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特許拒絶査定不服審判

2023-008719

帽子のつば用芯材

審判番号
2023-008719
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-228586
請求日
2023年05月29日
審決日
2025年10月14日
公報発行日
2025年11月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】積水成型工業株式会社
  • 【請求人代理人】勝又 政徳
  • 【請求人代理人】酒井 善典
  • 【請求人代理人】上田 ▲茂▼
  • 【請求人代理人】小川 有佳子
  • 【請求人代理人】岩谷 龍
  • 【請求人】百々株式会社
  • 【請求人代理人】勝又 政徳
  • 【請求人代理人】酒井 善典
  • 【請求人代理人】上田 ▲茂▼
  • 【請求人代理人】小川 有佳子
  • 【請求人代理人】岩谷 龍
審判長/審判官
  • 審判長 神山 茂樹
  • 審判官 稲葉 大紀
  • 審判官 葛原 怜士郎
分類
P18 .121-WY (A42B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2018-228586「帽子のつば用芯材」拒絶査定不服審判事件〔令和2年6月11日出願公開、特開2020-90742、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 この出願(以下「本願」という。)は、平成30年12月5日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和 4年 9月20日付け:拒絶理由通知書 同年11月14日 :意見書、手続補正書の提出 令和 5年 2月21日付け:拒絶査定 (同月28日 :拒絶査定の謄本の送達) 同年 5月29日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 7年 4月 4日付け:拒絶理由通知書 同年 5月22日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1~5に係る発明は、令和7年5月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~5に係る発明(以下「本願発明1」~「本願発明5」という。)は以下のとおりである。 「 【請求項1】 発泡倍率10倍以下の、重量平均分子量10万~50万、密度0.945~0.965g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂よりなるポリエチレン系樹脂発泡層の両面に機械的強度を付与する未発泡のポリエチレン系樹脂層が積層されている中心材の両面に表面シートが積層されている積層成形体であって、該表面シートは少なくとも2層の形状保持シートからなり、該形状保持シートは延伸オレフィン系樹脂シートであって、延伸方向(MD方向)に対し直角方向(TD方向)に180度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の曲げ戻り角が20度以下であり、隣り合って積層されている形状保持シートの延伸方向が異なり、且つ、上記積層成形体は、積層成形体を、いずれかの形状保持シートの延伸方向(MD方向)に対し直角方向(TD方向)に180度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の曲げ戻り角が25度以下である帽子のつば用芯材において、表面シートを形成する複数の形状保持シート同士の間と表面シートと中心材の間には、上記形状保持シート及び中心材を構成するオレフィン系樹脂の融点より低い融点を有するホットメルト型オレフィン系樹脂シートが積層されて、加熱加圧することにより接着されてなる帽子のつば用芯材。 【請求項2】 隣り合って積層されている形状保持シートの延伸方向が直交していることを特徴とする請求項1記載の帽子のつば用芯材。 【請求項3】 中心材の、未発泡のポリエチレン系樹脂層とポリエチレン系樹脂発泡層と未発泡のポリエチレン系樹脂層の厚さ比が、1:1~3:1であることを特徴とする請求項1又は2記載の帽子のつば用芯材。 【請求項4】 比重が0.83~0.92であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の帽子のつば用芯材。 【請求項5】 引張強度が100~200MPaであり、いずれかの形状保持シートの延伸方向(MD方向)に対し直角方向(TD方向)への曲げ弾性率が3500~4500MPaであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の帽子のつば用芯材。」 第3 原査定の概要 令和5年2月21日付け拒絶査定(以下「原査定」という。)の概要は、次のとおりである。 (進歩性)本願の請求項1~5に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献一覧> 1.特開2009-153701号公報 第4 当審拒絶理由の概要 令和7年4月4日付けで当審において通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりのものである。 (進歩性)本願の請求項1~5に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項、及び引用文献3に記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献一覧> 1.特開2009-153701号公報 2.特開2009-101583号公報 3.国際公開第2016/042798号 第5 引用文献に記載された事項及び発明 1 引用文献1について (1) 引用文献1の記載 引用文献1には次の記載がある。ここで、下線は当審において付与したものであり、「・・・」は省略を示す。以下同様。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、骨折した鼻を保護することのできる鼻保護部材に関する。 【背景技術】 【0002】 交通事故やスポーツの際の事故で鼻を骨折することはよくあることであり、骨折した鼻の回復には鼻をそのまま固定して自然治癒を待つしかないが、この場合外部からの衝撃が加えられると再度骨折してしまい回復が遅れるので、外部からの衝撃を緩和又は削除しうる強度を有する部材で保護する必要がある。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明の目的は、上記問題点に鑑み、容易に屈曲でき、屈曲後はその形状を保持でき且つ機械的強度が高く鼻を確実に保護することができる鼻保護部材を提供することにある。 ・・・ 【0009】 上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートは形状保持性を有しているが、形状保持性は、延伸ポリオレフィン系樹脂シートを180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下であり、好ましくは180度折曲げ戻り角度θが20度以下で且つ90度折曲げ戻り角度θが20度未満、更に好ましくは180度折曲げ戻り角度θが20度以下で且つ90度折曲げ戻り角度θが15度以下である。180度及び90度折曲げ時の折曲げ戻り角度θのいずれか一方、特に90度折曲げ戻り角度θが20度を越えると、充分な形状保持性が得られないことがある。」 「【0011】 上記ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、重量平均分子量が10万未満の場合には、脆くなり、延伸性が低下したり、十分な機械的強度又は耐クリープ性を有する延伸ポリオレフィン系樹脂シートを得ることができにくくなり、逆に、50万を超えると、溶融粘度が高くなり、熱溶融成形加工性が低下し、均一なシートが得られにくくなるので10万~50万が好ましい。尚、本発明において、重量平均分子量はゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値である。 【0012】 又、上記ポリオレフィン系樹脂のメルトインデックス(以下、MI)はフィルム成形性が優れている0.1~20(g/10分)が好ましく、より好ましくは0.2~10(g/10分)である。尚、MIとは、JISK7210に規定されている熱可塑性樹脂の溶融粘度を表す指標である。更に、高密度ポリエチレン樹脂の場合は、密度は小さくなると延伸しても機械的強度が向上しなくなるので、0.94g/cm3以上が好ましい。 【0013】 上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートとしては、重量平均分子量が10万~50万のポリオレフィン系樹脂シートが延伸倍率5倍以上に一軸延伸された形状保持性を有する延伸ポリオレフィン系樹脂シートが好ましい。」 「【0039】 上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートの表面には、複数の延伸ポリオレフィン系樹脂シートを熱融着することにより積層するための第2のポリオレフィン系樹脂層が積層されてもよい。第2のポリオレフィン系樹脂層は延伸ポリオレフィン系樹脂シートの片面のみに積層されてもよいし、両面に積層されてもよい。 【0040】 上記第2のポリオレフィン系樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂としては、延伸ポリオレフィン系樹脂シートに積層するのであるから、前述の延伸ポリオレフィン系樹脂シートを構成するポリオレフィン系樹脂と同一種類のものが好ましいが、延伸ポリオレフィン系樹脂シートを熱融着する際に接着剤として作用するのであるから、延伸ポリオレフィン系樹脂シートを構成するポリオレフィン系樹脂の溶融温度より低い溶融温度のポリオレフィン系樹脂が好ましく、線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が好ましい。 【0041】 第2のポリオレフィン系樹脂層を延伸ポリオレフィン系樹脂シートに積層する方法は従来公知の任意の方法が採用されればよく、例えば、第2のポリオレフィン系樹脂層と延伸ポリオレフィン系樹脂シートを接着剤で接着する方法、延伸ポリオレフィン系樹脂シートに第2のポリオレフィン系樹脂を溶融押出して積層する方法等があげられる。」 「【0050】 上記低発泡合成樹脂シートを構成する合成樹脂としては、発泡しうる合成樹脂であればよく、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等があげられるが、延伸ポリオレフィン系樹脂シートと積層した際に形状保持性が低下したり、曲げにくくならない合成樹脂が好ましく、延伸ポリオレフィン系樹脂シートを構成するポリオレフィン系樹脂と同一のポリオレフィン系樹脂が好ましい。」 「【0069】 得られた延伸ポリエチレン樹脂シートの両面に、線状低密度ポリエチレン樹脂(融点121℃)を押出し、厚さ30μmの線状低密度ポリエチレン樹脂層を積層して積層延伸ポリエチレン樹脂シートを得た。得られた積層延伸ポリエチレン樹脂シートを図1に示した形状に打抜いて鼻保護部材1を得た。延伸方向は図において左右方向である。」 「【0071】 (実施例2) 重量平均分子量(Mw)33万、融点135℃の高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製)を、同方向二軸混練押出機(プラスチック工学研究所製)に供給して樹脂温度200℃で溶融混練した後、溶融混練物をロール温度110℃に制御したカレンダー成形機にて、幅370mm、厚さ2.5mmにシート成形してポリエチレン樹脂シートを得た。 【0072】 得られたポリエチレン樹脂シートを125℃に加熱した圧延成形機(積水工機製作所製)を用いて圧延倍率9.5倍に圧延し、厚さ0.27mmの圧延ポリエチレン樹脂シートを得た。得られた圧延ポリエチレン樹脂シートを110℃に加熱された熱風加熱式の多段延伸装置(協和エンジニアリング製)にて1.83倍の多段延伸を行い、総延伸倍率17倍、幅280mm、厚さ0.19mmの延伸ポリエチレン樹脂シートを得た。 【0073】 得られた延伸ポリエチレン樹脂シートをピンチロールが設置され、125℃に設定されているライン長19.25mの熱風加熱槽に、入口速度2.75m/minで供給し、出口速度2.75m/minに設定して7分間1次アニールを行い、続いて同様にして2次アニールを行って、アニールされた延伸ポリエチレン樹脂シートを得、その後60℃の恒温槽に供給し、24時間エージングして、エージングされた延伸ポリエチレン樹脂シートを得た。 【0074】 得られた延伸ポリエチレン樹脂シートを幅1cm、長さ15cmに切断し、延伸ポリエチレン樹脂シートの延伸方向と直交するように180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θを測定したところ、共に5度~10度であった。 【0075】 得られた延伸ポリエチレン樹脂シートの両面に、線状低密度ポリエチレン樹脂(融点121℃)を押出し、厚さ30μmの線状低密度ポリエチレン樹脂層を積層して厚さ0.25mmの積層延伸ポリエチレン樹脂シートを得た。得られた積層延伸ポリエチレン樹脂シートを幅1cm、長さ15cmに切断し、積層延伸ポリエチレン樹脂シートの延伸方向と直交するように180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θを測定したところ、共に5度~10度であった。 ・・・ 【0077】 又、低発泡ポリエチレン樹脂シート2は、発泡倍率2倍、厚さ0.3mmの高密度ポリエチレン樹脂層の両面に厚さ0.1mmの未発泡線状低密度ポリエチレン樹脂層が共押出により積層されており、総発泡倍率が1.5倍、厚さが0.5mmであった。 【0078】 得られた鼻保護部材を積層延伸ポリエチレン樹脂シート3,31の延伸方向と直交するように90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θを測定したところ、10度~15度であった。 【0079】 (実施例3) 実施例2で使用した低発泡ポリエチレン樹脂シートの両面に、実施例2で得られた積層延伸ポリエチレン樹脂シートを2枚ずつ熱融着し、図1に示した形状に打抜いて鼻保護部材を得た。図3は得られた鼻保護部材の断面図であり、低発泡ポリエチレン樹脂シート2の一面に、低発泡ポリエチレン樹脂シート2側から積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、41が順次熱融着され、他面に低発泡ポリエチレン樹脂シート2側から積層延伸ポリエチレン樹脂シート5、51が順次熱融着されている。 【0080】 低発泡ポリエチレン樹脂シート2側の積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5の延伸方向は図において共に前後方向であり同一である。又、外側の積層延伸ポリエチレン樹脂シート41、51の延伸方向は図において共に左右方向であり同一である。従って、積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5の延伸方向と積層延伸ポリエチレン樹脂シート41、51の延伸方向は直交している。 【0081】 得られた鼻保護部材を積層延伸ポリエチレン樹脂シート41,51の延伸方向と直交するように90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θを測定したところ、10度~15度であった。」 「【図3】 [図:0001428441000001.jpg] 」 (2) 引用文献1の記載から認定できる事項 ア 実施例3の低発泡ポリエチレン樹脂シート2について 【0077】の実施例2についての「低発泡ポリエチレン樹脂シート2は、発泡倍率2倍・・・の高密度ポリエチレン樹脂層の両面に・・・未発泡線状低密度ポリエチレン樹脂層が共押出により積層されており」という記載と、【0079】の「(実施例3) 実施例2で使用した低発泡ポリエチレン樹脂シート」という記載から、【0079】~【0081】、【図3】に記載された実施例3の低発泡ポリエチレン樹脂シート2は、発泡倍率2倍の高密度ポリエチレン樹脂層の両面に未発泡線状低密度ポリエチレン樹脂層が積層されていることは明らかである。 イ 実施例3の積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5、41、51について 【0075】の実施例2についての「延伸ポリエチレン樹脂シートの両面に、線状低密度ポリエチレン樹脂・・・を押出し、・・・線状低密度ポリエチレン樹脂層を積層して・・・積層延伸ポリエチレン樹脂シートを得た」という記載と、【0079】の「(実施例3)・・・実施例2で得られた積層延伸ポリエチレン樹脂シート」という記載から、【0079】~【0081】、【図3】に記載された実施例3の積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5、41、51は、延伸ポリエチレン樹脂シートの両面に線状低密度ポリエチレン樹脂層を積層して得たものであることは明らかである。 加えて、【0074】の実施例2についての「延伸ポリエチレン樹脂シートを幅1cm、長さ15cmに切断し、延伸ポリエチレン樹脂シートの延伸方向と直交するように180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θを測定したところ、共に5度~10度であった」という記載から、【0079】~【0081】、【図3】に記載された実施例3の積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5、41、51における延伸ポリエチレン樹脂シートも同様に、延伸ポリエチレン樹脂シートの延伸方向と直交するように180度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θが5度~10度であることは明らかである。 ウ 線状低密度ポリエチレン樹脂層について 上記イのとおり、【0079】~【0081】、【図3】に記載された実施例3の積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5、41、51は、延伸ポリエチレン樹脂シートの両面に線状低密度ポリエチレン樹脂層を積層して得たものである。 また、【0079】には「低発泡ポリエチレン樹脂シート2の一面に、低発泡ポリエチレン樹脂シート2側から積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、41が順次熱融着され、他面に低発泡ポリエチレン樹脂シート2側から積層延伸ポリエチレン樹脂シート5、51が順次熱融着されている」と記載されている。 ここで、【0039】の「上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートの表面には、複数の延伸ポリオレフィン系樹脂シートを熱融着することにより積層するための第2のポリオレフィン系樹脂層が積層されてもよい」という記載を踏まえれば、【0039】に記載された「複数の延伸ポリオレフィン系樹脂シートを熱融着することにより積層するための第2のポリオレフィン系樹脂層」が、【0079】~【0081】、【図3】に記載された実施例3の積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5、41、51を構成する「線状低密度ポリエチレン樹脂層」を意味すると認められる。 加えて、【0039】に記載の「延伸ポリオレフィン系樹脂シート」が、【0072】~【0075】に記載された実施例2の「延伸ポリエチレン樹脂シート」、すなわち、【0079】~【0081】、【図3】に記載された実施例3の積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5、41、51を構成する「延伸ポリエチレン樹脂シート」を示すことは明らかである。 そして、【0040】の「第2のポリオレフィン系樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂としては、延伸ポリオレフィン系樹脂シートに積層するのであるから、・・・延伸ポリオレフィン系樹脂シートを熱融着する際に接着剤として作用するのである」という記載を踏まえれば、実施例3の積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5、41、51を構成する「線状低密度ポリエチレン樹脂層」は、延伸ポリエチレン樹脂シートを熱融着する際に接着剤として作用すると認められる。 (3) 引用文献1に記載の発明 上記(1)及び(2)から、特に【0079】~【0081】、【図3】に記載された実施例3に着目すると、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「発泡倍率2倍の高密度ポリエチレン樹脂層の両面に未発泡線状低密度ポリエチレン樹脂層が積層されている低発泡ポリエチレン樹脂シート2の両面に積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5、41、51を2枚ずつ熱融着した鼻保護部材であって、 低発泡ポリエチレン樹脂シート2側の積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5の延伸方向と外側の積層延伸ポリエチレン樹脂シート41、51の延伸方向は直交し、 鼻保護部材は、積層延伸ポリエチレン樹脂シート41,51の延伸方向と直交するように90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θが10度~15度である鼻保護部材において、 積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5、41、51は、延伸ポリエチレン樹脂シートの両面に線状低密度ポリエチレン樹脂層を積層して得たものであり、 延伸ポリエチレン樹脂シートの延伸方向と直交するように180度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θが5度~10度であり、 線状低密度ポリエチレン樹脂層は、延伸ポリエチレン樹脂シートを熱融着する際に接着剤として作用する、鼻保護部材。」 2 引用文献2について (1) 引用文献2の記載 引用文献2には次の記載がある。 「【0002】 形状保持シートは塑性変形し、変形後は変形された形状を保持するので、結束材(例えば、特許文献1参照。)、身体固定具の芯材(例えば、特許文献2参照。)、形状保持型帽子(例えば、特許文献3参照。)等に使用されている。 【特許文献1】特許第3582854号公報 【特許文献2】特開2004-57509号公報 【特許文献3】特開平11-93012号公報」 (2) 引用文献2に記載された事項 上記(1)から、引用文献2には以下の事項が記載されていると認められる。 「塑性変形し、変形後は変形された形状を保持する形状保持シートが、身体固定具の芯材や形状保持型帽子に使用されていること。」 3 引用文献3について (1) 引用文献3の記載 引用文献3には次の記載がある。 「[0002] 従来から、ポリオレフィン系樹脂シートを延伸することにより得られた形状保持材料は、材料を折り曲げると元の形状に復帰することなく、折り曲げられた形状を保持することができるので、金属線に代わる結束シート、帽子のつばの芯材、マスク、エプロン、袋等の形状保持材料として使用されている。」 (2) 引用文献3に記載された事項 上記(1)から、引用文献3には以下の事項が記載されていると認められる。 「ポリオレフィン系樹脂シートを延伸することにより得られた形状保持材料が、帽子のつばの芯材等の形状保持材料として使用されていること。」 第6 当審拒絶理由についての判断 1 本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明を対比する。 ア 各層について 引用発明の「発泡倍率2倍の高密度ポリエチレン樹脂層」、「未発泡線状低密度ポリエチレン樹脂層」、「低発泡ポリエチレン樹脂シート2」、「積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5、41、51」、「延伸ポリエチレン樹脂シート」は、それぞれ、本願発明の「ポリエチレン系樹脂発泡層」、「未発泡のポリエチレン系樹脂層」、「中心材」、「表面シート」、「形状保持シート」に相当する。 また、引用発明の「延伸ポリエチレン樹脂シート」は、本願発明の「該形状保持シートは延伸オレフィン系樹脂シートであって」における「延伸オレフィン系樹脂シート」に相当する。 イ 積層成形体について 引用発明の「鼻保護部材」は、積層構造を有しており、「得られた積層延伸ポリエチレン樹脂シートを図1に示した形状に打抜い」(【0069】)たものであるから、本願発明の「積層成形体」に相当するとともに、「帽子のつば用芯材」と、「積層形成体」である限りにおいて一致する。 ウ ポリエチレン系樹脂発泡層について 引用発明の「発泡倍率2倍の高密度ポリエチレン樹脂層」は、本願発明の「発泡倍率10倍以下の、重量平均分子量10万~50万、密度0.945~0.965g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂よりなるポリエチレン系樹脂発泡層」と、「発泡倍率10倍以下の高密度ポリエチレン樹脂よりなるポリエチレン系樹脂発泡層」である限りにおいて一致する。 エ 未発泡のポリエチレン系樹脂層について 引用発明の「未発泡線状低密度ポリエチレン樹脂層」は、発泡倍率2倍の高密度ポリエチレン樹脂層に積層されたものであり、多少なりとも機械的強度を付与していることは明らかであるから、本願発明の「機械的強度を付与する未発泡のポリエチレン系樹脂層」に相当する。 オ 中心材及び表面シートについて 引用発明の「低発泡ポリエチレン樹脂シート2の両面に積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5、41、51を2枚ずつ熱融着し」ている構成は、低発泡ポリエチレン樹脂シート2が高密度ポリエチレン樹脂層の両面に未発泡線状低密度ポリエチレン樹脂層が積層されたものであり、積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5、41、51はそれぞれが延伸ポリエチレン樹脂シートを含むものであるから、本願発明の「ポリエチレン系樹脂発泡層の両面に」「未発泡のポリエチレン系樹脂層が積層されている中心材の両面に表面シートが積層されている」とともに「該表面シートは少なくとも2層の形状保持シートからな」る構成に相当するといえる。 カ 形状保持シートの曲げ戻り角、積層方向について 引用発明の「延伸ポリエチレン樹脂シートの延伸方向と直交するように180度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θが5度~10度であ」る構成は、本願発明の「形状保持シートは延伸オレフィン系樹脂シートであって、延伸方向(MD方向)に対し直角方向(TD方向)に180度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の曲げ戻り角が20度以下であ」る構成に相当する。 また、引用発明の「低発泡ポリエチレン樹脂シート2側の積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5の延伸方向と外側の積層延伸ポリエチレン樹脂シート41、51の延伸方向は直交し」ている構成は、本願発明の「隣り合って積層されている形状保持シートの延伸方向が異な」る構成に相当する。 キ 積層成形体の曲げ戻り角について 引用発明の「鼻保護部材は、積層延伸ポリエチレン樹脂シート41,51の延伸方向と直交するように90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θが10度~15度である」構成は、本願発明の「積層成形体は、積層成形体を、いずれかの形状保持シートの延伸方向(MD方向)に対し直角方向(TD方向)に180度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の曲げ戻り角が25度以下である」構成と、「積層成形体は、積層成形体を、いずれかの形状保持シートの延伸方向(MD方向)に対し直角方向(TD方向)に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の曲げ戻り角が25度以下である」限りにおいて一致する。 ク ホットメルト型オレフィン系樹脂シートについて 引用発明の「線状低密度ポリエチレン樹脂層」は、延伸ポリエチレン樹脂シートの両面に積層されて積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5、41、51を構成し、「延伸ポリエチレン樹脂シートを熱融着する際に接着剤として作用する」ものである。また、引用発明は、「低発泡ポリエチレン樹脂シート2の両面に積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5、41、51を熱融着」するものである。 そうすると、引用発明の「線状低密度ポリエチレン樹脂層」は、延伸ポリエチレン樹脂シート同士(4及び41、5及び51)と、低発泡ポリエチレン樹脂シート2と積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5を熱融着する際に接着剤として作用しているから、本願発明における「表面シートを形成する複数の形状保持シート同士の間と表面シートと中心材の間に」「積層され」た「ホットメルト型オレフィン系樹脂シート」に相当する。 (2) 一致点及び相違点 本願発明と引用発明は次の点で一致し、相違する。 ア 一致点 「発泡倍率10倍以下の高密度ポリエチレン樹脂よりなるポリエチレン系樹脂発泡層の両面に機械的強度を付与する未発泡のポリエチレン系樹脂層が積層されている中心材の両面に表面シートが積層されている積層成形体であって、該表面シートは少なくとも2層の形状保持シートからなり、該形状保持シートは延伸オレフィン系樹脂シートであって、延伸方向(MD方向)に対し直角方向(TD方向)に180度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の曲げ戻り角が20度以下であり、隣り合って積層されている形状保持シートの延伸方向が異なり、且つ、上記積層成形体は、積層成形体を、いずれかの形状保持シートの延伸方向(MD方向)に対し直角方向(TD方向)に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の曲げ戻り角が25度以下である積層成形体において、表面シートを形成する複数の形状保持シート同士の間と表面シートと中心材の間にはホットメルト型オレフィン系樹脂シートが積層されて、加熱加圧することにより接着されてなる積層成形体。」 イ 相違点 [相違点1] ポリエチレン系樹脂発泡層について、本願発明では、「発泡倍率10倍以下の、重量平均分子量10万~50万、密度0.945~0.965g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂よりなる」のに対して、引用発明は発泡倍率10倍以下の高密度ポリエチレン樹脂であるものの、重量平均分子量と密度が不明である点。 [相違点2] 「積層成形体は、積層成形体を、いずれかの形状保持シートの延伸方向(MD方向)に対し直角方向(TD方向)に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の曲げ戻り角が25度以下である」点について、折曲げ角度が、本願発明では「180度」であるのに対し、引用発明は、「90度」である点。 [相違点3] ホットメルト型オレフィン系樹脂シートについて、本願発明は「上記形状保持シート及び中心材を構成するオレフィン系樹脂の融点より低い融点を有する」のに対して、引用発明は融点が不明である点。 [相違点4] 積層成形体について、本願発明では「帽子のつば用芯材」であるのに対して、引用発明は「鼻保護部材」である点。 (3) 判断 事案に鑑み、上記相違点4について検討する。 引用発明の「鼻保護部材」は、上記第5の1(1)に示した【0001】及び【0002】を参照すると、骨折した鼻を固定する、身体固定具であることは明らかである。加えて、引用発明の「鼻保護部材」は、「積層延伸ポリエチレン樹脂シート41,51の延伸方向と直交するように90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θが10度~15度である」ことから、変形後は変形された形状を保持する形状保持シートであるといえる。 また、上記第5の2(2)に示した引用文献2に記載された事項には、「形状保持シートが、身体固定具の芯材や形状保持型帽子に使用され」ることが記載されており、上記第5の3(2)に示した引用文献3に記載された事項には、「ポリオレフィン系樹脂シートを延伸することにより得られた形状保持材料が、帽子のつばの芯材等の形状保持材料として使用され」ることが記載されている。 しかしながら、引用文献2に記載された事項における「形状保持シート」の積層構造は不明であり、引用文献3に記載された事項における「形状保持材料」は、「ポリオレフィン系樹脂シートを延伸することにより得られ」るものである。すなわち、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項には、引用発明の「鼻保護部材」における「低発泡ポリエチレン樹脂シート2の両面に積層延伸ポリエチレン樹脂シート4、5、41、51を2枚ずつ熱融着した」構成は示されていない。 そうすると、引用発明の「鼻保護部材」を、引用文献2に記載された事項に示される「形状保持型帽子」や、引用文献3に記載された事項に示される「帽子のつばの芯材等の形状保持材料」に転用することには動機付けがなく、当業者にとって容易ではない。 したがって、上記相違点4に係る本願発明1の構成は、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び引用文献3に記載された事項に基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び引用文献3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。 2 本願発明2~5について 本願発明2~5は、本願発明1を引用するものであって、上記1(2)イで示した相違点1~4に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、上記1(3)で検討したとおり、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び引用文献3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。 第7 原査定についての判断 原査定で引用された引用文献1は、当審拒絶理由で引用された引用文献1と同一であるから、原査定で引用された引用文献1に記載の発明は上記第5の1(3)に示したとおりである。そうすると、本願発明1と、原査定で引用された引用文献1に記載の発明は、上記第6の1(2)イで示した相違点1~4で相違する。そして、上記第6の1(3)での検討と同様に、相違点4に係る構成は、原査定で引用された引用文献1に記載の発明に基いて容易に発明をすることができたものといえない。 また、本願発明2~5については、上記第6の2での検討と同様に、原査定で引用された引用文献1に記載の発明に基いて容易に発明をすることができたものといえない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審において通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-008719

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