2022-017753
帽子の製造方法
- 審判番号
- 2022-017753
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-081016外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年11月07日
- 審決日
- 2024年09月25日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社シオジリ製帽
- 【請求人代理人】黒住 智彦
- 分類
- P18 .121-WZ (A42B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成30年4月19日(優先権主張 平成29年5月1日、平成29年11月21日)の出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。
(令和4年 8月 9日 :原査定の謄本の送達)
第2 本願発明
本願の請求項1~3に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は、令和6年5月2日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】着用者頭部の左前部を覆う略扇状の左前被覆部と、着用者頭部の右前部を覆う略扇状の右前被覆部と、着用者頭部の左横部を覆う略扇状の左横被覆部と、続きを表示(全19行)着用者頭部の右横部を覆う略扇状の右横被覆部と、着用者頭部の左後部を覆う略扇状の左後被覆部と、着用者頭部の右後部を覆う略扇状の右後被覆部と、を有する略半球状のクラウン表地が、互いに接合される複数枚の接合用生地によって構成された帽子の製造方法であって、少なくとも、クラウン表地における、左前被覆部及び右前被覆部で構成される前方被覆部と、左横被覆部、右横被覆部、左後被覆部及び右後被覆部で構成され、200~300°の中心角を有する後方被覆部とを、別の接合用生地によって構成し、クラウン表地における後方被覆部を、その左横被覆部から、左後被覆部と右後被覆部とを経て、右横被覆部に至る部分までにおいて連続する1枚の接合用生地によって構成する、又は、その左横被覆部から左後被覆部に至る部分までにおいて連続する接合用生地と、その右横被覆部から右後被覆部に至る部分までにおいて連続する接合用生地とからなる左右対称な2枚の接合用生地によって構成し、クラウン表地における後方被覆部を構成する生地と同じ枚数で略同一形状を為すクラウン裏地を、クラウン表地における後方被覆部の内面側に配し、クラウン裏地を、その周縁部のみでクラウン表地に対して接合し、その周縁部以外の部分ではクラウン表地に対して接合しない構造とするとともに、クラウン表地における後方被覆部を構成する生地に、当該生地を略球面状の凹部を有する雌型と略球面状の凸部を有する雄型とで挟んで雌型又は雄型に蒸気孔から蒸気を吹き付けながら型締めして加圧するファーミング加工を施すことを特徴とする帽子の製造方法。」
第3 当審拒絶理由の概要
令和6年3月13日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
拒絶理由(進歩性)
本願の請求項1~3に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3~4に例示される周知技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2009-161880号公報
2.登録実用新案第3187344号公報
3.特開2012-162828号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2014-167180号公報(周知技術を示す文献)
第4 当審の判断
当審は、以下に示すとおり、令和6年5月2日提出の手続補正書による補正及び意見書(以下「意見書」という。)の内容を考慮しても、上記第3に記載した拒絶理由(進歩性)は解消していないと判断する。
1 引用文献の記載、引用発明等
(1) 引用文献1
ア 引用文献1に記載された事項(下線は当審が付した。以下同様。)
「【請求項1】帽子本体が、前側で表側に位置する前側部分を構成する第1生地と、前側部分を除いた横側部分と後側部分のそれぞれの表側に位置する後側部分を構成する第2生地とを備え、少なくとも前記第2生地を通気性を有するメッシュ状部材から構成し、該メッシュ状部材に撥水処理を施したことを特徴とする帽子。」
「【0017】図1~図3に、釣りに際して好適に使用することができる釣り用帽子(以下において、単に帽子という)1を示している。この帽子1は、頭部を覆い被せることができるほぼ半球状の帽子本体(クラウン部とも言う)2と、この帽子本体2の底部周縁の特定箇所(図では周縁のほぼ1/3を占める箇所)、つまり前端部の底部に一端が縫着されて連結された鍔部3とを備えた野球帽タイプに構成されている。【0018】続きを表示(全12行)前記帽子本体2は、ほぼ同一形状でかつほぼ同一の大きさに構成されたほぼ三角形状の6枚の表側生地4と、前側に位置する2枚の表側生地4に対応する裏側に配置されるほぼ三角形状の2枚の裏側生地5と、これら表側生地4同士を繋ぎ合わせるとともに2枚の裏側生地5をこれに対応する2枚の表側生地4に縫着により一体化するための3本の帯状部材6とを備えている。具体的には、6枚の表側生地4を円周方向に配置するとともに、円周方向で隣り合う表側生地4の横側端部を内側に折り込んで横側端部同士を隙間無く対向位置させ、その状態でそれら隣り合う生地4,4の繋ぎ目に内側(裏側)から3本の直線状の帯状部材6を当て付けてから縫着している。そして、前側に位置する2枚の表側生地4を縫い合わせるときに、2枚の裏側生地5も合わせて縫い合わせることによって、2枚の表側生地4と2枚の裏側生地5とを一体化するようにしている。従って、表側生地4を縫い合わせてから表側生地4に裏側生地5を縫い合わせる場合に比べて、縫着工程数を減らすことができ、縫着作業を迅速に行うことができる。【0019】前記6枚の表側生地4のうちの前側部分に位置する第1生地4A,4Aの2枚は、透湿・防水性を有する生地から構成されている。具体的には、生地やフィルムに、水滴よりも小さく水蒸気よりも大きな孔を多数形成し、孔が形成された生地やフィルムに撥水加工を施すことにより透湿・防水性を有する生地を得ることができ、例えばゴアテックス(商標登録)や東レのエントラントなどを用いることができる。従って、雨水等の水滴が第1生地4A,4Aを通して帽子内部に入り込むことを阻止することができながらも、帽子内の水蒸気(湿気)を第1生地4A,4Aを通して帽子外部へ排出して帽子内が蒸れないようにしている。【0020】前記残りの4枚の表側生地4、つまり両横側部分の2枚と後側部分の2枚からなる4枚の第2生地4Bのそれぞれは、メッシュ状部材からなるとともに撥水処理を施して、通気性を有するとともに雨水を弾き飛ばす機能を備えている。そして、図3及び図5に示すように、前記メッシュ状部材からなる4枚の第2生地4Bのそれぞれの裏面には、同一形状で同一の大きさのほぼ三角形状の立体メッシュ7を備えている。これら4枚の立体メッシュ7も前記同様に帯状部材6にて一体化されている。前記各表側生地4の上部には、通気口4Kが形成され、その通気口4Kが大きくなることがならないように糸にて放射状に縫って菊孔に構成している。この通気孔4Kも撥水処理が施され、雨水が通気口4Kを通して帽子内部に入り込むことがないようにしている。尚、前記通気孔4Kの大きさは、水蒸気は通すことができるが、雨水を通すことができない大きさに形成することになる。」
「【0026】前記実施形態では、前側に位置する2枚の第1生地4A,4Aに対応する2枚の裏側生地5,5を備えさせた場合を示したが、他の4枚の少なくとも1枚に裏側生地5を備えさせてもよい。また、表側生地4を6枚から構成したが、何枚で構成してもよい。」
「【図1】[図:0001416962000001.jpg]」
「【図3】[図:0001416962000002.jpg]」
「【図5】[図:0001416962000003.jpg]」
イ 引用文献1に記載されていると認められる事項
(ア)上記アに示した、引用文献1の【請求項1】、【0017】~【0020】、【0026】は、帽子について記載されているものであるが、当該帽子の構成要素や、これら構成要素の縫着及び一体化についても説明がなされているものであり、引用文献1には、実質的に「帽子の製造方法」が記載されていることが明らかである。
(イ)【0018】の「前側に位置する2枚の表側生地4に対応する裏側に配置されるほぼ三角形状の2枚の裏側生地5と、これら表側生地4同士を繋ぎ合わせるとともに2枚の裏側生地5をこれに対応する2枚の表側生地4に縫着により一体化するための3本の帯状部材6とを備えている。」との記載と、【0020】の「両横側部分の2枚と後側部分の2枚からなる4枚の第2生地4B」及び「前記メッシュ状部材からなる4枚の第2生地4Bのそれぞれの裏面には、同一形状で同一の大きさのほぼ三角形状の立体メッシュ7を備えている。これら4枚の立体メッシュ7も前記同様に帯状部材6にて一体化されている。」との記載より、引用文献1には、「両横側及び後側に位置する第2生地4Bのそれぞれの裏面には、同一形状で同一の大きさのほぼ三角形状の立体メッシュ7を備え、これら第2生地4B同士を繋ぎ合わせるとともに立体メッシュ7をこれに対応する第2生地4Bに縫着により一体化する」ことが記載されていることは明らかである。
ウ 引用発明
上記ア及びイの事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「前側部分に位置するほぼ三角形状の第1生地4A、4Aの2枚が、透湿・防水性を有する生地から構成され、両横側部分の2枚と後側部分の2枚からなる4枚の第2生地4Bのそれぞれは、メッシュ状部材からなり、両横側及び後側に位置する第2生地4Bのそれぞれの裏面には、同一形状で同一の大きさのほぼ三角形状の立体メッシュ7を備え、これら第2生地4B同士を繋ぎ合わせるとともに立体メッシュ7をこれに対応する第2生地4Bに縫着により一体化する、帽子の製造方法。」
(2) 引用文献2
ア 引用文献2に記載された事項
「【0019】<本体部が3枚の成形シート10で形成されている場合>図4に示すように、本体部は、3枚の成形シート10で構成されている。3枚の成形シート10は、それぞれ、本体部の頂部を頂点とする略三角形状または略円弧状のパターンに形成されている。3枚の成形シート10のうち、本体部の前方の成形シート10は、本体部の領域の略1/3~1/4の領域を占めている。そのため、帽子を正面から見た時、本体部の前方の成形シート10が主に視認される。このように、本体部の前方に比較的サイズが大きい成形シート10を設けることにより、他人が容易に視認できるように、種々のマークやデザインを該前方成形シート10上に施すことができる。」
「【図4】[図:0001416962000004.jpg]」
イ 引用文献2記載事項
上記アから、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「帽子の製造方法であり、本体部における後方被覆部を、その左横被覆部から左後被覆部に至る部分までにおいて連続する成形シート10と、その右横被覆部から右後被覆部に至る部分までにおいて連続する成形シート10とからなる左右対称な2枚の成形シート10によって構成すること。」
(3)周知技術
ア 引用文献3の記載
引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【0017】続いて、図6に示すように、加熱圧縮装置50における第一圧縮板51と第二圧縮板52との間にクラウン形成用生地11を挟みこみ、クラウン形成用生地11に加熱圧縮処理を施す。図6は、第一実施態様の帽子におけるクラウン形成用生地11に加熱圧縮処理を施している様子を、クラウン形成用生地11の表面に垂直な平面で切断した状態を示した拡大断面図である。第一圧縮板51及び第二圧縮板52は、球面状に湾曲した形態となっており、クラウン形成用生地11を球面状に湾曲した状態で圧縮することが可能な構造のものとなっている。第一圧縮板51及び第二圧縮板52には、それぞれ蒸気孔51a,52aが設けられており、これらの蒸気孔51a,52aを通じてクラウン形成用生地11に蒸気(加熱気体)を吹き付けることができるようになっている。【0018】この蒸気により、クラウン形成用生地11(クラウン表地11a又は接着芯地11b(接着剤11cを含む)に含まれる熱可塑性素材を融点以上、あるいは軟化点以上まで加熱することができるようになっている。前記熱可塑性素材は、溶解又は軟化した後、再び冷却することにより、第一圧縮板51と第二圧縮板52とに沿った形状(球面状に湾曲した形状)で硬化してその形状で保たれるようになる。クラウン形成用生地11に吹き付ける蒸気は、図示省略の蒸気発生手段により発生される。第一圧縮板51と第二圧縮板52とによってクラウン形成用生地11に加える具体的な圧力は、特に限定されないが、通常、クラウン形成用生地11の皺を伸ばすことができ、かつクラウン形成用生地11が潰れない程度の圧力とされる。」
「【図6】[図:0001416962000005.jpg]」
イ 引用文献4の記載
引用文献4には、次の事項が記載されている。
「【0011】さらに、本発明の帽子の製造方法において、プレス成形工程で前側レンゲを加熱する方法は特に限定されない。例えば、雄型や雌型を、その内部に収容した熱源(ヒーターやバーナーなど)によって加熱する方法などが挙げられる。しかし、前側レンゲにダメージを与えないようにその保形性を高めることや、前側レンゲにシワが形成されるのを防止することなどを考慮すると、プレス成形工程における前側レンゲの加熱は、雄型の凸面及び/又は雌型の凹面に設けられた複数の蒸気孔から吹き付けられる加圧蒸気によって行うようにすると好ましい。」
「【0026】また、本実施態様においては、図3に示すように、雄型51の凸面51aを蒸気拡散シート53で覆っている。このため、複数の蒸気孔51bから吹き出された加圧蒸気は、蒸気拡散シート53で拡散されてから前側レンゲ11,12に吹き付けられるようになっている。したがって、前側レンゲ11,12の中心部を均一に加熱することができるようになっている。蒸気拡散シート53の素材は、通気性を有するものであれば特に限定されないが、クッション性を有する厚手(非圧縮時の厚さが1~20mm程度)のシート又はマットを用いると好ましい。これにより、型締めの際に前側レンゲ11,12が狭い隙間内にピッタリと挟み込まれないようにして、前側レンゲ11,12にシワが形成されるのを防止することが可能になる。本実施態様においては、蒸気孔51bが設けられた雄型51だけでなく、蒸気孔51bが設けられていない雌型52の凹面も、蒸気拡散シート53と同じ素材からなる蒸気拡散シート54で覆っており、前側レンゲ11,12にシワがさらに形成されにくくしている。」
「【図3】[図:0001416962000006.jpg]」
「【図4】[図:0001416962000007.jpg]」
ウ 周知技術について
上記ア及びイにより、以下の技術事項は周知技術(以下「周知技術」という。)であると認める。
「帽子の製造方法において、生地を、凹部を有する雌型と凸部を有する雄型とで挟んで雌型又は雄型に蒸気孔から蒸気を吹き付けながら型締めして加圧加工を施すこと。」
2 対比
本願の請求項1にかかる発明(以下「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。
引用発明の「前側部分に位置するほぼ三角形状の第1生地4A、4Aの2枚」は、「着用者頭部の左前部を覆う略扇状の左前被覆部」及び「着用者頭部の右前部を覆う略扇状の右前被覆部」に相当し、引用発明の「両横側部分の2枚と後側部分の2枚からなる4枚の第2生地4Bのそれぞれ」は、本願発明の「着用者頭部の左横部を覆う略扇状の左横被覆部」、「着用者頭部の右横部を覆う略扇状の右横被覆部」、「着用者頭部の左後部を覆う略扇状の左後被覆部」及び「着用者頭部の右後部を覆う略扇状の右後被覆部」に相当する。
本願発明の「少なくとも、クラウン表地における、左前被覆部及び右前被覆部で構成される前方被覆部と、左横被覆部、右横被覆部、左後被覆部及び右後被覆部で構成され、200~300°の中心角を有する後方被覆部とを、別の接合用生地によって構成し、」と、引用発明の「前側部分に位置するほぼ三角形状の第1生地4A、4Aの2枚が、透湿・防水性を有する生地から構成され、両横側部分の2枚と後側部分の2枚からなる4枚の第2生地4Bのそれぞれは、メッシュ状部材からなり、」は、「少なくとも、クラウン表地における、左前被覆部及び右前被覆部で構成される前方被覆部と、左横被覆部、右横被覆部、左後被覆部及び右後被覆部で構成される後方被覆部とを、別の接合用生地によって構成」する限りにおいて一致する。
また、引用発明の「両横側及び後側に位置する第2生地4Bのそれぞれの裏面には、同一形状で同一の大きさのほぼ三角形状の立体メッシュ7を備え、これら第2生地4B同士を繋ぎ合わせるとともに立体メッシュ7をこれに対応する第2生地4Bに縫着により一体化する」ことは、本願発明の「略半球状のクラウン表地が、互いに接合される複数枚の接合用生地によって構成」すること及び「クラウン表地における後方被覆部を構成する生地と同じ枚数で略同一形状を為すクラウン裏地を、クラウン表地における後方被覆部の内面側に配し、クラウン裏地を、その周縁部のみでクラウン表地に対して接合し、その周縁部以外の部分ではクラウン表地に対して接合しない構造とする」ことに相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、
「着用者頭部の左前部を覆う略扇状の左前被覆部と、着用者頭部の右前部を覆う略扇状の右前被覆部と、着用者頭部の左横部を覆う略扇状の左横被覆部と、着用者頭部の右横部を覆う略扇状の右横被覆部と、続きを表示(全14行)着用者頭部の左後部を覆う略扇状の左後被覆部と、着用者頭部の右後部を覆う略扇状の右後被覆部と、を有する略半球状のクラウン表地が、互いに接合される複数枚の接合用生地によって構成された帽子の製造方法であって、少なくとも、クラウン表地における、左前被覆部及び右前被覆部で構成される前方被覆部と、左横被覆部、右横被覆部、左後被覆部及び右後被覆部で構成される後方被覆部とを、別の接合用生地によって構成し、クラウン表地における後方被覆部を構成する生地と同じ枚数で略同一形状を為すクラウン裏地を、クラウン表地における後方被覆部の内面側に配し、クラウン裏地を、その周縁部のみでクラウン表地に対して接合し、その周縁部以外の部分ではクラウン表地に対して接合しない構造とする、帽子の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
「左横被覆部、右横被覆部、左後被覆部及び右後被覆部で構成される後方被覆部」について、本願発明は、「200~300°の中心角を有する」のに対して、引用発明は中心角の特定を有しない点。
<相違点2>
本願発明が「クラウン表地における後方被覆部を、その左横被覆部から、左後被覆部と右後被覆部とを経て、右横被覆部に至る部分までにおいて連続する1枚の接合用生地によって構成する、又は、その左横被覆部から左後被覆部に至る部分までにおいて連続する接合用生地と、その右横被覆部から右後被覆部に至る部分までにおいて連続する接合用生地とからなる左右対称な2枚の接合用生地によって構成」するのに対し、引用発明は、当該本願発明の構成は有しない点。
<相違点3>
本願発明が「クラウン表地における後方被覆部を構成する生地に、当該生地を略球面状の凹部を有する雌型と略球面状の凸部を有する雄型とで挟んで雌型又は雄型に蒸気孔から蒸気を吹き付けながら型締めして加圧するファーミング加工を施す」のに対して、引用発明は、、当該本願発明の構成は有しない点。
3 判断
以下、各相違点について検討する。
<相違点1について>
引用発明は、「両横側部分の2枚と後側部分の2枚からなる4枚の第2生地4Bのそれぞれは、メッシュ状部材からなり」という構成を有するが、「両横側部分の2枚と後側部分の2枚からなる4枚の第2生地4B」が本願発明の「後方被覆部」に相当するものである。ここで、引用文献1の【0018】には、「前記帽子本体2は、ほぼ同一形状でかつほぼ同一の大きさに構成されたほぼ三角形状の6枚の表側生地4」と記載されていることから、引用発明における「両横側部分の2枚と後側部分の2枚からなる4枚の第2生地4B」の中心角は約240°であることは明らかである。
そうすると、相違点1は実質的な相違点ではない。
<相違点2について>
引用文献1の【0026】には、「前記実施形態では、・・(中略)・・表側生地4を6枚から構成したが、何枚で構成してもよい。」と記載されている。そして、引用発明と上記「引用文献2記載事項」はともに、帽子の製造方法という共通の技術分野に属しており、引用文献1の【0026】の上記記載と併せて鑑みると、引用発明に引用文献2記載事項を適用することにより、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
<相違点3について>
引用発明に上記周知技術を適用し、引用発明において、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得た程度の事項にすぎない。
4 効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2記載事項の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
5 請求人の主張について
(1)請求人は意見書にて、「しかし、引用文献1の帽子において、表側生地4は、同一形状でかつ同一の大きさで構成することを前提としたものとなっています。
・・・(中略)・・・
引用文献1の段落0026の上記記載から、
「表側生地4を3枚で構成し、その表側生地4のうち、前側の2枚を、それぞれ中心角が60°の扇状(三角形状)とし、後側の1枚を、中心角が240°の扇状(三角状)とする」構成や、
「表側生地4を4枚で構成し、その表側生地4のうち、前側の2枚を、それぞれ中心角が60°の扇状(三角形状)とし、後側の2枚を、それぞれ中心角が120°の扇状(三角状)とする」構成を想起するためには、
少なくとも、引用文献1において、「複数枚の表側生地4のうち、一部の表側生地4の形状や寸法を、他の表側生地4の形状や寸法とは異ならせてよい」という旨の記載が必要であると考えるところ、そのような記載は、引用文献1には全くありません。」と主張している。
しかしながら、当該請求人の主張は採用することはできない。以下説明する。
本願発明は、「少なくとも、クラウン表地における、
左前被覆部及び右前被覆部で構成される前方被覆部と、
左横被覆部、右横被覆部、左後被覆部及び右後被覆部で構成され、200~300°の中心角を有する後方被覆部とを、
別の接合用生地によって構成し、
クラウン表地における後方被覆部を、
その左横被覆部から、左後被覆部と右後被覆部とを経て、右横被覆部に至る部分までにおいて連続する1枚の接合用生地によって構成する、又は、
その左横被覆部から左後被覆部に至る部分までにおいて連続する接合用生地と、その右横被覆部から右後被覆部に至る部分までにおいて連続する接合用生地とからなる左右対称な2枚の接合用生地によって構成し、」という発明特定事項から明らかなとおり、「左前被覆部及び右前被覆部で構成される前方被覆部」については、「左前被覆部から、右前被覆部に至る部分までにおいて連続する1枚の接合用生地によって構成する」態様及び「左前被覆部を構成する接合用生地と、右前被覆部を構成する接合用生地とからなる左右対称な2枚の接合用生地によって構成する」態様を含んでいるものである。
すなわち、前方被覆部を「左前被覆部から、右前被覆部に至る部分までにおいて連続する1枚の接合用生地によって構成する」態様とし、後方被覆部を「その左横被覆部から左後被覆部に至る部分までにおいて連続する接合用生地と、その右横被覆部から右後被覆部に至る部分までにおいて連続する接合用生地とからなる左右対称な2枚の接合用生地によって構成」する態様とした場合、請求人が主張する引用文献1の「表側生地4は、同一形状でかつ同一の大きさで構成することを前提としたもの」という技術事項に合致したものとなることは明らかである。よって、上記請求人の主張は、請求項の記載に基づかない記載であり、採用することはできない。
(2)請求人は意見書にて、「また仮に、引用文献1の帽子において、「複数枚の表側生地4のうち、一部の表側生地4の形状や寸法を、他の表側生地4の形状や寸法とは異ならせてよい」という旨が読み取れ、例えば、「表側生地4を3枚で構成し、その表側生地4のうち、前側の2枚を、それぞれ中心角が60°の扇状(三角形状)とし、後側の1枚を、中心角が240°の扇状(三角状)とする」構成が容易に思いつけたとしても、本願発明の構成には至らないと考えます。
というのも、その引用文献1の発明に、引用文献2の記載事項を適用してできるのは、以下の参考図1及び参考図2(参考図1及び参考図2における符号は、引用文献1のものではなく、本願発明のものに揃えています。)に示した帽子だからです。
・・・(中略)・・・
上記の参考図1及び参考図2の帽子では、クラウン表地11(引用文献1では「表側生地4」に相当)とクラウン裏地12(引用文献1では「立体メッシュ7」に相当)とを、クラウン10の中心から放射状に配した複数本の裏打ち用帯片40(引用文献1では「帯状部材6」に相当)に沿って縫着しています。それぞれの裏打ち用帯片40(帯状部材6)は、クラウン10の一側から他側に至るまで延びる長い帯状(クラウン10をその内面に沿って直径方向にわたる長い帯状)を為しています。
このため、クラウン表地11(表側生地4)のうち、後側に配される部分14を、中心角240°程度に大きく形成したとしても、クラウン裏地12(立体メッシュ7)は、上記部分14の周縁に沿った箇所だけでなく、クラウン表地11における、左横部分11b1と左後部分11b3との境界線や、右横部分11b2と右後部分11b4との境界線や、左後部分11b3と右後部分11b4との境界線に沿った箇所においても、クラウン表地11(表側生地4)に対して縫着された状態となります。
・・・(中略)・・・
引用文献1には、「一部の帯状部材6を無くして、その無くした箇所では、表側生地4と立体メッシュ7とを縫着しない」旨の記載はありません。」と主張している。
しかしながら、当該請求人の主張は採用することはできない。以下説明する。
まず、引用文献1には、請求人の主張する「それぞれの裏打ち用帯片40(帯状部材6)は、クラウン10の一側から他側に至るまで延びる長い帯状(クラウン10をその内面に沿って直径方向にわたる長い帯状)を為」すという構成とすることについて、記載されていない。そして、引用文献1の【図1】~【図3】の「帯状部材6」の態様は、【0018】の「前記帽子本体2は、ほぼ同一形状でかつほぼ同一の大きさに構成されたほぼ三角形状の6枚の表側生地4と、前側に位置する2枚の表側生地4に対応する裏側に配置されるほぼ三角形状の2枚の裏側生地5と、これら表側生地4同士を繋ぎ合わせるとともに2枚の裏側生地5をこれに対応する2枚の表側生地4に縫着により一体化するための3本の帯状部材6とを備えている。」という記載の通り、6枚の表側生地4の場合に対して図示したものであることは明らかである。
また、【0018】の「前記帽子本体2は、ほぼ同一形状でかつほぼ同一の大きさに構成されたほぼ三角形状の6枚の表側生地4と、前側に位置する2枚の表側生地4に対応する裏側に配置されるほぼ三角形状の2枚の裏側生地5と、これら表側生地4同士を繋ぎ合わせるとともに2枚の裏側生地5をこれに対応する2枚の表側生地4に縫着により一体化するための3本の帯状部材6とを備えている。具体的には、6枚の表側生地4を円周方向に配置するとともに、円周方向で隣り合う表側生地4の横側端部を内側に折り込んで横側端部同士を隙間無く対向位置させ、その状態でそれら隣り合う生地4,4の繋ぎ目に内側(裏側)から3本の直線状の帯状部材6を当て付けてから縫着している。そして、前側に位置する2枚の表側生地4を縫い合わせるときに、2枚の裏側生地5も合わせて縫い合わせることによって、2枚の表側生地4と2枚の裏側生地5とを一体化するようにしている。従って、表側生地4を縫い合わせてから表側生地4に裏側生地5を縫い合わせる場合に比べて、縫着工程数を減らすことができ、縫着作業を迅速に行うことができる。」との記載からは、裏側生地5(クラウン裏地)を、その周縁部で表側生地4(クラウン表地)に対して接合することが記載されているものと認められ、接合する部分に帯状部材6が存在していれば足りるものである。
以上、引用文献1には、帯状部材6が、裏側生地5(クラウン裏地)を、その周縁部で表側生地4(クラウン表地)に対して接合するものである旨記載されているのみであり、「それぞれの裏打ち用帯片40(帯状部材6)は、クラウン10の一側から他側に至るまで延びる長い帯状(クラウン10をその内面に沿って直径方向にわたる長い帯状)を為」すという態様を前提とする請求人の上記主張は採用することはできない。
なお、【0020】の「前記残りの4枚の表側生地4、つまり両横側部分の2枚と後側部分の2枚からなる4枚の第2生地4Bのそれぞれは、メッシュ状部材からなるとともに撥水処理を施して、通気性を有するとともに雨水を弾き飛ばす機能を備えている。
そして、図3及び図5に示すように、前記メッシュ状部材からなる4枚の第2生地4Bのそれぞれの裏面には、同一形状で同一の大きさのほぼ三角形状の立体メッシュ7を備えている。これら4枚の立体メッシュ7も前記同様に帯状部材6にて一体化されている。」という記載から明らかなとおり、前記【0018】の記載は、後方被覆部においても同様にあてはまるものである。
よって、「それぞれの裏打ち用帯片40(帯状部材6)は、クラウン10の一側から他側に至るまで延びる長い帯状(クラウン10をその内面に沿って直径方向にわたる長い帯状)を為」すことを前提とする上記請求人の主張は、採用することはできない。
6 小括
よって、本願発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
上記の通り、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1~4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-017753