されていないこともあいまって、当業者といえども、発明の詳細な説明の記載及びこの出願の優先日の技術常識に基づいて、本願発明1~11の「直線移動を生成するためのシステム」を、「直線移動を生成する」ことができるように、生産し、使用するには、過度の試行錯誤が必要になるといえる。
3 審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、令和6年5月20日付け意見書の「4-1」において、「そして、段落[0037]に、「コイル50の電力によって、システム全体をある方向に移動させるように、主軸に関して所与の方向に不均衡な推力を得ることが可能になる。したがって、コイル50に電力を供給するための異なるパルス振幅および周波数を選択することによって、システムの異なる応答を得ることができる。」というように、システム全体をある方向に移動させるために、「異なるパルス振幅」を選択することが明記されています。」と主張しているが、該段落【0037】の記載は、コイル50に供給する電力のパルス振幅および周波数が異なれば、システムの応答も異なるという当然の事項を記載しているにすぎないと解され、また、異なるパルス振幅を選択するといっても、何のパルス振幅に対して、どのように異なるパルス振幅を選択するのかが、何ら示されていない。すると、仮に、パルス振幅を異なるものにすることにより、「一連の直線移動を生成する」ことができるとしても、前記2 カに示したように、そのような振幅の設定には、相当の試行錯誤を要するものであり、その試行錯誤は、当業者に要求される以上のものといえる。
イ 審判請求人は、令和6年5月20日付け意見書の「4-1」において、「さらに、段落[0038]には、「システムの電力供給は、直流ではなく、交流で行われ、モータの動きを生成するように、種々の範囲の周波数および種々の波形(例として、矩形波、鋸歯状波、正弦波などによって)で調整され、2つの軸に沿った種々のタイプの推力およびシステムの種々のタイプの加速度を生成することができる。」と記載されるように、矩形波、鋸歯状波、正弦波等の交流により、システムの電力供給が行われることも明記されています。」と主張しているが、システムに供給する電力を単に交流にすることにより、発明の詳細な説明に記載された、時間t0~t5のステップからなるシステム動作において、なぜ「一連の直線移動を生成する」といえるのか明らかでない。また、仮に、システムに供給する電力を「交流」にすることにより、「一連の直線移動を生成する」ことができるとしても、「交流」には、前記されている矩形波、鋸歯状波、正弦波の他、「種々の波形」があるから、該「種々の波形」の中から、「一連の直線移動を生成する」波形を選択するには、相当の試行錯誤を要するものであり、その試行錯誤は、当業者に要求される以上のものといえる。
ウ 審判請求人は、令和6年5月20日付け意見書の「4-2」において、「さらに、本願発明のリニアモータについては、先に送付しました、「GENERGO装置による力および吸収力の測定に関する報告書」や、「実験室試験についての動画」からも、外部バイアスの結果として一方向への移動を行うものであることが明らかになるものと考えます。」と主張しているが、この「GENERGO装置による力および吸収力の測定に関する報告書」(当審注:令和6年4月10日に審判請求人が電子メールで提出した「Report on measurements of force and absorbed power on a GENERGO device」、令和6年7月24日に格納された応対記録の添付資料参照)や、「実験室試験についての動画」(当審注:令和6年4月10日に審判請求人が電子メールで提出した「IMG_1804.mp4」という動画ファイル、令和6年7月24日に格納された応対記録に添付された静止画像を参照)は、この出願の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、また、この出願の優先日の技術常識といえるものでもない。また、仮に、これらの資料等を参照したとしても、該資料等からでは、どのような周波数の電力が供給され、また、どのような条件の下で、システムが一方向に移動しているのか明らかでないから、当業者といえども、本願発明1~11の「直線移動を生成するためのシステム」を、「直線移動を生成する」ことができるように、生産し、使用するには、過度の試行錯誤が必要になることに変わりはない。
エ 審判請求人は、令和6年5月20日付け意見書の「4-2」において、「先に、送付した、数式「f(N)」と関数「g(n)」を実装したExcelファイル(FORMULA.xlsx)から明らかなように、3つの変数「A」、「N」、「n」の値を選択し、その結果得られたものが、式によって計算された周波数Ωになります。」と主張しているが、この「Excelファイル(FORMULA.xlsx)」(当審注:令和6年2月26日に審判請求人が電子メールで提出した「FORMULA.xlsx」というエクセルファイル、令和6年7月24日に格納された応対記録の添付資料参照)は、単に、「A」、「N」、「n」の値を選択すれば、【数1】で示される式から周波数Ωを算出することができることを示すにすぎないものである。したがって、仮に、この資料が、【数1】で示される式から周波数Ωが算出できることを示すとしても、「A」、「N」、「n」の値をどのように選択するかは、依然として不明であるから、前記2 コに示した判断を左右するものではない。
なお、この令和6年2月26日提出の「Excelファイル(FORMULA.xlsx)」におけるセル「F3」及び「F4」に入力されている数式は、「f1(N)」あるいは「f2(N)」の式と正確に一致するものではないため、「Excelファイル(FORMULA.xlsx)」により計算される周波数は、【数1】で示される式から算出される周波数Ωとは異なるものである。
オ よって、審判請求人の主張は採用できない。
4 まとめ
したがって、この出願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明1~11の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
第5 むすび
以上のとおり、この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
そうすると、この出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-018669