審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2022-017150

袋

審判番号
2022-017150
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-176092外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年10月26日
審決日
2025年06月12日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (B65D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-176092号「袋」拒絶査定不服審判事件〔平成30年3月29日出願公開、特開2018-47954号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、平成29年9月13日(優先権主張 平成28年9月15日)の出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。

令和3年 7月15日付け:拒絶理由通知書
令和3年11月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 3月 1日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和4年 4月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 8月 4日付け:補正の却下の決定、拒絶査定
令和4年10月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和5年 2月27日 :上申書の提出
令和6年 3月 5日付け:拒絶理由通知書
令和6年 4月23日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年10月11日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和6年12月 6日 :意見書、手続補正書の提出

第2 令和6年12月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和6年12月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。なお、下線部は補正箇所を示す。

「【請求項1】
蒸気抜き機構を有する袋であって、
前記袋を構成する積層体は、積層体外面側から内面側へ順に
基材/印刷層/接着剤層/シーラント層、又は
続きを表示(全13行)
基材/透明蒸着層/透明ガスバリア性塗布膜/印刷層/接着剤層/シーラント層、を含み、
前記基材は、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記基材は、二軸延伸フィルムであり、
前記シーラント層は、プロピレン・エチレンブロック共重合体と、ポリエチレンと、熱可塑性エラストマーとを含む単層の未延伸ポリプロピレンフィルムであり、
前記シーラント層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率は、80質量%以上であり、
前記積層体中に前記基材を構成する二軸延伸フィルムは1つのみであり、
前記蒸気抜き機構は、前記袋の内部の圧力の増加に伴って剥離される蒸気抜きシール部を含み、
前記蒸気抜きシール部の15mm幅での熱間シール強度は、20N以下であり、
前記蒸気抜きシール部の15mm幅での前記熱間シール強度は、前記蒸気抜きシール部の15mm幅での常温シール強度の4分の1以下である、袋。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の、令和6年4月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
蒸気抜き機構を有する袋であって、
前記袋を構成する積層体は、積層体外面側から内面側へ順に
基材/印刷層/接着剤層/シーラント層、又は
続きを表示(全13行)
基材/透明蒸着層/透明ガスバリア性塗布膜/印刷層/接着剤層/シーラント層、を含み、
前記基材は、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記基材は、二軸延伸フィルムであり、
前記シーラント層は、プロピレン・エチレンブロック共重合体と、ポリエチレンと、を含む未延伸ポリプロピレンフィルムであり、
前記シーラント層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率は、80質量%以上であり、
前記積層体中に前記基材を構成する二軸延伸フィルムは1つのみであり、
前記蒸気抜き機構は、前記袋の内部の圧力の増加に伴って剥離される蒸気抜きシール部を含み、
前記蒸気抜きシール部の15mm幅での熱間シール強度は、20N以下であり、
前記蒸気抜きシール部の15mm幅での前記熱間シール強度は、前記蒸気抜きシール部の15mm幅での常温シール強度の4分の1以下である、袋。」

2 補正の適否

本件補正における請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「シーラント層」について、上記のとおり限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記1(1)の【請求項1】に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載及び引用発明

ア 引用文献1

(ア)引用文献1の記載

令和6年10月11日付けの拒絶理由通知書(最後)(以下「当審拒絶理由通知書」という。)に引用文献1として引用された特開2006-143223号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審で付した。また、「・・・」は文章の省略を表す。以下同様。)

「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート系フィルムと熱接着性樹脂層が積層された積層体からなることを特徴とする電子レンジ加熱用包装袋。
・・・
【請求項3】
周縁に熱接着部が形成されるとともに前記熱接着部に隣接して電子レンジ加熱時に発生する蒸気を自動的に排出する蒸気排出部が形成されている構成からなることを特徴とする請求項1または2記載の電子レンジ加熱用包装袋。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、内部に水分と油分や糖分を多く含む液状物と固形状物からなる食品等を収納して、業務用の高出力の電子レンジにて加熱調理する際に、部分的にマイクロ波が集中して包装袋が局部的に強く加熱されることがあっても、包装袋を構成する積層体が溶融して穴があくのを防止できる電子レンジ加熱用包装袋を提供することである。」
「【0015】
本発明の電子レンジ加熱用包装袋に使用する第2実施形態の積層体10’の構成は、図2に示すように、外面から順にポリブチレンテレフタレート系フィルム12と接着層14と熱接着性樹脂層13が積層された構成からなる。第2実施形態の積層体を使用して作製される包装袋においても、第1実施形態の積層体を使用して作製される包装袋と同様に、上記の効果が得られる。」
「【0018】
図3、図4に示す電子レンジ加熱用包装袋に内容物を収納して、電子レンジで加熱することにより収納した内容物を調理することができるとともに、内容物を調理中に内部で発生した蒸気の圧力が高くなると、蒸気排出用熱接着部4が剥離し開口から自動的に蒸気を外部に排出できるので、包装袋が破裂することなく且つ内部に収納されている内容物が溢れだすことなく、内部に収納した内容物を調理することができる。」
「【0021】
熱接着性樹脂層としては、未延伸ポリプロピレン(CPP)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ホリエチレン(HDPE)等の耐熱性の優れた樹脂が使用できる。・・・」
「【実施例2】
【0023】
厚さ15μmの2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム〔ノバデュラン5505S(三菱エンジニアリングプラスチック)〕と50μmの線状低密度ポリエチレンフィルムを2液型ウレタン系接着剤にてドライラミネートして2層構成の積層体を作製し、この積層体を使用して図4に示す形状のパウチ(長さ160mm、幅130mm)を作製し、このパウチにドミグラソースハンバーグを85g充填し、500W電子レンジで2分間加熱した結果、n=10で10袋とも穴あきは発生しなかった。」
「
[図:0001424862000001.jpg]
」

(イ)引用文献1の記載から認められること

上記【0015】、【0023】、図2の層構成をみるに、熱接着性樹脂層13は単層であることは明らかである。

(ウ)引用文献1に記載された発明

上記(ア)及び(イ)を総合的に勘案すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「電子レンジ加熱時に発生する蒸気を自動的に排出する蒸気排出部が形成されている電子レンジ加熱用包装袋であって、
電子レンジ加熱用包装袋に使用する積層体10’の構成は、外面から順に、ポリブチレンテレフタレート系フィルム12と接着層14と熱接着性樹脂層13が積層された構成からなり、
ポリブチレンテレフタレート系フィルム12は、2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムであり、
熱接着性樹脂層13は、単層の線状低密度ポリエチレンフィルムであり、
蒸気排出部は、電子レンジで加熱することにより、内容物の調理中に内部で発生した蒸気の圧力が高くなると、剥離し開口から自動的に蒸気を外部に排出できる蒸気排出用熱接着部4を含む、
電子レンジ加熱用包装袋。」

イ 引用文献2

(ア)引用文献2の記載

当審拒絶理由通知書に引用文献2として引用された特開2013-79085号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。

「【請求項1】
少なくとも非鉄系酸素吸収性樹脂層と、食品接触層と、を有するシーラントであって、
前記シーラント同士を、食品接触層を内側にして熱接着したとき、23℃におけるシール強度が23~100N/15mmであり、かつ、90℃におけるシール強度が5~25N/15mmであることを特徴とするシーラント。」
「【0001】
本発明は、シーラント、それを用いた積層体および電子レンジ用包装袋に関し、詳しくは、電子レンジ用包装袋に用いることで、その内容物の風味の劣化を抑制することができ、かつ、輸送時や保管時に加わる圧力や衝撃によって剥離することなく、電子レンジでの加熱時に内圧により容易に剥離するシーラント、それを用いた積層体および電子レンジ用包装袋に関する。」
「【0016】
本発明においては、シーラント10に非鉄系の酸素吸収性樹脂層3を設けることが肝要である。シーラント10に非鉄系の酸素吸収性樹脂層3を設けたことで、シーラント10の酸素バリア性が向上する。そのため、本発明のシーラント10を電子レンジ用包装袋のシーラントとして用いた場合、内容物の酸化による風味の劣化を防止し、内容物の長期保存が可能となる。また、本発明においては、シーラント10同士を、食品接触層4を内側にして熱接着したとき、23℃におけるシール強度が23~100N/15mmであり、かつ、90℃におけるシール強度が5~25N/15mmであることも重要である。シーラント10の食品接触層4同士を熱接着したとき、23℃におけるシール強度が23N/15mm未満であると輸送や保管時に加わる圧力や衝撃によってシール部が剥離してしまうおそれがある。シール強度の上限については特に制限はないが、好適には23~100N/15mmである。また、90℃におけるシール強度は5~25N/15mmである。90℃におけるシール強度が25N/15mmを超えると、自動開封が速やかで確実に達成できないおそれがあり、破袋する場合もあるため好ましくない。好適には10~15N/15mmである。以下、本発明のシーラント10を構成する各層について詳細に説明する。」
「【0075】
続いて、本発明の電子レンジ用包装袋について説明する。
本発明の電子レンジ用包装袋は上記本発明の積層体を用いたものである。例えば、本発明の電子レンジ用包装袋に用いる積層体としては、図2に示すような、基材層11と、印刷層12と、接着層13と、シーラント層14とを順次に積層されたものを好適に用いることができる。先に述べたとおり、印刷層12と接着層13は、必須の層ではなく、適宜必要に応じて設けられる層である。また、必要に応じて、シーラント層14と基材層11の層間に中間層(図示せず)を設けてもよい。」
「【0078】
本発明の電子レンジ用包装袋100においては、コの字状シール部を、図3(b)に示すように、胴部シール部105と連結して設けることが好ましい。これにより、電子レンジで加熱すると、コの字状シール部109に圧力が集中してかかるため、コの字状シール部109の縁部からシール剥離して、未シール部110内に形成される切欠111等を通って、内容物より発生する蒸気を速やかに袋外に排出することができる。また、コの字状シール部109を形成する際、胴部シール部105とコの字状シール部109とを一体で生産性良くシール加工できるという利点も有している。
【0079】
コの字状シール部109は、図示しないが、胴部シール部105に限定されず、天部シール部107に連結して設けても、同様の効果が得られる。コの字状シール部109が、胴部シール部105と連結されず、独立して形成されていると、電子レンジの加熱により発生する蒸気の圧力が、胴部シール部105や天部シール部107と独立シール部との間を通ってしまうため、効率的に独立シール部に圧力がかかりにくくなり、自動開封がスムーズに起らなくなるので好ましくない。また、内容物を充填する際または流通の過程において独立シール部と胴部シール部105との間に内容物が入り込み外観不良が生じる。さらに、独立シール部と胴部シール部105や天部シール部107の周縁シール部とを2工程でシール加工するため、シール加工の生産性に劣る。」
「【0098】
<ポリプロピレンの製造例>
上記プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)のパウダーを25質量%、プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)のパウダー70質量%ブテン-1が20質量%が含有され、230℃、2.16kg荷重でのMFRが6.8g/10分のエチレン-ブテン-1共重合体を5質量の配合で添加し、押し出し機を用いて溶融混練し、ポリプロピレン樹脂を製造した。」
「【0100】
<積層フィルムの作製例>
まず、図1に示すタイプのシーラントを作製した。食品接触層4およびポリオレフィン系樹脂層1に上記のポリプロピン樹脂を用い、酸素吸収性樹脂層3に上記酸素吸収性樹脂を用い、接着性樹脂層2a、2bにポリオレフィン系接着性樹脂(モディック(登録商標):三菱化学(株)社製)を用い、これらを共押出機に供してシーラントを作製した。シーラントの各層の厚みは、ポリオレフィン系樹脂層1(15μm)/接着性樹脂層2a(5μm)/酸素吸収性樹脂層3(20μm)/接着性樹脂層2b(5μm)/食品接触層4(25μm)である。次に、厚さ12μmのシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚さ15μmの延伸ナイロンフィルム、厚さ70μmの上記シーラントを、2液硬化型ウレタン系接着剤でドライラミネートして、透明バリアPET(12μm)/接着剤/延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤/シーラント(70μm)、の積層体を作製した。
【0101】
<電子レンジ用包装袋の作製例>
得られた積層体をカットして、胴部材2枚(155mm×147mm)と、底部材1枚(80mm×147mm)を得た。次に、底部材を、シーラントが内側になるように折り返して、折り返し部の左右に直径φ15mmの半円状パンチ穴を端部より30mm内方に入った位置に形成した。その後、製袋機を用いて、対向する前後の胴部材の底部側に、シーラントが内側になるように折り返して、内側にひだ状の折り返し部を有する底部材を挿入し、内容物の充填口となる上端部を残して、半円状パンチ穴を通して、前後の胴部材をシールした。シール幅は10mmとした。また、丸底シール部を胴部材・底部材をシール幅5mmで熱接着することにより袋体を作製した。さらに、片側の胴シール部にコの字シール部(縦寸法:25mm、横寸法:15mm、シール幅:3mm、切欠の直径8mm)を形成して、自立性電子レンジ用包装袋(外寸法、高さ155mm、幅147mm)を作製した。」
「【0106】
<実施例6>
シーラントの各層の厚みを、ポリオレフィン系樹脂層1(10μm)/接着性樹脂層2a(5μm)/酸素吸収性樹脂層3(25μm)/接着性樹脂層2b(5μm)/食品接触層4(5μm)としたこと以外は、実施例1と同様にして自立性電子レンジ用包装袋を得た。」
「【0111】
<ヒートシール強度の測定>
各自立性電子レンジ用包装袋のシーラント層間の熱接着部のヒートシール強度を測定した。測定には引張試験機(オリエンテック社製)を用い、T字剥離して剥離強度を測定した。測定条件は引張速度300mm/minとした。得られた結果を表1に示す。」
「【0114】
【表1】
[図:0001424862000002.jpg]
」

(イ)引用文献2の記載から認められること

上記【0078】、【0079】をみるに、コの字状シール部は、胴部シール部105と連結して一体的に設けられるものであり、上記【0100】、【0101】をみるに、コの字シール部とその他のシール部とでは、同じ積層構造を有するので、コの字シール部とその他のシール部は、同じシール強度を有すると認められる。

上記【表1】の実施例6をみるに、シール部のシール強度は、90℃のシール強度が5.8(N/15mm)で、23℃のシール強度が23.5(N/15mm)である。

(ウ)引用文献2に記載された事項及び周知技術

上記(ア)及び(イ)を総合的に勘案すると、引用文献2には以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

「コの字状シール部109及び切欠111を有する電子レンジ用包装袋において、
コの字シール部の90℃のシール強度を5.8(N/15mm)とし、23℃のシール強度を23.5(N/15mm)とすること。」

(エ)引用文献2の記載に基づく周知技術

上記(ア)【0075】の記載を踏まえると、以下の事項は周知技術(以下「周知技術1」という。)である。

「蒸気抜き機構を有する袋に利用される積層体において、印刷層を、基材/印刷層/接着層/シーラント層という層構成で設けること。」

ウ 引用文献3、引用文献4及び引用文献7の記載並びに周知技術

(ア)引用文献3の記載

当審拒絶理由通知書に引用文献3として引用された特開2013-87275号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。

「【0001】
本発明はポリプロピレン系フィルムに関する。より詳しくは、レトルト処理後のユズ肌の発生を飛躍的に軽減させることができ、かつ耐ブロッキング性、耐低温衝撃性、ヒートシール性能が良好であるレトルト包装袋としてハイレトルト用途に広く使用できるポリプロピレン系フィルムおよびその積層体に関するものである。」
「【0016】
・・・本発明のポリプロピレン系フィルムは、上述の(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体75~97重量%と(b)スチレン系ブロックを有するブロック共重合体、または結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体1~5重量%、(c)エチレン・α-オレフィン共重合体エラストマー1~10重量%および、(d)ポリエチレン系重合体1~10重量%を配合して、ポリプロピレン系樹脂組成物を製造する。ポリマ(b)が1重量%未満ではフィルムの耐ユズ肌性が悪化し、5重量%を越えると耐ブロッキング性が悪くなる。・・・本発明のポリプロピレン系フィルムは冷却固化の後に延伸を行うこともできるが、好ましくは高い低温衝撃性を得る為に実質的に延伸を行わない無延伸フィルムであることが好ましい。・・・」
「【0024】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
[実施例1]ポリマ(a)、(b)、(c)、(d)は次のものを使用した。
(1)ポリマ(a)
続きを表示(全13行)
20℃でのキシレン不溶部の含有量が82.2重量%、その極限粘度([η]H)が1.91dl/g、20℃でのキシレン可溶部の含有量が17.8重量%、その極限粘度([η]EP)が2.53dl/g、230℃でのMFRが3.1g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B-PPと略称)を使用した。
(2)ポリマ(b)
スチレン系ブロックを有するブロック共重合体(b1)として、旭化成株式会社製のスチレン・エチレンブチレン・スチレントリブロック共重合体である“タフテック”H1062(密度0.89g/cm3、230℃でのMFR4.5g/10分(SEBS1と略称))を使用した。
(3)ポリマ(c)
エチレン・α-オレフィン共重合体エラストマー(c)として、三井化学株式会社製“タフマー”P-0280(密度0.87g/cm3、230℃でのMFR5.4g/10分のエチレン・プロピレンランダム共重合体)を使用した。
(4)ポリマ(d)
ポリエチレン系重合体(d)として、日本ポリエチレン株式会社製の “ノバテック” HY540(密度0.960g/cm3、190℃でのMFR1.0g/10分の高密度ポリエチレン(HDPEと略称))を使用した。
【0025】
前記ポリマ(a)を89重量%、ポリマ(b)を3重量%、ポリマ(c)を3重量%、ポリマ(d)を5重量%をペレット状態でブレンダーで混合して250℃に加熱した押出機に供給し、溶融混練してフィルターで濾過し、次いで250℃でTダイより60m/分で押出し、45℃の冷却ロールに接触させて冷却・固化させた後片面をコロナ放電処理してぬれ張力を40mN/mとし、厚さ70μmのフィルムを得た。得られたフィルムは耐ユズ肌性、耐ブロッキング性、ヒートシール性、耐低温衝撃性に優れたものであった。」

(イ)引用文献4の記載

当審拒絶理由通知書に引用文献4として引用された特開平10-158463号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。

「【請求項1】プロピレン・エチレンブロック共重合体が96~99Wt%であり、高密度ポリエチレンが1~4Wt%からなるフイルムであって、プロピレン・エチレンブロック共重合体が次の(a)~(c)に規定する特性を有することを特徴とするレトルト用ポリプロピレン系フイルム。
(a)融点が157~164℃であること。
(b)キシレン可溶分量が16~25%であること。
(c)MFRが1.0~3.0g/10分であること。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レトルト用ポリプロピレン系フイルムに関するものである。さらに詳しくは、レトルト包装袋のヒートシール層に用いられるフイルムに関するもので、低温での耐破袋性に特に優れ、且つ耐ブロッキング性に優れた開口性の良いレトルト用包装フイルムに関するものである。」

「【0029】本発明のレトルト用ポリプロピレン系フイルムの製造方法は、特に限定されず公知の製膜法で製造することが可能であり、特にTダイに法による未延伸フイルムの製造方法により好適に製造される。」

(ウ)引用文献7の記載

当審拒絶理由通知書に引用文献7として引用された特開2015-168766号公報(以下「引用文献7」という。)には、以下の記載がある。

「【請求項1】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)45~84重量%、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b)3~15重量%、および低密度のポリエチレン系重合体(c)10~40重量%からなる樹脂組成物を溶融製膜したポリプロピレン系フィルムであって、プロピレン・エチレン共重合体(a)は、20℃キシレン不溶部の割合が75%~90%重量%で、該不溶部の極限粘度([η]H)が1.8~2.2dl/gであり、該可溶部の極限粘度([η]EP)が2.5~3.3dl/gであることを特徴とするポリプロピレン系フィルム。」
「【請求項5】
単層または2層以上のフィルムが積層された基材層の片面にヒートシール層として請求項1から4のいずれかに記載のポリプロピレン系フィルムが積層された積層体。」
「【0001】
本発明はポリプロピレン系フィルムおよびそれを用いた積層体に関し、さらに詳しくは、特に耐低温衝撃性に優れ、耐ユズ肌性にも優れた、大型のレトルト包装袋としてハイレトルト用途に広く使用できるポリプロピレン系フィルムおよびそれを用いた積層体に関するものである。」
「【0047】
本発明のポリプロピレン系フィルムは冷却固化の後に延伸を行うこともできるが、好ましくは実質的に延伸を行わない無延伸フィルムであることが好ましい。実質的に延伸を行わない無延伸フィルムの方が、引き裂き強さに優れ、かつ、ヒートシールする際のヒートシール温度を過度に高める必要がない(比較的低温でヒートシールできる)ことから好ましい。・・・」
「【0066】
[実施例1]
プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)、水添エチレン系熱可塑性エラストマー(b)、低密度のポリエチレン系重合体(c)は次のものを使用した。
・・・
【0070】
前記(a)80重量%、(b)5重量%、(c)15重量%を、ペレット状態でブレンダーにより混合して押出機に供給し、溶融混練してフィルターで濾過し、次いで250℃でTダイより60m/分で押出し、45℃の冷却ロールに接触させて冷却・固化させた後片面をコロナ放電処理して厚さ70μmのフィルムを得た。得られたフィルムは耐低温衝撃性、耐ユズ肌性に優れたものであり、業務用の大型のレトルト用途にも十分な性能を有するものであった。」

(エ)引用文献3、引用文献4及び引用文献7の記載に基づく周知技術

引用文献3に関して、エチレン・α-オレフィン共重合体エラストマーは、熱可塑性エラストマーである。

そして、上記(ア)~(ウ)の記載を踏まえると、以下の事項は周知技術(以下「周知技術2」という。)である。

「レトルト包装袋を構成する積層体のシーラント層を、プロピレン・エチレンブロック共重合体と、ポリエチレンと、熱可塑性エラストマーとを含む未延伸ポリプロピレンフィルムとし、前記シーラント層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率が、80質量%以上であるものを用いること。」

(3)本件補正発明と引用発明との対比・判断

ア 対比

引用発明の「蒸気排出部」、「電子レンジ加熱用包装袋」は、それぞれ、本件補正発明の「蒸気抜き機構」、「袋」に相当する。

引用発明の「ポリブチレンテレフタレート系フィルム12」は、本件補正発明の「51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含」む「基材」に相当する。

引用発明の「接着層14」は、本件補正発明の「接着剤層」に相当する。

引用発明の「熱接着性樹脂層13」は、本件補正発明の「シーラント層」に相当する。

引用発明の「積層体10’」が「外面から順に、ポリブチレンテレフタレート系フィルム12と接着層14と熱接着性樹脂層13が積層された構成からな」ることと、本件補正発明の「積層体」が「積層体外面側から内面側へ順に基材/印刷層/接着剤層/シーラント層、又は基材/透明蒸着層/透明ガスバリア性塗布膜/印刷層/接着剤層/シーラント層、を含」むことは、その選択的記載を考慮すると、「積層体は、積層体外面側から内面側へ順に基材/接着剤層/シーラント層を含」む限りにおいて一致する。

引用発明の「ポリブチレンテレフタレート系フィルム12は、2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムであ」ることは、本件補正発明の「前記基材は、二軸延伸フィルムであ」ることに相当し、積層体10’の積層構造も踏まえると、本件補正発明の「前記積層体中に前記基材を構成する二軸延伸フィルムは1つのみであ」ることも満たす。

引用発明の「熱接着性樹脂層13は、単層の線状低密度ポリエチレンフィルムであ」ることは、本件補正発明の「前記シーラント層は、プロピレン・エチレンブロック共重合体と、ポリエチレンと、熱可塑性エラストマーとを含む単層の未延伸ポリプロピレンフィルムであり、前記シーラント層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率は、80質量%以上であ」ることと、「シーラント層は、単層のフィルムであ」る限りにおいて一致する。

引用発明の「電子レンジで加熱することにより、内容物の調理中に内部で発生した蒸気の圧力が高くなると、剥離し開口から自動的に蒸気を外部に排出できる蒸気排出用熱接着部4」は、本件補正発明の「前記袋の内部の圧力の増加に伴って剥離される蒸気抜きシール部」に相当する。

そうすると、本件補正発明と引用発明とは、

「蒸気抜き機構を有する袋であって、
前記袋を構成する積層体は、積層体外面側から内面側へ順に
基材/接着剤層/シーラント層を含み、
前記基材は、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記基材は、二軸延伸フィルムであり、
前記シーラント層は、単層のフィルムであり、
前記積層体中に前記基材を構成するフィルムは1つのみであり、
前記蒸気抜き機構は、前記袋の内部の圧力の増加に伴って剥離される蒸気抜きシール部を含む、袋。」

で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>

「積層体は、積層体外面側から内面側へ順に基材/接着剤層/シーラント層を含」む点に関し、

本件補正発明では、「基材/印刷層/接着剤層/シーラント層、又は基材/透明蒸着層/透明ガスバリア性塗布膜/印刷層/接着剤層/シーラント層、を含」むのに対し、引用発明は、少なくとも印刷層を有していない点。

<相違点2>

「シーラント層は、単層のフィルムであ」る点に関し、本件補正発明では、「前記シーラント層は、プロピレン・エチレンブロック共重合体と、ポリエチレンと、熱可塑性エラストマーとを含む」「未延伸ポリプロピレンフィルムであり、」「前記シーラント層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率は、80質量%以上であ」るのに対し、引用発明では、「熱接着性樹脂層13は、単層の線状低密度ポリエチレンフィルムであ」る点。

<相違点3>

蒸気抜きシール部に関し、本件補正発明では、「前記蒸気抜きシール部の15mm幅での熱間シール強度は、20N以下であり、前記蒸気抜きシール部の15mm幅での前記熱間シール強度は、前記蒸気抜きシール部の15mm幅での常温シール強度の4分の1以下である」のに対し、引用発明では、蒸気排出用熱接着部4がこのような特性を有するか不明な点。

イ 判断

以下、相違点について、それぞれ検討する。

(ア)相違点1について

上記(2)イ(エ)のとおり、引用発明のような蒸気抜き機構を有する袋に利用される積層体において、印刷層を、基材/印刷層/接着層/シーラント層という層構成で設けることは周知技術(周知技術1)である。

そうすると、引用発明において、前記周知技術1を参考にして、ポリブチレンテレフタレート系フィルム12と接着層14の間に印刷層を設けることで、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)相違点2について

上記(2)ウ(エ)のとおり、レトルト包装袋を構成する積層体のシーラント層を、プロピレン・エチレンブロック共重合体と、ポリエチレンと、熱可塑性エラストマーとを含む未延伸ポリプロピレンフィルムとし、前記シーラント層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率が、80質量%以上であるものを用いることは周知技術(周知技術2)である。

そして、引用文献1には、「熱接着性樹脂層としては、未延伸ポリプロピレン(CPP)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ホリエチレン(HDPE)等の耐熱性の優れた樹脂が使用できる。」(【0021】)と記載されているように、未延伸ポリプロピレン(CPP)が例示されており、ポリプロピレンを主成分とする樹脂を採用できることが示唆されている。

そうすると、引用発明の熱接着性樹脂層13として、上記示唆に従い前記周知技術2を適用して、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(ウ)相違点3について

引用発明と引用文献2記載事項は、電子レンジによる加熱時の内圧で剥離・開口する蒸気抜きシール部を有する電子レンジ用包装袋である点で共通するから、それらを組み合わせることには十分な動機がある。

そして、引用発明において、引用文献1の「電子レンジで加熱することにより収納した内容物を調理することができるとともに、内容物を調理中に内部で発生した蒸気の圧力が高くなると、蒸気排出用熱接着部4が剥離し開口から自動的に蒸気を外部に排出できる」(【0018】)という電子レンジ用包装袋に求められる性能に応じて、熱間シール強度や常温シール強度を調整することは当業者が適宜行い得る事項である。

そうすると、引用発明において、蒸気排出用熱接着部4の熱間シール強度及び常温シール強度を調整するに際し、具体的なシール強度として、引用文献2記載事項を参酌することで、相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(エ)効果について

これらの相違点1~3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献1に記載された事項、引用文献2記載事項、及び周知技術1、2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ 審判請求人の主張について

(ア)審判請求人の主張

折りたたみ中(クリックで表示)

審判請求人は、令和6年12月6日提出の意見書(以下「意見書」という。)において以下のとおり主張する。

「以下に説明するとおり、引用文献1の熱接着性樹脂層(シーラント層)と、引用文献2のシーラントとは、構成の点で大きな相違があります。従って、引用文献2記載事項を参酌することにより、引用文献1に記載の発明の蒸気排出用熱接着部4の熱間シール強度及び常温シール強度を、本願発明の数値範囲内のシール強度とすることは、当業者にとって容易なことではないと考えます。
引用文献2の請求項1には、「少なくとも非鉄系酸素吸収性樹脂層と、食品接触層と、を有するシーラントであって、前記シーラント同士を、食品接触層を内側にして熱接着したとき、23℃におけるシール強度が23~100N/15mmであり、かつ、90℃におけるシール強度が5~25N/15mmであることを特徴とするシーラント。」との記載があります。すなわち、引用文献2に記載の発明は、シーラントが、非鉄系酸素吸収性樹脂層及び食品接触層という少なくとも2つの層を含むことを必須の要件としています。90℃のシール強度が5.8(N/15mm)で、23℃のシール強度が23.5(N/15mm)である実施例6においても、シーラントは、非鉄系酸素吸収性樹脂層及び食品接触層を含んでいます。具体的には、実施例6において、シーラントは、ポリオレフィン系樹脂層1(10μm)/接着性樹脂層2a(5μm)/酸素吸収性樹脂層3(25μm)/接着性樹脂層2b(5μm)/食品接触層4(5μm)という5つの層を含んでいます。
一方、引用文献1において、熱接着性樹脂層がポリプロピレンを含む形態として示されているのは、熱接着性樹脂層が未(無)延伸プロピレンフィルムによって構成される例のみです(引用文献1の段落〔0021〕、〔0022〕参照)。すなわち、引用文献1の熱接着性樹脂層(シーラント層)の層構成と、引用文献2のシーラントの層構成との間には、大きな相違があります。
シール強度は、シーラント層の層構成の影響を大きく受けます。例えば、引用文献2の実施例1~6においては、シーラント層の層構成に応じて、23℃でのヒートシール強度が23.5~66.4Nの範囲で変化し、90℃でのヒートシール強度が5.8~21.5Nの範囲で変化しています。引用文献1の層構成とは大きく異なる層構成を採用している引用文献2に記載の熱間シール強度及び常温シール強度を参酌して、引用文献1の熱間シール強度及び常温シール強度を調整することは、当業者にとって容易なことではないと考えます。
また、引用文献2に記載の発明は、内容物の風味の劣化を抑制することができ、かつ、輸送時や保管時に加わる圧力や衝撃によって剥離することなく、電子レンジでの加熱時に内圧により容易に剥離するシーラントを提供するために、シーラントが、非鉄系酸素吸収性樹脂層及び食品接触層という少なくとも2つの層を含むことを必須の要件としています(引用文献2の段落〔0007〕参照)。一方、引用文献1に記載の発明は、内部に水分と油分や糖分を多く含む液状物と固形状物からなる食品等を収納して、業務用の高出力の電子レンジにて加熱調理する際に、包装袋を構成する積層体が溶融して穴があくのを防止することを目的としています(引用文献1の段落〔0004〕参照)。すなわち、引用文献1に記載の発明は、耐熱性を課題としています。引用文献2には、非鉄系酸素吸収性樹脂層及び食品接触層を含むシーラントが、耐熱性の向上に寄与するとの記載も示唆もありません。この点でも、引用文献2に記載の技術を引用文献1に記載の発明に適用することは、当業者にとって容易なことではないと考えます。
仮に、当業者が引用文献2に記載の技術を引用文献1に記載の発明に適用したとしても、引用文献2の実施例1~6には、シーラント層の様々な層構成に応じて様々なシール強度が得られた例が示されています。当業者が、引用文献2の実施例1~6の中から、実施例6に記載のシール強度を、引用文献1に記載の発明に適用しようとする動機は、引用文献2からは特には生じないと考えます。また、仮に当業者が引用文献2の実施例6に記載のシーラントを引用文献1に記載の発明に適用したとしても、本願発明には到達できません。引用文献2の実施例6に記載のシーラントは、熱可塑性エラストマーを含むものではなく、単層の未延伸ポリプロピレンフィルムからなるものでもないからです。これらの点でも、本願発明は、引用文献1,2に基づいて当業者が容易に発明できたものではないと考えます。」(第2頁第39行~第3頁第40行)

(イ)審判請求人の主張に対する検討

折りたたみ中(クリックで表示)

引用文献2には、「本発明においては、・・・非鉄系の酸素吸収性樹脂層3を設けたことで、シーラント10の酸素バリア性が向上する。・・・シーラント10同士を、食品接触層4を内側にして熱接着したとき、23℃におけるシール強度が23~100N/15mmであり、かつ、90℃におけるシール強度が5~25N/15mmであることも重要である。」(【0016】)と記載されているように、非鉄系の酸素吸収性樹脂層3は、あくまでもシーラント10の酸素バリア性を担保するための層であり、シール強度を議論する上で必須の構成ではない。

また、所望のシール強度を得るため、シーラント層の材質、厚み、シール温度などを調整することは技術常識であることを踏まえると、引用発明の熱接着性樹脂層13と引用文献2のシーラントとの間で構成の点で相違があるとしても、引用発明において、シーラント層を適宜調整することにより、蒸気排出用熱接着部4の熱間シール強度及び常温シール強度を、引用文献2記載事項を参酌して、本件補正発明の数値範囲内のシール強度とすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、上記イ(ウ)で述べたとおり、引用発明と引用文献2記載事項とを組み合わせる動機付けが十分存在する。

加えて、本件補正発明における「前記蒸気抜きシール部の15mm幅での前記熱間シール強度は、20N以下」及び「前記蒸気抜きシール部の15mm幅での前記熱間シール強度は、前記蒸気抜きシール部の15mm幅での常温シール強度の4分の1以下である」という数値に関し、臨界的意義はなく、格別な作用・効果を奏するものでもない。

よって、上記審判請求人の主張は採用することはできない。

エ 小括

よって、本件補正発明は、引用発明、引用文献1に記載された事項、引用文献2記載事項、及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび

以上により、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~9に係る発明は、令和6年4月23日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)の【請求項1】として記載のとおりのものである。

2 当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由の概要

令和6年10月11日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、上記第2[理由]2(2)の引用文献1、2に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができない、というものである。

3 引用文献

当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由で引用された引用文献1、2に記載された発明及び周知技術は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「シーラント層」についての限定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)ア及びイに記載したとおり、引用文献1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明、すなわち、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-017150

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決1,215件(大日本印刷株式会社)
  • 2023-015794拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)積層基材、包装材料用積層体および包装材料
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2025-003481拒絶査定不服審判 / 2026-08-21 / 原査定取消(特許/登録すべき)ポリエステル容器およびポリエステルプリフォーム
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2025-001600拒絶査定不服審判 / 2026-08-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)バイオマス由来の樹脂層を有する積層体を備える包装製品
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2024-010051拒絶査定不服審判 / 2026-08-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)チャック付き紙容器
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2024-015557拒絶査定不服審判 / 2026-08-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)パウチ
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
検索でもっと見る →
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2025-006471拒絶査定不服審判 / 2026-07-14 / 請求不成立物品
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2025-001903拒絶査定不服審判 / 2026-06-30 / 請求不成立包装容器
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2025-005608拒絶査定不服審判 / 2026-06-30 / 請求不成立容器
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-014025拒絶査定不服審判 / 2026-06-23 / 請求不成立衛生紙ロール包装体
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2025-002179拒絶査定不服審判 / 2026-06-16 / 請求不成立包装袋
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,337件(121・B65D)
  • 2024-015962拒絶査定不服審判 / 2026-09-01 / 原査定取消(特許/登録すべき)包装用袋
    共通の審決分類: 121・B65D
  • 2024-018331拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)フィルムロール梱包体およびその製造方法、ならびにロール体の保管方法
    共通の審決分類: 121・B65D
  • 2024-018679拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)ロール製品パッケージ
    共通の審決分類: 121・B65D
  • 2024-018680拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)ロール製品パッケージ
    共通の審決分類: 121・B65D
  • 2025-001600拒絶査定不服審判 / 2026-08-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)バイオマス由来の樹脂層を有する積層体を備える包装製品
    共通の審決分類: 121・B65D

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存