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特許拒絶査定不服審判

2022-017347

冷凍アブレーションカテーテル

審判番号
2022-017347
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-537210外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年10月28日
審決日
2023年07月26日
公報発行日
2024年01月26日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-537210「冷凍アブレーションカテーテル」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月 2日国際公開、WO2020/135468、令和 4年 1月19日国内公表、特表2022-508428〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2019年(令和 1年)12月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年12月25日(CN)中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の経緯は以下のとおりである。

令和 3年 8月16日 :手続補正書の提出
令和 4年 1月24日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 4月28日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 4年 7月13日付け:拒絶査定
令和 4年10月28日 :審判請求書及び同時に手続補正書の提出

第2 令和 4年10月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和 4年10月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「【請求項1】
遠位端、近位端、及び少なくとも1つのルーメンを有する本体管と、
前記本体管の前記遠位端に嵌着された膨張素子と、
前記本体管のルーメンを通って前記膨張素子内まで延びている流体デリバリパイプであって、当該流体デリバリパイプの遠位端に開口が設けられ、冷媒が前記開口を介して噴出される、流体デリバリパイプと、
前記本体管のルーメンを通って前記膨張素子内まで延びている流体回収通路であって、当該流体回収通路の遠位端が前記本体管の前記遠位端の回収孔に連通し、冷媒が前記回収孔を介して流入される、流体回収通路と、を含み、
前記開口は、前記本体管の前記遠位端の長さ方向に沿って直線状に設けられ、
前記本体管は、外層本体管及び内層本体管を含み、前記膨張素子の遠位端は、前記内層本体管に設けられ、前記膨張素子の近位端は、前記外層本体管の遠位端に設けられ、前記流体回収通路は、前記外層本体管と前記内層本体管との間で画定され、前記流体デリバリパイプは、前記流体回収通路と前記内層本体管との間で画定されることを特徴とする、冷凍アブレーションカテーテル。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の、令和 4年 4月28日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
遠位端、近位端、及び少なくとも1つのルーメンを有する本体管と、
前記本体管の前記遠位端に嵌着された膨張素子と、
前記本体管のルーメンを通って前記膨張素子内まで延びている流体デリバリパイプであって、当該流体デリバリパイプの遠位端に開口が設けられ、冷媒が前記開口を介して噴出される、流体デリバリパイプと、
前記本体管のルーメンを通って前記膨張素子内まで延びている流体回収通路であって、当該流体回収通路の遠位端が前記本体管の前記遠位端の回収孔に連通し、冷媒が前記回収孔を介して流入される、流体回収通路と、を含み、
前記開口は、前記本体管の前記遠位端の長さ方向に沿って直線状に設けられ、
前記本体管は、外層本体管及び内層本体管を含み、前記膨張素子の遠位端は、前記内層本体管に設けられ、前記膨張素子の近位端は、前記外層本体管の遠位端に設けられ、前記流体回収通路は、前記外層本体管と前記内層本体管との間で画定されることを特徴とする、冷凍アブレーションカテーテル。」

2 補正の適否

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「流体デリバリパイプ」について、「前記流体回収通路と前記内層本体管との間で画定される」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、本件補正は、同条第3項及び第4項の規定に違反するものではない。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項及び引用発明

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ア 引用文献1

(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2015/0119868号明細書(2015年 4月30日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

a「[0027] Referring now to the drawing figures in which like reference designations refer to like elements, an embodiment of a medical cryoablation system constructed in accordance with the principles of the present invention is shown in FIG. 1 and generally designated as “10.” The system 10 generally includes a medical device 12 that may be coupled to a control unit 14 or operating console. The medical device 12, for example, a cryoablation device as shown in the figures, may generally include an elongate body 15 and one or more diagnostic or treatment elements 16 for energetic, therapeutic and/or investigatory interaction between the medical device 12 and a treatment site. For example, the treatment element 16 may include a balloon 18, one or more temperature sensors 20, and a coolant injection element 22. The treatment element 16 may deliver, for example, cryogenic therapy to a tissue area in proximity to a treatment region, including cardiac tissue and/or pulmonary vein tissue.・・・」

(訳文:[0027]ここで、同様の参照番号は同様の要素を指す図面を参照すると、本発明の原理に従って構成された医療冷凍アブレーションシステムの実施形態が図1に示されており、概して10として示されている。システム10は、概して、制御部14または操作コンソールに結合され得る医療デバイス12を含む。医療デバイス12、例えば、図示のような冷凍アブレーションデバイスは、一般的に、医療デバイス12と治療部位との間のエネルギの相互作用、治療及び/又は調査の相互作用のために、細長い本体15と、1つ以上の診断又は治療要素16を含むことができる。例えば、治療要素16は、バルーン18、1つまたはそれ以上の温度センサ20、および冷却剤噴射要素22を含んでもよい。治療要素16は、例えば、心臓組織および/または肺静脈の組織を含む治療領域に近接する組織領域に低温療法を提供し得る。)

b「[0031] Continuing to refer to FIG.1, the medical device 12 may include an elongate body 15 passable through a patient's vasculature and/or proximate to a tissue region for diagnosis or treatment, such as a catheter, sheath, or intravascular introducer. Accordingly, the elongate body 15 may be composed of a biocompatible material that is sufficiently flexible to safely pass through tortuous pathways of the patient's vasculature. The elongate body 15 may define a proximal portion 34 and a distal portion 36, and may further include one or more lumens or conduits disposed within the elongate body 15 thereby providing mechanical, electrical, and/or fluid communication between the proximal portion 34 of the elongate body 15 and the distal portion 36 of the elongate body 15. ・・・

[0032] The medical device 12 may further include an elongate guide wire lumen 40 at least partially disposed within a portion of the elongate body 15. The guide wire lumen 40 may extend or otherwise protrude from a distal end of the elongate body 15 , and may be movable with respect to the elongate body 15 in longitudinal and rotational directions. ・・・

[0033] The guide wire lumen 40 may include or define a coolant delivery conduit 42 that is in fluid communication with the coolant supply reservoir 24 to deliver coolant from the proximal portion 34 of the elongate body 15 and/or the control unit 14 to the distal portion 36 of the elongate body 15 and/or treatment region 16 of the device 12. The guide wire lumen 40 may also include or define coolant recovery conduit 44 that is in fluid communication with the scavenging system. Further, the device 12 may include a coolant injection element 22 that is disposed within the expansion chamber 46 of the balloon 18. The coolant injection element 22 may have any of a variety of configurations, such as those shown in the non-limiting embodiments of FIGS. 1-6 . In the first device embodiment shown in FIG. 1, the coolant injection element 22 may be a distal portion of the coolant delivery conduit 42 and may be wound about the guide wire lumen 40 in one or more coils. The coolant injection element 22 may define one or more ports 48 for expelling coolant into the expansion chamber 46 of the balloon 18. Further, the coolant may be expelled radially from the one or more ports 48 toward an inner surface of the balloon 18.

[0034] The treatment element 16 may be located at a distal end 50 of the device 12. As shown in FIG. 1, for example, the treatment element 16 may include a cryoballoon 18. In a non-limiting embodiment, the balloon 18 may include a proximal neck 52 and a distal neck 54. The proximal neck 52 may be coupled to (for example, adhered with a biocompatible adhesive or bonded to) the distal portion 36 of the elongate body 15, and the distal neck 54 may be coupled to (as is the proximal neck 52) the distal portion 56 of the guide wire lumen 40.・・・」

(訳文:[0031]引き続き図1を参照すると、医療デバイス12は、患者の血管系を通行可能な、および/または、診断または治療対象の組織領域に近接する、カテーテル、シース、または血管内導入器のような細長い本体15を含むことができる。したがって、細長い本体15は、患者の脈管構造の曲がりくねった通路を安全に通過するのに十分な可撓性を有する生体適合性材料から構成することができる。細長い本体15は、近位部分34および遠位部分36を画定してもよく、また、細長い本体15内に配置された1つ以上の管腔または導管を含むことができ、これにより細長い本体15の近位部分34と、細長い本体15の遠位部分36との間の機械的、電気的、及び/又は流体的な接続を提供する。・・・

[0032]医療デバイス12はさらに、少なくとも部分的に細長い本体15の部分内に配置された細長いガイドワイヤ管腔40を含むことができる。ガイドワイヤ管腔40は、細長い本体15の遠位端から延びる、または、突出してもよく、長手方向及び回転方向において細長い本体15に対して移動可能である。・・・

[0033]ガイドワイヤ管腔40は、細長い本体15の近位部分34及び/又は制御部14から細長い本体15の遠位部分36および/またはデバイス12の治療領域16へ、冷却剤を送達するために、冷却剤供給リザーバ24と流体的に連通する冷却剤送出導管42を含むまたは画定することができる。ガイドワイヤ管腔40はまた、掃気系と流体的に連通する冷却剤の回収導管44を含むまたは画定することができる。さらに、デバイス12は、バルーン18の膨張室46内に配置される冷却剤噴射要素22を含むことができる。冷却剤噴射要素22は、様々な構成のいずれか、たとえば図1-6の非限定的な実施形態に示すようなものがある。図1に示す第1の実施の形態では、冷却剤噴射要素22は、冷却剤送出導管42の遠位部分であってよく、1回あるいはより多くガイドワイヤ管腔40に巻きつけられるようにしてもよい。冷却剤噴射要素22は、バルーン18の膨張室46へ冷却剤を排出するための1以上のポート48を画定することができる。さらに、冷却剤は1つ以上のポート48からバルーン18の内面に向けて、半径方向に排出されてもよい。

[0034]治療要素16は、デバイス12の遠位端50に配置されてもよい。図1に示すように、例えば、治療要素16は、冷凍バルーン18を含むことができる。非限定的な実施形態では、バルーン18は、近位首部52、遠位首部54を含んでいてもよい。近位首部52は、細長い本体15の遠位部分36に結合することができ(例えば、生体適合性接着剤を用いて接着され又は結合され)、遠位首部54は、ガイドワイヤ管腔40の遠位部分56に結合することができる(近位首部52と同様である)。・・・)

c「[0042] Referring now to FIGS. 3A and 3B, a second exemplary cryoablation device in accordance with the present invention is shown. The coolant injection element 22 may include a plurality of coolant delivery conduits 42, each in fluid communication with the coolant supply reservoir 24, that are coupled to or otherwise affixed to an outer surface of the guide wire lumen 40. Each coolant delivery conduit 42 may define one or more ports 48, which may be radially oriented about the longitudinal axis of the guide wire lumen 40. ・・・」

(訳文:[0042]ここで図3Aおよび図3Bを参照すると、本発明による例示的な第2の冷凍アブレーションデバイスが示されている。冷却剤噴射要素22は、それぞれが冷却剤供給リザーバ24と流体連通しており、ガイドワイヤ管腔40の外面に結合されるか、そうでなければ貼付される、冷却剤送出導管42を含むことができる。各冷却剤送出導管42は、1つ以上のポート48を画定することもでき、これは、ガイドワイヤ管腔40の長手方向軸線を中心として半径方向に向けられ得る。・・・)

d「

[図:0001405472000001.jpg]

」

e「

[図:0001405472000002.jpg]

」

f「

[図:0001405472000003.jpg]

」

g 上記bの[0031]「細長い本体15は、近位部分34および遠位部分36を画定してもよく、また、細長い本体15内に配置された1つ以上の管腔または導管を含むことができ、これにより細長い本体15の近位部分34と、細長い本体15の遠位部分36との間の機械的、電気的、及び/又は流体的な接続を提供する。」、[0032]「医療デバイス12はさらに、少なくとも部分的に細長い本体15の部分内に配置された細長いガイドワイヤ管腔40を含むことができる。」という記載、及び上記dの図1から、細長い本体15は、近位部分34および遠位部分36を有し、ガイドワイヤ管腔40は、遠位部分56を有しており、ガイドワイヤ管腔40は、当然に近位部分を有している。

したがって、「医療デバイス12は、遠位部分と、近位部分、及び1つ以上の管腔または導管を含む細長い本体15及びガイドワイヤ管腔40を含む」ことが分かる。

h 上記bの[0032]「医療デバイス12はさらに、少なくとも部分的に細長い本体15の部分内に配置された細長いガイドワイヤ管腔40を含むことができる。ガイドワイヤ管腔40は、細長本体15の遠位端から延びる、または、突出してもよく、長手方向及び回転方向において細長い本体15に対して移動可能である。すなわち、ガイドワイヤ管腔40は、細長い本体15に対してスライド可能かつ/または回転可能に移動可能である。」、[0034]「治療要素16は、デバイス12の遠位端50に配置されてもよい。図1に示すように、例えば、治療要素16は、冷凍バルーン18を含むことができる。非限定的な実施形態では、バルーン18は、近位首部52、遠位首部54を含んでいてもよい。近位首部52は、細長い本体15の遠位部分36に結合することができ(例えば、生体適合性接着剤を用いて接着され又は結合され)、遠位首部54は、ガイドワイヤ管腔40の遠位部分56に結合することができる(近位首部52と同様である)。」という記載から、「医療デバイス12が、細長い本体15及びガイドワイヤ管腔40の遠位部分に結合された冷凍バルーン18を含む」こと、及び、「冷凍バルーン18の遠位首部54は、ガイドワイヤ管腔40に結合され、冷凍バルーン18の近位首部52は、細長い本体15の遠位部分36に結合される」ことが分かる。

i 上記bの[0032]「医療デバイス12はさらに、少なくとも部分的に細長い本体15の部分内に配置された細長いガイドワイヤ管腔40を含むことができる。」、[0033]「ガイドワイヤ管腔40は、細長い本体15の近位部分34及び/又は制御部14から細長い本体15の遠位部分36および/またはデバイス12の治療領域16へ、冷却剤を送達するために、冷却剤供給リザーバ24と流体的に連通する冷却剤送出導管42を含むまたは画定することができる。」、[0034]「治療要素16は、デバイス12の遠位端50に配置されてもよい。図1に示すように、例えば、治療要素16は、冷凍バルーン18を含むことができる。」、上記dの図1から、「医療デバイス12は、細長い本体15に配置されたガイドワイヤ管腔40が画定し、」治療領域16(治療要素16)である「冷凍バルーン18まで延びている冷却剤送出導管42を含んでいる」ことが分かる。

また、上記bの[0033]「装置12は、バルーン18の膨張室46内に配置される冷却剤噴射要素22を含むことができる。」、「冷却剤噴射要素22は、冷却剤送出導管42の遠位部分であってよく、1回あるいはより多くガイドワイヤ管腔40に巻きつけられるようにしてもよい。冷却剤噴射要素22は、バルーン18の膨張室46へ冷却剤を排出するための1以上のポート48を画定することができる。」という記載から、「冷却剤送出導管42の遠位部分にポート48が設けられ、冷却剤がポート48を介して噴出される」ことが分かる。

j 上記bの[0033]「装置12は、バルーン18の膨張室46内に配置される冷却剤噴射要素22を含むことができる。」、「冷却剤噴射要素22は、冷却剤送出導管42の遠位部分であってよく、1回あるいはより多くガイドワイヤ管腔40に巻きつけられるようにしてもよい。冷却剤噴射要素22は、バルーン18の膨張室46へ冷却剤を排出するための1以上のポート48を画定することができる。」、「ガイドワイヤ管腔40はまた、掃気系と流体的に連通する冷却剤の回収導管44を含むまたは画定することができる。」という記載、及び上記dの図1から、回収導管44は、バルーン18へ排出された冷却剤を掃気するものであるため、「医療デバイス12は、ガイドワイヤ管腔40が画定し、冷凍バルーン18まで延びている回収導管44を含んでいる」こと及び「回収導管44は、細長い本体15とガイドワイヤ管腔40との間で画定され」ることが分かる。

また、冷却剤を掃気するためには、回収孔が必要であることは明らかであるから、回収導管44は、冷却剤が回収孔を介して流入されるものである。

k 上記bの[0033]「装置12は、バルーン18の膨張室46内に配置される冷却剤噴射要素22を含むことができる。」、「冷却剤噴射要素22は、冷却剤送出導管42の遠位部分であってよく、1回あるいはより多くガイドワイヤ管腔40に巻きつけられるようにしてもよい。冷却剤噴射要素22は、バルーン18の膨張室46へ冷却剤を排出するための1以上のポート48を画定することができる。」という記載及び、上記dの図1から、ポート48は、ガイドワイヤ管腔40の遠位部分に設けられていることが分かる。

さらに、上記eの図3A、上記fの図3Bから、ポート48は、ガイドワイヤ管腔40の長さ方向に沿って直線状に設けられていることが看取できるから、「ポート48は、ガイドワイヤ管腔40の遠位部分の長さ方向に沿って直線状に設けられる」ことが分かる。

l 上記fの図3Bを参照すると、「冷却剤送出導管42は、ガイドワイヤ管腔40の表面に位置している」ことが看取できる。

m 上記aの[0027]「医療デバイス12、例えば、図示のような冷凍アブレーションデバイスは、一般的に、医療デバイス12と治療部位との間のエネルギの相互作用、治療及び/又は調査の相互作用のために、細長い本体15と、1つ以上の診断又は治療要素16を含むことができる。」との記載、上記dの図1から、「医療デバイス12」は、「冷凍アブレーションカテーテル」である。

(イ)引用文献1の上記摘記事項a~f及び上記認定事項g~mを技術常識を踏まえ、本願発明に対応させて整理すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「遠位部分と、近位部分、及び1つ以上の管腔または導管を含む細長い本体15及びガイドワイヤ管腔40と、
細長い本体15及びガイドワイヤ管腔40の遠位部分に結合された冷凍バルーン18と、
細長い本体15に配置されたガイドワイヤ管腔40が画定し、冷凍バルーン18まで延びている冷却剤送出導管42であって、冷却剤送出導管42の遠位部分にポート48が設けられ、冷却剤がポート48を介して噴出される、冷却剤送出導管42と、
ガイドワイヤ管腔40が画定し、冷凍バルーン18まで延びている回収導管44であって、冷却剤が回収孔を介して流入される、回収導管44と、を含み、
ポート48は、ガイドワイヤ管腔40の遠位部分の長さ方向に沿って直線状に設けられ、
少なくとも部分的に細長い本体15の部分内に配置された細長いガイドワイヤ管腔40を含み、
冷凍バルーン18の遠位首部54は、ガイドワイヤ管腔40に結合され、冷凍バルーン18の近位首部52は、細長い本体15の遠位部分36に結合され、
回収導管44は、細長い本体15とガイドワイヤ管腔40との間で画定され、冷却剤送出導管42は、ガイドワイヤ管腔40の表面に位置している、
冷凍アブレーションデバイス12。」

イ 引用文献2

(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特表2004-516042号公報(平成16年 6月 3日公表。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

a「【0002】

(発明の分野)

本発明は、一般に、医療装置および方法に関する。詳細には、本発明は、体内部位を冷却するための装置および方法に関する。本発明は、狭窄した血管部位を血管形成前および後に冷却して再狭窄を抑制するための方法を含む。」

b「【0027】

図7は、近位部分162と遠位部分164とを有する冷却装置160における本発明の別の実施形態を示す。装置160は、バルーン76を通って延び、かつオリフィス167内で終端する案内ワイヤ管166を含む。冷却剤送出管170はバルーン内部78を通って途中まで延び、冷却剤送出管170と案内ワイヤ管166とにより境界を定められた、内部を通る環状冷却剤送出ルーメン178を有する。冷却剤送出管170は、ばね168により冷却剤送出管170に接するように近位側に付勢される圧力リリーフ弁172により覆われる。圧力リリーフ弁172は、冷却剤送出管170上に密着する近位部180と、案内ワイヤ管166上を摺動し、かつ案内ワイヤ管166に対して密閉するような大きさの遠位部182とを含む。冷却剤装置160を使用して、組織冷却を通して再狭窄を抑制することができ、または肺動脈もしくは心臓内の組織アブレーションを通して不整脈を治療することができる。

【0028】

図では、冷却剤が174で冷却剤送出管170から流出してバルーン内部に入る。圧力リリーフ弁172は、液体二酸化炭素等の液体から気体への相転移を受ける冷却剤と共に使用することができる。供給管内の液体冷却剤を加温して弁ばね圧力を超える圧力を達成すると、弁172は遠位側に摺動し、一般に気体状の冷却剤が流出してバルーン内部に入ることが可能になる。冷却剤は戻りまたは排出ルーメン176を通してバルーン内部から流出することができ、最終的にカテーテル軸の近位端から流出することができる。排出ルーメンは、バルーン内部の最小圧力を維持するように、同様に圧力調整することができる。」

c「

[図:0001405472000004.jpg]

」

ウ 引用文献3

(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特表2010-528815号公報(平成22年 8月26日公表。以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

a「【0001】

本明細書で開示する発明は、一般に組織アブレーション・システム及び器具、並びに生体組織の治療へのそれらの使用法に関し、より具体的には、本明細書で開示する発明は、バレット食道を治療するために、食道壁組織のような生体組織を治療するクライオジェニック・バルーン・アブレーション器具及びシステムに関する。」

b「【0035】

遠位端組立体(図の簡単化のためにバルーン壁なしで図2に示す)の一実施形態において、細長い本体28は供給管腔43を定める内部管状部材86、並びに内部管腔73内の熱電対63を支持し、ここで管腔73内の残存する環状空間はガス排気管腔として機能する。・・・

【0036】

バルーン内部(図2に示さず)の冷媒の蒸発の結果として形成されるガスは、細長い本体28内の排気管腔73を通して戻され、その近位端にある逃がし弁(図示せず)を通して放出される。・・・」

c「

[図:0001405472000005.jpg]

」

(3)対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「1つ以上の管腔または導管」、「細長い本体15及びガイドワイヤ管腔40」は、本件補正発明の「少なくとも1つのルーメン」、「本体管」にそれぞれ相当する。

また、引用発明の「細長い本体15及びガイドワイヤ管腔40」は、長尺の形状をしているから、遠位端と近位端を有している。

よって、引用発明の「1つ以上の管腔または導管を含む細長い本体15及びガイドワイヤ管腔40」は、本件補正発明の「遠位端、近位端、及び少なくとも1つのルーメンを有する本体管」に相当する。

イ 引用発明の「冷凍バルーン18」は、本件補正発明の「膨張素子」に相当する。

また、上記(2)ア(ア)bの[0034]「バルーン18は、近位首部52、遠位首部54を含んでいてもよい。近位首部52は、細長い本体15の遠位部分36に結合することができ(例えば、生体適合性接着剤を用いて接着され又は結合され)、遠位首部54は、ガイドワイヤ管腔40の遠位部分56に結合することができる(近位首部52と同様である)。」との記載及び上記(2)ア(ア)dの図1から、バルーン18は、細長い本体15の遠位部分36と、ガイドワイヤ管腔40の遠位部分56を外側から嵌め込むように取り付けられていることが分かる。

よって、引用発明の「細長い本体15及びガイドワイヤ管腔40の遠位部分に結合された冷凍バルーン18」は、本件補正発明の「前記本体管の前記遠位端に嵌着された膨張素子」に相当する。

ウ 引用発明の「冷却剤送出導管42」は、本件補正発明の「流体デリバリパイプ」に、「ポート48」は、「開口」に、「冷却剤」は、「冷媒」にそれぞれ相当する。

よって、引用発明の「細長い本体15に配置されたガイドワイヤ管腔40が画定し、冷凍バルーン18まで延びている冷却剤送出導管42であって、冷却剤送出導管42の遠位部分にポート48が設けられ、冷却剤がポート48を介して噴出される、冷却剤送出導管42」と、本件補正発明の「前記本体管のルーメンを通って前記膨張素子内まで延びている流体デリバリパイプであって、当該流体デリバリパイプの遠位端に開口が設けられ、冷媒が前記開口を介して噴出される、流体デリバリパイプ」とは、「前記本体管のルーメンを通って前記膨張素子内まで延びている流体デリバリパイプであって、当該流体デリバリパイプの遠位部分に開口が設けられ、冷媒が前記開口を介して噴出される、流体デリバリパイプ」である限りにおいて、一致する。

エ 引用発明の「回収導管44」、「回収孔」は、本件補正発明の「流体回収通路」、「回収孔」にそれぞれ相当する。

よって、引用発明の「ガイドワイヤ管腔40が画定し、バルーン18まで延びている回収導管44であって、」「冷却剤が回収孔を介して流入される、回収導管44」は、本件補正発明の「前記本体管のルーメンを通って前記膨張素子内まで延びている流体回収通路であって、」「冷媒が前記回収孔を介して流入される、流体回収通路」に相当する。

オ 引用発明の「ポート48は、ガイドワイヤ管腔40の遠位部分の長さ方向に沿って直線状に設けられ」は、本件補正発明の「前記開口は、前記本体管の前記遠位端の長さ方向に沿って直線状に設けられ」に相当する。

カ 引用発明の「細長い本体15」、「ガイドワイヤ管腔40」は、本件補正発明の「外層本体管」、「内層本体管」にそれぞれ相当する。

よって、引用発明の「少なくとも部分的に細長い本体15の部分内に配置された細長いガイドワイヤ管腔40を含み」は、本件補正発明の「前記本体管は、外層本体管及び内層本体管を含み」に相当する。

キ 引用発明の「バルーン18の遠位首部54」、「バルーン18の近位首部52」は、本件補正発明の「前記膨張素子の遠位端」、「前記膨張素子の近位端」にそれぞれ相当する。

よって、引用発明の「バルーン18の遠位首部54は、ガイドワイヤ管腔40に結合され、バルーン18の近位首部52は、細長い本体15の遠位部分36に結合される」は、本件補正発明の「前記膨張素子の遠位端は、前記内層本体管に設けられ、前記膨張素子の近位端は、前記外層本体管の遠位端に設けられ」に相当する。

ク 引用発明の「回収導管44は、細長い本体15とガイドワイヤ管腔40との間で画定され」は、本件補正発明の「前記流体回収通路は、前記外層本体管と前記内層本体管との間で画定され」に相当する。

ケ 引用発明の「冷凍アブレーションデバイス12」は、本願補正発明の「冷凍アブレーションカテーテル」に相当する。

したがって、本件補正発明と引用発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点]

「遠位端、近位端、及び少なくとも1つのルーメンを有する本体管と、
前記本体管の前記遠位端に嵌着された膨張素子と、
前記本体管のルーメンを通って前記膨張素子内まで延びている流体デリバリパイプであって、当該流体デリバリパイプの遠位部分に開口が設けられ、冷媒が前記開口を介して噴出される、流体デリバリパイプと、
前記本体管のルーメンを通って前記膨張素子内まで延びている流体回収通路であって、冷媒が前記回収孔を介して流入される、流体回収通路と、を含み、
前記開口は、前記本体管の前記遠位端の長さ方向に沿って直線状に設けられ、
前記本体管は、外層本体管及び内層本体管を含み、前記膨張素子の遠位端は、前記内層本体管に設けられ、前記膨張素子の近位端は、前記外層本体管の遠位端に設けられ、前記流体回収通路は、前記外層本体管と前記内層本体管との間で画定される、冷凍アブレーションカテーテル。」

[相違点1]

流体デリバリパイプについて、本件補正発明では、「遠位端に開口が設けられ」ているのに対し、引用発明では、「遠位部分にポート48が設けられ」ている点。

[相違点2]

本件補正発明では、流体回収通路が、「遠位端が前記本体管の前記遠位端の回収孔に連通し」、流体デリバリパイプが、「前記流体回収通路と前記内層本体管との間で画定される」のに対し、引用発明では、そのような構造を有しているのか不明である点。

(4)判断

以下、相違点について検討する。

ア 相違点1について

引用発明において、冷却剤送出導管42の遠位部分のうち、どの位置にポート48を設けるのかは、冷凍バルーン18の冷却性能等を考慮して、当業者が適宜決定し得る事項であるから、相違点1に係る本件補正発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について

引用文献2の上記(2)イ(ア)bの【0028】の「冷却剤は戻りまたは排出ルーメン176を通してバルーン内部から流出することができ、最終的にカテーテル軸の近位端から流出することができる。」という記載と(2)イ(ア)cの図7中の冷却剤の戻りまたは排出ルーメン176の位置、及び引用文献3の上記(2)ウ(ア)bの【0035】の「遠位端組立体(図の簡単化のためにバルーン壁なしで図2に示す)の一実施形態において、細長い本体28は供給管腔43を定める内部管状部材86、並びに内部管腔73内の熱電対63を支持し、ここで管腔73内の残存する環状空間はガス排気管腔として機能する。」、【0036】の「バルーン内部(図2に示さず)の冷媒の蒸発の結果として形成されるガスは、細長い本体28内の排気管腔73を通して戻され、その近位端にある逃がし弁(図示せず)を通して放出される。」という記載と(2)ウ(ア)cの図2中の排気管腔73の位置に例示されるように、冷凍アブレーションカテーテルにおいて、外側に位置する管の遠位端を回収孔として、外側に位置する管と内側に位置する管との間の管腔を用いて、冷媒を回収することは、周知技術である。

そして、引用発明は細長い本体15及びガイドワイヤ管腔40を有する構造を備えており、冷却剤を回収するための回収導管44を有するものであるところ、引用発明において、回収導管44を具体化するに際して、上記周知技術を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

その結果、回収導管44は、その遠位端が細長い本体15の遠位端に回収孔を備え、細長い本体15とガイドワイヤ管腔40との間で画定された構造となり、一方、引用発明の「冷却剤送出導管42は、ガイドワイヤ管腔40の表面に位置している」から、冷却剤送出導管42は、回収導管44とガイドワイヤ管腔40との間で画定された構造となることは、明らかである。

そして、本願発明の効果をみても、引用発明及び上記周知技術からみて格別の効果ということもできない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、令和4年 4月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1(2)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。

本願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 対比・判断

本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「流体デリバリパイプ」に係る「前記流体回収通路と前記内層本体管との間で画定される」という限定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記限定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同じ理由で引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-017347

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