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特許拒絶査定不服審判

2022-018621

積層セラミックキャパシタ

審判番号
2022-018621
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-116860外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年11月18日
審決日
2024年06月17日
公報発行日
2024年11月29日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H01G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-116860「積層セラミックキャパシタ」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月17日出願公開、特開2019- 9442〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 23項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成30年6月20日(パリ条約による優先権主張2017年6月28日、韓国、2017年10月19日、韓国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 3年12月14日付け:拒絶理由通知
令和 4年 3月10日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 7月20日付け:拒絶査定
令和 4年11月18日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年 3月24日 :上申書の提出
令和 5年11月30日付け:当審における拒絶理由通知
令和 6年 3月 5日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1ないし14に係る発明は、令和6年3月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
第1及び第2誘電体層を含み、積層方向に互いに対向する第1面及び第2面と、前記第1面及び第2面と連結され、互いに対向する第3面及び第4面と、前記第1面から第4面と連結され、互いに対向する第5面及び第6面とを含む本体と、
前記第1誘電体層に配置され、前記第3面、第5面及び第6面に露出し、前記第4面から第1空間だけ離れて配置される第1内部電極と、
前記第2誘電体層に前記第1又は第2誘電体層を挟んで前記第1内部電極と対向するように配置され、前記第4面、第5面、及び第6面に露出し、前記第3面から第2空間だけ離れて配置される第2内部電極と、
続きを表示(全14行)
前記第1空間の少なくとも一部に配置される第1誘電体パターンと、
前記第2空間の少なくとも一部に配置される第2誘電体パターンと、
前記第5面及び第6面に配置される側面絶縁層と、
前記第1内部電極と連結され、前記第3面に配置される第1外部電極と、
前記第2内部電極と連結され、前記第4面に配置される第2外部電極と、を含み、
前記第1及び第2誘電体パターンは、前記第1及び第2誘電体層とは異なる色相を有し、
前記第1誘電体パターンは、前記第1内部電極の端部を覆うように積層方向に延長して配置される、又は
前記第2誘電体パターンは、前記第2内部電極の端部を覆うように積層方向に延長して配置され、
前記第1及び第2誘電体パターンが前記第1及び第2内部電極と接する面積は、前記第1及び第2誘電体層が前記第1及び第2内部電極と接する面積よりも小さく、
前記第1及び第2誘電体パターンは金属錯物を含む、積層セラミックキャパシタ。」

第3 当審の拒絶理由の概要

本願の請求項1に対して令和5年11月30日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。

本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし6に記載の周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧

1.特開2004-179568号公報

2.特開2017-059820号公報(周知技術を示す文献)

3.特開2005-136046号公報(周知技術を示す文献)

4.特開2001-316169号公報(周知技術を示す文献)

5.特開2001-320168号公報(周知技術を示す文献)

6.特開平5-124854号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載及び引用発明

(1)引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付したものである。以下同じ。)。

「【請求項1】
積層された複数のセラミックグリーンシート間に、矩形状の導体パターン及び該導体パターンの周辺に形成されたセラミックパターンを介在してなる未焼成状態の大型積層体を作製する工程と、
該大型積層体を所定位置で切断して積層体を作製し、該積層体を焼成処理する工程とを含む積層セラミック部品の製造方法であって、
前記セラミックパターンは、前記セラミックグリーンシートと実質的に同一のセラミック材料と、前記セラミックグリーンシートと異なる色彩の高分子材料とを含有することを特徴とする積層セラミック部品の製造方法。」
「【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層セラミック部品の製造方法は、積層された複数のセラミックグリーンシート間に、矩形状の導体パターン及びその周辺に形成されたセラミックパターンを介在してなる大型積層体を作製する工程と、該大型積層体を所定位置で切断して未焼成状態の積層体を作製する工程とを具備する積層セラミック部品の製造方法であって、前記セラミックパターンは、前記セラミックグリーンシートと実質的に同一のセラミック成分と、前記セラミックグリーンシートと異なる色彩の高分子材料とを含有する。」
「【0011】
また、例えばセラミックグリーンシート上、まず、導体パターンを形成し、次いで、セラミックパターンを形成する場合、セラミックグリーンシートと色彩が相違するセラミックパターンにより、セラミックパターンの印刷ずれを簡単に把握できるため、位置ずれの大きいグリーンシートを除外することができるため、その後の工程が不要となり、無駄な工程、無駄な材料を省くことができる。」
「【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の積層セラミック部品の製造方法を図面に基づいて詳説する。尚、説明は、積層セラミック部品の一つである積層セラミックコンデンサを例に説明する。
【0013】
図1は、本発明の導電性ペーストを用いた積層セラミックコンデンサを示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)は縦断面図である。
【0014】
図において、21は積層体であり、22は積層体21を構成する誘電体層、23は積層体21内に形成した内部電極層であり、24は外部電極である。尚、内部電極層の周囲の誘電体層21間に誘電体充填層が配置されているが、実際にこの誘電体充填層は図2に示すように誘電体層21と一体化するため、図では省略している。」
「【0016】
内部電極層23、23は、Niを主成分とする材料から構成されている。そして、誘電体層22の積層方向に隣接しあう一対の内部電極層23、23は、互いに積層体1の異なる端面側に延出し、各々異なる外部電極24、24に接続されている。その厚みは1~2μmとしている。」
「【0026】
図3は、セラミックグリーンシート3上に形成されたセラミックパターン5及び導体パターン7の配置を示す斜視図である。このように、矩形状の導体パターン7が所定間隔Lをおいて複数形成され、この導体パターン7間に、導体パターン7の厚みによる段差を実質的に無くすようにセラミックパターン5が形成されている。
【0027】
次に、図2(d)、(e)に示すように、セラミックパターン5及び導体パターン7を形成したセラミックグリーンシート3を複数積層して未焼成状態の大型積層体13を形成する。図2(d)はサイドマージン側、図2(e)はエンドマージン側の断面図である。
【0028】
この後、この大型積層体13を点線部Cで切断して積層体成形体を形成した後、さらに、この未焼成状態の積層体を所定の雰囲気及び温度条件下で焼成することにより、図1に示す積層体21が達成され、さらに、外部電極24を形成して、セラミック層と内部電極層を具備する積層セラミックコンデンサを形成する。
【0029】
上述の製造方法において、セラミックパターン5が、焼成後にセラミック層(誘電体層)21と略同一の色彩となるようにすれば、最終製品としての積層セラミックコンデンサの外観不良が問題になることがなく、また、セラミックパターン5部分の焼成物である誘電体充填層は図1において省略している。」
「【0040】
さらに、セラミックパターン5がセラミックグリーンシート3及び導体パターン7と異なる色彩を有するように、セラミックペースト中に高分子材料の着色剤が添加される。着色剤は、セラミックペースト中の有機溶剤に溶解し、均一なペーストとなることが求められる。また、セラミックパターンが、焼成後にセラミック層と略同一の色彩となるように、着色剤はC、O、N、H原子など、脱バインダ時に燃焼分解する原子から構成される有機化合物が望ましい。具体的には、有機化合物の構造中に、-CH=CH-、-N=N-などの不飽和結合を持つ基(発色団)が存在すると、その有機化合物が特定の波長の光(スペクトル色)を吸収して、吸収されない部分の光(余色)が肉眼あるいは画像処理により検出されることを利用する。あるいは、有機化合物の構造中に、-NH2、-OHなどの遊離電子対を持つ基(助色団)を入れると、その吸収波長が長波長側あるいは短波長側に移動することを利用しても良い。また、有機EL材料、フォトクロミック有機材料等、光照射により着色する材料を用いても良い。」
「【0050】
さらに、セラミックパターン5が焼成後にセラミック層と異なる色彩となるようにしても良い。このことにより、外観から積層セラミック部品の積層方向を容易に判別することができる。」

図1

[図:0001415723000001.jpg]

(2)引用文献1には、積層セラミックコンデンサに関して(【0012】)、次の技術的事項が記載されている。

ア 【0014】によると、21は積層体、22は誘電体層、23は内部電極層、24は外部電極である。

そして、図1(b)より、左側の外部電極24に接続する内部電極23を「第1内部電極23」、右側の外部電極24に接続する内部電極23を「第2内部電極23」とすると、「第1内部電極23」と「第2内部電極23」との間に第1誘電体層22があり、「第2内部電極23」の下に第2誘電体層22があることが見て取れる。

また、「誘電体層22の積層方向に隣接しあう一対の内部電極層23、23は、互いに積層体1(当審注:「21」の誤記)の異なる端面側に延出し、各々異なる外部電極24、24に接続されている。」(【0016】)のであるから、図1(b)及び【0016】の記載によれば、第1誘電体層22上に配置され、左端面側に延出して左側外部電極24に接続する第1内部電極23と、第1誘電体層22と第2誘電体層22に挟まれて第2誘電体層22上に配置され、右端面側に延出して右側外部電極24に接続する第2内部電極23が読み取れる。

イ 上記アを踏まえると、図1(a)及び【0014】の記載より、第1及び第2誘電体層22を含み、略直方体である積層体21が見て取れる。

ウ 上記アを踏まえると、「内部電極層の周囲の誘電体層21(当審注:「22」の誤記)間に誘電体充填層が配置されている」(【0014】)の記載より、第1及び第2内部電極層23の周囲の誘電体層22間に複数の誘電体充填層が配置されているといえる。

エ 【0027】及び【0028】によれば、セラミックパターン5及び導体パターン7を形成したセラミックグリーンシート3を複数積層して未焼成状態の大型積層体13を形成し、大型積層体13を切断して積層体成形体を形成した後、焼成することにより、セラミック層と内部電極層を具備する積層セラミックコンデンサを形成しているので、セラミック層はセラミックグリーンシート3の焼成物である。

そして、【0029】に「セラミック層(誘電体層)21(当審注:「22」の誤記)」及び「セラミックパターン5部分の焼成物である誘電体充填層」と記載されているので、セラミック層は誘電体層22のことであり、セラミックパターン5の焼成物は誘電体充填層である。

以上を踏まえると、「セラミックパターン5が焼成後にセラミック層と異なる色彩となる」(【0050】)の記載より、誘電体充填層は、第1及び第2誘電体層22と異なる色彩であるといえる。

オ 【請求項1】及び【0009】によれば、未焼成状態のセラミックパターンは、セラミックグリーンシートと異なる色彩の高分子材料とを含有している。

そして、セラミック層(誘電体層22)はセラミックグリーンシート3の焼成物であり、誘電体充填層はセラミックパターン5の焼成物であるので(上記エ)、焼成後に誘電体充填層になるセラミックパターン5は、焼成後に第1及び第2誘電体層22になるセラミックグリーンシート3と異なる色彩の高分子材料とを含有している。

(3)以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「第1及び第2誘電体層22を含み、略直方体である積層体21と、
第1誘電体層22上に配置され、左端面側に延出して左側外部電極24に接続する第1内部電極23と、
第1誘電体層22と第2誘電体層22に挟まれて第2誘電体層22上に配置され、右端面側に延出して右側外部電極24に接続する第2内部電極23と、
第1及び第2内部電極層23の周囲の誘電体層22間に配置されている複数の誘電体充填層と、を含み、
誘電体充填層は、第1及び第2誘電体層22と異なる色彩であり、
焼成後に誘電体充填層になるセラミックパターン5は、焼成後に第1及び第2誘電体層22になるセラミックグリーンシート3と異なる色彩の高分子材料とを含有する、
積層セラミックコンデンサ。」

2 引用文献2の記載

引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0027】
図2Aに示すように、内側誘電体層10と、内部電極層12とが交互に積層される部分が内装領域13である。」
「【0039】
図2A~図2Cに示すように、素子本体3のX軸方向の両端面(両側面)には、絶縁層16が形成されている。絶縁層16は、X軸方向の端面(側面)の周縁に形成された山状部16bと、中央部の平面部16cとを有する。」

図2A

[図:0001415723000002.jpg]

3 引用文献3の記載

引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0025】
次に、図2(b)に示すように、この誘電体グリーンシート21の一方主面上に導体ペーストを印刷して導体パターン23を所定間隔をおいて複数形成する。また、導体パターン23の厚みは、本発明の製法におけるセラミックペーストの印刷時の乗り上げやすさのために、また、厚みによる段差を低減するという理由から、その厚みは2μm以下、特に、1.5μm以下であることがより望ましく、誘電体グリーンシートの厚みよりも薄いことが望ましい。
【0026】
この後、図2(c)に示すように、この導体パターン23の周囲に、この導体パターン23の厚みによる段差を実質的に無くすようにセラミックペーストを印刷して誘電体パターン25を形成する。この誘電体パターン25の厚みも、導体パターンと同様の厚みが好ましい。」

図2

[図:0001415723000003.jpg]

4 引用文献4の記載

引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0032】このように色の差別化を図るためには、例えば、有機系の着色剤として、厚膜絶縁組成物中のセラミック粉末に対して、0.1~1.5重量%の有機顔料(例えば、銅フタロシアニン、アゾ系やキナクリドン系等)を添加してもよい。或いは、無機系の着色剤として、クロム、コバルト、銅、ニッケル、鉄およびチタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物粉末を3重量%以下含有してもよい。」

5 引用文献5の記載

引用文献5には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0075】このように色の差別化を図るためには、例えば、有機系の着色剤として、厚膜組成物中のセラミック粉末に対して、0.1~1.5重量%の有機顔料(例えば、銅フタロシアニン、アゾ系やキナクリドン系等)を添加してもよい。あるいは、無機系の着色剤として、クロム、コバルト、銅、ニッケル、鉄およびチタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物粉末を3重量%以下含有してもよい。」

6 引用文献6の記載

引用文献6には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0005】本発明に用いるセラミック材料は、アルミナ質、マグネシア質、珪石質、窒化質、ボロン質等のような耐火物骨材、セラミック粉末や、タルク、カルシア、イットリゥム等の燃焼助剤や、メチルセルロース、アクリル、酢酸ビニール、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等のバインダーに、カーボン、アニリンブラック、スピリットブラック、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、キナアクリドンレッド、ピラゾロンレッド、チオインジゴレッド、ジオキサンバイオレッド、アンスラキノンバイオレッド、フタロシアニンブルー、アンスラキノンブルー、アンスラキノングリーン、フタロシアニングリーン等の有機染顔料や、酸化チタン、黄鉛、弁柄、酸化クローム等の無機顔料からなる着色剤を含有せしめたもので、着色剤の添加量はセラミック基板への影響を考慮してできるだけ少量であること、即ち全量の1重量%以下であることが好ましい。」

第5 対比

本願発明と引用発明を対比する。

1 引用発明の「第1及び第2誘電体層22を含み、略直方体である積層体21」は、本願発明の「第1及び第2誘電体層を含み、積層方向に互いに対向する第1面及び第2面と、前記第1面及び第2面と連結され、互いに対向する第3面及び第4面と、前記第1面から第4面と連結され、互いに対向する第5面及び第6面とを含む本体」に相当する。

2 引用発明の「第1内部電極23」は、「左端面側に延出して左側外部電極24に接続」しているので「左端面」に露出している。また、「第1内部電極層23」の周囲の誘電体層22間には「誘電体充填層」が配置されているので、「第1内部電極層23」と「右端面」の間には「誘電体充填層」があり、「右端面」から離れて配置されている。

同様に、「第1内部電極層23」の周囲の誘電体層22間には「誘電体充填層」が配置されているので、「第1内部電極層23」と「積層体21」の側面の間には「誘電体充填層」があり、「第1内部電極層23」が「積層体21」の側面に露出していない。

したがって、引用発明の「第1誘電体層22上に配置され、左端面側に延出」「する第1内部電極23」と本願発明の「第1内部電極」とは、「前記第1誘電体層に配置され、前記第3面に露出し、前記第4面から第1空間だけ離れて配置される第1内部電極」である点で共通する。

但し、本願発明は「第1内部電極」が本体の「第5面及び第6面に露出」するのに対して、引用発明は「第1内部電極層23」が「積層体21」の側面に露出していない点で相違する。

また、同様に、引用発明の「第1誘電体層22と第2誘電体層22に挟まれて第2誘電体層22上に配置され、右端面側に延出」「する第2内部電極23」と本願発明の「第2内部電極」とは、「前記第2誘電体層に前記第1誘電体層を挟んで前記第1内部電極と対向するように配置され、前記第4面に露出し、前記第3面から第2空間だけ離れて配置される第2内部電極」である点で共通する。

但し、本願発明は「第2内部電極」が本体の「第5面、及び第6面に露出」するのに対して、引用発明は「第2内部電極層23」が「積層体21」の側面に露出していない点で相違する。

さらに、第5面及び第6面に関連して、本願発明は「前記第5面及び第6面に配置される側面絶縁層」を含むのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。

3 引用発明は「第1内部電極層23」の周囲の誘電体層22間には「誘電体充填層」が配置されているので、「第1内部電極層23」と「右端面」の間には「誘電体充填層」がある。

そうすると、引用発明の「第1内部電極層23」と「右端面」の間にある「誘電体充填層」は、本願発明の「前記第1空間の少なくとも一部に配置される第1誘電体パターン」に相当する。

同様に、引用発明の「第2内部電極層23」と「左端面」の間にある「誘電体充填層」は、本願発明の「前記第2空間の少なくとも一部に配置される第2誘電体パターン」に相当する。

4 引用発明の「第1内部電極23」と接続する「左側外部電極24」は、本願発明の「前記第1内部電極と連結され、前記第3面に配置される第1外部電極」に相当する。

同様に、引用発明の「右側外部電極24」は、本願発明の「前記第2内部電極と連結され、前記第4面に配置される第2外部電極」に相当する。

5 引用発明の「誘電体充填層は、第1及び第2誘電体層22と異なる色彩であ」ることは、本願発明の「前記第1及び第2誘電体パターンは、前記第1及び第2誘電体層とは異なる色相を有」することに相当する。

6 本願発明は「前記第1誘電体パターンは、前記第1内部電極の端部を覆うように積層方向に延長して配置される、又は前記第2誘電体パターンは、前記第2内部電極の端部を覆うように積層方向に延長して配置され」るのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。

7 引用発明は「複数の誘電体充填層」が「第1及び第2内部電極層23の周囲の誘電体層22間に配置されている」ので、「第1及び第2内部電極層23」の周囲の側面のうちの外部電極24に接続していない部分の側面が「誘電体充填層」と接している。

また、「第1内部電極23」は「第1誘電体層22上に配置され」、「第2内部電極23」は「第2誘電体層22上に配置され」ているので、「第1誘電体層22」は「第1内部電極層23」の下面と接し、「第2誘電体層22」は「第2内部電極層23」の下面と接している。

そうすると、引用発明において、「誘電体充填層」が「第1内部電極層23」と接する面積は、(誘電体充填層の厚さ)×(第1内部電極層23の周囲の側面のうちの外部電極24に接続していない部分の長さ)であり、「第1誘電体層22」が「第1内部電極層23」と接する面積は、(内部電極層23の長さ)×(内部電極層23の幅)である。

そして、引用発明は「積層セラミックコンデンサ」であるから、誘電体充填層の「厚さ」(=内部電極層23の「厚さ」)が、内部電極層23の「長さ」や「幅」より、十分小さいことが明らかである。よって、「誘電体充填層」が「第1内部電極層23」と接する面積は、「第1誘電体層22」が「第1内部電極層23」と接する面積よりも小さい。

同様に、「誘電体充填層」が「第2内部電極層23」と接する面積は、「第2誘電体層22」が「第2内部電極層23」と接する面積よりも小さい。

このことは、本願発明の「前記第1及び第2誘電体パターンが前記第1及び第2内部電極と接する面積は、前記第1及び第2誘電体層が前記第1及び第2内部電極と接する面積よりも小さ」いことに相当する。

8 引用発明は「焼成後に誘電体充填層になるセラミックパターン5は、焼成後に第1及び第2誘電体層22になるセラミックグリーンシート3と異なる色彩の高分子材料とを含有する」が、金属錯物を含有することは特定されていない。

したがって、本願発明は「前記第1及び第2誘電体パターンは金属錯物を含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。

9 引用発明の「積層セラミックコンデンサ」は、本願発明の「積層セラミックキャパシタ」に相当する。

上記1ないし9によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)

「第1及び第2誘電体層を含み、積層方向に互いに対向する第1面及び第2面と、前記第1面及び第2面と連結され、互いに対向する第3面及び第4面と、前記第1面から第4面と連結され、互いに対向する第5面及び第6面とを含む本体と、
前記第1誘電体層に配置され、前記第3面に露出し、前記第4面から第1空間だけ離れて配置される第1内部電極と、
前記第2誘電体層に前記第1又は第2誘電体層を挟んで前記第1内部電極と対向するように配置され、前記第4面に露出し、前記第3面から第2空間だけ離れて配置される第2内部電極と、
前記第1空間の少なくとも一部に配置される第1誘電体パターンと、
前記第2空間の少なくとも一部に配置される第2誘電体パターンと、
前記第1内部電極と連結され、前記第3面に配置される第1外部電極と、
前記第2内部電極と連結され、前記第4面に配置される第2外部電極と、を含み、
前記第1及び第2誘電体パターンは、前記第1及び第2誘電体層とは異なる色相を有し、
前記第1及び第2誘電体パターンが前記第1及び第2内部電極と接する面積は、前記第1及び第2誘電体層が前記第1及び第2内部電極と接する面積よりも小さい、
積層セラミックキャパシタ。」

(相違点1)

本願発明は「第1内部電極」及び「第2内部電極」が本体の「第5面及び第6面に露出し」、「前記第5面及び第6面に配置される側面絶縁層」を含むのに対して、引用発明は「第1内部電極層23」及び「第2内部電極層23」が「積層体21」の側面に露出していない点。

(相違点2)

本願発明は「前記第1誘電体パターンは、前記第1内部電極の端部を覆うように積層方向に延長して配置される、又は前記第2誘電体パターンは、前記第2内部電極の端部を覆うように積層方向に延長して配置され」るのに対して、引用発明はそのような特定がない点。

(相違点3)

本願発明は「前記第1及び第2誘電体パターンは金属錯物を含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点。

第6 判断

上記相違点について検討する。

1 相違点1について

積層セラミックキャパシタにおいて、内部電極を本体の側面に露出させ、側面に側面絶縁層を設ける技術は周知である(例えば、引用文献2(上記「第4 2」を参照))。

ここで、引用発明の「第1及び第2内部電極層23の周囲の誘電体層22間に配置されている」「誘電体充填層」は、内部電極層23の厚みによる段差を無くすために設けたものであるから(引用文献1の【0026】を参照)、段差がない場合は必要ないものである。

したがって、引用発明に上記周知技術を適用し内部電極層23を積層体21の側面に露出させ、その場合、内部電極23における積層体21の側面に対応する側面側において段差がなくなることから、内部電極23における積層体21の側面に対応する側面側の誘電体充填層をなくすとともに、積層体21の側面に側面絶縁層を設ける構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

2 相違点2について

引用文献3(上記「第4 3」を参照)に記載されるように、導体パターン23(内部電極)の周囲に導体パターン23の厚みによる段差を無くすための誘電体パターン25を印刷するとき、誘電体パターン25を導体パターン23の端部を覆うように積層方向に延長して配置することは周知の技術である。

そして、引用文献1には、セラミックグリーンシート上に、まず、導体パターンを形成し、次いで、セラミックパターン(誘電体充填層)を形成する場合も記載されているので(【0011】)、引用発明に上記周知の技術を適用し、上記相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

3 相違点3について

引用文献1には「セラミックパターンが、焼成後にセラミック層と略同一の色彩となるように、着色剤はC、O、N、H原子など、脱バインダ時に燃焼分解する原子から構成される有機化合物が望ましい。」(【0040】)と記載されているものの、「セラミックパターン5が焼成後にセラミック層と異なる色彩となるようにしても良い。」(【0050】)と記載されているので、引用発明の「セラミックパターン5」に含有させる着色剤は燃焼分解する「高分子材料」に限らないことは明らかである。

そして、セラミック材料に、金属錯物(銅フタロシアニン等)で着色する技術は周知である(例えば、引用文献4(上記「第4 4」を参照)、引用文献5(上記「第4 5」を参照)、引用文献6(上記「第4 6」を参照))。

そうすると、引用発明において上記周知技術を採用し、着色剤として金属錯物を用いて、上記相違点3に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

4 意見書における主張について

請求人は令和6年3月5日の意見書において「本願発明は『前記第1及び第2誘電体パターンが前記第1及び第2内部電極と接する面積は、前記第1及び第2誘電体層(前記複数の誘電体層)が前記第1及び第2内部電極と接する面積よりも小さ』いという構成と『前記第1及び第2誘電体パターンは金属錯物を含む』という構成とを有することによって、『積層セラミックキャパシタの剛性の低下を防ぎながら、内部電極に及ぼす影響を最小化する』(段落0065、0070)といういずれの引用文献に記載も示唆もされていない顕著な効果を奏する。」と主に主張している。(8頁8-13行)

しかしながら、上記相違点3で検討したように、セラミック材料の着色に金属錯物(銅フタロシアニン等)を用いる技術は周知である。そして、上記周知技術においても本願発明と同じ着色剤を用いているので、セラミックの剛性の低下については本願発明と同様であるといえる。また、引用発明においても、本願発明と同様に、誘電体充填層が第1及び第2内部電極層23と接する面積は、第1及び第2誘電体層22が第1及び第2内部電極層23と接する面積よりも小さく(上記「第5 7」参照)、誘電体充填層の着色剤が内部電極層23に及ぼす影響は小さい。

そうすると、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

よって、上記主張は採用できない。

よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび

以上のとおり、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-018621

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