特許拒絶査定不服審判
2022-017248
車両の運転支援制御装置、運転支援システムおよび運転支援制御方法
- 審判番号
- 2022-017248
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-107540
- 請求日
- 2022年10月27日
- 審決日
- 2023年05月30日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社デンソー
- 【請求人代理人】弁理士法人明成国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 河端 賢
- 審判官 水野 治彦
- 審判官 倉橋 紀夫
- 分類
- P18 .121-WY (B60W) / P18 .536-WY (B60W) / P18 .537-WY (B60W)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-107540「車両の運転支援制御装置、運転支援システムおよび運転支援制御方法」拒絶査定不服審判事件〔令和元年12月12日出願公開、特開2019-209837、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年6月5日の出願であって、令和4年1月21日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の令和4年3月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和4年8月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和4年10月27日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、大略以下のとおりである。
(1) (進歩性)この出願の請求項1ないし9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献一覧>
1 特開2010-237792号公報
2 特開2015-44432号公報
(2) (サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3) (明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(4) (実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(5) (委任省令要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
第3 本願発明
本願の請求項1ないし請求項8に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、令和4年10月27日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載されたとおりものであるところ、本願発明1及び本願発明8は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1及び請求項8に記載された以下のとおりのものと認める。
1.本願発明1
「車両(500)の運転支援制御装置(100)であって、
検出された前記車両の走行環境を取得する取得部(103)と、
少なくとも車線逸脱防止支援を含む運転支援を実行可能な運転支援部を制御する制御部であって、交差点(IS)の近傍において、前記運転支援部によって前記車線逸脱防止支援の実行中に、取得された前記走行環境を用いて、道路端(RE)に寄っている前方車両(M1)が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記車線逸脱防止支援を解除し、前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部(31)に実行させる制御部(101、P1)と、を備える運転支援制御装置。」
2.本願発明8
「車両の運転支援制御方法であって、
前記車両の走行環境を取得し(S100)、
交差点(IS)の近傍において、運転支援を実行可能な運転支援部による車線逸脱防止支援の実行中に、取得した前記走行環境を用いて、道路端に寄っている前方車両が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記車線逸脱防止支援を解除し、前記前方車両に追随する運転支援を前記運転支援部に実行させる(S150)、ことを備える運転支援制御方法。」
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1
(1)引用文献1の記載事項及び図示事項
原査定に引用された引用文献1(特開2010-237792号公報)には、「運転支援装置、運転支援方法及び運転支援プログラム」に関して、次の記載事項及び図示事項がある(下線部は当審が付した。以下同様。)。
ア 「【0005】
本発明の目的は、緊急車両の接近に備え取るべき動作を通知し、緊急車両の通過に対処することのできる運転支援装置、運転支援方法及び運転支援プログラムを提供することにある。」
イ 「【0022】
以下、本発明の運転支援装置を具体化した実施形態を図1~図7に従って説明する。図1は、自動車(自車両)に搭載された運転支援装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【0023】
図1に示す運転支援装置1は、接近方向検出手段、走行案内手段、他車両検動作出手段、他車両動作判断手段、制御手段を構成する主制御を行うCPU2、そのCPU2の演算結果等を一時記憶するRAM3、経路案内プログラム、接近方向検出プログラム、走行案内プログラム、他車両動作検出プログラム、他車両動作判断プログラム等、各種の運転支援プログラムを記憶するROM4を備えている。」
ウ 「【0029】
また、運転支援装置1は、自車位置検出手段を構成するGPS受信部6及び車両側センサ入力インターフェース(車両側センサ入力I/F部)7を備えている。
CPU2は、GPS受信部6と接続され、そのGPS受信部6から入力した位置検出信号に基づいて、絶対座標を算出する。さらに、CPU2は、車両側センサ入力I/F部7を介して、自車両C(図4参照)に設けた同じく自車位置検出手段を構成する車速センサ7a及びジャイロセンサ7bから、車速パルス及び方位検出信号を入力して、自律航法により基準位置からの相対座標を演算する。そして、CPU2は、GPS受信部6の位置検出信号に基づく絶対座標と合わせて現在位置、即ち自車位置を特定するとともに、地理データ記憶部5に記憶した経路データRD及び地図データMDに基づいて自車両Cが走行している走行レーンを特定する。尚、自車位置検出手段はGPS受信部6のみにて構成されてもよい。また、CPU2は、車速センサ7aからの車速パルス信号に基づいてその時々の自車両Cの車速を演算している。
【0030】
運転支援装置1は、画像プロセッサ8及び外部入出力インターフェース(外部入出力I/F部)9を備えている。CPU2は、画像プロセッサ8を介してタッチパネルであるディスプレイDSPに接続されている。CPU2は、そのディスプレイDSPに隣接した位置に設けられた操作スイッチSW1の操作により、外部入出力I/F部9を介して、目的地を示すデータを入力する。この目的地のデータを入力すると、CPU2は、地理データ記憶部5に記憶した経路データRDを用いて、目的地と自車位置とを結ぶ推奨経路を探索するようになっている。」
エ 「【0032】
運転支援装置1は、CPU2とともに他車両動作検出手段及び他車両動作判断手段を構成する画像データ入力部11を備えている。その画像データ入力部11は、同じく他車両動作検出手段及び他車両動作判断手段を構成する前方カメラCA1及び後方カメラCA2が接続されている。CPU2は、画像データ入力部11に接続され、同画像データ入力部11を介して、常時、前方カメラCA1及び後方カメラCA2を起動させている。前方カメラCA1及び後方カメラCA2は、広角レンズ、ミラー等から構成される光学機構とCCD撮像素子とを備えている。
【0033】
前方カメラCA1は、図4に示すように、自車両Cの前端に取り付けられて、自車両Cの前端から前方に向いた光軸を有し、前方に広がる前方撮像領域Z1を撮像する。つまり、前方カメラCA1は、図5に示すように、自車両Cの前方を走行している前方車両C1を撮像することができるようになっている。
【0034】
後方カメラCA2は、図4に示すように、自車両Cの後端に取り付けられて、自車両Cの後端から後方に向いた光軸を有し、後方に広がる後方撮像領域Z2を撮像する。つまり、後方カメラCA2は、図6に示すように、自車両Cの後方を走行している後方車両C2を撮像することができるようになっている。
【0035】
CPU2は、画像データ入力部11を制御して、前方カメラCA1が撮像した前方画像データG1及び後方カメラCA2が撮像した後方画像データG2を取得し、RAM3に一時記憶する。
【0036】
CPU2は、RAM3に一時記憶した前方画像データG1及び後方画像データG2に基づいて画像認識を行う。CPU2は、取得した前方画像データG1について、補正処理し、補正した前方画像データG1に基づいて、前方車両C1を画像認識するとともに、前方車両C1の車線変更、停止、車線の端への寄せ等の動作を検出する。同様に、後方画像データG2に基づいて、後方車両C2の動作を検出する。
【0037】
具体的には、画像プロセッサ8は、前方画像データG1又は後方画像データG2に基づいて、撮像したタイミングの異なる複数のフレームを比較し、特定輝度の画素の位置や画素数の変化等及び自車両Cの車速等によって、前方車両C1又は後方車両C2の走行軌跡及び車速を取得する。そして、取得された他車両の走行軌跡及び車速に基づいて、車線変更、停止、車線の端への寄せ等の前方車両C1又は後方車両C2の動作を検出する。
【0038】
そして、CPU2は、検出した前方車両C1又は後方車両C2の車線変更、停止、車線の端への寄せ等の動作が、通常では行われない動作、即ち、前方車両C1又は後方車両C2の緊急車両C3に対する退避動作どうかを判断するようになっている。具体的には、例えば、前方車両C1及び後方車両C2の動作が、車線変更や車線の端への寄せを行った後に停止した場合に、前方車両C1及び後方車両C2の動作が緊急車両C3に対する退避動作であると判断する。
【0039】
また、その際に、道路データMDb(道路属性データMDd)に基づいて、前方車両C1又は後方車両C2の緊急車両C3に対する退避動作かどうか判断してもよい。
例えば、図5(a)に示すように、前方から救急車、消防車等の緊急車両C3が接近してくる場合であって前方の第二の所定距離(例えば、20m)以内の前方車両C1が存在する場合、CPU2は、道路データMDb(道路属性データMDd)に基づいて自車両Cが走行している道路の道路形状が直線道路であって、前方車両C1の走行軌跡が図5(a)に矢印で示すような直線ではない、つまり、道路形状に合致しない走行軌跡を取った後に停止した時、前方車両C1の動作は退避動作であると判断する。
【0040】
なお、前方から緊急車両C3が接近してくる場合に、前方の第二の所定距離以内の前方車両C1が存在する場合であって自車両Cが走行している道路が左にカーブをしている時には、CPU2は、前方車両C1の走行軌跡が左カーブに沿った走行軌跡を取った後に停止した時には、前方車両C1の動作は退避動作ではないと判断する。」
オ 「【0044】
そして、CPU2は、緊急車両C3の接近方向が前方であるとき、前方カメラCA1の前方画像データG1に基づいて、自車両Cの前方の第二の所定距離に前方車両C1が存在するかどうかの検出を行う。また、緊急車両C3の接近方向が後方であるとき、後方カメラCA2の後方画像データG2に基づいて、自車両Cの後方の第二の所定距離に後方車両C2が存在するかどうかの検出を行う。
【0045】
そして、CPU2は、緊急車両C3の接近方向が前方であって自車両Cの前方の第二の所定距離以内に前方車両C1が存在すると判断したとき、前方カメラCA1の前方画像データG1に基づいて、前方車両C1の車線変更、停止、車線の端への寄せ等の動作を検出する。また、緊急車両C3の接近方向が後方であって自車両Cの後方の第二の所定距離以内に後方車両C2がいると判断したとき、後方カメラCA2の後方画像データG2に基づいて、後方車両C2の車線変更、停止、車線の端への寄せ等の動作を検出する。
【0046】
運転支援装置1は、CPU2とともに走行案内手段を構成する音声プロセッサ14を備えている。CPU2は、音声プロセッサ14と接続され、その音声プロセッサ14には同じく走行案内手段を構成するスピーカ15が接続されている。音声プロセッサ14は、CPU2の制御により、スピーカ15を駆動して、その時々の経路案内や、緊急車両C3の接近に基づく走行指示等、各種の運転支援のための音声案内をするようになっている。この各種音声案内のための音声データは、予め音声プロセッサ14の記憶部に記憶されている。
【0047】
例えば、図5(a)に示すように、緊急車両C3の接近方向が前方であるときに、図5(b)に示すように、前方車両C1が、車線を変更して停止するという退避動作を行っているとCPU2が判断したとき、同CPU2は、音声プロセッサ14を制御して、「前方車両が、左側に車線変更して停止しています。前方車両と同じように、左側に車線変更して停止してください。」、また、図6(a)に示すように、緊急車両C3の接近方向が後方であるときに、図6(b)に示すように、後方車両C2が、車線を変更して停止するという退避動作を行っているとCPU2が判断したとき、同CPU2は、音声プロセッサ14を制御して、「後方車両が、左側に車線変更して停止しています。後方車両と同じように、左側に車線変更し、停止してください。」等の案内をスピーカ15からアナウンスさせるようになっている。」
カ 「【0055】
そして、CPU2は、緊急車両C3の接近方向が前方であると判断すると(ステップS7でYES)、上述のように自車両Cの前方の第二の所定距離以内に前方車両C1が存在するかどうか判断する(ステップS8)。
【0056】
CPU2は、自車両Cの前方の第二の所定距離以内に前方車両C1が存在すると判断すると(ステップS8でYES)、上述のようにその前方車両C1の動作を検出する(ステップS9)。
【0057】
その後、CPU2は、上述のように前方車両C1の動作が緊急車両C3に対する退避動作かどうか判断する(ステップS5)。そして、CPU2は、前方車両C1の動作が緊急車両C3に対する退避動作であると判断すると(ステップS5でYES)、スピーカ15を介して、前方車両C1と同じ退避動作を行うように案内する(ステップS6)。
【0058】
このとき、前方車両C1が、左側に車線変更して停止しているときには、CPU2は、音声プロセッサ14を制御して、「前方車両が、左側に車線変更して停止しています。前方車両と同じように、左側に車線変更して停止してください。」という音声案内をスピーカ15からアナウンスする。
【0059】
従って、ドライバーに対して、前方車両C1と同じ動作を具体的に指示することができることから、ドライバーは周囲の状況に合った適な動作を行うことができ、緊急車両C3の通過に対処することができる。」
キ 「【0064】
従って、ドライバーに対して、後方車両C2と同じ動作を具体的に指示することができドライバーは周囲の状況に合った適な動作を行うことができる。
(2)上記実施形態によれば、CPU2は、走行時に、緊急車両C3が前方から接近していることを検出したとき、前方車両C1の有無を検出するようにした。そして、CPU2は、前方車両C1が存在する場合には、その前方車両C1の動作を取得し、該動作が緊急車両C3に対する退避動作かどうかを判断する。前方車両C1の動作が緊急車両C3に対する退避動作である場合には、CPU2は、前方車両C1の動作と同じ動作を行うように、音声で案内するようにした。」
ク 「【図4】
[図:0001398156000001.jpg]
」
ケ 「【図5】
[図:0001398156000002.jpg]
」
コ 「【図7】
[図:0001398156000003.jpg]
」
(2)引用発明1
上記(1)の記載事項及び図示事項を総合し、整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「自車両の運転支援装置であって、
前記自車両の前方画像データG1を取得する前方カメラCA1と、
CPU2を備えた制御手段であって、取得された前記前方画像データG1を用いて、前方車両C1が車線の端への幅寄せを行った後に停止した場合に運転支援のための音声案内をするように音声プロセッサ14を制御するCPU2を備えた制御手段と、を備える運転支援装置。」
2.引用文献2
(1)引用文献2の記載事項及び図示事項
原査定に引用された引用文献2(特開2015-44432号公報)には、「運転支援装置、および運転支援方法」に関して、次の記載事項及び図示事項がある。
サ 「【0006】
この発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、自動運転車両と手動運転車両とが混走する場合でも、自動運転による利点および手動運転による利点が得られることを可能とする運転支援技術の提供を目的とする。」
シ 「【0015】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために実施例について説明する。
A.装置構成 :
図1には、本実施例の運転支援装置1の大まかな構成が示されている。図示されるように本実施例の運転支援装置1は、周辺状況検出部10と、意識状態値検出部20と、自動運転実行部30と、通知部40と、記憶部50などを備えている。
尚、これら5つの「部」は、主に機能に着目して運転支援装置1を便宜的に分類した抽象的な概念であり、その実体は、運転支援装置1を構成する各種の機器や、電子部品、コンピューター、コンピュータープログラム、あるいはそれらの組合せなどによって構成されている。
【0016】
周辺状況検出部10は、自車両の周囲の画像を撮影する車載カメラ11や、自車両の周囲に存在する障害物などを検出するレーダー12や、自車両の現在位置を検出するGPS装置13や、GPS装置13によって検出した現在位置や運転者によって設定された目的地などに基づいて地図情報を読み出して運転者に提示するナビゲーションシステム14や、外部データベース2や周辺を走行している周辺車両3などと無線によって通信する外部通信装置15などを備えている。また、外部通信装置15は、周辺車両3の位置や、周辺車両3が自動走行中であるか否かに関する情報なども取得することができる。」
ス 「【0019】
自動運転実行部30は、周辺状況検出部10によって検出された各種の周辺状況に基づいて、自車両の図示しないステアリングハンドルを操舵するハンドルアクチュエータ32や、自車両の図示しないアクセルペダルを駆動するアクセルアクチュエータ34や、自車両の図示しないブレーキペダルを駆動するブレーキアクチュエータ36を駆動することによって自動運転を行う。
【0020】
たとえば、運転者によってナビゲーションシステム14に目的地が設定されると、ナビゲーションシステム14が示す走行経路や、車載カメラ11やレーダー12によって検出された周辺車両3の有無や位置、走行車線などの周辺状況を取得して、ステアリングハンドルや、アクセルペダル、ブレーキペダルなどを操作する。あるいは、前方の車両に追従走行する旨が運転者に指定されると、車載カメラ11やレーダー12によって検出された前方の走行車両との車間距離が一定となるように、アクセルペダルやブレーキペダルを操作しながら、追従する車両の後を追いかけるようにステアリングハンドルを操舵することによって自動運転を行う。尚、周辺状況に基づいてステアリングハンドルや、アクセルペダル、ブレーキペダルなどの操作量を決定する方法については、周知の種々の方法を用いることができる。
更に、自動運転実行部30は、意識状態値検出部20によって運転者の意識状態(たとえば覚醒度)が所定の閾値よりも低下したことが検出されると、後述する通知部40を用いて運転者に対して注意喚起する旨を通知する。」
セ 「【0023】
B.自動運転処理 :
図2には、本実施例の運転支援装置1で行われる自動運転処理のフローチャートが示されている。この処理は、運転支援装置1の主に自動運転実行部30によって実行される。
自動運転処理では、先ず始めに、自車両の周辺状況を取得する(S100)。ここで、自車両の「周辺状況」とは、自動運転するために周辺状況検出部10から取得する各種の情報である。たとえば、車載カメラ11やレーダー12や図示しないソナーなどで検出した周辺車両の有無や位置、車載カメラ11で検出した走行車線の位置や、周囲の明るさ、晴雨、GPS装置13で検出した現在位置や、ナビゲーションシステム14によって提示された経路情報や自車両の走行環境、外部通信装置15を介して外部データベース2や周辺車両3から取得した各種の情報などである。
また、本実施例の自動運転処理では、周辺車両3と無線で通信することにより、それぞれの周辺車両3の位置と、それぞれの周辺車両3について自動運転車両または手動運転車両の何れであるかに関する情報も、周辺状況として取得する。
【0024】
続いて、自動運転実行部30は、周辺車両3の中に手動運転車両が存在するか否かに応じて自動運転モードを設定する(S200)。ここで自動運転モードとは、自動運転する際の車間距離や、ハンドルの操舵に先立って方向指示器を点灯させるタイミング、ブレーキ操作に先立ってブレーキペダルを点灯させるタイミングなど、自動運転のための各種項目が設定されたデータである。詳細には後述するが、周辺車両3の中に手動運転車両が存在しない場合は、標準の自動運転モードが設定されるが、周辺車両3の中に手動運転車両が存在する場合には、標準とは異なる自動運転モードが設定される。
【0025】
そして、自動運転実行部30は、設定された自動運転モードに従って自動運転を行い(S102)、続いて、運転者によって自動運転が終了されたか否かを判断する(S104)。たとえば、運転者が自動運転を手動運転に切り換えた場合や、運転自体を終了した場合などでは、自動運転が終了されたと判断して(S104:yes)、図2の自動運転処理を終了する。
これに対して、自動運転が終了していないと判断した場合は(S104:no)、処理の先頭に戻って、周辺状況を取得した後(S100)、続く上述した一連の処理を繰り返す。この結果、自動運転中は、周辺車両3に手動運転車両が存在するか否かに応じて、標準の自動運転モードと、標準以外の自動運転モードとを切換ながら自動運転が行われる。」
ソ 「【0026】
C.自動運転モード設定処理 :
図3および図4には、自動運転処理中で自動運転モードを設定する自動運転モード設定処理(S200)のフローチャートが示されている。この処理も、自動運転実行部30によって実行される処理である。
自動運転モード設定処理(S200)を開始すると、先ず始めに、標準の自動運転モードを読み込む(S202)。前述したように、自動運転モードとは自動運転のための各種項目が設定されたデータである。そして、標準の自動運転モードとは、周辺車両3が存在しない場合、あるいは周辺車両3が存在していても、その中に手動運転車両が存在しない場合に用いられる自動運転モードである。記憶部50のメモリー51には、予め標準の自動運転モードのデータが記憶されており、S202では、このデータを読み込む。
【0027】
次に、検査領域内に手動運転車両が存在するか否かを判断する(S204)。ここで、検査領域とは、自動運転モードの設定に際して手動運転車両が存在するか否かを検査するために、自車両の周辺に予め設定された領域である。すなわち、周辺状況検出部10は外部通信装置15を用いて周辺車両3を検出しており、無線通信可能な範囲であれば車両を検出することができる。しかし、無線通信可能な範囲の全ての車両を周辺車両3として検出したのでは、範囲が広くなりすぎるだけでなく、電波状態によって範囲の広さが変化することとなって、安定して自動運転モードを設定することができなくなる。
そこで本実施例では、無線通信可能な範囲よりも狭い検査領域を自車両の周辺に設定しておき、自動運転モードを設定するに際しては、この検査領域内の走行車両を周辺車両3として扱う。
【0028】
図5には、本実施例で用いられる検査領域が例示されている。図示されるように検査領域は、自車両を取り囲むように設定されている。自車両の進行方向に対する左右方向の幅は、それぞれ1車線分程度ずつ(全体では3車線分程度)であり、進行方向の前方および後方に向かっては等距離ずつの全体として細長い長方形の形状に設定されている。尚、自車両の走行速度が高くなるほど、車両の進行方向の前方および後方に検査領域の長さが長くなるようにしてもよい。
【0029】
図示した例では、自車両と無線通信可能な範囲内には、車両A~Dの4台の車両が存在する。しかし、図中に破線で囲った検査領域内に存在する車両は車両Bおよび車両Cの2台であり、これらの車両が周辺車両3となる。そして、これら2台の周辺車両3の中で車両Bは自動運転車両であるが、車両Cは手動運転車両である。そこでこの場合は、検査領域内に手動運転車両が存在する(図3のS204:yes)と判断する。
尚、検査領域内に周辺車両3が存在しない場合や、周辺車両3が存在しても、それらが全て自動運転車両であった場合は、図3のS204では「no」と判断して、そのまま自動運転モード設定処理を終了する。その結果、この場合は、S202で読み込んだ標準の自動運転モードのデータが、そのまま自動運転に使用されることになる。
【0030】
検査領域内に手動運転車両が存在していた場合は(図3のS204:yes)、標準の自動運転モードのデータの中で、運転者に注意喚起するための閾値のデータを高めに変更する(S206)。すなわち、意識状態値検出部20は運転者の意識状態(たとえば覚醒度)を検出しており、自動運転中に運転者の意識状態が所定の閾値よりも低下すると、自動運転実行部30は通知部40を用いて運転者に注意喚起を行う。そして、検査領域内に手動運転車両が存在している場合には、その手動運転車両が急なハンドル操作や急な減速などを行った場合に備えて、運転者の意識状態を高いレベルに保っておくことが望ましい。そこで、運転者に注意喚起する閾値を高めに変更する。こうすれば、運転者の意識状態が閾値を下回ると注意喚起されるので、運転者の意識状態を高いレベルに保っておくことができる。」
タ 「【図1】
[図:0001398156000004.jpg]
」
チ 「【図3】
[図:0001398156000005.jpg]
」
(2)引用発明2
上記(1)の記載事項及び図示事項を総合し、整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「自車両の運転支援装置1であって、
前記自車両の周囲の画像を撮影する車載カメラ11や、自車両の周囲に存在する障害物などを検出するレーダー12を備えた周辺状況検出部10と、
自動運転を行う自動運転実行部30であって、周辺状況検出部10によって検出された周辺状況に基づき、周辺車両3を検出し、周辺車両3が手動運転車両である場合に通知部40を用いて運転者に注意喚起を行う自動運転実行部30と、を備える運転支援装置1。」
第5 対比・判断
1.本願発明1
(1)本願発明1と引用発明1との対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「自車両」はその機能、構成及び技術的意義からみて本願発明の「車両」に相当し、以下同様に、「運転支援装置」は「運転支援制御装置」に、「前方画像データG1」は「走行環境」に、「前方カメラCA1」は「取得部」に、「前方車両C1」は「前方車両」にそれぞれ相当する。
引用発明1の「前記自車両」は、引用文献1の段落【0029】(第4の1.(1)ウを参照。)の記載事項から、「自車位置検出手段を構成するGPS受信部6からの位置検出信号に基づいて絶対座標を算出するもの」であるから、本願発明1の「検出された前記車両」に相当する。
引用発明1の「車線の端への幅寄せ」は、図5(第4の1.(1)ケを参照。)の図示事項から本願発明1の「道路端に寄っている」ことに相当するといえる。そうすると、引用発明1の「取得された前記前方画像データG1を用いて、前方車両C1が車線の端への幅寄せを行った後に停止した」ことは、本願発明1の「取得された前記走行環境を用いて、道路端に寄っている前方車両が存在」することに相当する。そして、引用発明1の「CPU2」は本願発明1の「運転支援部」に相当する。また、引用発明1の「制御手段」は、運転支援装置の制御手段であるから本願発明1の「少なくとも車線逸脱防止支援を含む運転支援を実行可能な運転支援部を制御する制御部」及び「制御部」とは、「運転支援を実行可能な運転支援部を制御する制御部」及び「制御部」という限りで一致する。してみると、引用発明1の「CPU2を備えた制御手段であって、取得された前記前方画像データG1を用いて、前方車両C1が車線の幅寄せを行った後に停止した場合に運転支援のための音声案内をするように音声プロセッサ14を制御するCPU2を備えた制御手段」と本願発明1の「少なくとも車線逸脱防止支援を含む運転支援を実行可能な運転支援部を制御する制御部であって、交差点の近傍において、前記運転支援部によって前記車線逸脱防止支援の実行中に、取得された前記走行環境を用いて、道路端に寄っている前方車両が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記車線逸脱防止支援を解除し、前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部に実行させる制御部」とは、「運転支援を実行可能な運転支援部を制御する制御部であって、取得された前記走行環境を用いて、道路端に寄っている前方車両が存在する場合に運転支援を運転支援部に実行させる制御部」という限りで一致する。
したがって、両者は、
「車両の運転支援制御装置運転支援装置であって、
検出された前記車両の走行環境を取得する取得部と、
運転支援を実行可能な運転支援部を制御する制御部であって、取得された前記走行環境を用いて、道路端に寄っている前方車両が存在する場合に運転支援を運転支援部に実行させる制御部と、を備える運転支援制御装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本願発明1の「制御部」は、「少なくとも車線逸脱防止支援を含む運転支援を実行可能な運転支援部を制御する制御部」であって、「交差点の近傍において、前記運転支援部によって前記車線逸脱防止支援の実行中に、取得された前記走行環境を用いて、道路端に寄っている前方車両が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記車線逸脱防止支援を解除し、前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部に実行させる」、「制御部」であるのに対し、引用発明1の「制御手段」は、「少なくとも車線逸脱防止支援を含む運転支援を実行可能な運転支援部を制御する」ものではなく、「交差点の近傍において、前記運転支援部によって前記車線逸脱防止支援の実行中」に、「道路端に寄っている前方車両が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記車線逸脱防止支援を解除し、前記前方車両に追随する運転支援」を実行させるものでもない点。
(2)本願発明1と引用発明2との対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「自車両」は、その機能、構成及び技術的意義からみて本願発明1の「車両」に相当し、以下同様に、「運転支援装置1」は「運転支援制御装置」に、「周辺車両3」は「前方車両」にそれぞれ相当する。
引用発明2の「前記自車両」は、引用文献2の段落【0023】(第4の1.(2)セを参照。)の記載事項から、GPS装置13で現在位置を検出するものであるから、本願発明1の「検出された前記車両」に相当する。また、引用発明2の「周囲の画像」及び「周囲に存在する障害物など」は、その機能、構成及び技術的意義からみていずれも本願発明1の「走行環境」に相当し、同様に「撮影する」及び「検出する」はいずれも「取得する」に、「車載カメラ11」及び「レーダー12」を備えた「周辺状況検出部10」は「取得部」に相当する。そうすると、引用発明2の「前記自車両の周囲の画像を撮影する車載カメラ11や、自車両の周囲に存在する障害物などを検出するレーダー12を備えた周辺状況検出部10」は本願発明1の「検出された前記車両の走行環境を取得する取得部」に相当する。
引用発明2の「自動運転を行う自動運転実行部30」は、自動運転すなわち運転支援を実行可能な運転支援部を制御する自動運転実行部30であることは明らかであるから、本願発明1の「少なくとも車線逸脱防止支援を含む運転支援を実行可能な運転支援部を制御する制御部」とは「運転支援を実行可能な運転支援部を制御する制御部」という限りで一致する。そして、引用発明2の「周辺状況検出部10によって検出された周辺状況に基づき」は本願発明1の「取得された前記走行環境を用いて」に相当する。また、引用発明2の「周辺車両3を検出し、且つ、周辺車両3が手動運転車両である場合」と本願発明1の「道路端に寄っている前方車両が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合」とは、「前方車両が存在し、且つ、所定の条件を満たす場合」という限りで一致し、同様に引用発明2の「自動運転実行部30は通知部40を用いて運転者に注意喚起を行う」ことと本願発明1の「前記車線逸脱防止支援を解除し、前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部に実行させる」こととは「前記運転支援を運転支援部に実行させる」ことという限りで一致する。そうすると、引用発明2の「自動運転を行う自動運転実行部30であって、周辺状況検出部10によって検出された周辺状況に基づき、周辺車両3を検出し、且つ、周辺車両3が手動運転車両である場合に」、「通知部40を用いて運転者に注意喚起を行う」、「自動運転実行部30」と本願発明1の「少なくとも車線逸脱防止支援を含む運転支援を実行可能な運転支援部を制御する制御部であって、交差点の近傍において、前記運転支援部によって前記車線逸脱防止支援の実行中に、取得された前記走行環境を用いて、道路端に寄っている前方車両が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記車線逸脱防止支援を解除し、前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部に実行させる制御部」とは、「運転支援を実行可能な運転支援部を制御する制御部であって、取得された前記走行環境を用いて、前方車両が存在し、且つ、所定の条件を満たす場合に前記運転支援を運転支援部に実行させる制御部」という限りで一致する。
したがって、両者は、
「車両の運転支援制御装置であって、
検出された前記車両の走行環境を取得する取得部と、
運転支援を実行可能な運転支援部を制御する制御部であって、取得された前記走行環境を用いて、前方車両が存在し、且つ、所定の条件を満たす場合に前記運転支援を運転支援部に実行させる制御部と、を備える運転支援制御装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点2]
本願発明1は、制御部が「少なくとも車線逸脱防止支援を含む運転支援を実行可能な運転支援部を制御する制御部」であり、「交差点の近傍において、前記運転支援部によって前記車線逸脱防止支援の実行中」に、「道路端に寄っている前方車両が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記車線逸脱防止支援を解除し、前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部に実行させる制御部」であるのに対し、引用発明2の「自動運転実行部30」は、「少なくとも車線逸脱防止支援を含む運転支援を実行可能な運転支援部を制御する」ものではなく、「交差点の近傍において、前記運転支援部によって前記車線逸脱防止支援の実行中」に、「道路端に寄っている前方車両が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記車線逸脱防止支援を解除し、前記前方車両に追随する運転支援」を実行させるものでもない点。
(3)判断
上記(2)の相違点1及び相違点2のとおり、引用発明1および引用発明2はいずれも「少なくとも車線逸脱防止支援を含む運転支援を実行可能な運転支援部を制御する制御部」であり、「交差点の近傍において、前記運転支援部によって前記車線逸脱防止支援の実行中」に、「道路端に寄っている前方車両が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記車線逸脱防止支援を解除し、前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部に実行させる制御部」に係る本願発明1の発明特定事項(以下、「本願発明1の発明特定事項」という。)を備えるものではない。
そして、引用発明1または引用発明2において、当業者の通常の創作能力の範囲で本願発明1の発明特定事項に容易に想到し得たとする証拠を見出すこともできない。
また、引用発明1及び引用発明2はいずれも本願発明1の発明特定事項を備えるものではないから、仮に引用発明1に引用発明2を容易に適用し得たとしても、当該引用発明1に引用発明2を適用したものは本願発明1の発明特定事項を備えるものではない。同様に、引用発明2に引用発明1を適用し得たとしても、引用発明2に引用発明1を適用したものは本願発明1の発明特定事項を備えるものではない。
そして、当業者の通常の創作能力の範囲内で、引用発明1または引用発明2から本願発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとする他の事情を見出すこともできない。
そして、本願発明1は、本願発明1の発明特定事項により、例えば「追随対象となる前方車両が車線境界線や車道外側線を跨いで停車している場合であっても、他車両の円滑な走行を妨げない走行軌道に従い運転支援を実行することができる。」などの、引用発明1及び引用発明2にはない格別顕著な効果も奏する。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用発明2に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2ないし本願発明7
本願発明2ないし本願発明7は、本願発明1の発明特定事項を全て備え、さらに請求項2ないし請求項7で新たに特定される発明特定事項を備えるものである。
そして、本願発明2ないし本願発明7と引用発明1及び引用発明2とは、少なくとも本願発明1の対比・判断で上述した相違点1及び相違点2で相違する。
そうすると、「本願発明1と引用発明1との対比」(1.(1)参照。)で上述した理由と同じく、本願発明2ないし本願発明7は、当業者であっても、引用発明1及び引用発明2に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
3.本願発明8
本願発明8と引用発明1を対比すると、両者は、「本願発明1と引用発明1との対比」(1.(1)参照。)において上述した相違点1と同様な点で相違し、その余の点で一致する。
また、本願発明8と引用発明2を対比すると、両者は、「本願発明1と引用発明2との対比」(1.(2)参照。)において上述した相違点2と同様な点で相違し、その余の点で一致する。
そして、相違点1及び相違点2の判断は、「判断」(1.(3)参照。)で述べた理由と同じく、本願発明8は、当業者であっても、引用発明1及び引用発明2に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
第6 特許法第36条第6項第1号の検討
原査定における特許法第36条第6項第1号の拒絶の理由は、大略、請求項1,9(注:令和4年10月27日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項8)の「道路端に寄っている前方車両が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部に実行させる」なる記載事項は、発明の詳細な説明に記載されたものではない、というものである。
これに対し、令和4年10月27日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の「道路端(RE)に寄っている前方車両(M1)が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記車線逸脱防止支援を解除し、前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部(31)に実行させる」なる記載事項及び同請求項8の「道路端に寄っている前方車両が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記車線逸脱防止支援を解除し、前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部に実行させる」なる記載事項は、発明の詳細な説明の例えば段落【0033】ないし【0037】に記載された事項の範囲内のものといえる。
したがって、原査定の特許法第36条第6項第1号に係る拒絶の理由は、令和4年10月27日の手続補正により解消された。
第7 特許法第36条第6項第2号の検討
原査定における特許法第36条第6項第2号の拒絶の理由は、大略、
(1) 請求項1の「検出された前記車両の走行環境を取得する取得部」なる記載、請求項8の「前記走行環境を検出する検出部」なる記載、請求項9の「前記車両の走行環境を取得し」なる記載は不明確である。
(2) 請求項1~2,9の「前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に」なる記載は不明確である。
(3) 請求項1~2,9の「障害物」なる用語は不明確である。
(4) 請求項4には「前記制御部は、前記前方車両が複数存在する場合に前記運転支援を前記運転支援部に実行させる」と記載されている。そうすると、請求項1~3,5,9の「前記前方車両」なる記載が不明確となっており、発明が不明確である。
(5) 請求項1,9の「道路端に寄っている前方車両が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部に実行させる」ことの技術的意味が不明確である。
(6) 請求項2~7の各記載事項について、それぞれ、請求項1の「取得された前記走行環境を用いて、道路端に寄っている前方車両が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部に実行させる制御部」なる記載との対応、関係が不明確である。
(7) 請求項4の「前記制御部は、前記前方車両が複数存在する場合に前記運転支援を前記運転支援部に実行させる」なる記載は不明確である。
、というものである。
これに対し、発明の詳細な説明の記載、当分野における技術常識及び審判請求書における審判請求人の主張を踏まえ、令和4年10月27日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8を検討すると、
(1)について、「車両の走行環境」は発明の詳細な説明の段落【0023】の記載または定義に包含されるものであることは明確であり、「走行環境を取得する検出部」は、同段落【0023】に記載される入出力インターフェース103及び走行環境検出装置20Aに係る技術事項に包含されるものであることも明確である。
(2)について、「道路端の側における自車両の近傍」は、「側」及び「近傍」の一般的な理解を踏まえると、道路端の「側」とそれ以外の「側」を持つ自車両における「道路端の側」に近い領域(近傍)であることが明確である。
(3)について、「障害物」は発明の詳細な説明の段落【0035】の記載または定義に包含されるものであることは明確である。また、請求項1及び請求項8は、「道路端に寄っている前方車両が存在」し、「且つ」、「障害物が存在しない」、「場合」であるから、請求項1及び請求項8の「障害物」に「前方車両」が含まれないことも明確である。
(4)及び(7)について、請求項4は「前方車両が横並びに複数存在する場合」という条件において、「運転支援を行う」ことは明確といえる。また、当該理解において請求項4を引用する他の請求項が不明確になるともいえない。
(5)及び(6)について、請求項1及び請求項8の発明特定事項は、車線逸脱防止支援に係る制御を実行している場合に、道路端に寄っている前方車両が存在すること及び道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しないこととの2つの条件を満たす場合、車線逸脱防止支援を解除し、前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部に実行させるものであり、当該2つの条件を満たすか否かは、取得された前記走行環境を用いて行うことが明確といえる。また、請求項2ないし7で新たに特定される発明特定事項も、発明の詳細な説明の記載及び技術常識を踏まえると、請求項1の発明特定事項との関係は明確といえる。
したがって、原査定の特許法第36条第6項第2号に係る拒絶の理由は、令和4年10月27日の手続補正により解消された。
第8 特許法第36条第4項第1号の検討
原査定における特許法第36条第4項第1号の拒絶の理由は、大略、請求項1,9の「道路端に寄っている前方車両が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部に実行させる」なる記載事項について、発明の詳細な説明には、そのように制御することによって、どのようにして、段落0005に記載の「他車両の円滑な走行を妨げない走行軌道に従い運転支援を実行する」という課題を解決し得たのか、「発明が解決しようとする課題」と「解決手段」とが明確に対応付けて記載されておらず、技術的意味が不明確である。さらに、請求項1~9(なかでも特に請求項1,9)に記載された構成のみで、なぜ、上記課題を解決できるのか、「実施例」が明確に開示されていない、というものである(注:請求項9は令和4年10月27日の手続補正により請求項8とされた。)。
これに対し、令和4年10月27日の手続補正により補正した請求項1の「交差点(IS)の近傍において、前記運転支援部によって前記車線逸脱防止支援の実行中に、道路端(RE)に寄っている前方車両(M1)が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記車線逸脱防止支援を解除し、前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部(31)に実行させる」なる記載事項及び請求項8の「道路端に寄っている前方車両が存在し、且つ、前記道路端の側における自車両の近傍に障害物が存在しない場合に前記車線逸脱防止支援を解除し、前記前方車両に追随する運転支援を運転支援部に実行させる」なる記載事項は、発明の詳細な説明の段落【0002】ないし【0014】の記載からその技術的意味
は明確に理解できるものであり、さらに段落【0017】ないし【0054】の記載から、当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施できるものといえる。
したがって、原査定の特許法第36条第4項第1号に係る拒絶の理由は、令和4年10月27日の手続補正により解消された。
第9 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし本願発明8は、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たす。
さらに、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たす。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-017248